文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、2019年11月13日に、2021年3月期を初年度とする5ヵ年の中期経営計画「Growth 2025」を公表いたしました。
『食の「おいしい」や「温かい」を世界の人々へ』を新ビジョンとして掲げ、食の分野で、「おいしい」や「温かい」という価値を追求する製品・商品・サービス・情報を国内外の事業者に提供し、食文化の向上を通じて社会に貢献できる企業へと成長することを目標に、グループ一丸となって取り組んでまいります。
(2)目標とする経営指標
中期経営計画の最終年度である2025年3月期の連結目標数値を、以下のように策定しております。
① 売上高 159億円
② 営業利益 19億円
③ 営業利益率 11.9%
④ ROE 9.0%
なお、上記目標値は、当初設定から見直しを行っております。詳細につきましては、2024年5月13日付で公表しております「中期経営計画の業績目標修正のお知らせ」をご参照ください。
(3)中長期的な会社の経営戦略と事業上および財務上の対処すべき課題
当社は、1961年に製菓機械メーカーとして創業、そして、1981年に世界初の量産型小型寿司ロボットを開発し、世界の約80ヵ国に寿司ロボットを販売するグローバル企業へと成長してまいりました。
事業成長と社会的価値向上による企業価値の最大化を図るために、「既存マーケットの拡大と深耕を推進する」「新たな成長分野・事業を構築する」「事業の成長に資する投資を積極的に実行する」の3点に加え、「新型コロナウイルス感染症拡大への対応」を対処すべき重要課題と定めております。
新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大は、世界的な景気の後退を引き起こす可能性があるだけではなく、世の中全体の価値観やライフスタイルにも大きな変化をもたらすものであると考えております。
短期的には、外食需要の低迷による顧客店舗数の減少や顧客の設備投資計画の見直し等による事業への影響が見込まれます。しかしながら、中長期的には、人々の価値観やライフスタイルの変化が、食に対する新たなニーズやビジネスを生み出すことにつながり、新しい生活様式へ移行する中で、当社の製品やサービスへのニーズが高まっていくものと考えております。
新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえ、当社の中長期的な経営戦略を以下のように策定しております。
① 成長戦略
・国内戦略
当社が市場シェアの約80%を占める寿司ロボットのマーケットは、成熟期を迎えています。このマーケットに続く、未導入の業態や店舗が多く存在する盛付けマーケットの創造を推進します。新型コロナウイルス感染症を契機とした衛生意識の高まり、フードロスへの関心の高まりを背景に盛付けロボットを活用してご飯を提供するスタイルがさらに加速するものと考えております。
また、マーケティング・開発体制の強化と社外ネットワークを活用したオープンイノベーションを推進し、「世の中にない」「社会を豊かにする」製品開発を強化します。店内飲食が中心の外食店舗にも、テイクアウトやデリバリーサービスを行う店舗が増えてきており、外食産業の業態の多様化に対応した製品開発も強化していきます。
・海外戦略
寿司、おむすびなどの米飯食は世界的レベルで認知度が高まっており、市場の拡大が見込まれます。海外マーケットのさらなる成長を実現していくために、北米・アジア・欧州の主要3市場の深耕と中東などの第4の市場創造を推進します。
・新規事業の創出
「社会変化:食のライフスタイル・未来像」「技術基盤:米飯工加工関連技術×新技術」「事業ネットワーク:グローバルフードバリューチェーン」の3つのテーマを柱に、自前主義から脱却し、M&A・提携を活用し、外部との共創により、これまでの枠を越えた新製品・新規事業の創出を図ります。
② 資本・財務戦略
事業を成長させるための新製品・新事業投資、設備投資、無形資産投資を積極的に推進し、企業価値の最大化を図ります。新型コロナウイルス感染症の影響により事業環境が大きく変化している中で、新規事業やM&A等の事業成長に資する投資機会が拡大すると見込まれ、こうした成長機会を積極的に取り込んでいきたいと考えております。
総還元性向(配当金・自己株式取得)30%以上を基本方針とし、中間配当と期末配当の年2回の株主還元を行い、機関投資家および個人投資家向けIRの積極的な推進と国内外への情報開示を強化してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、ビジョンとして:『食の「おいしい」や「温かい」を世界の人々へ』、ミッションとして:「豊かで、多様な、食生活を楽しむことができる社会を実現する」を掲げ、食を通じた持続的で豊かな社会・地球環境づくりを目指しています。
