当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「誠実と正直こそ信頼への近道」を経営の基本方針として、以下の事項を基本理念に掲げ、会社に関わるすべての人々に比類のない喜びと感動を与えるため、高品質な製品とサービスを世界へ提供してまいります。
|
HONESTY ~ 誠実と正直こそ信頼への近道 ~
<私たちの約束>
① 私たちは、顧客を大切にします。 私たちは、製品・サービスの品質向上に努め、顧客と約束した品質と納期を確実に守るとともに、顧客の期待を上回る製品・サービスを生み出し続けます。
② 私たちは、従業員を大切にします。 私たちは、ミロクグループで働く従業員一人一人を大切な存在として尊重し、従業員が心理的かつ経済的幸せを感じられるように、働き甲斐のある環境と公平な制度を全力でつくります。
③ 私たちは、パートナー企業を大切にします。 私たちは、私たちの製品・サービスづくりに協力してくださるパートナー企業と、お互いがかけがえのない存在であり続けるために、強い信頼関係を築き、互いの繁栄を目指します。
④ 私たちは、地域社会を大切にします。 私たちは、会社の永続的な発展を通して地域における継続的な雇用創出に貢献するとともに、地域の環境保護に努めることで、地域社会と共存していきます。
⑤ 私たちは、株主を大切にします。 私たちは、株主にとって透明性のある経営を重視し、常に時代を先取りする製品・サービスの開発に果敢に挑戦することにより、会社の魅力を高め、健全な利益を生み出していきます。
|
(2)経営環境
猟銃事業につきましては、今後のトランプ政権による米国経済への期待感と同時に先行き不透明感があり、併せて個人消費の停滞感から、ブローニンググループからの受注は前年度比で横ばいで推移していくものと予想されます。一方で、中東地域の情勢悪化等の影響による世界経済の先行き減速や、円安の進行による海外部品の高騰等が懸念され、市場環境には十分留意してまいります。当社としましては、2024年10月期での創業以来初となる主力製品が生産一時停止となった教訓を活かし、品質管理体制の確立という、ものづくりの原点に立ち返り、あらゆる観点から生産の問題点を洗い出し、ひとつひとつ解決していくことでOEM供給先であるブローニンググループと軌を一にして協調体制を強化していく所存です。
工作機械事業につきましては、加工部門を当事業の成長の核におき、その営業活動を展開しつつ、機械部門及びツール部門への波及を図ってまいります。全体では2024年10月期をやや下回る利益水準で推移する見通しでありますが、国内の設備投資は持ち直しの動きも見られており、新たな分野における需要開拓も含めて事業の強化を図ってまいります。
IT/IoT/AI事業につきましては、設備保全業務効率化のためのクラウドシステム等の販売において新規獲得数を増加することを第一に鋭意営業活動に励んでまいります。
その他事業につきましては、主力である自動車関連事業は自動車業界におけるカーボンニュートラルや電気自動車へのシフト等大きな変革期のなかで、主力となる部分加飾ステアリングハンドルの受注獲得に注力するとともに、これまで培った技術により、「BAMBOO+®」をはじめとする新素材の開発等に注力し、更なる業績向上に努めてまいります。
以上の結果、次期の通期連結業績につきましては、売上高13,260百万円(前期比21.4%増)、営業利益100百万円(前期は519百万円の営業損失)、経常利益250百万円(前期は263百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益180百万円(前期は2,294百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)を見込んでおります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は2018年度より、ミロクグループの長期ビジョンとして「主力三事業の強みを活かし、向上させ、かつ新たな事業を創出することで盤石の経営基盤を築き、今後も成長し続ける企業グループを目指す」を掲げ、その実現に向けたマイルストーンとして中期経営計画を策定しております。
「2025中期経営計画」としましては、当社製品の市場からの要求に応えるため、生産工程の徹底した改善を通じて生産性を高め、大型投資に耐え得る強靭な企業体質を確立し、また各事業間の活発な交流による相乗効果や人財育成等を行うことで、持続可能なグループ企業を目指すことを基本方針として推進してまいります。
