当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を生む世界のトップ企業を創る。」を理念に掲げ、各産業、業界の課題をテクノロジーで解決し、透明性が高く、なめらかな顧客体験を提供することを基本的な方針としております。
(2)経営環境及び経営戦略
① 企業構造及び主要サービス
当社グループは、当社及び子会社55社で構成され、RENOSYマーケットプレイス事業、ITANDI事業、その他事業を行っております。
RENOSYマーケットプレイス事業のうち、オンライントランザクションは、ネット不動産マーケットプレイス「RENOSY」において、不動産の購入DX、売却DXサービス、高級賃貸サービスの提供、新築コンパクトマンションを活用したサービスの提供、及び中華圏の投資家向け不動産プラットフォームのウェブサイト「神居秒算」の運営及び関連事業を行っております。また、サブスクリプションとして、国内・海外の不動産オーナー向けにサブスクリプション(定額利用)で様々な管理プランの提供及びタイ駐在員向け賃貸プラットフォーム「dearlife」の運営を行っております。
ITANDI事業においては、賃貸会社向けSaaSシリーズ「ITANDI BB+」、不動産業者間サイト「ITANDI BB」の開発・運営、賃貸管理業務の基幹ソフトウエア「賃貸名人」の開発・運営、不動産営業支援SaaS「PropoCloud」の開発、運営、テクノロジーを駆使した不動産業界向けデータプラットフォーム事業、
BtoCのネット不動産賃貸サービス「OHEYAGO」の提供、等を行っております。
その他事業としては、完全業界特化型M&A仲介サービスの提供等を行っております。
② 競争優位性
当社グループには以下の点で競争優位があると考えております。
競争優位性 |
内容 |
オンライン不動産取引のパイオニア |
・ネット不動産による強みで短期間での売上拡大、低い在庫回転期間及び売上高有利子負債比率を実現 ・不動産取引だけでなくSaaSビジネスも展開 |
リアルとテクノロジーを組み合わせた参入障壁の高い独自のビジネスモデル |
・マネージド・マーケットプレイスによる高品質な商品の提供 ・RENOSYマーケットプレイス上で取引が完結することにより中間業者による中間マージンカットで売手、買手のメリットに ・長期間が必要なリアルオペレーションの構築に不動産取引のオンライン化による顧客体験向上を掛け合わせることにより参入障壁が高い |
優良顧客基盤によるストックビジネス |
(RENOSYマーケットプレイス事業) ・既存会員やリファラルからの収入(ストック収入)が60%超 ・高属性のRENOSY会員が約52万人 ・購入DXのターゲット顧客である年収500万円以上は約1,500万人、世帯純金融資産5,000万円以上は約300万世帯と市場が大きい (ITANDI事業) ・個々のプロダクトを個別に提供するのではなく、不動産管理全般をカバーするSaaSソリューションを顧客に提供しており、これらのデジタル化された収益性の高いサービスにより、高いブランド認知を獲得している。 ・内見予約、入居申込、電子契約サービス2年連続仲介会社利用率No.1(注1) ・仲介会社向け業務効率化サービス、売上に対する満足度、サポート体制満足度、2年連続仲介会社利用率No.1(注1) ・業者間流通サイト、管理会社に導入してほしい業者間サイト、使いやすい業者間サイトNo.1(注2)
(注1) リーシングマネジメントコンサルティング株式会社「2024年賃貸不動産市場顧客動向調査」。 (2024/3/4) n=386 (注2) [調査実施機関]株式会社産業マーケティングコンサルティング [調査期間]2024年2月21日~4月8日 [調査対象]顧客管理システムを導入している都道府県庁所在地・政令指定都市を中心とした宅地建物取引業者名簿に登載されている宅地建物取引業者。 [調査方法]電話ヒアリング調査+FAXアンケート [ヒアリング件数]電話2,900件、アンケート送付426件 [有効回答数]145件(※賃貸仲介でCRMシステムを導入している会社) [分析]有効回答数の多かった4つのシステムで比較。 |
ネットワーク性が高く継続的に拡大するマーケットプレイス |
・質や量が担保されたマーケットプレイス内での購入DXに加えて、売却DXの強化によりネットワーク効果が高まる好循環モデル |
M&A戦略を通じた非連続の成長力 |
・①市場シェア及び商流拡大、②優良顧客(反響)獲得、③商品ラインナップ拡充、④メディア強化、⑤サービスカバレッジ拡大を軸に、国内、海外でM&Aを展開 ・過去に実施したM&A対象企業はスピーディに業績を改善 ・売上総利益に占めるノンオーガニック比率は7年で42.6%まで増加。 |
③ 事業を行う市場の状況
当社グループが事業を行う市場の状況は以下の通りであります。
a) 市場規模
不動産投資市場は約77兆円(注1)の市場があり、当社のRENOSYマーケットプレイス事業が現在注力している首都圏の中古マンションのうち50㎡未満の市場は約2.6兆円(注2)となります。また、不動産テック市場は約2.3兆円(注3)、ITANDI事業が狙う市場規模は3,620億円(注4)となっており、当社グループは成長の可能性を秘めた巨大な市場を事業対象としております。
b) ネット不動産の到来
2022年5月の宅建業法の改正により不動産のオンライン取引が可能となっており、「ネット不動産」が到来しております。当社グループは「ネット不動産」業界の先駆者であり、リーディングカンパニーを目指しております。
c) 若年層における持ち家比率の低下
日本における持ち家比率は低下傾向(注5)であり、若年層における投資不動産の需要は拡大しております。
d) 中古住宅流通比率の向上
中古不動産流通量は増加傾向で、他の国と比較しても成長の余地が大きい状況にあります。既存住宅流通比率は日本は2013年34.4%から2022年42.3%まで増加(注6)、2018年時点で同比率は米国81.0%、英国85.9%、フランス69.8%(注7)となっております。
(注1)出所:ニッセイ基礎研究所不動産投資レポート(2023年7月18日)
(注2)株式会社東京カンテイ「プレスリリース 首都圏の新築・既存マンション市場規模」(2021年1月)および「プレスリリース 首都圏新築・既存マンション市場動向」(2021年5月)発表結果、東日本不動産流通機構発表の登録物件データ、不動産投資市場上位10社のデータを参考に推計。
(注3)出典:矢野経済研究所「不動産テック市場の現状と展望 2024」。
(注4)各プロダクトの合計ARR=①仲介会社向け既存プロダクトARR+②管理会社向け既存プロダクトARR+③管理会社向け新プロダクトARR | ①仲介会社向け既存プロダクトARR=仲介会社数×ARPU | ②管理会社向け既存プロダクトARR=管理会社数×ARPU | ③管理会社向け新プロダクトARR=管理会社数×ARPU | 仲介会社数=不動産業者数×仲介会社率 |管理会社数=不動産業者数×管理会社比率。他事業との兼業のため重複あり。
(注5)令和2年版厚生労働白書(厚生労働省)
(注6)一般社団法人不動産流通経営協会「既存住宅流通量の地域別推計について」(令和6年)
(注7)中古住宅販売率。国土交通省「既存住宅市場の活性化について」(令和2年)
④ 経営戦略
当社グループの成長戦略は以下のとおりです。
a)当社グループが目指す10年後の世界
・不動産をワンクリックでカンタンに取引
・ネット不動産のエコシステムの完成により不動産業界のDX変革を実現。リアル×テックのノウハウを活用して更なる産業DXを強力に推進
b)RENOSYマーケットプレイス事業
・RENOSY会員数の拡大により取引量並びに賃貸管理件数の増加につなげ、更に売却数が増えることでネットワーク効果が高まりマーケットプレイスとしての地位を確立する。
・更に、RENOSYマーケットプレイスの売買が拡大することで、スケール化が進展し、商品ラインアップ拡充や市場シェア拡大を通じたネットワーク効果の発現、認知度の拡大による成約率上昇や広告宣伝費率低減、リピート顧客増加による人件費率の低減等により、マージンを拡大する。
c)ITANDI事業
・導入社数の増加とプロダクトのシェアや利用数の増加により、ITANDI BBの掲載数とPVの増加につなげ、指数関数的な利益成長の可能性をもたらすプラットフォームパワーを生み出す。
・また、賃貸管理システムであるITANDI管理クラウドを起点に、基幹システムのアップセル、基幹システムのオンプレ版からクラウド版への移行、イタンジ既存プロダクトのクロスセル等により、ロングテールへの導入社数拡大とARPU向上を両立する。