現在、当社グループを取り巻く社会・地球環境は、重大な危機に直面し、持続的な社会に移行していくために、早急かつ大胆な行動と社会の変革が求められています。特に気候変動や人権問題、自然資本の問題は、世界規模で深刻化しており、その影響は広範囲に広がっています。また、多様な属性、価値観、働き方を受容し、社員が持つ可能性を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上を目指す人的資本経営が求められています。
こうした中で、当社グループは、持続可能な社会の実現に向けて、ステークホルダーに対する社会的責任を持続的な仕組みの中で果たしていくことを、経営上の最も重要な課題の一つととらえ、適切なガバナンス体制を構築し、サステナビリティに関する戦略検討やリスク管理を行っていきます。
①取締役会
当社の取締役会は、経営の基本方針等、法令上取締役会の専決事項として定められた事項の決定及び執行役員の職務遂行に対する監督を主な役割としています。
取締役会は、様々な知見・経験を含む、多様性を備えた取締役で構成されています。取締役会では、気候関連、自然環境、人権、人的資本等のサステナビリティに関する業務執行について最終的な監督を行っています。
②経営会議
当社の経営会議は、全ての執行役員と議論に必要な関係者が参加し、業務執行上の重要な意思決定や、業務執行の中で十分な議論を必要とする重要な事項についての協議を行っています。
その中で、当社のビジョンやミッションに照らしたサステナビリティのあり方や進め方の議論を行っています。今後は、サステナビリティに関する委員会を設置し、持続的な社会の実現に向けた議論を深め、戦略的な取り組みを実行していくためのさらなる体制作りを進めていきます。
2.リスク管理
当社は、事業や業務に係るリスクについて適切に管理する体制整備に取り組んでおります。リスク管理においては、リスクと機会の重要性を定期的にモニタリングし、その中でも経営への影響が特に大きく、対応の強化が必要なリスクは、取締役会や経営会議で適切な対応策を協議しています。
気候変動、人権等の課題解決に向けた国際社会の意識が高まる中、これらへの対応が経営に重要な影響を与えるリスクであると認識し、さらなるリスク管理体制の構築を進めて参ります。
3.戦略
①環境について
当社は、「食」をドメインとして定め、省人省力化や食の付加価値向上に関わる製品・サービス・システムを顧客に提供しています。
食の豊かさの源泉は、自然環境やそこから生み出される天然資源にあります。当社グループは、寿司ロボット等の米飯加工機械の製造・販売を主要事業としていますが、寿司ロボットだけでは「おいしい」お寿司を作り出すことはできず、多様で豊かな水産資源や実り豊かなお米があって、初めておいしいお寿司を作り出すことができます。
このような当社の事業や提供価値と密接に結びつく食の豊かさと多様性を守るために、持続的で豊かな社会・環境づくりに結び付く、具体的な戦略や取り組み、指標と目標の検討を進めて参ります。
②人的資本について
当社は食の分野で、「おいしい」や「温かい」という価値を追求する製品・商品・サービス・情報を国内外の事業者に提供し、食文化の向上を通じて社会に貢献できる企業へと成長するために、多様かつ優秀な人材が不可欠であることから、経営の重要なテーマと認識しております。中期経営計画Growth2025にも示すとおり、事業競争力を向上させる人材および環境整備への投資に取り組んでいき、さらなる企業成長をめざします。
なお、主な指標に関する数値は、連結グループにおける記載が困難であるため、具体的な取り組みが行われている提出会社のものを記載しております。
(人材育成方針)
当社は、社員一人ひとりが成長し企業価値を高めていくために、社員に求める基本的な考え方と社員との向き合い方を定め、現在、そして未来の社会が求める価値を生み出すことができる人材を育成していく取り組みをしていきます。
ⅰ.人事制度の刷新
当社の持続的な成長戦略を実現するために、求める人物像と人事ポリシーを再定義し、新たな人事制度の検討を進めております。新制度では、等級・報酬制度の整備による人材採用力強化や、評価制度による人材育成の基盤づくりを目指します。
ⅱ.人材ポートフォリオの構築
今後の当社の持続的な成長戦略において、その実現に必要な人材の採用・育成・適正配置を行うために、人材ポートフォリオの構築を進めております。まずは、その基盤となる人材データベースを整備するためタレントマネジメントシステムを導入しました。第65期は、データベースの充実に必要な人材情報について検討し、人材戦略への活用を目指します。
ⅲ.全社教育体系の見直し
今後の当社の経営の中核を担う人材の育成を目的とした「次世代経営人材候補向け研修」や評価制度を通じた人材育成の強化を目的とした「評価者向け研修」の充実を図ってきました。今後は人事制度の刷新に伴い、全社的な階層別教育や専門性を高めるための教育・研修体系を見直すことで、人材育成を加速させていきます。
(社内環境整備方針)
「当社の持続的成長」と「社員のエンゲージメント向上」を実現するために、多様な価値観や専門性を持つ人材が活躍できる職場環境の整備と、それによる労働生産性の向上を目指しております。