猟銃事業につきましては、世界的な銃ブランドであるブローニンググループと歩調を合わせ、昨今の品質トラブルを教訓としてものづくりの原点に立ち返り、生産基盤の安定と事業の継続的成長を目指します。工作機械事業では、深穴明けというニッチな市場の数少ない総合ガンドリルメーカーとして、加工部門を収益の柱と位置づけ、顧客からの潜在ニーズと当社の強みの分析を通じて事業の拡大・創出を目指します。IT/IoT/AI事業では、新規顧客の獲得に精励いたします。自動車関連事業では、部分加飾ハンドルを軌道にのせ、その収益性を確保し製品競争力の強化を図り、さらに新たなカーボンニュートラル分野の開拓を目指してまいります。以上を通じて当社グループ全体で計画の達成に向けて邁進いたします。
持続可能なグループ企業を支える基盤としての「サステナビリティ」に関する当社の取組みとしましては、2024年度はサステナビリティ委員会を通じて、人財に関する検討を重ね、中期人財戦略を策定いたしました。また、竣工がせまった日章新工場と老朽化している既存工場の将来的なBCP対策等、当社の持続可能性を高めてまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
セグメントごとの課題は次のとおりであります。
① 猟銃事業
猟銃事業につきましては、当然のことではありますが、緊密なビジネスパートナーであるブローニンググループへ、確実な品質と納期で製品を納めることを第一の目標として実行していきます。主力の米国市場は、今後トランプ政権へ移行し、関税の動向等不透明感はありますが、現状と同様の一定の受注水準が続くものと思われます。2025年2月に竣工する予定の日章新工場では、長期的に生産能力の拡充を図ってまいりますが、併せて既存工場の再構築及びBCP対策等により、当社猟銃生産体制の全体最適化、安定化を推し進めます。
また、主力二製品のフルモデルチェンジによる新製品の本格的な市場投入によって、新規顧客の獲得及び既存顧客の需要喚起により売上拡大を目指します。さらに省人化を通じた生産性の向上を目的とした工程の自動化やロボット化及びIT/IoTの導入により、価格競争力の向上と顧客ニーズに対応した柔軟な供給体制の構築を実現してまいります。
数値計画としましては、2025年10月期は、2024年10月期末での固定資産の減損損失の計上により、今後の減価償却費負担が軽減されるため、会計上の利益が回復することを織り込んでいます。さらに2026年10月期以降は、生産性向上による製造原価率の改善とともに、新製品の販売増及び高付加価値製品の安定生産の実現による、利益の回復を想定しております。
② 工作機械事業
工作機械事業につきましては、当事業の重要な顧客である半導体業界は、装置においてAI用の需要拡大が見込まれ、また自動車関連等でも今後販売されるモデルにおいて需要拡大が想定されています。さらに半導体業界は、AI機能をサーバだけではなくPCやスマートフォンに搭載する動きが加速することから需要が拡大すると思われます。FPD(フラットパネルディスプレイ)業界におきましても、タブレット及びPCへのパネル搭載が開始される見込みであり、中期的に伸びていくものと予想されます。
このような環境のもと、販売戦略としましては引き続き当社の強みである総合ガンドリルメーカーとしてのブランド力を活かし、加工部門を核とした戦略で、成長が予想される半導体やFPD市場の需要を取込み、全国4拠点の稼働率向上を目指し、また拠点の追加も模索してまいります。機械部門では対面による営業活動を推進し、新規顧客の獲得とエリアごとの営業戦略で売上増加を目指し、ツール部門では、設備更新により顧客の要求に応えることで販売促進につなげていきます。さらに全部門において原価低減を推し進めるとともに、人財育成による多能工化を推進してまいります。
③ IT/IoT/AI事業
設備保全業務効率化のためのクラウドシステム等の販売において新規顧客獲得のため鋭意営業活動を展開していきます。競合他社との優位性を明確にし、中長期的に当事業を安定させることに注力してまいります。
④ その他事業
その他事業の主体である自動車関連事業は、自動車業界が自動運転やカーボンニュートラル対応という大きな環境変化におかれています。当事業の主力製品となる部分ウッドステアリングハンドルを中心とした部分加飾ハンドルの販売促進、新製品開発及び製品競争力の強化に取り組み、当該加飾ハンドルの商権を維持拡大してまいります。さらに、高知県産孟宗竹等を原材料としたカーボンニュートラルに貢献する複合材料「BAMBOO+®」の事業化を推し進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、企業として常に成長し継続的に発展をしていくために、持続可能なグループ企業を支える基盤として「サステナビリティ」に取組んでまいります。
当社グループとしましては、グループ各社で働く従業員一人ひとりが企業を支える大切な存在であると尊重し、人財の維持・充実を図ることや働きやすい環境を整えることが企業発展の礎になると考え、人的資本の活動に取組んでまいります。
また、環境保全や社会的問題への対応が求められているSDGs(持続可能な開発目標)に対しても、継続して取組んでまいります。
