第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「われわれはつねに最高の品質をめざし社会に貢献する」の社是のもと、世界最高の技術と品質を究めたモノづくりと、公正な企業活動を通じて産業の発展に寄与し、安全で豊かな市民生活の実現と持続可能な世界の実現を経営の基本方針としている。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2024年度から2026年度をターゲットにして、「中期経営計画2026」をスタートしている。利益の追求とキャッシュ・フローの改善による財務基盤の立て直しを最重要課題とし、継続的に利益確保ができる事業体質の構築に注力している。そのため、これまでの企業風土を変えていくとともに、組織体制を見直し活性化を進めている。また人的資本の充実を目指した人事制度改革、育成プログラムの構築を図ってゆく。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

(事業構造)

当社グループの事業構造は、超高速ジェットルーム及びその周辺準備機械等を中心とする繊維機械事業と、NC円テーブルやマシンバイス等を中心とする工作機械関連事業を主力事業としている。また、新規の事業開拓として、炭素繊維複合素材の自動加工装置を開発販売するコンポジット機械事業、ロボットインテグレーションシステムの開発・提供を行うTRI(ツダコマ・ロボティック・インテグレーション)事業、航空機部品加工事業等を展開している。

(市場の状況)

繊維機械事業では、中国やインドを中心とした新興国市場が大きな比率を占めている。こうした市場に対し、使いやすく、生産性と環境性能が優れた機械の提供を行うとともに、市場特性に合わせたきめ細かな製品仕様の展開とサービスの提供を強みとしている。

工作機械関連事業では、工作機械業界、自動車業界、電子機器・通信等のEMS業界を主力市場として、加工特性に最適な3つの駆動方式をラインアップした唯一のメーカーとして高精度NC円テーブルを提供している。

コンポジット機械事業は、航空機業界向けに革新的な加工装置を開発し参入したが、昨今の航空機業界の不振等により大きな拡大には至っていない。一方、自動車・一般機械分野でも炭素繊維複合素材の利用拡大の動きが出はじめており、国内研究機関とともに共同研究・製品開発を進めている。

(経営戦略等)

繊維機械事業では産業資材、高級スポーツブランド、一般衣料の3つの市場をターゲットとし、売価改善と原価低減を両立し、低操業度でも利益確保できる体制を構築すべく施策を進めている。具体的には下記の取り組みを進めている。

a.  エアジェットルーム ZAX001neo Plusの販売促進

b.  ウォータジェットルームの販売強化と中国内需向けボリュームゾーンの市場確保

c.  準備機械の性能向上

d.  産業資材分野への取り組み、販売促進

e.  販売価格の更なる改善とコストダウンによる収益性向上

工作機械関連事業では市場ニーズに応えるべく事業・製品の多角化を目指している。今後需要が増えると予想される業種、また自動化へのニーズに対応した製品の販促を進める。当期は日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)において様々な新製品の展示・アプリケーションの提案を行い、要求が強くなっている自動化・省人化ニーズに対応した製品開発を進めている。

a.  自動車業界の駆動要素の多様化に対応したNC円テーブルの販売促進

b.  新しい産業分野・加工技術・省人化に対応する新製品の迅速な開発と市場投入

c.  新分野への取り組み

当社グループは、後述の「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、2024年から2026年の3カ年をターゲットとした「中期経営計画2026」を策定し、取り組んでいる。詳細は後述の「(4)中期的な会社の経営戦略」に記載のとおりである。

 

(4)中期的な会社の経営戦略

各事業部の活動として、繊維機械事業では将来の成長領域と位置付けている産業資材向け製品の販売を強化、新型エアジェットルームのラインナップ拡充および新型サイジングマシンの投入、エアジェットルームとウォータジェットルームのプラットフォーム化によるコストダウンを図る。

工作機械関連事業ではNC円テーブルを中心とした既存製品の新興市場への販促展開、プラットフォーム化を活用し更なるリードタイムの短縮の実現、子会社、他部門との製品開発やサービスの協業を加速させ、客先の需要に応えた新たな製品の市場投入を図る。

コンポジット機械事業では、宇宙・輸送関連の燃料タンクの共同開発を推進し、次期航空機に向けた製造設備の受注確保に努める。TRI(ツダコマ・ロボテック・インテグレーション)事業では、増産へのステップとしてノウハウの蓄積に力を注ぎ、インフラ用FRP材料については、ICC(革新複合材料研究開発センター)との共同開発を進める。

