第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は経営理念「今と未来を見える化し 次世代の安心を創造する」に基づき、介護業界の課題に対して業務効率化に寄与するソリューションを提供しております。特に介護領域の担い手不足は国内の人口動態上当面継続する課題であり、施設における介護、在宅介護共に抜本的な対処が必要となっております。当社の創業者であり医師でもある現取締役会長の梶本修身は、自身の親に対する介護の経験から従来の「人の手に拘った事後的対応」を行う介護ではなく、最新のICT(注1)技術を取り入れ「変化の予兆」の段階で把握し、「先んじたケア」を行うことの重要性を認識したと言います。介護をする側、される側共に人としての尊厳を保ちつつ、お互いの心理的、肉体的負担を軽くする、そのソリューションの実現が必要だと痛感したことから、医師である自身が監修しライフリズムナビ+Dr.事業の立ち上げに至っております。

 

 当社はこの思いを原点に、睡眠データ解析技術、センサフュージョン技術、そして医学的知見を統合することで、SaaS型高齢者施設見守りサービス「ライフリズムナビ+Dr.」を生み出しました。現在、ライフリズムナビ+Dr.はSaaS型高齢者施設見守りシステムとしてNo.1(注2)となっており、先回りの介護で業界を牽引する、まさに次世代の安心を創造するサービスとして展開しております。まずは介護・医療業界の課題に寄り添い、そこで培った技術とノウハウを磨くことで新たな事業パートナーと共に新たな事業領域も視野に入れ、様々な社会課題の解決にも取り組んでまいります。

 

(注)1.ICT(アイシーティー)とは、「Information and Communication Technology」の略称で、情報通信技術のことです。IT(Information Technology)が情報技術そのものを表すのに対し、さらに通信技術を介して行う技術の活用方法を指します。

   2.2023年10月25日発行 高齢者住宅新聞 見守りシステム アンケート調査より。

 

(2)経営環境

 高齢者向け介護産業の市場規模は、2025年で15.3兆円、2040年には25.8兆円に拡大する見通しとなっております(注3)。そのため介護サービスの需要拡大は進むものの、担い手としての介護人材不足は深刻であり、政府は2020年度に介護ロボット導入等への補助金を拡充する等、介護ロボットの普及を後押ししている状態です。介護ロボットとは、介護現場の負担軽減・業務効率化を実現する介護IT機器として自動で情報を感知・判断・動作するものとされ、近年多様な介護ロボットが上市されています。当社のライフリズムナビ+Dr.はオプションサービスの「見守りコール」を含め、介護ロボットの「見守り・緊急通報サービス」に該当し、各種補助金・助成金の対象となっております。

 

(注)3.内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省 2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材) 平成30年5月21日

 

 

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 また今後ライフリズムナビを後述の居宅介護向け、地域包括ケアシステムを推進するサービスへと拡張し、さらに当社の技術やサービスを公的保険外のヘルスケア市場への適用も想定いたしますと、当社事業の対象となる領域は将来に渡って非常に大きな市場であると捉えております。以上を踏まえ、当社ではTAMを3兆4,000億円、SAMを4,000億円、SOMを600億円と推定しております。

 

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※1 2025年における65歳以上世帯数見込2,103万世帯×1台当たり出荷金額(概算)15万円+公的保険外ヘルスケア市場のうち睡眠市場1,900億円+同ヘルスケア関連アプリ市場規模600億円[国立社会保障・人口問題研究所 日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計](平成30年2月28日) / [経済産業省 「次世代ヘルスケア産業審議会の今後の方向性」](平成30年4月18日)

※2 介護予防サービスにおける介護予防福祉用具貸与48,595百万円、及び介護サービスにおける福祉用具貸与350,628百万円の合計 [厚生労働省 令和3年度 介護給付費等実態統計の概況(令和3年5月審査分~令和4年4月審査分)](令和4年9月21日)

 

(3)当社の強みと事業戦略

 当社のコアコンピタンスは睡眠ビッグデータの解析技術、ライフリズムナビ事業を通じて保有し、今後も増大し続ける膨大な睡眠データ、ハードウェア/ソフトウェアの一貫した自社開発メソッドの三つと捉えております。睡眠データ解析技術はデータの解析のみに留まらず、社会課題や顧客のニーズに寄り添い適切なソリューションとしてご提供する価値化技術も含んでおり、例えば特許化された認知症予測AIの開発等、当社のノウハウや人材も含め強い差別化要素となっております。

 これら三つのコアコンピタンスを中核に、当社の事業戦略として①知的財産戦略、②カスタマーサクセスによる伴走と顧客価値最大化、そして③導入時の機器販売による収益と月額費から構成される、事業を支える強靭なキャッシュフローの維持、の三つを設定しております。これらの事業戦略を追及することで、当社は確かな顧客価値を創造し、継続的な提供を実現しております。

