文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針、経営戦略等
当社は、ビジョンとして「高齢者が笑顔で居る未来を堅守する」を掲げ、家族が心の介護に向き合い、高齢者が笑顔で居る社会の実現を目指しております。
介護家族に向けた「シニアライフサポート事業」と、シニアホームに向けた「ケアプライム事業」を行っており、経営戦略は以下のとおりであります。
(a) シニアライフサポート事業
介護家族が高齢者の心の介護に寄り添える状態を増やすことを目的に、家族会議実施数(※13)を増やしてまいります。そのために、チーム制を活かしたMSW等からの紹介獲得のためにSales EnablementのPDCAサイクル(※14)を回すことでオペレーショナル・エクセレンスの浸透を図り、新人コーディネーターの早期立ち上がりを実現し、サービスの均質化を図ってまいります。
そのうえで、当社では主力の大阪・東京におけるMSWが在籍する病院のカバー率は大阪で80%(276病院/348病院)、東京で76%(283病院/374病院)と高い状況であると認識しておりますが、大阪・東京における紹介事業者利用率(※15)はそれぞれ約46%と推測され、また、病院からの想定シェア率(※16)は大阪で16%(634人/4024人)、東京で16%(584人/3,650人)と、すべての紹介パートナーにアクセスできていない病院も多く、更なるシェア拡大の余地は大きいと考えるため、まずは既存エリアの深耕を優先的に実施してまいります。
その後、その他展開地域において、MSWが在籍する病院のカバー率は27%(264病院/966病院)であり、紹介事業者利用率は約25%と推測され、病院からの想定シェア率は7%(496人/7,314人)であることから、都市圏で確たる地位を築いた後に展開する予定であります。
(b) ケアプライム事業
ケアプライムコミュニティサイトの登録を通じて全国のシニアホームのサービス向上に向けた情報提供を一斉に行うことを目的として、オンライン連携を推進してまいります。全国における当社の紹介対象となりうる主なシニアホーム数は38,788ホーム(有料老人ホーム16,724ホーム、サービス付き高齢者向け住宅で7,979ホーム、グループホーム14,085ホーム。2021年各調査(※17)より)となっております。
また、現在ケアプライムコミュニティサイトを通じて、全国のシニア運営事業者へサービスの質向上に向けた入居検討者及び介護家族の声を効率的に配信しております。今後は入居検討者及び介護家族の満足度向上に繋がるシニアホームを増やすことを目的に、ケアプライムコミュニティサイトを通じてシニアホーム新規開設情報やサービス向上に繋がると思われる情報を広告媒体として配信する等、シニアホームのサービス向上を通じて高齢者の笑顔を増やしてまいります。
※13 家族会議実施数とは、当社のコーディネーターが本人や介護者と対面や電話、オンラインのいずれかでシニアホーム選定のための条件や要望確認、優先順位の整理等の話し合いを実施した案件数をいう。
※14 PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念をいう。当社では、新人コーディネーターの早期立ち上げを実現するためのPDCAサイクルとして、Plan:立ち上がりの道筋をつけるため成長ステップ及び成長スピードを設定、Do:時間と場所を選ばないラーニングツールとして成功事例をマニュアル化し、営業学習コンテンツでのラーニングと実践、Check&Action:基礎知識を応用力にするため、マネジャーとの1on1を通じたモニタリング及び改善活動を行うことをいう。
※15 紹介事業者利用率:PwCコンサルティング「高齢者向け住まい等の紹介の在り方に関する調査研究報告書(2021年3月)」をもとに記載。
・大阪:近畿圏の介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)の加重平均値
・東京:首都圏の介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)の加重平均値
※16 病院からの想定シェア率:「当社病院からのスマイル数÷紹介事業者を利用した病院からの新規入居者想定数(①有料老人ホーム②サービス付き高齢者向け住宅③グループホーム)」にて算出。新規入居者想定数は以下のとおり算出。
①有料老人ホーム=(在所数の増加人数+想定入れ替わり数)×紹介事業者利用率×医療機関からの入居率
・在所数の増加人数:社会福祉施設等調査における在所数の2020年から2021年の増加人数
・想定入れ替わり数:社会福祉施設等調査の2020年在所数に入れ替わり率を乗じ算出
・入れ替わり率:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査結果の概況(2016年)」の平均在所日数(1,284日≒3.5年)から試算した回転率(1÷3.5年)を使用
②サービス付き高齢者向け住宅=(戸数の増加数+想定入れ替わり数)×紹介事業者利用率×医療機関からの入居率
・戸数の増加数:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「都道府県別登録状況」における戸数の2020年から2021年の増加数
・想定入れ替わり数:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「都道府県別登録状況」の2020年戸数に入れ替わり率(上記有料老人ホーム参照)を乗じ算出
③グループホーム=想定新規入居者数×紹介事業者利用率×医療機関からの入居率
・想定新規入居者数:令和3年度全国グループホーム実態調査における各地区ごとの新規入居者数×各都道府県の割合÷調査サンプル率(19%=27,527人÷144,570人)
・各都道府県の割合:介護サービス施設・事業所調査における都道府県別総数÷各地区の総数
・なお、グループホームは他2施設と異なり、新規入居者数を直接求めていることから入れ替わり数の計算は行っていない。
参照 医療機関からの入居率は令和3年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究報告書より
※17 有料老人ホーム:社会福祉施設等調査より(2021年)
サービス付き高齢者向け住宅:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムより(2021年)
グループホーム:介護サービス施設事業所調査の概況 より(2021年)
当社が中長期的に目指す社会像は以下のとおりです。


