第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、創業の理想「この仕事を通じて社会に貢献する。」、「この仕事を通じて立派な人を創る。」を経営の基本理念・企業文化とし、守り育ててまいりました。創業の理想を実現するための両輪として、経営信条「良品・安価・即納」を定めて社会貢献への道を示し、社訓「信義誠実」「和衷協力」「不撓不屈」「業務奉仕」を定めて人間形成の道を示しております。

 この創業の理想の実践・実現に向けて努力し続けることが、企業価値の向上につながるものと考えております。

 

(2)経営環境、経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループを取り巻く経営環境は、地政学的要因等によるサプライチェーンの寸断リスク、通商政策の不確実性に起因する需要変動リスクの高まり等から、先行きの不透明感が増しています。自動車業界におきましては、カーボンニュートラルに向けた自動車の電動化を背景に、新興EVメーカーの台頭、自動車部品メーカーの再編、世界自動車生産台数の伸びの鈍化等、大きな変革の時代にあります。

 このような経営環境の変化に対処すべく、当社グループは卓越した提案力、課題解決力でお客様の困りごとの一番の相談相手となる“To be the First-Call Company for customer’s better choice”をコーポレート・アイデンティティとして掲げ、以下の5つの経営課題に取り組んでまいります。

 

[Ⅰ] 収益基盤の強化

 ウインドレギュレータ、ドアモジュールの販売が拡大して連結売上高に占める割合において半分以上となる一方、当社グループ創業来の中核製品であったコントロールケーブルが約4分の1になる等、市場環境の変容に応じて当社グループの業容もまた変化しています。新興国市場においてはコントロールケーブルの需要継続が見込まれ、これまで蓄積してきた製品力で収益を確保いたします。ウインドレギュレータ、ドアモジュールにつきましては、製品に対する新たな付加価値の付与、生産性の改善等で収益性を高めてまいります。

 

[Ⅱ] 技術基盤の強化

 自動車の電動化にともない、自動車部品の点数が減少する一方で、自動車部品のモジュール化、パッケージ化が進んでいます。当社グループは、これまで培ってきたコア技術に電子制御技術を加えたかたちでのシステム製品・モジュール製品・パッケージ製品の開発に注力し、市場のニーズに応えてまいります。そのために必要な人的、技術的資源調達の手段として、M&Aについても積極的に検討してまいります。

 

[Ⅲ] 成長基盤の強化

 当社グループの事業ポートフォリオの拡充を目指し、非自動車事業にも注力してまいります。産業機器事業、医療事業におきましては、新たな付加価値を生み出すことができて今後成長の見込まれる分野へ挑戦し、積極的に投資していきます。

 

[IV] 経営基盤の強化

 当社は事業部門を日本自動車事業、グローバル自動車事業、医療事業本部、事業開発本部の4つに再編し、各事業、各本部が経営課題・長期戦略設定をして、その解決・実現に向けて取り組む体制を新たに構築いたしました。また、管理本部を新設し、各事業の経営課題解決・長期戦略実現に向けた活動を支援する体制を整えました。

 

[V] 人財の育成

 当社グループの最大の強みの一つは、世界15ヶ国に展開した拠点とそこで働く社員です。課題に対して果敢に挑戦する人財が高く評価されることを目指して新しい人事制度の設計をし、現在運用を開始しております。運用上の問題点を修正しながら、制度の成熟に取り組んでおります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは以下の指標の安定的な確保と拡大を重視しております。

 ①社業の健全性を示す自己資本と営業利益

 ②株主の皆様にとっての収益性を示すROE(自己資本利益率)と配当の原資となる親会社株主に帰属する当期純利益

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、「この仕事を通じて社会に貢献する」という経営理念を通じて、社会の皆様が快適に、安心して暮らせる環境づくりの一翼を担っていくことを目指しております。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは気候変動への対応について、ISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築し、当社の環境管理責任者、環境委員会及びE/QMS推進チームを中心に全社に展開した運用を行っております。それらシステムを通じて、順守すべき法的要求を満たし、リスク及び機会に取り組んでおり、トップマネジメント(担当役員)に対してその実績を定期的に報告しております。トップマネジメントは、報告された情報に基づいて環境マネジメントシステムが適切妥当かつ有効である事、継続的改善の機会、戦略的な方向性等の結論・指示を出しております。

