第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「地球会社」という企業理念のもと、持続可能な社会の発展に向け、株主をはじめお客様・従業員・取引先・地域社会などのステークホルダーの皆様と健全な関係の維持・発展に努め、社会とのより良い調和を図っていきます。

①企業は、社会の公器であることを常に自覚し、顧客に喜ばれる製品を供給する。

②社員には、職場の適正配置と生活の向上を図る。

③株主には、適正な安定配当を行うよう努める。

④社会的信頼を高めつつ、堅実な経営を行い、世界的企業に発展するよう努める。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、持続的な成長を目指す中、2025年11月期より3ヶ年の中期経営計画「Beyond the Limit 2027」を策定いたしました。

カーボンニュートラルの時代に向けて、世界のモノづくり産業に貢献するエッセンシャル・プレーヤーとなることを長期ビジョンとして新たに掲げるとともに、持続的な企業価値向上(サステナビリティ)に向けてESG経営を推進します。収益性や事業効率の改善を通して企業体質を再強化するとともに、ROEを新たに経営指標として設定し、資本効率の改善を行います。2027年11月期の経営目標としてROEは10%超、営業利益率は16%超を目標としています。

 

(3) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

ロシア・ウクライナ紛争、それに伴う資源・エネルギー価格の上昇、インフレによる人件費の上昇など、経済環境は常に変化しております。当社グループの主要市場では、自動車関連産業は日本において認証不正問題による生産への影響から回復に向かう一方で、欧州や東南アジアの一部の国においては厳しい状況にあります。一方、航空機関連産業は欧米での回復が継続しており、中華圏の市況も底打ちの兆しが見られるようになりました。

このような状況のもと、中期経営計画「Beyond the Limit 2027」においては以下の基本方針を策定しております。

 

基本方針

グループにおける製販会社の収益性や事業効率の改善に取り組み、景気変動に左右されにくい強固な企業体質を構築します。また、バランスシートの改革を行い、最適な成長投資と株主還元の強化を目指します。そのための経営指標として2027年11月期のROEは10%超、営業利益率は16%超を目標としています。中期経営計画「Beyond the Limit 2027」においては、事業成長戦略と経営基盤強化の2つのカテゴリーに戦略方針を分けて立案しています。

 

① 事業成長戦略

 

 

製品

戦略方針

主な産業

主力事業

 

成長を牽引

タップ

品質向上と競争力のある新製品の投入など、開発・技術・生産・営業一体でシェア拡大を目指す。高付加価値のAブランドシリーズの拡販を推進。タップの世界シェア40%を目指す。

電子部品

エネルギー

モビリティ

一般部品

転造

売上高比率では他製品に比べ少ないものの、創業製品のタップに次ぐ歴史の長い製品。製造工程やサプライチェーンの見直しで価格競争力を高め、グローバル展開を加速し売上倍増を目指す。

航空機

エネルギー

モビリティ

一般部品

微細・精密工具
 

超硬

 

DIA/CBN

部門横断型営業組織GIGSセールスグループの活動を強化し、微細・精密加工用工具の新製品を投入、売上拡大を図る。ダイヤ工具のグループ会社を中心にレンズ向けなど既存産業以外の開拓を進める。

電子部品 航空機

エネルギー

モビリティ 医療

金型 一般部品

注力事業

 

今後の成長に

繋がる

事業領域の拡大

コーティング

高付加価値のコーティングビジネスは中長期的にも拡大が見込まれる。優れたコーティング開発で自社製品の売上に貢献するだけでなく、工具以外の様々な製品を対象としたジョブコーティングサービスを展開する。

電子部品

医療 金型 工具

一般部品

 

 

② 経営基盤強化

 

領域

戦略方針

取組み

オペレーション

デジタル技術を積極的に活用し、営業及び生産体制の改革を進める。今後の働き手不足に備え、デジタル技術を駆使して生産及び営業プロセスを簡素化し、効率化を図ることで、生産性と収益性の向上を目指し柔軟かつ強固な体制を構築するとともに、自社製の機械設備導入によって生産体制の複合化・省人化を進める。

・事業効率の向上

・DX技術革新への対応

・情報セキュリティ強化

組織・人的資本

適材適所の人員配置や自主性と組織力を高める人財育成を通じて、社員一人ひとりの価値を最大化する人事施策と、エンゲージメントを高め安心して挑戦できる環境を構築する。当社を取り巻く社会環境が急激に変化する中、変化を厭わず挑戦しつづけることで社員と会社がともに成長し、企業価値の向上を実現する。

・人材の能力向上

・働きがいのある職場環境の整備

・エンゲージメント向上

サステナビリティ

太陽光による再エネ活用や環境負荷低減と資源循環型社会の構築を目指す。Scope1.2の削減、Scope3の算定、主力製品のカーボンフットプリントの算定による見える化を推進。長期的にはカーボンニュートラルの達成を目指し、中期目標としては2027年度に2019年度比で20%削減を目指す。

KPI(FY2027)

・CO2排出量の削減

・カーボンフットプリントの算定

20

財務・資本政策

既存事業の成長戦略及び、M&Aを含む積極的な成長投資を継続する。株主還元やIR活動を通じた株主資本コストの低減で、資本効率を向上しROE10%超を目指す。

ROE

 