KPI1:MSWからの紹介数
KPI2:家族会議実施数
KPI3:スマイル数
KPI4:プラットフォームサイト登録数
当社は、2023年4月13日開催の取締役会にて、「ビジョン(社会インパクト)」を実現するための基本方針を決議しております。当社が、事業成長を伴いながら、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトの創出を意図する企業として「インパクトIPO(※18)」を目指す上で、ビジョン(社会インパクト)を設定し、継続的に以下3点に取組むための方針を定めました。
(1)「インパクト測定及びマネジメント(インパクト・メジャメント&マネジメント(※19))」
を行う
(2)インパクトに関する情報を開示・発信する
(3)ステークホルダーとのエンゲージメント活動を積極的に行う
上記の基本方針を基に、当社は、事業を通じて、介護家族が高齢者に対する「心の介護」に専念できるよう、「介護家族にとって、ホーム介護の利用が『ポジティブ/当たり前』になっている状態」を目指し、「家族が心の介護に向き合い、高齢者が笑顔で居る社会」の創出に貢献してまいります。
また、このような社会の創出を目指して、中長期的に
・「マッチするシニアホームとの出会いにより、負担が軽減している介護家族が47都道府県で増加」
・「自らの強みを伸ばしてサービスの質を上げ、介護家族に安心を提供しているシニアホームの増加」
という2つの社会変化(インパクト)を目指して以下のとおり、事業展開をしてまいります。
(a) 「マッチするシニアホームとの出会いにより、負担が軽減している介護家族が47都道府県で増加」の社会変化の実現のために、以下の2つの指針に基づき、シニアライフサポート事業を展開してまいります。
(イ)介護家族が、シニアホームの情報と接点を持ち、家族会議を実施していること
当社は、入居検討者がシニアホームへの入居を検討するに当たり家族との話し合いの場(家族会議)を持つことで、家族内でシニアホームへの納得感が醸成され、家族をシニアホームに入居させることに対する介護家族の心理的負担が大きく削減されると考えており、シニアホームへの入居を検討している家族に対して家族会議の場を持つことを推奨し、それを経営指標としてモニタリングしております。その結果、家族会議を経てシニアホーム入居を決めた入居検討者は、その後実際にシニアホームへの入居に至ることが多くなっております。
(ロ)当社への相談の結果、マッチするシニアホームとの出会いにより、介護家族の負担が軽減していること
当社は、介護家族が抱える課題の多くはシニアホーム介護の適切な利用によって解決することができると考え、シニアホーム介護の利用を促進することで、介護を担う家族の介護の負担が軽減され、高齢者に対する「心の介護」に専念できる状態を作り出します。それを計測する経営指標として、マッチするシニアホームと出会い入居に至った入居対象者(成約数)の数をモニタリングしております。
(b)「自らの強みを伸ばしてサービスの質を上げ、介護家族に安心を提供しているシニアホームの増加」の社会変化の実現のために、以下の指針に基づきケアプライム事業を展開してまいります。
(イ)シニアホームが自らの強みを認識し、シニアホームに対するニーズを把握する機会が増加していること
当社のケアプライム事業は、プラットフォーム「ケアプライムコミュニティサイト」に参加するシニアホーム間の経営情報の流通を実現し、それを活かしてサービスの質を向上していただくために実施するものであります。サービスの質を向上したいという意欲を持つシニアホーム運営事業者に必要な情報を提供するものでありますが、特に、加盟するシニアホームに自らの強みを認識していただくことに重点を置いております。そのプラットフォーム「ケアプライムコミュニティサイト」の提供価値を明確に伝えることで、加盟者の募集を行います。
※18 一般財団法人 社会変革推進財団(以下、「SIIF」という。)が中心に提唱しており、2023年7月にインパクト投資の推進・中立機関であるGSG国内諮問委員会にインパクトIPOのワーキンググループが発足。SIIFによると、インパクトIPOとは、①ポジティブなインパクトの創出を意図している企業が、インパクトの測定及びそのマネジメント(Impact Measurement & Management,IMM)を適切に実施していることを示しながら、IPOを実現すること。②IPOに際して、インパクトの追求とIMMを継続的に実施できるよう、当該企業を取り巻くステークホルダーに対して、インパクト及びIMMの状況を説明し、インパクト志向の資金提供者からの資金調達をめざすことで、企業価値の向上を図ることであることとしている。出展 https://www.siif.or.jp/wp-content/uploads/2022/11/インパクトIPO実現・普及に向けた基礎調査.pdf
※19 インパクト・メジャメント&マネジメントとは、企業や非営利組織の活動やサービスが、社会や環境に与えた変化や効果を可視化するのが「インパクト測定」、社会的な効果に関する情報にもとづいて事業改善や意思決定を行い、インパクトの向上を志向することを「インパクトマネジメント」という(社会変革推進財団HPより抜粋)
〔当社事業の社会インパクトの成果指標〕
当社が「家族が心の介護に向き合い、高齢者が笑顔で居る社会」を目指す過程で、「介護する家族・ケアラー」に焦点を当て、「介護家族にとって、ホーム介護の利用がポジティブ/当たり前になっている社会」を実現していくことは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:以下、「SDGs」という。)(※20)の達成にも寄与するものであります。
在宅での介護を抱え込まざるを得ない状況に追い込まれている介護家族の負担を軽減することで、SDGsの目標5「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」の中のターゲット5.4「公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する」ことに繋がると考えております。
※20 持続可能な開発目標(SDGs):2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発のための2030アジェンダで掲げられる国際目標。
当社が目指す『介護家族が心の介護へ向き合い、高齢者が笑顔で居る社会』は、SDGs5.4.に係る社会インパクトを創出しており、成果指標としては、介護家族の身体的介護負担からの解放によって生み出された時間とポジティブな使い方を計測しております。


