第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、野菜苗生産をコア事業として取り組み「良い苗をいつでも・どこでも・いくらでも」の経営方針の基、使いやすさ、環境への配慮、お客様一人ひとりにあった苗づくりを目指し、閉鎖型育苗施設などの新設設備による安定した生産体制と全国各地のパートナー農場との連携により事業展開を拡大してまいりました。そして、当社グループのフィールドは、野菜苗の枠組みを超え、ITを活用した農業やロボット開発、種や培土などの農業資材等の新商品開発、家庭園芸を楽しむ個人のお客様へのサービス拡充を行い、さらには、アジアを中心とした世界市場へ向けて進み始めています。全ては「人々の食と暮らしを豊かにするために」日本から世界の農業に革命を興すことができる企業を目指し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループでは、企業理念「日本の農業に革命を」の基、10年後の2033年へ向けた、新たな中期経営計画を策定いたしました。苗事業を基盤に、農資材と新製品・技術で事業の拡大を目指し、10年後の2033年に向けてマインド転換へ挑戦することにより、量から質、売上から利益、農業から製造業へ取り組んでまいります。

 2024年10月期は、苗事業において、安定的な生産・販売体制の構築と更なる供給体制の整備を行うと共に、生産計画及び生産効率の改善による製造コストの削減に取り組み、安定した収益基盤を強化してまいります。

そして、「人々の食と暮らしを豊かに」をテーマに、苗事業から周辺領域へ深化させたフードバリューチェーンの構築に挑戦し続けることにより、持続可能な発展と事業拡大に努めてまいります。

2024年10月期の連結業績見通しにつきましては、売上高は7,100百万円(前期比0.5%増)、営業利益90百万円(前期比17.5%増)、経常利益98百万円(前期比8.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益77百万円(前期比1.3%減)と見込んでおります。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

 当社グループは、2020年10月期から2022年10月期において、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響やコロナ禍における生産体制に合わせた人財確保、新規事業への取り組みに向けて人財を確保したことなどにより製造経費及び販売費及び一般管理費が増加してまいりました。また、2022年10月期は、原油価格高騰に伴う重油や電気料金の値上げ、培土や肥料等の値上げによる製造経費の増加、ベルグ福島株式会社における植物ワクチン研究開発開始に伴う初期投資の増加等も影響し、3期連続して営業損失を計上しておりました。

 2023年10月期は、労務費の増加や原材料費の値上げによる製造原価の増加はあったものの、適正価格へ見直しが進んだことに加え、オリジナル製品の売上増加や伊予農産株式会社との経営統合により農資材の売上が増加し購買力が強化されたことなどにより収益が改善し、営業利益を計上いたしました。

当社グループは、次期中期経営計画を策定し2024年から2028年をマインド転換への挑戦の時期とし「量から質へ、売上から利益へ、農業から製造業へ」をテーマに掲げ、10年後に次のステップへ飛躍的に成長できるベルグアースグループを目指してまいります。

≪ベルグアースグループ成長戦略項目≫

 戦略1:苗事業の更なる拡大と収益力強化

 戦略2:苗事業を起点とした事業領域の拡大

 戦略3:新製品・新技術の開発

 戦略4:事業インフラ強化

 

 当社グループは、4つの戦略を具体的に一つ一つ着実に実行することにより、更なる収益力の回復と経営基盤の安定化に向けて努めてまいります。そして、苗事業から周辺事業へ深化させフードバリューチェーンを構築することで、経営理念である「日本の農業の為になる、役に立つ会社になる事で、農業に革命を興します。ひいてはそれが人々の食と暮らしを豊かにさせます。」を実現いたします。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「日本農業の為になる、役に立つ会社になることで、農業に革命を興します。ひいてはそれが人々の暮らしと食を豊かにさせます。」を経営理念に掲げ、農業に関する様々課題解決に取り組み、当社グループだからこそできる企業経営を目指してまいります。

社会的責任ある企業として、地球環境に配慮した生産技術や新たな製品の開発、気候変動などに合わせた農産物の計画生産に向けた商品・サービスの提案を行うとともに、コア事業の周辺領域に深化させたフードバリューチェーンを構築することにより、農産物の廃棄ロスの削減や食料自給率を高めていく取り組みを行ってまいります。また、従業員の幸福度向上、人財の能力・スキル向上、女性・外国人の活躍促進を含む社内の多様性の確保など、当社グループ社員も含めた農業従事者が夢と生きがいを持って働くことのできる農業を実現することを目標とし、農業を通じて、サステナビリティに関連する課題解決に積極的に取り組んでまいります。

