当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「社会貢献」「環境」「技術」を経営のキーワードとし、全ての人々の幸せのため、食糧の安定供給に寄与する安全で安心な農薬製品および産業活動を幅広く支えるファインケミカル製品を社会に提供していくことを企業理念としています。
この企業理念のもと、立案した事業計画を着実に実行することにより、持続的かつ安定的な成長を実現し、国内外の産業の発展と豊かな社会づくりに貢献します。また、取締役会を中心とした経営の自己規律のもと、企業価値の向上を図るとともに、社会に信頼される企業であり続けます。
(2)経営計画
当社グループは、2029年度をゴールとする長期経営計画(HOKKO Value Up Plan 2029)および2024年度を初年度とする第2次3ヵ年経営計画(2nd Stage)を策定しております。
『第2次3ヵ年経営計画(2024~2026年度)』の概要
① 計画の全体像
生産能力向上等の成長投資を基盤に、前計画から継続して取り組む3つの改革(収益構造改革、造り方改革、働き方改革)を柱として、収益基盤・生産基盤を強化に取り組んでおります。
また、各事業の成長戦略と次世代の成長領域を明確化・具体化し、農薬事業とファインケミカル事業を両輪とした経営をさらに進化していく方針です。
(※)3つの改革
・『収益構造改革』
「成長・財務基盤強化」を実現することで、安定的な売上高と収益を確保してまいります。
・『造り方改革』
「高効率化・省力化・環境対策」を強化し、高品質・高付加価値な製品を市場に提供してまいります。
・『働き方改革』
「業務効率化・人材育成」を重点課題として取り組み、全ての従業員が個性と能力を十分に発揮できる環境を整備してまいります。
② 経営目標
2nd Stage(第2次計画)では、成長投資に集中して取り組むなかで、2026年度経営目標の
達成を目指します。
(百万円)
③ 成長戦略
2nd Stage(第2次計画)において、成長投資に集中的に取り組む方針です。
(ア)成長投資
〇成長を牽引するファインケミカル事業の生産能力増強(樹脂、電子材料分野等)、サステナビリティ向上、次世代に向けた成長領域創出を主体として、成長分野への設備投資・投融資を進める。
・成長投資の実行に向け「戦略的設備投資・投融資枠100億円」を設定
・事業領域の拡大に向けたM&A・アライアンスの活用検討を加速し、投融資枠を機動的に増枠
○併せて、再評価・新製剤技術開発・新技術開発に向けた研究開発、人的資本投資拡充を加速する。
(イ)ゴール(2029年度)に向けたロードマップ
(ウ)サステナビリティ向上への取り組み
④ 株主還元
財務の健全性や成長投資とのバランスを図りつつ、安定した配当の継続を基本に株主還元の充実に努めていきます。
≪配当方針≫
本経営計画(2024~2026年度)において、累進配当を基本方針とし、利益の成長に応じた増配を目指す。
⑤ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(アップデート)
東京証券取引所からの要請を踏まえて策定した取組方針等により、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を推進しております。2025年1月に、2024年1月に公表した内容の進捗状況を分析したうえで、内容をアップデートしております。
注)上記の目標数値等は、本資料の発表日現在において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は今後の様々な要因によって異なる可能性があります。
(3)事業環境
〔農薬事業〕
国内販売におきましては、国内農薬市場が横ばいで推移する中で販売競争の激化が進んでいくものと予想され、園芸分野での販売拡大を目指すとともに、農薬市場の拡大傾向が続く海外販売におきまして、農薬登録取得国の拡大と合わせて、販売拡大を目指してまいります。
〔ファインケミカル事業〕
品質と価格の両面において顧客の要望が高度化する医薬・農薬分野や、自動車のエレクトロニクス化や新たな情報通信技術の進展等により拡大が見込まれる電子材料分野における開発競争、価格競争の激化、化学品に対する世界的な規制の強化が進んでおります。こうした中で、生産能力の増強や新技術の研究開発に努め、主要3分野(樹脂、電子材料、医農薬)の販売拡大を目指してまいります。
〔繊維資材事業〕
新規顧客、環境対応型繊維素材等の新商品開発による販路拡大を目指すとともに、当社グループ企業との営業面および内部体制面でのシナジー効果発揮にも注力してまいります。
(4)対処すべき課題
〔農薬事業〕
①農業の明日を見据えた製品開発とラインナップの強化
・省力化志向に対し、新たに投入した高拡散性粒剤“楽粒®”の普及拡大に努めてまいります。
・新規園芸剤の普及により、園芸剤シェアの向上を目指してまいります。
②付加価値の高い製品の拡大
・スマート農業(防除AI、ドローン散布等)に対応する新規製剤を開発し、その普及拡大に努めてまいります。
・環境負荷低減のため、少量・高濃度・低投薬量散布に対応する製剤技術を確立し、その製品化を実現してまいります。
③環境変化に対応できる人材育成
・進化する農業技術を習得し、実務に活用してまいります。
・専門知識の向上に努め、その共有化を図ってまいります。
・海外展開を支える人材を育成してまいります。
④海外市場への取り組み強化
・東南アジアへ普及拠点を拡大してまいります。
・イプフェンカルバゾン(水稲用除草剤)の登録国を拡大し、その普及推進に努めてまいります。
⑤グローバル化に対応した新規原体の創製
・海外におけるマーケットや農薬規制に関する情報を収集してまいります。
・研究開発活動の効率化を進め、海外市場への展開を目指した新規原体の創製に注力してまいります。
⑥生産設備の最適化による原価低減
・生産拠点の集約化を計画的に推進してまいります。
・設備の自動化・省力化を進めてまいります。
⑦「みどりの食料システム戦略」への対応
・政府が策定した持続可能な食料システムの実現を目指す「みどりの食料システム戦略」への対応を進めてまいります。
〔ファインケミカル事業〕
①付加価値の高い製品の拡大
・提案型受託業務を強化してまいります。