当社の目標とする経営指標として、前述のロジックモデルに記載の短期アウトカムから設定しております。当社が重視している経営指標等であるKPIの内容、目安としている水準は以下のとおりであります。なお、KPIの大前提として、リアルタイムで測定できる数値、かつコントロールできる数値であるものとしております。
(a) シニアライフサポート事業
〔KPI1:MSWからの紹介数〕
当社の主要な案件獲得元である病院の退院支援室で働くMSWからの依頼を示す、成約数のリード測定指標であります。MSWを介して、シニアホーム探しの相談を受けた患者の人数によって計測されます。2026年10月期には紹介数18,700人を経営目標として計画の策定を行っており、2023年10月期においての実績は6,466人となっております。
患者の退院支援を担うMSWは、退院後のシニアホーム探しも職責の業務となるものの、そのために必要な情報へのアクセスには限りがあり、転院調整等の他の業務の多忙さから、時間がかけきれない等の現状があります。
当社は、豊富なシニアホーム情報を有しており、退院までの業務も把握した関与が可能であるため、退院期日短縮と同時に満足度の高いシニアホーム入居を実現できる確率が高まります。さらに、MSWへの報連相のタイミングなどを均質化した教育体制を強みに信頼関係を構築することで、継続した紹介獲得に繋がります(2023年10月末現在においてMSWからの紹介数が全体の約7割を占めております。)。
こうしたことから、MSWからの紹介数を管理することは、「退院期限が決まっていることもあり成約率が高い」、「受注から成約までのリードタイムが比較的短期間」、「平均報酬が高い」という特徴を持つリード数を管理することを意味し、当社の生産性向上に繋がる指標にもなります。
〔KPI2:家族会議実施数〕
介護家族と入居対象者が今後の生活方向を決める会議で、介護家族と入居対象者の意識の変革と成約率の向上の測定指標であります。当社が目指す社会変化(インパクト)の視点からは、入居可能性のある入居対象者の介護を担う介護家族との早期の接触を行い、介護家族に家族会議を開いてもらうことでシニアホーム介護への納得感を醸成してもらい、シニアホーム介護利用の心理的抵抗感を和らげることに繋がることから、成約の確度がより高まり、成約数の予測に繋がります。当社のコーディネーターが入居対象者や介護家族(身寄りのない生活保護受給者の場合は役所ケースワーカーが該当)と対面や電話、オンラインのいずれかでシニアホーム選定のための条件や要望確認、優先順位の整理等の話し合いを実施した案件数によって計測されます。2026年10月期には家族会議実施数9,300件を経営目標として計画の策定を行っており、2023年10月期においての実績は3,296件となっております。
当社のシニアホーム紹介サービスでは、「インターネットを介しての遠隔でのマッチングサービス」上のシニアホーム検索との差別化を図り、より満足度が高いシニアホーム提案を行うため、「介護家族を知る」ことを大切に「条件(身体状況、予算、エリア等)」と「要望(どのような暮らしを行いたいか、リハビリの要否等)」を分けてヒアリングする機会である「家族会議」を実施しております。介護家族の状況を正しく把握することで、満足度の高いシニアホーム提案に加え、入居に伴い必要とされる煩雑な手続きについても的確な支援を行うことが可能となります。
〔KPI3:スマイル数〕
実際にシニアホーム入居に至った入居対象者の数を表す指標であり、当社営業収益に直結する指標であります。2026年10月期にはスマイル数8,000人を経営目標として計画の策定を行っており、2023年10月期においての実績は2,381人となっております。
一般的に、介護家族自身が検索・選択を行う形の「インターネットを介しての遠隔でのマッチングサービス」を利用したシニアホーム探しにおいては入居後のミスマッチが生じる可能性があります。一方、当社サービスの利用者は、将来予測等を踏まえた付加価値のある提案により「その方らしい」シニアホームを中立・公平に見つけることができるため、入居後の暮らしまでを想定した納得の入居が可能となります。さらに見学調整、シニアホームや病院とのやり取り代行及び役所の申請手続サポートなど、相談から入居までのトータルサポートを行っているため、「インターネットを介しての遠隔でのマッチングサービス」を利用したシニアホーム入居よりも成約率が高まる傾向にあります。
マッチするシニアホームとの出会いを実現することにより、シニアホーム介護の利用が増加することで、介護家族の負担が軽減され、入居対象者に対する「心の介護」に専念できる状態を作り出すことに繋がると考え、成約数を示す本指標を経営指標として追求しております。
(b) ケアプライム事業
〔KPI4:プラットフォームサイト登録数〕
シニアホームのサービス向上に繋がる外部サービス広告掲載など将来のマネタイズ余地の測定指標であります。プラットフォーム「ケアプライムコミュニティサイト」に登録されたシニアホームの数によって計測されます。2023年3月にポータルサイトをリリースし、2023年10月末現在5,335件となっております。2026年10月期にはプラットフォームサイト登録数8,000件を経営目標として計画の策定を行っております。
この指標を管理することは、当社の目指す社会変化(インパクト)の観点からは、シニアホームが介護家族ニーズを把握し、また自社の強みを認識する機会が増加していることを表します。これにより、自らの強みを伸ばしてサービスの質を上げ、介護家族に安心を提供しているシニアホームが増加することへ寄与します。
(3)経営環境
当社が提供するシニアホーム紹介サービスが属する市場は、高齢者人口の推移、要介護認定者数の推移及び要介護認定者の介護を行うケアラーの人口推移に大きく影響を受けます。
日本における65歳以上の高齢者人口推移は以下の図のとおりであり、2022年度に3,627万人(前年3,621万人)となり、前年と比べ6万人増加し、過去最多となりました。
また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の人口割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、65歳以上人口割合は35.3%になると見込まれております。

出典 総務省:住民基本台帳年齢階級別人口(都道府県別)(2022年1月)
国立社会保障・人口問題研究所:日本の地域別将来推計人口(2018年3月)