 

①知的財産戦略

 当社は知的財産を重視しております。自社のシェア獲得のための競争力、他社参入障壁確保の源泉として具体的な知的財産関連の取り組みを継続しております。各種知的財産権に関して当社単独での出願、権利化を推進することはもちろん、他社との共同開発の成果について共同出願を行うなど当社の事業推進上適切な手段により実効性のある知財戦略を取り進めております。また定期的に業界や競合の知的財産の調査も実施しており、特許や商標等相互の侵害状況の確認も行っております。現時点で特筆すべき事案は確認しておりませんが、当社としましては今後もこのような取り組みを積極的に進めてまいります。

 

②カスタマーサクセスによる伴走と顧客価値最大化

 当社の重点戦略の一つとして、カスタマーサクセスの組織化とその活動が挙げられます。所属する担当者には介護現場経験者や介護福祉士の資格保有者も在籍し、介護現場のニーズや業務上のお困りごとを自ら体験してきた人材で構成しております。そのため当社のサポートはライフリズムナビ+Dr.の機能に関する一般的な内容に留まらず、現場のスタッフが躓きやすいポイントを先読みしたサポートであり、ICTリテラシーが決して高くないスタッフの方々も、脱落することなくライフリズムナビ+Dr.を活用できるようになっております。またこのサポートは個別相談以外にも複数回の定期専用プログラムとしてシステム的に運用しており、目標の明確化からサービスをご利用になる過程で顧客ごとの課題や躓きのポイントを抽出し、個別習熟プログラムとして再構築、実践しております。これらの結果として、ライフリズムナビ+Dr.を十分に使えるようになるだけでなく、さらにその先の科学的介護(注4)を活用したより効率的で発展的な介護に繋げる意欲の醸成まで伴走しており、業界の一般的なサポート部門とは一線を画す手厚いカスタマーサクセスを実現しております。

 さらに、故障対応についてもライフリズムナビ+Dr.がSaaS型であることを活かし、機器やシステムの不調時はクラウドからカスタマーサクセスメンバーに即時通知が届く体制を整えております。介護スタッフが現場で機器の不調に気づく前にカスタマーサクセスメンバーが現場の状況を把握し、先んじて遠隔復旧を実施したり、介護スタッフに対処方法をお伝えすることで、現場スタッフの負担を軽減し、また業務を可能な限り止めない運用に貢献しております。

 

③導入時の機器販売による収益と月額費から構成される、事業を支える強靭なキャッシュフローの維持

 当社のライフリズムナビ事業における収益は一部のリースモデルを除き主に機器販売のイニシャル収益と月額費のストック収益の二つに分けられます。特に後者の月額費による収益は介護業界では比較的珍しいモデルとなっており、当社の事業のベースを支えております。当社はこの二つの収益により、当社の特徴であるカスタマーサクセス組織の維持拡大を実現させ、その効果で顧客満足度が向上し、低いChurn Rateを実現するという好循環に繋がっております。また今後もライフリズムナビ+Dr.の顧客数増大が見込まれる中では月額費による収益も増大するため、より強靭なキャッシュフローを維持し、スピーディーな投資判断の実行や事業のさらなる拡大に繋げていく源泉としてまいります。

 

(注)4.科学的介護とは、厚生労働省により科学的裏付け(エビデンス)に基づく介護と定義され、介護現場の情報を収集、蓄積、分析し、その結果を現場にフィードバックすることでさらなる科学的介護を推進することを指します。

 

(4)中期長期的な会社の経営戦略

①ライフリズムナビ+Dr.のシェア拡大

 当社は継続的な成長のためライフリズムナビ+Dr.のシェア拡大を目指します。まずはライフリズムナビ+Dr.を導入いただいた法人顧客に対してカスタマーサクセスによる伴走を行い、顧客満足度向上により当該法人のグループ施設への追加導入(リピート)を増やしてまいります。また国内各地方に根差し、地域特化型の販社体制を敷く法人と積極的なアライアンスを実施することで、広く地方に分散する高齢者施設に対して効率的に営業し、シェア拡大を実現してまいります。

 

②事業パートナーシップ体制の拡充とソリューションの拡大

 ライフリズムナビ+Dr.に関するアライアンスだけでなく、インフラ、エネルギー、住まい、家電機器等、介護はもちろん日常の暮らしまでカバーする多様なパートナーと提携を積極的に進めてまいります。これにより、施設介護の見守りやDXだけでなく、居宅介護、地域包括ケアシステムの中での総合的なソリューション事業者へと変革し、社会課題の解決と顧客価値最大化による収益の拡大を目指してまいります。

 