(1)ガバナンス
当社はサステナビリティ経営を全社で横断的に推進するため、2023年10月に取締役管理本部本部長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置いたしました。サステナビリティ委員会は、定期的に各施策の確認・協議を行い、課題や活動内容を経営会議に報告しております。また、経営会議においては、サステナビリティ委員会からの報告に基づいて、サステナビリティ全般に関する対応方針、実行計画等について、審議・監督を行っております。
(2)戦略
人的資本に関する取組
常に変化し続ける社会環境や価値観の多様性に対して柔軟に対応し、持続的な成長を実現するには、従業員が高い知識と技能を習得、また、チームとして最大限のパフォーマンスを生み出すための社内環境整備が必要不可欠です。当社グループは、人財育成のために社会の変化に対応した教育プログラムやパフォーマンス向上のための制度設計に取組み、企業としての成長、企業価値の向上の実現に向けた活動を継続しております。
当社グループにおける人財育成及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
人財育成方針
当社グループは、求める人財像として5つの項目を掲げており、継続的に従業員の能力開発・育成を行っております。
当社グループが求める人財像
・積極性:会社発展に積極的に寄与できる人財
・創造力:仕事にやりがいを持った創造的な人財
・柔軟性:会社を取り巻く様々な変化に対応できる人財
・行動力:具体的に考え行動できる人財
・コミュニケーション能力:互いに協力してチームとしての最大のパフォーマンスを生み出せる人財
当社グループは中期経営計画に基づく中期人財戦略を策定、以下の取組を行ってまいります。
① 人財の確保に向けた取組
グループの持続的な発展のためには、当社グループが求める人財を継続的に確保することが不可欠であります。そのため人財採用においては、従来の採用手法に加え、新卒・中途採用に係る採用チャネルの拡大、学校との関係強化等に努めています。また、採用イベントのみならず地域交流型イベントへの関係会社共同での出展など、多くの人に対し当社グループの魅力を知っていただくことで、採用活動を展開しております。
今後は、さらに地域社会に対する繋がりの強化に加え、広くグループの様々な情報を積極的に発信していくことで、採用力の強化を図ってまいります。
② 人財の育成に向けた取組
当社グループでは、従業員一人ひとりの強みを最大限に引き出すため、従来から行われてきた職場での経験を主としたOJTに加え、各子会社で必要とされる専門知識習得のための研修、グループ合同での新入社員研修、また売上高の90%以上をブローニンググループ向けに販売している猟銃事業においては、実践的な英語力向上のための選抜型英語研修など、Off-JTを中心とした課題別・階層別教育訓練や部門別教育訓練に取組んでおります。
今後は、さらにグループ横断的な教育訓練の実施に向けて、全社的な教育訓練計画の策定や体制整備を行ってまいります。
③ 人財の定着に向けた取組
当社グループでは、「私たちは、ミロクグループで働く従業員一人ひとりを大切な存在として尊重し、従業員が心理的かつ経済的幸せを感じられるように、働き甲斐のある環境と公平な制度を全力でつくります」を基本理念の一つに掲げております。
この基本理念を実現するための各子会社における人財の定着に向けた取組として、各従業員の能力及び意欲の向上を図ることなどを目的とした個人面談でのフィードバックの実施、定着率向上のための新入社員を対象としたフォローアップ研修や全従業員を対象としたコンプライアンス教育実施のほか、ワークライフバランスの促進に向けて残業時間削減や有給休暇取得率を高めるなど、社員エンゲージメントの向上及び働きやすい職場環境の整備に努めております。
今後も、従業員がより働き甲斐を感じられる組織風土の醸成及び公平な制度構築の実現を図ってまいります。
社内環境整備方針
当社グループは従業員一人ひとりが互いに協力し合い、個々の能力を最大限に発揮し、企業に根づいてもらえるような職場環境の構築のために、ワークライフバランスの促進や働き方の多様化に向けた取組を行っております。また、当社子会社である㈱ミロク製作所及び㈱ミロク工芸では、経済産業省及び日本健康会議から「健康経営優良法人(中小法人部門)」を3年連続、さらに㈱ミロク製作所においては、若者雇用促進法に基づく認定制度である「ユースエール認定企業」を6年連続で認定されております。
(3)リスク管理
サステナビリティに関するリスク管理におきましては、代表取締役社長を委員長とする危機管理委員会を設置し、他のリスクと同様に対応策の検討を行い、また各子会社における危機管理委員会から活動状況に関する課題等を定期的に経営会議に報告することで、グループ全体での情報を共有、企業リスクの低減に努めております。