・カップリング反応における触媒配位子(リガンド)を充実してまいります。
・電子材料分野での製品成長期に合わせて、計画的な増産体制を構築してまいります。
・高機能設備を導入し、顧客ニーズへ対応してまいります。
・高度な分析機器を導入し、製品の品質を高めてまいります。
②設備の充実による生産能力の増強と原価低減
・半導体原料の増産のため、新工場(岡山工場 合成第10工場)の建設を開始し、2026年末の完工に向け進捗管理を行ってまいります。
・岡山工場のスマート化を推進してまいります。
・新工場の建設やスクラップ&ビルドにより、製造設備を効果的に配置してまいります。
③コア技術の深化と独自新製品の開発
・グリニャール反応工程の能力と品質の向上を目指してまいります。
・主要製品の原価低減、安全生産のためフロー合成技術を獲得してまいります。
・さまざまな金属種を利用した反応を開拓してまいります。
・自社製品(リン化合物)を活かした新しいコア技術を開発してまいります。
④海外市場への取り組み強化
・ホスフィン触媒配位子の需要を発掘し、シェア拡大に努めてまいります。
・海外展示会、学会等を利用し、製品と技術をPRしてまいります。
・海外展開を支える人材を育成してまいります。
⑤アライアンス等による新規ビジネスの創出
・アライアンス等も視野に入れた新規分野でのビジネス拡大してまいります。
⑥カーボンニュートラルへの取り組み
・カーボンニュートラルに向けて、より一層の省エネルギーの推進、再生油の有効活用、使用燃料の低炭素化(燃料転換)に努めてまいります。
〔繊維資材事業〕
①バリューチェーンの再構築
・中国など海外市場に日本製高付加価値製品を供給してまいります。
・輸入品の比率を増やし、売上・利益率の向上に努めてまいります。
・新規委託生産拠点の構築に注力してまいります。
・国内外で新規販売先を開拓してまいります。
②製品開発力・収益力の強化
・環境に配慮した商品を開発し、販売を強化してまいります。
・介護・防災関連商品を開発し、販売を強化してまいります。
・企業向け完成製品の開発・受注販売に注力してまいります。
③各事業グループとのシナジー効果の拡大
・農業従事者向け製品の開発に努めてまいります。
・繊維資材の専門知識を活かし、作業着、防保護具を供給することで収益の拡大に努めてまいります。
・繊維資材のサプライチェーンに防カビ剤等の使用を提案してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2029年をゴールとする経営計画「HOKKO Value Up Plan 2029」における第2次3ヵ年経営計画(2024~2026年度)において、「持続可能な社会の実現」と「持続的な企業価値向上」の好循環の実現に向けて、サステナビリティ向上への取り組みをより一層強化し、気候変動、人的資本等、各種取り組みを推進していきます。
■気候変動
気候変動対策は、当社グループにとって大変重要な課題であり、かつ早急な対応が求められる事項であります。気候変動に係るリスクと機会を把握し、持続的な企業価値の向上を目指すとともに、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおります。
(1)ガバナンス
当社では、社長を委員長とするサステナビリティ委員会において、気候変動に係るリスクと機会が自社の事業活動や収益等に与える影響についてデータ収集と分析、気候変動対策の基本方針や取り組みについて協議を行い、経営会議及び取締役会に報告しております。また、具体的な取り組みを検討するため、サステナビリティ委員会の中に「レスポンシブル・ケア部会」と「全社省エネルギー部会」を設置しております。レスポンシブル・ケア部会では、レスポンシブル・ケアに関する取組方針、全社目標の策定について協議を行い、全社省エネルギー部会では、省エネルギーに関する取組方針、中長期的な目標、設備投資計画の策定、全社のエネルギー使用状況の把握と改善策、カーボンニュートラルに向けた取り組み等について協議を行っております。
(2)戦略
気候変動は、長期的で不確実性の高い事象であることから、TCFD提言においてはシナリオ分析を実施することを求めています。当社では、気候変動による当社のリスクと機会について、脱炭素社会への移行が実現する「1.5℃、2℃シナリオ」と、気候変動が進展する「4℃シナリオ」に基づいて抽出しました。
影響が大きいと考えられるリスクとして、脱炭素に向けた政策への対応や自社製品の低炭素化の遅れ、原材料・エネルギーコストの増加、環境配慮要請の高まりによる化学農薬への影響、気温・降水量の変化に伴う農業環境の変化による農薬需要低下などを認識しています。
一方、リスクに対して適切に対応することにより競争力が増すと考えており、機会として、低炭素製品の市場への投入に伴う競争力・評判の向上や環境配慮要請の高まりによる天然物由来農薬や省力化製剤等の需要増加、農業環境の変化に対するソリューション需要の拡大などを認識しています。また、世界的な人口の増加に伴う農作物の生産拡大は当社製品の需要を高め、気候変動の影響によりこれをさらに高める可能性があると考えています。
当社では今後、これらのリスクと機会について、具体的な対応策等の検討を行ってまいります。
○気候変動に関する当社の主なリスクと機会
種別 |
項目 |
影響度 |
内容 |
|
リスク |
移行 |
国の脱炭素に係る政策の推進 |
中 |
・炭素税や排出量取引制度、報告の義務化等により対応コストが増加 |
自社製品の低炭素化の遅れ |
大 |
・低炭素製品の選択という、顧客の意識・行動の変化により、競争力・評判が低下 |
||
低炭素化に向けた設備・技術への投資増加 |
中 |
・自社製品の低炭素化のための設備や技術開発等に対する投資が増加 |
||
原材料価格、エネルギーコストの上昇 |
大 |
・バリューチェーンの低炭素化の推進に伴い、原材料の調達、自社の操業、製品の輸送に係るコストが増加 |
||
環境配慮要請の高まりによる化学農薬への影響 |
大 |
・脱炭素化など環境負荷軽減の観点から、化学農薬使用の低減要請により、販売量が減少 |
||
物理 |
水害の激甚化、発生頻度の増加 |
中 |
・操業停止や製品の発送途絶、これらによる評判の低下
・施設・設備に対する対策費や修復費の増加 |
|
