当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
MISSION:世の中から卒業をなくす
人は学ぶことで生きる知恵を身につけ、技術を革新させ、進化してきました。
「学び」には終わりはなく、学び続けることで社会が抱えている課題の解決速度が圧倒的に加速します。一方で、時間や場所、コスト、モチベーションなど、「学び」の障壁となるものもたくさんあります。これらの障壁を取り除くことで、すべての人が学び続けられる世界をつくることがSchooの使命です。
このミッションに伴い、”SCHOOL”の「終わりの”L”をなくす」ことで、Schooという社名は生まれました。
VISION:「あたたかい革命」が起こり続ける社会を残す
私たちが暮らすこの社会は、多くの人々が生んだ発明、努力、願いによってつくられました。ですが、少子高齢化という揺るぎない流れが、今の社会システムに留まることを許さず、たくさんの劇的な変化を私たちに要求しています。「誰かを想い、何かを変えるために頑張ること」。それが私たちの定義する「あたたかい革命」です。学びを通じた新しいつながりを編み、しがらみや壁を取り払って、社会課題を解く様々なイノベーションを生み出す。私たちの子供やその先の世代に「未来はきっと良くなる」と信じ続けられる社会を残すことを目指しています。
(2)経営環境
日本国内においては、少子高齢化等により2000年時点で約8,600万人いた労働生産年齢人口は2020年時点で約7,500万人まで減少し、2040年には約6,200万人まで減少すると予想されております(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)。労働生産年齢人口の減少が加速する一方、日本の労働生産性は停滞していることが社会課題として認識されております。
株式会社矢野経済研究所によると、当社の属する教育産業全体の市場環境(主要15分野計)(注1)は、2020年度には新型コロナウイルスの感染拡大によって生じた各種教室の休校措置や生徒募集活動の自粛など事業活動の大幅な制限により、市場を縮小させました。一方で、2021年度は、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を講じた上で事業運営が概ね継続できたこと、対面授業とオンライン授業の併用などによるサービス提供体制が確立したこと、コロナ禍で需要を高めたサービスが引き続き好調に推移したことなどを受けて全体市場が回復しました。2023年度は少子化の進行や物価上昇による家計の教育投資抑制などの影響を受けて、全体市場としては前年度割れとなりましたが、「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」の4分野は前年度の市場規模を上回りました。
2024年度は、政府の賃上げ促進政策などを背景として、教育への投資回復が一定程度進むことが想定され、教育産業主要15分野のうち、8分野(「学習塾・予備校市場」「幼児向け英会話教材市場」「資格取得学校市場」「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」)が成長することによって、教育産業全体市場としては前年度比1.0%増の2兆8,619億7,000万円のプラス成長で推移すると予測されております(出典:矢野経済研究所2024年10月2日発表「教育産業市場に関する調査を実施(2024年)」)。
社会人教育市場では、コロナ禍によるDXの加速化やニューノーマル、労働生産性向上やリスキリングへの取り組み、持続的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」への関心の高まりなどを背景に、社会人は働き方の多様化による「学び」直しの加速、企業は「学ぶ」機会の提供による従業員へのエンゲージメントの向上、高等教育機関は学生の確保のため社会人へ「学ぶ」機会を拡大、教育事業者は社会人のニーズにマッチした「学び」の提供など、時代の変化に即した知識・スキルの習得と、社会人が学びやすい環境の整備の必要性を強めております。
このような状況の中で、当社は、「学び」を起点として、人や社会の基盤となるサービスを提供したいと考えております。社会が抱えている課題はそれぞれが複雑に絡み合い変化・増減し続けていますが、学び続ける人が増えることで解決に寄与すると考えております。当社は、単なる学習サービスを提供する会社ではなく、「学び」によって継続的に成長できる社会を実現するために“世の中から卒業をなくす”ことを目指しております。
当社の事業の最大の強みは、「オンライン×みんなで」で生まれるコミュニティの性質を持った学習形態を提供するプロダクトと、10年以上に亘って蓄積してきた「受講生と共に内製で作り上げた約8,500本(注2)」の学習コンテンツであります。また、当社は主にSaaS(注3)と呼ばれるクラウド環境下でサービスを提供しており、主要サービスの収益は、利用料を定額課金するサブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル(注4)となります。このため、サービスの提供が開始された後は契約更新時に解約されない限り継続的に売上高が積み上がる性質を持っており、新規や追加の契約金額が解約金額を下回らない限りは収益が前年度を上回るという安定性を有しつつ、その収益基盤をもって安定的な成長を目指すことが可能となるビジネスモデルであると考えております。こうした当社サービスの強みを活かし、上述のように順調に拡大する市場を着実に獲得してまいります。