全事業部門で原価の予実管理を徹底し、原価低減を推し進めるとともに、適正価格への改善に継続的に取り組む。また、各部門における課題の解決や生産・業務効率の向上を進めるため、全社的にDXに取り組み、収益性の向上を図る。また、中長期的な活動として、SDGsへ向けて全社共有化を図り、活動を加速させてゆく。当社グループは、モノづくりを通して、持続可能な社会の形成と産業の発展に貢献しながら、業績の拡大と株主価値の向上を図ってゆく。

2025年度は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 継続企業の前提に関する注記」で記載のとおり、重点施策を実行してゆく。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社は、サステナビリティに関するトップコミットメントを策定するとともに、SDGs推進委員会を設置し、諸課題の洗い出しと対応に、継続的に取り組む体制を整えている。また「ISO14001」、「ISO9001」の認証を取得し、法令・規制等を遵守した経営に努めている。また、それらの内容はホームページで開示している。

リスク管理において、当社では、取締役会で内部統制基本方針を定め、内部統制の整備を行い、取締役会において継続的にグループ全体を含めた経営上の新たなリスクの対応策について検討している。経営会議を通して経営に関する重要な事項の審議と決定を行い、部長会議を通して進捗状況と課題の報告、情報共有を行っている。また法務・コンプライアンス室を設置し、当社グループの活動に関わる法令の遵守と適正な管理・運用体制の強化を図るとともに、定期的に内部監査を実施し、財務報告に係る内部統制の有効性の評価を行なっている。当社グループの損失の危険に関して、監査役監査を実施し、損害を及ぼす恐れのあるリスクの早期発見と、その発現への対応に努めている。

 

(2)戦略

当社は、サステナビリティを巡る課題への対応が収益機会につながる経営課題であるとの認識に立ち、SDGs推進委員会を設置し、諸課題の洗い出しと対応に、継続的に取り組む体制を整えている。特に製造業として、事業活動における環境負荷の低減と省エネルギー・環境性能に優れた製品の設計・製造・販売に注力している。

また従来から「ISO14001」、「ISO9001」の認証を取得し、「環境方針」、「品質方針」に基づき、様々な施策を計画・実施し、その結果を定期的に評価のうえ、経営者に報告している。さらに、労使協調のもと、健康経営として、従来から従業員の心身の安全・安心、健康管理の取り組みを進めた結果、2021年度には外部の健康経営格付融資を受けるなど高い評価を受けた。

 

(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、管理職への登用にあたっては、性別、国籍、年齢を問わず、スキル・経験等を総合的に判断し、公平性を重視して行なうことを基本方針としている。

また、サステナビリティに関するトップコミットメントの方針を基に、多様性の確保に向けた人材育成、社内環境整備を進めている。女性採用では、新卒採用における女性割合を25%以上にする数値目標を立て、継続的に採用している。教育では女性管理職を対象とした、女性のための専門教育(マネジメントセミナー)を行っている。一方外国人・中途採用者については適時採用している。社内環境整備では、労働安全衛生管理方針、健康経営方針等に基づく活動を進め、当社ホームページで公開している。

 

(4)指標及び目標

当社では、性別、国籍、年齢を問わず、スキル・経験等を総合的に判断し、公平性を重視して、優秀な人材の採用及び管理職登用を行っている。能力と意欲のある人材を適材適所に配置しているため、具体的な指標及び目標は定めていない。

なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合及び労働者の男女の賃金の差異」に記載のとおりである。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、輸出比率が高く、米中間の政治・経済対立や欧米経済のインフレ懸念、為替相場の変動などの国際経済の影響に加え、取引相手国の政治状況・経済政策の影響も受けざるを得ない。

また、主要市場である中国の景気低迷なども重大なリスクとなっている。このような状況から、主に次の要因が当社グループの経営成績に影響を及ぼすリスクと考えている。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

①米中間の政治・経済対立

特に繊維機械事業における主力市場の中国では、米国が重要な繊維製品の輸出相手国となっており、米中間での政治的な対立や、米中貿易摩擦・追加関税引き上げにより、繊維製品輸出が減少すると設備投資に影響が及ぶ。一方、こうした環境の中で、中国から隣国等への生産拠点の移動現象も見られ、新たな商機と捉えていく。