気温・降雨量の変化に伴う農業環境の変化 |
大 |
・収量減少や作付け農作物の変更、対象とする病害虫やその抵抗性の変化に伴う当社製品の需要低下 |
||
機会 |
移行 |
低炭素製品の市場への投入に伴う競争力・評判の向上 |
大 |
・低炭素製品の技術開発に成功し、競争力・評判が向上 |
電気エネルギー関連製品の需要増加 |
中 |
・電池材料、光電変換材料等、電気エネルギーに関連する当社製品の需要向上 |
||
環境配慮要請の高まりによる天然物由来農薬や省力化製剤等の需要増加 |
大 |
・環境配慮ニーズに合致した当社製品の競争力向上 |
||
生産や輸送の高効率化 |
中 |
・エネルギーコストの削減、GHG排出量削減 |
||
物理 |
農業環境の変化に対するソリューション需要の増加 |
大 |
・バイオスティミュラント製品など新規製品の開発 ・当社の幅広い製品構成により、病虫害等の変化に対応 |
|
農作物生産量の増加に伴う製品需要の増加 |
大 |
・世界的な人口増加に伴う農作物の生産拡大は当社製品の需要を高め、気候変動の影響はこれをさらに高める可能性 |
(3)リスク管理
当社では、リスクを総合的に管理するために「リスク管理規程」を定めており、経営リスク全般については企画管理グループ担当役員が総合的に管理し、各事業グループのリスクについては、各事業グループ担当役員等がリスクの把握、管理、対応にあたっています。
気候変動に関するリスクは、重要な課題(マテリアリティ)であることから、リスク管理規程において経営リスクの一つとして明示するとともに、迅速にリスクの把握、管理、対応を行える体制を構築しています。
気候変動に関するリスクについては、サステナビリティ委員会において、把握、管理、対応を行っており、その内容については、経営会議で審議し、取締役会に報告する体制になっております。
(4)指標及び目標
2023年度(2022年12月~2023年11月)における当社グループの温室効果ガス排出量は、Scope1(直接排出)は17,940 t-CO2e、Scope2(間接排出)は25,892 t-CO2eでした。
当社では、政府が掲げる2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、単体のScope1、2の排出量について、2013年度比で「2030年度22%削減」の目標を設定しました。
温室効果ガスのさらなる削減のための取り組みを検討し、実施してまいります。
〇GHG排出量の実績
範囲 |
項目 |
単位 |
2013年度 |
2023年度 |
単体 |
Scope1 |
t-CO2e |
19,513 |
17,626 |
Scope2 |
t-CO2e |
15,151 |
14,012 |
|
Scope1+2 |
t-CO2e |
34,664 |
31,638 |
|
グループ |
Scope1 |
t-CO2e |
|
|
Scope2 |
t-CO2e |
|
|
|
Scope1+2 |
t-CO2e |
|
|
〇気候関連目標
指標 |
範囲 |
目標 |
GHG総排出量 (Scope1+2) |
単体 |
2030年度 22%削減(2013年度比) 2050年度 カーボンニュートラル達成 |
■人的資本
事業を支える源は社員であるとの考えのもと、「新たな分野にチャレンジする人材の育成」及び「社員が活躍できる職場づくり」を、人材面における当社グループの重要課題と位置づけております。
(1)ガバナンス
人材育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は、「当社が求める人材の育成、人材の多様性の確保、人材が成長できる環境の整備」を推進するための指針として、外部の専門機関の助言等を得ながら、経営会議の審議及び取締役会の決議に基づき策定しております。
(2)戦略
①人材育成方針
当社グループが今後も持続的な成長を遂げるためには、中長期的な戦略に沿った人材の育成が不可欠であるとの考えのもと、新入社員から管理職に至るまでの階層に合わせた階層別研修をはじめ、従業員の職務や役職において必要とされる人材に育成するための各種教育研修制度を導入しております。また、自己啓発プログラムを準備して従業員の能力開発を支援するとともに、ビジネスに直接・間接的に関連する資格取得や通信研修受講を奨励・助成しております。これらの体系的な教育研修体制の整備により、国内外の各拠点を支える従業員の継続的な能力開発を可能にしております。
番号 |
取組事項 |
具体的内容および実施状況 |
(a) |
階層別研修 |
2024年度は新入社員研修、入社1年目~3年目研修、若手社員研修、リーダー研修、新任管理職研修の各研修を実施しています。2025年度も年間教育計画に基づき、同様の研修を実施または実施予定としております。 |
(b) |
リーダーシップ/ マネジメントスキル育成 |
リーダー職や管理職としての役割遂行に必要な能力やスキルを特定し、外部教育機関による研修を活用してリーダーシップやマネジメントスキルを習得する機会を提供しております。 |
(c) |
職能別育成研修 |
当社従業員に必要とされる能力やスキルを特定し、年間教育計画を基に本社人事部が育成研修を企画運営しております。また、各部門で必要な知識を得るための研修は、本社人事部の支援の元で各部門において企画運営しております。 |
(d) |
自己啓発プログラム |
従業員が自ら学び能力開発する場を提供するため、外部教育機関を活用し、各人で選択可能な自己啓発プログラムを提供しております。 |
(e) |
資格取得・通信教育 |
ビジネスに直接・間接的に関連し、従業員のスキルアップにつながる資格取得や通信教育受講を奨励するとともに、資格取得や通信教育受講に伴う助成を進めて自ら学ぶ環境を提供しております。 |
(f) |
OJT制度 |
技術と経験を有する社員が、若手社員の指導育成を担当することで、社内で受け継がれてきたノウハウを伝承しており、今後とも熟練社員の技術の継承、知識の共有に努めてまいります。 |
②社内環境整備方針