人的資本
当社グループが主に事業活動を行っている高知県では、人口減少や少子高齢化の深刻化が全国平均を大きく上回っており、これら社会構造の変化を重要なリスクとして認識しております。この事業継続に大きな影響を及ぼす環境の変化に対応するため、中期人財戦略を策定し、企業の継続的な発展と従業員の能力及び意欲の向上に取組んでおります。
気候変動
当社グループは、気候温暖化が進むことによる豪雨災害等の気候変動が、社会の持続可能性にとって重要なリスクであると認識しております。これまで危機管理委員会において、ミロクグループとして事業継続計画(BCP)の策定を行っておりますが、現段階では気候変動への対応策や数値目標等の公表には至っておりません。
今後は、気候変動関連における課題への新たな取組として、CO2排出量の可視化に向けた算定を行うとともに、サステナブルな地域社会や脱炭素社会実現への貢献に向けた中長期的な課題の抽出及び対応策を検討してまいります。
(4)指標及び目標
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した取組を進めていく上で、人財の育成及び定着に関して「教育訓練実施率(Off-JT)」並びに「有給休暇取得率」を指標として定め、目標を設定しております。
|
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
|
|
|
|
|
|
|
|
(注) 2025年度から測定を開始する指標のため、実績値を記載しておりません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)セグメント別のリスクについて
猟銃事業
① 海外における政治・経済情勢の動向について
猟銃事業では、売上高の90%以上をブローニンググループ向けに販売しており、同グループの主要な販売地域である米国及び欧州をはじめとした海外の政治経済情勢に起因した市場動向の変化に大きく左右されます。
政治情勢が大きく変化することによって米国または販売地域における銃規制が大幅に強化された場合や、当社製品に対する関税の増加や景気の後退などにより当社製品の市場が縮小した場合、新たな規制への対応による費用の増加や同グループからの受注数量が減少する可能性があります。
また、同グループとの輸出取引は円建てで行っており、当社グループとの取引における直接的な為替変動リスクは同グループが背負っております。しかしながら、経済情勢の変化によって為替の変動による急激な円高が起こった場合、または円高傾向が長期にわたる場合には、同グループとの価格交渉が必要となります。
さらに、ウクライナや中東地域の情勢悪化などの地政学的リスクが高まり、取引先や物流に影響を及ぼす事象が発生する場合などにおいても、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしましては、これらの外部要因に対して、OEM供給先であるブローニンググループと定期的な技術会議や月例ビデオ会議を開催することで関係の維持・強化に努め、良好かつ安定的な関係を構築することで、経営環境の変化に対応しております。
② 製品の品質管理について
猟銃事業では、当社製品を購入してくださるお客様に安心して使用していただくため、品質・安全に配慮した製品の開発・製造・販売に努めており、品質保証部による管理のみでなく、組織横断的な品質管理体制構築にも取組み、製品の品質維持に努めております。また万が一に備え、製造物責任に関する保険に加入しております。
しかしながら、大規模な製品の回収や製造物責任に関する賠償につながるような不具合・欠陥が発生した場合には、社会的信用が大きく損なわれるとともに、多額の費用の発生や生産ラインの停止及び売上高の減少等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 原材料の調達について
猟銃事業では、海外を含む多数の取引先から年間の生産計画を基に原材料・部品の調達を行っており、原材料・部品の標準化及び共通化、また重要部品調達先の分散、商社の有効利用、納期が遅延しがちな原材料・部品の先行調達等を図っております。
しかしながら、調達先からの要請による原材料価格の高騰リスク、その原材料の特殊性から調達先が少数に限定されていることによるリスク、規模の小さい調達先の倒産や事業撤退、罹災により納品がされなくなる等のリスクが考えられます。また、海外部品における当該購入国の政治・経済情勢等の変化による調達が困難となった場合や、リスクヘッジにより為替変動の影響を緩和することは可能であっても原材料価格の上昇を販売価格に転嫁できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
工作機械事業
① 顧客ニーズ及び市場動向について
