第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、第二創業にあたり、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定め、二つの使命を果たすべく事業展開を行ってまいります。

 

・第一の使命は、日常生活の基本商品群を誠実な品質と倫理的な視点から開発し、使うことで社会を良くする商品を、手に取りやすい価格で提供することです。

・第二の使命は、店舗は各地域のコミュニティセンターとしての役割を持ち、地域の皆さまと課題や価値観を共有し、共に地域課題に取り組み、地域への良いインパクトを実現することです。

 

これらの企業理念の下、当社グループの事業展開を通じて資源循環型・自然共生型の社会、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

(2)経営環境

当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症による移動制限が緩和され、経済活動は緩やかに正常化が進みました。一方、世界的な資源価格の高騰や金融引き締めに伴う海外景気の下振れにより、依然として国内外における経済の先行きは不透明な状態が続いています。また、円安の進行や原材料価格、エネルギーコストの上昇に伴う生活必需品の値上げも相次いでおり、消費者の節約志向が一層強まっています。

 

(3)優先的に対処すべき事業上、財務上の課題

「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社員および事業関係者一人ひとりが、社会全体や地球でいま起きている課題に敏感に呼応し、提供するすべての商品、サービス、活動の全ライフサイクルにわたり、地球環境負荷低減や個人尊重に努めてまいります。

また、100年後のより良い未来を見据えて、2030年までのビジョンを策定しました。個店を通じて、日常生活の基本を担うと共に、地域社会と共生し課題解決や町づくりに貢献してまいります。

 

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当社グループが2030年ビジョンを目指すにあたり、2022年度からの3年間は、そのための基盤固めの時期と位置づけ、下記4項目を中期経営計画の重点項目として掲げ、スタートしました。

 

2023年度におきましては、商品力の強化および収益面では課題が残った一方、国内外での出店拡大、組織面の強化、店舗の人材育成は順調に進み、事業基盤の構築に努めました。中期経営計画の最終年度にあたる2024年度におきまして、営業収益はターゲットとしていた7,000億円に対し、6,400億円の見通しです。海外事業の成長に加え、国内外での出店効果等により、2022年度からの3ヶ年で2,000億円弱の増収を計画しております。また、営業利益は、課題であった国内事業の収益性が改善の方向に向かい、目標値(750億円)には届かないものの、過去最高益の更新を見込んでおります。

引き続き2030年ビジョンの実現に向け、中央集権型・管理統制型の組織から、自律分散型の組織づくりに注力していくとともに、多彩な価値観を取り入れ、組織風土を活性化させることで、持続的な成長を実現してまいります。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、一定の前提条件の下で当社グループが判断したもので、様々な要因で大きく異なる可能性があります。

◇サステナビリティ全般

当社は、1980年の「無印良品」誕生当時から、社会全体の課題と向き合ってきました。「社会や人の役に立つ」という根本方針を掲げ、3つの視点「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」で、ものづくりを行っています。この視点は、現在でいうESG経営やサステナビリティの先駆けであると捉えています。

また、オーナーシップをもった社員を事業活動の主役に据え、地域に根差した個々の店舗の活動や個々の社員や事業関係者の活動が公益に寄与する「公益人本主義経営」を実践しています。

当社は、2030年ESG経営のトップランナーを目指しており、提供する商品やサービス、様々な活動を通して、資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現に貢献します。

(1) ガバナンス

当社は、グローバルで急速に変化する環境や社会、ガバナンス分野における迅速な対応と、当社が創業当時より重視しているサステナビリティ視点に更に磨きをかけるため、「ESG推進委員会」を設置しています。ESG推進委員会は代表取締役会長を議長とし、代表取締役社長、取締役、執行役員を含むメンバーで構成され、毎月開催しています。ESG推進委員会では、当社の重要課題を解決し、ESG経営を推進するための各施策について進捗を確認し、ボトルネックについて担当部署と経営陣が議論することで、各取り組みを加速しています。

また、当社にとって最大の資本は「人財」であり、さまざまな社員が自らの夢の実現に対する情熱と志を持って、地域や店舗で主体的に考え、自律的、自発的に行動することを大切にしています。そのためにも多文化共生社会の実現や、多様な人材が柔軟に働ける環境整備が不可欠と考え、人事管掌役員を議長とした「ダイバーシティ&インクルージョン委員会」を設置し、毎月開催しています。

サステナビリティに関する重要事項は、上記の会議体での議論を経て、必要に応じ、最低年に2回以上、取締役会に付議されています。

当社の取締役会は、サステナビリティ推進に対し的確な監督・助言をするためにサステナビリティおよびダイバーシティに関する知識・経験・能力を有する構成になっています。

なお、サステナビリティの取り組みや目標達成に対する経営責任を明確にするため、取締役報酬にESG指標を組み込んでいます。代表取締役においては、報酬の1/3が長期的な視野で重要なESG等の指標の達成度により譲渡制限付株式を付与します。

(2) 戦略

当社は、衣服・雑貨、生活雑貨、食品と幅広い商品領域を持ち、その全てにおいて、豊かな自然資源に深く依存しています。地球環境を保全し、地域社会の営みを継続・発展させることが企業理念で掲げる「感じよい暮らしと社会の実現」に不可欠と認識しています。

