文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
当社創業者が掲げる経営信条は、「商いの原点に忠実たれ」「商いの王道を歩む」であります。当社の経営理念・事業理念・行動指針等はすべてこの経営信条から生まれたものであり、当社はこの価値基準に従いビジネスを展開する方針であります。
当社の経営理念は「It's Hi Dental World 歯科医療に夢と未来を…」を主力商品のコンセプトに、徹底的な顧客サポート体制と圧倒的な開発力を備えた、ナンバーワン歯科電子カルテメーカーを目指すことであります。
当社が「夢と未来を」提供する対象は、顧客である歯科医院とその患者であり、双方の満足度を高める新しいコンピューターシステムやアプリケーションを開発し、これを手厚い顧客サポートで普及させることで業界シェア首位を目指すとともに、歯科医療全体の社会的地位の向上と歯科医院の繁栄に寄与し、もって日本経済の発展に貢献することを基本方針としております。
また当社の事業理念は「サポートなくして販売なし」「お客様の笑顔、お客様の満足が私たちの喜び」「顔が見え、心が触れ合う」であり、創業者の経営信条を反映させております。さらにこれを具体化した「地域密着のサポート」「精緻なサポート」「最先端の技術と知識を駆使したお客様の為の電子カルテシステムの開発」を行動指針として取り組んでおります。
当社が考える「商いの原点」とは「顔が見え、心が触れ合う」ことであり、この信条・理念を忠実に実践するためには、顧客1人1人と向き合い対話を重ね、信頼関係を構築することが重要となります。そのため当社は、短期的な事業規模の拡大や利殖を追求せず、中長期的な視点での営業拠点の拡大及び顧客数の増加を志向し、緩やかでありますが確たる土台を築いた上で成長・発展する方針です。
当社が直面している経営環境は、制度、業界、顧客の3つの側面があります。
(制度的側面)
わが国の医療制度は、医療費財源を賄う医療保険などの医療保障制度と、病院や医師等に関する医療提供制度の両面で成立しております。このうち医療保障制度の面では、近年の少子高齢化と医療費の膨張から、保険財政の悪化が課題となっております。そこで、2年に1度、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会等により診療報酬の改定が行われます。特に歯科については、診療報酬の計算が複雑多岐にわたり、都道府県単位でも解釈が相違するケースも出ております。
(業界的側面)
当社が属する歯科医療業界では、一般的に「歯科材料商」と呼ばれる代理店を通して、歯科医院の運営に必要な器具・備品等を調達することが一般的であります。そのため歯科用レセプト・コンピューターを手掛ける同業他社も、「歯科材料商」に販売業務を委託しておりました。
しかし近年、歯科用コンピューターの役割について、レセプト単独目的の使用から、電子カルテを始めとする種々のアプリケーションとの連携や、一定の条件下ではありますがオンライン診療の容認など、IT技術を歯科医院の運営に活用する素地が整ってきており、当社が提案する歯科電子カルテ統合システムの需要が高まってくると考えております。
また、医療業界では令和6年5月23日に開催された世界経済フォーラムにおいて「口腔保健への投資に関する世界的なコミットメント」と題する白書が発表され、共同で執筆したアメリカ歯科医師会等によると、歯周病と全身疾患との関係などを例に口腔衛生の重要性を強調する内容となっています。特筆すべきは、若年層で28%が口腔疾患によって仕事の能力に影響すると答えており、歯周病治療・予防による口腔衛生の改善こそが糖尿病・認知症・心疾患・呼吸器疾患等の改善にも繋がるということです。
したがって、全国10万人を超える歯科医師の中で歯周病専門医は、僅か1,177人 1.2%程度に留まるものの、今後は歯の形態の回復を主体とした「治療中心型」歯科治療から、患者様個々の状態に応じた口腔機能の維持・回復を目指す「治療・管理・連携型」歯科治療の必要性が増すと想定されます。つまり、「令和6年度診療報酬改定」を踏まえ、医療DXを取り入れた歯周病予防・訪問診療の重要性が、ますます高まってくると考えています。
(顧客的側面)
当社の顧客である歯科医院は全国に66,536件(JAHIS:一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(2024年9月30日現在))が開業されていますが、医院数は年々減少しております。主な要因としては、歯科医師のボリュームゾーンである60~69歳の先生方がリタイアしていき、さらに若い世代の歯科医師離れが影響しております。
このような要因により、歯科医院の経営が逼迫されたことや後継者不足で引退医院数が新規開業医院数を上回っていることによると考えています。
一方で、当社はDX化を推進している又は推進する予定の医院を対象顧客と考えており、66,536件のうち6割の約40,000件を想定しております。
歯科業界では、加速度的に医療DXの流れが進むと共に世界経済フォーラムの白書において、歯周病治療・
予防による口腔衛生の管理こそが糖尿病・認知症・心疾患・呼吸器疾患等の改善にも繋がるということが発表
されるなど、コロナ禍で影響が大きかった歯科医院にとって、今、大きなスポットが当たり、医科や介護施
設、ケアマネージャーとの地域連携における役割期待が大きく高まっていると当社では考えています。しかし