工作機械事業は、深穴加工用ガンドリルマシンの製造、販売のみならず、消耗品であるガンドリルツールの製造、販売、他にも深穴明けの請負加工を中心に国内唯一の総合ガンドリルメーカーとして事業を展開しております。また、今後はさらに収益の拡大に向けて営業活動の強化を図るとともに、常に顧客ニーズや市場動向を的確に把握し、より高品質且つ高付加価値な製品の開発に取り組んでまいります。
しかしながら、業界のニーズの変化に的確に対応できず、またこれら製品開発が期待通りの進捗を見込めないことで市場占有率が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 原材料における市場価格動向について
工作機械事業では、主要な製品の原材料として鋳鉄を多く使用しており、鋼材価格は市況により変動しております。
したがって、予期せぬ経済情勢の変化等により、原材料価格の上昇を販売価格に転嫁できず、またこれらの要因が長期化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
IT/IoT/AI事業
① 新規事業について
IT/IoT/AI事業は、当社グループにおける事業領域の拡大と持続的な成長を目指し、新規事業への取組みを行っております。
しかしながら、新規事業の展開が当初の計画どおりに進まない場合や、研究開発・人材確保のための費用等が計画以上に発生する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
その他の事業
① 特定の取引先への依存について
自動車関連事業では、主力製品であるステアリングハンドルは、すべてトヨタ自動車株式会社で生産されている自動車向けであり、取引先と良好な関係を築いておりますが、さらなる顧客ニーズへの対応として、加飾ハンドルやカーボンニュートラルに対応した新製品の開発等に取り組んでおります。
しかしながら、市場分析や事業計画の予測とは異なる状況の発生等によって、主要取引先の方針変更により製品受注数量が減少した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)当社グループ共通のリスクについて
① 自然災害等について
当社グループは、大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症のような未知の感染症の世界的な流行など、不測の事態による生産活動の中断から生じる損害を最小限に抑えるため、生産設備に対し有効な防災点検及び設備保守、安全対策投資等のみならず、危機管理委員会の設置等、従業員の安全確保及び事業活動が再開できるよう努めております。
しかしながら、突発的に発生する災害や天災等の影響で、生産活動の停止による損害を被った場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 人財の確保及び育成について
慢性的な人財不足が懸念されるなか、当社グループを継続的に成長させるためには、人財の確保や教育、技術の伝承は非常に重要な要素となっております。当社グループは、積極的な採用活動を行うことにより、優秀な人財の確保に努めるとともに、教育研修制度の充実を図り、人財の育成に注力しております。
しかしながら、人財の確保及び育成が計画どおりに行えなかった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 情報セキュリティについて
当社グループは、経営情報のみならず、取引先情報、開発情報等の内部機密、さらには従業員の個人情報等、事業を支える重要な情報を保有しており、当社グループが事業活動を継続していくなかで、これらの重要な情報を保護するために、情報セキュリティに関する従業員教育の実施、グループ各社のIT責任者による会議を定期的に行っております。
しかしながら、予測できないサイバー攻撃やコンピュータウイルスの侵入等により、製品開発情報、技術情報や顧客情報などが外部に漏洩した場合、損害賠償等の発生や当社グループのブランド価値の低下を招くなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 法令等遵守について
当社グループでは、会社法、金融商品取引法、法人税法、労働基準法等の一般的な法令に加え、各事業の運営に関わる各種法規制に対して常に最新情報の入手、対応に努めております。また、コンプライアンス委員会を設け、グループ全従業員に対してコンプライアンスハンドブックの配付、定期的な教育、啓蒙活動を行うことで、コンプライアンス体制を構築し、法令等遵守の徹底に向けて継続的に取り組んでおります。
