当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「『教える』をなめらかに」をミッションとして掲げております。このミッションに基づき、学習塾を中心とする教育事業者等の講師等が煩雑なバックオフィス業務に追われることなく本来の目的である「教える」に専念できるプラットフォーム「Comiru」の開発・運営を行っております。なお、当社は「『教える』をなめらかに」というミッションの実現に向けて、人員を増強して組織体制を整備するとともに、情報管理体制を強化し、「Comiru」の安全性を担保する仕組みの改善を図ることで、同分野におけるサービス強化、新規事業の開発等に取り組んでいく方針であります。
(2)経営環境と経営戦略
① 経営環境
教育業界を取り巻く経営環境は、少子化による学齢人口の減少に伴い、市場全体が伸び悩むという厳しい状況にあります。そのため、教育業界では同業者間での生徒数確保に向けた競争が激化していくことが予測され、より一層の業務効率化と経営上の意思決定の迅速化が必要となり、当社事業へのニーズは高まっていると認識しております。
国立教育政策研究所が2019年12月に発表した調査によると、学校教育の授業におけるICT(注1)の活用率はOECD諸国の中で最下位と極めて活用率が低い実態が明らかになりました。また、新型コロナウイルス感染症の流行によりパソコンやタブレットを利用したオンラインでの学習が広がり、さらに政府が推進するGIGAスクール構想により教育業界におけるICT教材導入の準備が進むなど、当業界をとりまく経営環境は大きく変化しております。このような状況の中、株式会社船井総合研究所が2021年10月に行った調査では、民間教育の業務管理市場のポテンシャル(ユーザーがICTを使用した場合の最大市場規模。以下同じ。)が500億円程度と算出され、2026年以降の民間教育におけるICT市場のポテンシャルが2,000億円程度、民間教育及び学校教育におけるICT市場全体の市場のポテンシャルが3,500億円を超えると算出されています。また、生徒数1,000名以下の中小塾等におけるバックオフィス業務はほぼシステムを利用しておらず、エクセルを活用したアナログ作業が中心であることにより、今後の普及率上昇に伴う高い成長が見込まれます。
なお、学習塾以外の教育業界においても、同様の傾向がみられるため、当社は、クラウド型学習塾向け業務管理システムの市場におけるリーディングカンパニー(注2)として、市場を引き続き牽引することが重要であると認識しております。
このような事業環境の中、当社は、学習塾を中心とする教育事業者向けのバックオフィス業務管理システム「Comiru」(売上高の約95%)を直販中心に展開しており、現在学習塾で多く導入して頂いております(売上高の95%以上)が、その他教育事業者への導入も増えている状況であります。また、現状他のクラウド型学習塾向け業務管理システムに比べ提供している機能が多く、利用価格も相対的に安い状況と認識しております。
今後の更なる成長に向けては、業務提携や新サービスの開発等、新領域への積極的な展開を行っていく予定です。
② 経営戦略
a. 顧客基盤の更なる拡大
当社の当事業年度末における有料契約企業数は1,326社(前事業年度末は1,118社)であり、創業以来順調に拡大し続けております。創業当初は業界展示会への出展や業界紙への広告掲載等による顧客企業の獲得が中心でしたが、マーケティングチームやインサイドセールスチームの立ち上げによるWebマーケティングの強化、自社オウンドメディア(注3)の開設やセミナー開催の強化、教材販売事業者との連携等、顧客企業へのタッチポイントを拡充してきました。さらに、既存顧客企業からの紹介が増加したことにより、顧客基盤が拡大しました。
また、主要顧客である学習塾以外においても、英会話教室、音楽教室、プロミング教室等習い事全般の顧客事例が増え、今後も教育業界へのタッチポイントの深化、多様化を進めることで、顧客基盤の更なる拡大を進めます。
(「Comiru」サービス有料契約企業数の当社分類別内訳) (単位:社)
|
分類名 |
生徒規模数 (注) |
2021年10月期 |
2022年10月期 |
2023年10月期 |
|||
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
||||
|
大手塾 |
5,000人以上 |
9 |
12 |
12 |
10 |
11 |
12 |
|
中堅塾 |
300~5,000人 |
51 |
66 |
66 |
74 |
76 |
77 |
|
個人塾 |
300人未満 |
875 |
1,028 |
1,022 |
1,083 |
1,135 |
1,156 |
|
その他 習い事 |
- |
9 |
12 |
20 |
45 |
66 |
81 |
|
合計 |
944 |
1,118 |
1,120 |
1,212 |
1,288 |
1,326 |
|
※当社は、生徒規模に応じて、学習塾を大手塾、中堅塾、個人塾と分類しております。
b. 顧客価値の最大化
当社は継続的に新規サービスをリリースしてきたほか、既存サービスの機能改善などにより、顧客価値の向上に努めました。また、大手教育事業者等においても採用しやすいサービスの投入やAPIの拡充により、顧客企業のARPUの上昇を実現しました。
今後は、従来注力してきたバックオフィス業務と保護者コミュニケーション周辺のサービスに加えて、教育業界全体の業務の効率化と可視化をより多くの範囲で実現し、システムパートナーの領域を超えて、顧客企業の経営課題を解決する総合プラットフォーマーとしての価値を高め、持続的な成長と安定的な収益を実現していきます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、より多くの教育事業者等のバックオフィスの業務効率化に寄与し、講師等の「教える時間」を捻出することで、生徒の学習効果向上及び満足度向上、ひいては教育事業者等の企業価値最大化に貢献する思いであります。そのため、有料契約企業数、課金生徒ID数、ARPU、ARR、課金生徒ID単価を重要な経営指標として設定し、企業規模の拡大、企業価値の向上を目指しております。
また、当社の持続的な成長と安定的な収益を実現するために、投資効率を計る指標として広告宣伝費/売上高比率、顧客の解約率、及び売上総利益と営業利益率を重要な経営指標として確認しております。
|
項目 |
2021年10月期 |
2022年10月期 |
2023年10月期 |
|||
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
|||
|
有料契約企業数(社) |
944 |
1,118 |
1,120 |
1,212 |
1,288 |
1,326 |
|
課金生徒ID数(千ID) |
219 |
330 |
344 |
308 |
331 |
340 |
|
ARPU(円) |
44,821 |
52,886 |
55,204 |
49,781 |
49,986 |
49,937 |
|
ARR(千円) |
507,736 |
709,519 |
741,945 |
724,012 |
772,589 |
794,601 |
|
課金生徒ID単価(円) |
192 |
179 |
179 |
196 |
194 |
195 |
|
広告宣伝費/売上高比率(%) |
13.2 |
5.2 |
5.3 |
4.9 |
6.0 |
5.6 |
|
顧客の解約率(%) |