ⅰ.多様な働き方の促進
個々人の働き方が多様化する中、ワーク・ライフ・バランスの実現や個人の主体性を持った働き方を実現するため、フレックスタイム制度を一部導入しました。今後はテレワークを含め導入拡大を引き続き検討していきます。また、多様な働き方を実現するため、場所を選ばず、かつ生産性向上を目指したDX化もあわせて進めております。
ⅱ.健康経営の推進
会社の持続的な成長には社員の心身の健康が不可欠と考え、当社では「健康経営の推進」も重要な施策と捉えております。定期健康診断やストレスチェックの実施等、各種取り組みを実施しています。
〇主な指標
研修:次世代14名×3、評価者58名
健康診断:1名産休の社員が未受診
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)顧客の出店計画に関するリスク
当社は、回転寿司、丼チェーン店等の外食業態やスーパーマーケット等の中食業態を主力ユーザーとしております。このような広域に店舗展開している大手チェーンストアを中心に、継続的に当社製品を採用頂いております。
当社は、お客様に対する提案営業の充実やお客様のニーズに基づいた新製品の市場投入等を随時行っておりますが、お客様の新規出店・改装等の設備投資計画の変更や中止により、当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
(2)市場競争に関するリスク
当社が主要な事業領域としている米飯加工機械市場においては、当社の他、業務用米飯加工機械を製造している数社の業者が参入しております。当社は、他社に先駆けて1981年より小型寿司ロボットの製造販売を開始し、米飯加工機械市場において、一定の市場シェアを有しているものと考えています。今後におきましても、顧客ニーズを先取りする新製品の開発に力を注いでまいりますが、将来においても、当社の市場シェアを維持できる保証はなく、更に競争が激化した場合には、当社製品の市場シェアが低下するなど、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)海外事業に関するリスク
当社が海外展開を行っている事業は、各国税制や各国法規制の予期せぬ変化、移転価格や事前確認申請の交渉における予期せぬ結果、各国政府による許認可政策や補助金政策の変化、急激な為替レートの変動、各国の政情不安等の海外事業に付随したリスクを抱えております。これらのリスクが顕在化した場合、海外市場での安定的な製品の販売が困難となり、当社の経営成績に影響を与え、事業の成長を阻害する可能性があります。
(4)連結財務諸表に与える為替変動リスク
海外連結子会社における営業収益、費用及び資産等の現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算しております。従って、円換算時の為替レートにより、これらの項目の円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、為替レートの変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)業績の季節変動に関するリスク
当社は、国内の年末年始休暇及び恵方巻シーズンを前に資材品や機械の入替・導入需要が高まり、第3四半期に売上高及び利益が偏重する傾向があります。
(6)企業買収及び事業・資本提携に関するリスク
当社は、既存の事業基盤の強化・拡大、新事業分野への進出のために、事業戦略の一環として企業買収及び事業・資本提携を行う可能性があります。当社は2019年11月6日に中東地域に新たな日本的な米飯加工市場を創造する取り組みを行うため、中東地域で米飯加工品の製造販売を行うBluefin Trading LLCの株式の35%を取得しております。また、2021年10月1日に飲食店の省人化・効率化を実現する新たな製品・サービスの構築を目指し、主に飲食店向けのPOSシステムやセルフオーダーシステム、配膳ロボット等の店舗システム関連の開発・販売に関する事業を行っている株式会社日本システムプロジェクトの株式の100%を取得しました。2022年4月1日にはサービス体制の強化を図るため、関東甲信越エリアにおける当社製品のサービスの外部委託先であったスズモメンテナンス株式会社の株式の100%を取得し、同年6月1日には同社を吸収合併しております。このような企業買収及び事業・資本提携の実施に際しては、十分なリスクの検討を行いますが、企業買収後の事業計画が当初の計画通りに進捗しない場合には、多額の資金投入が発生し、又はその収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなることにより減損処理が必要となる場合には、減損損失を計上し、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)知的財産に関するリスク