ながら、歯科衛生士をはじめとした医療従事者の不足や歯周病専門医の不足といった社会問題への対応や医療
DX推進へ向けた助成金・補助金に係る申請・期限等の情報提供や説明ができていない現状もあり、歯科業界
の未来を憂えざるを得ません。
そこで、当社は、AI音声による革新的ソリューション「Revoriuture*(レボリューチャー) 新たな世界へ!」
を合言葉に歯科業界に革命を起こし歯科医療の未来を明るく照らして参る所存です。具体的には、歯科医院を
医療DXの観点から助成金・補助金を活用して支援するソフトやマイナ保険証の利用状況等を見える化したソ
フトの販売を継続すると共に主力商品であるAI・音声シリーズ第1弾「AI・音声電子カルテ統合システム(Hi
Dental Spirit AI-Voice)」、第2弾「AI・音声歯周病検査(Perio chart Pro.Voice)」、第3弾「AI・音声サ
ブカルテ(Sub Karte-Voice)」のさらなる拡販へと繋げ、小児から来院できなくなった患者様まで一生のかかり
つけ医として、患者様個々の状態に応じた口腔機能の発達・維持・回復をめざす「治療・管理・連携型」歯科診
療への進化・転換・変革を支援していくことで、医院収入の拡大や医療費の抑制、その先にある国民のQOL向上
「生きる幸せ」へとさらに貢献して参ります。
そしてAI音声から生成AIを活用したAI・音声シリーズ第4弾・5弾の新たなる展開を通じて、中長期的目標
である3,000歯科医院を超えるAI・音声シリーズを拡販することで、売上高35億円 経常利益10億円 売上高
経常利益率28.5% 純利益7億円 売上高純利益率20.0%を上回る達成を目指します。
※ Revoriuture(レボリューチャー)はRevolution(革命・変革)とBrightly(明るく・煌々と)とFuture(未来・将来)を組み合わせた当社
世界観の造語です。AI・音声シリーズで「歯科に革命を起こして未来を明るく照らす!」という思いを込めています。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めておらず、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続等の体制をその他のコーポレ一ト・ガバナンスの体制と区別しておりません。
なお、当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「
当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針につきましては、次のとおりであります。
当社は、若手人員を主な対象として採用活動を行ってきましたが、多様な価値観を受け入れ、新たな価値を生み出す風土を醸成するため、他業種からの中途採用も含めた幅広い人材を対象とした採用活動に取り組んでまいります。
当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連のリスク管理における詳述な記載はいたしません。
なお、当社が認識する事業等のリスクに関する詳細は、「
ください。
当社グループの人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標は定めておりません。今後更なる人材育成及び社内環境の整備に努めてまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は医療情報システムの開発・販売業を営んでおります。当社は、その中でも歯科医療に特化し、長年にわたり構築してきた歯科電子カルテ統合システムと、地域密着型のサポート体制により、同業他社との差別化を図っております。これにより、日本の人口減少などマクロ的な影響を受けながらも、今後も顧客数の拡大を続けていくことができる状況と判断しております。
しかしながら、当社の歯科電子カルテ統合システムの優位性が失われるほど大きな技術革新の進展や、IT環境の著しい変化が生じた場合、あるいは顧客のニーズが著しく変化した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」に記載のとおり、当社が顧客としている歯科医院数は今後、減少する傾向にあります。また、日本の人口減少に伴い歯科医院運営の競争も厳しくなると予想されます。
これらの要因により、今後、引退による歯科医院数の減少や、経営不振による既存顧客による買替需要・投資意欲の減退等が当社の予測を上回った場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
HMGは当社の顧客である歯科医師が発起人となり組成された任意団体であり、加入資格は当社の顧客に限定され、ハードウェアの修理・保守に係る費用など会員の負担軽減を目的に規約に沿って運営されております。またHMG会員は年2回発行されるHMG会報により会員同士の情報交換も図っております。結成以来、HMGと当社は非常に良好な関係を維持しており、相互に敬意を払いながら共通の利益を追求するパートナー関係を構築しております。