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

2023年10月末時点ではサステナビリティに特化したガバナンス体制はありませんが、持続可能な成長と社会への貢献及び企業価値向上を目的の一つとしてリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会は、委員長(当社代表取締役社長)、リスク管理委員(当社取締役、各本部長など)から構成されており、四半期ごとに事業リスク、環境の変化による事業への影響、中長期的な課題や方針の検討、情報の共有や対策を議論しております。また、取締役会へは報告・提案を行い、必要に応じて、取締役会において、付議事項の決議並びに経営上の重要事項を審議いたします。

 

(2)戦略

①気候変動への対応に関する戦略

当社グループは、環境にやさしいサステナブルな農業を目指すため、日本農業の生産力向上と持続可能性の両方を実現させることが必要と考えております。その為の取組みとして、①温室効果ガスの低減 ②クリーンエネルギーの活用 ③化学農薬使用量の低減 ④資源の有効活用及び廃棄ロスの低減を目標に掲げております。その中でも農業にとって気候変動は重要な課題と捉えており、温室効果ガス排出量の把握に努め、Scope1及びScope2の温室効果ガスの削減に取り組んでまいります。具体的には、太陽光パネルの設置によるクリーンエネルギーの活用、生産設備の見直しによる電力使用量の削減などへの取組みを推進してまいります。

 

②人的資本に関する戦略

人財育成及び人的資本への投資については、当社グループの持続的な成長、企業価値向上に最も重要であると認識しております。

人事制度に基づき、適切組織への配置や人事評価により、人的資本を最大限に活用するよう取り組んでおりますが、将来に向かって、更なる人財の能力・スキル向上が必要であるため、社内外の研修制度の拡充やリスキリング制度の導入、自己啓発の推進を行ってまいります。また、社員幸福度を向上させるための、職場環境の改善、福利厚生の充実、ワークライフバランスの改善などを進めてまいります。

多様性確保に向けた人財活用については、農業志向人財の採用を積極的に行いながらも、多様性を確保すべく女性・外国人・中途採用者・異業種からの人財も受け入れ、それぞれの個性や能力を最大限に発揮できるように、配置・管理職への登用機会やキャリア形成の機会を公平かつ適正に与えられるように取り組んでまいります。

特に、女性が育児と両立しながら長く働き続けられる環境の整備として、男女を問わず利用できる育児休暇制度や時短勤務制度、テレワーク制度の導入など、人事制度の充実に向けた取り組みについても積極的に行っています。

 

(3)リスク管理

当社グループは、当社に設置されたリスク管理委員会において、委員長(当社代表取締役社長)、リスク管理委員(当社取締役、各本部長など)から構成されており、各所管部署及びグループ会社からの報告内容をリスク管理統括部署(総務部)が取り纏め、それを議論、評価し、全社リスクの把握と適切な対応を審議し、必要に応じて取締役会へ報告する体制となっております。

今後は、リスク管理体制の見直し及び強化するとともに、サステナビリティに関するリスク管理についても、リスク管理委員会で取り上げていく方針であります、

 

 

(4)指標及び目標

①気候変動への対応に関する指標及び目標

2023年10月期より当社グループは、農業における気候変動の影響は多大であり、気候変動への取組みにおいて、当社グループの事業活動における温室効果ガスの排出量を重要な項目と捉えております。

そのため、今後は温室効果ガス排出量を管理する指標として定めていきたいと考えております。

当連結会計年度において、Scope1、Scope2の排出量の算定を行いました。今後は、社内の管理体制の整備を行い、2023年10月期の温室効果ガス排出量の算定結果を踏まえて、具体的な削減へ向けての目標設定及びモニタリング方法などの検討を行ってまいります。

 当社グループの2023年度の国内拠点におけるScope1、Scope2の温室効果ガス排出量は以下のとおりであります。

Scope1:当社グループの、生産段階における燃料の使用、車両等の燃料の使用などに伴う直接排出

Scope2:当社グループの、生産設備、事務所、研究施設などで、他社から供給された電力の使用に伴う間接排出

<温室効果ガス排出量>

区分

2023年10月期

排出量(t-CO2)

Scope1(燃料の使用など)

 

2,316

Scope2(電気の使用)

ロケーション基準

2,035

マーケット基準

2,344

合計(Scope1+2)

(ロケーション基準)

4,351

(マーケット基準)

4,660

Scope3(サプライチェーン排出量)については、今後、算定方法を策定した上で、当社グループでの温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、環境活動や環境に配慮した製品の開発などに向けた取り組みを検討してまいります。

 

②人的資本に関する指標及び目標

<女性活躍について>

当社グループは、従前より積極的な女性活躍を推進しており、育児と両立しながら働きやすい就業環境を整えております。更なる女性活躍推進を経営の優先課題として捉え、働きやすさに加え、重要ポジションで女性の活躍を増やしていけるよう、他企業と比べ高い女性管理職比率を更に高めて行くことを目指します。

