独立監査人の監査報告書

 

 

 

2024年12月30日

株式会社アビスト

取締役会 御中

 

アーク有限責任監査法人

 東京オフィス

 

 

指定有限責任社員
業務執行社員

 

公認会計士

二 階 堂 博 文

 

 

 

指定有限責任社員
業務執行社員

 

公認会計士

松 島  康 治

 

 

 

監査意見

 当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社アビストの2022年10月1日から2023年9月30日までの第18期事業年度の訂正後の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。

 当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、株式会社アビストの2023年9月30日現在の財政状態並びに同日をもって終了する事業年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。

 

監査意見の根拠

 当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。

 

監査上の主要な検討事項

監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。

 

 

雇用調整助成金の不適切な申請への対応

監査上の主要な検討事項の

内容及び決定理由

監査上の対応

会社は、2020年9月から202210月までに雇用調整助成金252,543千円を受給しており、受給金額の大半を新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例による雇用調整として教育訓練を実施した場合の助成金が占めている。

このうち静岡労働局への申請分について、受給申請が適切でなかった疑いがあるとして同労働局による調査を受けた結果、過誤の申請に当たるとされ、会社は、2024年9月に15,627千円の返納を行っている。会社は、静岡労働局以外の労働局への申請分についても同局による指摘内容に該当する事案がないかどうか内部調査を行った結果、同様の疑義があることが判明した。

これを受けて会社は、より専門的で公正な調査を実施するために、2024年10月29日に独立社外取締役2名(弁護士・公認会計士)及び弁護士1名で構成される特別調査委員会を立ち上げて追加調査を行い、2024年12月20日に同委員会から調査報告書を受領した。

会社は、この調査報告書から、雇用調整助成金の不適切な申請が行われた経緯及び返還すべき金額について検討した結果、受給した雇用調整助成金の全額の返納を行うこととし、第16期から第18期の各期に営業外収益として計上した助成金収入等の訂正を行っている(うち、第18期の助成金収入の訂正金額は1,274千円)。

当該事案が生じたのは、雇用調整助成金の申請における内部統制の構築が不十分で機能していなかったこと、全社的なコンプライアンス意識の鈍麻、上長の指示に対して機械的に従う企業風土などが原因であり、会社は、これを全社的な内部統制の不備に起因する開示すべき重要な不備であると判断している。

雇用調整助成金の不適切な申請に関連する情報が網羅的に把握されず、適切に会計処理がなされないリスクに対応するには、当該事案に係る事実関係の網羅的な把握を行い、取引の範囲、取引の内容及び発生原因、類似取引の有無、関連する他の勘定科目への影響等を検討するとともに、特別な検討を必要とするリスクを含む監査計画の全体的な見直しを検討する必要があることから、当監査法人は当該事項を監査上の主要な検討事項であると判断した。

 当監査法人は、会社が2020年9月から202210月までに受給した雇用調整助成金の不適切な申請に関連する情報を網羅的に把握せず、適切に会計処理がなされないリスクに対応するため、主として以下の監査手続を実施した。

◆会社の内部調査及び特別調査委員会による以下の調査手続について、調査資料の閲覧及び再実施を行った。

・関係する社内規程、社内通知、雇用調整助成金申請資料等の閲覧

・会議体(取締役会、監査等委員会、営業会議、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会)の議事録の閲覧

・受給申請した教育訓練の受講者、講師及び各拠点の責任者の全員(退職者を除く)へのアンケートの実施

・受給申請した教育訓練に係る研修受講日報と当該教育訓練の受講者全員の就業日報及び業務日報との突合、教育訓練計画と講師の就業日報の突合

・関係者(経営者、監査等委員会、拠点の責任者、総務担当者及び責任者、受給申請した教育訓練の受講者及び講師、社会保険労務士等)に対するヒアリング

抽出元データの網羅性を確認した上で、キーワード検索により抽出された電子データ(グループウェアの社内回覧、電子メール、Microsoft Teamsチャット)の閲覧

◆会社の特別調査委員会による調査に関して、以下の事項を実施した。

適性、能力及び客観性の評価

・同委員会による調査報告書の閲覧及び同委員会への質問による調査範囲及び調査内容の理解

同委員会による調査手続の妥当性の検討

同委員会による調査結果についての監査証拠としての利用可能性の評価

◆類似するその他の事案の有無を確かめるために、以下の手続を行った。

雇用調整助成金以外の助成金に係る申請手続の妥当性の検討

財務報告に影響のあるその他の新規取引や非定型取引の有無の検討

◆財務諸表全体レベルでのリスクを追加的に識別するとともに、特別な検討を必要とするリスクを含む監査計画の全体的な見直しを実施し、監査チームメンバーの増員や必要な専門知識を持ったチームメンバーの選定、監査手続の範囲拡大要否の検討、過去に入手した監査証拠の再評価等、必要に応じて追加的な対応を実施した。