このように65歳以上の人口増加に伴い、介護を受ける者・介護をする者の人口も上昇を続けており、自宅で介護を受ける者と介護をする者の双方が65歳以上の高齢者「老老介護(※21)」については、以下の図のとおり年々増加傾向にあります。厚生労働省の調査によれば、同居する家族や親族が自宅で介護をする在宅介護のうち、2022年老老介護の割合は63.5%と、調査を始めた2001年以降、最も多くなっております。
※21 老老介護とは、自宅で介護を受ける者と介護をする者の双方が65歳以上の高齢者をいう。

出典 「国民生活基礎調査Ⅵ介護の状況 動向調査 2022年」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf)を加工して作成
上記のとおり「老老介護」の増加に加え、働きながら介護に当たる「ビジネスケアラー」、家族の介護やケア、身の回りの世話を担う18歳未満の「ヤングケアラー」の負担が大きな社会問題となりつつあります。
今後、以下の図のとおり2035年度まで要介護認定者数が増加することが予想され、要介護認定者数に対する「老老介護」、「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」の割合は上昇していくものと想定されます。

出典
・ビジネスケアラー
過去数値:総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」の「仕事が主な者」
将来数値:
①将来要介護認定者数:要介護認定者数の将来数値
②将来人口:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
③将来ビジネスケアラー:年齢別要介護認定者数の増減実績割合及び年齢別人口増減実績割合に対する総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」の「仕事が主な者」の人口増加数の実績割合を、①の増減率及び②の増減率に乗じた人数が増加するとして試算。
・ヤングケアラー
過去数値:文部科学省「令和4年学校基本調査」における中学生・高校生の生徒数に、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ヤングケアラーの実態に関する調査報告書」における世話をしている家族がいる率を乗じ試算。
将来数値:
①将来生徒数:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」に年齢別の人口数に対する生徒数の実績割合を乗じ試算。
②将来ヤングケアラー:①で算出した将来生徒数に三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ヤングケアラーの実態に関する調査報告書」における世話をしている家族がいる率を乗じ試算。
・老老介護
過去数値:総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」65歳以上を集計。
将来数値:
①将来要介護認定者数:要介護認定者数の将来数値
②将来人口:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
③将来老老介護:65歳以上の年齢別要介護認定者数の増減実績割合及び65歳以上の年齢別人口増減実績割合に対する総務省統計局の「就業構造基本調査(2018年7月)」の「介護をしている」65歳以上の人口増加数の実績割合を、①の増減率及び②の増減率に乗じた人数が増加するとして試算。
・要介護認定者数
過去数値:厚生労働省「介護保険事業状況報告」
将来数値:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」に年齢別の要介護認定者数の実績割合を乗じ試算。
特に「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」が抱える問題として、「ビジネスケアラー」は40~50代が多く、会社や同僚にプライベートなことを相談しづらいため突然の離職に至るケースも多い等、仕事と介護の両立に切迫した不安・課題を抱えている傾向にあり、「ビジネスケアラー」の人口は今後、2030年度には、300万人以上にも達すると見込んでおります。
また、働きながら介護にあたる「ビジネスケアラー」の介護による労働時間短縮の労働生産性への影響は経済産業省の推計により2030年度にはおよそ9兆円の損失へ繋がると見込まれております。
さらに、「ヤングケアラー」については、その生活が“当たり前”で、自身が「ヤングケアラー」という認識がないという子どもも少なくないと言われており、介護やケアに忙しい等、本来受けるべき教育を受けることができない、同世代との人間関係を満足に構築できづらいなど、大きなリスクをはらんでおります。「ヤングケアラー」の人口は2022年度には32万人に達しており、今後は少子高齢化社会の進行に伴い徐々に減少していく見込みではありますが、それに反して要介護認定者数は増加していく見込みであり、「ヤングケアラー」一人当たりの負担は増加していくものと見込んでおります。
なお、2018年3月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、65歳未満の人口は2021年度(8,928万人)から2040年度(6,912万人)におよそ2,000万人減少すると予想されており、「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」の負担が益々増えてくると見込んでおります。
このように、高齢者の人口割合の上昇とともに要介護認定者が増えることにより、こうした多様化する介護家族の一人当たりの介護を担う人数は今後益々増えることが予想されます。
当社は、事業を通じて、介護家族が高齢者に対する「心の介護」に専念できるよう、「介護家族にとって、シニアホームの利用が『ポジティブ/当たり前』になっている状態」を目指しており、介護される側も含めて「共倒れ」にならないためにも、「老老介護」、「ビジネスケアラー」及び「ヤングケアラー」が抱えている問題を解決できるようシニアホーム紹介サービスを提供しております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①シニアホーム紹介業の知名度向上と社会的信用
不動産や保険選定に紹介のプロフェッショナルがいるように、シニアホーム紹介業においても紹介のプロフェッショナルがいることについて世に広く認識していただくことが重要な課題と認識しております。そのため、介護家族に対する相談、提携するシニアホームの双方についてサービスの質の向上と数の拡大を目指してまいります。
②人材の確保及び育成