しかしながらHMGは当社と独立した組織であることから、会員の総意により結成目的や運営方針に大きな転換が発生し、それが当社のビジネスモデルに大きな影響を与える場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は現在まで、歯科電子カルテ統合システムの開発・販売に取り組むとともに、市場及び顧客のニーズに真摯に対応することでシェアを伸ばしてまいりましたが、特定商品の供給に特化していることから、当該商品に重大な課題が判明した場合や、市場と大きなミスマッチが発生した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は株式会社日立製作所と特約店契約を締結し、現在のところ、継続的かつ良好な関係を維持しております。また同契約は、IT機器の安定調達、及び新商品開発時の知識面・技術面での助言や支援など、当社の事業活動の円滑化・安定化に貢献しております。
しかしながら、株式会社日立製作所側の特約店戦略や諸条件の変更があった場合、あるいは何らかの事由により当該契約を解除する事態となった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は歯科電子カルテ統合システムに特化した事業展開をしており、当社で開発したシステムを搭載するハードウェアについては、株式会社日立製作所等の仕入先から提供を受けることでコスト削減を図ってまいりました。
ただし、仕入先が限定的であることからこれらの取引先の経営環境の著しい悪化や、商品の供給に重大な問題が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は歯科電子カルテ統合システムとして、「Hi Dental Spirit」シリーズと附属するアプリケーションは自社で研究・開発を進めており、リリースしている商品について、自社で独自の品質管理を行っております。これまで重大な不具合等は生じておりませんが、何らかの特殊事情により展開している商品について重大な不具合等が生じ、これに対するリカバリーに多くの業務量を要する場合や、新規の供給が停滞するような場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
歯科医療業界においては、概ね2年に1度の頻度で医療保険制度の改正に係る診療報酬の改定が、また、概ね3年に1度の頻度で介護保険の改正に係る診療報酬の改定が行われます。当社では、このような制度上の改定に際して、その規模、業務量その他に応じて有償でプログラム改定作業を行い、これを売上高として見込んでおります。
しかしながら、制度上の改定等の範囲、規模、複雑性や高度性が当社の業務処理能力を上回った場合、あるいは、作成した改定プログラムに重要な欠陥やバグが含まれてしまった場合、当社が見込んでいた制度上の改定が全く発生しなかった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社の営業サポート社員は、新規顧客への営業活動と既存顧客に対する保守サービス等のサポート活動の双方を担当しております。そのためプログラム変更に伴う改定作業が必要となった場合、既存顧客に対するサポート活動の増加により、新規顧客に対する営業活動に支障が生じるおそれがあります。また、2年に1度の医療保険制度の改正及び3年に1度の介護保険制度の改正に係る診療報酬改定は4月に、歯科用貴金属の価格改定に伴う医療保険制度の診療報酬改定は3か月ごとに発生する傾向があります。またこれら以外にも、臨時的に診療報酬改定等が発生する場合もあります。そのため、当該プログラム変更の規模・業務量・頻度によっては、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は同業他社との競争に勝ち抜くため、最新の情報技術を活用した歯科医院向けのコンピューターシステムの開発に注力しております。しかし、開発の全てが順調に進み新商品・サービスを提供できるとは限らず、開発途中における修正や見直し等により新商品・サービスの投入に遅れが生じたり、開発そのものが中止された場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社の提供するWindows搭載サーバーやiPadなどの各端末に搭載されるOS(Operating System)の提供者により、それらのガイドラインや機能が変更され、当社が提供するコンピューターシステムのプログラム修正が必要となった場合、その修正の程度によっては、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社が安定的な成長を確保していくためには、「歯科医療や保険診療等の電子カルテメーカーとして必須の専門知識」と「ソフトウェア及びハードウェアに係るITスキル」「知識とスキルを駆使して行う説明会講師や顧客ニーズを引き出すコミュニケーション能力」を備えた人財の確保が重要となります。当社の経営理念を理解し、賛同しうる人財の確保を重要課題として、新卒の採用だけでなく、他業種を含めた職業キャリアの採用(中途採用)など、優秀な人財の獲得に取り組んでおります。また、人財教育に関しましては、OJTといった現場での実践を通じた教育に加え、専任講師による専門知識を習得する機会を増やし、プロフェッショナルとなり得る人物を育成しております。
しかしながら各都道府県への支社・支店、営業所の進出に対して、人財確保及び育成が追いつかない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
