文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
当社は、創業以来、デジタルマーケティング領域におけるデータ分析及び総合的なコンサルティングサービスの提供と、ビッグデータを活用したSaaS型のソリューション開発及び販売を行ってまいりました。これらの領域で品質の高いサービスを提供し続けるため、分析、コンサルティング、ソリューションに求められる信念を集約し、「確信をもつ、核心をつく、革新をおこす」という経営理念を掲げ、2019年1月には社名を変更しております。経営理念である3つの「カクシン」の英単語の頭文字を取ったものが現在の社名の由来となっております。

当社は、あらゆるデータを様々な分析手法で活用し、革新的ソリューションを提供することにより、「マーケティングソリューションで日本を代表する企業へ」というビジョンのもと、マーケティングのDX支援サービスの提供に取り組んでいきます。
デジタルマーケティング活動において使用するデータの「量」や「鮮度」は分析品質に大きく影響し、その収集や蓄積、検索には高い技術力が必要となります。当社では創業時からデータ取得のためのクローリング、自然言語処理技術、データベース取扱技術の研究開発に関して、強みを持っております。引き続き、「Keywordmap」では競合他社が扱うことが困難なデータを蓄積していくと同時に、ソリューション事業に関してはクライアントに支持される新機能開発やカスタマーサクセスチームの体制強化による契約件数の拡大、豊富なオプションプランによるアップセルを通じた契約単価の引き上げを推進してまいります。
アナリティクス事業においては、優秀なコンサルタントの採用と育成を進め、マーケティング全体戦略をふまえた成果創出までの総合コンサルティングサービスの提供を行うことで、新しい顧客基盤の拡大を図ってまいります。あわせて、社外のマーケティングのプロ人材を活用してクライアントのマーケティング活動を支援するエキスパートソーシングサービスへの取り組みも強化してまいります。
また、デジタルマーケティング市場の成長、効率化を重視した働き方改革、既存プラットフォームのアルゴリズム変更等に対応し、両事業が連携して、デジタルマーケティング領域の新規サービスの立ち上げを行ってまいります。
当社は、2023年11月からM&A仲介事業を新たに開始し、事業成長を支援する体制を整備しております。本事業では、当社が培ってきたマーケティングの知見や広範なネットワークを活用し、クライアント企業の成長や課題解決を支援するとともに、適切なM&A機会を創出する役割を担います。本事業を通じて、クライアントの多様なニーズに応えるだけでなく、市場動向の把握や業界知見の蓄積にも注力しております。
また、当社自身もM&Aを経営戦略の重要な柱と位置づけ、事業基盤の強化や新規事業分野への進出を積極的に推進しています。M&A仲介事業を通じて得られた情報や経験を自社の戦略に反映し、迅速かつ柔軟な意思決定を可能にすることで、競争優位性を高め、持続的な成長を行っていきます。
(2) 経営環境
当社が展開するサービスを取り巻く環境は、インターネット、スマートフォン、SNSの普及によりデジタルチャネルでの購買が一般化してきたこと、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけにオフラインでのマーケティング活動が制限されたこと等により、企業のマーケティング活動のデジタルシフトが続いており、当社が事業を展開するDXコンサルティングや「Keywordmap」等のデジタルマーケティングを支援するサービスへの需要は引続き拡大傾向にあります。
株式会社電通「2023年日本の広告費」によると、日本のインターネット広告費は、社会のデジタル化加速が追い風となり、2019年に2兆円を超え、以降も堅調に拡大しており、2023年に3兆3,330億円となりました。マーケティング活動のデジタル化の流れは今後も継続すると見込まれます。
加えて、内閣府「令和6年版高齢社会白書」によると、2020年に7,509万人いた15歳~64歳の生産年齢人口は、2070年には4,535万人まで減少すると予測されており、今後も働き方改革や生産性向上を実現するためのIT投資需要は継続するものとみられ、国内DX市場規模のさらなる拡大が見込まれます。
当社は、中長期的には、株主価値を向上させるため、株主資本利益率を経営上の目標指標としていく方針ですが、現時点では、売上高及び営業利益を増加させ、事業規模を拡大させることを優先しております。そのため、経営上の判断指標として、売上高及び営業利益に加え、ソリューション事業においては、新規獲得MRR、解約MRRを、アナリティクス事業においては、新規獲得契約金額、総継続売上率(対象四半期で契約更新する案件のうち契約更新した案件の合計契約金額にアップセル金額を加えたものを、対象四半期で契約更新する案件の合計契約金額で割ったもの)を月次ベースで、取締役会等で共有し、施策を検討しております。
