第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針、経営環境

当社は企業理念として「企業の成長と変革の触媒となり、道徳ある経済的価値を創出する。」ことを掲げております。また、企業ビジョンとして「企業の生産性を飛躍的に高める。その機会を提供するインベストメント・バンクとして、その実行を促進するアドバイザリー・ファームとして、比類なき存在を目指す。」ことを目標としております。

企業は事業活動を通じて企業内に人材、設備、技術、信用、顧客等、固有の価値を蓄積していますが、「2024年版中小企業白書」によれば、全国の経営者の年齢分布に占める70代以上の割合が高止まりする一方で、40代以下の割合は減少傾向にあり、中小企業経営者の高齢化が進行しております。また、株式会社帝国データバンクが行った「全国「後継者不在率」動向調査(2024年)」によれば、回答者のうち後継者不在と回答した割合は2017年以降、徐々に低下しているものの50%以上という結果が継続しています。このことから、経営者の高齢化が進展しながらも後継者不在率は高水準を維持しており、事業承継の必要性が高まっていると言えます。こうした背景を受けて、中小企業庁は中小企業のM&Aの更なる促進を目的として2015年3月に「事業引継ぎガイドライン」、2020年3月に「中小M&Aガイドライン改訂の経緯」、2021年4月に「中小M&A推進計画」を公表し、中小企業のM&Aは着実に進展しつつあるとしたうえで、更なる促進を図る方針を掲げています。

当社は、M&Aは企業が事業活動を通じて蓄積した企業価値を他の第三者が引き継ぎ、発展させていくために、譲渡側、買収側が共に参画するプロジェクトであると考えており、本来的には、M&A実行後の事業の成功が、関係当事者にとって最も重要な目的のひとつであると認識しております。この目的を達成するためには、当事者及び利害関係者が相互に信頼関係を構築しつつ、最適なストラクチャを採用して当該取引が生む付加価値の最大化を図ることが必要であり、アドバイザーは高度な専門性をもって、M&Aにおける一連のプロセスを管理・実行することを適切にサポートすること(エグゼキューション)が必要となります。当社は、プロセスの一部としてのマッチングのみならず、M&Aの実行プロセス全般においてM&Aアドバイザリー経験豊富な人材や、弁護士・公認会計士(米国公認会計士を含む)・税理士等の各種専門家が関与することにより、あらゆる面からM&Aにおける一連のプロセスをサポートできる総合力とその品質を追求することを業務推進における基軸としており、その企業規模を大きく拡大することで、より多くの顧客に対して、高品質のM&Aアドバイザリーサービスの提供を図り、業界の健全な発展を牽引していきたいと考えます。

当社は、このような企業理念・企業姿勢に基づいて、顧客の企業価値を最大化するM&Aの実現を支援するため、当社が有している人材やノウハウを駆使して、案件の組成からクロージングに至るすべての工程において、常にクオリティを最重要視し、顧客に付加価値の高いサービスを提供することで、社会的責務を果たすとともに、当社自身の企業としての発展、成長を通じて、株主をはじめとするステークホルダーの方々に還元を行っていく方針であります。

 

(2) 対処すべき課題

① 社内体制の強化

当社は今後の更なる事業拡大のため、積極的な採用等により従業員を増加させていく方針ですが、組織規模の拡大に応じた更なる社内管理体制の強化・充実が重要な課題であると認識しております。そのため、管理部門や情報システム分野の強化、内部監査の定期的な実施、経営者及び従業員に対する研修の実施、監査役と内部監査及び会計監査人との連携等を通じて、社内管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針であります。

 