すべての従業員が持ち前の個性と能力を十分に発揮できるためには、当社グループが規定する「コンプライアンス基本方針」及び「北興化学工業グループ行動規範」に基づいて、あらゆる人格、人権や個性を尊重し、職場におけるハラスメントなど不当な扱いの防止に努めるとともに、従業員にとって健康・安全かつ働きやすい職場環境を整えることが不可欠であると考えております。そのため従業員のライフステージやライフスタイルに応じて選択できる様々な働き方を提供しております。また、グローバルな事業展開にあたり、多様な人材が活躍できる体制を整備しております。
(ア)ダイバーシティ経営の推進
当社は海外に複数の拠点を有し、グローバルに事業展開をする企業であることから、企業の発展には多種多様なバックグラウンドを有する人材の活躍が必須となっております。そのため、例えば中核人材における女性活躍の推進、多様な人材の採用と登用、高年齢者雇用制度の整備等をはじめとした各種施策を実施してまいります。また化学メーカーとして、高い研究開発力及び技術力が求められる中、博士課程修了者から高等学校卒業者まで幅広く人材を募り採用していることも、当社の特長となっております。多様な人材の活躍の観点から、障がいのある方が安心安全に働くことを可能にする環境づくりにも取り組んでまいります。
番号 |
取組事項 |
具体的内容および実施状況 |
(a) |
女性活躍推進 |
2025年度までに採用者に占める女性割合を20%以上とすることを目標に広報活動の強化などに努めております。また、女性管理職候補の育成や女性の管理職登用を進めてまいります。 |
(b) |
多様な人材の 採用と登用 |
事業を展開している国にて、現地での採用とともに能力に応じた登用の仕組みを構築しております。 |
(c) |
高年齢者雇用 |
60歳の定年後65歳までは、原則として希望者全員をシニアパートナーとして引き続き雇用しております。 |
(d) |
障がい者雇用 |
障がいのある方が安心安全に働くことができる環境づくりを進めるとともに、多様な個性を活かして働くことができる職場づくりを進めてまいります。 |
(イ)ワークライフバランス
ワークライフバランスの実現には、社員が働きやすいと実感できる、風通しの良い職場環境づくりが大切だと当社は考えます。女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法に基づく諸制度を通じて、ワークライフバランスの実現を目指しております。また、働き方の見直しを多方面から進めることで、社員一人ひとりの生産性向上を図り、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得率向上につなげてまいります。
番号 |
取組事項 |
具体的内容および実施状況 |
(a) |
育児介護休業 |
従業員に対して男性育休をはじめとした育児介護休業法に基づく各種施策を周知することで育児介護休業を取得しやすい環境を整備しております。 |
(b) |
計画的有給休暇取得 |
2025年度までに正社員における年次有給休暇取得率を60%以上とすることを目標に半日有給休暇、時間単位有給休暇や計画有給休暇などの施策を導入しております。 |
(c) |
テレワーク |
ワークライフバランス実現のため、テレワークを実施できる環境を整備しております。 |
(d) |
デジタル化対応 |
会議や就業・採用関連におけるデジタル化対応を進め、業務効率化と生産性向上を推進しております。 |
(ウ)健康経営の推進
従業員とその家族の健康保持・増進に組織全体で取り組んでいくことをHOKKO健康経営宣言において宣言し、その実現に向けた活動を展開しております。生活習慣病予防・メンタルヘルス対策・喫煙対策・感染症予防を健康づくりのテーマに掲げ、医療保険者や外部機関と連携し、サポート体制の充実を図りながら、各テーマに関連する数値目標を設定し、2025年度までの達成を目指しております。これらの取り組みにより、2023年3月に、当社は健康経営優良法人に認定されました。
番号 |
取組事項 |
具体的内容および実施状況 |
(a) |
生活習慣病 予防 |
生活習慣病高リスク者に対する特定保健指導の勧奨に取り組んでおります。取り組みにより、健康診断受診率100%を毎年継続しております。 |
(b) |
メンタルヘルス 対策 |
メンタルヘルス不調に対する周囲の理解と組織的な対応を可能とするためにEラーニングによる教育を実施しております。メンタルヘルス不調者が発生した場合は関係部署と人事部が連携し、状況に応じた復帰支援を実施しております。 |
(c) |
喫煙対策 |
喫煙者に対して喫煙外来の受診勧奨及び受診料補助を実施しており、喫煙者数10%削減を目標として設定しております。 |
(d) |
感染症予防 |
従業員の季節性インフルエンザ・ワクチン予防接種費用を会社が全額負担しております。 |
(エ)労働安全衛生の確保
化学メーカーとして「レスポンシブル・ケア」に長年取り組んでおり、安全操業、労働災害撲滅を最優先課題として、自主的な安全衛生活動を推進し、安全で働きやすい職場環境づくりを進めております。労働安全衛生活動推進においては、「レスポンシブル・ケア部会」を設置し、危険予知(KY)活動、5S活動など様々な取り組みを進めるとともに、国際規格ISO45001を全工場で認証取得し、継続的な改善を図っております。
番号 |
取組事項 |
具体的内容および実施状況 |
(a) |
雇い入れ時の安全衛生教育 |
新卒採用、中途採用に関わらず、入社時に雇い入れ時の安全衛生教育を実施しております。 |
(b) |
安全衛生教育 |
安全に対する基本的な考え方、化学物質の安全な取り扱いなど業務に必要な安全衛生知識について、教育を実施するとともに、業務上必要な資格の取得推進を図っております。 |
(オ)コンプライアンス
社会に信頼され続け、将来にわたって持続的に成長していく企業であるためには従業員一人ひとりにおけるコンプライアンスの徹底が欠かせないと考えております。そのため、「コンプライアンス基本方針」および「北興化学工業グループ行動規範」に基づいた、コンプライアンス教育を通じて、従業員には規範に基づいた行動を徹底するとともに、従業員一人ひとりが安心して働くことができる職場環境を実現しております。社内外に内部通報窓口を設け、匿名でも報告・相談ができる体制を整えております。また、内部通報者のプライバシー保護、不利益な取り扱いの禁止を社内規程で厳格に規定し、実効性の向上を図っております。
番号 |