 

 環境に関するその他の取り組みとして、当社においてサスティナビリティ担当執行役員および環境委員会を設置し、当社のカーボンニュートラルに関する中長期的なCO2の削減目標設定と方針の策定、国内外拠点の環境活動支援策の策定およびWEBサイトでの対外的な活動の開示を行っております。それらの実施状況については定期的に取締役に報告することとしております。また、これら取り組みの一環として自社所有地にメガソーラー発電所を建設し、2013年より運用を継続しております。この活動の取り組みと成果については、当社人事総務部門が管理し定期的な報告を行っております。

 

(2)戦略

 当社は気候変動への対応について、地球環境の保護が人類共通の最重要課題と認識し、当社製品の生産活動において、地球環境の保護と地域の環境改善に貢献することを環境方針として策定しております。以下の方針を重点的に取り組むことでISO14001に基づく活動及び環境委員会の設定する目標を達成するよう取り組んでおります。またグループ各社においても同様にISO14001に基づく目標達成の為の方針を通して地球環境の保護に配慮した企業活動を行うように取り組んでおります。

 

①環境に関する法律、条例、協定及び顧客の要求事項の順守。

②環境管理の目的及び目標の設定。定期的見直しと継続的改善。

③省資源・省エネルギー活動と、産業廃棄物のリサイクル化、及び持続可能な資源利用の促進、環境汚染の予防と気候変動の緩和に努める。

④生産活動から廃棄まで、環境に配慮した製品開発に努める。

⑤自然環境と調和した企業を創り、地域社会との共存を図る。

 

 また、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、「元気な会社にする」という中長期的なビジョンを掲げ「人財開発室」を設置し、今後の当社グループの将来を担う人材(人財)の育成と社内環境の整備を進めております。

 主に組織活動の強化を目的とした人事制度・仕組みの策定、個人の成長を目的とした能力開発施策の立案・実施、個人のモチベーション向上を目的とした適性配置とキャリア自律支援施策の立案、組織のモラール向上を目的とした、組織活性化施策の立案・実施に注力して取り組んでおります。

 

 

(3)リスク管理

 当社グループにおけるサステナビリティ関連のリスク管理については、気候変動への対応を含む環境面では、ISO14001による環境マネジメントシステムに基づき環境管理マニュアル等を制定し、関連するリスク及び機会への取り組みを決定しております。

その主な概要は以下の通りであります。

①主に下記(ア)~(エ)を考慮したうえでリスク及び機会を決定し、それらに取り組むプロセスを文書化し情報を維持します。

(ア)環境に影響する可能性のある組織活動または製品又はサービス等(以下「環境側面」)

(イ)組織が順守すべき法的要求事項

(ウ)当社の経営信条及び年度会社方針に関連した外部及び内部の課題

(エ)当社の利害関係者(顧客、従業員、行政、地域住民、購買先等)が要求する事項及び法令等を満たした製品及びサービス

②環境側面及びその環境への影響、環境側面のうち特に重大な影響を与えるもの、それらを決めるために用いた基準を、環境側面管理規定に文書化して維持します。

③組織が順守しなければならない法的要求事項等を「環境法規管理規定」に定め、文書化しております。

 

 また、その他のサステナビリティ関連のリスク管理として、当社環境委員会において、主にカーボンニュートラルへの対応を中心に、関連するリスクと機会について定期的に検討を行い、取り組み方針を決定しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループのサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する実績を長期的に評価し、管理し、及び監視するために用いられる情報の内重要なものとして、当社は環境方針と整合する全般的な環境の到達点を毎期達成する為に「エネルギー使用量の削減値」「有害物質の使用・取扱い」を定量化された数値目標として設定しております。

 その内、主要なものは、電力使用量、石油系燃料使用量、ガス使用量、エネルギー使用量、CO2排出量等であります。

 その設定については、社内で策定した「省エネ管理規定」を参考にして、中長期的にみて年平均1%以上改善させる事を目標に5カ年の中長期目標を設定して取り組んでおります。

 

 また、その他の目標について、当社環境委員会の設定する中長期での活動目標のうち重要なものとして、当社において2013年の温室効果ガス(t-CO2)総排出量を基準として2030年に50%削減することをKPI(重要業績評価指標)とし、2050年にカーボンニュートラルを実現することをKGI(重要目標達成指標)としています。