 上記①、②によりライフリズムナビ事業が拡大するにつれて、当社が保有する睡眠データはますます増大し続けます。現在は睡眠データ解析による介護テック事業者として歩んでおりますが、今後はこの蓄積した睡眠データをベースに、ソリューション事業領域の拡大も進めてまいります。事業ポートフォリオの一環である受託研究開発事業を通し、様々なアセットや顧客基盤を保有するパートナーとの共創を深めてまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社はライフリズムナビ事業における高い成長性及び安定性、収益性を確保する観点から、当社の状況を適切に表す指標として、導入床数の推移、年間リカーリング収益、Churn Rateの推移を重要な経営指標と捉えております。

 

(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①ライフリズムナビ事業拡大の戦略

 現在ライフリズムナビ+Dr.はBtoBの介護施設向けサービスとして提供しており、ライフリズムナビ+HOMEはBtoBtoC及びBtoCの一般ご家庭向けサービスとして展開しております。当社のライフリズムナビ事業で培った技術やノウハウは、新たな価値創出の源泉であり、介護に関わる各企業や福祉法人、自治体などのパートナーと互恵関係を築きながら機能的な連携を実現してまいります。パートナーとの共創を進め、施設介護と同等以上に大きな市場であるBtoBtoCの在宅介護領域、さらには医療サポートも含めた巨大な地域包括ケアシステム市場を牽引する企業を目指してまいります。

 

②優秀な人材の採用と育成

 当社の持続的な成長のためには、様々な事業領域で経験を積んだ優秀な人材を多数採用し、開発体制、カスタマーサクセス体制、その他営業、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えております。その中でも特に、ライフリズムナビ事業における顧客価値最大化のために、顧客ニーズを的確に吸い上げ、ソリューション化しお届けする、カスタマーサクセスと開発エンジニアの人員強化に努めてまいります。当社の企業理念や事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を進めるとともに、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築に取り組んでまいります。

 

③情報管理体制の強化

 当社はサービス提供やシステム運用の過程において、睡眠データ等の情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、情報管理規程等に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修実施やシステム整備などを継続して行ってまいります。

 

④内部管理体制の強化

 当社はライフリズムナビ事業における成長段階にあり、事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。

 

⑤財務上の課題

 当社は、基本的に自己資金及び営業キャッシュ・フローによる安定的な財務基盤を確保しており、優先的に対処すべき財務上の課題はございません。ただし、今後の成長戦略の展開に伴い、内部留保の確保と営業キャッシュ・フローの拡大で、さらに財務体質を強化するとともに、株式市場からの必要な資金確保と金融機関からの融資等を選択肢とする等により多様な資金調達を図ってまいります。

 

⑥社会課題の解決とSDGsの取り組み

 当社は「今と未来を見える化し 次世代の安心を創造する」という経営理念に基づき事業を推進しており、社会課題解決が、結果としてSDGs(持続可能な開発目標)に掲げられる各目標達成に繋がっていくと認識しております。現状においては「3.すべての人に健康と福祉を」、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」等が当社の事業展開と密接に同期しております。まずは介護業界から、そして今後も、これらのテーマにおけるより大きな社会的インパクトの創出に努めるほか、事業拡大を図る中で、多種多様な産業へと顧客層を拡大すると同時により広範な社会課題の解決を志向し、その他のSDGsの目標達成にも繋がるよう、具体的なアクションや成果を生み出すことを目指してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、「睡眠解析技術で、未来社会に健康と安心を提供する」というミッションのもと、当社のクラウドに蓄積された継時的な睡眠のビッグデータに対してAI解析することで、可視化(Visualization)と価値化(Value-ization)を行い、さまざまな領域における社会課題の解決に取り組んでおります。当社にとってのサステナビリティとは、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことであり、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントが重要であると認識しております。具体的な当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

取締役会を経営の基本方針や重要課題並びに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則として毎月1回定例で開催するとともに、監査役会により業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の遵守状況、業務活動の適正性かつ有効性等を確認しております。また独立した組織である内部監査による、業務執行の有効性、違法性のチェック及び管理を通して、組織の健全化に取り組んでおります。

詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)戦略

当社の実施するライフリズムナビ事業は、超高齢社会の進展に伴い現実的な課題が山積する昨今の経済状況に、介護業界の側面から解決の一旦を担うことができるということも踏まえて、サステナビリティ・SDGsとの関連が非常に高いと考えております。そのため、事業活動に真摯に取組み、顧客課題や社会課題の解決を通じて、当社の持続的な成長を実現していくことそのものが社会の持続的な発展の貢献に直結するものと考えております。

当該取組みの詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ⑥ 社会課題の解決とSDGsの取組み」に記載しております。

 

当社では、人的資本に関して、以下のとおり「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を設定しております。