政府目標である2030年までに指導的地位に女性が占める割合が30%以上となる数値を目標に掲げ、達成すべく推進してまいります。また、当社グループは、人事考課制度に基づき、男女の分け隔て無く、昇給、昇格、昇進、賞与などの人事上の処遇に反映しており、賃金格差も職群コース別の男女格差は下記データより少なくなっております。

[女性管理職比率、男女間賃金格差]

 

2023年10月期

女性管理職比率

23.7%

男女間賃金格差(正規雇用)

80.4%

(注)上記は当社単体での実績

 

<研修制度の構築・キャリア形成制度について>

「会社の良し悪し」は、勤務している社員の「人財」によるとよく言われておりますとおり、人財の育成は、当社グループの最重要課題の一つと考えております。優秀な人財の継続的な確保はもちろんのこと、ジョブローテーションにより社員が各部署・拠点での経験を積みやすい環境を整え、部門間・拠点間異動を活発化させる人事異動を推進しながら、研修制度や人事考課制度の充実を図り、技術・ノウハウを継承し、会社を支える人財の育成に努めてまいります。

 研修制度といたしましては、次の事項を体系的に実施してまいります。

 ①集合研修(職位別、業務別、年齢別等)  ②通信講座研修  ③社内OJT研修(マンツーマン技術習得研修)

 

<多様性に関する活動について>

当社グループは、経営理念である「農業に革命を興す」ため、創造的で適応力の高い組織を目指し、多様な強み・専門性を持った人財の採用、起用を積極的に進めております。また、人種、民族、国籍、宗教、信条、出身地、性別、性的指向、年齢、障害等に基づく差別及びハラスメントを禁止しており、多様な属性や価値観を持つ社員を尊重し、活躍できる職場を目指しております。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)天候不順、異常気象、自然災害による影響について

 当社グループの主たる事業は、野菜苗の受注生産であります。生産の大部分はハウス内で栽培しておりますので、気温及び日照等、天候の影響を受けることになります。

 天候不順が続くと苗の品質に影響し、製品価値の低下に繋がります。そのため、当社グループでは、品質の安定化を目指し、閉鎖型苗生産施設や冷房設備等の新型設備の導入、環境計測制御装置の導入、天候に合わせた栽培方法・技術・ノウハウの蓄積、研究開発及び委託展開、一次育苗農場の増加及び生産能力拡大による生産地の分散等の施策を行ってまいりました。しかしながら、天候不順の影響は完全に回避できるものではなく、猛暑、日照不足、台風といった天候不順及び異常気象の発生により、十分な品質や生産量が確保されない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、上述のとおり生産地の分散を進めておりますが、天候不順及び異常気象、想定を上回るような自然災害の発生の影響を受け、本社機能の停止、生産農場の停止、受注の減少等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)種子、原油価格の変動について

 原材料である種子は、一般的に品種改良されるたびに新品種として発表され、基本的には付加価値が高くなるにつれて仕入価格も上昇していきます。また、現在は海外での採種が主流であるため現地の経済状況及び採種環境等の影響により突然値上がりする場合があります。また、原油価格の上昇は重油・灯油の値上がりによる冬期の育苗コストの上昇に加え、あらゆる育苗資材の仕入価格上昇に繋がることとなります。

 当社グループは、過去に発生したこのような原材料価格及び燃料単価高騰時においては、グループ企業での育種事業の開始、仕入先の変更、種子メーカーとの連携、省エネ資材・設備の利用等によりコストダウンを図りながら製品販売価格の調整を行ってまいりましたが、今後、消費者の低価格志向が進むことにより価格調整での対応ができない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)病害虫について

 当社グループは、完全閉鎖型苗生産施設を利用しておりますが、主に屋外でのハウス栽培を行っております。そのため、病気や害虫の発生を完全に防ぐことは極めて難しい状況にあります。当社グループでは病害虫の発生を防ぐため、長年のデータ蓄積による発生予測、病害虫侵入防止設備の導入(物理的防除)、圃場内の清掃、予防農薬の散布、病害虫の早期発見に努めておりますが、生産者に納品した後に病害虫が発生する可能性があります。この場合、発生時期と病害虫の種類によっては当社グループの責任において生産者に対する何らかの補償を行う可能性や風評により受注が減少する可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(4)栽培技術者の育成について

 当社グループは、生産拠点を全国展開しており、栽培技術者個々の技術・ノウハウを組織全体に広げていく必要があります。そのため、技術・ノウハウを早く習得させるために、入社後すぐに実践の場に立たせ、多くの経験を蓄積できる体制をとり、栽培技術者の担当する品目や育苗施設を固定化し、栽培技術指導者を中心としたチームを組織して競争意識を持たせるなどの相乗効果を図っております。また、研究本部による、新たな生産技術の開発やデータの蓄積等を行い、栽培技術の改善及び育成に役立てております。