d)海外展開
・ストックビジネスによる安定的収益を確保しつつ、蓄積されたノウハウや知見、利益をフロービジネスに投下し成長を加速させ、グローバルでのネットワーク効果拡大を実現する。
e)不動産データ戦略
・当社グループは全国約12万社ある不動産会社のうち、合計約7,400社の顧客に既に業務支援SaaSサービスを提供している。また、コンパクトマンションの約50%のデータ及び年間入居申込の約40%のデータを保有しており、不動産テック分野では競争優位性が高い。このような豊富なデータ量と高度なデジタル化により業界で独自の地位を確立することを目指す。
f)M&A戦略
・新規領域参入や既存事業拡大 (エリア拡大やプロダクト拡充、顧客獲得)、等を目的にM&Aを活用
g)財務戦略
・長期でのフリー・キャッシュ・フローを最大化させることを経営目的とし、中期的には、マーケットプレイス事業及びSaaS事業を軸とした価値向上による売上総利益の最大化を目指す
・営業キャッシュ・フローや有利子負債等から得られたキャッシュを主に事業投資及びM&Aに積極的に投下し、成長の加速化を図る。
・長期的な株価上昇が重要と考え、売上収益成長を最優先し、将来キャッシュ・フローの最大化を目指すため、短期的には配当による株主還元は行わない方針
・中期目標として、継続的な売上収益成長率30%、継続的なSaaS売上収益成長率30~40%、売上総利益率20%以上、コア事業利益率20%以上、キャッシュ・コンバージョン・サイクル30日以内、自己資本比率30~40%程度を設定
h)人事戦略)
戦略 |
主な施策 |
内容 |
パフォーマンス最大化の仕組み構築 |
採用 |
・リファラル採用強化による、マッチ人財の獲得 ・GAリクルーターによる採用アトラクト力の強化 |
育成 |
・抜擢/育成プランの立案・実行 ・管理職向け研修・サポートツールの拡充 |
|
評価報酬 |
・全社横断を前提とした、シンプルで分かりやすい報酬制度の策定 |
|
配置 |
・人財ポートフォリオに基づく能動的配置 ・成長・キャリア支援を目的とした異動の推進 |
|
パフォーマンス最大化の環境構築 |
安心安全 |
・育児支援(休暇・手当・サポート) ・LGBTQ各種制度制定 |
健康 |
・フレックスタイム、リモートワーク導入 ・ストレスチェック年2回実施 |
|
文化コミュニティ |
・ヨココミュニティの強化 |
|
成長キャリア |
・事業成長人財に対する、キャリア/成長/挑戦 支援施策の拡充 |
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社が対処すべき主な課題は、以下のとおりであります。
当社は2024年6月に2026年10月期までの中期経営計画を策定しており、当該計画の実現が当社が優先的に対処すべき課題と認識しております。当該計画の主な内容は以下の通りであります。
①戦略
a) コア事業の強化:不動産DXエコシステム完成
不動産投資領域で売る・買う・貸す・借りるをオンラインで一気通貫で提供し、圧倒的なシェアを獲得
注力ポイント |
具体的な取り組み |
重要KPI |
RENOSYオンライントランザクション |
・主力中古マンション市場でのシェア拡大 ・デジタルマーケティングによる集客強化 ・AI査定活用による不動産売却獲得強化 |
・市場シェア20%以上 ・認知度70%以上 ・直接調達比率50%以上 |
RENOSYサブスクリプション(国内) |
・ノンオーガニック含めた管理戸数拡大 ・スケールメリットを生かした生産性向上 |
・管理戸数5万戸以上 ・事業利益率25%以上 |
ITANDI |
・注力エリアにおける賃貸管理SaaS利用のマーケットシェア拡大 ・プラットフォームパワーの醸成及びクロスセル効果の発現 |
・全国シェア37%(利用管理戸数約720万戸) ・導入プロダクト数1.5万プロダクト |
売買仲介(Housmart他) |
・売買仲介SaaS利用のマーケットシェア拡大 ・Sales増強による高成長率の実現 |
・全国市場シェア率10%前後(売買契約数約12万件) ・事業売上CAGR50%以上 |
b) コア事業の海外展開:グローバル化加速
米国・アジア・欧州3拠点でのクロスボーダー取引拡充の基盤を確立
注力ポイント |
具体的な取り組み |
重要KPI |
欧米市場 |
・米国RW OpCoの利益成長加速 ・進出地域の拡大 |
・事業利益率10% ・1ヶ国⇒3か国 |
アジア市場 |
・顧客獲得強化(累計仲介件数) ・進出地域の拡大
|
・約2万件⇒約2.5万件 ・5つの国と地域⇒8つの国と地域 |
グループシナジー |
・クロスボーダー不動産取引強化 |
・海外売上100億円以上 |
c) 第三の収益の柱創出:テクノロジー戦略強化
新たな収益源の獲得とテックを活用したビジネスのスケール化
注力ポイント |
具体的な取り組み |
重要KPI |
データマネタイズ |
・データマネタイゼーション |
・データ活用ビジネス売上収益20億円以上 |
テクノロジー力向上 |
・AIによる最適な顧客提案 ・個人の業務ノウハウの形式知化と自動化 |
・商談成約率20%向上 ・賃貸管理定型業務90%以上削減 |
テクノロジー投資 |
・テクノロジー人材採用及び育成強化 |
・テクノロジー投資率10%以上 |
②数値目標
中期経営計画の最終事業年度である2026年10月期において、以下の数値目標を目指します。
a)連結
売上収益 |
323,000百万円 |
ネット売上収益 |
55,900百万円 |
売上総利益 |
54,100百万円 |
事業利益 |
10,000百万円 |
コア事業利益率 |
17.9% |
EPS成長 |
5倍(2023年10月期の27.5円から135円) |
b)RENOSYマーケットプレイス
売上収益 |
313,700百万円 |
事業利益 |
16,500百万円 |
c)ITANDI
売上収益 |
8,400百万円 |
事業利益 |
1,460百万円 |
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社の取締役会は、代表取締役社長執行役員CEO樋口龍が議長を務めており、取締役(監査等委員である取締役を除く。)櫻井文夫、同 樋口大、同 後藤正徳、社外取締役 久夛良木健、同、グジバチ・ピョートル・フェリクス、監査等委員である社外取締役 松葉知久、同 桑原利郎、同 佐藤沙織里の取締役9名(うち社外取締役5名)で構成されております。事業内容に精通した社内取締役による迅速な意思決定が図られる一方、当社とは特別の利害関係が無い社外取締役が取締役会の意思決定に参加することで、経営の健全性・透明性が担保されております。当社の取締役会は、社外取締役が取締役総数の2分の1以上を占めているほか、経営の多様性、経済活動のグローバル化を見据え、性別や国籍、年齢などの幅広い構成とすることでより客観的で、公平かつ公正な意思決定をなし得る体制となっております。また、取締役会は、原則として毎月開催し、必要に応じて臨時取締役会も開催しております。さらに、迅速な意思決定を行うため、電子稟議システムを用いた書面決議も多用しております。取締役は、社内コミュニケーションツールを通じて、随時意見交換を行える環境が整えられています。
効率的かつ迅速な意思決定を行うため、取締役、及び執行役員で構成される経営戦略会議を週次又は必要に応じて開催し、月次予算の進捗状況の報告、短期・中期の業務執行指針の審議、各部門の重要事項についての審議等を行い、変化の激しい経営環境に対応する体制をとっております。
また、サステナビリティに関する取り組みにおいては、経営戦略会議及び人材開発コミッティにて、業務執行取締役全員のコミットを主軸として、現場からの課題を吸い上げ、人的資本をはじめとした各戦略との整合がとれるよう施策を立案し実行する体制をとっております。
一方で、人的資本関連に関するリスクについては、組織開発部、労務部を中心に、リスク管理・コンプライアンス委員会に速やかにエスカレーションされる仕組みが構築されています。
(2)戦略
当社グループでは、サステナビリティに関する取り組みにおいて、持続的な成長を担保するためには人的資本が経営に与える影響が大きいとの視座の下、従業員メンバーを人財と捉え、ビジネスモデル/事業戦略と並びカルチャーモデル/人事戦略もOUR AMBITION達成のために重要な事項であると認識し、以下の通り取り組みを強化してまいります。
①パフォーマンスを最大化する仕組みの構築
