第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

 当社グループは「商業を通じて、地域社会に信頼される誠実な企業でありたい。」という社是のもと、1986年に創業いたしました。翌1987年に日本で初めて、それまで個々の専門店で提供されていた書籍、文具、音楽、映像など身の回りのエンターテイメントの数々を一店舗に集約した大型複合小売店舗「蔦屋書店」を開店いたしました。当社グループは「日常的エンターテイメントの提供」を事業コンセプトに、お客様にご愛顧いただける店舗作りを目指すと共に、情報技術を活用して徹底したローコストオペレーションに取り組み、事業の拡大と業績の向上に取り組んでまいります。

事業コンセプト: 「日常的エンターテイメント」の提供

(

日常生活に欠かせない、身近で文化的な商品・情報を一店舗に集約することで、
お子様からご年配の方まで、家族みんなで楽しめる「空間と時間」の提供

)

 

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループの永続的な成長の源泉は、拡大のための投資を可能とする、高い収益力と健全な財務内容にあります。そのため当社では、売上総利益率と商品回転率の積であり、資産効率と収益性のバランス良い向上の指標である、交差比率の継続的な改善を目標としております。

 

交差比率=売上総利益率×商品回転率

    =(売上総利益÷売上高)×(売上高÷商品在庫)

    =売上総利益÷商品在庫......「単位当たりの在庫がどれだけの利益を上げたか」の指標

 

(3) 中期的な会社の経営戦略

 当社グループは、お客様の期待を上回る「心地よいコミュニティ空間の実現」を掲げ、一人でもご家族連れでもゆったりと快適に買物を楽しんでいただける店舗、地域コミュニティにとって必要とされる場としての店舗づくりを目指します。
 当社グループの店舗は「日常的エンターテイメントに関する商品・情報・サービスを複合的に扱う複合店舗」という特長を持っていることから、その競合するサービスは、一般の小売店のみならずインターネットを含む通信販売やコンテンツ配信を始めとする国内外の小売・サービスなど大小多岐にわたっております。
 こうした環境の中、当社グループは、中期経営計画(2021年10月期~2023年10月期)の「新しい“蔦屋書店/TSUTAYA”へのチャレンジ~新たな収益モデルの創出~」を経営方針に掲げ、暮らしの基本である「衣・食・住」に、楽しく学んで大いに遊ぶ「楽・学・遊」のコンセプトを加えた日常的エンターテイメントを提供する“蔦屋書店”のリモデル化と収益力の強化を推進してまいりました。
 既存事業における店舗改装として、新規事業100円ショップDAISOを6店舗に導入、ゲーム・トレーディングカード事業を子会社である株式会社トップブックスのふるいちトップブックスへ13店舗事業切替を実施(2022年6月の切替開始より26店舗完了)、新規事業ガシャポンバンダイオフィシャルショップを17店舗に導入いたしました。いずれの事業も売上と来店機会の創出効果と収益性強化に繋がりましたので、今後もシナジー効果を創出する様々な業態との連携を強化してまいります。
 また、2023年6月5日付で、当社蔦屋書店店内でタリーズコーヒーをフランチャイズ運営しておりました株式会社メソッドカイザーを子会社化し、新たに飲食事業が加わり、グループ全体の連結ベースの売上を押し上げました。
 なお、グループ全体で省人化経営・省エネ経営を推進し、運営の効率化に取り組みましたが、光熱費等のコスト増加、店舗の閉店に伴うコスト負担により販管費が増加したこと、加えて固定資産に対する減損損失430百万円を特別損失に計上したこともあり、親会社株主に帰属する当期純利益は前回予想値を下回り、利益面に大きな影響を与えました。

 

(4) 経営環境及び会社の対処すべき課題

 新型コロナウイルス感染症の行動制限の緩和を含めた各種政策の効果により、個人消費や雇用情勢等に回復の兆しが見られ、景気は緩やかに持ち直している一方で、昨年後半からの物価や光熱費高騰の影響が未だ続いており、また人手不足からくる賃金上昇のコストUPも加わり、店舗を運営する小売業にとっては厳しい経営環境が続いております。