 全国の自社農場で技術・ノウハウを習得した栽培技術者も育ち始めており、現在のところ不足はしておりませんが、今後生産拠点がさらに増加及び拡大されることによって、十分な栽培指導が行き渡らなくなる場合や技術・ノウハウ向上のための費用が増加する場合、また、人材確保が困難な場合や人材確保のための費用が増加する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)競合について

 当社グループは、野菜接ぎ木苗の生産販売に特化しており、接ぎ木苗の利用者の獲得において先行しているものと認識しております。今後も更なるシェアの拡大を目指し、営業部門の強化、顧客ニーズに対応した商品開発、生産能力の拡大等を図ってまいりますが、今後、異業種からの参入及び競合他社の拡大が生じ、競争の激化による顧客の流出やコストの増加等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(6)野菜苗・苗関連事業への依存について

 当社グループは、野菜接ぎ木苗の生産販売に特化しており、売上高及び利益の大部分に貢献しております。当社グループといたしましては、実生苗(接ぎ木をしていない苗)の売上拡大や伊予農産株式会社との経営統合による農業資材等の仕入販売事業の拡大、流通業者との連携、販売先の新規開拓や深耕拡大、育種事業等の新たな事業開発に取り組んでおりますが、現時点では野菜の接ぎ木苗生産販売事業に依存しております。

 接ぎ木苗の普及は引き続き進んでいるものの、今後、日本農業がどのように進展していくかについては不透明な部分もあり、国の政策方針の転換、農家の高齢化及び後継者不足等により、今後の日本農業に大きな変化が生じた場合、また、予期せぬ技術革新によって接ぎ木苗の需要が著しく減少した場合、当社グループの事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

 

(7)業績の変動について

 当社グループの業績は、第1四半期において、他の四半期に比べ売上高が低下する傾向にあり、利益も売上高の変動の影響を受けて低下する傾向になっております。これは、当社グループの主力製品である野菜苗の需要が、当社の第1四半期にあたる11月~1月に全国的に減少するためであります。現在、閑散期対策として花苗や玉ねぎ苗の売上が増加しており、新製品の開発を急いでおりますが、当面は第1四半期の売上高が他の四半期に比べて低下することが予想されます。このため、第1四半期の業績が、年間の業績の傾向を示さない可能性があります。

 なお、2023年10月期における四半期毎の業績の概要は以下のとおりであります。

(単位:千円)

 

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

年度合計

売上高

(構成比 %)

925,380

(13.1%)

2,370,860

(33.6%)

1,483,463

(21.0%)

2,281,460

(32.3%)

7,061,165

(100.0%)

売上総利益

(構成比 %)

66,722

(3.8%)

677,735

(38.6%)

431,596

(24.6%)

578,855

(33.0%)

1,754,909

(100.0%)

営業利益又は営業損失(△)

(構成比 %)

△313,194

(△408.8%)

201,608

(263.1%)

19,867

(26.0%)

168,333

(219.7%)

76,614

(100.0%)

 

(8)特有の法的規制等について

 当社及びベルグ福島株式会社は、農地法で規定された農地所有適格法人ではないため、農地の取得が認められておりません。なお、以前は農地保護を目的とした農地法の規定により、一般の事業会社は農地を借りることもできませんでしたが、現在は、規制緩和の流れを受けた過去数度の農地法及び関連法規の改正によって一般事業会社が農地を借りることが可能になり、規模拡大が進めやすくなっております。現在、当社につきましても農地を賃借して野菜苗を生産しており、この流れは、当社グループにとって生産設備拡張の自由度が増し、規模拡大への追い風となっております。

 しかしながら、今後の新たな農地法及び関連法規の改正の動向が当社グループの事業展開や業績に影響を与える可能性があります。また、農地法及び関連法規以外に、農薬については農薬取締法、毒物及び劇物取扱法、育苗については種苗法の規制を受けており、それらの法規の改正等の動向によっては当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(9)中国での事業展開について

 当社グループは、中国の巨大マーケットでの事業活動を実施するため、2014年11月に中国の青島芽福陽園芸有限公司を子会社化、2017年12月に北京欣璟農業科技有限公司を中国のパートナー会社と設立しました。農業関連の様々な規制緩和は進んでおり、外資系企業が中国国内で事業を行う幅は広がっております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により移動制限やパートナー企業との交渉等が進まない中、2021年10月には北京欣璟農業科技有限公司は解散、青島芽福陽園芸有限公司は、事業の縮小を行い、中国での事業方針について見直しを図っております。今後、中国における法的規制、政情・経済の変動など予測不能な事態が発生し、中国事業の見直しにともない中国子会社の事業展開に影響が出た場合、当社グループの事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

 