優先的に対処すべき財務上の課題は、現在ありません。優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。
当社の属するデジタルトランスフォーメーション業界の最大の特徴は、急速な技術進歩と環境変化にあります。こうした変化の激しい環境において、当社では、技術進歩や環境変化で陳腐化しない、必要とされ続ける課題解決力と新しい事業の創出に挑戦し続けることができる人材が不可欠となっています。また、当社のコンサルティングサービスは知識集約ビジネスであり、コンサルタントのサービスレベルが成長の鍵となります。そのため、業界やサービス領域に特化せず、お客様のニーズに応えた実現性のあるサービスの提供が重要となっております。
そのため、当社は社内研修の強化、福利厚生の充実を図っていくとともに、志望者を惹きつけるような事業を展開していくことで、優秀な人材の採用強化に取り組んでまいります。
日々一刻と変化するデジタルトランスフォーメーション業界において、常に市場から支持される製品・サービスを開発するためには、適時的確に市場のニーズを把握し、迅速に機能開発を行う必要があります。そのためには、各開発メンバーとプロダクトオーナー、事業本部長の連携促進を適切に図り、開発スピードを維持・向上するような開発体制の強化が必要であると認識しております。また、開発部門と顧客やユーザーと接している営業部門がコミュニケーションを密に取ることで迅速に市場のニーズを吸い上げ、市場のニーズを機能開発・サービス開発に反映させてまいります。
当社は、「マーケティングソリューションで、日本を代表する企業へ」のビジョンのもと、継続的な新規事業の開拓と育成が必要と考えております。そのためには社内リソースの活用だけではなく、外部リソースを活用することも重要と考えており、事業提携やM&A等のあらゆる可能性を検討してまいります。
当社は、これまで大規模な広告宣伝投資を行わず、当社が持つマーケティングノウハウ及び提供サービスの優位性によりクライアントの獲得を行ってまいりました。その結果、幅広い業種の企業に当社のサービスをご導入いただき、継続的な取引が実現できています。
しかしながら、事業のさらなる拡大を図るにあたり、当社ブランド及びサービスのより一層の認知の獲得が必要と考えており、広告宣伝及びプロモーション活動による認知度の向上を図ってまいります。
第三者の著作権を含めた知的財産権に関して、当社はこれまで、調査可能な範囲で対応を行っております。
当社では、知的財産権管理に関するガイドラインを作成し、引き続き、チェック体制の強化、知的財産権管理体制の整備に努めてまいります。なお、当社では、過去において、他社の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはありません。
当社は、インターネット上のビッグデータを収集し、分析を行い、顧客に提供しています。そのため、当該データに関する情報セキュリティ体制の強化が必要不可欠となっています。収集したデータの社内での機密性確保並びに漏洩防止の強化を行い、セキュリティ管理体制の構築、整備、運用に注力してまいります。
当社の持続的な成長と企業価値の向上のためには、コンプライアンス及び内部管理体制の強化が必要不可欠な課題であると認識しております。そのため、代表取締役社長を最高責任者とする「コンプライアンス委員会」を毎月開催しております。
具体的には、関連する法律や規制を遵守するための仕組みと企業文化の構築や維持に注力しており、法令違反や不正行為がもたらすリスクを特定、評価し、その軽減を図るリスク管理体制を整備しております。併せて、全社員を対象とするコンプライアンス教育を定期的に実施し、法令遵守及びリスク管理に対する意識向上を図っております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
社会環境の変化に伴い当社を取り巻く環境も変化しており、持続的な成長を実現するために必要となる課題も変化しております。サステナビリティに関連した課題については、取締役会の中で適宜、その内容及び課題に対する取り組みについて議論し、対応策の検討を行っております。
当社の経営方針・経営戦略等に与える可能性があるサスティナビリティ関連のリスク及び機会に対処する取り組みのうち、重要なものはありません。
当社は、人的資本経営の重要性を認識しております。人材の育成及び定着、成長戦略の推進に向けた多様な人材の確保が中長期的な企業価値の向上に必要であると考えており、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する取り組みを推進してまいります。
具体的には、人材育成に関しては、定期的な役職者向けの階層別研修を通してモチベーションの向上や能力開発に取り組んでまいります。また、社内環境整備に関しては、テレワーク勤務、フレックスタイム制度などにより柔軟な働き方を可能とするとともに、各種福利厚生制度の拡充など、多様な人材が健康で、モチベーション高く、やりがいをもって働きやすい環境の整備に取り組んでまいります。