取組事項 |
具体的内容および実施状況 |
(a) |
コンプライアンス教育 |
毎年9月をコンプライアンス月間として全役職員に研修を実施しております。経営幹部に対しては、年2回コンプライアンス研修を実施しております。また、階層別研修や管理職研修においても、ハラスメント防止などの教育を実施しております。このほかに、コンプライアンスに関する知識や情報をイントラネットで発信し、アンケート調査を実施しております。 |
(3)リスク管理
人材育成および社内環境整備に関するリスクについては、リスクを総合的に管理するために定めている「リスク管理規程」に従って、原則、毎年リスクの洗い出しを行い、リスクを特定し、影響を評価することで、リスクの把握、管理、対応にあたっており、企画管理グループ担当役員が総合的に管理し、その内容は経営会議で審議し、取締役会に報告しております。
(4)指標及び目標
現時点での女性管理職比率は3.9%であり、新卒採用の女性比率向上をはじめとした様々な施策により、管理職の比率向上を目指しております。
当社グループは、人材育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に従い、すべての従業員が互いに協調し、成長し、やりがいを常に感じられる環境で働くことで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
なお、指標に関する目標は連結グループにおける記載が困難であるため、提出会社のものを記載しております。
当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす主要なリスクには以下のようなものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
1.農薬製品販売に対する諸条件の影響
当社グループは、農薬事業とファインケミカル事業を収益確保の主な柱として事業展開していますが、農薬製品の販売は、農業政策の変化、市場動向、天候、病害虫の発生状況等によって影響を受けます。特に、気候変動を含めて予期せぬ急激で大きな変動が生じた場合には、当社グループの事業が大きな影響を受ける可能性があります。
2.急速な技術革新による影響
ファインケミカル製品の市場は、新規企業の市場参入や、廉価製品あるいは新規商品の台頭などにより、価格競争にさらされております。当社グループでは、得意とするグリニャール反応を活用し、顧客のニーズに合わせた付加価値の高い製品を市場に提供しておりますが、想定外の技術革新や急激な市場変化に適切に対応できなかった場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
3.原材料の調達による影響
当社グループで製造している製品の原材料等の調達(購入価格を含む)は、国内外の状況、並びに原油、ナフサ価格などの動向等の影響を受けます。
これに対し、当社グループは、調達ルートの多様化、販売価格の改定などを推進しておりますが、購入先における法規制の強化や、故障・事故・サプライチェーンの混乱等の支障が生じた場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
4.為替レートの変動による影響
当社グループは、中国に設立した子会社でファインケミカル製品の一部を生産しており、連結決算における財務諸表項目の円換算額は為替相場に左右されますので、大きな為替相場の変動が生じた場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。また、当社グループと海外との取引は、主として外貨建てで行っております。為替予約や外貨建ての債権債務による一部ヘッジを行っておりますが、大きな為替相場の変動が生じた場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
5.中国現地法人の影響
当社グループの中国現地法人は、中国国内での法規制の変更や社会情勢の変化などに影響を受けます。これに対し当社グループは、積極的な情報収集に努め、中国の政策に合致した対応や環境負荷低減のための設備投資等を行っておりますが、予想の範囲を超える大きな法改正や経済・社会情勢の変化があった場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
6.新製品の開発による影響
新製品の開発には、多大な人的・経済的資源と長期にわたる時間を必要とします。開発期間中の市場環境の変化、技術の進歩等により、新製品の開発可否判断、開発後の収益計画が影響を受ける可能性があります。これに対し当社グループは、研究・検査体制の充実による開発のスピードアップ、定期的な市場動向の調査、収益試算の検証等により対応しておりますが、新製品の開発が著しく遅延した場合には、または困難となった場合には、競争力が低下し、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
7.予期せぬ事故等の発生による影響
当社グループは、厳格な原材料の受入検査、製品の品質管理、定期的な設備の整備点検等を実施し、国際基準に基づく品質マネジメントシステム(ISO9001)、環境マネジメントシステム(ISO14001)、労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)により操業、運営しておりますが、事故、自然災害等のトラブルで操業停止、生産供給不足、品質異常、製品の保管条件の悪化などの不測の事態が発生する可能性があります。また、事故等による工場および工場周辺の物的・人的被害を完全に回避することはできません。製造物にかかる賠償責任については保険(PL保険)に加入しておりますが、すべてをカバーすることは困難であります。
当社グループは、法令および諸規則に適合した製品を製造・販売しておりますが、品質問題や副次的に発生する環境問題、社会問題等を起こした場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
また、想定される災害毎に事業継続計画(BCP)を作成し、速やかな事業復旧のための訓練を行っておりますが、想定外の災害が発生した場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