0.5 |
0.5 |
0.5 |
0.5 |
0.5 |
0.4 |
|
売上総利益(千円) |
301,727 |
476,244 |
145,877 |
300,233 |
448,151 |
610,612 |
|
営業利益率(%) |
△40.8 |
△3.1 |
4.4 |
5.6 |
3.2 |
4.5 |
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 組織体制の整備
当社の継続的な事業成長の実現に向けて、多様なバックグラウンドをもった優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することが重要であると認識しております。積極的な採用活動を推進していく一方で、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築やカルチャーの推進等を進めてまいります。
② 情報管理体制の強化
当社は、提供するサービスに関連して多数の顧客企業の機密情報や生徒情報、保護者情報等の個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため、情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。今後も社内教育・研修の実施のほか、システムの強化・整備を実施してまいります。
③ 新規事業の展開
現在、当社の収益の大半が「Comiru」サービスから成り立っております。今後も継続的な事業成長の実現に向けて、既存サービスの伸長に加えて、大手学習塾向けの「ComiruPRO」の導入と基幹システムの有償開発をセットにしたパッケージサービスの強化、「ComiruAir」、「ComiruHR」の販売強化、デジタル教材や授業・学習支援ツール等の教育コンテンツを提供する事業者との連携等により、教育事業者等の企業価値最大化に寄与する新規事業の展開を積極的に検討してまいります。
④ 利益及びキャッシュ・フローの創出
当社は、事業の拡大に伴い、ストック収益が順調に積み上がることで、先行投資として計上される開発費用や顧客企業の獲得費用が売上高に占める割合は低下傾向にあり、投資効率を計る指標として広告宣伝費/売上高比率、顧客の解約率、売上総利益及び営業利益率が重要な指標となるため、当社ではこれらを参考としつつ、顧客獲得活動における投資判断をしてまいりました。当該指標を満たす場合に積極的に投資していくことが、中長期的に利益及びキャッシュ・フローの最大化に寄与するものと考えております。
今後も、投資効率指標である当該指標に配慮しながら、サービス強化のための開発活動や、認知度向上のためのマーケティング活動への投資を通じて、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。
(注)1.「ICT」とは、「Information and Communication Technology」の略称で、情報・通信に関する技術の総称です。
2.デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社が発行した「ミックITリポート2021年2月号 高成長続くクラウド型学習塾向け業務管理システムの市場動向」において、当社「Comiru」が、クラウド型学習塾向け業務管理システムにおける導入教室数No.1を獲得しました。
3.「オウンドメディア」とは、広報誌及びパンフレット、インターネットのウェブサイト・ブログ等のメディアのうち、企業や組織自らが管理・運営し、情報を発信するメディアのことであります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社にとってのサステナビリティとは、事業を通じて社会問題の解決に寄与することであり、当社が安定し事業を継続することが、持続可能な社会の実現に寄与するものと考えております。
当社は、中長期的な企業価値向上の観点から、サステナビリティを巡る課題への対応は、経営の重要課題であると認識しており、代表取締役が最終責任を有しております。
また、取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、サステナビリティに関する課題が発生した際には適宜各部署において協議を行い、協議内容を取締役会へ報告すると共に、報告を受けた取締役会にて課題を解決する体制となっております。
(2)戦略
当社は、「『教える』をなめらかに」をミッションのもと、企業価値の永続的な向上を目指しております。また、人的資本への投資は今後の持続的な成長において重要課題であると認識しております。そのため、専門性の高い人材の採用、並びに人材の育成が不可欠であり、多様な人材が仕事と家庭を両立し、最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでおります。また、全ての従業員に対し、自己研鑽を重ね、高い専門性を身に付けることや自律的に行動していくことを求めております。
① 多様な人材の採用、並びに育成
多様性の確保における具体的な数値目標は定めておりませんが、性別や国籍などは問わず高度なスキルや実践経験を有するキャリア採用を積極的に行っております。
また、採用した従業員の可能性を追求し、その成長を組織として最大限活用するために、従業員と企業が共に成長する環境とカルチャーづくりに注力しております。具体的には、全社の共通価値観を「子供たちが憧れるカッコいい大人になろう」と定め、社員研修や人事制度に組み込むことで、企業カルチャーに即した教育と育成を図っております。
さらには、各部門の目標にあわせた個人目標を上期・下期にそれぞれ設定する目標管理制度を導入し、人物主義で各従業員の能力に基づいた人事評価を行うことで、個人の自主的な目標設定と、当該目標達成に向けた創意工夫により、能力開発につながるものと考えております。
② 社内環境整備
性別や年齢に関わらず、多種多様な個性や価値観をもつすべての従業員が働きがいを感じながら、個人のライフスタイルやそのライフサイクルに合わせた働き方が出来る環境の整備に取り組んでおります。具体的には、リモート勤務の導入、フレックスタイム制の採用、リフレッシュ休暇、学校行事参加休暇、ビザ更新休暇や育児休暇取得をはじめとした各種休暇制度の導入と取得奨励等に取り組んでおります。これらの休暇制度と合わせて、書籍購入制度、セミナー参加費用支援制度、社内講師制度や語学検定支援制度を導入し、自己研鑽に取り組める環境を整備しております。
また、あらゆるハラスメントを防止するため全従業員を対象とした研修や、衛生委員会を通じた各種情報発信など、すべての従業員が安全で働きやすい環境づくりに取り組んでおります。
(3)リスク管理
当社は、不測の事態や危機の発生に備えて「リスク管理規程」を定め、全社的なリスク管理の審議機関としてコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、リスクを網羅的に把握・管理する体制を構築しております。コンプライアンス・リスク管理委員会は、取締役CFOを委員長として四半期ごとに1回開催しており、サステナビリティへの対応を含め、新規リスクの確認やリスク評価を行い、その中で重大と判断されたリスクについては、取締役会へ報告しております。
(4)指標及び目標