(10)固定資産の減損リスクについて

 当社グループは、野菜苗・苗関連事業における受注拡大及び安定した生産体制の維持・強化や新たな技術開発のために設備投資が必要となり、事業計画に沿って投資を行っております。しかしながら、経営環境や事業の著しい変更等により投資回収期間が長期化する見込みとなることで、収益性が大幅に低迷し、資産の経済的価値が減少した場合には、固定資産の減損処理を行うため、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。

 

(11)有利子負債への依存について

 当社グループでは、運転資金及び設備投資資金を金融機関からの借入金で調達しており、当連結会計年度における有利子負債の残高は、2,096,192千円(リース債務を含む)であります。当社グループでは、実行可能な資金計画に基づき有利子負債の弁済を行っておりますが、今後の金融政策の動向、金利水準の変動等により当社グループが計画どおりの資金調達ができなかった場合、当社グループの業績、財政状況及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の概要

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国の経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に分類され、コロナ禍からの緩やかな回復基調となった一方で、エネルギー価格の高騰や円安による原材料価格の上昇などにより、食品を始め各分野で価格転嫁が進み物価の上昇が続いております。

 2023年の実質GDP成長率は、2%程度の緩やかな回復が続く見通しでありますが、中国を始め海外経済の減速により輸出は弱含むことが想定されます。ただ、コロナ禍で回復余地が残っている個人消費や設備投資の上向きもあり、内需主導の緩やかな回復が続くとみられています。

 我が国における農業界は、高齢化、労働力不足、耕作放棄地の増加、収益の低さ、輸出の弱さなど課題を抱えており、これは戦後農政の影響や世界的な価格競争の影響が原因とされております。しかし、新規参入者や若い農業従事者の成功も見られ、農業の変革期を迎えているとも言えます。農業経営環境は、大きく変化し農業従事者の高齢化や後継者不足、農地の集約化などが進む中で、農業経営の二極化が進むと予測されています。

 一方、スマート農業の導入により、少人数で高収益を実現できるチャンスも訪れました。10年後の農業経営を見据えて、生産だけでなく6次産業化や農業の高付加価値化など取組むべき課題はありますが、特に6次産業化は農林水産省も推奨しており、優良事例を毎年表彰しております。

 農業界は、様々な課題を抱えておりますが、国力としての食料自給率の向上や食料安全保障の強化への期待が高まっており、持続可能な農業構造の実現に向けた取組みが益々重要になっております。

以上のことから、農業を取り巻く環境は不透明な部分もあるものの、就農人口の減少・高齢化している現実が進む中において、農作業の効率化による新規就農者の増加やスマート農業など高度な先端技術を導入した超省力化も進んでおり、少人数・大規模農場の運営も可能となっております。

 当社グループにおきましては、中期経営計画「Change&Innovation2023」の最終年度である2023年10月期は、野菜苗・苗関連事業を中心に事業の拡大と収益力強化、グループの経営資産である、技術力、開発力、自社品種、商品マーケティングなどを最大限に活かすことによる、グループシナジーの強化を図ってまいりました。

特に、価格高騰に伴う重油や電気料金、培土や肥料等の原材料費の値上げによる製造経費が増加する中で、適切な価格への見直しが徐々に進んだことに加え、伊予農産株式会社との経営統合後、資材販売及び購買力強化を進めたことなどが収益改善に繋がりました。

 その結果、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高7,061,165千円(前期比10.4%増)、営業利益76,614千円(前期は営業損失58,613千円)、経常利益106,604千円(前期は経常損失44,041千円)、親会社株主に帰属する当期純利益78,032千円(前期比61.4%減)となりました。

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、当社グループの経営管理及び事業実態に合わせた損益管理を行うため報告セグメントを「野菜苗・苗関連事業」「農業・園芸用タネ資材販売事業」「海外事業」「小売事業」「卸売事業」の5つの報告セグメントから、「野菜苗・苗関連事業」「農業・園芸用タネ資材販売事業」「小売事業」の3つの報告セグメントへ区分を変更しております。前期比較については、数値を変更後のセグメント区分にて組み替えた数値で比較しております。

 セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。

 

(野菜苗・苗関連事業)

 当事業部門におきましては、当連結会計年度の期首より「卸売事業」にて報告しておりました伊予農産株式会社が行う「野菜苗・苗関連事業」を含めたことに伴い、四国内を中心に売上が増加しております。

また、2022年3月に完成しましたいわて花巻農場の生産設備の通年稼働に伴い、自社での生産能力が拡大したことに加え、物流・運送業界の2024年度問題への対応に向けて、各農場での供給体制を整えるため、生産計画の見直しや生産効率改善に向けて取り組んでまいりました。ベルグ福島株式会社では、既存の植物ワクチンを全て自社生産する体制となり、引き続き、新たな植物ワクチンの開発に注力し、化学農薬に依存しないウイルス病の防除による安心安全の野菜苗が供給できる体制を目指してまいります。