8.法規制等への対応による影響
当社グループは、日本国内における農薬取締法、製造物責任法、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)、PRTR(化学物質排出移動量届出制度)、環境に関する諸法規等の法規制、また、事業展開中の諸外国におけるさまざまな法規制等のもとで事業活動を行っております。当社グループは、コンプライアンス基本方針、北興化学工業グループ行動規範を定め、法令遵守の姿勢を明確にし、社会に信頼される企業として行動しております。また常に関係法令の動向を確認し、最新の法規制を理解して事業活動を行っておりますが、法規制の大幅な改正によりその遵守のために多額の費用が発生した場合や事業活動が制限された場合には、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
9.新型コロナウイルス感染症等による影響
当社グループは、新型コロナウイルス等感染防止のため、国や自治体の指針に則り適時、感染症対策を実施しておりますが、感染症の蔓延状況によっては、原材料の調達などの生産活動への支障や経済全体の低迷に伴う需要の減少により、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
10.知的財産権の侵害による影響
当社グループは、製品開発や製造の過程において、多くの技術やノウハウを蓄積しております。それらの保護のため、積極的な知的財産権の取得に取り組んでおりますが、海外においては、知的財産権の保護が不十分な国があり、当社グループの知的財産権が第三者により侵害される可能性があります。
また、当社グループでは他社の知的財産権を侵害しないように開発・製造を進めておりますが、他社から知的財産権の侵害を訴えられ、差し止めや多額の損害賠償により、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
11.情報漏洩による影響
当社グループは、事業活動を通じて取引先の個人情報や当社グループの営業機密等、多くの情報資産を保有しております。それらの情報管理については、全役職員に対する情報セキュリティ教育の実施、サイバー攻撃に対応するソフトやメール誤送信防止システムの導入等の対策を講じておりますが、高度化するサイバー攻撃や不測の事情による情報漏洩により、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、社会経済活動の正常化が一段と進み、インバウンド需要の回復などから、緩やかな回復が続きました。
景気の先行きについて、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や、中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっており、物価上昇、アメリカの今後の政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
国内農業では、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作面積の減少や耕作放棄地の増加など依然として厳しい状況にあります。このような状況下において政府は、「食料・農業・農村基本法」の一部を改正し、食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農業の持続的な発展、農村の振興を図る取り組みを推進しております。一方、海外では、世界的な人口の増加や新興国経済の成長を背景として農作物需要の拡大基調が今後も続くと予想されます。
ファインケミカル業界では、半導体市場において緩やかな需要の回復が続くと見通されており、グローバル半導体メーカーによる大規模生産工場の建設など、今後も継続的に成長することが期待されます。また、石油化学分野は、日用品の値上げの影響等による内需の落ち込みに加え、グローバルな需要低迷が続いております。
繊維業界では、輸送費や燃料、原材料等が高止まりし、為替レートの円安基調が続き、原材料仕入価格に影響を及ぼしました。また、物価高を背景に衣料品の需要に慎重さが見られます。政府は「2030年に向けた繊維産業の展望」等を公表し、新たなビジネスモデルの創造、技術開発による市場創出、海外展開による市場獲得、サステナビリティの推進、デジタル化の加速を進めております。
このような状況のもと、当社グループは、2024年度を初年度とする第2次3ヵ年経営計画(2nd Stage)において、生産能力向上等の成長投資を基盤に、前計画から継続して取り組む3つの改革(収益構造改革、造り方改革、働き方改革)を柱として、収益基盤・生産基盤の強化に取り組んでおります。また、各事業の成長戦略と次世代の成長領域を明確化・具体化し、農薬事業とファインケミカル事業を両輪とした経営をさらに進化していく方針です。
当連結会計年度における当社グループの売上高は、農薬事業における販売が順調に推移したことなどから、46,195百万円、前連結会計年度比968百万円(2.1%)の増収となりました。
利益面では、農薬事業における売上高の増加等により、営業利益は、4,540百万円、前連結会計年度比123百万円(2.8%)の増加となりました。また、経常利益は、受取配当金の増加等により、5,691百万円、前連結会計年度比217百万円(4.0%)の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、有価証券売却益の計上および税金費用の減少により、4,006百万円、前連結会計年度比282百万円(7.6%)の増加となりました。
セグメントの概況については以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
2023年11月期 |
2024年11月期 |
前年同期比 |
|||
売上高 |
営業利益 |
売上高 |
営業利益 |
売上高 (増減率) |
営業利益 (増減率) |
|
農薬事業 |
25,931 |
65 |
26,658 |
405 |
727 (2.8%) |
340 (527.5%) |