そこで、2021年7月に発表した中期経営計画において「2030年ESG経営のトップランナー」を掲げ、下記の通り、重要課題を4つ特定し、それぞれの課題に応じた全社横断ESGプロジェクトを推進しています。具体的には、資源循環の取り組みや気候変動、生物多様性を考慮した商品開発や、人権尊重のための取り組みや社員エンゲージメントの向上など、方針を明確にした上で、各種取り組みを加速しています。

良品計画の「重要課題」

1.資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現

2.土着化による地域課題解決と地域活性化の実現

3.高い社員エンゲージメントと課題解決スキルの習得

4.公益人本主義経営の実現

(3) リスク管理

当社は、ESG経営を推進するため、直面する可能性のある主要なリスク・機会を国内外の法令違反に関する「コンプライアンス・リスク」、情報漏洩やサプライチェーンに関わる「オペレーションリスク」、税務や会計に関する「財務および開示におけるリスク」の3分野で特定し、その重要性および発生する可能性の高さに応じて評価しています。

リスクマネジメント体制としては、取締役会の監督・指導の下、「コンプライアンス・リスク管理委員会」を設置し、各種リスクに精通した当社執行役員が委員長となり、コンプライアンス及び各種リスクに関する情報収集および重要課題の審議や進捗確認をしています。コンプライアンス・リスク管理委員会で審議された内容については定期的に取締役会に報告し、取締役および監査役との共有を図っています。

 

(4) 指標及び目標

当社は、2030年に向けた各種指標を下記の通り設定し、年に1回モニタリングを実施しています。中でも気候変動への対応は、持続可能な社会のために不可欠なため、GHG(温室効果ガスのスコープ1,2)排出量を2021年8月期比で50%削減と定め、再生可能エネルギーの導入や独立型自社店舗への太陽光パネルの設置などを進めています。

指標

目標

2022年8月期実績

グループ全体のGHG排出量(スコープ1,2)

2030年 50%削減

(2021/8期比)

65,180 t-CO2e, 基準年比10.1%増(2021/8期比)

自社店舗・物流拠点等への再生可能エネルギー導入

2030年 100%

鳩山センターの一部および一部店舗へ導入済

自社店舗・物流拠点等への太陽光パネル設置

2030年 100%

鳩山センターに設置(2014年竣工時~)

包材や資材の脱プラスチック

2030年 100%

衣服・雑貨 74.8%

生活雑貨  47.0%

食品    一部店舗で量り売りを展開

リサイクルを前提とした製品設計

2030年 100%

生活雑貨 36.0%

回収したプラスチック製品の再利用

2030年 100%

回収したプラスチックボトルの重量  1,130kg

再利用したプラスチックボトルの重量 1,130kg

自然繊維素材のオーガニック・動物福祉合致

2030年 100%

<衣服 ・ 雑貨>

(MUJI Labo、再生コットン・残糸/残反使用商品の一部を除く)

ウール:ノンミュールジング 100%

ダウン:動物福祉が証明されたダウン※1 100%

<生活雑貨>

ウール:ノンミュールジング 100%

ダウン:動物福祉が証明されたダウン※1 100%

原料まで遡ったお取引先の人権デュー・ディリジェンス

2030年 100%開示

<製品メーカー>

1)27工場

2)A評価0工場、B評価18工場、C評価2工場、D評価3工場、

E評価4工場(不適事項ナシがA評価)

E評価の4工場の指摘事項は、児童労働の禁止に関する方針の未策定、健康診断費の工場従業員負担などです。すべての工場と改善計画を合意し、順次改善の完了を確認しています。

<素材・原料メーカー>

2023年8月期から、主要素材メーカーへの監査を実施

(すでに一部の人権デュー・ディリジェンスは実施済み。実施先における法令または当社の行動規範に対する重大な違反はなし)

原料まで遡った主要お取引先リスト

2030年 100%開示

2023年8月期に主要製品工場のお取引先リストについて開示済み

ダイバーシティ&インクルージョンの実現

 

(年齢、ジェンダー、人種などの構成比公開)

1)平均年齢(正社員) 38.4歳(女性:37.2歳、男性:39.9歳)

2)女性管理職比率(正社員) 27.8%

3)従業員の女性比率(正社員) 54.8%

4)従業員の外国人比率(正社員) 1.5%

5)障がい者雇用率(臨時従業員を含む) 3.23%

※上記5項目のみ2023年8月期実績

取り組み事項:ダイバーシティ&インクルージョン委員会発足

※1 飼育環境における動物の「5つの自由」が確保され、かつ強制的な給餌や生きている状態から採取されていないことが第三者機関により審査、証明された羽毛のみを使用しています。5つの自由...①飢え、渇きおよび栄養不良からの自由、②恐怖および苦悩からの自由、③物理的および熱の不快からの自由、④苦痛、傷害および疾病からの自由、⑤通常の行動様式を発現する自由(出展/農林水産省「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理等」)

 

◇気候変動への対応(TCFDへの対応)