当社グループでは、メンバーのパフォーマンスを最大化するため、採用・育成・評価報酬・配置のセクションごとに施策を策定し、メンバーが活躍できる土台構築と企業文化の醸成を図ってまいります。
②パフォーマンスを最大化する環境の構築
当社グループでは、メンバーのパフォーマンスを最大化するため、安心安全・健康・文化/コミュニティ・成長/キャリアのセクションごとに施策を策定し、メンバーがより安心して活躍できる環境を構築するため、また各メンバーが等しくその環境を享受できるよう努めてまいります。
(3)リスク管理
リスク管理・コンプライアンス委員会は、代表取締役社長執行役員CEO樋口龍が委員長を務め、常勤の取締役、監査等委員会の委員長、各執行役員、各本部長、その他委員長が必要と認めた者(ガバナンス、法務及び労務を管轄する部長等)で構成され「リスク管理・コンプライアンス規程」に基づき、当社が抱えるリスク及びコンプライアンスの遵守について審議しております。また、全グループ会社のリスク管理を横断的かつ網羅的に行う見地から、リスク管理・コンプライアンス委員会の傘下に、内部統制小委員会・コンプライアンス小委員会・情報セキュリティ小委員会を設置しております。これらの小委員会では、各事業部門長及び各グループ会社部門長が参加し、各事業部門・各グループ会社における課題を共有し、全グループの統一方針を形成し、必要に応じて社内に対するアナウンスを行っております。3小委員会の構成員は統一されており、管理職のリスク管理能力の更なる向上を図るべく、主に部長職以上の管理職が選任されています。小委員会には、各事業部門・各グループ会社の長に対して改善指示を出す強固な権限を与え、内部統制・コンプライアンス・情報セキュリティに係る実効性の高い機能を持たせています。さらに、コンプライアンス規範の展開・浸透・定着を実現すべく、法務部が入社時・月次に法務研修を行うとともに、事業部からのオンデマンドの研修にも対応するなど、会社全体のコンプライアンス意識の向上に努めております。
リスク管理・コンプライアンス委員会は、当社グループ全体のリスク及びコンプライアンスの遵守について審議するべく、期初において、当事業年度におけるコンプライアンス推進計画、リスク管理計画を立案、決定しております。当該計画には、当社グループが果たすべき社会的責任、環境への配慮、各種規制への準拠、情報管理、などの全21の項目に対応するための施策が盛り込まれております。特にリスクと機会については、法務部及びコンプライアンスチームを中心に各事業部門からのヒアリングや顕在化した事象を基に特定・評価をおこなっております。
リスク管理・コンプライアンス委員会は四半期に1回の頻度で開催され、法務部及びガバナンス部が事務局を担い、上記全21項目の進捗について報告するほか、実際に起きたリスクの顕在化事案を題材に当社グループ全体の方針を議論したり、法令改正について各部門で留意すべき事項についてのアナウンスを行っております。
各施策は内部統制小委員会、コンプライアンス小委員会、情報セキュリティ小委員会において具体的な対策に落とし込まれ、各小委員会委員長が実効性を担保しております。各小委員会は、月次で開催されております。2024年10月期の議論事項の一例として、今期、内部統制小委員会では、グループ会社の決裁権限の制定、改訂を指導するとともに、グループ管理体制について積極的な議論をおこないました。コンプライアンス小委員会では、部門長以上をターゲットとしたハラスメント対策、全グループ従業員を対象としたコンプライアンスや働き方に関するアンケートの実施、個人情報、会社情報の取り扱いに関する議論が行われました。また、情報セキュリティ小委員会においては、グループ全体のセキュリティ管理体制の在り方について継続的に議論が行われています。リスク管理・コンプライアンス委員会が期初に定めた各施策が計画通り進捗しているかについては、四半期ごとにモニタリング結果が当委員会において共有され期末では総括を取締役会に対して報告することとしております。
(4)指標及び目標
当社グループでは、サステナビリティに関するリスク及び機会の中でも人的資本が経営に与える影響が特に大きいと考え、「従業員メンバーのパフォーマンスを最大化する仕組みの構築」及び「パフォーマンスを最大化する環境の構築」について、以下の目標を長期的に評価及び管理する対象としております。なお、当該指標及び目標につきましては、当社グループにおける記載が困難であることから、当社グループにおける主要な事業を営む当社のものを記載しております。
①パフォーマンスを最大化する仕組みの構築に関する目標
a.管理職向け研修の受講率向上
2025年10月期目標:受講率 90%
2024年10月期実績:受講率 85%(前期目標の85%達成。コンテンツ数55名・参加人数430名)
b.評価制度の浸透
2025年10月期目標:報酬制度の整理が完了(2025年10月まで)
2024年10月期実績:報酬制度の前提となる等級要件の整理が完了(前期目標達成)
c.戦略的な異動配置のフロー整備とグループ会社間での連携強化
2025年10月期目標:工数削減5%
2024年10月期実績:連携漏れによる遅延0件(前期目標達成)
②パフォーマンスを最大化する環境の構築に関する目標
a.育児休業取得率の維持向上
2024年10月期実績:男性 96.5%・女性 100%(前年度より向上)
2023年10月期実績:男性 80%・女性 100%
b.育休復職率の維持
2024年10月期実績:男女 100%(高水準を維持)
2023年10月期実績:男女 100%
c.資産形成促進制度(従業員持株会及びDB・DC)の浸透
c-1.従業員持株会
2024年実績:加入者数36.3%増(前年度より向上)
c-2.DB・DC
従業員説明会の実施:12回(月1回)
d.安全衛生施策の促進
d-1.健康診断受診率 98%の達成
2024年10月期実績:94%(やや未達のため、啓蒙活動を継続します。)
2023年10月期実績:92%
d-2. 労災発生件数3件以内
2024年10月期実績:7件(未達のため、啓蒙活動を継続します。)
2023年10月期実績:3件
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)不動産取引市場の動向について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループが属する不動産業界は、景気動向、金利水準、地価水準等の変化による不動産取引市場の動向に影響されます。したがって、不動産取引市場の動向が顧客の不動産投資意欲に影響を与えることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
不動産取引市場の冷え込み等により当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。当社グループはこれらのリスク低減を図るため、不動産市場の動向を注視するとともに、当該動向に柔軟に対応できる体制構築に努めております。
(2)競合について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループが属する不動産業界は、競合他社が多く存在しており、また、M&A仲介業は許認可や資格が不要であるため参入障壁が比較的低い事業であると認識しています。今後、他社の参入等により十分な差別化ができなくなり、競争が激化した場合には、価格競争や顧客の離反及び販売件数の減少並びに仕入価格の上昇等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
競争激化により当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。当社グループはこれらのリスク低減を図るため、ITを活用した投資用不動産プラットフォーム「RENOSY(リノシー)」を利用する等、他社と差別化を図っております。また、M&A仲介DX事業においては、当社グループが不動産DXで培ったAI活用などのノウハウをM&A領域に活用することで他社との差別化を図っております。当社グループは、今後も「RENOSY」の機能向上やM&A仲介のDX等により他社との差別化を強化する方針であります。
(3)賃貸物件の空室時のリスクについて