上述のように、当社が安定的な成長を確保していくためには優秀な人財の確保及び育成が重要となります。しかしながら、マクロ的な経済環境・雇用環境の変化や、個人の家庭環境・属性により当社を退職する社員が一定数存在しております。当社が提供する地域密着型のサポートサービスを維持するために必要な人員数を割り込む程の人財流出が発生した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社が保有する商標権は、ロゴマーク及び商品名である「Hi Dental Spirit 」(歯科電子カルテ統合システム)の2つであります。これらについて当社は、国内の同業他社及び類似業種における当社商標権の侵害の有無を確認しております。
また、当社が商品開発やプロモーション等を行う場合、必要に応じて第三者の特許権、商標権等の知的財産権の登録・使用状況を外部の弁理士等を通じて調査することで、知的財産権に関わるリスク低減を図っております。
しかしながら、当該調査をしても第三者の特許権、商標権等の知的財産権の登録・使用状況が明確に判明せず、結果として第三者の保有する特許権、商標権等の知的財産権を使用したこと等により第三者の当該知的財産権を当社が侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求等を受ける可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の主たるシステムは、その性質上、歯科医院の患者情報を扱うことになり、顧客におけるシステム切り替え時のデータコンバートや買替時など、当社も個人情報に関わることがあります。「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を果たすためにも、個人情報の保護の徹底を図り個人情報の保護の方針を定め、当該方針の遵守を徹底するよう努めるとともに、個人情報の取扱いに関する社内教育を行い、データも暗号化処理を施すなど、管理・運用面についても慎重を期しております。
また、社内における個人情報管理に関しても、運用担当者を厳格に定め、サーバー類の運用ルールも厳格なマニュアルに規定し、運用が適正に行われるように取り組んでおります。
これらを踏まえ、引き続き、第三者認証である個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の獲得などを、早急な課題と位置付け取り組んでまいります。
しかしながら、当社で取扱う個人情報等について、漏洩、改ざん、不正使用、外部からの不正アクセス、その他想定外の事態が発生する可能性が完全に排除されているとはいえず、これらの事態が発生した場合、適切な対応を行うための相当なコストの負担や、当社への損害賠償請求、当社の信用力の低下等によって、当社の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。万が一、個人情報が漏洩するような事実が発生した場合は、社会的信用を失墜し、それに伴う不利益は甚大なものとなり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、企業ブランドの持続的な向上を図るためにも、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識しております。そのため、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要であると認識しており、役職員等の社内関係者の不正行為等が発生しないようにコンプライアンス規程を制定し、当社の役職員等が遵守すべき法令及びルールを定め、内部監査等により遵守状況の確認を行っております。
しかしながら、法令等に抵触する事態や社内関係者による不正行為が発生する事態が生じた場合、あるいは事業の急速な拡大により内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社におきまして、創業者であり代表取締役でもある石井滋久は、当社の経営信条、経営方針、経営理念、事業理念、事業モデル、経営戦略のあらゆる場面で中心的な役割を果たしており、現在も経営戦略、会社の事業推進、営業施策とその推進等において、重要な役割を果たしております。
当社では取締役会及び執行役員体制を整え、役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化など権限委譲を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が業務執行を継続することが困難となった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、開発の拠点を岡山本社、地域密着型のサポートサービスの拠点を岡山本社とそれ以外の西日本を中心とした主要都市に設置し、商品は岡山本社から各拠点に配送する方式としております。当社の顧客は歯科医院という医療機関であるため、有事発生時であっても当社には従来通りの役割が求められます。そのため、本社や各拠点が被災等の有事発生時に備え、営業・物流も含めたサービス提供機能の維持を課題として取り組んでおります。