 

 また、当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2026年3月 2

主任級にある者に占める女性労働者の割合

2026年3月 5

1

男女の平均勤続年数の差

2026年3月 2以下

4年以下

 

 以上の指標及び目標につきましては、連結グループの主要な事業を営む会社において、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、必ずしも連結グループに属する全ての会社では行われておらず連結グループにおける記載が困難であるため、提出会社の数値を記載しております。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)市場環境の変化

 当社グループは、主として自動車部品業界で活動し、取引先であります国内及び海外の主要自動車関連メーカーの生産ラインに同調して、製品の製造並びに販売を行っております。自動車関連メーカーは製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受ける可能性があるため、日本はもとより、主要な市場である北米、中国、アジア並びに欧州における景気及びそれに伴う中長期的な需要の変動、あるいは、当社グループ製品の装着率によっては、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これらのリスクを最小化するため、顧客の要望を先取りし、安全性や軽量化等の付加価値を高めた製品開発や、非自動車分野での拡販に取り組んでおります。

 

(2)為替変動の影響

 当社グループは、全世界で幅広く生産、販売活動を行っていることから、当社グループの業績及び財務状況は為替相場の変動によって大きな影響を受けてきております。このため、短期的には一部先物為替予約や通貨スワップ取引等による、為替リスクヘッジを実施するとともに、中長期的には、世界各地域での原材料、部品の調達体制の整備を進めておりますが、現在のところ、リスクを完全に回避することは困難であり、為替相場の急激な変動は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)原材料の価格変動

 当社グループの製品の主要原材料である鋼材及び樹脂の購入価格は、国内及び海外の市況並びに為替相場の変動の影響を受けます。それにより予期せぬ異常な変動が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。近年では世界的な原材料価格の高騰や半導体の供給不足に伴う調達コストの増加等が新たな課題となっておりますが、これらに対する取り組みとして、代替材の採用や調達活動におけるグループ企業間での連携等により、リスクの最小化を図っております。

 

(4)技術革新

 自動車業界ではEV等の進展によるバイワイヤ化が進む方向にあり、今後中長期的には、自動車機能の変革、進化が予想されます。当社グループでは、このようなバイワイヤ化の動きに対応した新製品の開発・商品化に取組んでおりますが、今後の技術革新が急速に進展した場合、当社グループが新製品の分野でもコントロールケーブルと同様の高い競争力を維持できるかについては、不確実であります。

 

(5)知的財産

 当社グループは、自社が製造並びに販売する製品に関する特許及び意匠・商標を保有し、もしくは権利を取得しております。これらの知的財産は、当社の事業拡大において過去・現在・将来にわたり重要性は変わりません。この様な知的財産が広範囲にわたって保護できないこと、また違法に侵害されることにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)品質保証

 当社グループは品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。しかしながら、全ての製品に欠陥が無く将来に損失が発生しないという保証はありません。欠陥の内容によっては多額の追加コストの発生や当社グループの評価に影響を与え、それにより当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これらに対する取り組みとして、品質方針を世界各国の拠点に展開し、各グループ会社の品質管理のレベル向上に努めております。

 

 

 

(7)海外進出に存在するリスク

 当社グループは海外においても事業活動を行っており、その重要性は高まる傾向にあります。当社グループの海外展開は今後も継続していくことから、中長期的には以下のようなリスクが考えられます。

①予期しない法律または規制の変更

②不利な政治または経済要因

③人材の採用と確保の難しさ

④ストライキ等の労働争議

⑤テロ、戦争及びその他の要因による社会的混乱

これらに対する取り組みとして、カントリーリスクの検討を徹底し、事情に通じた現地人材の育成や適切な内部管理体制の構築を進めることで、リスクの顕在化に対応するようにしております。

 

(8)地震等の自然災害に係わる影響

 当社グループでは、生産を維持するため、計画的に工場はじめ各施設の保守、点検に努めておりますが、地震、風水害などで予想を超える災害が発生した場合には、これら施設に甚大な損害が生じ、それにより当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)投資有価証券の時価変動