しかしながら、万一法令・規則違反を理由とする訴訟や法的手続きにおいて、当社グループにとって不利益な結果が生じた場合には、社会的信用の低下等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高が継続する状況ではありましたが、雇用や所得環境の改善、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに回復しております。一方、海外における中東地域の情勢悪化や、原材料価格の高騰、不安定な為替相場等による世界経済の下振れがわが国経済を下押しするリスクは続いております。
このような状況のもと、当社グループは会社に関わるすべての人々に比類のない喜びと感動を与えるため、高品質な製品とサービスを世界へ提供することをミッションに、グループ一丸となって業績向上に努めてまいりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。なお、当社グループは、従来、「猟銃事業」、「工作機械事業」以外のセグメントについては、重要性が乏しいため「その他事業」として記載しておりましたが、当連結会計年度から、「その他事業」に含まれていた「IT/IoT/AI事業」につきまして量的な重要性が増したため、これまでの「その他事業」から、「IT/IoT/AI事業」と「その他事業」に区分し、セグメント情報を記載することとしました。
(猟銃事業)
当社製品のOEM供給先であるブローニンググループからの受注は堅調に推移しましたが、第2四半期会計期間に発生した製造工程の不具合による生産の一時停止や新製品への移行に伴う想定以上の不要部品の除却、また継続する原材料価格の高騰等により、売上高、利益において下振れ要因として大きく影響しました。その結果、売上高は9,201,479千円(前期比6.3%減)、セグメント損失(営業損失)は444,081千円(前期は593,403千円のセグメント利益)となりました。
(工作機械事業)
営業活動の強化は図っているものの、依然販売先工場の稼働停滞等により、売上高は全部門で前期を下回りました。利益につきましても、売上高減少のなか、加工部門が一定の利益を確保しましたが、他の部門が振るわず、前期に比べて減少しました。その結果、売上高は1,684,817千円(前期比19.0%減)、セグメント利益(営業利益)は155,079千円(同比30.5%減)となりました。売上高につきましては、セグメント間の内部売上高18,922千円を含んでおります。
(IT/IoT/AI事業)
設備保全業務効率化のためのクラウドシステム等の販売において顧客獲得は進んでおり、売上高は前期に比べて増加となりましたが、利益につきましては引き続き損失を計上いたしました。その結果、売上高は5,074千円(前期比34.5%増)、セグメント損失(営業損失)は43,319千円(前期は34,196千円のセグメント損失)となりました。売上高につきましては、セグメント間の内部売上高1,971千円を含んでおります。
(その他事業)
その他事業の売上高は47,918千円(前期比9.3%増)、セグメント利益(営業利益)は28,708千円(同比11.2%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は10,918,396千円(前期比8.2%減)、営業損失は519,127千円(前期は553,825千円の営業利益)、経常損失は263,073千円(前期は795,415千円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,294,180千円(前期は481,294千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失については、猟銃事業における事業会社の減損損失1,669,745千円の計上及び繰延税金資産の取崩し239,043千円があったことによります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
a 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
猟銃事業 (注)1 |
9,131,305 |
△5.3 |
|
工作機械事業 (注)1 |
480,714 |
△30.5 |
|
IT/IoT/AI事業 (注)3 |
12,203 |
+6.7 |
|
合計 |
9,624,223 |
△7.0 |
(注)1.金額は、販売価格によっております。
2.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
3.金額は、製造原価により算出しております。
4.当連結会計年度において、工作機械事業の生産実績に著しい変動がありました。これは機械部門で販売先工場の稼働停滞等により、生産が減少したことによるものであります。
b 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