当社は、気候変動が社会に深刻な影響を及ぼすことを認識し、サプライヤーを含む幅広いステークホルダーとの協働を通して、持続可能な社会の実現に取り組んでいきます。また、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、気候関連のリスクと機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略の策定、実行を進め、TCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の枠組みに沿った情報開示の拡充を進めていきます。

(1) ガバナンス

当社は、気候変動への対応を経営の重要課題の1つと捉え、取締役会による監督とESG推進委員会を中心とするガバナンス体制を構築しています。取締役会は、気候変動への対応を含むESG経営に関わる取り組みに関して、年2回以上、ESG推進委員会の事務局である経営企画部より報告を受け、進捗や目標達成の状況を監督し、方針や取り組みについて審議、指導を行っています。また、2022年8月期より、社外取締役を除く取締役に対して譲渡制限付株式報酬制度を導入し、長期的な視点から重要なESG指標等の達成度を、評価指標に追加しています。

また、当社は本業でのESG推進を機動性高く実行するため、ESG推進委員会に加え、代表取締役を含む社内取締役、執行役員が参加し毎週開催されている会議においても適宜審議することで実効性を高めています。

(2) 戦略

① リスク・機会の評価と対応策

気候変動によるリスク・機会について、事業に影響を与える内容を洗い出し、これらを事業戦略上の重要度、売上・コストなどの財務影響、発生するまでの期間などから、影響度の大きさを定性・定量で評価し、対応策を実行しています。これらの結果を、TCFD提言で示された項目を軸に、以下の通り整理しました。

各種リスクに対応し、その影響を緩和、排除するとともに、環境負荷に配慮した商品を供給することにより、地球環境保全に貢献し、顧客の環境志向の高まりや期待に応えることで、当社の成長戦略を加速する計画です。