当社は、優秀な人材の確保と生産性の向上を目的として、多様性を尊重した人材の採用と育成、並びに働く従業員が高いモチベーションを持ち、働きがいを感じることができるような社内環境の整備に取り組んでおりますが、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標を設定しておりません。
サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する当社の実績を長期的に評価、管理するための指標および目標については、人材育成および社内環境整備に関する方針を含め、引き続き検討してまいりますが、今後も人材育成方針の見直しや策定を検討し、社内環境の整備を引き続き推進してまいります。
当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性の時期につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び万一発生した場合でも業績及び財務状況に与える影響を最小限にすべく対応に努める方針であります。
当社のリスク管理体制に関しましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
(1)業界環境に関するリスク
① EdTech(注1)市場について(発生可能性:中/影響度:中)
近年、IT技術の発展やペーパーレス化の流れ等により、教育業界におけるEdTechのニーズは高まりを見せております(注2)。今後もスマートフォンやタブレット端末の普及により、EdTechに関するユーザーの需要は活発化していくことが予想されます。しかしながら、これらの市場のニーズや成長が大きく鈍化し、もしくは縮小した場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、サービス強化や新規事業の開発等に取り組むことで、市場変化の影響を緩和しています。
(注)1.「EdTech(エドテック)」とは、「EducationとTechnology」から成る造語で、教育とIT技術を融合させてイノベーションを生み出すビジネス分野です。例として、インターネットなどのオンラインシステムを活用した教育サービスが挙げられます。
2.出典:経済産業省「未来の教室」、経済産業省 中小企業庁「学習塾業に係る経営力向上に関する指針(2019年4月1日付)」
② インターネット関連事業について(発生可能性:低/影響度:中)
当社は、EdTech関連事業を主たる事業対象としているため、当社事業の継続的な拡大発展のためには、更なるインターネット環境の整備、インターネットの利用拡大が必要と考えております。しかしながら、インターネットの利用等に関する新たな規制の導入や技術革新、その他予期せぬ要因によって、今後の利用拡大に大きな変化が生じた場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、法改正などの早期情報収集、市場動向のモニタリングなどを行っております。
③ 少子化による影響について(発生可能性:中/影響度:中)
教育業界は、長期にわたる出生率低下に伴う少子化により、学齢人口の減少という問題に直面しております。少子化による影響や、子どもにかかる教育費が増加傾向であることも相まって、教育業界では同業間での生徒数確保に向けた競争が激化していくことが予想されます。
このような状況の下、当社は、当社のサービスを使って教育サービス展開される方等には、その経営に成功して頂くことを目指して事業展開を進める所存でありますが、今後、少子化が急速に進行し、教育市場全体が著しく縮小した場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、顧客を学習塾に限定せず、講師と生徒という構造ができる顧客をターゲットとすることで、少子化の影響を緩和しています。
(2)事業に関するリスク
① 他社との競合について(発生可能性:中/影響度:中)
当社は、「Comiru」サービスをはじめとする特色あるサービスの提供や機能の強化、サービスラインナップの充実、学習塾や学校法人に対する経営支援体制の強化等に継続的に取り組み、競争力の向上を図っております。しかしながら、当社と同様にEdTechを提供している企業や新規参入企業との競争激化による顧客の流出やコストの増加等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、アジャイル手法による開発体制を維持継続して顧客ニーズに迅速に対応することにより、リスクの軽減を図っております。
② 他社との業務提携について(発生可能性:中/影響度:中)
当社では、教育コンテンツの提供企業との業務提携等を通じた事業の拡大に取り組んでおります。当社と提携先が持つコンテンツや事業運営ノウハウ等を融合することにより、大きなシナジー効果を発揮することを目的としておりますが、当初見込んだ効果が発揮されない場合、またこれらの提携が解消された場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。
当社では、実施した施策の効果検証や継続的な提携先模索により、リスクの軽減を図っております。
③ 技術革新への対応について(発生可能性:低/影響度:中)
当社が事業を展開するEdTech業界においては、新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われております。これらの変化に対応するため、当社は、開発スタッフの採用・育成や最先端の技術、知見、ノウハウの取得に注力しております。しかしながら、かかる知見やノウハウの獲得に困難が生じた場合、また技術革新に対する当社の対応が遅れた場合には、当社の競争力が低下する可能性があります。また、新技術への対応のために追加的なシステム投資、人件費等の支出が拡大する可能性があります。このような場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、国や教育委員会等による規制に関する変更により、当社のサービスについて重大な修正を要し、又は販売が延期若しくは中止となる場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、急速な技術革新に対応すべく優秀な技術者の採用・育成等に積極的に取り組むほか、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築することにより、顧客ニーズの変化や規制の変更に迅速に対応できるよう努めております。
④ 新規ユーザー企業の獲得について(発生可能性:低/影響度:大)
当社サービスの教育事業者等における導入教室数及び生徒等の利用ID数は、広告宣伝活動や営業活動等により拡大傾向にあります。しかしながら、教育事業者等における当社サービスの導入が進まないことにより、新規獲得教室数や利用予定ID数が計画を下回る場合等には、当社の事業及び業績に影響を与え、赤字が継続する可能性があります。なお、今後もユーザー数の拡大を目的としたマーケティング活動において、LTV/CAC(注1)やCACの回収期間等(注2)に配慮しながら、ユーザー獲得活動を推進してまいります。
当社では、マーケティング部門が常に広告市況や新たな広告手法のリサーチに取り組んでおります。
(注)1.LTV(Lifetime Valueの略で顧客生涯価値)とCAC(Customer Acquisition Costの略で顧客獲得単価)の比率で、マーケティング活動の投資効率性を表しております。なお、当事業年度におけるLTV/CACは10.1倍(各前月の月額利用料合計に占める解約に伴い減少した月額利用料合計の割合として算出した解約率を使用して算出)です。
