第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、経営理念として「顧客主義(取引先との共生によるパートナーシップの確保)」、「社員主義(社員の自主自律による価値創造の確保)」、「成果主義(機会平等と評価公平性の確保)」を掲げており、事業目的として「取引先の信頼と安心の確保に基づくサービスの提供」、「社員の生活向上と安定の確保」、「コンプライアンス、CSRの遵守と社会貢献」を定めております。以上の経営理念及び事業目的は、当社設立以来の経営に対する基本的な考え方として、経営者はもとより、社員への浸透も図られております。

 

(2)目標とする経営指標

① 売上高の伸び率

減収増益或いは微増収増益では、企業価値の拡大に限度があります。一定の率の売上高の拡大は、事業展開上必須の事柄であります。

② 利益率等

売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率においてそれぞれ目標を設定し、収益力の高さを維持する経営を実践してきております。

③ 技術社員数の増減及び稼働率の推移

技術社員数の増減は、当年度或いは次年度の売上規模を確定させる重要指数となります。また、稼働率は、売上高及び売上総利益に大きな影響を与えます。

④ 請負業務比率

付加価値の高い請負業務の拡大により、収益力のアップ、技術力のアップに繋がるものと考えております。

⑤ 当社コア業務領域の比率

当社の得意分野である自動車ランプ・内装・ボデー設計等のコア業務領域を拡大させていくことで、強みの更なる強化に繋げたいと考えております。また、当社のコア業務領域は、今後、HV/EV等の次世代自動車の普及、自動車部品のモジュール化の進展に際しても、設計開発需要減少の影響は受けにくいと考えております。

⑥ 実質無借金の維持

不測の事態に備え、実質無借金経営を維持することにより、収益悪化抵抗力を高めております。

⑦ 配当性向

当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置づけ、継続的かつ安定的な配当を実施することを基本方針としております。配当政策につきましては、事業拡大のための設備投資などを目的とした内部留保の確保と配当の安定的拡大を念頭におき、財政状態及び利益水準を勘案した上で連結当期純利益の35%以上(配当性向35%以上)を毎期配当していくことを原則としております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンによるパンデミック収束期待もあり緩やかな回復が続いているものの、世界の経済格差は一段と分断され、予想以上に根深くなっています。先行きについては、変異株の脅威などにより不確実性が高い状況が続いていることに加え、ワクチンへのアクセスと早期の政策支援を主要因とする世界の格差拡大は、中長期的な経済活動に影響を及ぼす可能性があります。

我が国経済においては、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にある中、持ち直しの動きが続いているものの、そのテンポが弱まっています。先行きについては、感染対策を徹底し、ワクチン接種を促進する中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されます。但し、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクに十分注意する必要があります。また、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要があります。

当社グループが主力事業を展開する自動車業界及び自動車部品業界においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、半導体不足による生産調整の動きを高めているものの、政府発表の「カーボンニュートラル」の実現や、CASEへの対応に向けて研究開発予算も維持していくものとみられます。当社が主力とする設計開発アウトソーシング事業は生産の上流工程であるため、自動車メーカーの工場稼働停止や減産が、契約解除等の直接的な影響は少ないものとみておりますが、新型コロナウイルス感染症流行前の稼働工数への回復には時間を要することが予想されます。また、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化、さらに深刻化した際などには業績に影響を及ぼす可能性もあるため、引き続き、業界の動向に注視する必要があります。

以上のような事業環境のもと、中長期的な会社の経営戦略は次のとおりであります。

 

① 数値目標

 

第17期

(令和4年9月期)

第18期

(令和5年9月期)

第19期

(令和6年9月期)

売上高

9,670百万円

10,400百万円

11,400百万円

営業利益

640百万円

1,000百万円

1,340百万円

 売上高営業利益率

6.6%

9.6%

11.8%

経常利益

670百万円

1,000百万円

1,340百万円

親会社株主に帰属する

当期純利益

460百万円

690百万円

925百万円

 

 

② 主力事業である設計開発アウトソーシング事業における戦略目標

a. 第16期に新設の技術教育担当により、若手技術者の効率的な技術力の向上を引き続き実施

b. 優秀な新卒の採用は継続しつつ、即戦力となる中途採用を積極的に行い、採用後、早期に売上向上を実現

c. 中途技術者を活用した若手技術者の育成の更なる充実を図る

d. リーダー社員における若手技術者教育への負荷を減らすことにより高難度案件の受注拡大

e. 新規取引先の開拓及び周辺事業領域への進出による顧客の業績に影響を受けづらい受注体制の確立

 