 こうした状況下で、中期経営計画(2021年10月期~2023年10月期)「新しい“蔦屋書店/TSUTAYA”へのチャレンジ~新たな収益モデルの創出~」を経営方針に掲げ、暮らしの基本である「衣・食・住」に、楽しく学んで大いに遊ぶ「楽・学・遊」のコンセプトを加えた日常的エンターテイメントを提供する“蔦屋書店”のリモデル化と収益力の強化を推進してまいりました。同中計の3年間は、コロナ禍による感染防止対策に伴う人流の抑制や、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー資源の高騰からくる物価や光熱費等のコスト増により、店舗運営と消費行動がともに大きく抑制された期間でした。新しい売上の創出が想定より乖離し、既存店の書籍売上についても想定を下回ったことから赤字店舗が増加しその対応も遅れ、新規出店も1店舗に留まったことから、同中計の目標は未達となりました。

 新たな次期3カ年の中期経営計画(2024年10月期~2026年10月期)を2023年8月17日に公表し、書店事業に軸足を置き、読書文化を継承しつつ、読書が与える影響を可視化し読書の付加価値も向上させ、「“持続可能な書店創り”へのチャレンジ」を経営方針に掲げてまいります。また、次期中計における戦略及び施策を確実に実施するとともに、グループ子会社4社と、2023年9月に第三者割当引受増資、同10月より書籍帳合先となりました株式会社トーハンとの連携を強化し、新しい価値が創造できる次世代書店を創りあげ、読書文化の更なる付加価値向上のため共に推進いたします。第41期までは、店舗の撤退・改装により減収が続きますが、営業利益は黒字化、第42期には売上高181億円、営業利益4.5億円の目標達成に向け邁進してまいります。(次期中期経営計画につきましては、当社ホームページをご覧ください。)

 なお、持続可能な社会の実現に向けたSDGs達成に向けたESG活動を、グループ全体で取り組んで参ります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、地域のお客様、株主・投資家の皆様、お取引先様、従業員といった各ステークホルダーから期待、信頼される経営管理体制と監視体制を整備することが、コーポレート・ガバナンスの基本的な考え方であります。

また、当社社是にも掲げております地域社会に信頼される誠実な企業であるために、お客様の満足を第一に考えるとともに、各ステークホルダーとの適切な協働に努め、健全性、透明性、迅速性を高める経営管理体制の構築を推進しております。その中で生じる法令に基づく開示につきましても、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、適切な情報開示に努めてまいります。

 

(2) 戦略

当社グループは、環境問題への配慮、人権の尊重などを重要課題として認識しております。

環境問題については、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響を継続的に検討し続け、今後の自社の状況に応じて、経営戦略や具体的な取り組み内容を適切に検討してまいります。

人的資本・多様性については、職員が働きやすい環境を作ることによって、全ての職員がその能力を十分に発揮できるよう方針や社内環境の整備及び人材育成に努めております。

年齢や性別、国籍、社歴・学歴、中途採用等に関係なく、また年功序列ではなく能力実績に重きを置いた評価制度により、採用や管理職への登用を行っておりますが、その確保に向けた数値目標は現時点設定しておりません。また、育児休業や短時間勤務などを定めた育児休業規則等を設けるなどして、女性が継続的に活躍できる職場環境づくりや支援に努めております。併せて、ビジネス環境の急速な変化に対応するため、中途採用者の登用や優秀な人材の積極的な獲得等、多様性確保の重要性について認識していることから、今後も推進に努めてまいります。

なお、中長期的な企業価値向上のため、それらの人材が活躍できる社内環境整備は、今後も推進してまいります。

 

(3) リスク管理

当社グループは、事業活動に関する一般的なリスク及び当社グループに係る特有のリスクを把握する過程で、サステナビリティ関連のリスクも把握し、取締役会において方針の立案、施策の進捗状況の管理を行ってまいります。

 