10%超

・最適資本構成の構築

・成長分野への戦略投資

・株主還元の強化

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般への取り組み

当社グループは、独自の高付加価値な製品とサービスを通じて、世界中のサステナブルなモノづくり産業に貢献するエッセンシャル・プレーヤーとして、社会の持続的な発展に寄与することを目指しております。

 

(ガバナンス)

当社はサステナビリティ委員会を設置しており、委員長である社長が監視、監督責任を持っております。ESGに関連した課題や、方針やビジョンの徹底、重要施策などについて審議し、活動状況を定期的に取締役会へ報告しております。サステナビリティ推進のための施策は、サステナビリティ委員長である社長の決定の下、各組織の部門長(ESG責任者)及び推進担当者が実行しております。

 


 

当事業年度に係るサステナビリティ委員会開催状況

日付

主な報告事項等

2024年4月4日

マテリアリティの見直し、機関投資家向けESG説明会・事業戦略説明会に関する事項、環境への取り組みについての計画と進捗

2024年7月11日

カーボンニュートラルへの取り組み進捗報告(カーボンフットプリント算定の背景と計画)

2024年10月10日

カーボンニュートラルへの取り組み進捗報告(カーボンフットプリント算定、Scope3算定)

2025年1月9日

マテリアリティ目標に対しての進捗及び2025年度目標

 

 

 

(戦略)

当社グループは、企業価値の最大化に向けて、サステナビリティ基本方針に基づき優先的に取り組むべき4項目のマテリアリティ(重要課題)を特定し、その達成に向けて取り組みを進めてまいります。変化する情勢に合わせて、中期経営計画でも掲げているESG経営の推進をマテリアリティとリンクさせ会社目標として具体的な取り組みを進めております。

 

マテリアリティ

重点テーマ

取り組み

事業を通じた

モノづくり産業

への貢献

主力製品タップのグローバルシェア拡大

・ 高品質・高付加価値な製品シリーズの

  グローバル展開

事業ポートフォリオの最適化

・ 微細・精密向け市場の開拓

新規事業、アフターサービス事業拡大

・ 再研磨・コーティング事業のグローバル展開

人財の尊重と活躍

できる環境の整備

従業員エンゲージメントの向上

・ 働きやすい環境・制度の推進

・ 安全健康経営の推進

人財の能力向上と戦略的な人員配置

・ 次世代リーダー・経営リーダー育成

・ プロフェッショナル人財の活躍推進

多様性の尊重

・ 女性・障がい者の活躍推進

・ 人権の尊重

持続可能な地球

環境への貢献

カーボンニュートラルの実現

・ 運用改善・省エネ機器導入

・ オンサイト・オフサイトPPAの導入/CO2フリー

  電力購入

ユーザーの環境負荷低減

・ 環境に配慮した新製品の開発

持続的成長を実現

するガバナンス

体制の維持・強化

コーポレート・ガバナンス体制の確保

・ 業務執行の監督機能の強化

・ 実効性の高い執行体制の構築

グループ・ガバナンス体制の構築

・ 関係会社管理規程によるグループ・ガバナンス

  の強化

リスク・コンプライアンス管理の徹底

・ 情報セキュリティ対策の強化

・ 事業継続計画の策定と定期的な防災訓練の実施

 

 

マテリアリティ特定のプロセス

STEP1

中長期的な企業価値向上のための

課題抽出

企業理念である「地球会社」として、事業を通じたモノづくり産業への貢献、環境及び社会課題の解決のため、中長期的な企業価値向上に重大な影響を与える可能性の高い課題を抽出しました。過去のマテリアリティ分析、国際フレームワークなどを活用し、課題抽出を行っております。

STEP2

課題の重要度評価・分析

STEP1で抽出した課題を「ステークホルダーの重要度」と「オーエスジーグループの重要度」の2軸で評価・分析し、特にオーエスジーグループの事業に影響度の高い課題を優先順位付けしました。

STEP3

マテリアリティ及び取り組みと

目標の設定

STEP2の課題の評価・分析の結果、最重要課題として計4項目のマテリアリティを新たに特定しました。

また、それぞれのマテリアリティごとに重点テーマを設定し具体的な活動に反映させるために目標を設定しています。目標に対する取り組みの進捗状況は適時開示してまいります。

STEP4

マテリアリティの審議・承認

STEP3で特定したマテリアリティは、サステナビリティ委員会で審議・承認を行った後、中期経営計画で掲げられているESG経営の推進にも極めて重要な課題及び指標であることから、事業成長のために取り組むべき課題として経営層による審議のうえ、承認を受けています。

 

 

(リスク管理)

当社グループでは、事業活動において発生しうるリスクの発生の防止、発生したリスクの対応及びリスク管理のための体制の整備を行い、業務の円滑な運営に努めております。

企業経営の透明性、公平性を高めるために迅速な情報開示に取り組むとともにグループ経営の健全性の確保と企業倫理確立のためのリスク管理体制の整備を図るため「リスク管理規定」を制定しています。また、当該「リスク管理規定」により、リスク管理を効果的かつ効率的に実施するための「リスク及びコンプライアンス管理委員会」を設置し、リスク管理に対する基本方針及び体制の策定、各リスクの重大性、緊急性等の評価に応じた対策の検討及び決定等の必要な措置を速やかに講じております。

 

 

(指標と目標)