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、販売した投資用不動産の賃貸管理業務まで一気通貫でサービス提供を行っておりますが、購入した顧客と当該賃貸物件の一部について空室時の家賃を当社グループが負担する契約を行っております。当社グループでは、空室率を低下させるための施策を講じているものの、空室が多くなった場合には、当社グループの費用負担が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループが販売している投資用不動産は東京を主とする、国内主要都市圏の駅から近い、単身者用マンションであることから、当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。しかしながら、中長期的に日本の人口動態が変化していくことに伴い、リスクが今後変化していく可能性はありえると考えております。当社グループはこれらのリスク低減を図るため、AI技術を用いた、空室リスクの低い投資用不動産の特定及び販売、並びに短期間での原状回復など様々な施策を講じております。
(4)有利子負債の増加に伴う金利変動リスク及び在庫保有リスクについて
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、投資用不動産の販売を行っておりますが、仕入から販売までの期間が短いため、基本的に当該不動産を長期間に亘り保有することはなく、投資用不動産の仕入のために有利子負債残高が高水準になる可能性は高くありません。しかしながら、例外的に長期間保有する場合には、借入れによる資金調達が増え、有利子負債残高が高まる可能性があります。その場合には、金利負担の増加や棚卸資産の評価損等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、仕入から販売までの期間が想定以上に長期化した場合には、販売価格の値引きにより販売を促進する施策をとる可能性があります。その場合には、利益率の悪化等により、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループは投資用不動産の仕入から販売までのプロセスについて、テクノロジーを導入した結果、在庫保有期間を短くするオペレーションを確立しており、当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合に一定のインパクトがあると認識していることから、投資用不動産については物件の仕入基準を設けた上で、AI技術を用い、在庫品質及び在庫量管理を徹底することで、当該リスクの低減に努めております。
(5)資金調達リスクについて
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループの事業資金及び投資資金の一部は、金融機関からの借入や社債の発行等により調達しています。このため、景気の後退、金融市場の悪化、金利の上昇、当社グループの信用力の低下や格付けの引き下げ、業績及び事業環境の悪化等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達を行えない可能性があります。
また、当該金融機関からの借入等の一部にコベナンツ(財務制限条項)が付されています。コベナンツに抵触する事象が発生した場合、当該債務について期限の利益を喪失し、その結果、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
資金調達環境の変化や当社グループの業績の悪化により、今後の安定的な資金調達に支障が出るリスクは一定程度あるものと認識しております。当社グループは、金融機関との緊密な関係の構築、資金調達方法の拡大等により、現状、安定的な資金調達が実施できておりますが、より一層の調達環境の良化・安定化に努めてまいります。
(6)技術革新等について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、ネット不動産投資サービスブランド「RENOSY」を活用することで、業務の効率化や情報収集力の強化、データ分析による顧客への効果的な広告配信に努め、他社と差別化を図っております。今後は既存システムの改善に加え、それらのBtoB販売を含めた様々な可能性を想定しておりますが、「RENOSY」がサービスを提供しているIT技術分野は技術進歩が速く、当社グループが想定する以上の技術革新により、当社グループの技術やサービスが競争力を失うような事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループは常に最先端のIT技術を当社グループのサービスに導入するべく事業運営を心掛けておりますが、IT技術の技術進歩の方向性やスピードは予測することが困難であることから、当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。しかしながら、当社グループは、このようなリスクを低減するために継続的に最新の技術をもったエンジニアの採用及び継続的な社内研修を行うなどの対応を取っております。
(7)システムトラブルについて
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループの事業は、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、自然災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループではセキュリティ対策やシステムの安定性確保に取り組んでおりますが、何らかの理由によりシステムトラブルが発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。そのため、当社グループのデータをクラウド上で保有するなどの対応を取っております。
(8)法的リスクについて
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループが属する不動産業界は、「宅地建物取引業法」、「建設業法」、「国土利用計画法」、「建築基準法」、「都市計画法」、「建物の区分所有等に関する法律」、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」、「借地借家法」、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」等の法的規制を受けております。また、米国事業については、連邦法をはじめ各州法の遵守が求められます。当社グループではこれらの法的規制を遵守するように努めておりますが、法令違反が発生した場合や新たな法令の制定・法令の改正等が行われた場合、当社グループの事業活動が制約を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
M&A仲介業務については、現在のところ、特に関係省庁の許認可等の制限を受けることはありませんが、M&Aは金融商品取引法、会社法及び各種税法といった各種法令の影響を受けやすい構造となっております。今後、法令等の制定、改廃により、M&A取引の拡大、促進に影響を及ぼすものがあったときは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当連結会計年度末において、当社グループに重大な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来、重要な訴訟が発生し、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
なお、当社グループは事業活動を行うに際し以下の許認可を得ております。また、米国事業については、各州毎に合計23のReal Estate Brokerage Licenseを取得しております。いずれも、現在、許認可が取消となる事由は発生しておりません。しかしながら、今後、何らかの理由によりこれらの許認可の取消等があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループは法務部が中心となって各種法的規制に対応し、またリスク管理・コンプライアンス委員会において、リスク管理及びコンプライアンス計画を推進しております。そのため、当該リスクが顕在化する可能性は低いものと考えておりますが、万が一、法的規制に抵触した場合には極めて大きな問題に発展する可能性のある重要なリスクであると認識しております。当社グループは、このようなリスクを低減するために法務部及びリスク管理・コンプライアンス委員会直下のコンプライアンス小委員会において各社法令等の改正等を適時にキャッチアップするとともに、新規事業の開始時点においても、法務部のコンプライアンスチェックや外部弁護士と連携する体制を整備しており、法令違反等の予防に努めております。また、定期的に各部署及び各グループ会社に関連するコンプライアンス研修を実施し、当社グループのコンプライアンス意識の向上を図っています。