(4) 指標及び目標

環境問題に関しましては、環境に配慮した設備の選定・設置、設置後の見直し等、取扱い商品の選定を行い、二酸化炭素排出の少ない製品の見直しに努めてまいります。

人的資本・多様性に関する指標及び目標は以下のとおりです。

①正社員採用者に占める女性比率を50%以上とするため、エリア社員制度、育児時短勤務等制度を導入し、
  多様な働き方についての制度を導入してまいります。

②一般社員の残業時間を月平均10時間以内とするため、組織全体及び部署ごとのフォローアップを行います。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 事業内容について

①フランチャイズ契約について

当社は、書籍の販売、映像・音楽ソフト等の販売及びレンタル、ゲームソフトの販売及びリサイクル事業に関して、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(現 カルチュア・エクスペリエンス株式会社)とフランチャイズ契約を締結しております。フランチャイズ契約では、競業禁止条項や他のFC加盟店の近隣地(500m)への出店の制約等が定められております。当社は、カルチュア・エクスペリエンス株式会社がフランチャイズ展開する以前から独自に書籍や文具の販売を中心とした店舗の運営を行っていたため、競業禁止条項については覚書により解除されておりますが、今後変更とならない保証はありません。カルチュア・エクスペリエンス株式会社とのフランチャイズ契約は当社のブランド戦略、店舗展開、各種販売データの管理において重要性が高いため、万一、同社の業務あるいは同社と当社との関係が通常通りに機能しなくなった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

②店舗開発について

当社は、今後、東日本エリアへの多店舗展開を目指しており、新潟県・長野県で培ったライフスタイル対応型大型複合店舗の運営ノウハウ及び小商圏地域(人口3万人程度の地域)でも出店可能なローコストオペレーションを活用し、店舗網の拡大を図っていく方針であります。しかしながら、出店に際して、基本的に土地・建物の賃借を想定していることから、出店スピードは、貸主や地権者との交渉に左右され、さらには後述のように大規模小売店舗立地法上の手続も影響いたします。さらに、各地では、他社のFC加盟店も店舗展開を行っており、地域によっては出店余地による制約を受ける可能性も否定できません。これらにより、当社の計画通りに出店を行うことが出来ない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

③大型店への投資について

当社が今後の出店モデルとして想定しておりますのは、売場面積1,000坪から3,000坪の大型複合書店であり、圧倒的な競争力や集客力と引き換えに、規模の大きさゆえ1店舗当たりの投資額は増加せざるを得ません。また、全世界での新型コロナウイルスの感染拡大により、各種資材の原価上昇や、物流の遅延が発生しており、首都圏での建設コストは上昇傾向が続いております。これらのことから、大型店の出店が特定の時期に集中した場合、投資負担の急増により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、大型店舗は投資の回収に中小型店舗より長い期間を要するのが一般的であり、想定した利益水準への到達が計画より遅れた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

④固定資産の減損会計について

当社は、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。当社が保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価値の下落等により、減損損失が発生し、当社の財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤競合について

 当社における店舗規模の大型化と取扱商品の拡大、並びにサービスの複合化により、従来の書店やレンタル店以外の業態とも競合が発生しております。また、地域に立地する小売店舗のみならず、インターネットによる通販やインターネット配信サービスによるコンテンツ流通の拡大など、国内外の非店舗小売業との競争も増加しており、当社店舗を取り巻く競合状況は総じて激しさを増しております。
 当社は、こうした競合状況への対応を図りながら、来店することによって得られる様々な体験と満足感の提供によってリアル店舗としての価値を高め、地域のコミュニティの場として社会に求められる業態を目指しております。