③ その他の主な取り組み

a. 設計領域から一貫した受注(DfAM)体制確立による受注拡大(3Dプリント事業)

b. AIソリューション(電力予測、成長予測、AR等)による売上拡大(AI事業)

c. AIを活用した設計の効率化による収益性の向上(設計開発アウトソーシング事業・AI事業)

d. OEM受注拡大し、工場稼働率向上による売上・収益性の向上(美容・健康商品製造販売事業)

 

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループとしては、開かれた、健全で透明な企業活動を展開し、企業価値の増大と収益率の向上により永続的発展を目指していくことが経営上の最も重要な課題であると認識しております。

当社グループの中核事業である設計開発アウトソーシング事業では、事業基盤をより強固なものとし、事業を安定的に拡大発展させていくために、組織的な技術者育成を加速させ、かつ、世情に左右されない強固な受注体制に磨きをかけることが不可欠であります。顧客からの技術的な要求値が高まる傾向において、若手技術者を中心に研修期間が長期化し、リーダー社員における若手技術者への教育工数が増加することで、結果、一人当たり売上高も低下しております。

その状況下において、即戦力となり早期に売上向上をはかるべく中途採用とパートナー企業の活用を積極的におこなってまいります。加えて、優秀な新卒社員の採用は継続しつつ、①技術教育担当による効率的な教育、②中途採用者を活用した若手技術者の教育受け皿の拡大をはかります。

並行して、受注拡大と領域拡大を果たすための提案営業の実践、業務及び管理体制の効率化、コンプライアンス体制の強化・確立等を、経済環境を見据えながらバランスよく強化推進してまいります。

一方、永続的な発展を目指していくためには、中長期的な観点で、当社グループの将来の中核事業となるべき新規事業を育成していくことも必要不可欠であります。当社グループとしては現在、そのような観点から、設計開発アウトソーシング事業とのシナジーを活かしたAIソリューション事業や3Dプリント事業の拡大及び連結子会社の株式会社アビストH&Fにおける美容・健康商品製造販売事業の収益拡大化に取り組んでまいります。

また、当社グループは、長期的な視点で社会の持続可能性に配慮した、サステナビリティ経営を目指しこれまでもさまざまな取り組みを続けてまいりましたが、より強力に進めるため、令和3年9月にサステナビリティ委員会を設置いたしました。今後もより一層、社会の持続可能性に配慮した企業活動を推進し、企業価値の向上を図ってまいります。

 

取り組みの具体的な内容は以下のとおりであります。

①「社員の自主自律による価値創造の確保」など、当社経営理念の社員への浸透

②専門性の高い技術者の採用強化(新卒、中途)

③顧客のニーズに対応した社員育成体制の確立と強化

④新規企業・分野の開拓など顧客の状況に影響されない受注体制の確立(提案営業の実践)

⑤技術者料金のアップ

⑥コア業務領域(ランプ・ボデー・内装など)の売上拡大

⑦請負業務の拡大を受けた機密情報へのアクセス権の管理強化及び顧客情報のセキュリティ強化

⑧タブレット型端末の活用による管理体制の効率化・情報の共有化、経営コックピットの導入など、

 更なる情報化の推進

⑨顧客に信頼されるコンプライアンス体制の強化・確立

⑩連結子会社(株式会社アビストH&F)における商品知名度のアップ、新商品投入による売上拡大

⑪AIソリューション事業の推進

⑫設計DXを用いた設計業務の効率化

⑬3Dプリント事業の拡大

⑭長く安心して働ける会社づくり

⑮サステナビリティ取り組みの強化

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性をもった主な事項を開示し、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載いたします。また、当社グループとして必ずしもリスク要因とは考えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

当社グループはこれらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避・分散及び発生した場合の対応に最大限努力する方針であります。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。

なお、文中における将来に関する事項につきましては、本書提出日現在において判断しております。

 

(1)法的規制について

 当社グループの主力事業である設計開発アウトソーシング事業のうち労働者派遣業務は労働者派遣法により規制されております。平成27年9月30日に厚生労働省より施行された労働者派遣法改正法では、施行日以降、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別は廃止され、すべての労働者派遣事業は新たな許可基準に基づく許可制となりました。従来の特定労働者派遣事業者は新たに許可証取得が必要となったため、当社は平成28年3月1日付にて厚生労働省より労働者派遣事業許可証[許可番号:派13-306330]を取得いたしました。
 設計開発アウトソーシング事業のうち、請負業務については受託者である当社が、委託者である顧客企業から請負契約に基づいて業務委託され、当社の管理と責任のもとで仕事を完成し、成果物を納品するものであり、民法第632条に規制されております。