当社が展開するシニアライフサポート事業は労働サービスの提供事業であるため、人材の確保が事業継続の要となります。また、案件をご紹介いただく医療機関のMSWやCM等の信頼を継続的に得るため、且つ、入居対象者や介護家族に適切なシニアホーム提案をするためには、コーディネーターの課題対応能力の効率的な育成が重要だと認識しております。そのため、優秀な人材の確保を継続的に行いながら、CRMシステムを利用した顧客関係管理の質の向上、動画コンテンツを活用した教育体制の強化に取組みを行うとともに、一人一人が価値ある存在として自立することにより退職予防にも努め、事業拡大を目指してまいります。
③情報管理体制の強化
当社は事業を通じて取得した個人情報を所有しており、その情報管理を強化していくことが重要な課題であると認識しております。現在、当社では「個人情報の保護に関する法律」の規定に則って、「個人情報保護基本規程」や「特定個人情報取扱規程」等の諸規程を定め、当社で保有する個人情報の適法かつ適正な取扱いの確保と、個人の権利・利益を保護するよう社内体制・ルールを確立しております。今後も社内教育や研修などを継続して行ってまいります。
④内部管理体制の強化
当社は事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。
⑤財務基盤の強化
当社は、財務基盤の安定性を維持しながら、様々な事業上の課題を解決するための事業資金を確保し、また、新たな事業価値創出のために機動的な資金調達を実行できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを模索していくことが、財務上の課題であると認識しております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、高齢期の在り方として、社会資源であるシニアホームに属する介護の専門家に身体的介護を任せ、家族は自身の社会的役割を果たしながら心の介護に専念すること、高齢者ご本人が周囲の様々な方の力を借りて笑顔で過ごされる状態が『サステナブル(持続可能)な社会』の在り方だと考えます。
このような社会を実現するための企業としてコーポレート・ガバナンスの強化を図っております。経験豊富な社外取締役の招聘、監査等委員会の設置、監査法人との連携、内部統制システムの整備等を行ってまいりました。今後も更に体制整備を進め、サステナブルな社会実現の一翼を担います。
当社は、サステナビリティに関する考え方や取組について取締役会及び経営会議において協議し、決定いたします。取締役会は、当社のサステナビリティ課題への対応方針及び実行計画等についての審議・監督を行います。当社のガバナンス体制に関しては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。
当社は、持続的成長と企業価値向上にあたり、人材は最も重要な経営資源と考えており、サステナビリティ関連の項目の中で、特に人的資本を重視しております。当社にとっての人材の確保及び育成についての考え方及び取り組みについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。
また、退職予防の取り組みとしてリテンション施策を行っており、リスクマネジメント推進委員会でフォロー面談実施内容の確認・報告を行い、退職予防に努めております。
その他、2023年10月期においては、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に取り組む企業を認定・表彰するアワード「D&I Award2022」の中小企業部門において、最上位ランクの「ベストワークプレイス」に認定されました。さらに、DEIB(多様性・公平性・インクルージョン・帰属意識)浸透度の高さを認定する「トップインクルーシブカンパニー賞」において、インクルージョンスコアが上位35%に入賞したことにより、「トップインクルーシブカンパニー(TIC)賞」を授与されました。当社の主な取り組みは、「その方らしい」シニアホーム入居を支援、誰もが働きやすい環境「リモートワーク」導入、月1回及び年間「アワード賞」実施、パートナーシップ制度を導入、性的少数者に関するガイドラインを作成、LGBTQ等の研修などとなっており、今後も認定継続に向けた取り組みを行ってまいります。
当社は、「リスクマネジメント規程」に基づき、リスクマネジメント推進委員会を設置することで審議を中心とするリスクマネジメント体制を構築しております。サステナビリティに関するリスクにおいても、リスクマネジメント推進委員会で審議された取り組み状況や重要な課題について、取締役会及び経営会議において適切な審議や指導、監督を行うことにしております。また、外部専門家からアドバイスを受けられる体制を構築するとともに、内部監査を通じて、潜在的なリスクの早期発見に努めております。
当社は、提出日現在において、人材育成方針や社内環境整備方針に関する具体的な指標及び目標は設定しておりません。しかしながら、当社が描くサステナビリティを推進するために、より働きやすい環境の実現や社内制度の改善に向けての取り組みを推進してまいります。
本書に記載しております事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
ただし、将来の業績や財政状態に与えうるリスクや不確実性は、これらに限定されるものではありません。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)事業環境等に関するリスク
①新型コロナウイルスの影響について
発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
新型コロナウイルス感染症禍においては、クラスター発生予防対策のため、施設への立ち入りを制限している医療機関やシニアホームが数多くありました。現在は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症へ移行され、シニアホームの受入制限、病院退院活動制限も短期間で終息する状態に変化しましたが、依然として高齢者の感染リスクは存在しており、シニアホームへの十分な配慮が必要な状況となります。これに対処するため、シニアホームの受入れ情報などの情報収集を継続的に行い、それを医療機関のMSWやCM等に適時提供することで、安心感の醸成と、継続的なサービス提供の維持を目指しております。しかしながら、想定を超える感染拡大が発生した場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