当社は、知的財産の重要性を認識し、多くの特許を保有してきましたが、特定の国では特許権が完全に保護されない場合や第三者が当社の特許を侵害し、類似製品や模倣した製品を製造・販売した場合に、これらを防止できず、ユーザー及びターゲットの喪失により、当社の事業優位性に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の事業が他者の知的財産権を侵害した場合、損害賠償請求又は使用差止請求等の訴訟費用の発生により、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)原材料・資材の調達に関するリスク
当社は、外部の供給業者から多くの原材料や部品を調達しています。こうした原材料や部品の価格が需給のひっ迫や市況の変動等によって急激に高騰し、それらが長期化した場合は利益を減少させる可能性があります。また、原材料や部品の調達に支障をきたした場合、製品の製造や販売が困難となり、経営成績の悪化を招く可能性があります。
(9)製品・サービス品質に関するリスク
当社はISOによる品質管理体制を構築していますが、当社が提供する製品やサービスに重大な瑕疵や欠陥があった場合、多額の賠償責任を負う可能性があり、当社の経営成績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、そのような事態が発生した場合には、当社に対する社会的評価及びブランド価値の低下を招き、当社製品に対する需要を減退させ、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)自然災害等の予測困難な事象に関するリスク
当社は、日本、アメリカ、シンガポールを拠点として日本、北米、アジア、欧州その他地域で事業活動を営んでおり、特に生産活動は東京工場のみで行っております。それらの国・地域において地震・台風・洪水といった自然災害、戦争・テロ・事故及び火災等の予測困難な事象が発生した場合、製品の製造や物流、販売活動に被害を受けることにより、当社の経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。
(11)感染症に関するリスク
当社は、回転寿司、丼チェーン店等の外食業態やスーパーマーケット等の中食業態を主力ユーザーとしております。感染症の影響により、インバウンド消費を含む外食需要の低迷による顧客数や顧客店舗数の減少、又は顧客の新店計画、既存店における当社の機械の入替計画の中止や見直しが発生し、当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。また、各国において都市閉鎖、外出制限等が実施された場合、国内外の物流網の停滞により、海外市場への製品販売や部材調達が困難となり、当社の経営成績に影響を与え、事業の成長を阻害する可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の分類が5類感染症へ移行したことに加え、雇用・所得環境の改善により個人消費にも持ち直しの動きがみられ、加えてインバウンド需要の増加により、消費関連の景況感は緩やかに回復してきております。一方で物価上昇や世界的な金融引き締めに伴う影響及び中国経済の先行き懸念など海外景気の下振れが国内経済の景気を下押しするリスクとなる等、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。
このような環境の下、当連結会計年度は、外食・小売業における機械化や省人化の動きは引き続き継続しており、製品需要は堅調に推移しました。なお、前々連結会計年度より継続していた半導体や部材の供給不足による生産活動への影響は、第1四半期連結累計期間より概ね解消しております。
国内は、原材料価格やエネルギー価格の高騰により、外食・小売業にとっては厳しい事業環境が続いておりますが、2023年5月に新型コロナウイルスの5類移行、インバウンド需要の回復、および人手不足を背景とした省人化の動きは継続し、製品需要は堅調に推移しました。製品・業態別では、ご飯盛付けロボット(Fuwarica)はレストラン・食堂業態における入替需要や新規顧客の拡大、スーパーマーケットからの増設需要やホテル・旅館・給食業態における新規顧客が拡大しました。寿司ロボットは大手回転寿司チェーンからの入替需要が牽引したほか、スーパーマーケットの入替・増設需要が堅調に推移しました。その結果、国内売上高は前連結会計年度を上回りました。
海外は、外食・小売業における人手不足の深刻化や人件費の高騰により、機械化や省人化の動きは引き続き継続しているものの、インフレや金融引き締め、ウクライナ情勢を巡る地政学的リスクなどを背景に事業者の設備投資意欲は減退しました。地域別では、東アジアや東南アジアは、外食需要の回復が引き続き進んでいること、日系企業の海外進出の増加に伴い製品需要は堅調に推移し、北米においても機械化や省人化の動きを背景に製品需要は堅調に推移いたしました。一方、欧州は、ウクライナ情勢によるエネルギー価格高騰や供給懸念の深刻化に伴う事業者への影響が継続しており、設備投資計画の中止や延期等により売上高が減少しました。その結果、海外売上高は前連結会計年度を下回りました。