 また、子会社の株式会社アビストH&Fは、水素水の製造及び個人向けの通信販売等を行っており、食品衛生法、特定商取引に関する法律、不当景品類及び不当表示防止法等により規制されております。
 当社グループでは関連法令の遵守を徹底しておりますが、仮に関連法令に違反するような事態が生じた場合には、事業の継続に支障が生じる可能性があります。

 なお、関係諸法令は、情勢の変化等に伴い、継続的な見直しが行われています。その結果、関係諸法令の改正内容が当社グループの事業に重大な影響を及ぼす場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競合について

 労働者派遣業界、特に設計開発アウトソーシング業界内での競合状況が、市場の縮小や周辺業界からの新規参入等により激化した場合には、派遣技術者数の減少や単価の下落、設計請負金額の減少など、業績の悪化要因が生じることとなります。当社といたしましては、過度な価格競争等には巻き込まれないように、設計技術者集団を目指し、優秀な技術者の確保及び社員教育に力を入れていく考えでありますが、競合状況の悪化が急激かつ深刻なものである場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)社会保険料率の上昇について

 当社では、請負業務はもとより、派遣業務におきましても、全ての社員が常用雇用者となり社会保険に加入いたします。そのため、当社グループが主力事業とする設計開発アウトソーシング事業では、売上原価の90%以上が労務費で構成され、年金制度や健康保険制度などの改正により社会保険料率が上昇しますと、原価比率の増加につながり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)人材の確保について

 当社は機械・機械部品・電子等の設計開発、システム・ソフトウエア設計開発等の技術を提供する設計開発アウトソーシング事業を展開しているため、技術者は重要な経営資源であり、技術者の確保は事業拡大のための重要な要素であります。

技術者の確保につきましては、各事業所に採用担当者を設置し、技術系社員の新卒採用と中途採用を実施しております。全国の理工系大学、高等専門学校への学校訪問・学内セミナー・インターンシップへの積極的な取り組み等を実施し、求人ウェブ、ホームページ等ネット媒体の活用及びハローワークを中心に積極的に技術者の採用活動を行っております。

 

しかしながら、万が一当社がこれらの技術者の確保を充分にできなかった場合や、技術者の退職数が当社の予想を大きく超えた場合には、取引先企業からの技術者の要望に対応できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)請負業務における瑕疵担保責任及び製造物責任について

当社の設計開発アウトソーシング事業のうち請負業務は、顧客企業から業務を請負い、その業務の指示や設計技術者の労務管理等について当社が一切の責任を負い、業務の遂行・完成を約し、その成果物を納品するものであり、その業務の成果に対し対価を受け取る形態になっています。当社はこの請負業務の売上構成比率を高め、安定的な事業の柱とすることを目指しております。

今後、請負業務が拡大成長していきますと、成果物に対する瑕疵担保責任や製造物責任等の追及を受けるリスクが増加し、それによる賠償責任による費用が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)情報の取り扱いについて

 当社グループは、顧客企業に関する情報を大量に取り扱っておりますが、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001、登録組織:本社・東京受託室、登録活動範囲:顧客要求に基づいた三次元CADによる設計業務)を認証取得したことで、万全の情報セキュリティ体制を確立するとともに、万が一の場合に備え、IT業務賠償責任保険にも加入しております。

 しかしながら、特に請負業務における顧客企業の製品開発等の機密性の高い情報、ノウハウが何らかの原因により外部に漏洩した場合、当社の社会的信用を失墜させるだけでなく、損害賠償につながるリスクが現実化し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)自動車関連分野への依存について

 当社では、設計開発アウトソーシング事業に占める自動車関連の売上高構成比率が70.4%(令和3年9月期連結)と高くなっており、自動車関連企業の業績の影響を受けやすい状況にあります。そのため、EV普及やモジュール化による、自動車部品点数の減少の影響を受けにくい、自動車ランプや内装等をコア技術領域として技術者シフトを行い、環境変化への対応力の向上を図っています。また、顧客企業の動向を把握し、その変化に対応できるよう十分注意して営業活動を行っています。

 しかしながら、当社の想定を超えて、依存度の高い顧客企業の業績不振や設計・開発部門への投資の減少、また当該部門の海外へのシフト等が起きた場合には、当社技術者の稼働率が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)特定取引先への依存について

