代表取締役社長近藤 雅彦は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用している。
なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものである。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある。
財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である2021年10月31日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した。
本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定している。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行った。
財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、当社及び連結子会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定した。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、当社及び連結子会社2社を対象として行った全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定した。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、各事業拠点の前連結会計年度の売上高の金額が高い事業拠点から合算していき、前連結会計年度の連結売上高の概ね2/3に達している2事業拠点を「重要な事業拠点」とした。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく係る勘定科目として売上高、営業未収入金及び売上原価に至る業務プロセスを評価の対象とした。
さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加している。
下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当すると判断した。したがって、当事業年度末日時点における当社グループの財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した。
記
当社は、2024年9月13日開催の取締役会において、常勤監査役より会社法第382条に基づく報告として、当社取締役の経費使用に関し疑義が生じている旨の報告を受け、同日付で、外部専門家及び独立社外役員で構成される特別調査委員会を設置し、視察、研修における経費の不正使用の疑いに係る事実関係の調査に加えて、その他の不正行為の有無に関する調査をいたしました。さらに、別途、外部専門家による追加調査を実施し、その結果、特別調査委員会による調査結果以外の新たな事実等はないことを確認しております。
特別調査委員会及び外部専門家による調査の結果、2019年8月から2024年8月までの期間において、当該取締役の家族の旅費を当社が負担した出張、視察旅行、慰安旅行等について計18件、負担総額16百万円を確認いたしました。また、うち6件は、他の取締役の家族の旅費について当社負担総額3百万円が確認されています。
さらに、当社内に保管している金券類、及び当社内外に存在するワインセラーの在庫棚卸しを実施した結果、当該取締役が所属する秘書室において、総額13百万円(計4,900枚)の旅行券・QUOカード・商品券等の簿外資産、及び総額32百万円(計784本)のワインの簿外資産の存在が判明いたしました。
なお、これらの判明した事実が過去の各期の業績に与える影響は軽微であり、過年度有価証券報告書及び四半期報告書並びに2024年10月期の各四半期報告書の訂正はありません。
本件の直接的な原因は、当社の経費稟議手続について決裁基準を厳格に設けているものの、秘書室における運用において、記載内容や証憑類が不十分であっても許容され、事前・事後の適正なチェック・運用がなされず、決裁基準や手続が無効化されている状況であったことにより、当該取締役の経費使用に広範な裁量を与えていたことです。また、このような事態となっていた根底には、過去から支配的株主の意向を過度に尊重する風土があるものと考えられ、その風土を背景に秘書室や当該取締役が特別視されていた結果として生じた以下の全社的な内部統制の不備が挙げられます。
・当該取締役が秘書室を直接担当する状況が長期間存在するに至った統制環境の不備
・他の常勤取締役や内部統制・コンプライアンスを管轄する委員会では、当該取締役の業務執行に関する監視義務の遂行が不十分である結果に至った統制環境の不備
・特別視している秘書室や当該取締役に対しては牽制・監督の機能を発揮し得ない、他の常勤取締役における上場企業取締役としてのコンプライアンス意識の不足に至った統制環境の不備
・当該取締役と秘書室が特別視されている状況において、それらに関するリスクの存在を容易に識別できたにもかかわらず、不正の動機、原因、背景を踏まえた不正リスク評価とその防止策が十分でない結果に至ったリスクの評価と対応の不備
・上記のリスク評価と対応の不備を原因として、リスクに応じた内部監査が出来ない結果に至ったモニタリングの不備
・内部通報制度が有効に機能しない結果に至った情報伝達の不備
これらの支配的株主の意向を過度に尊重する風土が根底にあると考えられる全社的な内部統制の不備は、本件と同様に特定の部署や担当者が特別視される状況や他の虚偽記載のリスクが発生する場合などにおいて、当社グループの財務報告に潜在的に重要な影響を及ぼす可能性が高いものと考えられるため、本件にかかる全社的な内部統制について、財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。
上記の財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備が、当事業年度の末日までに是正されなかった理由は、特別調査委員会からの調査報告書の受領が2024年11月21日、外部専門家からの調査報告書の受領が2025年1月10日と、いずれも当該事業年度の末日以降のため、再発防止策を整備・運用する期間を十分確保できなかったためです。
なお、上記の開示すべき重要な不備に起因する必要な修正は、全て財務諸表及び連結財務諸表に反映しております。
当社は、当社グループにおける財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、特別調査委員会の報告を踏まえ、開示すべき重要な不備を是正し、適正な内部統制を整備し運用するために、以下の取り組みを行ってまいります。
① 支配的株主との適正な距離の確保
・支配的株主の影響力低減への取組みと禁止事項の設定
・支配的株主との対話ルールの設定
② ガバナンス機能の一層の向上(各委員会の活性化、透明性の確保等)
・指名委員会・報酬委員会の活性化
・コンプライアンス委員会・通報窓口等の活性化
・独立性ある調査体制の確保
・コンプライアンスに関する意識調査の実施
・秘書室の再編と常勤取締役による部長職兼務の禁止
・業務の属人化防止
③ 取締役会の機能の強化
・社外取締役が過半を占める取締役会の構成
・社外役員の独立性の確保
・取締役会議長の社外取締役からの選任
・取締役会の実効性評価
・社外役員に対する議案等の事前説明
④ 東証プライム上場企業の取締役としてのコンプライアンス意識の向上
・適切な常勤取締役候補者の選任
・社外役員連絡会の定期開催
・常勤取締役と社外取締役・監査役会との緊密な連携
・常勤取締役に対する継続的な研修・教育の実施
・常勤役員による後継者育成
⑤ 監査機能の増強
・(仮称)監査役室の新設
・内部監査室の強化とレポートラインの複線化
⑥ 不適切な内部統制の運用改善
・稟議起案者における適切な申請処理の徹底
・より実効的な稟議基準、承認権限等への見直し
・承認権者・確認者における確認・モニタリングの強化
・稟議承認後の対応
⑦ 会社法、会計税務上の処理の正常化と再発防止のためのルール化・研修・啓蒙
・再発防止のルール化
・この度の事案の振り返り
・コーポレートガバナンス、コンプライアンス強化月間の制定