②業界動向について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社が提供するシニアホーム紹介サービスは、投資や許認可が不要なサービスであるため比較的参入障壁が低い事業ではありますが、事業の拡大や継続するためには、人材コスト及び拡大への一定の時間が必要となるため、競合他社が突発的に成長する可能性が低い現状となっています。しかしながら、多数の企業が参入し競争が激しくなった場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③顧客企業の経営環境について
発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社は、主としてシニアホーム等を営む企業から手数料を受領しております。当社は介護業界・高齢者を支える複数のサービスを提供することに努めておりますが、社会保障費に関する法改正等による介護業界全体若しくは顧客企業の経営環境の変化に伴う投資ニーズが急速かつ大きく変化することにより、多くの顧客企業の収益が低迷した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容等に関するリスク
販売価格について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社が展開するシニアライフサポート事業の販売価格は、シニアホームへの入居に対する手数料であり、各シニアホーム運営事業者との法人単位の契約が基となっております。過去のシニアホームの入居率の推移を鑑みると、今後も需給バランスが急速に悪化する可能性は低く、突発的な手数料の低下は起こりにくい構造であり、現時点での手数料減少リスクは少ないものと想定しております。
しかしながら、想定を超える手数料の低下が起こった場合には当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)組織体制等に関するリスク
①人材の確保について
発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社が展開するシニアライフサポート事業は労働サービスの提供事業であるため、人材の確保が事業継続の要となります。現状では、採用エージェント経由での人材確保がメインとなりますが、当社の事業が社会課題解決に繋がる点、ダイバーシティ&インクルージョンの取組み、SDGsの取組みなどを踏まえ、エージェントから安定した求職者紹介をいただけております。また、取引先である病院のMSWや介護関連会社の従業員の転職率が高いため、医療介護業界からの転職も今後増加していくものと予測しております。しかしながら、採用がうまく進まない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②人材育成及び退職予防について
発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
案件をご紹介いただく医療機関のMSWやCM等の信頼を継続的に得るため、また、入居対象者や介護家族に適切なシニアホーム提案をするためには、コーディネーターの課題対応能力の効率的な育成が重要です。当社の経営計画を達成するためにも、新入社員の事業に関する知識の定着の早期化が課題となっております。そのため、CRMシステムを利用した顧客関係管理の質の向上や、動画コンテンツを活用した教育体制の強化に取組みを行うとともに、一人一人が価値ある存在として自立することにより退職予防に努めてまいります。
また、退職予防としてリテンション施策を行っており、具体的にはパルスサーベイ(※22)を活用した対象者フォロー面談を実施し、リスクマネジメント推進委員会でフォロー面談実施内容の確認・報告を行い退職予防に努めております。しかしながら、人材の育成に時間を要した場合や多くの退職を防げなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
※22 パルスサーベイとは、企業が従業員の満足度や心の健康状態を把握するために簡単な質問を短期間・高頻度で実施する調査のことをいう。
(4)事業に関する法的規制等に関するリスク
①介護業界について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社が属するシニアホーム紹介サービスは、介護業界と緊密な関わりがあるため、高齢者住まい事業者団体連合会、一般社団法人全国介護事業者連盟における発表内容等が業界に対して影響を及ぼす可能性があります。今後において、介護業界に対する規制環境の変化や業界各社の対応に何らかの変化が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②個人情報について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社は事業を通じて取得した個人情報を所有しております。当社では「個人情報の保護に関する法律」の規定に則って、「個人情報保護基本規程」や「特定個人情報取扱規程」等の諸規程を定め、当社で保有する個人情報の適法かつ適正な取扱いの確保と、個人の権利・利益を保護するよう社内体制・ルールを確立しております。しかしながら、何らかの原因により個人情報が外部に流出した場合には、企業としての社会的信用力が低下することにより、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③労務管理について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、労務管理を経営の重要課題として認識しており、そのため当社は労働基準法等関係法令を遵守し、社内規程の整備、運用を徹底し労務管理を行っております。しかしながら、労務管理不備により関連法令の違反に伴う行政処分等、従業員との紛争等が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他のリスク
①過年度の経営成績及び税務上の繰越欠損金について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社は、第10期から第12期において、経常損失及び当期純損失を計上しております。また、2023年10月31日現在において税務上の繰越欠損金が260,301千円存在しております。繰越欠損金は、一般的に将来の課税所得から控除することが可能であり、将来の税額を減額することができますが、今後の税制改正の内容によっては、納税負担額を軽減できない可能性もあります。また、繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税等が発生し、当社の経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