2.CACが顧客の利用料等から回収できる期間で、マーケティング活動の投資効率性を表しております。なお、当事業年度におけるCACの回収期間は14.0ヶ月です。
⑤ 既存ユーザー企業の継続率及び単価向上について(発生可能性:低/影響度:大)
当社のビジネスモデルは、サブスクリプション型のリカーリングモデルが中心であることから、当社の継続的な成長には、新規教育事業者等の獲得のみならず、既存教育事業者等の維持及び単価向上が重要と考えております。
既存教育事業者等の維持については、その継続率が非常に重要な要素であり、機能の追加開発やサポートの充実により、継続率の維持・向上を図っております。予算及び経営計画には、実績を基に一定の解約率を踏まえた継続率を見込んでおりますが、当社のサービスの魅力の低下、競合他社に対する競争力の低下、追加機能やサポートに対する満足度の低下等により、当社の想定を大幅に下回る継続率となる可能性があります。
単価向上については、当社は、教育事業者等当たりの利用ID数の増加によるARPUの増加、及び複数関連サービスの提供によるアップセルやクロスセルを促進する戦略をとっております。しかしながら、既存教育事業者等の事業が成長しない、中堅・大手規模の教育事業者等の獲得が奏功しない、又は当社のサービスが顧客のニーズに合致しないこと等により、想定した顧客単価の向上が実現しない可能性があります。
これらの結果、当社の事業及び業績に影響を与え、赤字が継続する可能性があります。
当社では、カスタマーサクセス部門の人員を増員し、顧客満足度を高めることでサービスの向上に努めてまいります。
⑥ 特定事業への依存について(発生可能性:低/影響度:大)
現在、当社の収益は、主力サービスである「Comiru」等のSaaS型サービスによる売上が大部分を占めている状況であるため、当社は、多角的観点から新たな収益源を常に模索し、教育事業者等へ提供可能なサービスの範囲の拡大に取り組んでまいります。例えば、学習塾への経営コンサルティングや教育事業者等の備品共同調達等のサービス拡充はまだ初期段階にあります。しかしながら、当該サービスにおいて収益化が進まない場合や当該サービスに関係する法規制の適用を新たに受ける場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、「Comiru」サービスの付加価値向上を図るのはもちろんのこと、教育業界と関連のあるサービス提供者や専門家との協力や業務提携を拡充してまいります。
⑦ 四半期ごとの収益変動について(発生可能性:中/影響度:中)
当社の収益は顧客である学習塾運営会社や学校法人等の法人顧客の講師数及び生徒数に依拠しており、当該顧客の生徒募集を行うタイミングに影響される傾向にあるため、売上高及び利益がそれらの時期に集中する可能性があります。現状は、事業拡大に伴い収益への四半期ごとの偏重はしておりませんが、当該顧客は、通常授業(スポット的な講座や模試を含む。)の他に、春・夏・冬の講習会及び夏期合宿、正月特訓を行っており、通常授業のみ実施する月に比べ、講習会、夏期合宿、正月特訓が実施される月の生徒数が多くなり、又、各講習会が実施される時期に重点をおいて生徒募集が行われているため、収益の基礎となる生徒数は4月から月を追うごとに増加し、1月にピークを迎えるという推移を示す傾向にあり、今後の事業成長及び顧客獲得状況、あるいは当該顧客の生徒募集時期や講習のタイミング等に変更が生じる場合には、当社収益計上時期に偏重が生じる可能性があります。
当社では、新規事業の開発等に取り組むことで収益時期を通期で平準化することにより、リスクの軽減を図っております。
⑧ 人材の確保について(発生可能性:中/影響度:中)
当社は、今後の更なる事業拡大を推進する上で優秀な人材の確保及びその人材の育成が重要であると認識しており、適切な時期を見定めながら新卒や中途採用活動を実施し、また、採用した人材のモチベーションを向上させる人事諸制度の構築や教育の実施を進めております。しかしながら、人材の新規採用や育成が予定通りに進まない場合等が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社は、今後も事業規模の拡大に応じて、専門技術や知識を有する優秀な人材の中途採用に努めるとともに、福利厚生制度の拡充や労働環境の整備など、従業員の働きがいを向上させる取り組みを強化していくことにより、リスクの軽減を図っております。
⑨ カントリーリスクについて(発生可能性:中/影響度:中)
当社では教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業の原価低減策のひとつとして、プログラミング設計、コーディングを中華人民共和国及び台湾に居住する個人に対して業務を委託しております。現在は、委託先との関係は良好であり、今後も取引を継続してまいります。また、こうした海外への業務委託においては、コミュニケーションを密にして情報収集に努める等トラブルを回避するための措置を講じておりますが、予期せぬ法律又は規制の変更及びその解釈、現地の委託先の商取引慣行、自然災害及び重大な感染症の流行等による不測の事態、外交関係、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しております。そのため、予期せぬ契約の終了や契約内容の変更が行われないよう、委託先と良好な関係の維持に努めておりますが、当社にとって不利な内容で契約の改定が行われた場合、又は予期せぬ事情により契約が終了した場合には、当社サービスの品質や開発に遅れが生じ、円滑に提供できなくなり、当社の事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。
当社では、プログラミング設計やコーディングを担当する人員の日本国内での採用を強化することにより、リスクの軽減を図っております。
⑩ システム障害について(発生可能性:中/影響度:大)
当社が運営するサービスは、PC、スマートフォン、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、自然災害や事故(社内外の人的要因によるものを含む)等によって通信ネットワークが切断された場合には、当社の事業及び業績は影響を受ける可能性があります。
また、当社のサービスは、外部クラウド・アプリケーション・プラットフォーム(株式会社セールスフォース・ドットコムが提供する「Heroku」サービス(以下「Heroku」という。))を活用して提供しており、Herokuの安定的な稼働が当社の事業運営上、重要な事項となっております。当社ではHerokuが継続的に稼働しているかを常時監視しており、障害の発生又はその予兆を検知した場合には、当社の役職員による早急に復旧するための体制を整えております。
しかしながら、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害等や当社の想定していない事象の発生によりHerokuが停止した場合や、コンピュータ・ウイルスやクラッカーの侵入その他の不具合等によりシステム障害が生じた場合、又は株式会社セールスフォース・ドットコムとの契約が解除される等によりHerokuの利用が継続できなくなった場合には、顧客への損害の発生、当社の追加費用負担、又は当社のブランドの毀損などにより、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、「Comiru」サービスを安定的に運用するためのシステム運用管理体制を整備し、システムの稼働状況の監視、バックアップ、クラウドサーバーの冗長化を実施して、障害発生の未然防止と障害発生時の影響最小化することのより、リスクの軽減を図っております。