各マテリアリティに関する目標は以下のとおりです。

マテリアリティ

重点テーマ

目標

事業を通じた

モノづくり産業

への貢献

主力製品タップのグローバルシェア拡大

グローバルタップシェア40%

事業ポートフォリオの最適化

微細・精密加工向け売上高比率30%

新規事業・アフターサービス事業拡大

再研磨・コーティング売上高比率15%

人財の尊重と活躍

できる環境の整備

従業員エンゲージメントの向上

・有給休暇取得率:毎年70%以上を維持

・男性育休取得率:

 2024年 50%、2027年 75%、2030年 100%

・女性育休取得率:100%継続

・安全衛生優良企業の継続認定

・健康経営優良法人の継続認定

人財の能力向上と戦略的な人員配置

・次世代マネージャー育成プログラムの制定

・人財データプラットフォームによる人財活用

多様性の尊重

・女性役職者比率(係長級):2025年 7%

・障がい者雇用率:法定雇用率達成を維持

・OSG人権方針並びに企業倫理綱領にそった

 人権教育の実施とリスク管理

持続可能な地球

環境への貢献

カーボンニュートラルの実現

CO2排出量削減(2019年対比)

 2024年10%削減

 2027年20%削減

 2030年30%削減

 2050年カーボンニュートラル達成

ユーザーの環境負荷低減

エコプロダクツ(環境に優しい製品開発)

毎年の評価点40点以上(注)

持続的成長を実現

するガバナンス

体制の維持・強化

コーポレート・ガバナンス体制の確保

・取締役会の多様性の維持

・取締役会実効性評価の継続実施とその結果の

 フィードバックによる課題認識と解決

グループ・ガバナンス体制の構築

・レポーティング・モニタリング体制の整備

・ガバナンス整備のためのアセスメント

リスク・コンプライアンス管理の徹底

重大な情報セキュリティ事故の発生件数ゼロの実現

被害を最小限にするための事業継続計画の浸透と対策の追求

 

(注)エコプロダクツの評価基準(満点60点)は、業界団体「日本機械工具工業会」で定めた基準を採用しております。

 

(2) 気候変動への取り組みとTCFDへの対応

当社グループにとって気候変動は事業の持続的成長に影響を与える重要課題であると認識しています。2021年10月に賛同したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえ、気候変動シナリオ分析に着手し、以下の枠組みで取り組みを進めています。

TCFDへの賛同を表明し、気候変動による事業影響への適応に努めるとともに、脱炭素社会へ寄与する事業活動の推進や、温室効果ガス排出量削減に取り組んでおります。2022年12月に中部電力ミライズ㈱及びアグリガスコム㈱と営農型オフサイトPPAの実施に向けた協定を締結し、当社専用の太陽光発電所から20年間にわたりCO2フリー電気を調達いたします。これにより年間約4,000トンのCO2排出量削減を見込んでおります。別途調達しているCO2フリー電気(中部電力ミライズのGreenでんき)の購入量を加え、全体で約9%の削減効果を見込んでいます。

また、新城工場ではオンサイトPPAが2024年12月より本格稼働し、年間約304.6トンのCO2排出量削減(新城工場の消費電力の約1.5%の削減効果)を見込んでおります。

 

(ガバナンス)

当社は、リスク及びコンプライアンス管理委員会にて、気候変動リスクをはじめとした自社全体のリスクについて、事業への影響度をもとに優先度を評価しております。気候変動に関するリスク・機会のモニタリングについては、サステナビリティ委員会、リスク及びコンプライアンス管理委員会、安全衛生委員会が連携して進めております。

 

(戦略)

異なるシナリオ(1.5℃シナリオ、4.0℃シナリオ)を選定し、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)や、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の情報を参考にリスク、機会及びその対応について検討を行いました。

 

リスクとその対応策

 

タイプ

小分類

リスク

影響度

対応

移行リスク

政策・

法規制

GHG(温室効果ガス)排出に関する規制の強化

炭素税等による製造・開発・生産・調達コストの増加

CO2排出量の削減目標の設定

工場でのCO2フリー購入、オフサイトPPA、カーポートPPA導入

エコファクトリー推進(自社製工作機械のエネルギー効率化、設備の運用改善、見える化)

化石燃料発電への規制強化

化石燃料発電関連の工具需要減、開発・製造コストアップ

ターゲット市場の変更に合わせた製造品目の見直し

技術

再エネ、省エネ技術の普及

製造経費・販管費の増加

再エネ市場動向の注視、需要の増加が見込まれる切削工具へ開発リソースの投入

市場

環境負荷の少ない製品への移行

環境に配慮できていない製品・サービスの売上減少

環境対応型切削工具の開発

EV化、燃料電池車の拡大

ガソリン車向けの工具需要減少

顧客ポートフォリオの見直し

評判

顧客、投資家の変化

非財務情報の開示不足による企業価値低下、受注機会喪失

積極的な情報開示、CDP(Carbon

Disclosure Project)質問書への回答

環境に配慮できていない事業の規模縮小

事業ポートフォリオの最適化検討

(微細・精密加工用工具)

資金調達コストの増加

ESG/SDGs評価型融資の導入

物理リスク

急性

異常気象の激甚化

サプライヤー見直しによる調達コストの増加

サプライヤー全体でのBCP検討

(調達先の自然災害リスク、物流リスク、原料調達リスク把握等)

