独立監査人の監査報告書

 

 

 

2025年1月31日

ENECHANGE株式会社

 

 

取締役会 御中

 

 

 

有限責任 あずさ監査法人

 

 

東京事務所

 

 

 

指定有限責任社員

業務執行社員

 

公認会計士

杉 山 正 樹

 

 

指定有限責任社員

業務執行社員

 

公認会計士

寺 出 俊 也

<連結財務諸表監査>

監査意見

当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられているENECHANGE株式会社の2023年1月1日から2023年12月31日までの連結会計年度の訂正後の連結財務諸表、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、その他の注記及び連結附属明細表について監査を行った。

 当監査法人は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、ENECHANGE株式会社及び連結子会社の2023年12月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。

 

監査意見の根拠

 当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「連結財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社及び連結子会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。

 

継続企業の前提に関する重要な不確実性

 注記事項(継続企業の前提に関する事項)に記載されているとおり、会社は、当連結会計年度まで2期連続で営業損失、3期連続で経常損失及び5期連続で親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、当連結会計年度において重要な営業損失2,125,017千円、経常損失2,404,967千円及び親会社株主に帰属する当期純損失4,985,167千円を計上している。この結果、2023年12月31日現在において、連結貸借対照表上1,479,226千円の債務超過となっている。また、一部の取引金融機関からの借入については、現時点では期限の利益喪失に関わる条項を適用する旨の通知を受けていないものの、財務制限条項に抵触している。加えて、外部調査委員会の調査報告書が公表された結果、利害関係者との関係性の悪化や会社のブランド力の毀損が生じる可能性がある。これらの事象又は状況は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に該当し、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。

 なお、当該状況に対する対応策及び重要な不確実性が認められる理由については当該注記に記載されている。連結財務諸表は継続企業を前提として作成されており、このような重要な不確実性の影響は連結財務諸表に反映されていない。

 当該事項は、当監査法人の意見に影響を及ぼすものではない。

 

強調事項

1.注記事項(重要な後発事象)(第三者割当増資による新株式の発行)に記載されているとおり、会社は、2024年2月9日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行を決議し、2024年2月26日に払込が完了している。

2.注記事項(重要な後発事象)(一部借入金の任意早期弁済)に記載されているとおり、会社は、2024年7月8日に一部の取引金融機関からの借入金の任意早期弁済を行っている。

 当該事項は、当監査法人の意見に影響を及ぼすものではない。

 

監査上の主要な検討事項

 監査上の主要な検討事項とは、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、連結財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。

 

 当監査法人は、「継続企業の前提に関する重要な不確実性」に記載されている事項のほか、以下に記載した事項を監査報告書において監査上の主要な検討事項として報告すべき事項と判断している。

 

経営者による内部統制の無効化リスクへの対応

監査上の主要な検討事項の

内容及び決定理由

監査上の対応

ENECHANGE株式会社(以下「ENECHANGE」という。)及び連結子会社(以下「ENECHANGEグループ」という。)は、2022年12月期よりEV充電事業を本格稼働した。

ENECHANGEが2023年12月期の決算短信を発表した後、当監査法人は、2024年2月16日にEV充電事業における特別目的会社であるEV充電インフラ1号合同会社(以下「SPC」という。)を用いたスキーム(以下「SPCスキーム」という。)に係る会計処理に疑義がある旨の外部通報を受けた。このため当監査法人は、ENECHANGEによる連結の範囲の判定及びSPCスキームに係る会計処理に関し、不正による重要な虚偽表示の兆候を示す状況を識別した。

当該状況を踏まえ、ENECHANGEは、2024年3月27日に外部の公認会計士及び弁護士により構成される外部調査委員会を設置した。外部調査委員会は、2024年6月21日にENECHANGEに調査報告書を提出している。