(当社)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
宅地建物取引業免許 |
国土交通省 |
国土交通大臣(2) 第9135号 |
2027年2月22日 |
宅地建物取引業法 第66条、第67条及び第67条の2 |
一般建設業許可 |
東京都 |
東京都知事許可 (般-3)第145636号 |
2026年8月18日 |
建設業法 第29条及び 第29条の2 |
特定建設業許可 |
東京都 |
東京都知事許可 (特-3)第145636号 |
2026年8月18日 |
建設業法 第29条及び 第29条の2 |
マンション管理業登録 |
国土交通省 |
国土交通大臣(2) 第034425号 |
2029年3月8日 |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第83条 |
一級建築士事務所 |
東京都 |
東京都知事 第65523号 |
2028年5月14日 |
建築士法 第9条 |
(イタンジ株式会社)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(2) 第103729号 |
2029年7月26日 |
宅地建物取引業法 第66条、 第67条及び第67条の2 |
(株式会社RENOSY ASSET MANAGEMENT)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
宅地建物取引業免許 |
国土交通省 |
国土交通大臣(1) 第009817号 |
2025年11月5日 |
宅地建物取引業法 第66条、第67条及び第67条の2 |
マンション管理業登録 |
国土交通省 |
国土交通大臣(1) 第034543号 |
2025年12月1日 |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第83条 |
賃貸住宅管理業 |
国土交通省 |
国土交通大臣(1) 第4254号 |
2027年3月14日 |
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第23条 |
(株式会社Modern Standard)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(4) 第091130号 |
2029年11月20日 |
宅地建物取引業法 第66条、 第67条及び第67条の2 |
賃貸住宅管理業 |
国土交通省 |
国土交通大臣(1) 第7525号 |
2027年7月19日 |
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第23条 |
(株式会社RENOSY FINANCE)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
貸金業登録 |
東京都 |
東京都知事(2) 第31767号 |
2026年11月28日 |
貸金業法 第24条の6の4及び 第24条の6の5 |
(株式会社パートナーズ)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
宅地建物取引業免許 |
国土交通省 |
国土交通大臣(1) 第10432号 |
2028年6月15日 |
宅地建物取引業法 第66条、第67条及び第67条の2 |
不動産特定共同事業者 |
東京都 |
東京都知事 第126号 |
- |
不動産特定共同事業法 第11条及び第36条 |
賃貸住宅管理業 |
国土交通省 |
国土交通大臣(2) 第005441号 |
2027年5月24日 |
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第23条 |
住宅宿泊管理業者登録 |
国土交通省 |
国土交通大臣(01) 第F01666号 |
2030年1月23日 |
住宅宿泊事業法 第42条及び第43条 |
(株式会社リコルディ)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(2) 第9396号 |
2028年7月27日 |
宅地建物取引業法 第66条、 第67条及び第67条の2 |
賃貸住宅管理業 |
国土交通省 |
国土交通大臣(1) 第2077号 |
2026年10月19日 |
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第23条 |
(株式会社神居秒算)
許認可の名称 |
所管官庁 |
許認可の番号 |
有効期限 |
取消事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(1) 第108819号 |
2028年1月20日 |
宅地建物取引業法 第66条、 第67条及び第67条の2 |
(9)情報の管理について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、会員やオーナーの個人情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けております。また、株式会社RENOSY Xでは、金融機関を対象としたシステムの受注開発・サービス提供を行っており、「FISC(金融情報システムセンター)」安全対策基準に対応した体制の構築と運用が求められています。何らかの理由でこれらの情報が漏洩してしまった場合、信用失墜、取引停止、損害賠償請求等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループにおいて個人情報保護管理体制を、また、システムの開発を行う子会社では、FISC安全対策基準やISO27001を充足した管理体制を構築、運用しております。当該リスクが顕在化する可能性は低いものの、万が一、情報漏洩が発生した場合には、極めて大きな問題に発展する可能性があると認識しております。当社グループは各社プライバシーマーク、ISMSの認証を取得するとともに、各種情報の取り扱いの重要性については、社内研修等を通じて社員へ啓発活動を継続的に実施するなどの施策を講じております。
(10)知的財産権について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは現在、他社の知的財産権を侵害している事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループの認識していない知的財産権が既に成立していることにより当社グループの事業運営が制約を受ける場合や第三者の知的財産権の侵害が発覚した場合等においては、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、第三者が当社グループの技術などを使用し、市場において当社グループの競争力に悪影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループは第三者の知的財産権を侵害しないような体制を構築しておりますが、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害してしまった場合には、極めて大きな問題に発展する可能性のある重要なリスクであると認識しております。当社グループは、これらのリスク低減を図るために、新規事業の開始時点において、法務部のコンプライアンスチェック(第三者の知的財産権の侵害等の確認を含む)を受けるなどのプロセスを設け、知的財産権等を侵害することがないよう運営しております。
また、第三者が当社グループの技術などを使用する可能性は常にあるものと認識しております。当該リスク低減を図るために、商標登録や自社製品に関する特許を取得することで第三者による知的財産権の侵害を防いでおります。