 売上面につきましては、ホームセンター向けに企画商品の提案や多品目化に向けた取組みの一環として、花苗や葉菜苗などの推進、ポリ鉢を使用するポット苗ではなく、生分解性の不織布を用いた当社オリジナル規格のアースストレート苗の販促などにより売上が拡大いたしました。

 損益面につきましては、燃料費や原材料費の高騰、労務コストが増加する一方で、生産体制の見直しによる生産効率の改善や原材料の調達コストを抑えるための取組みや出荷形態の統一による配送コスト削減を行ってまいりました。

 この結果、当連結会計年度の業績は、売上高6,020,602千円(前期比8.7%増)、セグメント利益(営業利益)513,604千円(前期比26.0%増)となりました。

 

 品目分類別の売上高は次のとおりであります。

品目分類

売上高(千円)

前期比(%)

トマト苗

2,433,301

104.6

キュウリ苗

1,456,953

101.8

ナス苗

558,153

115.3

スイカ苗

434,550

117.4

メロン苗

261,336

103.5

ピーマン類苗(注1)

266,647

105.9

その他(注2)

609,659

144.4

合計

6,020,602

108.7

(注1) ピーマン類として、ピーマン・パプリカ・シシトウ・トウガラシをまとめて表示しています。

(注2) 玉ねぎ苗、葉菜苗、花苗等を含んでおります。

 

 規格分類別の売上高は次のとおりであります。

規格分類

売上高(千円)

前期比(%)

ポット苗(7.5㎝~15㎝)(注)

2,830,371

107.5

当社オリジナル(アースストレート苗、ヌードメイク苗、e苗シリーズ、高接ぎハイレッグ苗、ウィルスガード苗、ツイン苗)

1,882,563

105.1

セル苗(512穴~72穴)(注)

1,110,092

111.9

その他

197,575

162.1

合計

6,020,602

108.7

(注) ポット苗は、ポリエチレンのポット(ポリ鉢)で育苗した一般的な苗(当社においては、主に断根接ぎ木苗にて育苗した苗)であり、ポットのサイズが大きくなると苗のサイズも大きくなります。セル苗は、小さな穴が連結した容器(セルトレー)で育苗した苗であり、穴数が増えると苗のサイズが小さくなります。

 

 納品地域分類別の売上高は次のとおりであります。

納品地域分類

売上高(千円)

前期比(%)

北海道・東北

897,124

105.8

関東

1,888,806

108.6

甲信越(注)

479,555

105.1

中部・北陸

417,893

120.3

近畿・中国

549,354

106.4

四国

711,481

114.1

九州・沖縄

1,076,386

106.8

合計

6,020,602

108.7

(注) 静岡は「甲信越」に含めて表示しております。

 

(農業・園芸用タネ資材販売事業)

 当事業部門におきましては、当連結会計年度の期首より「卸売事業」にて報告しておりました伊予農産株式会社が行う「農業・園芸用タネ資材販売事業」を含めたことに伴い、主に愛媛県内向けに果菜・葉菜類などの種子、肥料・農薬等農業資材の売上が増加しました。また、「海外事業」につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により2021年10月期より中国国内での苗生産販売事業を中断、当連結会計年度より農業資材販売事業の内、主力の肥料販売事業も提携先企業の商流から撤退いたしました。現在は日本国内向けの種子の輸入や新たな販売資材の調達に注力していることに伴い、海外事業を当セグメントに含めることといたしました。引き続き、グループ企業や農業関連メーカーとの商品開発、肥料メーカー等協力企業との連携を深めることにより商品ラインナップの充実を図り売上及び利益の拡大に向けて取り組んでまいります。

 この結果、当連結会計年度の業績は、売上高906,767千円(前期比25.3%増)、セグメント利益(営業利益)26,787千円(前期はセグメント損失4,301千円)となりました。

 

(小売事業)

 当事業部門におきましては、各種園芸フェアの開催や希少価値の高いパンジーやビオラなどの花苗の試験販売の実施、当社グループの株式会社むさしのタネのオリジナル品種のトマト「さとみ」の販促、新たに販売を開始した新食感フルーツ「フレ・リモーネ」の試食会を開催するなどマーケティング活動も取り組んでまいりました。当連結会計年度は、8月以降の猛暑日が続いたことにより、客足へ影響しましたが、家庭園芸商品や付加価値の高い花苗等の充実を図り、店舗では季節ごとに園芸フェアや各種イベントを開催し集客力の強化を図ってまいりました。

 この結果、当連結会計年度の業績は、売上高133,795千円(前期比1.5%増)、セグメント損失(営業損失)は6,548千円(前期はセグメント損失7,261千円)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 流動資産は、前連結会計年度末と比べ222,917千円(7.5%)減少の2,761,095千円となりました。これは、現金及び預金の減少94,388千円、伊予農産株式会社の決算月変更の影響に伴う売掛金の減少148,604千円等によるものであります。