② 社会的信用力の向上

M&Aは、中小企業にとって非常に高度な意思決定を伴う、経営における最高難易度の取組みのひとつであります。そのような重要な取組みの支援をお任せいただくためには、高い社会的信用力を備えることが必要となります。また、小規模・中小企業のM&Aは、大きな成長市場と目されていることから、近年は多数の競合会社の新規参入が相次いでおりますが、提供されるサービスの品質水準は玉石混交であるのが現状です。そのような状況下で、専門的知識や経験、ノウハウを活かした高品質のM&Aアドバイザリーサービスを追求し、提供することが、当社の社会的信用力の向上につながり、ひいては業界全体の健全な発展に資するものと考えております。そのために当社は、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)とOffJT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)をミックスした効果的な人材育成体制の構築とその不断のレベルアップに注力するとともに、社内メンバー間において経験から得られた情報や知識(ナレッジ)を共有するしくみ等を整備することで、サービス品質の維持向上に努め、社会的信用力の向上につなげてまいります。

 

③ 人材の確保と育成

当社は、上述のとおり、高品質なM&Aアドバイザリーサービスの提供を目指しておりますが、そのためには専門性の高い経験豊富な人材の確保と育成が重要な課題であると認識しております。

人材の育成体制の更なる強化を目指し、継続的な研修制度のブラッシュアップや採用した人材のモチベーションを向上させる人事諸制度の構築を行うことで、高品質なサービスを提供できる人材の育成に努めてまいります。

 

④ 譲渡案件のソーシング・マッチング力の強化

高品質なM&Aアドバイザリーサービスの提供が、当社が最も重要視する事項であり、その結果、過去に提供したサービス水準のクオリティに満足した顧客又はその支援者(金融機関、士業等専門家)からの紹介案件が多いことが当社の特徴であると考えておりますが、M&Aアドバイザリー事業の持続的成長とその加速のためには、譲渡案件のソーシングとマッチング力の強化が必要であると認識しております。当社は、差別化要素であるM&Aアドバイザリーサービスのクオリティの更なる向上と並行して、現在協業関係にある金融機関及び士業等専門家、経営コンサルタント、投資会社等との双方向連携の強化によって信頼関係向上を図り、優良案件の獲得を継続してまいります。

また、譲渡候補企業に直接アプローチを行う営業手法の拡充やWebプラットフォームの構築を図ることで、更なる優良案件の獲得とマッチング精度の向上を目指してまいります。

 

 

⑤ 案件管理体制の構築

当社は、譲渡希望者の社内システムへの登録から案件化フェーズ、マッチングフェーズ、エグゼキューションフェーズに至る主要プロセスやサブプロセスにおける進捗、把握した課題及びその解決状況等を社内メンバーに適時に共有し、意見を交換することで総合力の発揮を図り、また、専門知識を活かすための適切な案件担当者の配置(アサインメント)とナレッジの共有を行うことで、高品質なサービスを均質的に提供しうる体制の整備を進めております。また同時に、これらの管理体制を充実させることで、成約率の向上や、クロージング時期を適切に把握できる体制の構築を目指しております。

当社は、週に一度の案件進捗報告と課題解決のための会議を行い、M&A案件の経験が豊富な経営陣に加え、各分野の専門家(公認会計士、弁護士等)より様々な観点から案件の進行プロセスやストラクチャ等に対する見解を出し合い、進捗状況の共有を行っております。併せて、案件毎に想定されるクロージング時期が適切か否かの見直しを行っておりますが、M&Aは譲渡企業にとっても買収企業にとっても重要な、高度の意思決定事項であることから、当社のコントロールが及ばない領域の諸要因により、スケジュールが当初計画に比して遅延する場合があります。

今後、更なる品質の維持向上と、生産性の向上による成約までの期間の短縮を目的とした機能分化を含む組織体制の変更など案件管理体制の強化を推進してまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は持続的な成長と企業価値の向上を目標としており、経営指標として売上高と営業利益を重視しております。また、これらの経営指標に影響する成約件数、平均報酬単価、M&Aコンサルタント数の推移を把握し、これらの指標等を改善することで、売上高と営業利益が継続的に向上するための施策を講じております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は「企業の成長と変革の触媒となり、道徳ある経済的価値を創出する。」ことを企業理念として、M&Aアドバイザリー事業を通じて日本の中小企業における後継者不在問題の解消や生産性の向上に資することを目的に、クオリティを最重視した付加価値の高いM&Aアドバイザリーサービスを提供することで、社会的責任を果たしていく方針であります。当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであります。