(11)自然災害について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループが事業展開している地域は、首都圏や関西圏が中心となっておりますが、これらの地域で不測の大規模地震や台風等の自然災害等が発生した場合、当社グループの不動産価値の低下や事業展開に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクは発生する可能性は低いと想定されますが、発生した場合のインパクトは相応にあると認識しております。
そのため当社グループは、常にリモート対応ができるようなシステム環境を整備する等、物理的に当社グループの本社や支店の設備に依存しないようなビジネス体制を構築しております。
(12)人材の確保・育成について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、オンラインのみならず実業でのオペレーションも有していることから、今後の事業拡大のために優秀な人材の確保、育成並びに事業成長に必要となる人員数の確保が重要な課題であると認識しており、積極的に人材を採用しておりますが、必要な人材を確保できない可能性や育成した人材が当社グループの事業に十分に寄与できない可能性があります。その場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが発生する可能性は常に一定程度あり、発生した場合、特に当社グループの成長に対して相応のインパクトがあるものと認識しております。当社グループは、これらのリスク低減を図るために、幅広い採用ルートから積極的に人材を採用していくとともに、研修の実施等により人材の育成に取り組んでいく方針であります。
(13)特定の経営者への依存について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、代表取締役社長執行役員CEO 樋口龍に当社グループの経営の重要な部分を依存しております。何らかの理由により同氏による当社グループ業務の遂行が困難となった場合には、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが発生する可能性は低いものの発生した場合に相応のインパクトがあるものと認識しております。
当社グループは、同氏に過度に依存しないよう、内部管理体制の整備、人材の育成を行う等体制の整備に努めております。
(14)配当政策について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、企業価値を継続的に拡大し、株主に対する利益還元を行うことを重要な経営課題として認識しており、健全な財務体質を維持するとともに将来の事業拡大に備えるための内部留保とのバランスを図りながら、各期の経営成績及び財政状態を勘案して、剰余金の配当による株主に対する利益還元を実施することを基本方針としております。
しかしながら、当社グループは現在成長過程にあり、内部留保の充実を図り、更なる成長に向けた事業の拡充や組織体制、システム環境の整備への投資等の財源として有効活用することが、株主に対する最大の利益還元に繋がると考え、配当を実施しておりません。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループは、将来的には財政状態及び経営成績を勘案しながら配当を実施していく方針ではありますが、現時点では、フリー・キャッシュ・フローを成長のための投資に投じ、企業価値向上を図ることが株主の利益最大化へ繋がると考えていることから、現時点において配当の実施時期等については未定であります。
(15)M&Aについて
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、企業価値を継続的に向上させる上で有効な手段となる場合や、市場において短期間で優位性を確立するといった大きな相乗効果が見込める場合には、今後も必要に応じてM&Aを実施する方針です。
しかしながら、事前の調査・検討内容に不十分な点が存在する場合や、買収後の市場環境や競争環境の著しい変化があった場合には、買収した事業が計画どおりに展開することができず、或いは投下資金の回収ができず、のれんの減損や追加費用が発生する可能性があります。その場合等には、当社グループの業績や成長見通し及び事業展開等に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に当社が採用しているIFRSではのれんは非償却であり、日本基準を採用している場合に比べ減損の影響が大きい傾向にあります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループはM&Aを継続的に実施していることから、当該リスクが顕在化する可能性は少ないながらもあるものと認識しております。当社グループは市場動向や顧客のニーズ、相手先企業の業績、財務状況、技術優位性や市場競争力、当社グループの事業ポートフォリオ等を投資管理規程に基づき、十分に精査し、また、投資委員会を開催することで投資対象の選定から調査方針の決定、投資判断にあたっての調査及び審査を行うことで、当該リスクを低減できるものと認識しております。
(16)海外での事業展開について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、北米、中国、タイ、台湾、マレーシアにおいて事業を展開しており、今後シンガポールをはじめとする東南アジアでの事業展開も視野に入れております。海外での事業展開において、日本とは異なる法制度、商慣習及び労使関係や経済の動向並びに為替相場の変動、その他政治的及び社会的要因といった様々な要因の発生が見込まれます。特に米国においては、日本と比較して訴訟が提起される可能性が高く、また、訴訟コストや損害賠償額が高額となった場合当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当該リスクが発生する可能性は常に一定程度あり、発生した場合、特に当社グループの成長に対して相応のインパクトがあるものと認識しております。当社グループは、これらのリスク低減を図るために、海外進出前の入念な調査、海外進出後のガバナンス体制の構築や、法制度、政治・経済・社会情勢の変化等の適時な把握体制の確立により、当該リスクを低減できるものと認識しております。
(17)新規事業について
① リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容等
当社グループは、既存事業の更なる強化を行っていく一方で、新たな価値創出に向けて新規事業への取組みを行っております。新規事業開始から安定的な収益を獲得するまでには一定期間が必要であり、その期間は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、事業計画との著しい乖離等により事業縮小や撤退を決断した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
② リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策
当社グループは今後も新規事業の開拓を積極的に行っていくため、当該リスクが顕在化する可能性は相応にあるものと認識しております。当社グループでは、「投資委員会」「経営戦略会議」のプロセスを経ること、新規事業の実行可能性評価を事前に実施することによりリスク低減を図っています。また、投資実行後は定期的なモニタリングを実施し、事業縮小や撤退の決断を行うことでリスク低減に取り組んでおります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善するなど、景気は緩やかな回復が見られました。一方で、国際情勢の動向、原材料価格や資源価格の高騰、物価の上昇、為替の大幅な変動等が国内外の経済活動に与える影響が懸念され、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループの属する不動産市場におきましては、首都圏中古マンション成約件数も好調であり、当社グループの主力とする中古コンパクトマンション投資の市場も拡大傾向にあると想定しております。また、現在、国策の「資産所得 倍増プラン」での新NISA等の税制優遇制度強化による個人の投資意欲の高まりを背景に、分散投資の一環として不動産投資にも注目が集まってきており、特に不動産は、株式などと比較して相対的に安定した収益を見込める資産であるとの認識から、特にインフレーションに対するヘッジ手段として注目されています。そのため、個人投資家の不動産への積極的かつ継続的な投資姿勢は今後も継続していくものと考えております。