<重要なリスク・機会の影響評価と対応策>

重要なリスク・機会

想定される影響の具体例

影響

種類

影響度

時間軸

対応策

移行リスク・機会

規制

炭素税等のGHG排出量規制強化

リスク

・GHG排出量に対する炭素税の導入

・調達品への炭素税等の導入、またはGHG削減対応による操業、調達コストの増加

・物流センター/事業所、配送車両への炭素税等の導入による輸送、保管コストの増加

コスト

中~大

中期

・中期経営計画に基づいたGHG排出の削減

・サプライチェーン全体でのGHG排出量見える化、削減取組みの推進

プラスチックに関する規制強化

リスク

・再生プラスチック、バイオマスプラスチックの使用率の上昇による調達コストの増加

コスト

中期

・商品本体や包材資材の脱プラスチック、薄・軽量化、代替素材への切替えによるコスト上昇の抑制

市場

化石資源の価格変化

リスク

・自社/サプライヤーで消費するエネルギー価格の上昇による操業、調達コストの増加

・化石資源由来原料の価格上昇による調達コストの増加

コスト

中~大

中期

・自社およびサプライヤーとの省エネルギー推進

・商品本体や包材資材の脱プラスチック、薄・軽量化、代替素材への切替え促進

・倉庫・配送業者が消費するエネルギーの価格の上昇

コスト

中期

・物流倉庫での省エネ取組み実施

・物流事業者との協働による輸送効率向上、相乗り物流等によるエネルギー使用の低減

製品の長期使用

リスク

・製品の長期使用による買替え頻度の低下と売上の減少

・新品衣料品の需要の相対的な低下による売上の減少

売上

中~大

中期

・リユース・リサイクルの推進

・再生原料を活用した商品開発の推進

・長期使用可能な商品の開発

・二次流通の事業化など、持続可能な仕組みの構築

移行リスク・機会

評判

サステナブルなブランドイメージの認知

機会

・サステナブル志向の新規顧客の獲得による売上の増加

売上

中期

・企業理念や創業以来のESG思想、ものづくりの視点、社会課題解決を目指す新たな取組み等の、グローバル発信強化によるサステナブル/ESGの認知向上

リスク

・サステナブル対応の遅れに伴う競争優位低下による、顧客の流出と売上の減少

売上

長期

・中期経営計画に基づいたESG経営の推進と、情報開示・発信の強化

・ESG外部評価を踏まえた重点課題の正確な認識と適切な対応

サステナブル原料を使用した製品の需要の高まり

機会

・環境配慮製品の需要増加による売上の増加

売上

中~大

中期

・カポック、ヘンプなど環境配慮素材の育成、活用

・環境配慮素材への切り替え、製品開発の推進

・低炭素なたんぱく質食品の需要増加による売上の増加

売上

中~大

長期

・害獣や大豆ミートを活用した商品の拡充

・低炭素な食材を活用した商品開発

物理的リスク・機会

急性

気象災害の増加

リスク

・洪水、台風などによる店舗、物流センター等の罹災増加に伴う商品等の廃棄損の増加

コスト

短期

・店舗、物流センターの物理的リスク評価

・ハザードリスク高拠点の浸水対策、BCP策定の実施

慢性

海面の上昇

リスク

・店舗や物流センター所在地域の浸水リスクが高まることによる移転コストの発生

コスト

長期

・浸水リスクの高い店舗、物流センターの浸水対策実施

・出店時の気候変動を踏まえたリスク評価の徹底

平均気温の上昇

リスク

・店舗の冷房コストの増加

コスト

中期

・太陽光設備の導入

・省エネ設備の導入

降水・気象パターンの変化や平均気温上昇

リスク

・洪水・干ばつの増加に伴う、コットン、リネン等の素材価格の上昇による調達コストの増加

・生態系の変化にともなう木材供給量の減少による木材調達コストの増加

コスト

中~大

長期

・各国の価格状況を継続的にモニタリング

・原材料生産地の分散

影響度評価       :売上 ・・・「大」-100億円以上、「中」-10億円以上100億円未満、「小」-10億円未満

コスト・・・「大」-10億円以上、「中」-1億円以上10億円未満、「小」-1億円未満

時間軸(発現までの期間):「短期」-2年以内、「中期」-2年超10年以内、「長期」-10年超

 

② シナリオ分析の実施

当社では、リスクを低減し、機会を拡大することが、持続的な企業価値と社会価値の向上に不可欠であると考え、気候変動がもたらすリスクと機会に関するシナリオ分析を実施しました。

参照したシナリオは、国際エネルギー機関IEAの「World Energy Outlook2022」によるSTEPS(公表政策シナリオ;各国が現時点で公表している政策を基に、産業革命以前に比べて世界の平均気温上昇が2100年頃に2.6℃程度となるシナリオ)、SDS(持続可能な開発シナリオ;産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるため、段階的に排出量を低減させていくシナリオ)、気候変動に関する政府間パネルIPCCによるRCP8.5(温室効果ガス最大排出量に相当するシナリオ)、OECDの「Global Plastics Outlook Policy Scenarios to 2060」によるグローバル野心政策シナリオ(2060年までにプラスチック漏出をほぼゼロにすることを目標に国際レベルの協調が進むシナリオ)等を参考に、「1.5℃シナリオ(脱炭素推進)」と「4℃シナリオ(温暖化進行)」の2つを設定し、中長期的な将来の影響度を分析しました。

財務影響は、「大(100億円≦売上、10億円≦コスト)」、「中(10億円≦売上<100億円、1億円≦コスト<10億円)」、「小(売上<10億円、コスト<1億円)」、と設定し以下に記載しています。

 

1.5℃シナリオで示される2030年時点の移行リスクと機会

移行リスクと機会を踏まえた方針・対応策

炭素税

・炭素税負担による財務影響 は「大」となる見込み。

・当社のGHG排出量(スコープ1,2合計)は、2030年に向けてGHG排出量削減に取り組まなかった場合、事業成長に伴い約2.7倍まで増加すると想定される。

・GHG排出量の削減に向け、グループ全体の排出量可視化を進め、削減ロードマップを策定。店舗の出店地域や特性に合わせた方法で再生可能エネルギーの導入に取り組む。

・スコープ3のGHG排出量削減も視野に入れ、サプライチェーン全体でのGHG排出量の可視化を進める。

化石資源の価格変化

・エネルギーコスト上昇による財務影響 は「大」となる見込み。

・当社の電力使用量は、2030年に向けて使用量削減に取り組まなかった場合、事業成長に伴い約5.3倍まで増加すると想定される。

・省エネルギー推進による電力使用量の削減や再生可能エネルギーの導入などを進め、化石資源由来のエネルギー使用削減に取り組む。

・サプライヤーと省エネルギー推進や再生可能エネルギー導入などを進め、生産コストの上昇を抑制。

・プラスチック原料価格の上昇による財務影響は「中」となる見込み。

・参考したシナリオをもとに、プラスチック原料の単価は2021年8月期比1.3倍まで増加すると想定され、調達するプラスチック原料のうちリサイクル由来原料比率は60%になると想定される。

・化石資源由来のプラスチック削減に向け、商品や包材資材の脱・省プラスチック、軽量化に取り組む。

・化石資源由来からリサイクル由来原料、代替素材への移行を進める。

プラスチックの規制強化と市場変化

・化石資源由来プラスチック製品の売上減少による財務影響は「大」となる見込み。

・リユース、リサイクル由来プラスチック製品の売上拡大による財務影響は、「大」となる見込み。

・参考したシナリオをもとに、規制や製品寿命の長期化などによる化石資源由来プラスチック製品が20%減少、需要の変化に伴いプラスチック製品のリサイクル由来原料比率が60%を占めると想定。

・サステナブルな商品やサービスへの需要拡大を見込み、環境配慮型素材の活用や製品開発を進める。

・自社製品の回収・リサイクルなど再資源化を進め、化石資源由来からリサイクル由来原料への移行に取り組む。

・二次流通の事業化など持続可能な仕組みの構築を進め、リユースの推進に取り組む。

 

物理的リスク・機会については、温暖化進行による気象災害の増加が、短期に発生する可能性の高い重大なリスクとなります。そこで、この傾向がさらに強まる4℃シナリオを基に、国内・海外の主な事業拠点について、気象災害がもたらす影響を定性的に分析しました。

 

4℃シナリオで示される2050年時点の物理的リスクと機会

物理的リスクと機会を踏まえた方針・対応策

自然災害による被害

・洪水・高潮により3m以上の浸水被害が想定される主要拠点数は、国内2ヵ所、海外11ヵ所の見込み。

・分析対象となる拠点は、当社が事業展開をしている国・地域の店舗、物流センター、サプライヤー生産拠点のうち、売上高や在庫額、調達額などをもとに影響の大きい拠点を選定。