⑪ 自然災害等について(発生可能性:低/影響度:大)
当社の事業は、インターネットや第三者が提供するクラウドサーバー等に依存しています。そのため、これらに被害をもたらすおそれのある自然災害等が発生した場合には、当社は事業を継続することができない等の支障が生じ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、当該事象が発生した場合には、適切な対応に努めますが、事業への影響を完全に防止または軽減できない可能性があり、結果として、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、日頃よりシステムの安定稼動の維持に努めるとともに、「Comiru」サービスの提供を担うシステムについては、バックアップシステムを確保し、定期的な保守点検を実行しております。
⑫ 先行投資と赤字計上について(発生可能性:低/影響度:中)
当社が提供する教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業は、エンジニア人員の採用や開発にかかる外部協力者の業務委託費等の先行投資を必要とする事業であり、結果として、当社業績において営業赤字を継続して計上しております。今後もより多くの実績拡大を目指して、エンジニア人員等の優秀な人材の採用・育成を行ってまいりますが、かかる投資に際しては計画的に行うとともに、導入実績の増加、売上高の拡大及び収益性の向上に向けた取組みを行っていく方針であります。しかしながら、想定通りの導入実績の獲得が進まない場合等には、引き続き営業赤字の計上が継続する等、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、定期的な事業計画の進捗確認を実施し、当社業績への影響の逓減を図ってまいります。
(3)法的規制に関するリスク
① 法的規制について(発生可能性:低/影響度:中)
当社事業は、「個人情報の保護に関する法律」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、「電気通信事業法」、「特定商取引法」等による法的規制を受けております。当社は、社内の管理体制の構築等によりこれら法令を遵守する体制を整備・強化しておりますが、不測の事態により、万が一当該規制等に抵触しているとして何らかの行政処分等を受けた場合、また、今後これらの法令等が強化され、もしくは新たな法令等が定められ当社の事業が制約を受ける場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、利用規約や契約等において、利用者が損害を受けた場合であっても、当社に故意又は重過失がある場合や当社の責に帰すべき事由がある場合を除き、損害賠償の責を負わない旨を定めておりますが、オペレーショナル・リスクの顕在化を含むなんらかの要因により訴訟が提起された場合には、訴訟費用が多額にのぼる可能性があるとともに、訴訟において当社に不利な判決等がなされた場合には、訴訟に伴う損害賠償のみならず、社会的な信用の低下等を通じて、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社では、関連する法令等の制定・改正についての情報の事前収集を実施するとともに、コンプライアンス徹底に向けて全社的な意識強化と定着に努めてまいります。
② 個人情報の管理について(発生可能性:中/影響度:大)
当社は、当社のサービスを利用する生徒、取引先、従業員、株主等に関わる個人情報を有しております。
当社は、個人情報の外部漏洩、改竄等の防止のため、個人情報の厳正な管理を事業運営上の重要課題と位置付けており、個人情報保護規程、情報管理規程など、重要な情報資産の保護に関する規程やマニュアル等を整備運用するとともに、個人情報・機密事項を格納するファイルへの適切なアクセス権限の付与や、パソコンと外部記憶媒体の接続を物理的に不可とするなど、重要な情報資産の管理について組織的かつ技術的、物理的な安全管理措置を講じております。また、すべての役員・従業員を対象に情報セキュリティ教育を実施するとともに「機密保持に関する誓約書」や「個人情報に関する誓約書」を徴求するなど、個人情報を含む重要な情報資産の保護並びに外部漏洩の未然防止に努めております。加えて、当社では個人情報管理に関してはプライバシーマーク(Pマーク)を取得・更新し、厳重なる社内管理に努めております。
しかしながら、情報管理の過程等において、外部からの不正アクセス等を防止できず、不測の事態により個人情報等を含む重要な情報が社外に漏洩した場合、風評被害や社会的信用の失墜により、当社の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、情報漏洩に起因して第三者に何らかの損害が発生した場合には、当社が損害賠償請求の対象となる可能性もあります。
当社では、情報セキュリティに関連する各種規程類を整備するとともに、外部からの不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入防止等についてシステム的な対策を講じて情報セキュリティ事故の未然防止に努めることにより、リスクの軽減を図っております。
また、個人情報保護法への対応を推進し、プライバシーマークを取得して個人情報マネジメントシステムに則り、安全管理に努めることにより、リスクの軽減を図っております。
③ 知的財産権に関するリスク(発生可能性:低/影響度:中)
当社は、運営するコンテンツ及びサービスに関する知的財産権の獲得に努めております。また、第三者の知的財産権を侵害しないよう、調査可能な範囲で対応を行っております。しかしながら、当社の事業分野で当社の認識していない知的財産権が既に成立している場合、または、今後当社が属する事業分野において第三者の権利が成立する場合には、第三者より損害賠償及び使用差止め等の訴えを起こされる可能性及び権利に関する使用料等の対価の支払が発生する可能性があり、また当社の知的財産が侵害された場合には、当社の事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。
当社では、引き続き啓蒙及び社内管理体制を強化するとともに、上記判明時には、事例に応じて弁護士・弁理士等と連携し、解決に努めてまいります。
(4)経営管理体制に関するリスク
① 代表取締役 栗原慎吾への依存について(発生可能性:低/影響度:中)
代表取締役である栗原慎吾は、当社の創業者であり、創業以来当社の代表取締役を務めております。同氏は、EdTechをはじめとする新規事業の立ち上げや既存事業の拡大に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において極めて重要な役割を果たしております。
当社は、取締役会等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難となった場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
② 銀行借り入れの代表取締役個人にかかる人的保証について(発生可能性:低/影響度:中)