 

ガバナンス及びリスク管理

当社は、全てのステークホルダーの皆様から常に信頼される企業であることを目指し、継続的なコーポレート・ガバナンスの強化を重要な経営上の課題のひとつとして認識しております。サステナビリティ関連課題のガバナンスについては、経営会議において、事業運営に影響を及ぼすサステナビリティの観点を含むリスク・機会の識別・評価及び対処方針の立案を行い、その結果特定した重要なリスクと対処方法は、取締役会に報告し、取締役会はその管理・監督を行うこととしております。

当社のコーポレート・ガバナンス体制の概要については「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

戦略

当社が事業を運営していくことは、社会や環境が持続可能であることが前提であり、事業を通じて重要なサステナビリティ関連課題に対応していくことは重要な責務であると考えております。当社が行うM&Aアドバイザリー事業はM&Aを通じて企業の後継者不在問題を解消し、また、企業の生産性向上に資するものであることから、日本経済の持続的な発展に寄与し、社会に貢献することができるものと考えております。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社が高品質なM&Aアドバイザリーサービスを提供し、事業を持続的に成長させていくために、人材が最も重要な資本であると考えており、専門性の高い経験豊富な人材の確保と育成が不可欠と考えております。人材の確保については積極的な採用活動を実施し、当社の経営理念等に共感できる人材の採用を行う方針です。

人材の育成については、採用した人材の能力を最大限発揮できる人事諸制度の整備や企業文化の醸成に努めて参ります。また、コンプライアンス研修を含む諸々の社内研修の実施や、業務プロセスの標準化とOJT等の育成施策を組み合わせることにより、高い倫理観を持ち、かつ、高品質なサービスを提供できる人材の育成に努めてまいります。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社では、人材の育成及び社内環境整備に関する指標及び当該指標を用いた目標を定めておりません。多様な人材が高品質なM&Aアドバイザリーサービスを提供できる環境の構築にむけて、具体的な指標及び目標については検討を進めてまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のものがあります。また、当社として必ずしも事業上のリスクとして考えていない事項についても、投資者の投資判断、或いは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載をしております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅したものではありません。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 競合

M&Aアドバイザリー事業には、サービスを提供するために必要な許認可等の規制がなく、相対的に参入障壁は高くない事業であると判断しております。そのため、中小企業を中心としたM&Aにおいてアドバイザリー事業を行う事業者は、大規模事業者だけでなく、小規模事業者、個人事業者(会計事務所、コンサルタント事務所等)等の競合が多数存在しており、今後も新規参入及び競合事業者間での競争が激化することが予想されます。

当社は競合事業者と差別化できる高い品質のサービスを実現するために、過去の経験から得られたノウハウの共有やコンサルタントの教育研修の実施、M&A実務経験者の積極的な採用を行っております。しかしながら、有力な競合事業者の参入等により競争環境が激化した場合に当社事業の収益性が低下することで、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) M&Aに関する許認可制度

当社が営むM&Aアドバイザリー事業は、許認可制度や資格等による制限を受けておりません。しかしながら、今後、M&Aアドバイザリー事業を行うことに対して、何らかの制限が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) M&Aに関する法的規制

M&Aに係る法的規制(金融商品取引法、会社法、税法等)の改正が行われた場合には、M&A市場に影響を与えることが考えられます。結果として、当社が営むM&Aアドバイザリー事業を取り巻く環境が変化し、顧客のニーズも変化する場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) M&Aアドバイザリー事業への依存