また、当社は書籍及び音楽・映像ソフトのインターネットによる情報提供と販売を、有力な販売チャネルと捉えて積極的に取り組んでおります。具体的には、Webサイト・X(旧ツイッター)・インスタグラムの運営や、スマートフォン用「蔦屋書店アプリ」の提供により、各種商品の販売や各店舗におけるイベント情報の提供等を行なっております。これらは、単なる販売経路の拡大ではなく、販売のオムニチャネル化による店舗への来店頻度上昇によって、店頭のさらなる活性化を目指すものです。しかしながら、こうしたeコマースをめぐる競争環境は常に変化しており、新技術・新サービスの登場や新たなプレイヤーの参入によって、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、音楽・映像等のコンテンツのインターネット配信サービスは、コンテンツ単位の課金から定額料金によるサービスへと移行が進んでおり、スマートフォンの普及と相まってコンテンツの楽しみ方も変化しております。このような流れはリアル店舗における音楽・映像ソフトのレンタルや、販売にも影響を与えております。当社では、大型複合店の展開で音楽・映像コンテンツを書籍や他のエンターテイメントと共に展開することによって新たな価値を付加することに努めておりますが、このようなコンテンツを楽しむライフスタイルの変化が想定より急速であった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

このように、当社の店舗は、環境変化に対応した価値の創出を絶えず進めていく必要があり、対策を誤った場合は顧客の支持が低下して当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 自然災害について

当社グループの本社、物流センター、店舗所在地において、大規模な地震、台風等の自然災害或いは予期せぬ事故等が発生した場合、当該施設及び流通網に倒壊等物理的な損害が生じて、営業活動が阻害され、当社グループの売上高及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 当社事業に対する法的規制について

①大規模小売店舗立地法による規制について

当社グループ店舗で、店舗面積が1,000㎡を超える(レンタル売場面積を除く)店舗の新規出店及び増床をする際には、「大規模小売店舗立地法」(以下、「大店立地法」という。)の規制対象となっており、都道府県または政令指定都市に届出が義務付けられております。同法では、周辺の地域住民の利便性や周辺生活環境等への配慮すべき事項が定められており、審査の状況および規制の変更等により、出店計画が影響を受ける場合があります。

②レンタル事業における著作権について

レンタル事業は著作権法の適用を受けており、著作権者及び著作隣接権者より許諾を得るとともに、使用料を払うこととされており、貸出禁止期間等が定められております。DVD・ビデオレンタルについては同法の頒布権に、音楽CDレンタルは同法の貸与権にかかわる適用を受けております。当社ではカルチュア・エクスペリエンス株式会社のフランチャイジーとして、適法な手続を経て調達した商品のみを扱っておりますが、万一海賊版など違法な商品の取り扱いがあった場合、法的な制裁を受ける可能性があります。

③再販制度について

当社の取扱商品である販売用音楽CD等(レコード、テープを含む)及び書籍は、メーカーの再販売価格維持契約による定価販売(以下再販制度)が義務付けられております。しかしながら、再販制度については「時限再販」や「部分再販」等の弾力的運用がすでに一部で導入され、公正取引委員会は将来的に再販制度の廃止を推進する姿勢を表明しております。したがって、今後さらに規制緩和が進んだ場合、定価販売から自由価格競争へと販売形態が大きく変化する可能性があります。当社は、再販商品以外の商品も扱っており、そうした競争に対するノウハウも蓄積しておりますが、過度な価格競争は当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

④個人情報保護法について

取扱商品・サービスの特性から、当社は従前より個人情報の厳重かつ慎重な取扱いを行ってまいりましたが、「個人情報の保護に関する法律」の施行に伴い、改めて個人情報管理に関する規程・マニュアルを活用し、個人情報の管理については細心の注意を払って進めております。しかしながら、個人情報管理の徹底が図れなかった場合は、社会的制裁や損害賠償請求の発生等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤青少年健全育成に関する条例について

当社は、レンタル事業等における成人向け商品のレンタル及び販売に関し、「新潟県青少年健全育成条例」及び各自治体の同種の条例を遵守し、以下のように必要な配慮を行っております。
  (イ)当社がレンタルを行う成人向けビデオは、日本ビデオ倫理協会審査済みのものに限ります。
  (ロ)成人向けレンタル商品の売場は他の売場と明確に区切られたスペースとしております。
  (ハ)売場入口には18歳未満の方の入場を禁止する旨を掲示しております。
  (ニ)精算時に会員情報から年齢を確認し、商品の貸出について必要な制限を行っております。
 以上のような配慮について現場で適切な運用がなされなかった場合、企業としての信用やブランドの毀損により、事業の展開に影響を及ぼす可能性があります。