 当社グループは、主として営業上の取引関係維持・強化のため、取引先の株式を中心に当連結会計年度末において投資有価証券を保有しておりますが、子会社株式及び関連会社株式以外の市場性を有するものについては全て時価にて評価されており、株式相場等の時価変動の影響を受けております。なお、その他有価証券について、時価又は実質価額が取得原価に比べて著しく下落した場合、回復の可能性を考慮のうえ減損処理を行うこととしております。それにより当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、米国では消費の落ち込みと景気の下振れリスクが懸念される中で経済は底堅く推移しております。欧州では堅調な雇用や物価上昇の鈍化にともない消費の回復が期待されております。一方、中国では不動産不況や消費の鈍化による景気の不透明感が増大し、アジア経済への影響も懸念されております。さらにウクライナ紛争とパレスチナでの軍事衝突の長期化により、各地域では依然として不透明な状況が続いており、世界経済の不確実性は増加しております。また、日本国内においては自動車生産の停滞による景気の踊り場を経て緩やかな回復へと推移しております。

 自動車業界におきましては、日本国内の自動車生産台数は前年同期比2.9%減の836万台、米国の自動車生産台数は前年同期比1.4%増の1,084万台、中国の自動車生産台数は前年同期比7.4%増の3,052万台となりました。

 当連結会計年度の経営成績は、主に北米・欧州において主要顧客の減産による影響、アジアでは主にインドネシア、ベトナムでの自動車市場低迷の影響により、販売が伸び悩む一方で、中国においては新規車種の生産開始が増加したこと等の影響により販売が前年比で伸長し、全体では円安による邦貨換算額の増加影響もあり、売上高は3,083億8千2百万円(前年同期比97億5千8百万円増、3.3%増)となりました。

 営業利益については、原価低減、生産性向上並びに経費削減等の合理化による収益の確保や、各グループ会社での販売価格改定を始めとした利益改善の取り組みを進めたことで、中国、欧州、日本の各地域では営業利益は増加したものの、北米地域での売上の伸び悩みと労務費の増加、アジア地域における主にインドネシア、ベトナムでの売上減少による影響もあり、3億6千5百万円(前年同期比26億1千5百万円減、87.8%減)となりました。

 経常利益は、主に受取配当金10億4千万円、受取利息9億1千7百万円、助成金収入5億1千5百万円並びに持分法による投資利益1億1千万円等を収益に計上したものの、支払利息4億5千2百万円、為替差損3億6千1百万円等を費用に計上したことにより、27億2千7百万円の経常利益(前年同期比26億円減、48.8%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、主に政策保有株式の売却により投資有価証券売却益48億9千1百万円、主に米国子会社での建物売却により固定資産売却益8億5千万円を特別利益に計上する一方で、特別損失で減損損失19億4千5百万円、貸倒引当金繰入額4億6千1百万円、インド子会社を中心に退職特別加算金1億3千8百万円を計上した影響等により、19億7千3百万円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期は29億9千1百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 設備投資は、当社の設備増強、韓国・中国子会社の生産設備増強を中心に、総額118億6千2百万円を実施いたしました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

ア.日本

 日本におきましては、殆どの顧客向け販売は前年と同水準で推移したものの、一部顧客の生産停止に伴う販売減少による影響もあり、売上高は561億4千6百万円(前年同期比3億3千3百万円減、0.6%減)となりました。営業利益は、原価低減と生産性向上、経費削減等の合理化による収益の確保に取り組んだ影響により、15億8千5百万円(前年同期比5千2百万円増、3.4%増)となりました。

イ.北米

 北米におきましては、主要顧客の減産により販売が伸び悩む一方で、円安による邦貨換算額の増加影響とメキシコ子会社の操業開始により、売上高は1,046億2千6百万円(前年同期比18億7千6百万円増、1.8%増)となりました。営業損益は、原価低減と生産性改善、価格戦略の見直し等に取り組んだものの、操業度の低下による影響と、増加した労務費及び経費の回収が不足し、38億5千2百万円の営業損失(前年同期は8億6千5百万円の営業利益)となりました。

 

 

ウ.中国

 中国におきましては、円安による為替影響はあったものの、顧客の増産並びに新規車種向け製品の生産立ち上げが増加した等の影響により、売上高は510億2千3百万円(前年同期比40億4千2百万円増、8.6%増)となりました。営業利益は、売上増加に伴う操業度の増加影響及び原価低減等の影響により、10億1千1百万円(前年同期は7億9千5百万円の営業損失)となりました。