 ①人材育成方針

当社においては、事業活動を支えうる多様な人材を積極的に採用し、業務に必要な知識習得に向けた研修の実施、自己研鑽を促進することを通じて、継続的な人材育成に取り組んでおります。

 ②社内環境整備方針

リモートワーク勤務などにより柔軟な働き方に対応するとともに、各種福利厚生制度の拡充など、多様な人材が健康で、高いモチベーションを保ちつつ、やりがいをもって働きやすい環境の整備に取り組んでおります。また、柔軟なキャリアパスを実現するための公正な評価制度等を設けて、働きやすい環境整備に努めています。

 

(3)リスク管理

当社は、サステナビリティに関する事項を含むリスク管理が経営の重要課題であることを認識し、「リスク管理規程」及び「コンプライアンス規程」を定め、当規程の下、リスク管理委員会及びコンプライアンス委員会を設置し、当社事業に係るリスクについて、適宜評価を行い経済環境や事業状況の変化に合わせ見直しを継続しております。当委員会にて識別、分析された具体的なリスクについてはその都度対応策の検討、及び実行をしております。また、重要なリスクについては取締役会に報告された後、リスクを低減させる施策の実施をしております。

 

(4)指標及び目標

当社では、(2)戦略において記載した人材育成及び社内環境整備に係る指標について、具体的な取り組みを行っているものの、本報告書提出日現在においては、当該指標についての具体的な目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示を検討してまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断において重要であると考えられる事項については積極的に開示しております。

 当社は、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 当社はリスク管理委員会を設置しリスク管理にあたっております。同委員会は代表取締役社長の諮問機関であると同時に、具体的なリスク管理活動又は緊急時対応に関する執行機関であり、取締役、部長及び常勤監査役にて構成しております。委員長を代表取締役社長とし、四半期に一度定時会を開催するほか必要に応じて適宜開催し、当社のリスク管理体制の構築及び運用に関する各種施策のほか、クレーム・インシデント事案の対応について審議し、答申しております。また、緊急事態発生時においては、対応策に関する決定・指示機関として機能することを予定しております。

 本項に記載している将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるリスクの全てを網羅していることを保証するものではありません。

 

(1)事業に関するリスク

①介護市場の成長性(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社の主たる事業領域である介護関連市場は、人口動態としての超高齢社会の進展、要介護者と介護人材の需給ギャップの拡大、それらの課題解決のための技術革新や国主導のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進などの影響を受け、今後もさらなる市場規模の拡大が想定されます。しかしながら、今後の市場成長率は、介護に対する新たな法規制・政策の導入、関連市場の動向、景気変動による介護の担い手不足の深刻化など外的要因による影響を受けるため、これらの影響による市場成長率の鈍化により、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社としましては、介護施設向けのライフリズムナビ+Dr.に加え、在宅介護に向けたライフリズムナビ+HOME等、国が推進する地域包括ケアシステムの枠組みに合わせて事業を推進しつつ、さらに介護業界に留まらず蓄積した睡眠データをベースに、ソリューション事業領域の拡大を行うことで対応してまいります。また法規制等につきましては早期に改正内容を把握し、適宜顧問弁護士等の専門家の指示を仰ぎながら対応を進めていく予定です。

 

②競合の動向(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社の現在の主たる事業領域である介護施設見守りは、多数の既存事業者が存在するほか、今後も業種にかかわらず大手企業から高度に専門化した新興企業まで、様々な事業者による新規参入が見込まれます。当社は独自の睡眠データ解析技術、膨大な睡眠データ、ハードウェア/ソフトウェアの一貫開発メソッドを中核に、クラウド型かつセンサー複合型の高齢者施設見守りシステムとして競争優位性を保持しており、関連事業者の増大が直ちに競争上の脅威となるものではありません。しかしながら当社より優れたデータ解析技術、営業力、ブランド又は知名度を有する他の事業者の動向によっては、当社の期待通りに顧客を獲得・維持できないことも考えられます。

 当社としましては、他の事業者と差別化を図ったサービスを開発・提供できるよう引き続き邁進してまいりますが、競争環境の激化等により、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③当社の製品について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中 )

 当社の製品(センサー等)・サービスに欠陥等が生じた場合、当社の製品・サービスの質に対する信頼が悪影響を受け、当該欠陥等から生じた損害について当社が責任を負う可能性があるとともに、当社の製品の販売能力に悪影響を及ぼす可能性があり、当社の経営成績、財政状態及び将来の業績見通しに悪影響を及ぼす可能性があります。当社としましては、今後も継続して製品・サービス品質の維持向上に努めてまいります。

 

④当社製品の原材料、部品について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社の製品(センサー等)に関する原材料、部品の不足は、昨今の半導体不足に代表されるように急激な価格の高騰を引き起こす可能性があります。これらの市況価格の上昇は当社の製造コストの上昇要因であり、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対しては、市場流通在庫の把握や価格動向の定期的な調査を行うとともに、予算に基づく早期の発注を行い一定の在庫の確保に努めてまいります。