⑥古物営業法について

当社グループが行っているリサイクル品の買取り及び販売事業は、「古物営業法」により規制を受け、同法及び関連諸法令、条例により下記のような規制を受けております。
  (イ)事業を開始する場合には、所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を必要とする。
  (ロ)中古ゲームソフト・パソコンソフト・書籍・CD・DVD等の買取りを行う場合には、相手方の住所、氏
     名、職業及び年齢が記載された文書の交付を受け、同時に取引年月日、古物の品目及び数量、古物の特徴、
     相手方の住所・氏名・職業・年齢等を帳簿に記載する必要がある。
 現場において上記の規制への対応に重大な不備があった場合、許可の取消しや新規許可の見送りなどの制裁を受け、事業の展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)継続企業の前提に関する重要事象等について

当社グループは、主軸である蔦屋書店事業の売上減少の影響により、2022年10月期以降、2期連続の営業損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しております。

このような中、当社グループは、当該状況を解消又は改善するために、2024年10月期を初年度とする3カ年の中期経営計画を策定しており、主に以下の施策を実行して早期の黒字化を目指してまいります。

 

①新たな売上高の創出

“蔦屋書店”のリモデル化へのチャレンジとして、DAISOの導入、ふるいちトップブックスへの切り替え拡大、ガシャポンバンダイオフィシャルショップの強化・拡大、フィットネス事業への進出(フランチャイズ加盟)、リーシング(テナント誘致)の強化を進め、新たな売上高を創出してまいります。

②不採算店の早期撤退・新規出店

撤退選定方針に基づき、収益改善が難しい店舗は契約満了時及び早期での撤退を検討・計画しております。(最大19店舗)また、2022年9月30日に長野県佐久市にオープンした蔦屋書店佐久平店を一つの収益店舗モデルとして、新規出店を最大6店舗想定しております。

③グループ企業との連携

当社グループ企業のそれぞれの強みを生かしサービス連携し相互売上UPを目指してまいります。ライフバリューを提案し、新たな経済圏の創出をしてまいります。

また、メインバンクをはじめとした取引金融機関とは密接な関係を引き続き維持できるよう努力しております。今後の資金調達においても、資金計画に基づき想定される需要に対応できる資金も十分確保できるものと考えており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

 第39期におけるわが国経済は、行動制限の緩和を含めた各種政策の効果により、個人消費や雇用情勢等に回復の兆しが見られ、景気は緩やかに持ち直しています。一方で、昨年後半からの物価や光熱費高騰の影響は未だ続いており、また人手不足からくる賃金上昇のコストUPも加わり、店舗を運営する小売業にとっては厳しい経営環境が続いております。

 このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画(2021年10月期~2023年10月期)の最終年度である当期においては、暮らしの基本である「衣・食・住」に、楽しく学んで大いに遊ぶ「楽・学・遊」のコンセプトを加えた日常的エンターテイメントを提供する“蔦屋書店”のリモデル化と収益力の強化を推進してまいりました。

 新規事業として100円ショップDAISOを6店舗に導入、ゲーム・トレーディングカード事業を子会社である株式会社トップブックスのふるいちトップブックスへ13店舗事業切替を実施(2022年6月の切替開始より26店舗完了)、新規事業のガシャポンバンダイオフィシャルショップを17店舗に導入いたしました。いずれの事業も売上と来店機会の創出効果と収益性強化に繋がりましたので、今後もシナジー効果を創出する様々な業態との連携を強化してまいります。

 また、2023年6月5日付で、当社蔦屋書店店内でタリーズコーヒーを運営しておりました株式会社メソッドカイザーを子会社化し、飲食部門が当社グループの新規事業となりました。