当該調査報告書において、2024年2月から3月にかけて常勤監査役が主導して実施したデジタルフォレンジック調査及び外部調査委員会による調査の実施前に、経営者が2023年12月末におけるSPCの社債(1,000百万円)の最大額の引受者(以下「筆頭社債権者」という。)に対する個人貸付に関連する電子メール等を削除していたことや、執行役員がENECHANGEと社債権者が締結していたオプション契約に含まれるプット・オプションの行使条件について、社債権者と当監査法人に対する説明を意図的に乖離させていたことが報告されている。同報告書において、これらの行動は上場企業の連結財務諸表の作成に責任を負うべき経営者として不適切な言動であり、社内及び監査人に対する適切なコミュニケーションが不足していたと評価されている。

また、上記の状況を踏まえ、ENECHANGEは以下の対応を実施した。

(1) SPCに係る連結範囲の判定の見直し

 

ENECHANGEは連結の範囲にSPCを含めないとの判定を見直し、その結果、当第3四半期連結会計期間までのSPCに係る連結範囲の判定結果及び関連する会計処理を訂正した。

SPCを連結の範囲に含めたことにより、ENECHANGEの連結子会社からSPCに対するEV充電器の販売取引が、連結会社相互間における取引として相殺消去された。その結果、2023年12月期の連結売上高は21.8億円減少した。

 

(2) EV充電器の販売取引の経済合理性に関する判断

 

ENECHANGEグループは、ENECHANGEの株主である特定の取引先に対して、2022年12月に151百万円のEV充電器を販売しており、前連結会計年度の連結損益計算書に同額の売上高として計上している。

これらの取引については、調査報告書に記載の通り、ENECHANGEの経営者から当該取引先の経営者に対して、販売したEV充電器の在庫リスクを当該取引先が実質的に回避することを可能とするスキームを講じる旨が伝達されていたが、当該スキームは実行されておらず、当該取引に関する売上高の修正等は行われていない。

当監査法人は、経営者の誠実性に関する評価を踏まえると、監査の前提条件が充足されていない可能性があることから、当連結会計年度の連結財務諸表(期首剰余金に影響を与える過年度の連結財務諸表を含む)には、不正による重要な虚偽表示の疑義が存在すると判断した。そのため、経営者が意図的に内部統制を無効化し、不適切な会計処理を行うリスクについて、より慎重な検討が必要となる。

以上から、当監査法人は、経営者による内部統制の無効化リスクへの対応が、当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当すると判断した。

当監査法人は、2024年2月16日にENECHANGEのSPCを用いた不適切な会計処理を示唆する外部通報を受けたため、SPCスキームに関する経営者の不正による重要な虚偽表示の兆候を示す状況を識別し、監査役会に対してデジタルフォレンジック調査の実施を要請した。当該要請があった事実を受け、経営者から当監査法人に対し、通報を受ける前に当監査法人が実施していたSPCに対する売上取引及び連結範囲の判定等の監査手続の実施過程においては示されていなかった、経営者による筆頭社債権者に対する個人貸付の事実について、追加的な説明が行われた。また、当監査法人は、不正による重要な虚偽表示の疑義の可能性を識別し、外部調査委員会による調査を依頼した。

経営者が連結財務諸表に重要な影響を与え得る事実を隠蔽している可能性が合理的に存在するか否かを評価するために、不正調査の専門家を関与させた上で、当監査法人が外部調査委員会に要請したデジタルフォレンジック調査の実施状況を含む調査報告書の内容を評価した。

評価の結果、当監査法人は虚偽表示リスクの再評価を含む監査計画の見直しを行った。見直しにあたっては、新たに把握された以下の事実を重視した。

● 経営者から筆頭社債権者に対する個人貸付について、経営者が取締役会及び当監査法人に対して説明を行わなかったこと

● オプション契約の定めにかかわらず、ENECHANGEがSPCの社債(転換後の匿名組合出資持分)を買い取ることが合意事項である旨をENECHANGEの執行役員が取締役会等の機関決定を経ずに筆頭社債権者に対して伝達していたこと

 