(注1)主要15分野計
「矢野経済研究所2023年10月6日発表「教育産業市場に関する調査を実施(2023年)」において、①学習塾・予備校、②家庭教師派遣、通信教育(③幼児向け・④学生向け・⑤社会人向け)、⑥幼児向け英会話教材、⑦資格取得学校、⑧資格・検定試験、⑨語学スクール・教室、⑩幼児受験教育、⑪知育主体型教育、⑫幼児体育指導、⑬企業向け研修サービス、⑭eラーニング、⑮学習参考書・問題集を指します。
(注2)学習コンテンツの本数
2024年11末時点における視聴可能な学習コンテンツ数となります。
(注3)SaaS
Software as a Serviceの省略表記で、パッケージソフトウエアをクラウドサービスとしてネットワーク経由でお客様に提供する形態で販売するサービスです。
(注4)サブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル
サービス利用期間に応じたサービス利用料金をサブスクリプション(定期購入)の形態で受領するビジネスモデルです。一度契約すると、解約しない限り継続的に繰り返し収益が獲得できるという意味から、サブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル(継続収益)と呼びます。なお、このビジネスモデルにおいては、前期までに獲得した契約は当期収益の基礎となり、当期の売上高はこの前期までに獲得した契約と当期新しく獲得した契約で構成されることとなります。
(3)経営戦略
当社は、「世の中から卒業をなくす」ことを実現するため、学びや教育を起点として、人や社会の基盤となるサービスを提供してまいります。そのために、主力サービスである「Schoo for Business」のサービス価値を向上させ、持続的な成長を支える強固な経営基盤を構築するとともに、新規顧客の獲得及び市場のニーズに応えるイノベーティブなサービス・事業の進化に向けた取り組みを進める方針であります。また、事業を拡大していくことにより積み上げる経営資源を活用し、日本国内で「社会人教育の第一想起」を獲得し、社会人教育市場のリーディングカンパニーの地位確立を目指して事業を展開してまいります。
当社では経営戦略をより早期かつ確実に達成するために、主に以下の取り組みを実施しております。
①マーケティングとセールスの強化
当社の持続的な成長のためには、当社が提供するサービスの導入を加速度的に増加させることが重要であると認識しております。
当社は、大企業及び中堅企業(注1)への「Schoo for Business」の導入拡大を成長戦略の柱に据えて、Web広告を通じたオンラインマーケティング施策の強化、組織営業力の強化のほか、大企業向けには、SaaSプロダクトと顧客課題に寄り添うオプションサービスを組み合わせることにより、顧客ニーズへの対応力を高める取り組みを積極的に行っております。
(注1)大企業及び中堅企業
当社は、従業員数2,000名以上を大企業、従業員数600名以上2,000名未満を中堅企業として顧客カテゴリを定義付けしております。
②カスタマーサクセス体制の強化
当社は、毎月の利用料を積み上げて継続的な収益を長期的かつ安定的に確保できる収益構造(サブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル)のSaaSを軸とした事業を展開しております。そのため、収益力を更に高めるには、初期段階の導入課題、運用課題を解決し、導入企業の利用継続を促進及びアップセルを推進することが重要であると認識しております。
当社は、顧客体験価値の向上が顧客による継続利用及び当社の収益向上に重要な役割を担っているとの認識のもと、導入初期段階の課題を解決し、継続的な運用サポートを提供するカスタマーサクセス体制を強化しております。法人向けの「Schoo for Business」については、初回導入時には特定社員向けの一部導入から開始し、その後全社導入に向けたアップセルを推進することで、ARPA(Average Revenue per Account)の向上を追求し、MRR(Monthly Recurring Revenue)を高めていく戦略を進めております。
③新規サービスの展開
当社が属する教育産業においては、コロナ禍によるDXの加速化やニューノーマルなど社会環境の著しい変化がもたらされたことから、急速な進化・拡大を続けており、当社においても顧客のニーズを満たす新サービスの展開を常に検討しております。今後、当社ビジネスの強みであるオンライン学習サービスの販売と連関するサービスの商品化を進めることで、持続可能な新たな価値を創造していく方針であります。
(4)目標とする経営指標等