取締役会のほか、リスク管理委員会などの各種会議体において、具体的な執行内容の決定と進捗管理が行われ、必要に応じてリスク管理体制の見直しを行っております。各部門においては、決定された事項、具体的な施策及び効率的な業務の執行と進捗の報告が行われておりリスクに応じた適切な対応を行っております。
当社では上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、管理職に占める女性労働者の割合を指標として用いておりますが、現状サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、当該指標に関する目標は定めておりません。当社の事業環境の変化や年次で行っているリスク項目の見直しにおいて必要と認められた場合には、適時に必要な指標及び目標等を定めるものとしております。
なお、女性管理職比率、男女間賃金格差については、
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社はこれらのリスクの発生可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針です。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
① 経営環境の変化について
当社は、企業のマーケティング活動をより高品質かつ効率的に進めるための課題解決ソリューションを提供しております。しかし、経済情勢や景気動向の変化、顧客企業の業績悪化等により、コスト削減が推し進められる場合は、当社の売上が減少し、業績に影響を与える可能性があります。
② 競合リスクについて
デジタルマーケティング市場においては、新興企業やプロダクトも多く参入してきております。新たな集客プラットフォームの出現や、当社の開発の遅れ、既存マーケティング手法の劣化、弱体化が見られる場合は、当社の経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、最先端のマーケティング手法を提供できるように、様々な情報ソースから最新の情報を取得し、サービスに組み込むことで、こうした脅威の軽減を図っております。
③ 技術革新によるリスク
当社は、ビッグデータ活用技術及びAI技術に基づく事業を展開しておりますが、当該分野は新技術の開発が相次いでおり、変化の激しい業界となっております。当社は、顧客ニーズに応じた競争力のあるサービスを提供できるよう、人材の採用・育成や技術、ノウハウ等の取得に注力しておりますが、当社サービスに代わる競合他社の代替サービスが登場し、当社の競争力に影響を与えた場合は、当社の事業に影響を与える可能性があります。
また、当社が事業を展開するデジタルマーケティング領域は、米国のOpenAI社が提供する「ChatGPT」(文章生成モデル)の台頭に代表されるような技術的な進化など劇的な変化が起きています。当社では、こうした市場環境の変化を捉え、常に最適解を模索しながら経営しておりますが、予期しない技術の進歩、新たなプラットフォームの出現等により、当社のサービスの優位性を保つことが困難になった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ プラットフォームへの対応についてのリスク
当社の事業において、「Yahoo!JAPAN」や「Google」等の主要なプラットフォームが定期的に行う、検索エンジンのアルゴリズムの判定要素の更新については、その判定要素が対外的に公開されていないため、その更新への対応を適時適切に行なう必要があります。しかし、その更新への対応が適切でなかった場合、あるいは更新への対応が遅れた場合等には、顧客の満足するサービスを提供することができず、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのメディアが大型の更新を行う際は、事前に告知されることが多いため、当社はその情報をタイムリーに入手し、適切にサービスに反映することで、こうした脅威の軽減を図っています。
⑤ ビッグデータの利用規制の厳格化のリスク
今般、ソーシャルメディアの普及により、データが日々大量に生成されるようになり、ビッグデータに関するビジネスが推進されるようになってまいりました。一方、データの不正利用やプライバシーを侵害する事例も散見されるようになってきております。このため、収集する情報に個人が特定できる情報が含まれていて、無意識のうちにそれらの情報が分析対象となっていた場合に何らかの規制対象となることや、今後の新たな法律の制定や既存の法律の変更により、自主規制が求められるようになる可能性があります。このように当社のサービスを提供するうえでの情報収集やサービスの提供の仕方自体に何らかの制約を受けた場合等には、当社の業績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 当社ビジネスモデル(SaaS型)についてのリスク