 グループ全体で省人化経営・省エネ経営を推進し、運営の効率化に取り組みましたが、光熱費等のコスト増加、不採算店舗の撤退・改装に伴うコストや人件費の負担に影響がありました。

 店舗状況におきましては、新潟県、長野県、東京都、神奈川県にありました6店舗を契約満了に伴い営業終了し、新潟県上越インター店の書籍館・メディア館の2館営業店舗はメディア館を営業終了し、書籍館へ集約して営業を継続しております。営業店舗数は58店舗、子会社運営の48店舗を加えるとグループ全体では106店舗となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高18,953百万円(前年同期比90.7%)、営業損失802百万円(前年同期 営業損失154百万円)、経常損失888百万円(前年同期 経常損失187百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,376百万円(前年同期 親会社株主に帰属する当期純損失272百万円)となりました。

 売上面につきましては、食品やコスメ、服飾等の企画販売は好調でしたが、新しい売上の創出ができず、書籍部門の売上も伸び悩み、当社グループの主軸である蔦屋書店事業全体の売上高は17,965百万円(前年同期比87.7%)となりました。

 利益面につきましては、セルフレジの利用促進及び店舗オペレーションの更なる見直しを行い、グループ全体で省人化経営・省エネ経営を推進し、販管費の削減に努めましたが、一方で売上高の減少に加え、燃料価格が高騰により光熱費等のコストが上昇、閉店・改装に伴うコスト負担、加えて固定資産に対する減損損失430百万円を特別損失に計上したこともあり、営業損失802百万円(前年同期 営業損失154百万円)、経常損失888百万円(前年同期 経常損失187百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,376百万円(前年同期 親会社株主に帰属する当期純損失272百万円)となりました。

 

 

当連結会計年度の出店・改装店状況

出店

13店(ふるいちトップブックス 13)

閉店

6店(蔦屋書店事業 6)

期末店舗数

106店(蔦屋書店事業 58、ゲーム・トレーディングカード事業 26、飲食事業 22)

都県別内訳:

新潟42、長野17、神奈川5、東京5、群馬8、埼玉14、静岡2、茨城6
宮城5、岩手2

 

 

 当連結会計年度におけるセグメントの状況は、次のとおりであります。

 

・蔦屋書店事業

同事業の売上高は17,965百万円(前年同期比87.7%)となりました。主力商品の売上高は、書籍11,141百万円(前年同期比88.9%)、特撰雑貨・文具3,096百万円(前年同期比99.4%)、レンタル907百万円(前年同期比67.0%)、ゲーム・リサイクル403百万円(前年同期比49.9%)、賃貸不動産収入581百万円(前年同期比97.1%)、販売用CD333百万円(前年同期比69.1%)、販売用DVD290百万円(前年同期比89.0%)となりました。

 

・ゲーム・トレーディングカード事業

同事業の当連結会計年度の業績は、売上高342百万円(前年同期比252.0%)となりました。

 

・スポーツ関連事業

同事業の当連結会計年度の業績は、売上高238百万円(前年同期比118.0%)となりました。

 

・訪問看護事業

同事業の当連結会計年度の業績は、売上高122百万円(前年同期比105.2%)となりました。

 

・飲食事業

株式会社メソッドカイザーを連結の範囲に含めたことに伴い、「飲食事業」を新たに営むこととなりました。当事業の当連結会計年度の業績は、売上高426百万円となりました。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の状況

  当連結会計年度における販売等の状況は、以下のとおりであります。

 

①商品別売上状況

区  分

前連結会計年度
(自 2021年11月1日 
 至 2022年10月31日)

当連結会計年度
(自 2022年11月1日 
 至 2023年10月31日)

前年比

(%)

売上高
(千円)

構成比
(%)

売上高
(千円)

構成比
(%)

