代表取締役社長高村彰典及び取締役岩田真一は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用しております。なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものです。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性があります。
財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である2024年9月30日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠いたしました。
本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定しております。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行いました。財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、当社及び連結子会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定しております。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、当社及び連結子会社3社を対象として行った全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定いたしました。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、各事業拠点の連結会計年度の売上高(連結会社間取引消去後)の金額が高い拠点から合算していき、連結会計年度の連結売上高の概ね2/3に達している1事業拠点を「重要な事業拠点」といたしました。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として売上高、売掛金及び売上原価等に至る業務プロセスを評価の対象としました。さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加しております。
下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、開示すべき重要な不備であると捉え、当事業年度末日時点における当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました。
記
当社は、2024年9月期第2四半期決算において、当社が2023年4月より実施したアフィリエイト広告の代理販売取引(以下「本件取引」といいます。)に係る当該取引先に対する売掛債権(以下「本件売掛債権」といいます。)の回収の金額と時期に不確実性が存在することから、本件売掛債権の金額2,215百万円に対して、全額貸倒引当金を計上いたしました(以下「本件事象」といいます。)。本件取引に係る事実経緯等については以下の通りです。
ア. 本件取引に係る事実経緯
① 貸倒引当金繰入額の計上に至るまでの経緯
当社は、2023年4月に取引先である脱毛サロンチェーン運営会社(以下「A社」といいます。)よりアフィリエイト広告取引についての引き合いを受け、取引停止する2024年2月まで、A社との間のアフィリエイト広告取引を行っておりました。これに際し、従前A社に対してアフィリエイト広告に係る業務を提供していたアフィリエイト広告代理店B社に対して、当社から一定の業務を再委託する内容の取引も開始いたしました。B社との当該取引においては、円滑な取引開始等を目的とした初期的な座組として、当初、A社及びB社の取引の間で行われていた取引に当社が介入し、当社がA社に提供していた広告業務の一部を従前A社に業務を提供していたB社に再委託して手数料を得る形式が採用されましたが、当該取引形式は当社として一般的に採用している取引形態ではないため、将来的に当該再委託は解消することを想定しておりました。
取引開始以降、本件売掛債権の回収は滞りなく行われておりましたが、2023年12月28日にA社から支払が遅れる旨の連絡を受けました。その後、A社らとの間で回収についての協議を行い、2024年2月に一定の入金があったものの、2024年3月以降、入金が遅れている状態が続いており、取立遅延が生じることとなりました。
このような状況を踏まえ、当社は、本件売掛債権の回収の金額と時期に不確実性が存在することから、2024年9月期第2四半期連結会計期間(2024年1月1日~2024年3月31日)において、一過性の損失ではあるものの、同債権の金額2,215百万円に対して、全額貸倒引当金繰入額を販売費及び一般管理費に計上することといたしました。
②貸倒引当金繰入額の計上が多額となった経緯
当社では、取引先等の与信判断にあたっては、当社が定める取引先審査・与信管理ガイドライン(以下「社内与信ガイドライン」といいます。)に従うこととしておりますが、本件取引を行うにあたり、A社の親会社であるFUNAI GROUP株式会社(旧:船井電機・ホールディングス株式会社)の連帯保証を受ける等により、同社の信用力を前提とした与信金額の設定を行っておりました。しかし、同社の最新の財務状況等の取得がされていない等、取引先及び連帯保証先等の実態確認が適切に検討されておらず、形式的な与信判断になっておりました。また、本件取引実行の判断にあたっては、役員会で諮られ決定されておりましたが、A社及びB社の取引の間で行われていた取引に当社が介入する取引形態であったため、取引額が増加するなかで当社において取引額及びその増加を把握することが難しいことについて正確かつ適切な情報収集及び状況把握をできていなかったことに加え、当社としては、A社とB社との間で、仮にA社が当社に対する本件売掛債権の支払を怠った場合には当社のB社に対する支払いが一部免除されること(以下「本件免除」といいます。)を前提とした与信判断の変更が行われておりました。このような状況の中で取引を継続した結果、A社に対する売掛金額は多額になりました。