エ.アジア

 アジアにおきましては、インドでは顧客への販売が堅調に推移した一方で、インドネシア、ベトナム、韓国を中心として販売が伸び悩みましたが、円安による為替影響等もあり、売上高は827億4千2百万円(前年同期比29億7千4百万円増、3.7%増)となりました。営業利益は、原価低減と生産性改善に取り組んだものの、販売が減速した影響から、32億8百万円(前年同期比3億5百万円減、8.7%減)となりました。

オ.欧州

 欧州におきましては、ハンガリー、イタリアでは主要顧客の生産減少の影響を受けた一方で、セルビア、チェコを中心に主要顧客の生産台数が伸びたこと、また円安による邦貨換算額の増加影響等もあり、売上高は290億5千9百万円(前年同期比7億7百万円増、2.5%増)となりました。営業利益は、売上増加に伴う操業度の増加影響及び原価低減等の影響により、4億4千9百万円(前年同期は4億6千1百万円の営業損失)となりました。

カ.南米

 南米におきましては、新規量産立ち上げによる生産台数の増加及び円安による邦貨換算額の増加影響等により、売上高は27億7百万円(前年同期比5億8千5百万円増、27.6%増)となりました。営業損益は、生産拡大に伴う操業度上昇による改善効果があったものの、外貨建て購入部材における為替影響を含む材料コストの増加等により、6千4百万円の営業損失(前年同期は1億7千1百万円の営業損失)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローの収入が118億1千3百万円、投資活動によるキャッシュ・フローの収入が4億4千5百万円、財務活動によるキャッシュ・フローの支出が45億2千2百万円となり、これらに現金及び現金同等物に係る換算差額8億1千3百万円を調整した結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度に比べ69億2千1百万円増加し、484億7千6百万円(前年同期比16.7%増)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、前年同期に比べ51億円(同30.2%)減少し、118億1千3百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益57億7千9百万円による増加、減価償却費102億5千2百万円による増加、売上債権の減少38億2千6百万円による増加、減損損失19億4千5百万円による増加の一方で、投資有価証券売却益48億9千1百万円による減少、仕入債務の減少25億8千1百万円による減少及び受取利息及び受取配当金19億5千8百万円による減少等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動の結果得られた資金は、4億4千5百万円(前年同期は113億5千3百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出213億8千9百万円、有形固定資産の取得による支出101億3千6百万円の一方で、定期預金の払戻による収入255億4千9百万円、投資有価証券の売却による収入49億8千2百万円、投資有価証券の償還による収入15億8百万円及び有形固定資産の売却による収入13億7千1百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動の結果支出した資金は、前年同期に比べ2億6千4百万円(同6.2%)増加し、45億2千2百万円となりました。これは主に、子会社の自己株式の取得による支出15億7千2百万円、配当金の支払額13億8千9百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年11月1日

至 2024年10月31日)

前年同期比(%)

日本 (百万円)

50,241

100.2

北米 (百万円)

94,168

99.5

中国 (百万円)

47,854

109.4

アジア(百万円)

80,609

105.5

欧州 (百万円)

28,401

103.0

南米 (百万円)

2,208

125.4

合計(百万円)

303,484

103.1

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は主として自動車部品業界で活動し、取引先である自動車業界、大手の自動車メーカーの生産ラインに同調して、製品の製造・販売を行っております。大手自動車メーカーより約3ヶ月前後の予約的発注指示を受け、その発注量の確定指示は、平均すると1ヶ月であります。また、グループでの生産効率を高めるため、長期受注予測に基づき一部見込み生産を行っております。

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

51,127

101.3

5,044

109.6

北米

104,845

101.4

7,076

105.2

中国

47,495

108.9

7,837

100.0

アジア

74,407

104.0

4,477

108.5

欧州

28,812

102.3

1,548

92.2

南米

2,626

120.4

179

68.9

合計

309,315

103.3

26,163

103.7

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年11月1日

至 2024年10月31日)

前年同期比(%)

日本 (百万円)

50,684

99.9

北米 (百万円)

104,496

101.8

中国 (百万円)

47,494

108.7

アジア(百万円)

74,055

103.9

欧州 (百万円)

28,944

102.7

南米 (百万円)

2,707

127.6

合計(百万円)

308,382

103.3

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年11月1日

至 2023年10月31日)

当連結会計年度

(自 2023年11月1日

至 2024年10月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

現代自動車株式会社

33,977

11.4

36,258

11.8

Stellantis N.V.