この結果、当連結会計年度の売上高は、145億14百万円(前連結会計年度比7.9%増)と前連結会計年度を上回る結果となりました。国内・海外別の売上高の内訳は、国内売上高が102億57百万円(同14.9%増)、海外売上高が42億57百万円(同6.0%減)となりました。
当連結会計年度の概況
利益面につきましては、売上高の増加に加えて、米国子会社における棚卸資産の未実現利益消去額が減少したことにより、売上総利益は68億55百万円(同7.6%増)と前連結会計年度を上回りました。営業利益は、前連結会計年度に行った事業成長を見据えた基盤構築に伴う人件費、本社移転に伴う賃借料、基幹システムの入替等に伴う償却費、円安による海外子会社のコスト増を中心に販売費及び一般管理費が増加したものの、一方では海外の売上高減少、燃料費高騰の落ち着きによる荷造運送費の減少、コンサル費用や展示会費用等がコストコントロールの効果により減少し、14億75百万円(同22.5%増)と前連結会計年度を上回りました。経常利益は、前連結会計年度に持分法適用会社Bluefin Trading LLCの持分法による投資損失1億27百万円を営業外費用に計上した影響がなくなり、14億98百万円(同31.5%増)と前連結会計年度を上回りました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社の株式会社日本システムプロジェクトの業績が想定よりも悪化したため、同社に係るのれんの減損損失として28百万円を特別損失に計上したものの、関東サービス拠点の統合移転により、旧サービス拠点用地の売却に伴う固定資産売却益として75百万円を特別利益に計上し、11億40百万円(同38.1%増)と前連結会計年度を上回りました。
財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ11億68百万円増加し182億1百万円となりました。これは主に、棚卸資産が1億99百万円減少した一方で、現金及び預金が11億51百万円、固定資産が1億61百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ3億4百万円増加し36億20百万円となりました。これは主に、未払法人税等が1億20百万円、未払消費税等が1億8百万円、資産除去債務が92百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ8億64百万円増加し145億80百万円となりました。これは主に、利益剰余金が配当金の支払により4億円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益により11億40百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ11億51百万円増加し60億17百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額4億3百万円による資金の減少はありましたが、税金等調整前当期純利益15億44百万円、減価償却費4億94百万円等による資金の増加により、22億88百万円の資金の増加(前連結会計年度比22億99百万円の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入2億46百万円による資金の増加はありましたが、有形固定資産の取得による支出5億52百万円、無形固定資産の取得による支出3億42百万円等の資金の減少により、6億53百万円の資金の減少(前連結会計年度比24億8百万円の増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払4億円、長期借入金の返済による支出60百万円、リース債務の返済による支出71百万円等による資金の減少の結果、5億38百万円の資金の減少(前連結会計年度比75百万円の減少)となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、『食の「おいしい」や「温かい」を世界の人々へ』をビジョンとして掲げ、2019年11月13日に、2021年3月期を初年度とする5ヵ年の中期経営計画「Growth 2025」を公表し、新たな目標に向けて事業活動に取り組んでまいりました。
財政状態の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
経営成績の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、当社グループの2023年3月期及び2024年3月期の実績、中期経営計画の最終年度である2025年3月期の目標数値は次のとおりであります。