ファインケミカル事業 |
17,470 |
4,269 |
17,607 |
4,060 |
137 (0.8%) |
△210 (△4.9%) |
繊維資材事業 |
1,813 |
93 |
1,919 |
89 |
105 (5.8%) |
△4 (△4.8%) |
その他 |
13 |
△10 |
12 |
△13 |
△1 (△7.3%) |
△3 (△26.5%) |
計 |
45,227 |
4,417 |
46,195 |
4,540 |
968 (2.1%) |
123 (2.8%) |
〔農薬事業〕
農薬事業の売上高は、国内販売が水稲剤、園芸剤ともに堅調に推移したことや、海外販売がブラジル・インド向けを中心に増加したことに加えて円安も寄与したことから、26,658百万円、前連結会計年度比727百万円(2.8%)の増収となりました。営業利益は、売上高の増加等により、405百万円、前連結会計年度比340百万円(527.5%)の増加となりました。
〔ファインケミカル事業〕
ファインケミカル事業の売上高は、取引先の需要変動により医農薬分野が減少したものの、電子材料分野が伸長したことや中国子会社における中国国内販売が増加したことから、17,607百万円、前連結会計年度比137百万円(0.8%)の増収となりました。営業利益は、中国子会社の主力品目である石化用触媒(TPP)の価格競争の影響や物流費の増加等により、4,060百万円、前連結会計年度比210百万円(4.9%)の減少となりました。
〔繊維資材事業〕
繊維資材事業の売上高は、産業用繊維素材の販売増加により、1,919百万円、前連結会計年度比105百万円(5.8%)の増収となりました。営業利益は、販管費の増加により、89百万円、前連結会計年度比4百万円(4.8%)の減少となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産の残高は65,322百万円となり、前連結会計年度比2,157百万円の減少となりました。内訳として、商品及び製品、投資有価証券が減少しております。
負債の残高は19,124百万円となり、前連結会計年度比1,585百万円の減少となりました。内訳として、支払手形及び買掛金、未払消費税等、繰延税金負債が減少しております。
純資産の残高は46,198百万円となり、前連結会計年度比572百万円の減少となりました。
以上の結果、自己資本比率は70.7%となり、前連結会計年度の69.3%から1.4ポイント向上しました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、法人税等の支払、有形固定資産の取得による支出等の要因により一部相殺されたものの、税金等調整前当期純利益5,560百万円等の増加により、前連結会計年度末に比べ3,079百万円増加し、当連結会計年度末は9,707百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は、6,073百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上5,560百万円、および棚卸資産の減少486百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、1,310百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得1,255百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は、1,771百万円となりました。これは主に、自己株式取得目的の金銭の信託の設定による支出1,013百万円、配当金の支払757百万円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬事業 |
14,278 |
90.1% |
ファインケミカル事業 |
9,905 |
98.3% |
合計 |
24,182 |
93.3% |
(注)1.金額は、製品製造原価で表示しております。
2.繊維資材事業及びその他につきましては、生産実績がないため記載を省略しております。
2)商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬事業 |
5,545 |
103.2% |
ファインケミカル事業 |
1,882 |
111.0% |
繊維資材事業 |
1,670 |
105.0% |
その他 |
5 |
78.5% |
合計 |
9,103 |
105.1% |
(注)金額は、実際仕入額で表示しております。
3)受注実績
当社グループは、受注生産の規模は小さいため、受注実績は記載しておりません。
4)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬事業 |
26,658 |
102.8% |
ファインケミカル事業 |
17,607 |
100.8% |
繊維資材事業 |
1,919 |
105.8% |
その他 |
12 |
92.7% |
合計 |
46,195 |
102.1% |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) |
||
金額 (百万円) |
割合(%) |
金額 (百万円) |
割合(%) |
|
全国農業協同組合連合会 |
17,711 |
39.2 |
18,548 |
40.2 |
信越化学工業株式会社 |
6,801 |
15.0 |
7,151 |
15.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの売上高は、農薬事業における販売が順調に推移したことなどから、46,195百万円、前連結会計年度比968百万円(2.1%)の増収となりました。
利益面では、農薬事業における売上高の増加等により、営業利益は、4,540百万円、前連結会計年度比123百万円(2.8%)の増加となりました。また、経常利益は、受取配当金の増加等により、5,691百万円、前連結会計年度比217百万円(4.0%)の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、有価証券売却益の計上および税金費用の減少により、4,006百万円、前連結会計年度比282百万円(7.6%)の増加となりました。