 

⑤業績の季節変動(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:中)

 日本国内では商習慣上3月を期末月とする法人が多く、また介護関連の補助金も年度区切りで展開されていることから、当社の顧客法人は3月末までに当社のサービス提供を求める例が多くみられます。そのため、当社の売上高は、当社の第2四半期(2月から4月まで)、特に3月に偏在する傾向があり、特定の四半期業績のみをもって当社の通期業績見通しを判断することは困難であります。また、補助金については国や自治体の方針により補助の金額や継続性が変動することがあり、当社の売上に影響を及ぼす可能性があります。当社としましては、新たに在宅介護向けのライフリズムナビ+HOMEの拡大を推進することで、季節変動の影響を受けにくい、年間を通した収益化を目指してまいります。

 なお、当事業年度の当社の売上高及び営業利益の四半期会計期間毎の推移は以下の通りです。

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上高(千円)

309,163

516,109

161,367

99,603

1,086,242

営業利益(千円)

142,031

274,553

6,049

△37,447

385,186

 

⑥システム障害(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:高)

 当社がクラウドで提供しているライフリズムナビ事業は、サービスの基盤をインターネット通信網に依存しております。したがって、自然災害や事故によりインターネット通信網が切断された場合には、サービスの提供が困難になります。サイバー攻撃等により当社サービス基盤への攻撃を受けた場合には、システム障害により事業遂行が困難になることや、事業上の重要機密が漏洩する可能性があります。また、予想外の急激なアクセス増加等による一時的な過負荷やその他予期せぬ事象によるサーバーダウン等により、当社のサービスが停止する可能性があります。これまで当社において、そのような事象は発生しておりませんが、今後このようなシステム障害等が発生し、サービスの安定的な提供が行えないような事態が発生した場合には、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。これらのリスクに関しましては、監視ツールの運用により障害を早期に発見可能な体制を整えている他、セキュリティシステムの導入やシステムの冗長化等による安定稼働の継続に努めております。

 

⑦知的財産権におけるリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社のビジネス上、当社独自もしくは共同開発を行った成果に対して特許、その他知的財産権は重要であります。当社は、サービスに関わる知的財産権の獲得に努めておりますが、当社の知的財産権が十分に保護されない場合には、当社の事業、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、可能な範囲で調査を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。かかる場合のロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、あるいは当社の知的財産が侵害された場合において、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社としましては、今後も知的財産の早期出願を行うとともに、他社の知的財産の調査を継続的に行い、必要に応じて弁理士等専門家の指示を仰ぎながら対応を進めていく予定です。

 

(2)経営管理体制に関するリスク

①人材の採用及び育成(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短中期、影響度:高)

 当社は、事業の拡大に伴い、積極的に優秀なインフラやアプリケーション制作等のソフトウェア開発を行うエンジニア、睡眠データの解析を担うデータサイエンティスト、またライフリズムナビ事業を支えるカスタマーサクセス人材の採用・育成を進めております。しかしながら、事業規模の拡大に応じた当社における人材育成、外部からの優秀な人材の採用等が計画どおりに進まず、必要な人材を確保することができない場合には、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社としましては、継続して人材の採用を行っており、現時点におきましても各部ソフトウェアの拡充を行っておりますので、今後も事業の拡大に併せた採用及び育成を行ってまいります。

 

②特定の人物への依存(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:高)

 当社の代表取締役社長渡邉君人は、経営戦略、事業戦略等当社の業務に関して専門的な知識・技術を有し、重要な役割を果たしております。当社では取締役会等において役員及び従業員への情報共有や権限移譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、経営体制の整備を進めており、経営に対するリスクを最小限にしております。しかしながら、渡邉が当社を退職した場合、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社におきましては、渡邉以外の経営メンバーへの権限移譲を日常的に実施しており、その依存度の分散を推進しております。

③内部管理体制(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:中)

 当社は、企業価値の持続的な増大を図るために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、人材、資本、サービス、情報資産の適正かつ効率的な活用をすることが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しております。

 そのためにも、当社では内部管理体制の充実に努めております。しかしながら、今後の事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④コンプライアンス体制(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:高)

 当社は、企業価値の持続的な増大を図るために、コンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えており、コンプライアンスに関する社内規程を策定するとともに、役員及び従業員を対象として社内研修を実施し、コンプライアンスの重要性の周知徹底を図っております。しかしながら、これらの取組みにもかかわらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤情報管理(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:高)