調査報告書においては、上記の新たに把握された事実について、隠蔽の意図はなかったとする経営者及び執行役員の供述は信用できるとして、これらの事実(当監査法人に説明を行わなかった事実等)は意図的なものではなく、経営者による不正は認められないと結論づけている。

しかし、当監査法人は、このような調査報告書の内容を踏まえてもなお、経営者及び執行役員のslackの内容や電子メールを削除した事実など、存在する多くの証拠に照らして経営者及び執行役員の供述は信憑性を欠くものと判断し、以下の事実のとおり、重要な虚偽表示の原因となる不正が存在したとの認定に至った。なお、この認定に当たり、当監査法人は外部の複数の法律専門家の意見を聴取した。

● 経営者が、筆頭社債権者に対する個人貸付が連結の範囲の判定に影響を与える可能性があることを認識した上で、本貸付の発覚によりSPCの連結が必要となることから当該貸付の存在を隠蔽し、当監査法人がデジタルフォレンジックの実施を通告するまで、取締役会への報告も当監査法人への説明も行わなかったと認められること

● 執行役員が、プット・オプションの行使条件の有無やその行使可能性の程度がSPCの連結の範囲の判定に重要な影響を与えうることを認識した上で、社債権者に対する説明と同様の内容を当監査法人に説明することで、SPCの連結が必要との指摘を受ける可能性が生じることから、社債権者に説明した内容を隠蔽し、当監査法人に対して意図的に異なる内容の説明を行ったと認められること

 

このため、財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクがあるものと判断して、以下の実施すべき監査手続を決定した。

 

(1) 財務諸表全体レベルの不正による重要な虚偽表示リスクの再評価及び対応

 財務諸表全体レベルの不正による重要な虚偽表示リスクを識別したことから、2018年12月期から2023年12月期までの期間を対象として、新たな不正を示唆する状況の有無を確かめるため、経営者及び執行役員の電子メール等を対象としたデジタルフォレンジック調査を監査人独自に実施した上で、(2)から(5)の手続を実施した。手続を実施する上で、不正調査の専門家やITの専門家に加え、豊富な経験を有する監査チームメンバーを配置した。

 

(2) SPCに係る連結の範囲の判定

 

 SPCに係る連結の範囲の妥当性を検討するため、監査上の主要な検討事項「EV充電インフラ1号合同会社に係る連結の範囲の妥当性の検討」の監査上の対応に記載の手続を実施した。

 

(3) 売上取引の経済合理性及び実在性の評価

 

 内部統制の無効化により経済合理性及び実在性に疑義が存在するEV充電器販売に係る売上高、また、売上の過大計上を目的とした実態のないバーター取引や循環取引等が行われている可能性があるエネルギープラットフォーム事業に係る一部の売上高等について、実在性及び経済合理性を検討するため、主に以下の手続を実施した。

● 売上取引の実態及び返品等の条件を確認するために、契約書類等の外部と取り交わした証憑の閲覧及び取引データとの照合、並びに必要に応じた現場視察等を実施した。

● 特定取引先との取引内容を網羅的に把握し、特定取引先に対して契約金額に加え、取引条件等を書面にて確認した。

● 取引先の実在性を確認するため、登記簿謄本及び第三者機関による信用情報を閲覧した。

● 当監査法人のIT専門家を関与させ、取引データの分析を実施した。

 

(4) 重要な会計上の見積りに関連する経営者の重要な偏向の有無の検討

固定資産の減損、のれん及び投融資の評価を含む重要な会計上の見積りについて、経営者による主要な仮定の適切性を評価し、会計上の見積りの重要な偏向の有無を検討した。

(5) 仕訳入力及びその他の修正への対応

ENECHANGE及び連結子会社ENECHANGE EVラボ株式会社の全ての会計仕訳及び連結会計仕訳を対象として、ENECHANGEグループにおいて想定されるリスクシナリオに合致した会計仕訳を抽出し、その裏付けとなる証拠書類等を検証し、不正な仕訳入力の有無を検討した。