 

②欧米経済のインフレ懸念

欧米経済のインフレの進展やそれに伴う金利上昇により、世界各国・地域の経済成長が減速し、顧客の設備投資に対する判断が慎重になるなどの影響を受ける懸念がある。

 

③中国経済の景気低迷リスク

主力市場の中国で、景気の停滞は、客先の設備投資計画に影響を与え、計画の延期等が発生する可能性がある。この場合に当社グループの業績に悪影響を与える可能性がある。

 

④為替変動及び金利上昇リスク

当社は輸出にあたっては、為替リスクを回避する手段として、円建て契約を基本としているが、急激な円高は相手側の円調達リスクとなる。また、当社客先とその最終仕向国の間の為替変動による資金調達リスクが、当社顧客の設備投資に影響する。

 

⑤海上輸送運賃やエネルギー価格の高騰リスク

当社は、主に船便によるコンテナ輸送で当社製品を顧客へ引渡しを行っている。コンテナ不足による物流停滞は、海上輸送運賃の高騰を引き起こし、輸出契約時に見込んでいた海上輸送運賃を上回る費用が発生するリスクとなる。原油・電力等のエネルギー価格の高騰は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える。エネルギー価格の高騰等に対し、販売価格への転換をすすめ、採算性の改善を図っていく。

 

⑥継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、令和元年11月期以降、前期まで5期継続して営業損失及び経常損失を計上していた。当期においては黒字転換を果たしたが、安定的な利益の獲得には至っておらず、当社グループには引き続き継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在している。

当社グループは、このような状況を解消し、健全な企業活動を継続するために、「中期経営計画2026」に基づき以下の点を重点項目として取り組んでいる。

 

繊維機械事業の受注・売上、採算性向上

「中期経営計画2026」では産業資材、高級スポーツブランド、一般衣料の3つの市場をターゲットとし、売価改善と原価低減を両立し、低操業度でも利益確保できる体制を構築すべく施策を進めている。具体的には下記の取り組みを進めている。

a. エアジェットルーム ZAX001neo Plusの販売促進

従来機種比で消費電力量15%削減を実現したZAX001neo Plusにて、新たな価値観を提案し、拡販に努める。

b. ウォータジェットルームの販売強化と中国内需向けボリュームゾーンの市場確保

中国においては、中国国内ブランドの高級スポーツカジュアル分野が好調であり、大手企業の設備計画が具体化し受注を積み上げた。現在も大型案件の引き合いが継続している。一方で欧州の大手アパレルブランドの脱中国を背景にしたインド、バングラデシュ、台湾、ベトナムからの引き合いも続いている。

c. 準備機械の性能向上

サイジングマシン(準備機械)は、より付加価値の高い製品を提供できるよう、客先の質問・要望に対し設計開発へフィードバックしている。また産業資材向けの仕様の充実を進め、受注の積み上げを図っている。

d. 産業資材分野への取り組み、販売促進

エアバッグ、タイヤコード、フラットヤーン、医療用基布といった既に実績ある分野に加え、オーニング、広告バナー、パラシュートなど新たな分野も加え、欧米・中国を中心に販促中である。ITMA ASIA+CITME2024上海においても反響があった。エアバッグは中国市場において受注を積み上げ、タイヤコードも引き続き増設の商談中である。炭素繊維向けレピアルームについては、海外からの引き合いが増加中である。

e. 販売価格の更なる改善とコストダウンによる収益性向上

客先の声に応えた製品性能を追求するとともに、原材料やエネルギーコストを反映した適正な価格での販売を行い、また関連部門との連携を密にしたDXに取り組み、生産効率や業務効率、納期管理の向上を推し進めていく。

 