蔦屋書店事業

 書籍

12,527,370

59.8

11,141,389

58.4

88.9

 特撰雑貨・文具

3,114,807

14.9

3,096,241

16.2

99.4

 レンタル

1,354,856

6.5

907,162

4.8

67.0

 賃貸不動産収入

599,915

2.8

581,720

3.0

97.1

 ゲーム・リサイクル

808,550

3.9

403,370

2.1

49.9

 販売用CD

482,618

2.3

333,448

1.7

69.1

 販売用DVD

326,538

1.5

290,671

1.5

89.0

 その他

1,253,248

6.0

1,105,796

5.8

88.2

 セグメント間の
 内部売上高又は振替高

18,573

0.1

105,856

0.6

569.9

 計

20,486,475

97.8

17,965,656

94.1

87.7

ゲーム・

トレーディング
カード事業

外部顧客に対する売上高

135,941

0.6

342,533

1.8

252.0

 セグメント間の
 内部売上高又は振替高

135,941

0.6

342,533

1.8

252.0

スポーツ
関連事業

 外部顧客に対する売上高

186,188

0.9

202,668

1.1

108.9

 セグメント間の
 内部売上高又は振替高

16,278

0.1

36,218

0.2

222.5

 計

202,467

1.0

238,886

1.3

118.0

訪問看護事業

 外部顧客に対する売上高

116,276

0.6

122,286

0.6

105.2

 セグメント間の
 内部売上高又は振替高

 計

116,276

0.6

122,286

0.6

105.2

飲食事業

 外部顧客に対する売上高

426,244

2.2

 セグメント間の
 内部売上高又は振替高

 計

426,244

2.2

合計

20,941,160

100.0

19,095,608

100.0

91.2

 

(注)1 セグメント間の内部取引高を含めて表示しております。

 2 蔦屋書店事業の「その他」は、図書カード他であります。

 3 当連結会計年度より、従来「その他」に含まれていた「ゲーム・トレーディングカード事業」について、量的な重要性が増したため、報告セグメントとして記載する方法に変更しております。

 4 株式会社メソッドカイザーを連結の範囲に含めたことに伴い、「飲食事業」を新たに追加しております。

 

 

 

②商品別仕入実績

 

セグメントの名称

前連結会計年度
(自 2021年11月1日
  至 2022年10月31日)

当連結会計年度
(自 2022年11月1日
  至 2023年10月31日)

前年比

(%)

仕入高
(千円)

構成比
(%)

仕入高
(千円)

構成比
(%)

蔦屋書店事業

 書籍

9,417,387

66.8

8,586,140

66.5

91.2

 特撰雑貨・文具

2,039,105

14.5

2,262,697

17.5

111.0

 レンタル

589,865

4.2

419,488

3.3

71.1

 賃貸不動産収入

261,967

1.9

292,014

2.3

111.5

 ゲーム・リサイクル

657,075

4.6

285,114

2.2

43.4

 販売用DVD

233,969

1.6

207,207

1.6

88.6

 販売用CD

329,991

2.3

192,549

1.5

58.3

 その他

474,004

3.4

389,049

3.0

82.1

 セグメント間の
 内部仕入高又は振替高

14,003,368

99.3

12,634,262

98.0

90.2

ゲーム・

トレーディング
カード事業

 外部取引先からの仕入高

11,223

0.1

6,651

0.1

59.3

 セグメント間の
 内部仕入高又は振替高

11,223

0.1

6,651

0.1

59.3

スポーツ
関連事業

外部取引先からの仕入高

26,418

0.2

38,109

0.3

144.3

 セグメント間の
 内部仕入高又は振替高

26,418

0.2

38,109

0.3

144.3

訪問看護事業

外部取引先からの仕入高

61,450

0.4

81,942

0.6

133.3

 セグメント間の
 内部仕入高又は振替高

 

61,450

0.4

81,942

0.6

133.3

飲食事業

外部取引先からの仕入高

136,716

1.1

 セグメント間の
 内部仕入高又は振替高

136,716

1.1

合計

14,102,461

100.0

12,897,682

100.0

91.5

 