②特定人物への依存について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社の代表取締役社長である榎並将志は、当社の創業者であり、創業以来の最高経営責任者であります。同氏は、当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。当社では、経営会議等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が経営執行を継続することが困難になった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③配当政策について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、事業の成長・拡大による企業価値の向上を最重要課題として認識するとともに、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の1つと位置付けており、将来的には、各事業年度の財政状態及び経営成績を勘案しながら株主の皆様への利益還元を検討していく予定であります。しかしながら、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であり、業績次第では今後安定的な配当を行うことができないリスクが存在します。
④調達資金の使途について
発生可能性:中、発生する可能性のある時期:5年以内、影響度:中
当社が株式上場時に行った公募増資による調達資金の使途については、事業成長のための新規拠点開設費、採用費及び人件費、広告宣伝費、システム開発費に充当する計画であります。しかしながら、急速に変化する事業環境に柔軟に対応するため、上記計画以外の使途へ充当する可能性もあります。また、計画どおりの使途に充当された場合でも、想定どおりの効果を上げるとは限らず、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ベンチャーキャピタル等の株式所有割合に伴うリスクについて
発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社の発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合(以下、「ベンチャーキャピタル等」という)の当社株式の所有割合は、当事業年度末現在14.5%であります。当社株式の株価推移等によっては、ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性が考えられ、その場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
⑥新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、役員及び従業員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとしてストック・オプションを付与しているほか、今後も優秀な人材確保のためのストック・オプションを発行する可能性があり、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権等について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。
なお、当事業年度末現在新株予約権による潜在株式数は94,050株であり、発行済株式総数1,939,750株の4.8%に相当しております。
⑦訴訟について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当事業年度末現在において、当社が当事者として関与している訴訟手続きはありません。しかしながら、今後の当社の事業展開の中で、第三者が何らかの権利を侵害され、又は損失を被った場合、当社に対して訴訟その他の請求を提起される可能性があります。損害賠償の金額によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧インターネット等による風評被害について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
ソーシャルメディア等の急激な普及に伴い、当社に対するインターネット上の書き込み、悪意ある投稿等による風評被害が発生・拡散した場合、その内容の正確性に関わらず、当社の社会的信用が毀損し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨減損損失について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
現状当社は事務所設備、業務システム等の固定資産を所有しておりますが、多くは所有しておりません。しかしながら、当社の資産の時価が著しく下落した場合や、将来新たに開始するものも含めて、事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により資産について減損損失が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
(資産)
当事業年度末における資産は788,684千円となり、前事業年度末に比べ476,630千円増加いたしました。これは主に有償一般募集による新株式を発行したことに伴い現金及び預金が397,575千円増加、営業収益増加に伴い売掛金が40,872千円増加、回収可能と見込まれる繰越欠損金に対する繰延税金資産が26,397千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は324,294千円となり、前事業年度末に比べ51,249千円増加いたしました。これは主に未払法人税等が23,814千円増加、賞与引当金が11,589千円増加、未払消費税等が9,331千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は464,389千円となり、前事業年度末に比べ425,381千円増加いたしました。これは主に有償一般募集による新株式を発行したことにより資本金及び資本準備金がそれぞれ159,712千円増加したこと、また、当期純利益105,957千円を計上したことによるものであります。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、経済活動の正常化が進み、景気の回復が見られました。一方で、ウクライナ情勢の長期化や、円安進行による物価上昇の加速は国内の個人消費に影響を与えており、先行きは依然として不透明な状態が続いています。