③ 調査の方法等
当社は、本件事象に係る経緯の調査に際し、外部の弁護士の協力のもと、関係者へのヒアリングやメール等の社内コミュニケーションツールのやり取りその他の関連文書を確認いたしました。なお、当該調査において、当社の役職員が本件取引に際して法令に違反する行為を行った事実は確認されておりません。
イ. 原因分析
本件事象の直接の原因として、以下の点が挙げられると考えております。
・不正確な与信リスクの判定
A社との取引開始時において、社内与信ガイドラインに従った与信判断を実施したものの、A社等の実態が詳細に検討されないまま、形式的な与信判断になっておりました。
また、A社との取引拡大に伴い与信残高を増加させるにあたっては、実際に締結された契約書に条項として含まれていなかった本件免除が行われることを前提とする等、実質的に社内与信ガイドラインに違反した判断となっておりました。
・役員会への不正確な情報提供
本件取引については、一定のリスクがあるものとして、引き合いの段階から定期的に役員会(主として業務執行取締役及び執行役員で構成される会議体)で報告されていたものの、上記の不正確な与信リスクの判定や契約内容を前提とした概要の報告に留まっており、契約書そのものの確認はなされておりませんでした。そのため、与信リスクや契約書の内容が正しく役員会に報告されておりませんでした。
上記原因をもたらした主たる要因については以下のように考えております。
① 権限の所在の不明確さ
当社の職務権限規程上、取締役会決議が必要とされる「重要な契約書」の該当性に関する具体的な基準が設けられていない等、本件取引に係る与信判断や契約書の承認等について、権限の所在が必ずしも明確ではない状況でした。
②リスク判断及びモニタリングの在り方
本件取引実行の判断にあたっては、役員会で諮られ決定されていたものの、その検討過程において、実際に付与する与信金額についての情報や実際の契約書面の確認等の実質的なリスク分析が十分に行われておりませんでした。
また、その後のモニタリングにおいても、前記の権限所在の不明確さも相まって、与信判断や契約内容等の実質的なリスク判断に関する部分について、正しく役員会に報告されておりませんでした。
以上の事実経緯及び原因分析を踏まえ、当社は、当社の全社的な内部統制、業務プロセス及び決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価を行った結果、本件事象を招いた背景として、以下の全社的な内部統制、業務プロセス及び決算・財務報告プロセスに係る内部統制に関する不備があったものと認識しております。
① 以下のア~ウの特徴を有するイレギュラーな新規取引の与信判断について、役員会のリスク分析やモニタリングが十分かつ適切ではなかった全社的な内部統制に関する不備
ア 業績不振で親会社の保証がなければ取引を承認できない新規取引先
イ 自社において取扱い実績のない新規商材
ウ 通例でない商流、取引条件、取引金額
当社としましては、本来は、イレギュラーな新規取引について、役員会において、取引先等の実態を踏まえながら、実際に付与する与信金額についての情報や実際に締結予定の契約条項を前提としたリスク分析及び判断を行ったうえで、実質的な与信判断を行う必要があったと認識しております。しかしながら、イレギュラーな新規取引である本件取引の開始時において、社内与信ガイドラインに従った与信判断を実施したものの、上記取引先等の実態が詳細に検討されないまま、形式的な与信判断になっておりました。また、後掲②で説明するように、重要性の高いイレギュラー取引の与信判断に関して検討・承認プロセスが整備されていなかったことに起因し、役員会において、本件取引実行の判断にあたって、実際に付与する与信金額についての情報や実際の契約書面の確認等の実質的なリスク分析が十分に行われておらず、与信リスクの再検証や契約書の再確認を含むモニタリングも十分に機能しておりませんでした。これらを踏まえ、当社としましては、役員会のリスクの識別・分類・分析・評価プロセスにおいて、イレギュラーな新規取引の与信判断におけるリスク分析やモニタリングが十分かつ適切ではなかったと考え、全社的な内部統制に関する不備があったと認識しております。
② イレギュラーな新規取引の与信判断に関する検討・承認プロセスが整備されておらず、また、取引拡大に伴い与信限度額を増加させるにあたり実質的に社内与信ガイドラインから逸脱した業務プロセスに係る内部統制に関する不備
当社としましては、本来は、イレギュラーな新規取引の与信判断に関する職務権限の所在を明確にし、取締役会が決裁権限を有する契約に関しては、役員会に対して正しい契約内容を前提とした報告を行ったうえで、役員会において協議し取締役会にて決議するなど適切な権限に準拠し正しく与信判断を行う必要があったと認識しております。しかしながら与信リスクの検討や実際の契約書の内容の確認手続が確立しておらず、当社の職務権限規程上、取締役会決議が必要とされる「重要な契約書」の該当性に関する具体的な基準が設けられていない等、イレギュラーな新規取引の与信判断の検討・承認プロセスが整備されておりませんでした。また、本件取引の拡大に伴い与信残高を増加させるにあたり、A社及びB社の取引の間で行われていた取引に当社が介入する取引形態であったため、当社にて正確かつ適切な情報収集及び状況把握を踏まえた取引額の把握ができておらず、また実際に締結された契約書に条項として含まれていなかった本件免除が行われることを前提とする等、実質的に社内与信ガイドラインに違反した判断となっておりました。これらを踏まえ、イレギュラーな新規取引の与信判断に関する検討・承認プロセスが整備されておらず、取引拡大に伴い与信限度額を増加させるにあたり実質的に社内与信ガイドラインから逸脱したものと考え、業務プロセスに係る内部統制に関する不備があったと認識しております。