猟銃事業 |
9,119,523 |
△8.0 |
10,106,848 |
+1.4 |
|
工作機械事業(注)3 |
820,599 |
+43.9 |
486,009 |
+232.6 |
|
IT/IoT/AI事業(注)3 |
6,250 |
+1,462.5 |
3,546 |
+786.6 |
|
合計 |
9,946,772 |
△5.1 |
10,596,403 |
+4.8 |
(注)1.金額は、販売価格によっております。
2.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
3.当連結会計年度において、受注高及び受注実績に著しい変動がありました。
これは、工作機械事業及びIT/IoT/AI事業において、当社グループの製品の需要が増加したことによるものであります。
c 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
猟銃事業 |
9,201,479 |
△6.3 |
|
工作機械事業 |
1,665,895 |
△17.5 |
|
IT/IoT/AI事業 |
3,103 |
- |
|
その他 |
47,918 |
+9.3 |
|
合計 |
10,918,396 |
△8.2 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
|
ブローニング・アームズ・カンパニー |
7,332,707 |
61.7 |
6,820,622 |
62.5 |
|
ブローニング・インターナショナルS.A. |
2,074,198 |
17.4 |
1,968,891 |
18.0 |
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。
(2)財政状態
(資産)
資産合計は前連結会計年度末に比べて1,715,251千円増加し、22,619,854千円となりました。
主な要因は、受取手形及び売掛金が573,662千円、機械装置及び運搬具が1,133,679千円、繰延税金資産が247,961千円減少したものの、棚卸資産が797,981千円、建設仮勘定が2,263,876千円、投資有価証券が663,004千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
負債合計は前連結会計年度末に比べて3,709,028千円増加し、9,299,465千円となりました。
主な要因は、賞与引当金が92,091千円減少したものの、短期借入金が600,000千円、長期借入金が2,730,000千円増加したこと等によるものであります。
これらの結果、流動比率は前連結会計年度末と比較し、66.7ポイント減少の276.1%となりました。
(純資産)
純資産合計は前連結会計年度末に比べて1,993,777千円減少し、13,320,388千円となりました。
主な要因は、その他有価証券評価差額金が402,697千円増加したものの、利益剰余金が2,399,236千円減少したこと等によるものであります。
以上により、自己資本比率は、前連結会計年度末の73.3%から58.9%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて89,914千円減少し、1,299,638千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、使用した資金は41,983千円(前連結会計年度は484,975千円の支出)となりました。
収入の主な内訳は、減損損失1,669,745千円、減価償却費942,969千円、売上債権の減少額573,662千円等であり、支出の主な内訳は税金等調整前当期純損失1,940,247千円、棚卸資産の増加額797,981千円、法人税等の支払額200,497千円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は3,360,520千円(前連結会計年度は1,166,905千円の支出)となりました。
これは、主に利息及び配当金の受取額79,686千円、有形固定資産の取得による支出3,406,121千円、無形固定資産の取得による支出57,298千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、得られた資金は3,309,243千円(前連結会計年度は1,225,526千円の収入)となりました。
これは、主に長期借入れによる収入3,130,000千円、短期借入れによる収入600,000千円、長期借入れの返済による支出300,000千円、配当金の支払額105,056千円等によるものであります。