工作機械関連事業の受注・売上の拡大、採算性向上

「中期経営計画2026」では市場ニーズに応えるべく事業・製品の多角化を目指している。今後需要が増えると予想される業種、また自動化へのニーズに対応した製品の販促を進める。当期は日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)において様々な新製品の展示・アプリケーションの提案を行い、要求が強くなっている自動化・省人化ニーズに対応した製品開発を進めた。

a. 自動車業界の駆動要素の多様化に対応したNC円テーブルの販売促進

EVシフトには一服感が見られるが、将来的には駆動要素の一つとなることは必至である。

ワーク素材や加工技法が今後多様化するにあたり、それに対応したNC円テーブルを市場投入している。NC円テーブルの通常の機能である切削に加え旋削機能を付加したモデル、ワークや治具の大型化に対応したモデルは既に販促活動を行っており、海外市場を中心に販売実績を積み上げている。

b.新しい産業分野・加工技術・省人化に対応する新製品の迅速な開発と市場投入

今後拡大が見込まれる航空宇宙産業やクリーンエネルギー発電などでは、既に開発・市場投入済である当社が得意とする大型NC円テーブルの需要があり、短納期で供給できる社内体制ができている。現在データセンター用のバックアップ電源供給として大型ディーゼルエンジンの需要が増加傾向にあり、その部品加工用に大型NC円テーブルの需要増加が見込まれる。また医療用機材加工用として開発した製品のリニューアル化を行い、北米向けに順調に売上を続けている。

c. 新分野への取り組み

昨秋に開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)で出品した小型加工機は、積層造形後の仕上げ加工や、試作など様々な分野での活用が期待される。また、NC円テーブルの回転軸駆動要素を活かしたバリ取り機についても今後改良を加え、販促を進めていく。また工作機械の拡張機能を高める周辺機器の開発にも着手し、今後も新製品の投入を続けていく。

 

キャッシュ・フロー確保に向けた対応策

資金計画については、令和7年度の通期予算を基礎に策定している。通期予算等は、最近の受注高及び受注見込額の推移、過去の売上の推移による趨勢を検討の上、収益予測を行っている。また、費用面においても通期予算を基に計算しているが、更なるコストダウンの遂行、経費節減の徹底によって改善を図っていく。なお、資金計画には主要金融機関からの借入更新が含まれている。

取引金融機関とは、定期的に資金計画及び中期経営計画の進捗状況の説明を行うなど、緊密な関係を維持している。

また、売却の意思決定を行った政策保有株式について、相手企業との同意の内容や株式相場を勘案したうえで売却を実施していく。

 

以上の対応策に取り組んでいるが、これら対応策の実現可能性は、国際情勢の動向、原材料価格等の仕入れ価格、海上運賃等の諸経費の高騰や部品の突発的な長納期化などの外部要因に影響を受け、業績回復による黒字の安定的な計上が遅延し、当社グループの資金繰りに影響を及ぼす可能性があることから、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、円安や価格転嫁による収益性の改善により業績が好転する企業が増え、また賃上げ等の影響により個人消費も若干回復し、景気は緩やかな回復となっている。海外においては、米国経済は堅調に推移したものの、中国経済は不動産市況の低迷により力強さを欠き、欧州経済は停滞が続いた。

こうした中、当社グループは、2024年度から2026年度をターゲットにした「中期経営計画2026」を策定し、採算性の改善を図り安定した利益の確保に向けた活動を展開している。

この結果、全体の受注高は33,081百万円(前年同期比19.4%減少)となった。売上高は、繊維機械事業でインド市場での受注伸び悩みなどにより、全体として36,445百万円(前年同期比7.2%減少)となった。一方損益面では、販売価格への転嫁や原価低減の取り組みが進んだことにより、営業利益は398百万円(前期 営業損失1,216百万円)、経常利益は金利負担等により282百万円(前期 経常損失1,295百万円)となった。親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却益の計上等により488百万円の利益(前期 親会社株主に帰属する当期純損失1,246百万円)となった。

セグメント別の状況は下記のとおりである。

 

(繊維機械事業)

中国で昨年10月に開催された繊維機械国際見本市 ITMA ASIA+CITME2024上海において、従来機種から更なる高生産性を実現したエアジェットルームZAX001neo Plusを発表し、高い評価を得た。中国市場では、国内の高級スポーツカジュアル分野が好調であり、年間を通じウォータジェットルームでの大型案件を受注している。