・店舗、物流センター、サプライヤー生産拠点においてハザードリスクの高い拠点の浸水対策の推進に取り組む。

・被災した地域の店舗の営業を早期に再開し、必要な物資を届けることで、地域社会への責任と貢献を果たす。

 

(3) リスク管理

当社は、気候変動による当社事業への影響を把握し、対策を講じるため、シナリオ分析により影響の大きさや発現までの期間等を評価し、気候変動リスクや機会を特定しています。

リスク評価プロセスとしては、全社リスクを統括する「コンプライアンス・リスク管理委員会」が、直面する可能性のあるリスクを、重要性や発生可能性の高さを基に年1回以上の頻度で評価しており、気候変動に関わるリスクも全社の主要なリスクの一つとして認識しています。

(4) 指標及び目標

当社は、グループ全体のGHG排出量(スコープ1,2)を2030年までに50%削減(2021年8月期比)する目標を掲げています。その実現に向けて、シナリオ分析により特定されたリスク・機会をもとに、店舗・物流拠点当への再生可能エネルギー導入や太陽光パネルの設置、化石由来原料の削減、リユース・リサイクルなどに取り組んでいます。

詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ◇サステナビリティ全般(4)指標及び目標」をご覧ください。

 

 

◇人的資本・多様性

(1) ガバナンス

第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ◇サステナビリティ全般 (1)ガバナンス」をご参照ください。

(2) 戦略

当社は、社員一人ひとりが「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社会や地域の多様な方々と協働し、良い企業活動を行うことで、「感じ良い暮らしと社会」の実現を目指しています。

これからの時代における真に豊かな社会とは、「環境」・「経済」・「文化」がバランス良く支え合っている社会だと考えます。美しい、豊かな自然や環境が持続可能な形で維持され、人々がそれぞれの有する資質を十分に生かしながら豊かな経済生活を営み、多様なつながりを持って文化的水準の高い生活を送ることができるような社会の実現を目指します。

当社はそのために、社会にとっての公益に貢献する事業活動を通じて営利を生み出すことで、公益と営利を持続可能な形で両立させることができる企業体でありたい考えています。

そのような理想を掲げる当社にとって最大の資本は「人財」です。社員が「社会や人の役に立つ」という理念や、自らの夢の実現に対する情熱と志を持って、地域や店舗で主体的に考え、自律的、自発的に行動することを大切にしています。当社が目指すこのような経営のあり方を「公益人本主義経営」と定義し、その実践を担う人財の育成と組織づくりこそが当社の経営戦略の根幹であると考えています。

 

良品計画が求める人財像

1. 「社会や人の役に立ちたい」という情熱と志:

「おかげさま・お互い様」、自分は人に支えられているという自覚と感謝の気持ち、謙虚さ、人への思いやり、良心、誠実さ。その結果として自然と生まれる、「社会や人の役に立ちたい」、「社会課題を解決したい」という情熱や志。

2. 共感力、当事者意識:

自分の周りの人やお客様、地域住民など、様々な価値観を有する生活者にリスペクトをもって向き合い、その方々の日々の生活や暮らし、そこで感じていることを想像する。それを他人事ではなく自分事として捉えられる共感力(エンパシー)と当事者意識(オーナーシップ)。

3. 商売人意識:

目の前のお客様や地域の方々に喜んでもらい、役に立つことで、売上利益を上げることはよいことであると信じ、継続的な改善や新しい価値を生み出そうとたゆまぬ努力を続ける姿勢。

4. 探究心、知的好奇心:

最良の生活者の視点で、未来の望ましい暮らしやありたい社会の姿を思い描き、模索しつづける探究心。そのヒントになるような情報を、新聞や書物を読んだり、アートを見たり、街歩きをしたり、社外の方々と繋がったりしながら積極的に情報収集をし、考え続ける姿勢、知的好奇心。

5. クリエイティビティ、構想力:

物事を見つめ、ありたい姿とのギャップに気づいたり面白いものを発見したりする力。気づきや発見を組み合わせ、アイディアを生みだし、形にするクリエイティビティ。目前の課題や矛盾を解決し、継続的価値を創出する事業モデルや仕組みをデザインできる構想力。

6. チーム力、共創力:

価値観や課題意識を共有しながら社内外の様々な人々と協力関係を構築し、一人では決してできない大きなことを実現するチーム力や新しいものを生み出す共創力。

7. 行動力、徹底力:

自らやチームで考えたことを実行する行動力。成果が出るまで粘り強く改善を続けながらやり抜く徹底力。

8. チャレンジ精神、前向きさ:

未知の挑戦や困難にぶつかっても、自分を信じて物怖じせずに取り組むチャレンジ精神。何事にも楽しんで取り組もうとする前向きな姿勢。

社員一人ひとりが、お客様や地域の方々と共に、未来の望ましい暮らしやありたい社会の姿を共創する。その結果生み出された商品やサービス、店舗が多くの人々に喜ばれ、信頼され、愛されている。そして、その過程において社員が自ら成長を実感し、幸せを見出すことで、それが次なる事業活動への原動力となる。こうした活動が世界中のあちこちに広がり、社会や地域を少しずつ良い方向へと後押しし続けている――それがまさしく私たち当社が目指す姿です。