39,696

13.3

35,765

11.6

起亜株式会社

33,125

11.1

35,251

11.4

トヨタ自動車株式会社

25,276

8.5

32,445

10.5

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

ア.財政状態の分析

資産

 当連結会計年度末における流動資産は1,466億5千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ50億1千1百万円減少いたしました。これは主に現金及び預金が38億6千4百万円増加した一方で、売掛金が31億8百万円、有価証券が26億5千5百万円、原材料及び貯蔵品が13億9千5百万円それぞれ減少したことによるものであります。固定資産は1,235億9千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ57億2千万円減少いたしました。これは主に投資有価証券が43億8千3百万円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は、2,702億6千万円となり、前連結会計年度末に比べ107億3千3百万円減少いたしました。

負債

 当連結会計年度末における流動負債は696億8千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ43億3千9百万円減少いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が33億1千万円、流動負債の「その他」が10億8千2百万円、短期借入金が5億1千6百万円それぞれ減少したことによるものであります。固定負債は159億8千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億9千8百万円増加いたしました。これは主に繰延税金負債が1億1千9百万円増加したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、856億7千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ41億4千1百万円減少いたしました。

純資産

 当連結会計年度末における純資産合計は1,845億8千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ65億9千2百万円減少いたしました。これは主にその他有価証券評価差額金が29億7百万円、為替換算調整勘定が21億1千3百万円減少したことによるものであります。

イ.経営成績の分析

 当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高が前連結会計年度に比べ3.3%増加の3,083億8千2百万円、経常利益が48.8%減少の27億2千7百万円、親会社株主に帰属する当期純損益は19億7千3百万円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期は29億9千1百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。

売上高

 当連結会計年度の売上高は3,083億8千2百万円でありますが、グループ全体の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。これを事業の部門別に見ますと、コントロールケーブルは日本・中国を中心に減少し、前連結会計年度に比べ0.8%減少の771億5千2百万円となりました。ウインドレギュレータの販売は、北米・欧州・アジア・中国・南米など総じて増加し、8.0%増加の868億7千8百万円となり、ドアモジュールはアジア・北米を中心に減少し、6.9%減少の1,067億5千1百万円となりました。パワーリフトゲートの販売は、日本・中国・アジア及び北米において増加し、114.6%増加の225億5千8百万円となり、その他部門はアジア・欧州地域で減少し、1.3%減少の150億4千1百万円となりました。

営業損益

 当連結会計年度の営業損益は、原価低減と生産性改善、経費削減等の合理化による収益の確保に努めたものの、材料コスト及び調達コストの上昇、輸送コストの高止まり、生産能力増強に伴う設備償却費の増加等の影響等により、前連結会計年度に比べ87.8%減少の3億6千5百万円の営業利益となりました。

営業外損益

 当連結会計年度の営業外損益は、主として受取配当金10億4千万円(前連結会計年度は7億1千1百万円の受取配当金)、受取利息9億1千7百万円(前連結会計年度は7億4千1百万円の受取利息)、持分法による投資利益1億1千万円(前連結会計年度は6億円の持分法による投資利益)となったことにより、前連結会計年度(23億4千6百万円の利益(純額))に比べ増加し23億6千2百万円の利益(純額)となりました。

特別損益

 当連結会計年度の特別損益は、主として48億9千1百万円の投資有価証券売却益並びに8億5千万円の固定資産売却益が発生した一方で、前連結会計年度では45億8千2百万円の減損損失が発生したのに対して、当連結会計年度では19億4千5百万円の減損損失となり、前連結会計年度の65億3千3百万円の損失(純額)に比べ増加し30億5千1百万円の利益(純額)となりました。

ウ.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について

 当社グループにおける経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、社業の健全性を示す「自己資本」並びに「営業利益」、株主の皆様にとっての収益性を示す「ROE(自己資本利益率)」と配当の原資となる「親会社株主に帰属する当期純利益」を定めております。

 当連結会計年度において、「ROE(自己資本利益率)」は、1.1%となりました。前連結会計年度においては、親会社株主に帰属する当期純損失が計上されているため、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移(1)連結経営指標」に記載しておりません。引き続きこれらの指標について、改善されるよう取り組んでまいります。