サプライヤーの被災による資材調達難、生産停止、生産遅延

サプライヤーの多角化

自社工場の被災による生産設備の損傷、生産停止、生産遅延、有害物質の流出

BCP策定・見直し、具体的な設備対策、生産拠点の分散化、有害物質等の管理徹底

慢性

平均気温の上昇

空調エネルギーの増加

高効率空調機の導入

従業員の労働環境悪化

工場における省人化・自動化推進(自動測定・自動包装)、安全健康経営推進、工場内温熱環境の改善

電力、水不足による生産停止

自社発電設備、蓄電池の導入、工場・事務所での使用電力・水の使用量低減

 

(注)時間軸については、2030~2050年を想定しています。

 

 

機会とその対応策

 

タイプ

小分類

機会

影響度

対応

移行リスク

政策・法規制

GHG排出に関する規制の強化

炭素税を加味した投資回収年数(ICP)の整理による投資ハードルの低下

インターナルカーボンプライシングの導入

技術

再エネ、省エネ技術の普及

再エネ、省エネ技術に関する工具の需要増加

省エネ設備、再エネ関連向け工具の開発、販売拡大

市場

再生可能エネルギーの拡大

太陽光発電パネル・洋上風力の開発に伴うエネルギー事業の需要増加

蓄電池、再エネ、水素関連向け工具の開発、販売拡大

環境負荷の少ない製品への移行

長寿命製品の需要拡大

長寿命製品のさらなる品質強化、開発、販売拡大
加工時間短縮、加工能率アップを可能とする工具の開発

EV化、燃料電池車の拡大

電池開発促進による精密な金型加工の需要増加

微細・精密加工分野の販売拡大

EV充電器、蓄電池の需要増加

EV充電器、蓄電池向け加工工具の開発加速

半導体、コネクタ、電子部品市場増加による微細・精密加工用工具の需要拡大

微細・精密加工用工具の開発、投資拡大、販売増強

評判

顧客、投資家の変化

積極的な情報開示によるステークホルダーからの評価向上

ESG/SDGs評価型融資の導入

物理リスク

急性

異常気象の激甚化

自然災害が起きた際の防災関連製品やサービス等の需要増加

防災関連向け工具の開発

 

(注)時間軸については、2030~2050年を想定しています。

 

 

(指標と目標)

当社は、気候変動への取り組みに関し、中期経営計画において以下の目標を掲げています。環境に配慮した新製品の開発によるお客様の環境負荷低減をはじめ、省エネの運用改善によるScope1、2の削減、Scope3算定、主力製品のカーボンフットプリント算定を行い、CO2排出量の削減を行ってまいります。

CO2排出量について、設備更新、運用改善及び生産減の影響もあり、2024年度は当初目標の10%(2019年比)を上回る削減となったものの、2025年度は引き続き13%削減を目標に取り組みを推進してまいります。

重点テーマ

目標

2024年度実績

2025年度行動計画

カーボンニュートラルの実現

CO2排出量削減(2019年対比)

2024年 10%削減

2027年 20%削減

2030年 30%削減

2050年 カーボンニュートラル達成

CO2排出量 19%削減

(2019年対比)

・CO2排出量 13%削減

 (2019年対比)

・Scope3算出

・主力製品のカーボンフット

 プリント算出

ユーザーの環境

負荷低減

エコプロダクツ(環境に優しい製品開発)

毎年の評価点40点以上

エコプロダクツ 評価点46点

エコプロダクツ 評価点45点

 

 

<CO2排出量削減ステップ>

中期経営計画 Stage2

(2025-2027)

中期経営計画 Stage3

(2028-2030)

・CO2排出量 20%削減(2019年対比)

・連結グループベースでのScope3算定

・国内販売主力製品のカーボンフットプリント算定

・CO2排出量 30%削減(2019年対比)

・SBT(Science Based Targets)認定取得

・再エネによるCO2削減

 

 

 


 

(注)上記指標に関して、当社においては指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループすべての会社で実施しているものではないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、提出会社のみを対象として記載しております。今後は、グループ単位の指標及び目標の設定・開示も検討してまいります。

 

 

(3) 人的資本への取り組み

(戦略)

当社グループの持続的な発展のためには人的資本への投資が重要課題であるとの認識のもと、人財能力の有効活用と、社員のウェルビーイングを目指し、安心して仕事にチャレンジできる環境を目指します。

日本の人口ピラミッドに比例して、当社グループも中期的に労働人口の減少により人財を確保するのが難しい時代となります。企業として成長していくためには社員一人ひとりの生産性を向上させ、挑戦・成長し続ける人財が必要となります。モノづくりも自動化やAI化、DXを推進し「Beyond the Limit」を合言葉にこれまでの常識に囚われず、常に自己変革に挑戦し続けることで変化を恐れずにチャレンジできる環境・風土を目指します。

 

①従業員のエンゲージメントの向上

当社グループは、「社員のウェルビーイングを追求し、社員・家族・お客様・地域・社会・地球の豊かな未来づくりに貢献する」をスローガンに、社員一人ひとりが元気に働ける環境づくりを行っております。

その一環として、働きやすい職場づくりを目指し、ワークライフバランスの推進に取り組んでおります。特に、有給休暇取得率と男性育児休業取得率の向上を目標に掲げ、社員が取得しやすい環境づくりに注力しております。具体的には、男性育児休業の対象社員に対する意向確認の実施や個別相談、育児休業に関する情報の社内周知等を行っております。