 

人財育成6つの柱

「公益人本主義経営」実現に向けての人財育成方針及び社内環境整備方針は以下の通りです。

1. 当社の理念や価値観を具現化しようという志を有する社員を採用・育成する。

2. 多様な社員が個性を発揮し、自律的に考え、自発的に行動するために、健全な企業風土を醸成する。

3. 社員が自分らしく生き生きと、心身共に健康で、安心して働き続けることのできる職場環境づくりを推進する。

4. 多様な社員の個性と可能性を引き出し、組織としての成果を最大化できるリーダー人財を育成、配置する。

5.「キャリアを通じて学び、成長したい」という社員のニーズをサポートする教育研修体系の整備と支援を行う。

6. 社員一人ひとりの参画意識や挑戦意欲を後押しするための、人事制度の構築と運用を行う。

(3) リスク管理

第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ◇サステナビリティ全般 (3)リスク管理」をご参照ください。

(4) 指標及び目標

すべての従業員の更なる活躍を支援するために、様々なライフスタイルの変化を考慮した環境づくりをすすめることで、従業員が安心して働くことができ、活躍できる会社を目指します。

指標1:「女性管理職比率」

従業員のチャレンジを促進し、早い段階でチャレンジングな経験ができる機会を創出に努めます。特に、ライフスタイルの変化に影響を受けやすい女性の活躍を支援するにあたり、自身のキャリアやワークライフバランスについて考えるキャリア開発研修をはじめとして、管理監督者を含む意識改革にも積極的に取り組むことで、女性管理職比率の向上を目指します。

指標2:「男性育児休業取得率」

ライフイベントと仕事を両立するために、多様な働き方が選択できる制度を提供しており、育児休業についても性別を問わず取得することができます。今後、ダイバーシティ委員会を中心として、ワークライフバランスを含めたより一層の社内啓発活動と、管理監督者を筆頭に意識改革を進めることで、男性育児休業取得率の向上を目指します。

なお、女性管理職比率、男性育児休業取得率の実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、各リスクが顕在化する可能性の程度や時期については合理的に予見することが困難であるため記載していませんが、当社グループはこれらのリスクに対する管理体制を「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり整備し、リスクマネジメント活動を行っています。

(1) 経済状況、消費動向について

当社グループは、衣服・雑貨、生活雑貨、食品等のオリジナル商品を通してライフスタイルを提案する事業を営んでおり、国内、海外各国における気候状況、景気後退、及び海外での治安悪化及びそれに伴う消費縮小は当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした外部環境の変化への対応として、事業戦略においては持続的な成長基盤の強化と顧客創造、その支えとしての機能戦略においては時代対応した仕組み化や生産性向上を図ることにより、引き続き収益性の改善を図ってまいります。

(2) 海外の事業展開について

当社グループは、ヨーロッパ地域においてイギリス、フランス、スウェーデン、イタリア、ドイツ、アイルランド、スペイン、ポーランド、ポルトガル、スイス、フィンランド、デンマーク、アジア・オセアニア地域において、香港、シンガポール、韓国、台湾、中国大陸、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インド、クウェート、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、カタール、オマーン、オーストラリア、北米地域においてアメリカ合衆国、カナダでの子会社または合弁会社による店舗展開、または現地有力企業への商品供給による事業ならびに現地における商品調達を行っております。

これらの海外における事業展開には、以下のようないくつかのリスクが内在しております。

① 予期しない法律または規制の変更、強化

② 為替レートの変動

③ 不利な政治または経済要因

④ 税制または税率の変更

⑤ 移転価格税制等の国際税務問題による影響

⑥ テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等

万一、上記のような事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新規事業について

当社グループは、住宅事業や流通加工等の小売以外の事業を展開しております。これらの事業は、多くの技術課題を解決し、販売拡大の手法を構築することが重要であります。これらの事業は不確定要因が多く、事業計画どおり達成できなかった場合は、それまでの投資負担が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 災害等について

当社グループは、国内外に店舗、物流センター等を保有しており、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、事故、火災、テロ、戦争その他の人災等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら災害等に対する備えとして、対応マニュアル等の策定や損害保険の付保等の対策を講じております。

(5) 個人情報の管理について

当社グループは、営業取引、インターネット取引等により、相当数の個人情報を保有しております。これらの個人情報の管理は社内管理体制を整備し、厳重に行っておりますが、万一個人情報が外部へ漏洩するような事態となった場合は、社会的信用の失墜による売上の減少、または損害賠償による費用の発生等が考えられ、その場合には当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 人権に関するリスク

当社グループは、自社において生産拠点を有しておりません。商品製造/生産はすべてサプライヤーに委託していることから、サプライチェーンに関わるすべての人の基本的人権を尊重し、心身の健康や安心・安全を確保することが、最も重要な責務だと考えています。そのために、「良品計画生産パートナー行動規範」に基づき、サプライチェーン全体の労働環境、人権尊重、環境配慮の方針を取引先工場と共有し、遵守をお願いするとともに、人権尊重に向けた取り組みを進めています。しかしながら、この方針を逸脱した行為が発生した場合には、当社グループに対するお客様及び取引先の信頼低下などにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7) 気候変動について