(4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要の主なものは、商品、原材料等の購入費用、販売費及び一般管理費等の営業費用及び維持更新を目的とした設備投資等であります。これらの資金需要に対しては、財務の健全性を担保した上で、企業価値の向上に向けて、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金を財源として、資本を成長投資・株主還元・内部留保にバランスを考慮し配分することとしております。
成長投資につきましては、当連結会計年度において、主に生産体制の強化を目的とした設備投資等3,583,179千円、新製品の開発に向けた研究開発投資等21,724千円を実施しております。
猟銃事業につきましては、2022年度に取得した南国日章産業団地(高知県南国市)の工場用地において、2025年2月にミロク日章工場の竣工を予定しており、2024年10月末現在で建設仮勘定2,280,485千円を計上しております。
資本の調達方法につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローを基本として、不足分を借入金等の有利子負債によって調達しております。当連結会計年度末現在、短期借入金残高1,100,000千円、1年内返済予定の長期借入金を含む長期借入金残高4,380,000千円について、主力銀行をはじめとする金融機関から調達しております。
なお、2022年9月より、南国日章産業団地の新工場建設に係る資金調達を円滑に行うことを目的として、取引銀行4行とシンジケートローン契約を締結しており、当連結会計年度末における借入金実行残高は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結貸借対照表関係」に記載しております。
また、株主還元につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結決算日における資産・負債の報告数値並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。これらの見積り及び判断・評価は、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因等に基づき行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるためにこれらと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
長期供給契約
|
契約会社名 |
契約品目 |
契約の内容 |
相手先 |
摘要 |
|
株式会社 ミロク製作所 |
散弾銃及び ライフル銃 |
当社はブローニング・アームズ・カンパニーに対して契約品目を長期間供給する。 |
(米国) BWA,INC. |
契約締結年月 2019年5月 (有効期間 2019年5月から 2028年6月まで) |
|
当社はブローニング・インターナショナルS.A.に対し契約品目を長期間供給すると共に、同社製品中契約品目及び装弾の国内販売を行う。 |
(ベルギー) ブローニング・イン ターナショナルS.A. |
契約締結年月 1985年12月 (有効期間 1986年1月から 2025年12月まで) |
当連結会計年度の研究開発活動は、「顧客にとってさらに価値ある商品を提供する」をテーマに、主力の3事業である猟銃事業・工作機械事業・その他事業がそれぞれ取り組んでおります。
猟銃事業は、当社製品のOEM供給先であるブローニンググループからの受注は比較的堅調に推移しております。当期に、当社の主力製品である上下二連銃とボルトアクションライフルにおいて、フルモデルチェンジとなる新製品モデルへの世代交代を実現しております。従来モデルとの違いは、付加価値を高めた外観と、より洗練された撃発機構を備えていることであり、現在はこれらの派生モデルの開発に取り組んでおります。
工作機械事業は、極小径穴加工用テーブル可動式マシン(MEBG-400-1NC)と、大径穴加工用高剛性タイプ(MEG-1000-1NC)のガンドリルマシン2台を開発し、2024年11月に開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)に出展いたしました。
IT/IoT/AI事業については、設備保全ツール「ミロクルカルテ」を含め複数サービスの開発を進めており、事業計画通り順調に推移しております。2025年度は更なる顧客獲得を目的に、顧客要望の多い生成AIや3Dマップとの連携や、新規サービスの市場投入を計画しております。
その他事業は、主力である自動車関連事業において2024年度はトヨタ(レクサス)の一部車種で新たな意匠での継続実施が決定しました。また、竹と樹脂の複合材の「BAMBOO+®」は、2025年量産開始を目指し工場整備中です。
なお、当連結会計年度に支出した研究開発費は