また、安全健康経営を宣言し、安全と健康の両面から社員のウェルビーイングにつながる取り組みを行っております。産業医・カウンセラー・ヘルススタッフによる健康相談窓口の設置、バランスの取れた健康な食事の提供など、社員の健康管理のサポートに注力しております。また、「健康ミッション25」と題し、喫煙率及びメタボリックシンドローム率において2024年度定期健康診断で両比率ともに25%以下を目標に、各事業所にて健康施策を立案、実施し、社員の健康意識向上につなげました。安全衛生面においても、リスクアセスメント活動や安全衛生教育等を実施し、社員の安全に対する意識の向上に努めております。この結果、2024年度においても、昨年度に引き続き健康経営優良法人ホワイト500(経済産業省)に認定されました。

 

②人財の能力向上と戦略的な人員配置

当社グループは、企業価値を最大化させる人財の育成と自己啓発やチャレンジが尊重される社風を目指しております。社員を無限の可能性を秘めた財産であると位置づけ、人財の能力開発と向上に努めることを人財育成理念として掲げ、高度なモノづくりに向けて7つの人財要件(グローバル、チャレンジ精神、コンセプション能力、コミュニケーション、リーダーシップ、フォロワーシップ、イノベーション)に基づき人財育成を行っております。これらの要件は成績評価項目に反映されており、半期に一度の評価では社員の成長とモチベーションの向上、組織・企業の発展のために上長による個別フィードバック面談を実施しております。

また、将来の労働人口減少に対して、生産体制等の省人化が課題となっております。社員の経験や能力、特性に合った人員配置により成果の出る組織をつくるために、社員自身が自分のキャリアについて考え希望を提出する「キャリアプラン申告制度」の実施や、業務上で必要とされる知識やスキルを学ぶリスキリングを推奨しております。今後は人財プラットフォームの構築により、経験豊富なプロフェッショナル人財の活躍推進や、次世代及び経営リーダー・グローバル・DX人財の育成にも注力してまいります。

 

③多様性の尊重
<女性・障がい者の活躍推進>

当社グループは、国籍、性別、人種、障がいなどの有無に関わらず、多様な人財がそれぞれの個性を活かし、能力を十分に発揮できるよう「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進をテーマに働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。

特に、女性活躍推進を重要課題として位置づけ、一人ひとりの女性が安心して活き活きと働き続けることで、能力を最大限に発揮しキャリアアップできることを目指しています。パイオニアとしての活躍を期待しサステナビリティ推進活動には多くの女性メンバーを選出し、活動に携わっております。今後も一人でも多くの女性リーダーが誕生し活躍できるよう、積極的な女性の採用、女性活躍に関する実態・意識の把握や開示、柔軟な考えを今後のESG経営に活かせる風土づくりを行ってまいります。目標として、2025年において女性役職者比率(係長級)7%を掲げております。

 

また、障がい者雇用の取り組みも積極的に進めております。2022年12月に特例子会社「オーエスジーアクティブ㈱」を設立しました。障がいのある方が一人でも多く、その適性と症状に応じて社会で活躍できるように作業範囲拡大など整備してまいります。

その他、フレックス勤務制度、カムバック制度を制定し、従業員の柔軟な働き方をサポートする制度を整えています。

 

<人権の尊重>

当社グループ及び全社員は、国内外を問わず、人権を尊重し、関係法令・国際ルール及びその精神を遵守するとともに、社会的良識をもって持続可能な社会の創造に向けて自主的に行動します。また、人種、信条、肌の色、性別、宗教、国籍、言語、身体的特徴、財産、出身地等の理由で嫌がらせや差別を受けない健全な職場環境を確保します。

主な取り組みとして、新入社員研修や外部講習会を通じて人権意識の向上を行い、社内報では人権課題を取り上げることで労働環境における課題の発生防止に努めております。また、従業員のハラスメントに関する相談・苦情等に対応する専用窓口を設置しております。

 

(指標と目標)

重点テーマ

目標

2024年度実績

2025年度行動計画

従業員エンゲージメントの向上

有給休暇取得率

 毎年70以上を維持

男性育休取得率

 2024年 50

 2027年 75%

 2030年 100%

女性育休取得率

 100継続

・有給休暇取得率:84.1

・男性育休取得率:36.4

・女性育休取得率:100

・男性育休取得の実態調査の

 実施及び目標値の再検討

・社内規程の見直し等の検討

・安全衛生優良企業の

 継続認定

・健康経営優良法人の

 継続認定

健康経営優良法人2024

ホワイト500に認定

健康経営優良法人の継続認定

人財の能力向上と戦略的な人員配置

次世代マネージャー育成プログラムの制定

職制マネジメント教育の実施(年1回、若年層のリーダー対象)

・職制マネジメント教育の

 継続

・次世代マネージャー育成

 プログラムの検討

人財データプラットフォームによる人財活用

人財データの整備

・人財データの整備の継続

・人財データプラットフォー

 ムによる人財活用の検討

多様性の尊重

女性役職者比率(係長級)

 2025年 7

・障がい者雇用率:

 法定雇用率達成を維持

・女性役職者比率(係長級):

 6.1

・障がい者雇用率:

 3%(法定雇用率達成)

・女性役職者比率(係長級):

 7%

・障がい者雇用率:

 法定雇用率達成を維持

OSG人権方針並びに企業倫理綱領にそった人権教育の実施とリスク管理

・企業倫理綱領の周知
・社内報での啓蒙活動・人権

 教育の実施
・人権デューデリジェンスの

 リスクアセスメントの実施

・全社員向けのハラスメント

 教育の実施

・職制向けのハラスメント

 教育の強化

 