当社は顧客にとっての使いやすさを追求した、ビッグデータを処理し、活用するためのプラットフォームの提供を行っております。このため当該ツールは、顧客業種に依存しない汎用性の高いサービスとなっていることに加え、SaaS形態での提供となっていることから顧客側において大規模なシステム環境を構築する必要もなく、容易に導入できる仕組みとなっております。
本提供マーケティング分析ツールは、継続して活用することでマーケティング改善の効果確認ができ、多くの顧客が継続的なクライアントとなっているものと認識しておりますが、SaaSによる提供となっていることから、解約自体は容易に可能であります。
したがって、①当社の提供するサービスが継続的に顧客ニーズに応えられない場合や、②技術革新により競合他社がより良いサービス提供を行う場合等においては、顧客離れが生じ当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、クライアントにサービスの改善要望をヒヤリングし、プロダクトを改善することで、こうした脅威の軽減を図っています。
⑦ 顧客需要の変化について
近年、ソーシャルメディアをマーケティングや商品開発に活かすニーズが高まっております。その背景のもと当社は、ソーシャルメディアを活用した分析ツールやソフトウエア、レポート等を顧客に提供する事業に力を入れており、ビッグデータ解析の新技術の開発などにより、顧客側のニーズに応え続けていく方針ですが、顧客側のソーシャルメディアの活用ニーズの変化に対して適時適切に対応できない場合等には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ システムリスク
当社の事業は、提供サービスの基盤をインターネット通信網に依存しております。そのため当社では、コンピュータウィルスへの感染、ネットワークへの不正侵入、サイバー攻撃等の妨害行為によるシステムダウン、大地震や火災等の自然災害発生によるシステム障害等、顧客へのサービス提供が妨げられるようなシステムトラブルを回避すべく、外部業者によるシステムサーバーの管理・監視体制の構築や、バックアップ、システムの二重化等により未然防止策を実施しております。しかしながら、何らかの障害により大規模なシステムトラブルが顕在化し、復旧遅延が生じた場合は、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 情報取得の制限リスクについて
当社は、SNS等により日々大量に生成されるインターネット上のビッグデータを収集しております。しかしながら、法的規制の強化や、SNS等の運営者側の方針転換により、情報の取得に制限が加わったり、禁止されたりする可能性があります。このような事象が生じた場合、当社は他の方法により同様のデータの入手に努める方針ですが、現在入手できているデータを取得できなくなることでサービスの品質が低下したり、情報の収集に対して追加コストが発生したりする場合には、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 知的財産権の侵害リスクについて
第三者の著作権を含めた知的財産権に関しては、当社はこれまで、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社のビジネス領域において、第三者が保有する知的財産権を網羅的に把握することは困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性があります。当社では、過去において、他社の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはなく、引き続き、当社ガイドラインに基づいて、チェック体制を強化してまいりますが、知的財産権を侵害した場合には、当社に対する損害賠償や使用差止め等が行われることにより、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 法的規制等について
現時点においては、当社の事業を直接制限する法的規制はないものと判断しております。しかし、今後、当社の事業を直接的、又は、間接的に制限する法的規制がなされた場合や、従来の法的規制の運用に変更がなされた場合においては、当社の事業は法的な制約を受け、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 新規事業推進に係るリスク
当社では今後、デジタルマーケティング領域の新規サービスを継続的に展開していく方針です。