 当社がライフリズムナビ事業で取り扱う情報の中には、高齢施設の重要かつ機密性が高い情報が含まれる場合があります。また、当社が提供するサービスやセンサーからの情報においては、原則的に施設入居者の個人情報を取り扱うことはございませんが、状況により取り扱う可能性がございます。これらの情報の取扱いについては、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し、情報管理に関する諸規程の整備及び適切な運用に努めておりますが、従業員及び委託先関係者の故意・過失、事故、災害、悪意をもった第三者による不正アクセス、その他予期せぬ要因等により情報の漏洩、不正使用または不適切な取扱が発生した場合、損害賠償責任やセキュリティシステム改修のための多額の費用負担を負う可能性及び当局による行政処分等の対象となる可能性があるほか、顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、当社の事業、財政状態及び業績に重大な影響を与える可能性があります。当社としましては、情報管理に関する諸規程等の社内方針に沿って情報管理を徹底し、また、従業員に対する継続的な教育を行うことなどによって、より一層の適切な情報管理に努めてまいります。

 

(3)その他のリスク

①大規模な自然災害等(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中長期、影響度:高)

 当社は、有事に備えたBCPを設定し危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波、感染症等の自然災害等が想定を大きく上回る規模で発生した場合、当社又は当社の取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

②新型コロナウイルス(COVID-19)等の感染拡大による影響(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短中期、影響度:中)

 国内及び海外主要各国において、COVID-19の長期化による社会的な影響は様々な産業に及んでおり、一定の終息をみた現在においても、何らかの変化により景気の動向に影響を与える状況が続いております。当社のライフリズムナビ事業はCOVID-19等の感染拡大時においては非接触での遠隔見守りのニーズが増大する側面があり、比較的事業上の影響は軽微な傾向があります。

 一方で当社では、感染症拡大の長期化に伴うリスクに対応するため、オンラインでの社内コミュニケーションの促進に努めるとともに、全社員に対して感染対策の徹底、感染疑いや体調不良時の就業に関する対応方針を周知し業務基盤を強化しております。

 現時点において、COVID-19等の感染拡大は当社の事業展開及び経営成績に重大な影響を及ぼしておりませんが、今後何らかの感染症により当社の想定していない事業環境の変化を招き事業展開が計画どおりに進まない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

③訴訟等(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:中)

 現時点において、当社において係争中の訴訟はありません。しかしながら、将来において当社の取締役、従業員の法令違反等の有無にかかわらず、予期せぬトラブルや訴訟等が発生する可能性は否定できません。かかる訴訟が発生した場合には、その内容や金額によって、当社の業績、財政状態及び事業展開に影響を与える可能性があります。顧問弁護士等と連携し、適切に対応してまいります。

④新株予約権の行使による株式価値の希薄化(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短中期、影響度:中)

 当社では、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は14.55%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

⑤配当政策(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中長期、影響度:中)

 当社は株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、当社は現在、成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、より一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

⑥資金使途(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 上場時に実施した公募増資による調達資金につきましては、人材確保費用、ハードウェア調達費用及び研究開発費(ハード・ソフト)等に充当する予定であります。

 しかしながら、急激に変化する事業環境により柔軟に対応するため、現時点における計画以外の使途にも充当される可能性があります。また、計画に沿って資金を使用した場合でも想定通りの投資効果を上げられない場合、当社の経営成績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は、3,066,829千円となり、前事業年度末と比較して1,915,810千円増加(前期比166.4%増)となりました。流動資産は、前事業年度末と比較して1,874,574千円増加し、2,918,713千円となりました。主な増減として、上場による資金調達及び売上高増加に伴い現金及び預金が1,840,109千円増加したためであります。また、固定資産は、前事業年度末と比較して41,235千円増加し、148,116千円となりました。主な増減として、ソフトウエア仮勘定が49,967千円増加したためであります。

(負債)

 当事業年度末における負債合計は、183,345千円となり、前事業年度末と比較して47,573千円増加(前期比35.0%増)となりました。主な増減として、事業の拡大に伴って未払消費税等が33,393千円増加したこと及び、仕入増加により買掛金が8,097千円増加したためであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は、2,883,484千円となり、前事業年度末と比較して1,868,237千円増加(前期比184.0%増)となりました。これは主に、資金調達により資本金797,558千円及び資本剰余金797,558千円が増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化を背景に内需を中心に緩やかな持ち直しがみられます。新型コロナウイルス感染症の位置付けも見直され、経済が自律的に循環する環境が整ってきております。一方で世界的な物価上昇とそれを受けた急速な金融引締めが続いており、金融資本市場を中心に先行きは依然不透明な状況にあります。