(注)上記指標に関して、当社においては指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループすべての会社で実施しているものではないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、提出会社のみを対象として記載しております。今後は、グループ単位の指標及び目標の設定・開示も検討してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 製品需要に関連する市場の経済状況に係るリスク

当社グループの製品は、自動車関連産業、航空機関連産業をはじめIT関連産業等の広汎な製造業にて使用されています。また、当社グループの販売先は、日本国内のほか、米州、欧州、アジア等にわたっています。従って、当社グループの製品需要はこれら関連業界の需要の減少や、日本及び世界各地域における景気の減退の影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対し、販売先を特定の業種や国・地域に集中せず多様化することによりリスクの分散化を図っておりますが、急激な景気変動や需要減少が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 為替変動に係るリスク

当社グループは世界各国に現地法人を配置して製品の製造・販売を行っており、連結財務諸表の作成にあたっては各地域における収益、費用、資産、負債を含む現地通貨建の項目を円換算しております。そのため、たとえ現地通貨における価値に変動が無くても、換算時の為替レートによって影響を受けることになります。

また、当社や一部のグループ会社では販売や材料の調達等外貨建で取引しているものもあり、為替動向によって売上高や製造コスト等に影響する可能性があります。当社グループはこれらの為替リスクを回避するために為替予約の活用及び外貨預金口座を通じた決済等によるヘッジを行っておりますが、すべてのリスクを排除することは困難であり、為替相場の変動は当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3) 原材料価格の変動に係るリスク

当社グループの主要な製品である工具の主な原材料は超硬合金、高速度工具鋼、ダイス鋼であり、これらの原材料にはコバルト、バナジュウム、モリブデン、タングステン等のレアメタルが使用されています。レアメタルは、産地及び供給者が限定され、市況により価格が急激に変動する可能性があり、当社グループの原材料調達価格もこの変動の影響を受ける可能性があります。

原材料価格の高騰に対しては、販売価格に反映する努力を行っておりますが、原材料価格の上昇と販売価格の改定のタイムラグがあること及び必ずしも原材料価格の上昇分のコストを販売価格に転嫁できない場合があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(4) 海外の事業展開に係るリスク

当社グループは自動車関連産業をはじめとする主要ユーザーの海外進出への対応と市場に近接した最適地での生産・販売体制の確立のため米州、欧州及びアジアなど世界各地への海外拠点の構築を行っております。従って、海外各国における法律や税制規則の変更、その他の社会的、政治的な諸情勢の変動により、当社グループの事業活動に障害が生じる可能性があります。これらのリスクに対し、グループ会社と連携し定期的な情報収集に努めておりますが、リスクが顕在化した場合には当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5) 地震等の自然災害に係るリスク

当社グループは、当社の本社、生産及び研究開発拠点が愛知県内の東三河地区に集中しております。そのため同地区に大規模な地震等の自然災害が発生した場合、生産活動をはじめとする事業活動全般に重大な影響を与える可能性があります。当社グループでは、事業継続計画(BCP、初動対応マニュアル及び業務復旧手順書)の整備を行うとともに、建物等の耐震工事、非常時を想定した訓練の実施及び安否確認システムの導入等の対策を講じておりますが、リスクを完全に回避することは困難であり、想定を超える事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

 

(6) 情報セキュリティに係るリスク

当社グループは、情報セキュリティ基本方針を定め、年々変化するサイバー犯罪の手法に対して情報システムリスク評価を実施し逐次対策を講じております。万一被害にあった場合の影響範囲の最小化、業務継続性の確保までを視野に必要な投資を行っておりますが、当社の想定を超えた技術による不正アクセスやコンピュータウイルス、その他予測不可能な事象などにより、顧客情報や技術情報など機密情報の漏洩が生じた場合には、損害賠償義務の発生や競争力の低下等を招き、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 (1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度における経済環境は、緩やかな成長トレンドとなりました。世界的なインフレ圧力の緩和が見られ、米国や欧州での利下げが行われた一方、日本では物価上昇率を2%で安定させる目途がついたことを受けて日銀による利上げが行われました。しかし世界的な内需の低迷は継続しており、特に依然消費と投資の低迷が顕著な中国経済は成長鈍化が続きました。また、ウクライナ情勢やパレスチナ問題等の地政学リスクへの警戒感は引き続き高く、加えて米国ではトランプ氏が大統領選挙で再選を果たしたことにより今後保護主義的な政策の増加が予想されるなど、経済環境は常に変化しております。一方で為替市場における主要通貨の動きは、7月までは大きく円安方向に進んでおりましたがその後は円高方向に動き、最終的には期首と同水準で着地しました。

当社グループにおいては、為替換算の影響もありすべての地域において売上高は前期と比較して増加しましたが、利益面においては人件費や原材料等の高騰等により減少し、増収減益という結果になりました。

以上の結果、売上高は155,517百万円(前期比5.3%増)、営業利益は18,868百万円(前期比4.7%減)、経常利益は19,825百万円(前期比7.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は13,439百万円(前期比6.1%減)となりました。また、海外売上高比率は円安の影響もあり、前期と比較して増加し、68.0%(前期は67.0%)となっております。

 

セグメントの業績は次のとおりです。

 

(日本)