しかしながら、新規事業は現状構想段階であり、結果的に実現しない又は実現したとしても十分な収益が獲得できず撤退する可能性があります。当社といたしましては事前に十分な検証を行ったうえで開発等を開始する方針ではありますが、結果的に新規事業に失敗した場合、コストのみが計上されることから当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)会社組織に関するリスク
① 人材の確保について
当社の属するインターネット業界の最大の特徴は、急速な技術進歩と環境変化にあります。こうした変化の激しい環境において、当社では、技術進歩や環境変化で陳腐化しない、必要とされ続ける課題解決力と新しい事業の創出に挑戦し続けることができる人材が不可欠となっています。また、当社が事業を拡大するうえでは、ビッグデータとテクノロジーを駆使する高い技術力が極めて重要と認識しております。そのため、優秀な人材の確保と既存の人材のスキルアップを図れない場合は、当社の経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
② 特定の人物への依存に係るリスク
当社の代表取締役社長である石松友典は、当社の創業者であり、経営方針や事業戦略の決定とその実行において重要な役割を果たしております。
このため当社では、事業拡大に伴い積極的な権限委譲を実施し、各人に過度に依存しない経営体質の構築を進めておりますが、何らかの理由により同氏に不測の事態が生じた場合、又は同氏が退任するような事態が生じた場合には、当社の業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。
③ 情報セキュリティ体制について
当社は、インターネット上のビッグデータを収集し、分析を行い、顧客に提供しております。そのため、当該データに関する情報セキュリティ体制の強化が必要不可欠となっています。また当社の提供する解析結果については、顧客の経営戦略上極めて機密性の高い情報が含まれているものと認識しております。収集したデータの社内での機密性確保並びに漏洩防止の強化を行い、セキュリティ管理体制の構築、整備、運用に注力してまいりますが、万が一これらの機密情報が漏洩した場合には、当社への社会的信用の失墜により、当社事業及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
④ コーポレート・ガバナンス体制、内部管理体制について
当社が継続的に成長するためには、コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の更なる強化が必要であると認識しております。コーポレート・ガバナンスについては、経営の健全性及び効率性を確保するため、監査役監査及び内部監査、内部統制システムの整備に努めております。また、内部管理体制については、人員の増強等を図っておりますが、財務報告の適正性、適時開示の重要性が高まる中、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、適切な業務運営が困難となり当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)その他のリスク
① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社では、役員、従業員及び社外協力者に対するインセンティブを目的として、当社の新株予約権(以下、「ストック・オプション」という。)を付与しております。また、今後におきましても、役員、従業員及び社外協力者に対してインセンティブとしてストック・オプションを付与する可能性があります。これらのストック・オプションが権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合,が希薄化する可能性があります。当事業年度末現在、これらの新株予約権による潜在株式数は170,340株であり、発行済株式総数3,431,680株の4.96%であります。
② 配当政策について
当社は、更なる財務体質の強化や事業拡大及び競争力の確保を経営の重要課題として位置付けております。当社の配当に関する基本方針は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題と認識しつつ、現時点においては、内部留保の充実を図り、事業拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。そのため、今後の配当実施の可能性及び実施時期等につきましては未定であります。
③ 調達資金の使途について