 当社の主たる取引先業界は自動車・輸送機器分野であり、なかでもトヨタ自動車株式会社向け売上高は、当社の全売上高の22.4%(令和3年9月期連結)を占めております。

 当社といたしましては、同社及び関連部品メーカーの設計業務において欠かすことのできない存在となるべく、これまで以上に設計技術者の技術力向上に注力していくとともに、当社の技術力を生かせる新たな分野、新たな取引先への売上拡大にも積極的に取り組んでいく方針です。しかしながら、トヨタ自動車株式会社及び関連部品メーカー向けの売上高が大きく減少した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)稼働率について

 当社の設計開発アウトソーシング事業では、全ての社員が常用雇用者となり、顧客企業に派遣していない期間や請負業務に配属していない期間でも技術者に対する労務費(原価)は発生いたします。そのため、技術者の稼働率が低下した場合は、売上高が減少する一方で、原価率が上昇し、利益率の低下を余儀なくされます。当社では、技術者の研修を充実してスキルアップを図り、顧客企業の需要・ニーズ・信頼に応え、高い稼動率を確保できるよう努めております。また大規模地震などの災害時に備え、事業継続・早期復旧を図るための事業継続計画を定めておりますが、経済環境の変化や顧客企業の動向、他社との競合の激化、大災害等により稼働率が低下した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(10)システム障害について

 システム障害によるリスクを十分に認識した事業継続計画を定め、サーバの安定的運用環境の確保や通信回線の冗長化等の施策を施しておりますが、自然災害・コンピューターウイルスあるいはサイバーテロ等によりITインフラが停止・破損した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)新規事業への進出について

 当社グループは、中長期的な企業発展を目指し、既存事業と関係の少ない新規事業にも積極的に取り組んでまいりますが、新規事業は、その遂行過程において事業環境の急激な変化や、事後的に顕在化する予測困難な問題等によりリスクが発生する可能性は否定できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、3Dプリント事業では、量産品の受注が計画通り進まない結果、黒字転換が遅れる可能性があります。

 

(12)美容・健康商品製造販売事業について

 当社グループでは、美容・健康商品製造販売事業において、水素水などの飲料製造販売に取り組んでおります。飲料業界は比較的に景気の波に左右されにくいものと考えておりますが、個人向け通信販売あるいは企業向けOEM販売が計画通りに進まない場合には、工場建設等に係る投資資金を回収できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、同事業では、飲料水等に関する製造も行っているため、製造、保管、運搬、販売の各過程において、衛生面の管理には万全を期しておりますが、万が一、お客様の健康被害等が生じるような事故が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)感染症拡大及び自然災害発生等について

 当社グループは、新型コロナウイルス感染症などの感染症拡大や自然災害等の発生した場合に備えて、取引先、従業員及びその家族の安全及び健康の確保を最優先として、リモートワークの実施等による勤務形態の見直しやWeb会議の促進、オフィスの消毒徹底など事業活動を継続しつつ感染拡大防止のための措置を講じております。新型コロナウイルス感染症の今後の影響については、上期については稼働工数の低下の影響が多少あるものと予測しておりますが、下期以降に徐々に回復するものと予想しております。しかしながら、今後更なる感染拡大が顧客企業の活動に影響を及ぼすことや、技術社員が業務に従事することができない状況が発生した場合に、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 ① 財政状態及び経営成績の状況

当社は主力事業である設計開発アウトソーシング事業における請負業務の拡大を中心に、積極的な事業推進に励んでまいりました。なお、生産の上流工程での業務が中心の為、新型コロナウイルス感染症による契約の打ち切り等は発生しませんでしたが、稼働工数の低下により生産性の低下がありました。新型コロナウイルス感染症の今後の影響については、上期については稼働工数の低下の影響が多少あるものと予測しておりますが、下期以降に徐々に回復するものと予想しております。以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は90億21百万円(前年同期比2.6%減)、営業利益は4億29百万円(同48.3%減)、経常利益は4億53百万円(同44.4%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は5億52百万円(同295.8%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 

a. 設計開発アウトソーシング事業

当セグメントにおきましては、売上高は87億11百万円(前年同期比2.3%減)となり、セグメント利益(営業利益)は12億81百万円(同26.4%減)、セグメント利益(営業利益)率14.7%となりました。技術者稼働率が高水準で推移した一方で、新卒社員教育及びOJT教育の強化により技術者一人当たりの売上高が減少したことにより減収減益となりました。