また、上記の手続の結果に関して以下のコミュニケーションを実施するとともに、2024年6月25日に、取締役会及び監査役会に対して、調査報告書の内容を踏まえてもなお、当監査法人としては経営者の関与による重要な虚偽表示の原因となる不正が存在したと判断する旨の「見解書」を提出した。

 

(1)監査役会及び社外取締役とのコミュニケーション

 

● 監査役会と以下のコミュニケーションを実施した。

 

・ 2024年3月に、経営者の不正による財務諸表の重要な虚偽表示の疑義の可能性について報告した。

・ 2024年5月に、連結範囲の見直しを踏まえた2023年12月期の監査計画の重要な修正について説明した。

・ 2024年6月21日付けの調査報告書の内容を踏まえてもなお、当監査法人としては経営者の関与による重要な虚偽表示の原因となる不正があると判断したことを「見解書」を提示して報告した。また、監査役会が経営者に対して問題点の是正等の適切な措置を求めているか否か及び是正措置等の評価とその実施状況について質問した。

● 社外取締役と以下のコミュニケーションを実施した。

・ 2024年3月に、経営者の不正による財務諸表の重要な虚偽表示の疑義の可能性について報告した。

・ 2024年6月21日付けの調査報告書の内容を踏まえてもなお、経営者の関与による重要な虚偽表示の原因となる不正があると判断したことを「見解書」を提示して報告し、問題点の是正措置等の実施状況について質問した。

 

(2) 経営者確認書の入手

ENECHANGEの経営者の誠実性に疑義があると評価したため、以下の手続を実施した上で、経営者確認書を入手した。

● 経営者が財務諸表の作成責任及び監査人に提供した情報の網羅性に対する責任を果たしたと判断していることについての監査証拠を得るため、経営者確認書の適切な要請先を検討した。

● 経営者が、経営者確認書において虚偽の陳述をするリスクに対応するため、各監査役による適切な是正措置が講じられていることを各監査役からの宣誓書の入手により確認した。

● 経営者確認書の信頼性に疑義はない旨の宣誓書を取締役会及び各監査役から入手した。

 

EV充電インフラ1号合同会社に係る連結の範囲の妥当性の検討

監査上の主要な検討事項の

内容及び決定理由

監査上の対応

ENECHANGE株式会社(以下「ENECHANGE」という。)及び連結子会社(以下「ENECHANGEグループ」という。)は、EV充電事業を営んでいる。EV充電事業においては、EV充電器の所有及び運営等を目的とした特別目的会社であるEV充電インフラ1号合同会社(以下「SPC」という。)を設立し取引を行っている。

SPCを連結の範囲に含めるか否かの判定においては、下記のとおり、(1)SPCの資金調達、(2)損益帰属、(3)業務執行権限に関する複雑な仕組みを考慮する必要があり、連結財務諸表に与える金額的重要性も高いことから、慎重な対応が求められる。ENECHANGEは、当第3四半期連結会計期間までSPCを連結の範囲に含めていなかった。

 

監査上の主要な検討事項「経営者による内部統制の無効化リスクへの対応」に記載のとおり、当監査法人は外部通報を契機として、ENECHANGEの経営者からSPCの社債権者への個人貸付等(下記(1)参照)を把握した。また、ENECHANGEは当監査法人の要請に基づきデジタルフォレンジック調査を実施し、その後外部調査委員会による調査を実施した。

これらの調査の結果検出された事項を踏まえ、ENECHANGEは直接的にはSPCに出資していないものの、注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおり、SPCを連結の範囲に含めることを決定し、SPCに係る連結の範囲の判定及びこれに関連する会計処理を訂正した。

SPCに係る連結の範囲の判定に影響を与える事項

(1) SPCの資金調達の状況

2023年12月末におけるSPCの社債(1,000百万円)の最大額の引受者(以下「筆頭社債権者」という。)が、当該調達資金のうち700百万円を提供している。ENECHANGEの緊密な者に該当するENECHANGEの経営者が、筆頭社債権者に対して以下の条件で個人貸付350百万円を行っていることから、実質的にENECHANGEの経営者によるSPCに対する融資に該当するとENECHANGEは判断した。