当社の公募増資による調達資金の使途については、更なる成長に向けた開発投資や広告宣伝活動、社内リソース獲得のための人員の増員及び採用関連費用に充当する予定であります。しかしながら、当社の遂行する業務においては急速に事業環境が変化することも考えられ、環境変化に柔軟に対応することを優先し、現時点における資金計画以外の使途へ充当する可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定した投資効果が得られない可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当事業年度(2023年11月1日から2024年10月31日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が克服されていく中、経済社会活動の正常化が進みつつある一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化に伴う原材料価格の高騰や世界的な物価上昇、円安の進行など先行きは依然として不透明な状態が続いております。
当社が展開するサービスを取り巻く環境は、インターネット、スマートフォン、SNSの普及によりデジタルチャネルでの購買が一般化してきたこと、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけにオフラインでのマーケティング活動が制限されたこと等により、企業のマーケティング活動のデジタルシフトが続いており、当社が事業を展開するDXコンサルティングや「Keywordmap」等のデジタルマーケティングを支援するサービスへの需要は引続き拡大傾向にあります。一方で、2023年3月に発表されたX社のAPIの仕様変更、API利用料金の有料化などの既存プラットフォーマーの方針変更、米国のOpenAI社が提供する「ChatGPT」(文章生成モデル)の台頭に代表されるような技術的な進化など劇的な変化が起きています。
このような経営環境のもと、当事業年度の売上高は1,985,268千円(前期比2.1%増)、売上総利益は1,316,358千円(前期比3.6%減)となりました。利益面につきましては、広告宣伝費、外注費、社内開発費用の増加により営業利益は62,979千円(前期比20.1%減)、経常利益は65,042千円(前期比16.5%減)となりました。当期純利益につきましては、51,924千円(前期比886.5%増)となりました。当期純利益が前期から大幅に増加した要因としては、前事業年度に「Keywordmap for SNS」のサービス縮小の決定に伴い特別損失(減損損失)の計上があったことによるものであります。
事業ごとの売上高及びセグメント利益は以下のとおりになります。
(ソリューション事業)
ソリューション事業は、「Keywordmap」については、企業の多様化するニーズに対応することを目的とし、ハイリテラシー層からライトユーザー層まで幅広いユーザー層に対応するために、初心者向けのガイド機能の追加やコンテンツの制作・運用のサポート対象範囲を拡張するなど、2023年11月に大幅な刷新を行いました。
第1四半期会計期間は営業人員の不足により新規案件の獲得が鈍化していましたが、営業体制強化を行ったことが功を奏し新規案件の獲得が回復しました。また、カスタマーサクセスチームに関しては、2023年11月の大幅リニューアルによりユーザーの利便性が向上したこと、ツールの提供に加えて顧客のマーケティング業務の実行支援を行うサービスの提供を強化したことで、既存顧客からのアップセルが増加しました。
「Keywordmap for SNS」については、X社から提供されるAPIの仕様変更の発表によりサービス提供環境の厳しさが増したため、2024年4月30日をもって「Keywordmap for SNS」の提供を終了しました。
その結果、当セグメントの売上高は783,420千円(前期比11.8%減)と減収となった一方で、サーバー費用、データ購入費、広告宣伝費、営業人員の人件費が減少したため、セグメント利益は132,788千円(前期比130.5%増)となりました。
(アナリティクス事業)
アナリティクス事業は、マーケティングDXコンサルティングサービスにおいては、顧問サービスを活用したマーケティング施策が順調に推移し、大手企業との取引が拡大しました。また、生成AIを活用した業務効率化のシステム開発を行いました。これにより、コンサルタント1人当たりの生産性が向上しました。一方、離職及び採用遅延により、営業人員とコンサルタント人員が不足し、新規案件の獲得及び既存顧客からの案件継続が減少しました。
エキスパートソーシングサービスにおいては、顧客獲得のための営業体制の構築、プロ人材の効率的な獲得のための広告宣伝活動、自動マッチング機能などの営業効率改善のためのシステム投資を行いました。
その結果、当セグメントの売上高は1,205,217千円(前期比11.7%増)と増収となった一方で、広告宣伝費、人件費、業務効率化のための開発費用が増加したため、セグメント損失は31,819千円(前期はセグメント利益21,176千円)となりました。
(その他)
その他は、当社が2023年11月に開始したM&A仲介事業により構成されています。