当社は、M&Aアドバイザリー事業の単一事業を営んでおります。国内のM&A市場は中小企業経営者の高齢化にともなう事業承継や、ベンチャー企業のイグジット等の手段としてM&Aの活用が認知されてきたことを背景として、非常に堅調に推移していると考えております。しかしながら、経済情勢や事業環境の変化が生じ、M&A需要の急激な縮小等が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 自然災害等

当社は事業運営上の重要な情報の多くを、サーバーやクラウドシステム上にデータとして保管しております。大地震や台風等の自然災害に起因して、サーバーやクラウドシステムの利用が制限された場合や、当社の主要な事業拠点である首都圏や近畿圏に甚大な被害が発生した場合には、当社の事業活動に支障が生じて、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 訴訟

当社はコンプライアンス体制の整備に努めており、将来問題となる懸念のある事案については、都度、顧問弁護士と連携し、訴訟リスクに対しては細心の注意を払って業務を遂行しておりますが、何らかの要因により訴訟を提起される可能性があります。訴訟等の内容及び結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 小規模組織

当社は、2024年11月30日において従業員55名であり、組織規模に適合した内部管理体制を構築しております。当社は今後も事業の拡大や従業員の増加にあわせて、内部管理体制の強化を図る予定でありますが、急激な事業拡大に対して十分な人的・組織的対応が取れない場合には、事業運営に支障が生じて、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 人材の獲得および流出

当社が営むM&Aアドバイザリー事業の成長を図るためには、高度な専門知識と豊富な経験を持ったM&Aコンサルタントの確保・育成が重要であると考えており、優秀な人材の獲得と従業員の育成に重点的に取り組んでいます。しかしながら、今後計画通りに優秀な人材が獲得できない場合や社外への流出を防止できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 情報管理体制

当社が営むM&Aアドバイザリー事業は、顧客の機密情報及び秘匿性の高い情報を取り扱っております。そのため、顧客から入手した情報や、顧客におけるM&A検討の事実が漏洩することがないように、情報セキュリティに関する社内規程を整備・運用・モニタリングするとともに、役職員への継続的な研修等を通じ、情報管理の徹底を図っておりますが、不測の事態等によって、企業情報や個人情報等が社外に流出した場合に、損害賠償の支払いや当社への信頼の失墜等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の顧客は、中小企業のみならず、上場企業やその子会社・関連会社等である場合があります。これらの情報を悪用し、インサイダー取引や、情報漏洩が行われた場合には、当社の事業運営への制限や信頼の失墜等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 案件不成立や進捗遅延による業績の変動

M&Aアドバイザリー事業は、譲渡希望者と買収希望者の意向に従い、受託から成約までの業務が進められます。当社は常に専門家集団として高品質なM&Aアドバイザリーサービスを提供するように努めることで、M&Aの成就のためのサポートを行っておりますが、成約に至らないケースも存在します。そして、個別の案件の手数料単価が高い場合には、当該案件の成否が業績に与える影響が大きくなります。当社は規模の拡大を図ること、即ち受託案件を増加させ、母数を大きくすることで、個別案件の業績全体への影響度の低減に取り組んでおりますが、手数料単価が高い複数の案件が成約・クロージングに至らなかった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、最終的に案件が成約に至る場合でも、譲渡希望者と買収希望者による条件交渉の難航や、各種デューデリジェンス等のプロセスが遅延する等により、当初スケジュール通りに進捗しないケースが存在します。その結果、当社が見込んでいた売上計上時期にずれが生じ、四半期決算や事業年度別の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11) 大株主および当社の代表取締役への依存