現状、これら自然災害・緊急事態等が発生した場合に備え、BCP(事業継続計画)策定により有事発生時への対処策を立案し、顧客、事業及び財務状況への影響を最小化するよう努めております。しかしながら、本社又は各拠点が自然災害や非常事態により被害を受け、その物的・人的損害が甚大である場合、感染症その他により地域的又は全国的に緊急事態宣言が発出され、経済活動よりも安全や健康が優先されるべき事態となった場合、当社の業務活動の継続自体が困難又は不可能となり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 大株主について
当社の代表取締役石井滋久(資産管理会社である有限会社エス・イーを含む)は、本書提出日現在で発行済株式総数の68.8%を保有する大株主であります。
同氏は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。
当社といたしましても、同氏は安定株主であると認識しておりますが、将来的に何等かの事情により大株主である同氏の持分比率が低下した場合、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善が進む中、緩やかな回復基調は続いているものの、原材料費上昇による物価高騰や人手不足による人件費高騰、さらなる国際的な情勢不安等、引き続き、先行き不透明な状況が続いています。
そのような中、歯科業界では、令和5年6月に厚生労働省より発表された「医療DXの推進に関する工程表」を踏まえ、過去に類を見ない大規模な「令和6年度 診療報酬改定」が行われ、加速度的に医療DXの流れが進んでいます。そして、令和6年5月23日に開催された世界経済フォーラムでは「口腔保健への投資に関する世界的なコミットメント」と題する白書が発表され、歯周病と全身疾患との関係性などを例に口腔衛生の重要性を強調する内容となっており、今後は、歯科医院の経営を治療主体から歯周病治療・予防を主体とした長期的な口腔機能管理型へと進化・転換・変革していくと共に、生産性向上や業務効率の改善、大幅な時間短縮を図ることで新たな医院収入の柱の創設に繋げていくことが不可欠です。しかしながら、歯科衛生士をはじめとした医療従事者の不足や歯周病専門医の不足といった社会問題への対応や医療DX推進へ向けた助成金・補助金に係る申請・期限等の情報提供・説明実施が全くできていないというのが現状です。
そこで、当社は全国の先生方へ「令和6年度 診療報酬改定」説明会をアンコール編も含めて全7回実施し、歯科医院を医療DXの観点から助成金・補助金を活用して支援するソフトやマイナ保険証の利用状況等を見える化したソフトを次々に開発・販売すると共に、下記①②③のAI・音声シリーズを拡販することで、激変する歯科業界のリーディングカンパニーとして圧倒的なスピードと開発力で大きな旋風を巻き起こして参りました。
① AI・音声シリーズ第1弾 「AI・音声電子カルテ統合システム(Hi Dental Spirit AI-Voice)」
先生が診療しながら、手袋を外さず、音声でカルテ作成・検査結果が記録でき、治療説明の会話録音とテキスト化による自費での診療トラブルを防止できます。
② AI・音声シリーズ第2弾「AI・音声歯周病検査(Perio chart Pro.Voice)」
歯周病治療・予防に係る検査と記録を歯科医師・衛生士1人で完結するだけでなく、短縮された時間を利用してお客様とのコミュニケーションやカウンセリングの時間に充てることで、患者様の満足度や歯周病予防への意識を高め、定期メンテナンス促進へ繋げることができます。
③ AI・音声シリーズ第3弾「AI・音声サブカルテ(Sub Karte-Voice)」
サブカルテのデジタル化により、歯科医院で共有する患者様のあらゆる情報を院内だけでなく訪問診療先でもAI・音声による入力と情報共有が可能となります。
このような取り組みの結果、当事業年度の売上高2,114,068千円(前期比3.5%増)、営業利益422,226千円(前期比82.8%増)、経常利益587,572千円(前期比52.3%増)、当期純利益401,809千円(前期比55.4%増)、上場来最高益更新となりました。
併せて、自己資本比率89.9%、売上高経常利益率27.8%、売上高純利益率19.0%となり、売上高経常利益率・純利益率で上場来最高の経営指標となりました。なお、2024年9月30日現在 PER 10.3倍 PBR 1.1倍 ROE 10.5%となっております。
②財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産合計は4,375,715千円となり、前事業年度末より314,080千円増加いたしました。
流動資産は1,983,887千円と前事業年度末より321,710千円減少いたしました。主な内訳は、有価証券償還に伴う現金及び預金の増加202,206千円、売掛金の減少61,485千円、有価証券の減少200,800千円と、預け金の減少266,118千円であります。
固定資産は2,391,828千円と前事業年度末より635,791千円増加いたしました。主な内訳は、ソフトウエアの減少46,064千円、投資有価証券の増加678,030千円であります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は441,619千円となり、前事業年度末より113,777千円増加いたしました。
流動負債は387,397千円と前事業年度末より108,592千円増加いたしました。主な内訳は、買掛金の減少28,024千円、未払法人税等の増加82,134千円、未払消費税等の増加39,132千円であります。