第3四半期会計期間には、初めての案件が成約しました。また、M&A仲介歴10年以上のM&Aコンサルタントとパートナーシップを形成し、新規案件の創出を行っており、仲介契約の締結も順調に進捗しています。さらに、上場企業・未上場企業問わず3万件以上のM&A実績データの自動収集機能と、買い手企業データを自動収集して分析する独自システム「CAMM DB(キャムディービー)(※1)」を開発いたしました。これにより、マッチング業務の効率化を行い、新規案件の創出を加速させています。
その結果、当セグメントの売上高は16,400千円、セグメント損失は37,989千円となりました。
(※1)「CAMM DB(キャムディービー)」とは「CINC AI M&A Matching DataBase」の略称
(資産)
当事業年度末の資産については、前事業年度末に比べて69,588千円増加し、1,910,567千円となりました。
これは主に現金及び預金の増加(前事業年度末比74,736千円の増加)、繰延税金資産の増加(前事業年度末比14,780千円の増加)、従業員に対する長期貸付金の増加(前事業年度末比13,000千円の増加)、前払費用の減少(前事業年度末比11,917千円の減少)によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債については、前事業年度末に比べて37,003千円増加し、395,625千円となりました。
これは主に、未払金の増加(前事業年度末比35,772千円の増加)、未払消費税等の増加(前事業年度末比16,206千円の増加)、買掛金の増加(前事業年度末比14,879千円の増加)、未払法人税等の増加(前事業年度末比13,667千円の増加)、借入金の減少(前事業年度末比54,924千円の減少)によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産につきましては、前事業年度末に比べて32,585千円増加し、1,514,942千円となりました。これは主に、利益剰余金の増加(前事業年度末比51,924千円の増加)、自己株式の取得による減少(前事業年度末比21,946千円の減少)によるものであります。
なお、第3四半期会計期間に減資を実施し資本金467,443千円をその他資本剰余金に振り替えております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,352,454千円となり、前事業年度末残高に比べ74,736千円増加いたしました。なお、当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は205,421千円(前事業年度は17,016千円の支出)となりました。
これは主に、税引前当期純利益65,043千円、減価償却費53,593千円、未払金の増加により29,964千円の増加、法人税等の還付21,934千円の収入、一方で減少要因は、未払法人税等の減少による15,429千円の減少、法人税等の支払いによる14,848千円の支出によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は56,423千円(前事業年度は127,908千円の支出)となりました。
これは主に、無形固定資産の取得による支出42,929千円、従業員に対する長期貸付けによる支出13,000千円、有形固定資産の取得による支出771千円、敷金及び保証金の返還による収入277千円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は74,261千円(前事業年度は100,867千円の支出)となりました。
これは、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)の返済による支出54,924千円、自己株式の取得による支出21,946千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入2,608千円によるものであります。
当社はインターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、また、受注生産形態をとらない事業も多いため、生産実績の記載を省略しております。
当社はインターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、また、受注生産形態をとらない事業も多いため、受注実績の記載を省略しております。
第11期事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上を占める相手先がいないため記載を省略しております。
3.「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、M&A仲介事業であります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(売上高)