本書提出日現在において当社の有する銀行からの借入金に対して、当社代表取締役 栗原慎吾の個人保証を伴うものが存在しています。このため、前項①に類する代表取締役 栗原慎吾への依存が生じており、何らかの理由により同氏による業務執行が困難となった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす重要なリスクと認識しておりますが、顕在化する可能性は高くないものと考えております。当社は、財政状態の報告を中心に金融機関との関係性を深めており、今後も良好な関係を維持継続できるよう努めてまいります。
③ 小規模組織における管理体制について(発生可能性:低/影響度:小)
当社は、当事業年度末現在、取締役5名(内1名は非常勤)、監査役3名(内2名は非常勤)、従業員65名と小規模組織にて運営しており、内部管理体制もこれに応じたものとなっております。今後の事業の拡大及び多様化に対応して、人員の増強と内部管理体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(5)その他のリスク
① 配当政策について(発生可能性:中/影響度:小)
当社の利益配分につきましては、業績の推移を見据え、将来の事業の発展と経営基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、経営成績や配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を維持することを基本方針としております。
しかしながら当社は、成長過程にあり、今後の事業発展及び経営基盤強化といった、内部留保の充実を図るため、配当を行っておりません。現時点において当社は、内部留保の充実を優先しておりますが、将来的には、業績及び財政状態等を勘案しながら株主への利益の配当を目指していく方針であります。今後の配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。
② 調達資金の使途について(発生可能性:低/影響度:小)
株式上場時における公募増資による調達資金の使途については、既存事業の拡大に係る人件費、その採用費、サービス構築費用、サービスプロモーション費用及び借入金返済に充当しており、今後も引き続きこれらの使途に充当していく想定です。しかしながら、当社が属するEdTech市場においては変化が著しいため、計画の変更に迫られ、調達資金を上記以外の目的で使用する可能性があり、その場合は速やかに資金使途の変更について開示を行う予定であります。また、当初の計画に沿って調達資金を使用した場合でも、想定していた投資効果を上げられない可能性があります。
③ ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:中/影響度:小)
当社では、取締役、従業員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存の株主が有する保有株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日の前月末現在における新株予約権による潜在株式数は227,478株であり、発行済株式総数3,922,076株の5.8%に相当しております。
④ 繰越欠損金の解消による影響等について(発生可能性:低/影響度:中)
当事業年度末において、税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の業績が順調に推移し、繰越欠損金が解消した場合や税法改正により繰越欠損金による課税所得の控除が認められなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
⑤ 新型コロナウイルスの感染拡大について(発生可能性:中/影響度:小)
新型コロナウイルス感染症の拡大については、2023年5月に感染症法上の位置付けが5類感染症に移行し、日常生活の行動制限が撤廃されるなど一定の収束はみられたものの、新たな感染症等の拡大が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
なお、当社では、従業員及び家族の健康と安全の確保を第一に考え、テレワークの推奨、オンラインツールを活用した打合せの推進及び時差出勤の推奨等、感染リスク低減のための措置を実施しております。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末の資産については、総資産が878,443千円となり、前事業年度末と比較し182,636千円の増加となりました。
流動資産の残高は、前事業年度末に比べ169,867千円増加し、772,192千円となりました。主な増減内訳は、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資による新株式の発行、第三者割当増資(オーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資)による新株式の発行及び新株予約権の行使に伴い、現金及び預金が154,017千円、「Comiru」の拡大に努めた結果、売上が増加し売掛金が13,784千円増加したことによるものであります。
固定資産の残高は、前事業年度末に比べ12,769千円増加し、106,251千円となりました。主な増減内訳は、繰延税金資産が7,659千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債については、240,617千円となり、前事業年度末と比較し48,589千円の減少となりました。
流動負債の残高は、前事業年度末に比べ4,167千円増加し、142,214千円となりました。主な増減内訳は、人員増加により未払費用が6,190千円増加したことによるものであります。
固定負債の残高は、前事業年度末に比べ52,757千円減少し、98,403千円となりました。増減内訳は、長期借入金の返済により52,757千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産については、637,825千円となり、前事業年度末と比較し231,225千円の増加となりました。その主な増減内訳は、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資による新株式の発行、第三者割当増資(オーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資)による新株式の発行及び新株予約権の行使に伴い資本金が102,632千円、資本準備金が102,632千円増加したことや当期純利益の計上により繰越利益剰余金が26,410千円増加したことによるものであります。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国の経済は、既往の資源高の影響などを受けつつも、供給制約の影響の緩和や、新型コロナウイルス禍での経済活動に対する制約の解消を背景とした個人消費の緩やかな増加により、持ち直しております。一方で先行きについては、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力の影響、物価上昇によるコストの増加や需要の減少、人手不足による人件費増加が懸念され、依然として不透明な状況が続いております。