③ 貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定及び検討において、十分かつ適切に評価及び判断するための基準やプロセスが明確化されていなかった決算・財務報告プロセスに係る内部統制に関する不備
当社としましては、本来は、保証人を含めた直近の財政状況・支払能力などを十分かつ適切に評価及び判断するための基準やプロセスを明確に定めておく必要があったと認識しております。しかしながら、当社は、A社の財務情報等を入手するのみならず、A社の信用補完の観点から、同社の親会社であるFUNAI GROUP株式会社(旧:船井電機・ホールディングス株式会社)の連帯保証を取得する等の措置を講じていたものの、A社及び連帯保証先に係る最新の財務情報の取得等が適切にできておらず、実態把握を踏まえたリスク評価及び検討が適切にできておりませんでした。また、貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定及び検討においても、A社に対する債権を含む滞留債権のモニタリング等は行っていたものの、保証人を含めた直近の財政状況・支払能力などを十分かつ適切に評価及び判断するための基準やプロセスのルールの整備が明確化されておらず、その結果本件取引に関する債務者及び保証人の財政状況・支払能力等を十分かつ適切に評価することができず、2024年9月期第2四半期決算において、本件売掛債権の回収の金額と時期に不確実性が存在することをもって、貸倒引当金を計上いたしました。これらを踏まえ、当社としましては、貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定及び検討において、評価及び判断するための基準やプロセスの整備が明確化されていなかったと考え、決算・財務報告プロセスに係る内部統制に関する不備があったと認識しております。
当社は、これらの不備を是正するために、以下の再発防止に関する取り組みを実施しております。なお、以下の各再発防止策のうち、(ア)乃至(エ)は上記開示すべき重要な不備の①及び②に対応する再発防止策、(オ)は上記開示すべき重要な不備の③に対応する再発防止策と位置付けております。
(ア)職務権限規程の見直しを行うことで職務権限を明確にし、また、「重要な契約書」の該当性に関する具体的な基準等に係る明確化を行い、個人の主観に依存しない判断ができるように変更する
(イ)重要性の高いイレギュラー取引に関する与信リスクの検討や実際の契約書の内容の確認手続を明確化し、リスク判断及びモニタリング方法の見直しを行ったうえで、当該取引の実行に際しては、役員会において、取引先等の実態を踏まえながら、実際に付与する与信金額についての情報や実際に締結予定の契約条項等を前提とした議論を行うとともに、必要に応じて弁護士等の専門家の審査を踏まえたリスク評価/検証を行うように徹底する
(ウ)役員会における議論内容に関し取締役及び監査等委員へ情報の共有を行うとともに、取締役会及び役員会への上程事項を明確にする
(エ)内部監査として与信限度額の変更履歴及び滞留債権のモニタリングを実施し、役員会に報告するとともに、適切な責任者が、重要な会計上の見積もりを要する項目については、十分かつ適切な検討資料を基に承認する
(オ)債権評価のルールを策定し、保証人の保証能力を含む貸倒懸念債権の回収可能性に関する十分かつ適切な検討及び判断ができるように基準及びプロセスの構築及び整備を行う
当社は、これらの不備につきまして、再発防止に関する上記の取り組みを実施しましたが、当事業年度の末日までに十分な期間を確保する事ができなかったため、是正を完了することができませんでした。当社は、これらの不備は、当社の財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いものと考えられるため、開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。なお、上記の開示すべき重要な不備に起因する必要な修正は、すべて財務諸表及び連結財務諸表に反映しております。
当社は、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の重要性を認識しており、再発防止策を真摯に実行するとともに、引き続き改善に向けた取り組みを実施し、適切な内部統制を整備・運用する方針であります。
該当事項はありません。
「3 評価結果に関する事項」に記載した、開示すべき重要な不備を是正するために、当社は、当事業年度の末日から内部統制報告書の提出日までに上記の再発防止策を継続的に取り組んでおり、今後も引き続き再発防止策を実行してまいります。
また、前事業年度に係る内部統制報告書の訂正報告書において開示すべき重要な不備としておりました、「イレギュラーな新規取引の与信判断について、役員会のリスク分析やモニタリングが十分かつ適切ではなかった全社的な内部統制に関する不備」に関しては、重要性の高い取引に関する基準等の明確化、取締役会及び役員会への情報伝達及びモニタリングを進めております。また、「イレギュラーな新規取引の与信判断に関する検討・承認プロセスが整備されておらず、また、取引拡大に伴い与信限度額を増加させるにあたり実質的に社内与信ガイドラインから逸脱した業務プロセスに係る内部統制に関する不備」に関しましても、職務権限規程の改訂を行い与信判断及び重要な契約書の承認に関して担当取締役の決裁権限とすることを明確化し、当該改訂通りの運用を周知徹底するとともに、当社にて設定していた全ての与信についてその妥当性を改めて検証し、役員会において与信限度額の見直し及び必要に応じた引き下げを行い、その後も内部監査を通じて与信に関する変更の有無及び内容に関するモニタリングを月1回行い、役員会に報告する運用を進めております。これらの取り組みを通じて当事業年度末日までに是正が完了するまでには至りませんでしたが、引き続き再発防止に向けた取り組みを進めてまいります。