 固定資産は、前連結会計年度末と比べ179,277千円(5.8%)減少の2,911,150千円となりました。これは減価償却が進んだことにより、建物及び構築物の減少175,406千円等によるものであります。

 

(負債)

 流動負債は、前連結会計年度末と比べ638,049千円(23.2%)減少の2,109,056千円となりました。これは、伊予農産株式会社の決算月変更の影響に伴う支払手形及び買掛金の減少346,765千円、短期借入金の返済による減少317,500千円等によるものであります。

 固定負債は、前連結会計年度と比べ179,015千円(10.8%)減少の1,480,864千円となりました。これは、長期借入金の返済による減少153,921千円等によるものであります。

 

(純資産)

 純資産は、前連結会計年度末と比べ414,870千円(24.9%)増加の2,082,324千円となりました。これは、資本金の増加172,352千円、資本剰余金の増加172,352千円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度末と比べ91,188千円(8.4%)減少の989,493千円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、177,468千円(前連結会計年度は344,562千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益143,141千円、減価償却費275,200千円、売上債権の減少額135,065千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、83,260千円(前連結会計年度は467,486千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出67,471千円、関係会社株式の取得による支出13,700千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、185,258千円(前連結会計年度は49,343千円の収入)となりました。これは、株式の発行による収入298,197千円、新株予約権の発行による収入44,750千円、短期借入れによる収入460,000千円、短期借入金の返済による支出777,500千円、長期借入れによる収入200,000千円、長期借入金の返済による支出382,503千円等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 当連結会計年度より、当社グループの経営管理及び事業実態に合わせた損益管理を行うため報告セグメントを「野菜苗・苗関連事業」「農業・園芸用タネ資材販売事業」「海外事業」「小売事業」「卸売事業」の5つの報告セグメントから、「野菜苗・苗関連事業」「農業・園芸用タネ資材販売事業」「小売事業」の3つの報告セグメントへ区分を変更しております。前年同期比については、数値を変更後のセグメント区分にて組み替えた数値で比較しております。

 

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

野菜苗・苗関連事業

3,975,528

103.0

合計

3,975,528

103.0

(注) 金額は、当期総製造費用によっております。

 

b.商品及び製品仕入実績

 当連結会計年度における商品及び製品仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(千円)

前年同期比(%)

野菜苗・苗関連事業

527,874

145.1

農業・園芸用タネ資材販売事業

753,939

120.7

小売事業

81,381

103.5

合計

1,363,195

127.7

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、仕入価格によっております。

 

c.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

野菜苗・苗関連事業

4,817,170

96.4

555,587

123.7

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

野菜苗・苗関連事業

6,020,602

108.7

農業・園芸用タネ資材販売事業

906,767

125.3

小売事業

133,795

101.5

合計

7,061,165

110.4

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は7,061,165千円(前期比10.4%増)となりました。詳細につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①経営成績の状況」をご参照ください。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度における売上原価は5,306,255千円(前期比8.7%増)となりました。

 原油価格高騰に伴う重油や電気料金、培土や肥料等の原材料費の値上げにより製造経費が増加、繁忙期の生産量拡大に伴う人員増加などにより労務費が増加いたしました。

 この結果、売上総利益は1,754,909千円(前期比16.2%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,678,295千円(前期比6.9%増)となりました。

 間接部門の人員増加による人件費の増加、行動制限がなくなったことにより出張が増加したことに加え、公共交通機関や宿泊費の値上げなどにより旅費交通費が増加、植物ワクチン研究等の研究開発費が増加等によるものであります。

 この結果、営業利益は76,614千円(前期は営業損失58,613千円)となりました。

 

(営業外損益、経常利益)

 当連結会計年度における営業外収益は受取手数料18,838千円、補助金収入11,331千円、受取補填金8,830千円等により49,424千円となりました。営業外費用は支払利息9,628千円、持分法による投資損失4,335千円等により19,434千円となりました。この結果、経常利益は106,604千円(前期は経常損失44,041千円)となりました。

 

(特別損益、税金等調整前当期純利益)

 当連結会計年度における特別利益は補助金収入35,813千円、受取保険金2,423千円等により38,269千円となりました。特別損失は固定資産除却損1,732千円により1,732千円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は143,141千円(前期比38.9%減)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度における税効果会計適用後の法人税等合計は61,111千円、非支配株主に帰属する当期純利益は3,998千円(前期は非支配株主に帰属する当期純損失6,472千円)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は78,032千円(前期比61.4%減)となりました。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因についての分析