 当社の事業環境におきましては、超高齢社会がますます進み、2040年には65歳以上の人口が3,920万人に達する見込みであり、その割合は総人口の35.3%に上ります。2065年には現役世代1.3人で1人の65歳以上の者を支える社会の到来が予測されており、介護の担い手不足が深刻化すると予想されております。一方で国の施策としては、内閣官房の『成長戦略フォローアップ』において医療・介護現場関連のICT、DXも重要分野における取り組みの1つとされているほか、厚生労働省は、経済産業省とともに「ロボット技術の介護利用における重点分野」を6分野13項目と定め、その開発・導入を支援しております。

 このような背景の中、介護現場の業務効率化に資するBtoB向けサービス「ライフリズムナビ+Dr.」は介護人材不足に対する重要な打ち手として捉えられており、各種補助金の対象となっております。また業界のICTリテラシーに関する課題については、当社では早い段階でカスタマーサクセスチームを立ち上げており施設内のネットワーク環境の新規導入相談、ライフリズムナビ導入直後の稼働時、継続利用時、そして科学的介護システム(LIFE)の活用ができるようになるまで手厚い伴走型サポートを行っており、お客さまから大変ご好評をいただいております。これらの取り組みによりライフリズムナビを導入いただいたお客さまに関するChurn Rateはほぼ0%を維持できており、ライフリズムナビの導入施設数に応じた売上の増大だけでなく、1物件導入いただいた法人さまのグループ施設に対する追加導入件数もまた拡大を続けております。

 

 これらの結果、当事業年度における業績は、売上高1,086,242千円(前年同期比192,562千円増、21.5%増)、営業利益385,186千円(前年同期比82,192千円増、27.1%増)、経常利益372,501千円(前年同期比68,144千円増、22.4%増)、当期純利益273,121千円(前年同期比75,239千円増、38.0%増)となりました。

 

 また、当社はライフリズムナビ事業の単一セグメントであるため、売上高はすべて同事業より獲得しております。当社は単一セグメント事業であるためセグメント情報は記載しておりませんが、個別事業ごとの売上高は以下となります。

ライフリズムナビ事業

ライフリズムナビ事業は、センサー機器の販売とストックビジネスからなり、新規顧客の獲得とその後の既存顧客グループへの水平展開の増加に加え、Churn Rate ほぼ0%を維持したストック売上を継続した結果、ライフリズムナビ全体の売上高は979,186千円(前年同期比180,044千円増、22.5%増)、内ストックの売上高は116,650千円(前年同期比57,223千円増、96.3%増)となりました。

 

受託研究開発事業

受託研究開発事業は、ライフリズムナビ事業の拡大を優先したため、売上高は107,056千円(前年同期比12,518千円増、13.2%増)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ1,840,109千円増加し、2,544,507千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、309,300千円の収入(前年同期は94,491千円の収入)となりました。増加の主な内訳は、税引前当期純利益372,501千円、未払消費税等の増加額33,393千円であり、減少の主な内訳は、法人税等の支払額121,167千円、棚卸資産の増加額30,609千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、64,307千円の支出(前年同期は78,253千円の支出)となりました。主な要因は、無形固定資産の取得による支出52,416千円、有形固定資産の取得による支出6,570千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、1,595,116千円の収入(前年同期は188,800千円の収入)となりました。これは、株式の発行による収入1,595,116千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績は次のとおりであります。なお、当社はライフリズムナビ事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。

事業の名称

当事業年度

(自2022年11月1日

至2023年10月31日)

前年同期比(%)

ライフリズムナビ事業(千円)

477,984

109.7

合計(千円)

477,984

109.7

 (注)上記の生産実績を示す金額は総製造費用によっております。

 

b.受注実績

 当社は、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はライフリズムナビ事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。

事業の名称

当事業年度

(自2022年11月1日

至2023年10月31日)

前年同期比(%)

ライフリズムナビ事業(千円)

1,086,242

121.5

合計(千円)

1,086,242

121.5

 (注)1.ライフリズムナビ事業の販売実績が著しく変動しております。内容については新規顧客の獲得と、その後の既存顧客グループが経営する他施設への展開が増加したこと等によるものです。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2021年11月1日

至2022年10月31日)

当事業年度

(自2022年11月1日

至2023年10月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

SFIリーシング株式会社

191,205

21.4

258,850

23.8

株式会社チャーム・ケア・コーポレーション

140,640

15.7

175,045

16.1

東京ガス株式会社

67,563

7.6

152,923

14.1

社会福祉法人聖隷福祉事業団

108,850

12.2

55,100

5.1

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りによる不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績の分析

(売上高)

 当社はライフリズムナビ事業の単一セグメントであるため、売上高1,086,242千円(前年同期比21.5%増)はすべて同事業より獲得し、売上高の増加要因は新規顧客並びに既存顧客からの追加導入の増加によるものであります。