上記目標値は、当初設定から見直しを行っております。詳細につきましては、2024年5月13日付で公表しております「中期経営計画の業績目標修正のお知らせ」をご参照ください。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの資金需要の主なものは、新工場の建設用地や金型等の設備投資、出資等の長期資金需要と製品製造のための材料・部品購入、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。
(財務政策)
当社グループは、事業活動のための適切な流動性を確保し、事業戦略上必要となる投資等の資金需要に適応できる財務構造の確立を目指しております。また、営業キャッシュ・フローから生み出される資金を中心にして将来必要となる設備資金および運転資金を手当てしてまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財務状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
会計方針の適用および会計上の見積りにあたって、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
a.棚卸資産の評価損
当社グループは、商品、製品、原材料、仕掛品については総平均法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)で、貯蔵品については最終仕入原価法で評価しております。棚卸資産の評価は、棚卸資産が原価法に基づき正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施されております。当社グループは、主に長期滞留在庫や収益性の低下した製品在庫などについて、棚卸資産の評価損として計上しております。当社グループの棚卸資産の評価は適正と判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、棚卸資産評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
b.繰延税金資産
繰延税金資産に用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
c.退職給付費用及び債務
当社グループの主要な退職給付制度は、当社における退職一時金制度です。従業員の退職給付費用及び債務は、割引率、退職率、死亡率を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率は、退職給付費用及び債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期国債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
当社は、2019 年 11 月に5ヵ年の中期経営計画「Growth2025」を発表し、「新たな成長分野・事業を構築する」ことを重要な取り組みとして位置付けております。新型コロナウイルス感染症が世界中で拡大し、人々のライフスタイルが大きく変化する中で、デジタルトランスフォーメーションが加速し、この変化に合わせたサービスや事業が創出され、人々の価値観も大きく変化しました。「食」の領域でも同様に、「消費者・事業者の衛生意識の高まり」や「テイクアウトやデリバリーといった新たな食のビジネスの発展」など、新しいニーズやビジネスが創出されております。加えて、フードテック革命といわれる転換期でもあり、市場変化に対応した新たな「食を提供する価値」や「オペレーション」を実現するための技術進歩が求められています。
当社は、2021年10月に株式を取得した日本システムプロジェクトが持つ通信ネットワークの技術や、最終消費者を起点とする製品・サービスを活用することにより、飲食店の厨房のみならず、客席フロアを含めて、省人化・効率化を実現する新たな製品・サービスの構築を目指しています。当社は、これまでハードウエア単体による生産効率やおいしさを追求してきましたが、これからは、ハードウエア間の連携やソフトウエアとの融合による、「飲食店向けトータルソリューション」を追求することで、新たな付加価値を事業者や最終消費者のみなさまに提供していきたいと考えています。
研究開発活動は、AI、IoT、ロボティクス、ビッグデータ等に代表される最先端技術の動向を踏まえて、当社のこれまでの技術基盤を活用し、「世の中にない」「社会を豊かにする」を製品開発テーマとして、①開発人員の増強と体制の再構築、②研究・マーケティング体制の強化、③社外ネットワークを活用したオープンイノベーションの推進、④自社の特許・知財情報の分析と活用の4つを重点施策として、研究開発活動に取り組んでまいります。
研究開発活動は、東京工場の技術部門および東京本社の企画部門が、グループ会社や社外ネットワークを活用して行っております。なお、当連結会計年度における研究開発費は