このような環境の中、当社グループは、2024年6月に中期経営計画を公表し、フロービジネスは手数料の改善、商品ラインアップの拡充により事業拡大を図るとともに、安定収益であるストックビジネスの積み上げによる盤石な収益構造へ転換を図ってまいりました。
(a)財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ7,561百万円増加し、38,702百万円となりました。これは主に棚卸資産が3,766百万円増加し13,950百万円となったこと、現金及び現金同等物が1,873百万円増加し19,325百万円となったこと及び、その他の流動資産が1,349百万円増加し3,016百万円となったことによるものであります。また、非流動資産は前連結会計年度末に比べ8,216百万円増加し、38,427百万円となりました。これは主にのれんが7,026百万円増加し14,799百万円となったこと、投資不動産が614百万円減少し10,689百万円となったこと、使用権資産が597百万円増加し2,459百万円となったこと及び、繰延税金資産が556百万円増加し2,020百万円となったことによるものであります。
この結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ15,778百万円増加し、77,130百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ10,388百万円増加し、34,209百万円となりました。これは主にその他の金融負債が4,597百万円増加し7,148百万円となったこと、社債及び借入金が3,642百万円増加し14,089百万円となったこと及び、リース負債が898百万円増加し5,478百万円となったことによるものであります。また、非流動負債は前連結会計年度末に比べ2,722百万円増加し、19,669百万円となりました。これは主に社債及び借入金が4,786百万円増加し9,283百万円となったこと、リース負債が1,568百万円減少し9,250百万円となったこと及び、その他の金融負債が752百万円減少し174百万円となったことによるものであります。
この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ13,111百万円増加し、53,879百万円となりました。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ2,667百万円増加し、23,251百万円となりました。これは主に利益剰余金が1,841百万円増加し2,831百万円となったことによるものであります。
(b)経営成績
当連結会計年度の業績は、売上収益189,883百万円(前年同期比29.5%増)、売上総利益30,734百万円(前年同期比35.9%増)、事業利益※1 4,056百万円(前年同期比86.6%増)、営業利益3,878百万円(前年同期比75.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,841百万円(前年同期比82.2%増)となりました。
なお、上記以外の主要KPIは、ネット売上収益※2 31,846百万円(前年同期比36.6%増)、ストックビジネス粗利※3 7,808百万円(前年同期比85.2%増)、コア事業利益率※4 12.7%(前年同期は9.4%)、ノンオーガニック比率※5 42.6%(前年同期は41.1%)となります。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
なお、当社グループは経営管理区分の見直しを行ったことに伴い、当連結会計年度より「その他」に含まれていた中華圏の投資家向け不動産プラットフォーム事業を「RENOSYマーケットプレイス」に含めて記載する方法に変更しております。これに伴い、セグメント別の業績における前年同期比は、前年同期を変更後の方法に基づき作成したものを基礎として算定しております。
①RENOSYマーケットプレイス事業※6
認知度拡大施策や「貯蓄から投資」による個人投資家の不動産への積極的かつ継続的な投資姿勢等を背景に、中古マンション投資で5年連続No.1となるなど、好調にシェアを拡大いたしました※7。また、売却DXの推進、商品ラインアップの拡充等の各種手数料改善策により粗利額の最大化を図ってまいりました。加えて、プロパティマネジメント事業について、サブスクリプションにつながる購入DXが好調なことに加え、同事業を営む株式会社Core Asset Managementを2023年12月に、RW OpCo, LLCを2024年3月に、それぞれM&Aを実施したことにより、サブスクリプションのオーナー数、契約数共に増加基調を維持しております。これにより、主なKPIはRENOSY会員数※8 51.9万人(前年同期比約30%増)、購入DX成約件数※9 1,862件(前年同期比約2%増)、売却DX成約件数※10 846件(前年同期比約16%増)、サブスクリプション契約件数※11 32,452戸(前年同期比約82%増)、アセットプランナー数(中古コンパクトマンション)※12 126人(前年同期比約18%増)、ARPA(中古コンパクトマンション) ※13 1,130百万円(前年同期比約69百万円増)となり、好調に進捗しております。その結果、RENOSYマーケットプレイス事業の業績は、売上収益184,784百万円(前年同期比29.1%増)、売上総利益26,747百万円(前年同期比34.8%増)、セグメント利益8,885百万円(前年同期比34.5%増)となっております。
②ITANDI事業
バーティカルSaaSのネットワーク効果や株式会社Housmartを2024年1月、株式会社マーキュリーを同年8月にそれぞれM&Aしたことにより、ARR※14 4,513百万円(前年同期比約72%増)、チャーンレート※15 0.37%(前年同期は0.49%)、累計顧客数4,503社(前年同期比約55%増)、ユニットエコノミクス※16 40.8倍(前年同期は26.2倍)、導入プロダクト数13,144プロダクト(前年同期比約55%増)、ITANDI BB PV数1,101万PV(前年同期比約22%増)の達成など、順調に業績を拡大しました。その結果、ITANDI事業の業績は、売上収益4,513百万円(前年同期比40.9%増)、売上総利益3,645百万円(前年同期比35.3%増)、セグメント利益1,316百万円(前年同期比87.6%増)となっております。
※1 事業利益=売上収益-売上原価-販売費及び一般管理費
※2 ネット売上収益は、「RENOSYマーケットプレイス事業の売上総利益+(連結売上収益-RENOSYマーケットプレイス事業の売上収益)」で算出
※3 ストックビジネス粗利は、RENOSYマーケットプレイス事業のサブスクリプションビジネス及びITANDI事業の売上総利益の合計
※4 コア事業利益率は、「連結事業利益÷ネット売上収益」で算出
※5 ノンオーガニック比率は、中古コンパクトマンション及びサブスクリプション以外の事業の売上総利益の合計をノンオーガニックの売上総利益と定義し、全体の売上総利益に占める割合を算出
※6 RENOSYマーケットプレイス事業は、主にネット不動産マーケットプレイス「RENOSY」における不動産の購入DX・売却DX、不動産オーナー向けにサブスクリプション(定額利用)での管理プラン提供、新築コンパクトマンションを活用したサービス提供
※7 ネット不動産投資のRENOSY、 マンション投資の売上高・マッチング件数で全国No.1を獲得https://ssl4.eir-parts.net/doc/3491/tdnet/2437813/00.pdf
※8 RENOSY会員数は、2024年10月末時点での会員ストック数(会員登録した累計の人数)
※9 購入DX成約件数は、RENOSYマーケットプレイス内の投資、実需の購入成約件数の当第4四半期3ヶ月累計
※10 売却DX成約件数は、RENOSYマーケットプレイス内の投資、実需の売却成約件数の当第4四半期3ヶ月累計
※11 サブスクリプション契約件数は、2024年10月末時点での管理戸数
※12 アセットプランナー数(中古コンパクトマンション)は、2024年10月末の人数
※13 ARPA(Average Revenue per Agent)(中古コンパクトマンション)は、2024年10月期の中古コンパクトマンションの通期売上収益を、当該年度の各月末時点のアセットプランナー数の平均値で除して算出