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、農業を取り巻く国内外の環境変化、法的規制、地震や台風等による大規模災害等様々な要因が挙げられ、詳細につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり認識しております。当社グループでは、外部や事業環境の変化にすばやく対応するための人材育成や組織体制の整備、内部統制の強化等により、経営成績に影響を与える可能性のあるリスクの回避及び発生を抑え、適切な対応に努めて参ります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの状況の分析は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金需要は、野菜苗・苗関連事業における生産設備の新設及び改修等の設備資金、既存事業拡大及び成長戦略の柱である多角化や海外事業での事業投資や技術研究開発投資及び経常の運転資金があります。これらの資金需要に対して、設備等の投資資金については、金融機関による長期借入、運転資金については、金融機関による短期借入を必要に応じて調達する方針としております。

 また、当社グループの主要事業である野菜苗・苗関連事業は、季節変動が大きく、第1四半期では支出が先行し営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになる傾向にあります。その季節的な変動の中で、事業に必要な資金を確保し、機動的かつ安定的な資金調達を行うため、金融機関6行と当座貸越契約を締結しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や状況に応じて合理的な判断に基づき会計上の見積りを行っております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(繰延税金資産の回収可能性の評価)

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)委託生産に関する外注取引契約

契約会社名

相手先の名称

契約品目

契約内容

契約期間

ベルグアース株式会社

株式会社山口園芸

野菜苗全般

野菜苗の外注取引契約

2007年11月1日~2008年10月31日

(但し、契約期間終了後も異議のない限り自動的に1年間ずつ更新する)

 

(2)土地利用に関する契約

契約会社名

相手先の名称

農場及び店舗

契約品目

契約内容

契約期間

ベルグアース株式会社

地主3名

本社農場

農地: 5,505㎡

農地所有適格法人以外の一般法人が農地を賃借し、利用できる契約

2021年11月8日~

2026年10月31日

ベルグアース株式会社

地主7名

長野横堰農場

農地:26,061㎡

同上

2022年4月1日~

2025年3月31日

ベルグアース株式会社

地主1名

長野上原農場

農地:10,461㎡

同上

2019年7月1日~

2020年6月30日

(注)

ベルグ福島株式会社

地主1名

ベルグ福島

宅地:20,055㎡

一般法人が土地を賃借し、利用できる契約

2015年4月30日~

2025年4月29日

ベルグ福島株式会社

地主1名

ベルグ福島

宅地:20,964㎡

同上

2021年11月1日~

2031年10月31日

ファンガーデン株式会社

地主3名

松前本店

宅地: 3,644㎡

同上

2014年9月1日~

2034年8月31日

(注)契約期間終了後も異議のない限り自動的に1年間ずつ更新する。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、野菜苗メーカーとして、最先端の育苗技術の開発及び既存技術の課題解決を目的とした研究技術開発活動を続けております。また、野菜苗の育苗技術を活用し新たな苗の開発、関連会社と共同で育種及び品種改良試験、海外での苗事業展開に向けた技術開発、新たな商材の発掘及び開発のための検証試験にも積極的に取り組んでおります。

 大学・公立研究機関・民間企業等とも協力体制を構築し、共同研究及び受託研究に積極的に取り組み、農業の発展に貢献していく方針であります。

 当連結会計年度における一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額は102,168千円であります。

 

 セグメントごとの研究開発活動を示しますと次のとおりであります。なお、農業・園芸用タネ資材販売事業及び小売事業につきましては、研究開発活動は行っておりません。

 

野菜苗・苗関連事業

 当連結会計年度の野菜苗・苗関連事業に係る研究開発費は、102,168千円となりました。

 当事業部門では、「苗」「育種」「ワクチン」の3セグメントへ研究開発を集中して行っております。苗の生産性向上、品質向上、付加価値化を最大の研究テーマとし未来に向けて持続可能な農業を目指すために新たな取り組みを行う一方で、苗の開発・普及において大学や公立研究機関との協力体制を構築しており、研究データの共有化や意見交換を行い、研究成果を迅速に生産現場へ落とし込む体制を整えることにより、研究部門と生産部門の連携が強化され、生産性の向上や省力化に繋がっております。

 具体的には、ベルグ福島株式会社の植物ワクチン総合研究所において、新規植物ワクチン及びワクチン接種苗の研究開発を共同で行っております。植物ワクチンは、化学農薬に依存しない効果的な防除対策の実現と環境に配慮した生産及び安定的な生産・品質向上が期待されており、全国の生産者へ、安心安全な野菜苗の供給体制を目指してまいります。また、植物ワクチンによる付加価値の高い製品開発を行うことにより、競争力の強化及び収益力改善へ繋げてまいります。

 また、関連会社の株式会社むさしのタネと共同で、トマト新品種開発をはじめとする育種開発や海外品種の種子選別技術の研究に取り組んでおります。今後は、環境負荷を低減させることが可能な環境配慮型の苗製品や新たな栽培技術を用いた高付加価値苗の開発、クリーンエネルギーを利用した育苗施設の開発等を目指しております。