インド市場では織物輸出が停滞、内需も一部織物分野で供給過多の状況が続き、客先の設備投資に対する銀行融資の厳しさは増し、本来の力強さを取り戻していない。

産業資材分野は、主にエアバッグ用途で受注を積み上げた。その他の産業資材分野や炭素繊維向けレピアルームについても引き合いは増加している。

この結果、受注高は27,763百万円(前期比22.1%減少)となり、売上高は30,867百万円(前期比8.0%減少)となった。損益面では、販売価格への転嫁が進んだことや原価低減の取り組みにより、営業利益は911百万円(前期営業損失 810百万円)となった。

 

(工作機械関連事業)

工作機械業界全体の受注は年間を通じ低調に推移し、設備投資は依然として低迷している。主力の海外市場である北米や、インド、トルコなどの新興市場は堅調に推移したが、日本や中国、欧州市場は、期待した設備投資意欲の高揚には至らず厳しい状況が続いている。

このような中、昨年11月に開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)で生産性向上にフォーカスした傾斜NC円テーブルなどの新製品の展示を行い、成果を得ることができた。

この結果、受注高は5,317百万円(前期比1.8%減少)、売上高は5,577百万円(前期比2.7%減少)となった。損益面では生産の減少があったものの、販売価格の改定や生産効率の改善に努めたことにより、営業利益は555百万円(前期比15.5%減少)となった。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,082百万円減少し30,252百万円となった。主な増減は、製品の減少等によるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ1,814百万円減少し27,404百万円となった。主な増減は、長期借入金の返済、仕入債務の減少等によるものである。純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益488百万円を計上したこと、退職給付に係る調整累計額が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ732百万円増加し2,848百万円となり、自己資本比率は8.98%となった。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ363百万円増加し2,907百万円になった。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少635百万円などがあったものの、税金等調整前当期純利益683百万円、減価償却費841百万円の計上などにより801百万円となった。(前期 マイナス1,285百万円)

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出215百万円があったものの、投資有価証券の売却による収入726百万円などにより530百万円となった。(前期 314百万円)

 

(財務活動によりキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出879百万円などによりマイナス968百万円となった。(前期 124百万円)

 

 

④ 生産、受注及び販売の状況

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次の通りである。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

繊維機械事業

26,706

97.9

工作機械関連事業

4,675

76.1

合計

31,381

93.9

 

 

b 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次の通りである。

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比(%)

受注残高
(百万円)

前期比(%)

繊維機械事業

27,763

77.9

11,591

78.9

工作機械関連事業

5,317

98.2

1,334

83.7

合計

33,081

80.6

12,926

79.4

 

 

c 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次の通りである。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

繊維機械事業

30,867

92.0

工作機械関連事業

5,577

97.3

合計

36,445

92.8

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去している。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

江蘇蘇美達国際技術貿易有限公司

5,661

14.4

7,865

21.6

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

  経営成績

当社グループは、売上高に占める輸出比率が高く、また主力の繊維機械事業ではインドや中国など、持続的な成長を図るための様々な経済改革を進める市場が売上の中心となっており、世界経済や国際政治あるいは各国の経済・金融政策の動向に大きな影響を受けざるを得ない。
 こうした環境において、当社グループは、2024年から2026年度をターゲットとした「中期経営計画2026」に取り組んでいる。

当連結会計年度の当社グループの経営成績は、(1)経営成績等の状況の概要に記載したとおりであるが、令和元年11月期以降前期まで損失を計上していたが、当期は黒字転換を果たした。繊維機械事業、工作機械関連事業共に利益を確保し、受注高は33,081百万円(前期 41,036百万円)、受注残高は12,926百万円(前期 16,290百万円)となった。売上高は36,445百万円(前期 39,278百万円)となった。損益面では、販売価格への転嫁や原価低減活動の取り組みにより、売上原価率は前期比3.7%改善し83.7%となった。販売費及び一般管理費は売上が減少し販売手数料や荷造運送費等の減少により前連結会計年度に比べ615百万円減少し5,534百万円となった。その結果、営業利益398百万円(前期 営業損失1,216百万円)となった。

営業外収益では、受取配当金、為替差益、補助金収入の計上等により98百万円となった。一方、営業外費用は、支払利息等により214百万円となった。特別利益では、政策保有株式の売却を進め、投資有価証券売却益の計上等により432百万円となった。特別損失では、固定資産処分損、減損損失等で31百万円となった。セグメント別では、繊維機械事業では、受注高は27,763百万円(前期 35,622百万円)、売上高は30,867百万円(前期 33,544百万円)、営業利益911百万円(前期 営業損失810百万円)となった。工作機械関連事業では、受注高は5,317百万円(前期 5,413百万円)、売上高は5,577百万円(前期 5,734百万円)、営業利益555百万円(前期 営業利益657百万円)となった。