事業別の状況は以下のとおりです。
〔農薬事業〕
農薬製品の売上高は、国内販売が水稲剤においては水稲用育苗箱ならびに除草剤が堅調に推移し、園芸剤においては特に除草剤が伸長したことや、海外販売がブラジル・インド向けを中心に増加したことに加えて円安も寄与したことから、26,658百万円、前連結会計年度比727百万円(2.8%)の増収となりました。営業利益は、売上高の増加等により、405百万円、前連結会計年度比340百万円(527.5%)の増加となりました。
〔ファインケミカル事業〕
ファインケミカル製品の売上高は、取引先の需要変動により医農薬分野が減少したものの、電子材料分野におけるフォトレジスト用のモノマー原料や樹脂分野における石化用触媒が伸長したことや、中国子会社における中国国内販売が増加したことから、17,607百万円、前連結会計年度比137百万円(0.8%)の増収となりました。営業利益は、中国子会社の主力品目である石化用触媒(TPP)の価格競争の影響や物流費の増加等により、4,060百万円、前連結会計年度比210百万円(4.9%)の減少となりました。
<ファインケミカル製品の主な用途>
〇医農薬分野
・医薬、農薬原料および中間体
〇電子材料分野
・半導体封止剤用の硬化促進剤(CPU、メモリー 等)
・フォトレジスト用のモノマー原料
〇樹脂分野
・石化用触媒(主にTPP)
・その他樹脂用料(塗料、コーティング剤 等)
〇その他
・食品飼料(TPP:ビタミンA、ベータカロチン用途 等)、
防汚剤、エネルギー 等
〔繊維資材事業〕
繊維資材事業の売上高は、産業用繊維素材の販売増加により、1,919百万円、前連結会計年度比105百万円(5.8%)の増収となりました。営業利益は、販管費の増加により、89百万円、前連結会計年度比4百万円(4.8%)の減少となりました。
②当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、原材料調達や価格の動向、市場
動向、為替動向、国内外の法令及び政治・経済動向等があります。
資材調達につきましては、調達ルートの多様化、調達方法の高度化を推進しております。
市場動向、顧客ニーズの変化につきましては以下のとおりです。
農薬事業においては、国内生産者の高齢化による耕作地減少や新興国を中心とした購買力増大
による海外市場拡大等を踏まえ、付加価値の高い製品開発とラインナップの強化、グローバル化
に対応した新原体の創製に取り組んでまいります。
ファインケミカル事業においては、顧客要求の高度化・多様化やファブレス化の進展に伴う受
託機会の増加傾向等を踏まえ、コア技術のさらなる進化と独自製品の開発、アライアンス等によ
る新規ビジネス創出に取り組んでまいります。
国内外の法令や政治・経済動向等につきましては、企画部を中心に、情報を入手するととも
に、海外子会社及び関係会社と連携・情報共有を図ることで対応を行っております。
なお、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える主要なリスクにつきまして
は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
③財政状態の状況
財政状態の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
④キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要のうち主なものは、新剤開発・登録等にかかる研究開発費や生産設備の増強及び生産効率化に係る設備投資であり、これらは主に自己資金並びに金融機関からの借入金により調達しております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は9,707百万円であり、資金の流動性を確保しております。
⑥重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
⑦経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、売上高、経常利益、ROE、ROIC、自己資本比率を重要な経営指標と認識し、目標を設定しています。
当該数値目標については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)「経営計画」に記載のとおりです。
当連結会計年度の売上高は46,195百万円、経常利益は5,691百万円、ROEは8.6%、ROICは6.3%、自己資本比率は70.7%となりました。
提出会社
契約締結先 |
契約内容 |
契約締結年月日 |
有効期間 |
全国農業協同組合連合会 |
農薬製品の売買に関する売買基本契約 |
平成16年3月2日 |
平成15年10月1日から平成16年11月30日までとする。ただし、期間満了の1か月前までに甲・乙いずれからも文書による別段の意思表示がないときは、さらに1年間延長するものとし、以後これに準じ延長できるものとする。 |
契約締結先 |
契約内容 |
契約締結年月日 |
有効期間 |
全国農業協同組合連合会 |
令和6年度の農薬の売買価格等を定めた契約 |
令和6年1月29日 |
令和5年12月1日から令和6年11月30日出荷分とする。 |
新製品の研究開発につきましては、自社独自品の研究開発を重点的に推進するとともに、市場の変化と新しいニーズに対応できる高い商品性と競争力のある新製品の開発・導入に努め、商品の品揃えと品目構成の拡充強化をはかっております。
なお、当連結会計年度の研究開発費は、
(1)農薬事業
農薬事業では、新製品の研究開発に鋭意努め、水稲用除草剤において当社独自の省力・高拡散性製剤“楽粒”のさらなる開発に重点的に取り組み、「カクシン楽粒」が新規に農薬登録され、楽粒シリーズは、計6製品がラインアップされました。
なお、当事業に係る研究開発費は、
(2)ファインケミカル事業
ファインケミカル事業では、付加価値の高い製品開発のために電子材料原料、医農薬中間体、有機合成触媒、高機能性無機素材などの製品開発を行っております。
なお、当事業に係る研究開発費は、