(注)1 セグメント間の内部取引高を含めて表示しております。

 2 蔦屋書店事業の「その他」は、図書カード他であります。

 3 当連結会計年度より、従来「その他」に含まれていた「ゲーム・トレーディングカード事業」について、量的な重要性が増したため、報告セグメントとして記載する方法に変更しております。

 4 株式会社メソッドカイザーを連結の範囲に含めたことに伴い、「飲食事業」を新たに追加しております。

 

 

(3) 財政状態の分析

総資産につきましては、前年度比941百万円減少し、17,236百万円となりました。これは主に、以下の増減によるものです。

  増加:のれん139百万円

  減少:売掛金74百万円、商品43百万円、建物及び構築物202百万円、リース資産337百万円

 

 負債につきましては、前年度比49百万円減少し、14,726百万円となりました。これは主に以下の増減によるものです。
  増加:短期借入金100百万円、預り金341百万円
  減少:1年内返済予定の長期借入金56百万円、リース債務148百万円、長期借入金171百万円

 
 純資産につきましては、前年度比891百万円減少し、2,510百万円となりました。これは主に以下の増減によるものです。

    増加:新株発行による資本金及び資本剰余金の増加:670百万円
  減少:親会社株主に帰属する当期純損失:1,376百万円

 

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ12百万円減少し、1,560百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次のとおりです。

 

 ①営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動による資金は、前年度比424百万円減少し、204百万円の支出となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が1,108百万円増加した一方で、売上債権の増減額が170百万円減少したことによります。

 

 ②投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動による資金は、前年度比126百万円増加し、102百万円の獲得となりました。これは主に、連結子会社株式の取得による支出が119百万円増加した一方、投資有価証券の取得による支出が239百万円、敷金及び保証金の差入による支出が52百万円、それぞれ減少したことによるものです。

 

 ③財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動による資金は、前年度比26百万円増加し、89百万円の獲得となりました。これは主に、株式の発行による収入が649百万円、長期借入金の返済による支出が479百万円減少した一方で、長期借入れによる収入が300百万円、短期借入金の純増減額が1,100百万円、それぞれ減少したことによるものです。

 

④資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの所要資金は、大きく分けて設備投資資金及び運転資金の2つとなっております。基本的には、営業活動によるキャッシュ・フローの増加を中心としながらも、新規出店数の増加に伴う多額の設備投資資金については、主に増資や長期借入金によって調達を行ってまいりました。今後、中期的な成長に向け出店を拡大していくにあたり、その所要資金については、これまで同様に、営業活動によるキャッシュ・フローの枠を基本としつつ、財務安全性や調達コストを勘案の上、資金調達を行ってまいります。
 また運転資金については、近年多発している自然災害等の不測の事態にも対応できるよう、資金調達をしながらも一定の流動性預金の残高保持に努めてまいります。そのため、借入金純額よりも、流動性預金残高を差し引いたネットデットの残高管理に重点を置く財務政策をとってまいります。

 

(5) 重要な会計方針及び見積り

  当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当社経営陣による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要といたします。経営陣は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

 当社の経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において記載を行っておりますのでご参照ください。

 

(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」において詳細な分析を行なっておりますのでご参照ください。

 

(8) 経営戦略の状況と今後の見通し

 当社における経営戦略の状況と今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 」にて詳細にご説明しておりますのでご参照ください。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) カルチュア・エクスペリエンス株式会社との契約

 当社は、カルチュア・エクスペリエンス株式会社との間でCD・DVD等のレンタル、CD・DVD等の販売及びゲームの販売、書籍の販売、リサイクル売買について各店舗毎にフランチャイズ契約を締結しており、ロイヤリティとして売上高の一定率を支払っております。なお、同契約には競業禁止条項がありますが、当社は覚書により競業禁止を解除されております。

 

(2) 子会社株式の取得

当社は、2023年5月18日開催の取締役会において、株式会社メソッドカイザーの発行済株式の全株式を取得し、同社を子会社化することについて決議し、2023年6月5日付で株式譲渡契約を締結いたしました。詳細は、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業統合関係)」に記載しております。

 

6 【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。