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度において売上原価は363,279千円(前年同期比4.3%増)となり、売上原価は売上高の増加に伴い増加したものの、新製品開発等機器の見直しを実施したため売上原価率は33.4%と前事業年度に比べ5.5ポイント良化しました。その結果、売上総利益は722,963千円(前年同期比32.6%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 販売費及び一般管理費は337,777千円(前年同期比39.4%増)となりました。主要な費目は役員報酬73,114千円、給料手当84,541千円、支払報酬料22,784千円であり、事業拡大のための体制整備に係る費用が主な増加要因となっております。その結果、営業利益は385,186千円(前年同期比27.1%増)となりました。

(営業外損益、経常利益)

 営業外収益は雑収入及び受取利息等があり1,126千円となりました。営業外費用は上場関連費用13,793千円等があり13,811千円となりました。その結果、経常利益372,501千円(前年同期比22.4%増)となりました。

(特別損益、税引前当期純利益)

 当事業年度において特別利益、特別損失は発生していないため、税引前当期純利益は経常利益と同額の372,501千円(前年同期比22.4%増)となりました。

(当期純利益)

 法人税、住民税及び事業税に税効果会計適用に伴う法人税等調整額を合わせた税金費用は99,380千円(前年同期比6.7%減)となり、当期純利益は273,121千円(前年同期比38.0%増)となりました。

 

c.キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金需要のうち主なものは、ライフリズムナビ事業における開発費用等の売上原価及び人件費等の営業費用であります。

 当社は、運転資金につきましては内部資金により充当しております。今後、資金需要の必要性に応じて、外部も含めた資金調達等柔軟に対応する方針としております。

 

e.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりライフリズムナビ+Dr.に関する導入床数、年間リカーリング収益、Churn Rateとしております。過年度における当社の各指標の進捗は以下の通りです。これは、現時点において予定どおりの進捗となっており、堅調に推移しているものと認識しております。なお現時点では売上の大部分を占めるライフリズムナビ+Dr.を対象に確認しております。

 

 

2021年10月期

2022年10月期

2023年10月期

導入床数(累計床数)

2,752

5,101

9,006

年間リカーリング収益(千円)

27,905

59,427

116,650

Churn Rate(%)

0.00

0.02

0.02

 

f.経営成績に重要な影響を与える要因

 「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

主な研究開発活動は以下の通りであります。

(1)ライフリズムナビ+Dr.のクラウドシステムおよびアプリケーションソフトウェアのバージョンアップ

 SaaS型の特徴を活かし、お客さまのニーズや声をいち早く取り入れ、サービスとして実装するため当事業年度においては42回のバージョンアップによる機能拡充(不具合対応を除く)を実施しております。このような開発によりライフリズムナビ+Dr.をさらに使いやすく、便利なサービスとしてお客様にお届けしてまいります。また、顧客数増加に伴い蓄積する睡眠・バイタルデータ量が大幅に増加するため、解析処理の高速化やサーバ負荷の低減を想定した分散処理ならびに安定稼働のためのシステム改修も行っております。これらの取り組みにより現状200施設以上に導入されているライフリズムナビ+Dr.について、今後さらに顧客数が拡大を続けた場合にも、お客様にご不便をおかけすることなく安定してサービスを提供できるシステムを構築しております。

 

(2)ライフリズムナビSleepSensorの開発

 ライフリズムナビ事業において使用する各種センサーの中でも中核を担うものとして、ベッドのマットレス下に設置して睡眠データ、バイタルデータを取得するライフリズムナビSleepSensorがございます。本センサーは当社の独自技術やノウハウを組み込んでおり、従来のセンサーと比較してより使いやすい機能や特徴を有しております。また本センサーは内包する電装基板や外装部のマット部、ケース部等の部品に分かれており、それぞれの部品ごとに常に改良開発や調達先の最適化の検討を進めております。

 改良開発につきましては、介護現場ごとに各居室の状況が多種多様であるため、データにノイズが乗りやすい部屋がある、特定の体格や寝相、寝具の素材の違いなどで、入居者のデータが取得しにくくなるケースがあるといった課題がございますが、自社内の技術検証を通じて部品の構成や形状、さらには製造工程まで見直し2022年3月にリリースした新型SleepSensorでは、精度高く安定したデータの取得を実現しております。さらにこれらの部品それぞれについてコストダウン開発も継続して手掛けており、ライフリズムナビ事業として安定した収益を支える一要素となっております。

 SleepSensorの部品調達先につきましては、昨今の為替の影響や原油高に伴う樹脂材料の高騰などの影響を受け、部品調達費の高騰や入手の困難性が高まるといった事業上のリスクが存在します。このような課題に対し、先んじた調達先の多様化、安定したルートの確保に向けた調整を行うことで、事業の継続性、安定性を高めております。

 

 上記の結果、当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は7,640千円となりました。

 なお、当社はライフリズムナビ事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。