当社グループは、気候変動に関わる課題を重要なテーマとして認識し、気候変動への影響を軽減するため、事業活動全般における温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組んでいます。気候変動による影響はすでに顕在化しており、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

気候変動によるリスクへの適切な対応および事業機会を特定するため、TCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のフレームワークに沿った分析と対策を進めております。

気候変動に係る詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ◇気候変動への対応(TCFDへの対応)」に記載のとおりであります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症による移動制限が緩和され、経済活動は緩やかに正常化が進みました。一方、世界的な資源価格の高騰や金融引き締めに伴う海外景気の下振れにより、依然として国内外における経済の先行きは不透明な状態が続いています。また、円安の進行や原材料価格、エネルギーコストの上昇に伴う生活必需品の値上げも相次いでおり、消費者の節約志向が一層強まっています。

このような状況の中、当社グループは、第二創業にあたり、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定め、事業展開を進めました。

 

連結会計年度末における当社グループの総資産は4,537億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ543億90百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加248億75百万円、商品の増加38億75百万円、その他流動資産の増加34億74百万円、有形固定資産の増加105億47百万円および投資その他の資産の増加127億8百万円によるものです。

負債は1,862億68百万円と317億96百万円増加しました。これは主に、短期借入金の増加108億73百万円、未払費用の増加25億54百万円、未払法人税等の増加69億64百万円、リース債務の増加87億56百万円および繰延税金負債の増加20億82百万円によるものです。

純資産は2,674億46百万円と225億94百万円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加110億6百万円および繰延ヘッジ損益の増加116億93百万円によるものです。

 

    当連結会計年度における当社グループの経営成績は、下記のとおりであります。

 

営業収益               5,814億12百万円(前年同期比17.2%増)

営業利益                331億37百万円(前年同期比 1.1%増)

経常利益                361億56百万円(前年同期比 2.8%減)

親会社株主に帰属する当期純利益     220億52百万円(前年同期比10.2%減)

 

(当連結会計年度におけるセグメント別の概況)

当連結会計年度における当社グループのセグメント別業績は、次のとおりであります。

① 国内事業

国内事業における当連結会計年度の営業収益は3,428億29百万円(前期比11.3%増)、セグメント利益は85億34百万円(同44.1%減)と、増収減益となりました。

営業収益は、既存店が伸び悩んだものの、生活圏への出店強化が寄与し、増収となりました。一方、円安および原材料高の影響により、営業総利益が伸び悩んだほか、人件費、出店関連や商品マーケティング等の費用増加等により、営業利益は減益となりました。こうした状況の中、2023年1月から2月にかけて実施した一部商品の価格改定以降、営業総利益の改善が進み、セグメント利益は、第3四半期以降、増益に転じました。

② 東アジア事業

東アジア事業における当連結会計年度の営業収益は1,716億30百万円(前期比23.3%増)、セグメント利益は313億86百万円(同41.7%増)と、増収増益となりました。

中国大陸におきまして、2023年1月以降、経済活動の再開が進むなか、現地開発商品を拡充している生活雑貨が売上を牽引し、増収増益となりました。そのほか、台湾、香港、韓国も増収増益となりました。

 

 

③ 東南アジア・オセアニア事業

東南アジア・オセアニア事業における当連結会計年度の営業収益は314億70百万円(前期比42.9%増)、セグメント利益は41億60百万円(同68.1%増)と大幅な増収増益となりました。

当期より、現地の文化や気候に合わせて独自に開発したアセアン向けの商品が、現地のお客さまの支持を得て、タイ、マレーシアを始めとする東南アジア各国の売上が好調に推移し、増収増益となりました。

④ 欧米事業

欧米事業における当連結会計年度の営業収益は354億82百万円(前期比32.3%増)、セグメント利益は38億34百万円(前期は8億56百万円のセグメント損失)となりました。

北米、欧州ともに売上が伸長し、前期の赤字から一転し、通期での黒字化を達成しました。なかでも、北米は店舗運営力の強化を図ったことで、業績が好調に推移しました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動および新規出店等による投資活動、並びに財務活動を行った結果、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末に比べ249億52百万円増加し1,151億84百万円となりました。

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

営業活動の結果獲得した資金は、565億27百万円(前年同期は233億50百万円の収入)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益337億67百万円および減価償却費195億35百万円によるものであります。

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

投資活動の結果使用した資金は、221億6百万円(前年同期は166億83百万円の支出)となりました。

これは主に、店舗等の有形固定資産の取得による支出165億70百万円、店舗出店による敷金等の支出30億76百万円およびソフトウエア投資等の無形固定資産の取得による支出67億28百万円によるものであります。

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

財務活動の結果使用した資金は、112億32百万円(前年同期は586億47百万円の支出)となりました。

これは主に、短期借入金の純増加106億53百万円、リース債務の返済による支出109億33百万円および配当金の支払110億40百万円によるものです。

 