教育業界においては、従来から問題視されていた教育現場の労働生産性の改善意識も高まっており、新型コロナウイルス感染症を契機としたオンライン教育への急速な関心・注目の高まりや、2020年度から始まった政府のGIGAスクール構想で進められている教育環境のデジタル化といった事業環境への変化にも機敏な対応が求められております。また、5Gをはじめとする通信インフラの整備やデジタル化の急速な進展を背景とした、AIやIoTの活用による教育手法の革新という面でも、機動性の高い民間教育が担うべき役割や責務はますます大きくなっております。
このような状況のもと、当社は、「『教える』をなめらかに」をミッションに掲げ、学習塾を中心とする民間教育業界にフォーカスして、そのアナログ業務を効率化するコミュニケーションツール「Comiru」の開発・運用に注力してまいりました。今後も、更なるユーザー獲得及び顧客満足度向上のため、新機能の充実を図り、引き続き機能追加を行ってまいります。
当事業年度においては、主力サービスである「Comiru」は、既存顧客からのアップセル(利用部門や利用生徒数の拡大等)や中小規模の学習塾及び英会話やプログラミングスクール等において、順調に新規顧客を獲得したことにより有料契約企業数及び課金生徒ID数が増加し、かつ低い解約率を維持したことによりARR及び課金生徒ID単価が上昇しました。その一方で、2023年10月19日に公表した「2023年10月期 業績予想の修正に関するお知らせ」のとおり、一部のカスタマイズ案件の仕様変更等により翌期への期ズレ(2024年10月期第1、第2四半期(2023年11月~2024年4月)予定)が発生し、第2四半期に発生した大手学習塾の解約による影響や、新規大手学習塾の課金開始時期が2024年10月期第2、第3四半期(2024年2月~7月)とする案件が増加したことにより、当初計画していた大手学習塾5社の課金開始を達成できず、売上高が当初見込みを下回り、ARPUが僅かに減少する結果となりました。
なお、当事業年度から強化している大手学習塾向けの「ComiruPRO」の導入と基幹システムの有償開発をセットにしたサービスの提案や教育委員会を始めとした自治体への提案も継続しており、引き続き顧客基盤の拡大に向けて取り組んでまいります。
顧客基盤別の取り組みとしては、以下のとおりであります。
(学習塾領域)
学習塾領域においては、中小規模の学習塾向けに経営セミナーの開催等効果的なマーケティング活動や既存顧客による紹介により、順調に新規顧客を獲得しております。
大手学習塾については、「ComiruPRO」の導入と基幹システムの有償開発をセットにしたサービスへの引き合いが増加しており、複数の案件が現在進行しております。具体的な商談状況としては、14社と商談し、そのうち7社から受注しておりますので、今後、2024年10月期以降の売上高及び利益の増加を見込んでおります。
また、2023年7月には「テラコヤプラス by Ameba」を運営する株式会社CyberOwlと業務提携し、集客情報の管理を始めとした学習塾のマーケティング領域にかかる業務プロセスから見直し、DX化を推進するとともに、学習塾を検討されている保護者への新たな価値を提供してまいります。
(習い事領域)
英会話やプログラミングスクール等の学習塾以外の習い事領域においては、活用事例の共有や業界特化型のセミナーの開催等のマーケティング施策により、特にプログラミングスクールを中心に、引き続き新規顧客の獲得数を順調に伸ばしております。
(学校領域)
公教育の学校領域においては、2023年1月の株式会社FCEエデュケーションとの業務提携の他、2022年12月にスポーツ庁及び文化庁が発表した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」により、各自治体が公立の中学校・高校における休日の部活動を外部に移行する部活動改革に動き出しており、この「部活動の地域移行」に関連した取り組みとして、千葉県内の教育委員会のモデル事業において、学校・教員、地域の部活動指導員、保護者・生徒の3者間におけるコミュニケーションツールとして「Comiru」が採択されました。引き続き教育委員会を始めとした自治体への提案を継続してまいります。
「Comiru」は、サブスクリプション型のリカーリングモデルであり、また、顧客である教育事業者等の生徒集客がID数増加を推進するビジネスモデルでもあります。これらの特長を踏まえると、新規顧客の獲得に加え、既存顧客からの追加ID獲得が重要であり、また、顧客ニーズに即した魅力的なプロダクトを提供し続ける必要があると考えております。そのために、先行的に顧客ニーズに即したプロダクトを提供するためのシステム開発人員及び営業人員にかかる人件費、並びに新規商談数獲得や認知度向上のためのマーケティング活動費用として広告宣伝費を投下し、前事業年度以降、継続的に投資を実施しております。一方、新しい生活様式、働き方のスタイルを取り入れ、対面での営業活動やセミナーなどを一部オンラインへ切り替えたことにより広告宣伝費、販売促進費、旅費交通費など一部の経費については減少しております。
これらの結果、当事業年度における売上高は、「Comiru」の課金生徒ID数等の増加により829,201千円(前年同期比24.6%増)となり、売上総利益は、売上高の増加及び開発部門における開発活動の効率化の取り組みにより610,612千円(前年同期比28.2%増)となりました。一方で、展示会(EDIX(教育総合展)東京)への出展やWEB広告を中心としたオンラインマーケティングの拡充による広告宣伝費や、営業体制の強化による人件費などの増加により、営業利益が37,230千円(前事業年度は営業損失20,483千円)となりました。また、支払利息及び上場関連費用の計上により、経常利益が33,089千円(前事業年度は経常損失26,987千円)、当期純利益が26,410千円(前年同期比233.2%増)となりました。
なお、当社の事業セグメントは教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業のみの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、659,596千円となり、前事業年度末に比べ154,017千円増加しました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、8,173千円(前事業年度は13,306千円の使用)となりました。これは主に、増加要因として、税引前当期純利益33,089千円の計上等があった一方で、減少要因として、売上増加による売上債権の増加額13,720千円、法人税等の支払額15,481千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は9,537千円(前事業年度は4,476千円の使用)となりました。これは主に、パソコン等の有形固定資産の取得による支出2,259千円、ソフトウエア仮勘定計上の無形固定資産の取得による支出2,886千円、従業員に対する貸付けによる支出5,253千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は155,381千円(前事業年度は309,717千円の獲得)となりました。これは主に、増加要因として、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資による新株式の発行、第三者割当増資(オーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資)による新株式の発行による収入179,611千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入25,203千円、減少要因として、長期借入金の返済による支出69,433千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載にはなじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載にはなじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2022年11月1日 至 2023年10月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