このような環境のもと、当社はシニア関連サポート事業において、病院のメディカルソーシャルワーカー等の紹介パートナー及びシニアホーム運営法人との連携強化により継続的なサービスに努めてまいりました。
以上の結果、営業収益は814,287千円(前年同期比33.6%増)となりました。
営業費用は、主に人件費や営業に係る旅費交通費等の増加により699,625千円(前年同期比19.6%増)、営業利益は114,662千円(前年同期比361.6%増)、経常利益は97,890千円(前年同期比は317.1%増)、当期純利益は105,957千円(前年同期比202.5%増)となりました。
なお、当社は、シニア関連サポート事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ398,576千円増加し、590,560千円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、104,832千円(前事業年度は38,287千円)となりました。これは主に税引前当期純利益97,890千円及び上場関連費用15,701千円の計上、賞与引当金の増加額11,589千円の計上、売上債権の増加額40,872千円による減少を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は、9,364千円(前事業年度△6,345千円)となりました。これは主に無形固定資産の取得による支出10,064千円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は、303,108千円(前事業年度△30,393千円)となりました。これは主に株式の発行による収入319,424千円を計上したことによるものであります。
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
当事業年度における販売実績をサービス区分ごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社は、シニア関連サポート事業の単一セグメントでありますが、シニアライフサポート事業として「シニアホーム紹介サービス」、ケアプライム事業として「シニアホーム運営コンサルティング」の2つのサービスを提供しております。
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討の内容
a.財政状態の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
(営業収益)
当事業年度における営業収益は、814,287千円(前年同期比33.6%増)となり、前事業年度と比較して204,585千円の増収となりました。これはシニアホーム紹介サービスにおいて、シニアホームへの紹介者数が増えたことにより、シニアホーム運営事業者から受領する入居者紹介手数料が堅調に増加し683,935千円(前年同期比25.5%増)になったこと、また、シニアホーム運営コンサルティングにおいて、主にシニアホーム運営事業者のシニアホーム新規開設に係るコンサルティング収入が増加したことにより128,513千円(前年同期比104.0%増)になったことによるものであります。
(営業費用、営業利益)
当事業年度における営業費用は、699,625千円(前年同期比19.6%増)となりました。これは主に人件費や営業に係る旅費交通費等の増加によるものであります。
その結果、営業利益は114,662千円(前年同期比361.6%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当事業年度における営業外収益は、135千円(前年同期比630.9%増)、営業外費用については、主に上場関連費用の発生により、16,907千円(前年同期比1,119.6%増)となりました。
その結果、経常利益は97,890千円(前年同期比317.1%増)となりました。
(特別損益、法人税等、当期純利益)
当事業年度における特別利益及び特別損失については、発生がありませんでした。当期純利益は、105,957千円(前年同期比202.5%増)となりました。これは法人税等調整額を含む法人税等合計△8,066千円を計上したことによるものであります。
③経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、シニアライフサポート事業においては「MSW(病院に在籍)等からの紹介数」「家族会議実施数」「スマイル数」、ケアプライム事業においては「プラットフォームサイト登録数」をKPIとしております。
当該KPIを採用した理由は、投資家が当社の経営方針・経営戦略等を理解する上で重要な指標であり、当社が事業成長を伴いながら、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトの創出を意図する企業として、「介護家族がシニアホーム紹介サービスと出会い、家族会議等の支援を経て、マッチするシニアホームとの出会いにより介護負担が軽減する」「シニアホームが自らの強みを認識する等、介護家族ニーズを把握する機会が増加する」このような社会変化を生み出して「ビジョン(社会インパクト)」を実現するためであり、経営方針・経営戦略等の進捗状況や、実現可能性の評価等を行うことが可能となるためであります。
各KPIの推移は以下のとおりであります。
※ 2023年3月にプラットフォーム「ケアプライムコミュニティサイト」をリリースしております。
④キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の財政状態及び経営成績の分析については、前記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
⑥経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に含めて記載しております。
⑦経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。