当社大株主であり代表取締役である久保良介および舩戸雅夫は当社の共同創業者であり、M&Aアドバイザリー事業に関する豊富な経験と知識を有し、経営方針や事業戦略の立案・実行等の企業活動全般において重要な役割を果たしております。当社は事業運営を行ううえで優秀な人材の育成を図るとともに、権限の委譲を進めることで特定の個人に過度に依存しない事業体制の構築を進めておりますが、両名またはいずれか一方に何らかの理由により不測の事態が生じた場合、又は退任するような事態が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、両名が保有する議決権の合計は59.6%であり、当社の大株主ですが、中長期的に一定の議決権比率を維持するとともに、議決権行使にあたっては少数株主の利益にも配慮しつつ株主共通の利益を追求する方針です。しかしながら、何らかの事情で当該株式を売却する等の理由により、両名の保有する株式数が減少し、議決権比率が低下した場合には、当社株式の市場価格や議決権の行使状況等に影響を及ぼす可能性があります。さらに、特定の相手先へ当社株式の譲渡を行った場合には、当該譲渡先の方針によっては、当社の事業戦略等に影響を与える可能性があります。

 

(12) 配当政策

当社は財務体質の強化と事業の成長のための投資が重要であると考え、配当を実施しておりませんが、株主への利益還元は重要な経営課題と認識しております。

今後、将来の財務体質の強化と事業拡大のために必要な内部留保を確保しつつ、当社を取り巻く事業環境を勘案して、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針ですが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、企業収益や個人消費の持ち直しなどを背景に日経平均が最高値を更新するなど堅調な動きが見られる一方で、円安や物価の上昇などもあり、先行き不透明なリスクもみられる状況が続いております。

当社が営むM&Aアドバイザリー事業は、中小企業・小規模事業者の経営者の高齢化を背景とした後継者問題の深刻化や業界再編、あるいは企業成長の加速のための手法としてのM&Aが有力な選択肢として認知が進んでいることで、M&Aのニーズは高まっており、引き続き市場は堅調に拡大していくものと考えております。一方、市場の拡大に伴い、M&A支援機関に対してモラルや品質の向上を求める声が高まっております。中小企業庁による「中小M&Aガイドライン」の改訂や自主規制団体である「一般社団法人M&A仲介協会」(2025年1月1日より「一般社団法人M&A支援機関協会」に改名)の設立や自主規制ルールの公表など、官民が相互に連携した取組を推進することで、健全に市場が発展していくものと考えております。

このような事業環境下で、当社は公的機関や金融機関、各種専門家等の多様な業務提携先とのネットワークの更なる拡大、強化を図るとともに、これらの業務提携先と連携してセミナーなどを実施することでM&Aニーズの取り込みに努めるなど、営業活動を積極的に進めております。また、新たに事業投資部を設立し、2024年8月に第一号案件となる投資を実行するなどグローバルな高付加価値企業の輩出を目指して、成長性のある企業への出資及びハンズオンによる成長支援を積極的に行っていく方針です。

当社の当事業年度における成約件数は32件(前期27件)、大型案件の成約をうけて平均報酬単価が上昇したため、売上高は1,665,082千円(前期比101.4%増)となりました。売上の増加を受けて営業利益は367,009千円(前期は200,574千円の営業損失)、経常利益は367,388千円(前期は199,455千円の経常損失)、当期純利益は239,075千円(前期は152,756千円の当期純損失)となっております。また、新規受託件数は74件(前期は96件)となりました。

なお、当社は、M&Aアドバイザリー事業の単一セグメントであるため、セグメントに関する記載は省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産の部)

流動資産は、前事業年度末と比較して602,443千円増加し、1,401,708千円となりました。これは、主として現金及び預金が367,771千円増加したことや売掛金が335,170千円増加したことによります。

固定資産は、前事業年度末と比較して53,376千円増加し、278,459千円となりました。これは、主として投資有価証券が102,725千円増加した一方で、繰延税金資産が37,474千円減少したことによります。

この結果、当事業年度末の総資産は前事業年度末と比較して655,819千円増加し、1,680,168千円となりました。

(負債の部)

流動負債は、前事業年度末と比較して379,989千円増加し、516,853千円となりました。これは、主として未払金が176,724千円増加したことや未払法人税等が92,445千円増加したこと、未払消費税等が86,333千円増加したことによります。