 その他の指標等についての分析・検討内容は、「自己資本」については前項「ア.財政状態の分析 純資産」に記載のとおりであり、「営業利益」並びに「親会社株主に帰属する当期純利益」については、前項「イ.経営成績の分析」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、運転資金及び設備投資資金は、主に自己資金を充当しております。資金については、当社においては金融機関との間で当座貸越契約を締結しており、また一部の海外子会社については、資金需要への機動的な対応を目的とし、当社による債務保証を実施した上で、金融機関からの借入を行っております。これらの方策により、必要とされる資金水準を満たす十分な流動性を保持していると考えております。今後の重要な資本的支出の予定及びその資金の調達につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設」に記載のとおりであります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、エンジニアリング会社としてさらに研究開発体制の強化拡充を図り、環境、安全をキーワードに多様なユーザーニーズに対応し、自動車分野のみならず医療・住宅関連機器等の非自動車分野に永年にわたって培った技術を応用すべく活動しております。

 当社グループの研究開発は、主に日本、北米、中国、アジア、欧州の研究開発拠点において、新素材、新技術、新製品の開発を中心に行っております。なお、当連結会計年度における研究開発費は、総額で4,507百万円であります。

 

ア.日本

 日本における製品開発活動は、システム製品開発グループ、電子制御センター、宇都宮技術センター、ドアシステム開発グループ、ケーブル・システム設計グループが担当し、グローバル車種を含めた自動車関連製品の先行開発および量産開発を行っております。また、新素材・新工法の開発につきましては、研究開発室が継続的に研究を進めております。医療関連製品・機器につきましては、医療機器事業部が担当し、同様の開発を行っております。さらに産業機器、住宅関連ならびに福祉関連などの製品につきましては、産業機器事業部が開発担当しております。

 すでに市場へ供給している既存の製品群につきましては、長期戦略を策定し、その戦略に基づいた新技術・新製品の開発を進めてまいります。

 当社グループのDNAであるケーブルに関しましては、さらなるモノづくりの深化と標準化を進め、揺るぎない魅力ある製品開発を進めております。

 また、ウィンドレギュレータに関しましては、電動化に伴う車両生産方法の変化に柔軟に対応するモジュール・パッケージ化された製品の開発を進めております。

 さらに、システム製品に関しましては、「製品の開発」からクルマを取り巻く環境の変化に追従し、かつ頭脳となるECUと組合せたシステム全体の開発・生産を担える「システム・サプライヤー」への変革を行い、より魅力的でより利便性の高い製品の開発を進めてまいります。

 医療機器開発につきましては、自社ブランド人工透析用人工血管「ハイレックスグラフト」をリニューアルし、株式会社ハイレックスメディカルより販売を開始しております。海外展開に関しましては、新たにマイクロカテーテル2種、ガイドワイヤ1種が合計2ヶ国にて承認されました。

 株式会社サンメディカル技術研究所の補助人工心臓に関しましては、合併症対策を強化した、より小型の次世代人工心臓設計が完了し、薬事承認に向けたデータの取得を開始いたしました。さらに未来を見据え、次々世代の開発にも進めてまいります。

 日本における研究開発費は993百万円であります。

 

 

イ.北米

 北米におきましては、HI-LEX CONTROLS INC.のオートモーティブセンターが担当し、主に北米の自動車関連業界の顧客を対象として、新技術、新製品の開発を行っております。

 北米における研究開発費は649百万円であります。

 

ウ.中国

 中国におきましては、重慶海徳世拉索系統集団有限公司が、主に中国の自動車関連業界の顧客を対象として、新技術、新製品の開発を行っております。

 中国における研究開発費は1,454百万円であります。

 

エ.アジア

 アジアにおきましては、大同ハイレックス株式会社及び大同ドア株式会社が、主に自動車関連のドアモジュール製品を中心としたシステム製品の新技術、新製品の開発を行っております。

 アジアにおける研究開発費は1,162百万円であります。

 

オ.欧州

 欧州におきましては、HI-LEX EUROPE GMBHが、主に欧州の自動車関連業界の顧客を対象として、新技術、新製品の開発を行っております。

 欧州における研究開発費は247百万円であります。