※14 Annual Recurring Revenue。各四半期末の月末MRR(Monthly Recurring Revenueの略。月額利用料金、従量課金、ライフラインサービスの収益を含む)に12を乗じて算出。なお、2024年10月期より、従来までの主要プロダクトにイタンジの全てのSaaSサービス、Housmart社の「PropoCloud」、RENOSY XやマーキュリーのSaaSサービスを追加し算出
※15 2024年10月末時点での直近12ヶ月の平均月次チャーンレート
※16 1顧客当たり経済性。LTVをCACで除して算定した倍率、2024年10月末時点での直近12ヶ月の平均値
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,873百万円増加し19,325百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、3,635百万円(前年同期は6,798百万円の獲得)となりました。これは主に、減価償却費及び償却費5,600百万円、棚卸資産の増加額3,759百万円、税引前利益3,143百万円及び、法人所得税の支払額1,310百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、4,793百万円(前年同期は2,052百万円の使用)となりました。これは主に、企業結合による支出2,902百万円及び、無形資産の取得による支出1,585百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、2,965百万円(前年同期は808百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入10,113百万円及び、長期借入金の返済による支出5,065百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
(b)契約実績
当社グループは、契約実績と販売実績が概ね同じであるため、記載を省略しております。
(c)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年11月1日 至 2024年10月31日) |
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金額(百万円) |
前年同期比(%) |
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RENOSYマーケットプレイス事業 |
184,784 |
129.1 |
ITANDI事業 |
4,489 |
140.8 |
その他事業 |
609 |
209.3 |
合計 |
189,883 |
129.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
3.前年同期比は、前連結会計年度の数値をセグメント変更後の区分に組み替えて比較しております。
4.当連結会計年度において、販売実績に著しい増加がありました。この増加の内容は、「①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容(b)経営成績」に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態
当連結会計年度の財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 (a)財政状態」に記載のとおりであります。
(b)経営成績
(売上収益及び売上総利益)
売上収益は、RENOSYの認知度向上やデジタルマーケティングを活用した効率的な集客により RENOSY会員数が順調に伸びたことで、RENOSYマーケットプレイスの販売件数が増加した結果、189,883百万円(前年同期比29.5%増)となりました。また、売上総利益率が高いイタンジの収益が伸長したことに加えて、従前より実施しているRENOSYマーケットプレイスの各種手数料改善施策の奏功及びサブスクリプションにおいてのスケールメリット効果、DX活用による業務効率化等により、売上総利益は30,734百万円(前年同期比35.9%増)となりました。
(販売費及び一般管理費及び営業利益)
販売費及び一般管理費は認知度向上(利用意向向上)を目的とした広告宣伝費の積み増し及び主に人件費の増加により、26,678百万円(前年同期比30.5%増)となりました。
この結果、営業利益は3,878百万円(前年同期比75.4%増)となりました。
(金融収益、金融費用及び税引前利益)
金融収益が11百万円(前年同期比2.3%増)であったのに対して、金融費用が主に資金調達関係の支払利息や手数料により746百万円(前年同期比17.1%増)となりました。
この結果、税引前利益は3,143百万円(前年同期比98.3%増)となりました。
(法人所得税費用及び当期利益)
法人所得税費用は、主に税引前利益の増加により、1,288百万円(前年同期比127.4%増)となりました。
この結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,841百万円(前年同期比82.2%増)となりました。
(c)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は投資用不動産の取得、販売費及び一般管理費の広告宣伝費及び人件費、ソフトウエアの開発投資及びM&A等であります。これらの資金需要に対しては、営業活動から獲得する自己資金及び金融機関からの借入や社債による調達を基本としており、経済・金融環境の変化に備えた十分な手許流動性の確保により、安定した財務基盤の維持に努めております。また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を有しております。
(1)株式会社Core Asset Management株式の取得 (注)
当社は、2023年11月8日開催の取締役会において、不動産の売買仲介及び販売事業、不動産賃貸及び管理事業を行う株式会社Core Asset Managementの発行済株式の全株式を取得し子会社化することを決議し、株式譲渡契約を締結しました。
(2)株式会社Housmart株式の取得 (注)
当社の子会社であるイタンジ株式会社は、2023年12月11日開催の取締役会において、不動産売買仲介会社向けの不動産営業支援SaaS等の開発、運営事業を行う株式会社Housmartの発行済株式の全株式を取得し子会社化(当社の孫会社化)することを決議し、株式譲渡契約を締結しました。
(3)RW OpCo, LLC持分の取得 (注)
当社の子会社であるGA technologies USA Inc.(2023年12月設立)は、2024年1月19日開催の取締役会において、米国発でプロパティマネジメント事業及び投資用不動産マーケットプレイス事業を営んでいるRW OpCo, LLC(以下「RW OpCo社」)の持分を100%取得し子会社化(以下「本件買収」)することを決議し、本件買収に係る契約をRW OpCo社の上位担保債権者であるSt. Cloud Capital Partners III SBIC, L.P.との間で締結しました。
(4)オリックス銀行株式会社との株式引受契約
当社は2024年6月28日付の取締役会において、オリックス銀行株式会社との間で株式引受契約を締結することを決議しました。これによる第三者割当の払込は2024年7月17日に完了しております。
(5)株式会社マーキュリー株式の取得 (注)
当社は、2024年7月16日開催の取締役会において、株式会社マーキュリーに対する公開買付け及び同社との間で資本業務提携契約を締結することを決議しました。
(注)これらの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.企業結合」に記載のとおりであります。
当社グループは「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を生む世界のトップ企業を創る。」という経営理念のもと、AIを用いた価格推定や賃料推定、賃貸物件の空室期間予測、物件写真や間取り画像解析技術、地域や物件に関するスコアリング、生成AIによる生産性向上等の研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は