売上高は74,307百万円(前期比1.4%増)、営業利益は7,205百万円(前期比9.7%減)となりました。

国内では、インフレ率の安定を受けて利上げが行われたほか、定額減税の実施を背景とする個人消費の押し上げがありましたが、自動車認証不正問題の影響や設備投資の遅延等もあり、景気回復は足踏み状態となりました。特に自動車認証不正問題では一部自動車メーカーにおいて生産・出荷停止が発生するなど、回復基調にあった自動車関連産業への影響も出ており、製造業の生産活動は一進一退が続きました。

上記のように足元は依然として不透明感のある状況となっており、前期と比較すると売上高は微増となったものの、営業利益は減少しました。

 

(米州)

売上高は35,863百万円(前期比8.7%増)、営業利益は4,411百万円(前期比2.4%減)となりました。

主要市場の北米ではインフレが落ち着きをみせてきたことにより利下げが行われました。個人消費や設備投資が底堅く推移して全体として回復基調を維持しましたが、企業の景況感を示すISM景況指数を見ると、非製造業が好調である一方、製造業では判断の目安となる50の水準を下回るなど、業種によって強弱のある結果となりました。南米ブラジルにおいても市況はまだら模様となっており、航空機関連産業では多くの受注を抱えて増産体制を取るなど回復基調にある一方で、自動車関連産業では横ばいの傾向が続いております。

以上の結果、前期と比較して為替換算の影響もあり売上高は増加しましたが、各種費用の増加により営業利益は減少しました。

 

(欧州・アフリカ)

売上高は37,020百万円(前期比9.4%増)、営業利益は3,117百万円(前期比15.2%減)となりました。

主要市場である欧州の経済は、インフレ圧力の緩和から4年9ヶ月ぶりの利下げが行われ、パリ五輪による特需などを背景に個人消費は増加しました。一方で外需の低迷を背景に製造業は減速し、特に中国向け輸出の減少が継続した結果、国別に見るとドイツの製造業が最も影響を受けて減速しました。業種別では航空機関連産業の回復基調が続いており新規案件も増加しています。また、医療産業も好調に推移するなど、業種によって強弱のある結果となりました。

以上の結果、為替換算の影響もあり売上高は増加しましたが、人件費等のコスト増加を受けて営業利益は減少しました。

 

(アジア)

売上高は37,782百万円(前期比5.0%増)、営業利益は4,153百万円(前期比6.6%減)となりました。

中国経済は、回復傾向にはあるものの国内需要は依然力強さを欠いております。11月の製造業PMIは3ヶ月連続で上昇し改善の兆しが見られた一方で、非製造業PMIは低下したものの好不況の境目である50を維持しました。足元の輸出は堅調に推移していますが、中国にとって最大の輸出相手国である米国の大統領選挙でトランプ氏が勝利し、今後中国に対して厳しい姿勢で臨むことが予想されていることから、今後の政策次第で対応が迫られる状況となっております。輸出主導である台湾においても、外需の減少により厳しい状況となりましたが、業種によっては回復の兆しが現れております。韓国においては、景気全般は横ばいで推移しましたが、自動車関連産業や航空機関連産業は回復基調にあります。その他のアジア諸国においては、国によって強弱のある結果となりました。

上記のように国によってまだら模様となっているものの、大きく落ち込んだ前期と比較すると売上高は増加しましたが、各種コストの増加等を背景に営業利益は減少しました。

 

② 財政状態

(資産)

総資産は、前期末と比較して7,131百万円増加し、257,256百万円となりました。

流動資産は、前期末と比較して3,063百万円減少し、144,453百万円となりました。これは主に、現金及び預金が2,195百万円、原材料及び貯蔵品が516百万円減少したことによるものであります。

固定資産は、前期末と比較して10,081百万円増加し、112,689百万円となりました。これは主に、建設仮勘定が5,224百万円、子会社株式の取得に伴いのれん及びその他の無形固定資産が増加したことによるものであります。

 

(負債)

負債は、前期末と比較して22,360百万円増加し、77,844百万円となりました。

流動負債は、前期末と比較して2,908百万円増加し、27,461百万円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が2,542百万円増加したことによるものであります。

固定負債は、前期末と比較して19,451百万円増加し、50,383百万円となりました。これは主に、長期借入金が3,822百万円減少した一方で、転換社債型新株予約権付社債が22,188百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

純資産は、前期末と比較して15,228百万円減少し、179,411百万円となりました。これは主に、自己株式が21,932百万円、利益剰余金が7,767百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は64.8%(前期末は72.6%)となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースでの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は48,206百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,516百万円の減少となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は28,557百万円(前期比5,226百万円増)となりました。これは税金等調整前当期純利益19,803百万円、減価償却費11,824百万円、法人税等の支払額5,521百万円等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は21,741百万円(前期比13,197百万円増)となりました。これは有形固定資産の取得による支出15,509百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出5,418百万円等であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は7,985百万円(前期比4,153百万円増)となりました。これは転換社債型新株予約権付社債の発行による収入22,087百万円、自己株式の取得による支出22,001百万円、配当金の支払額5,612百万円等であります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績及び受注状況

当社グループの生産品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であってもその形状は一様ではなく、正確な生産規模としての把握が困難であり、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメント別に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

  

b. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

50,516

+1.8

米州

34,537

+7.5

欧州・アフリカ

36,536

+8.8

アジア

33,926

+4.8

合計

155,517

+5.3

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  主な販売先については、総販売実績の100分の10以上の販売先がないため記載を省略しております。