 

生産、受注及び販売の実績

(1)販売実績

当連結会計年度における販売実績(営業収益)をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

営業収益(百万円)

前期比(%)

国内事業

342,829

111.3

東アジア事業

171,630

123.3

東南アジア・オセアニア事業

31,470

142.9

欧米事業

35,482

132.3

合計

581,412

117.2

 

(注)営業収益の商品別の構成は次のとおりであります。

商品別

営業収益(百万円)

前期比(%)

衣服・雑貨

222,561

121.8

生活雑貨

260,036

111.7

食品

74,839

124.8

その他

23,974

115.8

合計

581,412

117.2

 

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っています。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

① 営業収益及び営業総利益

当連結会計年度の営業収益につきましては、前連結会計年度に比べて、852億41百万円増(前期比17.2%増)の5,814億12百万円となりました。セグメント別の営業収益の詳細については、「生産、受注及び販売の実績 (1)販売実績」に記載しています。

また、営業総利益は、前連結会計年度に比べて371億93百万円増加し2,715億49百万円となりました。営業収益に対する比率は46.7%となり、前連結会計年度より0.5ポイント減少しました。

② 販売費及び一般管理費及び営業利益

当連結会計年度の販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度に比べて368億29百万円増(前期比18.3%増)の2,384億12百万円となりました。営業収益に対する比率は41.0%となり、前連結会計年度より0.4ポイント増加しました。

この結果、営業利益は前連結会計年度に比べて3億63百万円増加し、331億37百万円となりました。営業収益に対する比率は5.7%となり、前連結会計年度より0.9ポイント減少しました。

③ 営業外損益及び経常利益

当連結会計年度の営業外収益につきましては、前連結会計年度に比べて8億97百万円減少し、51億69百万円となりました。また、営業外費用につきましては、5億24百万円増加し21億50百万円となりました。

この結果、経常利益は前連結会計年度に比べて10億58百万円減少し、361億56百万円となりました。営業収益に対する比率は6.2%となり、1.3ポイント減少しました。

④ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の特別利益につきましては、前連結会計年度に比べて28億22百万円増加し、30億47百万円となりました。また、特別損失につきましては、前連結会計年度に比べて12億1百万円増加し、54億36百万円となりました。

この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べて5億63百万円増加し、337億67百万円の利益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて25億6百万円減少し、220億52百万円の利益となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性に関する情報

① 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に新規出店および既存店舗の改装といった設備投資、情報システム投資によるものであります。
 これらの運転資金や投資資金は、自己資金により充当することを基本方針としておりますが、必要に応じて資金調達を行ってまいります。

② キャッシュ・フローの分析

当社グループの資金の状況につきましては、「 経営成績等の状況の概要  (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(コミットメントラインの契約)

当社は、2022年11月28日付で、下記のとおりコミットメントライン契約を締結いたしました。

(1) 契約締結先  株式会社みずほ銀行

(2) 借入極度額  40,000百万円

(3) 契約期間   2022年11月30日~2025年11月28日

(4) 資金用途   運転資金

(5) 担保の有無  なし

 

(固定資産の譲渡)

当社は、2023年7月26日開催の取締役会において、以下のとおり固定資産の譲渡について決議を行い、2023年8月4日に譲渡契約を締結しました。

(1) 譲渡の理由

本社移転に伴う固定資産の譲渡であります。本社を移転することで、社員同士のコミュニケーションのさらなる活性化、お客さまや周辺自治体や生活者の皆さまとの良好な関係構築を図り、業績の拡大を図ります。当社空間設計部がオフィスの設計を担当し、より働きやすい、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションが活性化する環境を整えます。

(2) 譲渡資産の内容

資産の内容

所在地

土地・建物

東京都豊島区東池袋四丁目26番3号

(注) 譲渡価額および帳簿価額につきましては、譲渡先との取り決めにより公表を差し控えさせていただきますが、市場価格を反映した適正な価格での譲渡となります。

(3) 譲渡先の概要

譲渡先につきましては、譲渡先との取り決めにより公表を差し控えさせていただきます。なお、譲渡先と当社との間には、記載すべき資本関係、人的関係および取引関係はありません。また、譲渡先は当社の関連当事者には該当しません。

(4) 譲渡の日程

①取締役会決議日   2023年7月26日

②契約締結日     2023年8月4日

③物件引渡日(予定) 2024年8月期中

(5) 業績に与える影響

本固定資産の譲渡に伴う売却損益については、2024年8月期に特別損益として計上予定ですが、金額については現時点で算定中です。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの自社ブランド商品「無印良品」の生活者のニーズへの対応と新規需要開拓のために、常に最新の商品情報を収集し、意欲的な商品研究開発活動を進めております。

商品開発部門である衣服・雑貨部、生活雑貨部及び食品部において商品企画開発を進めております。また、衣服・雑貨部内に企画デザイン課を、生活雑貨部内に企画デザイン課をそれぞれ設置し、更なる商品開発の強化を図っています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,172百万円であります。

なお、当社グループにおける研究開発活動は概ね全セグメント区分に共通する「無印良品」の開発を目的としておりますので、セグメント別の記載は行っておりません。