● 資金の使途は、SPCに対する出資に限定される

● 資金の返済額は、筆頭社債権者がSPCから受け取る金額に限定される

加えて、ENECHANGEと社債権者は、SPCの社債(転換後の匿名組合出資持分)を売り渡すことができるプット・オプションを含むオプション契約を締結している。当該プット・オプションが行使された場合、ENECHANGEは実質的にSPCに対する投資額の回収を保証することになる。また、以下の事実が判明した。

● 契約上の文言にかかわらず、社債引受後3年目にENECHANGEが社債引受額で筆頭社債権者からSPCの社債(転換後の匿名組合出資持分)を買い取ることが、実質的な合意事項として、ENECHANGEの執行役員から筆頭社債権者に対して電子メールで伝達されていた

更には、SPCがENECHANGEの子会社となる場合、ENECHANGEはSPCのリース債務について連帯責任を負う旨の債務保証契約をSPCのリース債権者と締結している。

 

これらの事実を踏まえ、ENECHANGEは、SPCの資金調達額の全額がオプション契約及び債務保証契約を通じて実質的にENECHANGEにより保証されていると判断した。

 

(2) SPCの損益の帰属状況について

SPCの損益は社債権者に社債利息として支払われた後、唯一の社員である一般社団法人EV充電インフラに帰属することになる。しかし、契約関係として以下の事実が存在していることから、ENECHANGEは、実質的にENECHANGEがSPCの事業から生ずる損失の概ね全額を負担することになると判断した。

● プット・オプションの実行に伴いENECHANGEがSPCの社債(転換後の匿名組合出資持分)を取得するに際し、ENECHANGEがSPCで生じた損失を負担すること

(3) SPCの業務執行の権限について

 

SPCの業務執行は、形式上は唯一の社員である一般社団法人EV充電インフラが担っている。しかし、以下の事実が存在していることから、ENECHANGEは、実質的にSPCの業務執行者はENECHANGEであると判断した。

● 同一般社団法人は会計事務所により設立され、その職務執行は当該会計事務所が担っていることから、SPC自体による職務執行の実態に乏しいこと

● SPCの事業であるEV充電器の売買及び設置などの運営に関する意思決定は、SPCの運営に関する基本契約書に基づき、実質的にENECHANGEグループが行っていること

ENECHANGEは、上記(1)~(3)の事実又は判断を総合的に勘案した結果、SPCを連結の範囲に含める必要があると判定した。当該判定には、上記(1)~(3)を含む複雑な状況を踏まえた高度な判断が必要となる。また、SPCを連結の範囲に含めるか否かは、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす。

 以上から、当監査法人は、EV充電インフラ1号合同会社に係る連結の範囲の妥当性の検討が当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当すると判断した。

当監査法人は、SPCに係る連結の範囲の妥当性を検討するため、主に以下の監査手続を実施した。

 

(1) 連結の範囲の検討に影響を与え得る事項の把握

 

SPCに係る連結の範囲の検討に影響を与え得る事項を把握するため、監査上の主要な検討事項「経営者による内部統制の無効化リスクへの対応」に記載のENECHANGEが実施したデジタルフォレンジック調査の結果及び外部調査委員会による調査結果を通読した。その上で、ENECHANGE及び外部調査委員会がそれぞれ実施したデジタルフォレンジック調査により抽出された関係者の電子メール及び外部調査委員会による関係者のヒアリングの議事録を閲覧した。

 

(2) SPCの資金調達状況の検討

SPCの資金調達状況を検討するため、SPCの試算表を閲覧し、SPC設立以降の資金調達状況を把握した上で、以下の手続を実施した。

 

● ENECHANGEの経営者によるSPCの筆頭社債権者に対する個人貸付の内容を検討するため、この個人貸付に係る金銭消費貸借契約書及び社債引受契約証書を閲覧した。