b. 3Dプリント事業

当セグメントにおきましては、DfAM(3Dプリント向け設計)関連を含めた提案営業を積極的に実施した一方で、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置下での取引先からの受注遅れなども重なり、当初の計画を下回る状況が続いている結果、売上高は、71百万円(前年同期比8.1%減)となり、セグメント損失(営業損失)は86百万円(前年同期は営業損失2億17百万円)となりました。

c. 美容・健康商品製造販売事業

当セグメントにおきましては、美容商品のテレビ通販放映による売上が減少した一方で、水素水のOEM受注や広告宣伝費を含む経費の見直しを実施した結果、売上高は2億35百万円(前年同期比9.1%減)となり、セグメント損失(営業損失)は6百万円(前年同期は営業損失48百万円)となりました。

d. 不動産賃貸事業

当セグメントにおきましては、収益用不動産(渋谷区)の売却により、売上高は77百万円(前年同期比14.9%減)となり、セグメント利益(営業利益)は28百万円(同38.6%減)、セグメント利益(営業利益)率36.7%となりました。

 

当連結会計年度末における総資産は84億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億10百万円の増加となりました。これは、主に収益用不動産の売却益によるものです。

負債合計は24億34百万円となり、前連結会計年度末に比べ55百万円の増加となりました。これは主に長期未払金の増加によるものです。

純資産合計は60億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億55百万円の増加となりました。これは、主に利益剰余金の増加によるものです。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とその主な内訳は次のとおりであります。

営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動により得られた資金は、3億41百万円(前年同期は12億13百万円)となりました。この主な内訳は、税金等調整前当期純利益が8億39百万円、固定資産売却益3億85百万円および法人税等の支払額3億9百万円となっております。

投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動により得られた資金は、6億38百万円(前年同期は8百万円)となりました。この主な内訳は、有形固定資産の売却による収入7億87百万円となっております。

財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動により使用した資金は4億7百万円(前年同期は4億6百万円)となりました。この主な内訳は、配当金の支払額4億5百万円となっております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

   当連結会計年度の生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 令和2年10月1日

至 令和3年9月30日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

3Dプリント事業

123,041

△50.3

美容・健康商品製造販売事業

72,364

11.2

合計

195,406

△37.5

 

(注)1.設計開発アウトソーシング事業は、機械・機械部品の設計開発及びソフトウエア開発などの技術提供サービス事業であり、提供するサービスの性格上、生産実績になじまないため、記載を省略しております。

 不動産賃貸事業は、生産活動を行っておりませんので、記載しておりません。

 2.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 3.金額は、製造原価によっております。 

 4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 b. 受注実績

当社グループの設計開発アウトソーシング事業はその形態から受注高と販売金額がほぼ同等となるため、記載を省略しております。3Dプリント事業および美容・健康商品製造販売事業は、受注から販売までの期間が短く、期中の受注高と販売金額がほぼ同等となるため、記載を省略しております。不動産賃貸事業は、受注実績になじまないため、記載を省略しております。

 

 c. 販売実績

販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 令和2年10月1日

至 令和3年9月30日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

設計開発アウトソーシング事業

8,711,788

△2.3

3Dプリント事業

71,405

△8.1

美容・健康商品製造販売事業

161,549

△9.1

不動産賃貸事業

77,217

△14.9

合計

9,021,960

△2.6

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 令和元年10月1日

至 令和2年9月30日)

当連結会計年度

(自 令和2年10月1日

至 令和3年9月30日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

トヨタ自動車株式会社

1,845,031

20.3

2,025,028

22.4

 

 

 

   2. 設計開発アウトソーシング事業及び3Dプリント事業に関する取引先業種別の販売実績は次のとおりであります。

 

取引先業種

前連結会計年度

(自 令和元年10月1日

 至 令和2年9月30日)

当連結会計年度

(自 令和2年10月1日

 至 令和3年9月30日 )

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

 

自動車・輸送機器

4,268,034

47.3

4,423,756

50.3

電子部品・電気機器(自動車関連)

2,112,111

23.5

1,799,065

20.5

情報処理・ソフトウエア(自動車関連)

25,195

0.3

14,502

0.2

自動車関連

6,405,340

71.1

6,237,324

71.0

電気機器(家電等)

707,829

7.9

672,336

7.6

情報処理・ソフトウエア(アプリケーションソフトウエア等)