 

財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,082百万円減少し30,252百万円となった。主な増減は、製品の減少等によるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ1,814百万円減少し27,404百万円となった。主な増減は、長期借入金の返済、仕入債務の減少等によるものである。純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益488百万円を計上したこと、退職給付に係る調整累計額が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ732百万円増加し2,848百万円となり、自己資本比率は8.98%となった。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、長期借入金の返済による支出等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上、投資有価証券の売却による収入等により、前連結会計年度末に比べ363百万円増加し2,907百万円となった。詳細については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りである。

当社グループの運転資金需要は主に、原材料及び部品等の購入費用、製造費、販売及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備である。
 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としている。
 運転資金は自己資金及び金融機関等からの借入により調達しており、設備投資資金は自己資金を充当している。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成している。この連結財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載されているとおりである。

連結財務諸表の作成にあたり、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられるさまざまな要因を考慮した見積りが含まれているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はない。

 

 

6 【研究開発活動】

研究開発については、世界市場での優位性を確保するため、引き続き多様化、高度化するマーケットニーズに応え戦略製品の開発に取り組んでいる。当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は1,267百万円である。

当連結会計年度における主な事業の研究開発活動は次のとおりである。

 

(1) 繊維機械事業

 繊維機械全般の研究開発テーマとして、「SDGs、省エネルギー、省資源、高生産性」を掲げ特徴のある製品を開発、市場投入し、顧客利益に繋げる活動を進めている。

最新機種として省エネ性能を向上させたエアジェットルーム「ZAX001neo Plus」を開発し製品化した。また同モデルのラインナップ展開を進めた。

ZAX001neo Plusは、従来モデルに比べ省エネ性能15%削減を達成した。緯糸を挿入するための空気消費量を削減する高効率ノズル等の装置や制御ソフトを新開発するとともに、織機駆動装置の高効率化により、織物生産ランニングコストを低減した。

ラインナップの展開には、高生産性、省エネルギーを特徴として、客先要求に応じた付加価値を加え、様々な織物・分野に対応した開発を行った。

経糸準備機械関連では、2021年に市場投入した新型スパンサイザー「TTS30S」にて高生産性・省資源を実現でき、顧客から高い評価を得ている。引き続きTTS30Sの製品ラインナップ拡充を進め、受注を伸ばしている。

また、フィラメント分野では、産業資材用に高付加価値を狙った高張力仕様を開発・市場投入し、生産品種の多様化に対応した。

ならびにガラス市場での販売拡大を狙い、ガラス用の一斉サイジング方式(スラッシャ・サイザ―)を開発・市場投入した。

当連結会計年度における当事業に係る研究開発費は934百万円である。

 

(2) 工作機械関連事業

主力製品であるNCロータリテーブルの新機種として、RWBシリーズの両面板仕様を追加した。また、ロータリジョイント等の標準オプションも準備し、スムーズな受注提案、短納期に貢献できる製品とした。本機種は両面板となり生産性アップに寄与する製品として北米などから多くの引き合いが集まっている。

2024年11月に行われたJIMTOF2024では、上記機種「RWB-320K,DF」を展示するとともに、実際の小型マシニングセンタに、旋削、位置決め両方の加工を行える、「TDB-200」を搭載して展示し、当社の技術力の高さを大いにアピール出来た。

新製品の商材として、JIMTOF2024では、ロボットを付帯した歯車用バリ取り機を出展した。また5軸バイスを搭載した円テーブルの活用としてワーク搬入から、加工、バリ取り、計測の一連の工程を想定したユニットも展示し、好評を得た。

発売中の小型加工機は仕様拡大としてATC搭載仕様を新たに開発し、製品化した。また、更なる顧客ニーズにこたえるため、傾斜2軸円テーブルの追加オプションも開発中である。

当社として今後は少子高齢化に伴う労働人口の縮小に対応すべく自動化、省人化への対応や高付加価値を資する設備装置などの研究・開発も加速させている。

当連結会計年度における当事業に係る研究開発費は333百万円である。