固定負債は、前事業年度末と比較して36,790千円増加し、59,132千円となりました。これは、主として長期借入金が36,672千円増加したことによります。

この結果、当事業年度末の負債合計は前事業年度末と比較して416,779千円増加し、575,985千円となりました。

(純資産の部)

純資産は、前事業年度末と比較して239,039千円増加し、1,104,182千円となりました。これは、主として利益剰余金が当期純利益の計上により239,075千円増加したことによります。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は888,558千円であり、前事業年度末と比べ367,771千円の増加となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は411,155千円(前事業年度は509,445千円の使用)となりました。これは主に売上債権の増加335,170千円があったものの、税引前当期純利益が357,388千円未払金の増加176,724千円未払消費税等の増加117,274千円、法人税等の還付45,631千円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は90,015千円(前事業年度は77,716千円の使用)となりました。これは主に投資有価証券の取得112,725千円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、獲得した資金は46,631千円(前事業年度は268,113千円の使用)となりました。これは主に長期借入れによる収入50,000千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注および販売の状況
a.生産実績

該当事項はありません。

 

b.受注実績

該当事項はありません。

 

c.販売実績

当社はM&Aアドバイザリー事業の単一セグメントであり、セグメントごとの記載はしておりません。

当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

M&Aアドバイザリー事業

1,665,082

+101.4

合計

1,665,082

+101.4

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、相手先の名称又は氏名については、当社と顧客との各種契約において秘密保持条項が存在すること、顧客のプライバシーに大きく関わる事項であること、及び顧客や当社の事業運営への影響が懸念されること、並びに当社の事業特性上、特定の個人や法人との継続的な取引に依存していないことに鑑み、公表を控えております。

相手先

第16期事業年度

(自2022年12月1日 

   至2023年11月30日

第17期事業年度

(自2023年12月1日 

   至2024年11月30日

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

M&A買収先Z

258,219

15.5

 

2.前事業年度の主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因を考慮して見積りを行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の状況の分析

(売上高)

当事業年度の売上高は1,665,082千円で前期比101.4%の増加となりました。これは、成約件数が32件(前期27件)と前年同期と比較して増加したことや平均報酬単価が52,033千円(前期30,616千円)に上昇したことによるものであります。

(営業利益)

当事業年度の営業利益は367,009千円(前期200,574千円の営業損失となりました。これは主に売上の増加により売上総利益が増加したことによるものであります。

(経常利益)

当事業年度の経常利益は367,388千円前期は199,455千円の経常損失となりました。これは主に営業利益の増加によるものであります。

(当期純利益)

当事業年度の当期純利益は239,075千円前期は152,756千円の当期純損失)となりました。これは主に経常利益の増加によるものであります。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境等の様々な要因が変動することによる影響を受ける可能性があると認識しております。そのため、当社を取り巻く外部環境と内部環境の変化に留意しつつ、内部統制の強化や人材の確保と育成等により、経営成績に重要な影響を与えるリスクの発生を抑え、適切な対応を図ってまいります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の運転資金需要の主なものは、人材の獲得、維持にかかる人件費、業容拡大にともなう物件維持費、効率的なマッチングにより当社のサービスを向上させるためのシステム維持費等の営業費用であります。

当社としては、不測の事態も想定し、十分な資金を自己資金で確保しながら、必要に応じて銀行借入による調達を行う方針であります。

 

 

d.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について

当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として売上高と営業利益を重視しております。また、これらの経営指標に影響する成約件数、平均報酬単価、M&Aコンサルタント数の推移を把握しております。

当事業年度における売上高は1,665,082千円(前期比101.4%増)、営業利益は367,009千円(前期200,574千円の営業損失となりました。また、成約件数は32件(前期は27件)、平均報酬単価は52,033千円(前期は30,616千円)と増加した一方で、M&Aコンサルタント数は35名(前期は43名)に低下いたしました。これらの指標につきましては今後も増加させるよう努めてまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。