653,016

7.3

690,832

7.9

一般機械機器

378,785

4.2

383,499

4.4

その他製造業

461,260

5.1

321,311

3.7

その他

385,546

4.4

477,888

5.4

合計

8,991,777

100.0

8,783,194

100.0

 

   3. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等をもとに適切な仮定を設定し、合理的な判断をしていますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
 重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 」に記載のとおりであります。
 新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

 

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 当連結会計年度の経営成績等の分析

 当連結会計年度における当社グループの売上高は、90億21百万円(前年同期比2.6%減)となりました。これは主に主力の設計開発アウトソーシング事業において、積極的な新卒採用活動により技術社員数が第16期末1,171名(前期末より34名増)となりましたが、顧客からの技術的な要求値が高まる傾向において、若手技術者を中心に研修期間が長期化したこともあり、技術者稼働率が年間平均94.1%となったことによるものです。

営業利益につきましては、設計開発アウトソーシング事業において、高付加価値である開発業務の受注は堅調に増加した一方で、リーダー社員における若手技術者への教育工数が増加することで、結果、一人当たり売上高が低下したことから、4億29百万円(同48.3%減)となりました。

経常利益は4億53百万円(同44.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5億52百万円(同295.8%増)となりました。

(期末技術者数及び年間平均稼働率の推移)

技術者数

技術者年間平均稼働率

第16期末

1,171名

94.1%

第15期末

1,137名

97.3%

第14期末

1,081名

97.3%

第13期末

1,026名

97.6%

第12期末

996名

97.2%

 

(派遣・請負別売上高及び請負売上高比率の推移)

請負売上高(百万円)

派遣売上高(百万円)

請負売上高比率

第16期

5,184

3,454

60.0%

第15期

5,213

3,643

58.9%

第14期

5,068

3,727

57.6%

第13期

4,770

3,700

56.3%

第12期

4,483

3,376

57.0%

 

 

b. 経営成績に重要な影響を与える要因

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は、外部環境の変化に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保することで、経営成績に重要な影響を与える可能性のあるリスク要因を分散、低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

c. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループでは、経営環境の変化に対応するため資金の流動性を確保することで安定した財務基盤を維持することに努めております。

主な資金需要は、人件費、販売費及び一般管理費等の営業経費に加えて、3Dプリンタや3D-CAD端末等の設備投資等であります。

運転資金、設備資金等の所要資金につきましては、原則として自己資金で賄うこととしております。M&A等の一時的な資金需要が生じた場合には、主に自己資金及び金融機関による長期借入により資金を調達することとしております。

 

d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、事業規模の拡大を示す売上高の伸び率と、事業規模の拡大に必須となる組織規模の拡大を示す従業員数を重要な指標としたうえで、事業の収益力を示すものとして売上高営業利益率と付加価値の高い請負業務比率の拡大を重視しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

当社は、令和3年4月14日開催の取締役会において、下記の通り固定資産の譲渡について決議し、令和3年4月20日に契約を締結し譲渡しております。

   1.譲渡理由

    当該固定資産は、当社経営資源の有効活用を図るため、譲渡することといたしました。
   2.譲渡資産の内容
    ①所在地  東京都渋谷区富ヶ谷
    ②物件種類 事務所・共同住宅
    ③構造   鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付き4階建
    ④敷地面積 264.46㎡
    ⑤延床面積 756.95㎡
    ⑥譲渡益  385百万円

    ⑦帳簿価格 374百万円
   3.譲渡先の概要

当該不動産売買契約における譲渡先との守秘義務により、譲渡先及び譲渡価額については公表を差し控えさせていただきます。なお、当社と譲渡先の間には、記載すべき資本関係、人的関係及び取引関係はなく、譲渡先は当社の関連当事者には該当しておりません。

   4.譲渡の日程

契約締結日・引渡日 令和3年4月20日

5.損益に与える影響

当該固定資産の譲渡に伴う固定資産譲渡益の385百万円につきましては、令和3年9月期の連結決算および個別決算において特別利益に計上しております。

 

 

5 【研究開発活動】

 (設計開発アウトソーシング事業)

当社は、新たな事業創造の一環として、AIソリューション事業の開発に取り組んでおります。AIソリューション事業は、テクノロジーを利用して人の意欲向上と生産性向上を実現することを目指し、その実現のために、異常検知技術による予測にて将来の不確実性への対応力をあげる、空間把握や形状認識技術にてデータと現実を融合し業務を支援するという2つの分野で研究開発活動をおこなっています。当連結会計年度における研究開発費の金額は128百万円であります。