当事業年度における当社の売上高は、1,985,268千円(前事業年度比2.1%増加)となりました。ソリューション事業の「Keywordmap for SNS」はサービス終了となりましたが、アナリティクス事業のDXコンサルティングサービス等の案件獲得が堅調に進捗したことによるものであります。
(営業利益)
当事業年度における当社の営業利益は、62,979千円(前事業年度比20.1%減少)となりました。ソリューション事業においては、「Keywordmap for SNS」の終了に伴い、サーバー費、データ購入費、営業人員などの費用も減少したため営業利益は前期に比べ増益となりました。一方で、アナリティクス事業においては人件費、業務効率化のための開発費用、エキスパートソーシングサービスの広告宣伝費が増加し、営業損失となりました。また、新規事業(M&A仲介事業)の立ち上げに伴う人件費、広告宣伝費等先行投資を行ったことにより、全体として前年同期比で営業利益が大きく減少しました。
(営業外損益・経常利益)
当事業年度における営業外収益は、2,708千円(前事業年度比3,107.4%増加)となりました。これは主に助成金収入によるものです。
また、営業外費用は、645千円(前事業年度比33.0%減少)となりました。これは主に支払利息の減少によるものです。
以上の結果、当事業年度の経常利益は、65,042千円(前事業年度比16.5%減少)となりました。
(特別損益・税引前当期純利益・法人税等・当期純利益)
当事業年度における特別利益は新株予約権戻入益を1千円計上、特別損失の計上はありませんでした。その結果、税引前当期純利益は、65,043千円(前事業年度比211.8%増加)となりました。
また、法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額の合計13,118千円を計上したことにより、当事業年度の当期純利益は、51,924千円(前事業年度比886.5%増加)となりました。
税引前当期純利益、及び当期純利益が前期から大幅に増加した要因としては、前事業年度に「Keywordmap for SNS」のサービス縮小の決定に伴い特別損失(減損損失)の計上があったことによるものであります。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社の所有資金は、運転資金及び事業拡大に伴う、新サービスに関連するソフトウエア等の投資資金となっています。これらの資金については、営業キャッシュ・フローで獲得した自己資金を充当することを基本としておりますが、資金需要及び金利動向等の調達環境を考慮し、金融機関からの借入等、外部資金を調達する場合があります。
また、資金の流動性については、当事業年度末現在、現金及び預金が1,352,454千円あり、事業運営上、必要な資金は確保されていますが、より一層、十分な流動性を維持していく考えであります。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社は、常に、事業環境に留意するとともに、組織体制の整備、優秀な人材の確保等により、リスク要因に対応してまいります。
当社は、あらゆるデータを様々な分析手法で活用し、革新的ソリューションを提供することにより、「マーケティングソリューションで日本を代表する企業へ」というビジョンのもと、マーケティングの効率化・品質向上を支援するソリューション事業、データアナリストによるデータ解析、コンサルテーションを実施するアナリティクス事業を拡大してまいりました。
今後の方針としましても、引き続き市場の拡大が見込まれる当該事業領域へ経営資源を投入することで中長期の持続的な成長を目指してまいります。経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
当社は2024年8月16日開催の取締役会の決議に基づき、2024年11月1日を効力発生日として、当社のM&A仲介事業の権利義務を、新設分割により設立された当社の完全子会社である新設会社、株式会社CINC Capitalに承継しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。
当社はビッグデータと自然言語処理技術等で、顧客のマーケティング課題をデータドリブンに解決し、ビジネスの成果創出を支援しています。主たる事業として、デジタルマーケティングの調査・分析・運用・改善ツール「Keywordmap」シリーズを提供しているため、デジタルマーケティング手法を研究し、クライアントに提供するツールの機能改善を行うことが事業展開上の主要課題として認識しております。社内体制としては、AI・機械学習分野に知見のあるメンバーが中心となり、ソリューション事業及びアナリティクス事業のメンバーと連携して、研究開発活動を行っております。
当事業年度は、「Keywordmap」シリーズの新規案件獲得に寄与する機能開発の研究を目的とした研究開発に取り組んでおり、研究開発に要した費用はソリューション事業において