◆対象となる助成金収入や関連する他の勘定科目についての訂正が、調査委員会の調査結果を基にして適切に実施されているかを確かめるとともに、有価証券報告書の訂正報告書に含まれる財務諸表に正確に反映されているかを確かめた。

◆受給した雇用調整助成金の全額の返納による会計処理に影響を及ぼす労働局との協議状況について、会社の経営者及び総務部長へ質問するとともに、取締役会への報告状況について取締役会議事録により確認した。

 

 

 

繰延税金資産の回収可能性の判断

監査上の主要な検討事項の

内容及び決定理由

監査上の対応

会社は、当事業年度の貸借対照表において、繰延税金資産を598,410千円計上している。【注記事項】(税効果会計関係)に記載のとおり、当該繰延税金資産の繰延税金負債との相殺前の金額は712,301千円であり、総資産の7.6%を占めている。
 なお、会社は連結子会社であった株式会社アビストH&Fを2023年2月1日付で吸収合併しており、上記の繰延税金資産には同社より承継した税務上の繰越欠損金の残高に対するものが65,453千円含まれている。
 
 これらの繰延税金資産は、将来減算一時差異の解消又は税務上の繰越欠損金の課税所得との相殺により、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる範囲内で認識される。
 繰延税金資産の回収可能性は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第26号)で示されている企業の分類の妥当性、将来の課税所得の十分性、将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等に基づいて判断される。
 このうち、将来の課税所得の十分性及び将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等に用いられた主要な仮定は、主に会社の事業計画を基礎として見積られるが、当該事業計画に含まれる将来予測には関連する市場の成長予測や主要顧客の開発動向などの不確実性を伴うものであり、これらに関連する経営者による判断が繰延税金資産の計上額に重要な影響を及ぼす。
 
 以上から、当監査法人は、経営者による繰延税金資産の回収可能性に関する判断が、当事業年度の財務諸表監査において特に重要であり、「監査上の主要な検討事項」に該当すると判断した。

 当監査法人は、経営者による繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性を評価するため、主に以下の監査手続を実施した。

 

(内部統制の評価)

 繰延税金資産の回収可能性の判断に関連する内部統制の整備及び運用状況の有効性を評価した。

 

(繰延税金資産の回収可能性の判断)

 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」に基づく企業の分類の妥当性に関する検討を実施した。

 

 経営者による将来の課税所得の見積りを評価するため、その基礎となる将来の事業計画について検討した。

 将来の事業計画の検討に当たっては、取締役会によって承認された事業計画との整合性を検証するとともに、過年度の事業計画の達成度合いに基づき、事業計画の精度を評価した。

 また、要員の採用・配属計画、関連する市場の成長予測や主要顧客の開発動向について経営者と議論するとともに、関連する資料の閲覧により、会社の事業計画に関する経営者の仮定を評価した。

 

 将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等に用いられた事業計画の基礎とした主要な仮定について、関連する内部資料の閲覧及び質問により合理性を評価した。

 

 

 

その他の事項

有価証券報告書の訂正報告書の提出理由に記載されているとおり、会社は、財務諸表を訂正している。なお、当監査法人は、訂正前の財務諸表に対して2023年12月22日に監査報告書を提出しているが、当該訂正に伴い、訂正後の財務諸表に対して本監査報告書を提出する。

 

その他の記載内容

その他の記載内容は、有価証券報告書の訂正報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査等委員会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

当監査法人の訂正後の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。

財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。

当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。

その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。

 

財務諸表に対する経営者及び監査等委員会の責任

 経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。

 財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。

 監査等委員会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

 

 

財務諸表監査における監査人の責任

 監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。

 監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。

・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。

・ 財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。

・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。

・ 経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する財務諸表の注記事項が適切でない場合は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。

・ 財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた財務諸表の表示、構成及び内容、並びに財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。

 監査人は、監査等委員会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。

 監査人は、監査等委員会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。

 監査人は、監査等委員会と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。

 

利害関係

 会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。

以 上

 

 

(注) 1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。

2.XBRLデータは監査の対象には含まれておりません。