教育事業者等向けSaaS型業務 管理プラットフォーム事業 |
829,201 |
124.6 |
|
合計 |
829,201 |
124.6 |
(注)1.当社の事業区分は「教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業」の単一セグメントであります。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表を作成に当たり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載しております。
b.経営成績の分析
(売上高)
当事業年度における売上高は、前事業年度に比べ163,869千円増加し、829,201千円(前年同期比24.6%増)となりました。これは主に、主力サービスである「Comiru」の課金生徒ID数及び有料契約企業数が順調に増加したことと顧客単価が上昇したことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度における売上原価は、前事業年度に比べ29,501千円増加し、218,588千円(前年同期比15.6%増)となりました。これは主に、主力サービスである「Comiru」のエンジニア人員及び開発にかかる外部協力者への外注費が増加した結果によるものであります。売上原価は増加したものの、売上高の増加及び開発部門における開発活動の効率化の取り組みにより、売上総利益は前事業年度に比べ134,367千円増加し、610,612千円(前年同期比28.2%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ76,653千円増加し、573,381千円(前年同期比15.4%増)となりました。これは主に、将来の成長を支える人材の確保に伴い従業員給料及び手当が46,670千円、展示会(EDIX(教育総合展)東京)への出展やWEB広告を中心としたオンラインマーケティングの拡充により広告宣伝費が11,971千円増加したことによるものであります。
以上の結果、営業利益は37,230千円(前事業年度は営業損失20,483千円)となりました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度における営業外収益は、前事業年度に比べ443千円減少し、23千円(前年同期比94.9%減)となりました。これは主に、消費税等調整額が450千円減少したこと等によるものであります。また、営業外費用は、前事業年度に比べ2,806千円減少し、4,164千円(前年同期比40.3%減)となりました。これは主に、上場関連費用が前事業年度に4,211千円発生したものの、当事業年度は2,335千円を計上したこと等によるものであります。
以上の結果、経常利益は33,089千円(前事業年度は経常損失26,987千円)となりました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度における特別利益及び特別損失は発生しておりません。
当事業年度における法人税等は、前事業年度に比べ42,166千円増加し、6,678千円となりました。これは主に、法人税等調整額が38,149千円減少したこと等によるものであります。
以上の結果、当期純利益は26,410千円(前年同期比233.2%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性について、当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の人件費、システム開発の外注費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、運転資金は第三者割当有償増資及び取引金融機関と長期的な借入契約を借入の都度締結することを基本としております。
なお、当事業年度末における借入金を含む有利子負債の残高は114,495千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は659,596千円となっております。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について
当社の売上高は主に教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業で構成されております。当該事業は毎月経常的に得られる月額利用料が売上高の大半を占めており、その積み上がり状況の指標であるARRの拡大を経営上の目標としております。その達成状況を判断するうえで、有料契約企業数、課金生徒ID数、ARPU、ARR、課金生徒ID単価を重要な指標としております。ARRを高めていくためには、有料契約企業数を増やしていくことが重要であると考えております。
また、当社の持続的な成長と安定的な収益を実現するために、投資効率を計る指標として広告宣伝費/売上高比率、顧客の解約率、及び売上総利益と営業利益率を重要な経営指標として確認しております。なお、過年度の各指標の推移は以下となります。
|
項目 |
2021年10月期 |
2022年10月期 |
2023年10月期 |
|||
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
|||
|
有料契約企業数(社) |
944 |
1,118 |
1,120 |
1,212 |
1,288 |
1,326 |
|
課金生徒ID数(千ID) |
219 |
330 |
344 |
308 |
331 |
340 |
|
ARPU(円) |
44,821 |
52,886 |
55,204 |
49,781 |
49,986 |
49,937 |
|
ARR(千円) |
507,736 |
709,519 |
741,945 |
724,012 |
772,589 |
794,601 |
|
課金生徒ID単価(円) |
192 |
179 |
179 |
196 |
194 |
195 |
|
広告宣伝費/売上高比率(%) |
13.2 |
5.2 |
5.3 |
4.9 |
6.0 |
5.6 |
|
顧客の解約率(%) |
0.5 |
0.5 |
0.5 |
0.5 |
0.5 |
0.4 |
|
売上総利益(千円) |
301,727 |
476,244 |
145,877 |
300,233 |
448,151 |
610,612 |
|
営業利益率(%) |
△40.8 |
△3.1 |
4.4 |
5.6 |
3.2 |
4.5 |
該当事項はありません。
該当事項はありません。