 

● ENECHANGEの経営者の筆頭社債権者に対する個人貸付金の当連結会計年度末残高や資金使途が限定されていることなどの条件を確かめるため、筆頭社債権者に対して、金銭消費貸借契約書を提示の上、直接確認を行った。

 

● ENECHANGEと筆頭社債権者が締結したオプション契約の内容を検討するため、匿名組合出資持分への転換に係る合意書及びオプション契約に係る関係者の電子メールを閲覧した。

 

● ENECHANGEとリース債権者が締結した連帯保証契約の内容を検討するため、債務保証契約書を閲覧した。

 

(3) SPCの損益帰属状況の検討

 

SPCの損益帰属状況を検討するため、SPCの試算表を閲覧し、SPC設立以降の損益の発生状況並びに配当及び社債利息の支払状況を把握した上で、以下の手続を実施した。

● SPCにおける主な損益の発生状況を確かめるため、以下の書類を閲覧した。

 

・ 業務委託費についてはSPCとENECHANGEとの間で締結された運営に関する基本契約書

・ リース料についてはリース契約書

・ 社債利息については社債引受契約証書

● SPCの社債利息が筆頭社債権者を通じてENECHANGEの経営者に支払われる約定となっていることを確かめるため、金銭消費貸借契約書を閲覧した。

● ENECHANGEの経営者から筆頭社債権者に対する貸付金の当連結会計年度末の残高が関連当事者取引の注記に適切に開示されていることを検討するため、金銭消費貸借契約書、筆頭社債権者に対する確認状の回答及びENECHANGEの経営者から入手した関連当事者取引に係る調査票を閲覧した。

 

(4) SPCの業務執行権限の検討

 

SPCの業務執行の権限者を特定するため、SPCの定款を閲覧した上で、以下の手続を実施した。

● 業務執行社員決定書及び運営に関する基本契約書を閲覧した。

● SPCの重要な意思決定及び業務執行のプロセス及びその実態を、質問及びデジタルフォレンジック調査の結果の閲覧を通して確認した。

 

 

その他の事項

 有価証券報告書の訂正報告書の提出理由に記載されているとおり、会社は、連結財務諸表を訂正している。なお、当監査法人は、訂正前の連結財務諸表に対して2024年7月9日に監査報告書を提出しているが、当該訂正に伴い、訂正後の連結財務諸表に対して本監査報告書を提出する。

 

その他の記載内容

 その他の記載内容は、有価証券報告書の訂正報告書に含まれる情報のうち、連結財務諸表及び財務諸表並びにこれらの監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査役及び監査役会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

 当監査法人の訂正後の連結財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。

 連結財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と連結財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。

 当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。

 その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。

連結財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任

経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。

連結財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき連結財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。

監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

連結財務諸表監査における監査人の責任

監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての連結財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から連結財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、連結財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。

監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。

・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。

・ 連結財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。

・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。

・ 経営者が継続企業を前提として連結財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において連結財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する連結財務諸表の注記事項が適切でない場合は、連結財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。

・ 連結財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた連結財務諸表の表示、構成及び内容、並びに連結財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。

・ 連結財務諸表に対する意見を表明するために、会社及び連結子会社の財務情報に関する十分かつ適切な監査証拠を入手する。監査人は、連結財務諸表の監査に関する指示、監督及び実施に関して責任がある。監査人は、単独で監査意見に対して責任を負う。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去するための対応策を講じている場合又は阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するためのセーフガードを適用している場合はその内容について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会と協議した事項のうち、当連結会計年度の連結財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。

<報酬関連情報>

当監査法人及び当監査法人と同一のネットワークに属する者に対する、会社及び子会社の監査証明業務に基づく報酬及び非監査業務に基づく報酬の額は、「提出会社の状況」に含まれるコーポレート・ガバナンスの状況等 (3)[監査の状況]に記載されている。

利害関係

会社及び連結子会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。

以 上

 

 (注)1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。

2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。