固定負債は54,222千円と前事業年度末より5,185千円増加いたしました。内訳は、退職給付引当金の増加5,185千円によります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は3,934,096千円となり、前事業年度末より200,302千円増加いたしまし た。主な内訳は、利益の獲得による増加と配当金の支払による減少の結果として利益剰余金が223,573千円増加したことによります。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は1,605,117千円となり、前事業年度
末より512,206千円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次のとおりでありま
す。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は504,437千円(前年同期は61,074千円の収入)となりました。これは主として法人税等の納付による121,142千円の支出等があったものの、税引前当期純利益の獲得による587,572千円の収入、減価償却費78,603千円の計上、投資有価証券売却益の計上110,817千円、売上債権の減少61,485千円等があったことによるものであります。
投資活動によって得られた資金は186,013千円(前年同期は360,864千円の支出)となりました。これは主として投資有価証券の取得による支出3,094,059千円があったものの、投資有価証券の売却による収入2,494,258千円、有価証券の償還による収入200,000千円、預け金の増減額による収入266,118千円、定期預金の増減額による収入310,000千円があったことによります。
財務活動によって支払った資金は178,243千円(前年同期は95,879千円の支出)となりました。これは主として配当金178,190千円の支出があったことによります。
④生産、受注及び販売の状況
当社で行う事業は、提供する商品の性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しておりま
す。
b. 受注実績
(注) 地域ブロック間取引はありません。
c. 販売実績
なお、当社は「歯科医院向けシステム事業」の単一セグメントであるため、収益形態別及び地域ブロック別に記載しております。
(注) 1.地域ブロック間取引はありません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、販売実績の総販売
実績に対する割合が10%以上の販売先がないため、省略しております。
また、ブロックごとの当社のシェアは次のとおりであります。
(2024年9月30日現在 単位:件)
(社会保険診療報酬支払基金 「レセプト請求別の請求状況」令和6年度8月診療分より)
(注) 1.九州ブロックは、福岡県、大分県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県で構成されております。
2.中国ブロックは、岡山県、広島県、山口県、鳥取県、島根県で構成されております。
3.関西ブロックは、大阪府、兵庫県、岐阜県で構成されております。
4.四国ブロックは、香川県、愛媛県、高知県で構成されております。
5.関東ブロックは、東京都、神奈川県で構成されております。
6.上記データは社会保険診療報酬支払基金による「レセプト請求別の請求状況」から、2024年11月15日時点
で公表されている2024年9月30日現在における公表数値と、同じく2024年9月30日現在における当社の顧
客数を対応させて記載しております。
7.上表の「オンライン請求歯科医院数」とは、オンラインによるレセプト請求を行っている歯科医院数
です。「電子媒体請求歯科医院数」とは、電子媒体(例えばCDロム等)を提出することでレセプト請求を
行っている歯科医院数です。各ブロックで記載しているこれらの数値は、(注)1から(注)5までで
記載している当社の営業拠点が所在する都府県の歯科医院数を合計しております。
8.ブロックごとの「オンライン請求歯科医院数」と「電子媒体請求歯科医院数」の合計を分母として、
ブロックごとの当社の顧客数の合計を分子として当社シェアを算定しております。
9.シェアの算定に当たって使用する当社の顧客数は、各営業拠点が管轄する顧客数であります。そのため、
実際の顧客の所在地と異なっている場合があります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度の売上高営業利益率は20.0%(前事業年度11.3%)と前年より上昇となりました。これは主として売上総利益が140,592千円増加し、販売費及び一般管理費が50,702千円減少したことに起因します。今後も継続的に全社的な生産性向上に向けて、事業活動全般に対して必要な施策を行い、より収益性の高い企業を目指して取り組んでまいります。
(売上高)
当事業年度の売上高は、2,114,068千円(前年同期比3.5%増)と増収となりました。