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高が前期比5.3%増加155,517百万円、営業利益は前期比4.7%減少18,868百万円となりました。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、海外市場と比較してシェアの高い国内市場の自動車関連産業や航空機関連産業の需要動向、輸出に関連する為替状況等が挙げられます。当連結会計年度は、自動車関連産業は日本において認証不正問題による生産への影響が工具の需要に影響しました。欧州や東南アジアにおいても自動車の需要が減少し、厳しい状況となっております。一方で航空機関連産業は欧米での回復が継続しており、中華圏の市況も底打ちの兆しが見られるようになりました。その結果、為替変動による円安影響もあり、売上は過去最高であった2023年11月期を上回ることができましたが人件費等の費用の増加により、前連結会計年度と比較して減益となりました。

 

② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、超硬材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&Aによるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金の調達につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本とし、場合によっては社債の発行等を行うなど、資金調達の多様性を図っております。

当連結会計年度末における有利子負債の残高は49,099百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は48,206百万円となっております。

 

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としますが、これらの見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(のれんの減損)

当社グループは、のれんについて、発生日以降20年以内の年数(主として国内連結子会社は5年間、在外連結子会社は10年間)で均等償却しております。その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初想定していた収益が見込めなくなった場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

(繰延税金資産)

当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、世界市場におけるシェア拡大を目指し、国際競争力のある製品を開発すべく、基礎研究から応用研究に至るまで積極的な研究開発活動を行っています。また、SDGs達成につながる社会課題解決への貢献を目的として「環境に配慮した製品開発」を掲げ、エコプロダクツ評価基準を設定し、新製品開発時に達成すべき指標としています。研究開発活動は当社のデザインセンターとRDセンターを中心に行っており、長期的な基礎研究については、大学、国公立の研究機関との共同研究も行っています。

デザインセンターは、タップ、エンドミル、ドリル、転造工具及びゲージ等の製品開発や改良を行っています。また、当部門は切削試験専用の各種最新工作機械及び開発設備を有し、多様な使用条件下での切削試験による製品開発への迅速なフィードバックと、工具性能を最大限に生かす加工技術の開発を行っています。また、当施設内のD-Labにて、最先端の工具製造開発及びスマートファクトリーのパイロットライン開発に取り組んでいます。

RDセンターは、PVDコーティング、CVDダイヤモンドコーティング及び窒化処理等の表面改質技術、高速度鋼及びダイス鋼材料の開発改良技術及び熱処理技術の研究開発を行っています。

一部の研究開発はデザインセンター、RDセンターと連結子会社が連携して進めており、超硬合金材料は日本ハードメタル㈱との共同研究開発体制を採っています。

当連結会計年度の研究開発費の総額は1,619百万円であります。

当社グループは、精密機械工具の生産・販売体制を基礎とした地域別のセグメントから構成されており、研究開発活動は主に当社を中心とした日本セグメントで行っております。当該セグメントにおける主な製品別の研究開発の成果は、次のとおりであります。

 

① 穴あけ加工工具(ねじ切り工具・ドリル)

穴あけ加工工具の主力製品であるタップとドリルは、金属切削加工の汎用的な工具として多様なユーザー、業界において使用されるため、高能率加工と安定性の向上を基本とした製品開発に取り組んでいます。

当期においては、Aブランド転造タップ「A-XPF」に対しバリエーション拡充を継続して行いました。本製品が実現する安定した連続ねじ立て加工により、非切削時間削減による消費電力の抑制が可能となります。また、転造タップは性能面の向上に加えて、環境にも配慮したGREEN TAP「GRT」の製品化を行いました。併せてドリルも環境に配慮した「AD-2D Gtag」の製品化を行いました。

 

② ミーリングカッター

金型、航空機、重電機を主要なユーザーとして生産性の向上及び難削材加工の高能率化を重点課題とする開発に取り組んでいます。

当期においては、高硬度鋼用超硬エンドミルシリーズへ高精度仕上げ用2刃ラジアスタイプ「AE-CPR2-H」の追加と高能率仕上げ用4刃ラジアスタイプ「AE-CPR4-H」の拡充を行い、金型加工用のAブランドエンドミルの拡充を行いました。また、環境にも配慮した「AE-VMS Gtag」の製品化を行いました。

 

③ 転造工具

転造工具はすべてが受注生産であり、多様なユーザーニーズに基づく迅速な製品開発と改良に対応する研究開発を行っています。

注力市場である北中米において連結子会社のOSG EX-CELL-O GmbH製CNCスプラインラックダイス用転造盤を活用し、ラック形転造ダイスの受注へと繋げました。

 

④ 表面改質

PVDコーティング、CVDダイヤモンドコーティング及び窒化処理等の表面改質技術の基礎研究と応用開発を主に行っています。

当期においては、シャンクツールに関しては小径工具用コーティングの開発を進め、シャンクツール以外に関してはホブ用コーティングの開発や金型用大型コーティング装置の立ち上げを行いました。

 

⑤ 硬脆材加工用工具

精密金型に用いられる超硬合金や半導体製造装置の部品として使用されるセラミックス等の硬脆材は、研削や放電による加工が一般的となっております。

当期においては、硬脆材の切削加工を可能とする工具シリーズ「6CxOSG」の販売を強化し、従来の加工と比べ加工時間の短縮及び優れた加工精度を訴求しています。