前期より導入したサブスク制度の本格始動により、「AI・音声電子カルテ統合システム」および「AI・音声歯周病検査システム」の継続的売上が好調に推移すると共に助成金を活用して訪問診療へ対応したソフトや「Clinicアシスト」第1弾・2弾・3弾、これら歯科DX支援ソフトの売上が大きく寄与いたしました。その結果、システム売上は堅調に推移し、販売システム数490件(前期は462件)と増加し、システム売上高は1,426,794千円(前年同期比5.2%増)となりました。
(売上総利益)
当事業年度の売上原価は、商品仕入高6,142千円増加したものの、利益率の高いソフト売上が増加したことにより、結果として当事業年度の売上総利益は140,592千円増加し、1,601,522千円(前年同期比9.6%増)となりました。
(営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、人件費が33,093千円減少し、さらに新聞広告等の広告宣伝費が18,586千円減少したこと等により、販売費及び一般管理費は50,702千円の減少となり、営業利益は422,226千円(前年同期比82.8%増)となりました。
(経常利益)
当事業年度の営業外収益に有価証券利息19,102千円、受取配当金8,800千円、投資有価証券売却益110,817千円を計上したこともあり、経常利益は587,572千円(前年同期比52.3%増)となりました。
(当期純利益)
当事業年度の当期純利益は、法人税、住民税及び事業税の計上198,504千円、法人税等調整額△12,741千円の計上により401,809千円(前年同期比55.4%増)となりました。
当事業年度の財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の運転資金等については、主に自己資金により充当しております。当事業年度末の現金及び現金同等物は1,605,117千円となり、将来に対して十分な財源及び流動性を確保しております。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたり、当事業年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要があります。これらの見積りについて、当社は当事業年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的な仮定等に基づき算定しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性の影響から、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。
当社が財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
(注) 1.特約店契約の解除事由として下記の定めがあります。
手形の不渡り・差押さえ・仮差押さえ・仮処分・競売・破産・民事再生・会社更生・債務不履行等
2.当社と株式会社日立製作所とは、1992年3月21日に特約店契約を締結し、その後円滑な取引関係を維持してまいりましたが、外部経営環境の変化に対応して契約内容の精査を行ったところ、2021年6月15日付で当該契約を更新いたしました。
当社は、歯科医院向けに特化したパッケージソフトを社内で独自開発し、これを商品として販売する「歯科医院向けシステム事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりません。
当社商品は、レセプト機能・電子カルテ機能・インフォームドコンセント機能・歯科医院の運営管理の効率化を推進する機能の4つを、一元的に統合して運用できる点にあります。この強みをより生かした商品開発を目的に、当社のシステム事業本部は、「最先端の技術と知識を駆使したお客様の為の電子カルテシステムの開発」という行動指針に基づき、基幹システム開発グループ7名、品質保証・クラウド開発グループ5名、サポート支援グループ3名の体制で研究開発に取り組んでおります。2023年9月期においては、日立製作所と協創によりAI音声認識技術と連携、歯科医が手袋を外さずに音声でカルテ入力ができるAI・音声電子カルテ統合システム「Hi Dental Spirit AI-Voice」をリリースしました。その後、歯周病検査・記録が1人で完結できるAI・音声歯周病検査システム「P-Voice」をリリース、さらに世界で幅広く使われている歯周病検査表と国際基準の専門的検査項目に対応した「Perio chart Pro.Voice」をリリースしました。そして、2024年9月期においては、いつでもどこでもリアルタイムでAI・音声による患者様のあらゆる情報の入力と検索・情報共有できるAI・音声サブカルテ「Sub Karte-Voice」をリリースしております。今後もAI音声認識技術を活用し、生産性向上の為の機能の開発に注力してまいります。
当事業年度における研究開発費の総額は、
①AI・音声電子カルテやAI・音声歯周病検査、AI・音声サブカルテ
日立AI音声認識技術と連携したAI・音声電子カルテ、AI・音声歯周病検査及びAI・音声サブカルテに係る研究開発活動
②クラウド型予約システムやスマホ診察券
クラウド型予約システムやスマホ診察券の新たな機能の追加、機能の向上等に係る研究開発活動
③「AI(人工知能)の活用」に即した研究
AI(人工知能)を活用した顔認証システム等に係る研究開発活動
④リモートサポート機能
JP1による歯科電子カルテ統合システムへのリモートサポートに係る研究開発活動