当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するために、当社のSaaSから生み出されるサブスクリプション型のリカーリング収益(経常的に得られる当社サービスの利用料)を継続的に成長させることを基本方針としております。その達成状況を判断する上で、法人向けサービス「Schoo for Business」の、MRR(注1)、契約社数(注2)、ARPA(注3)及びNet Revenue Churn Rate(注4)を重要な指標としております。MRRは、毎月経常的に得られる当社サービスの月額利用料の合計額であり、経営上の目標の達成状況を把握するものです。MRRは契約社数とARPAにブレイクダウンすることができます。そのため、MRRを高めていくためには、契約社数の拡大、ARPAの向上が重要であると考えております。また、Net Revenue Churn Rateを低く抑えることで安定した収益拡大に繋げます。
(注1)MRR
Monthly Recurring Revenue の省略表記で、月次定期収益のことをいいます。
(注2)契約社数
法人向けビジネスの顧客社数のことをいいます。
(注3)ARPA
Average Revenue Per Account の省略表記で、1顧客当たりの平均売上金額のことをいい、各四半期決算月の法人MRR実績を四半期末時点のサービス提供社数で割って算出した金額を記載しております。サービス提供社数は、サービスの利用契約のあった企業社数で契約ベースのユニーク数となります。
(注4)Net Revenue Churn Rate
解約率は、既存顧客のアップセル/ダウンセルを考慮したNet Revenue Churn Rateを採用しており、四半期決算月ごとに以下の算式により算出しております。
「{今月新規法人MRR(当月獲得)-(今月総法人MRR-前月総法人MRR)}/前月総法人MRR」の12か月平均
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 優秀な人材の確保及び育成
今後の一層の事業拡大及び収益基盤の確立にあたり、優秀な人材の確保及び育成が重要と考えております。当社の「世の中から卒業をなくす」というミッションに共感する優秀な人材を適時採用するとともに、当社の事業領域において市場リーダーシップを構築していくため、各種研修等の人材育成制度を充実させることによって、既存社員の能力及びスキルの向上を図り、企業と人材が共に成長することのできる体制の整備・維持・改善を積極的に推進してまいります。
② 知名度の向上
当社の企業価値向上にとっては、「Schoo for Business」をはじめとした各サービスの知名度の向上を図り、社会人教育市場のリーディングカンパニーの地位を確立していくことが必要と考えております。また、知名度の向上は、大手企業との提携等も含めた事業展開をより有利に進めることや、サービスを支える優秀な人材を採用・確保することにも寄与すると考えており、それぞれに適した広告活動を推進していく方針であります。
③ 利益の定常的な創出及び財務健全性の確保
当社は、当事業年度に創業来初の黒字化を達成しましたが、広告投資を含む将来の事業成長のための投資及び当該事業成長を支える優秀な人材の採用強化を積極的に進めたことにより、前事業年度までの経営成績は営業損失となっております。一方で、先行投資に関しては金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等の資金調達により、今後の資金繰りに支障が無いように対応しております。
当社の収益モデルは、当社サービスが複数年にわたり継続して利用されることで収益が積み上がっていくストック型の構造にありますが、収益を積み上げていくために費用が先行して計上されるという特徴があります。事業拡大に伴い増加傾向にある人件費及び採用費、先行投資として計上される広告宣伝費等の費用については、顧客基盤の拡大に伴い売上高に占める比率を低減させていくことが可能となります。
今後の効率的な新規顧客獲得活動や継続率の確保と人材育成を通じて会社全体の生産性を向上させることにより、収益性の向上に努め、利益を定常的に創出できる体制を構築し、安定した財務健全性を確保していく方針であります。
④ 事業領域の拡大
当社は、主力サービスの「Schoo for Business」を中心に収益基盤を構築しておりますが、今後の更なる成長を実現するためには、積極的な新規事業の開発・育成をしていくことが課題であると認識しております。既存事業を拡大していくことにより積み上げる経営資源を活用し、学び続けられる仕組みを通じて社会課題の解決に貢献する、価値の高いサービスを積極的に展開することで事業領域の拡大を図ってまいります。
⑤ 情報管理体制の強化
当社が運営する事業においては、顧客情報、個人情報を多く取り扱っており、これらの情報管理体制の一層の強化が重要であると考えております。
個人情報保護方針及びインサイダー取引の未然防止を含む社内規程の整備並びに規程の運用の徹底、社内研修の実施を通じて、これらの情報については厳正に管理していますが、引き続き関連社内システムの一層のセキュリティ強化、社内研修の更なる整備等を図り、情報管理のための体制を強化してまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は、ミッションとして「世の中から卒業をなくす」を掲げ、学びを起点とした社会課題の解決並びに持続可能な社会の構築を目指しており、サステナビリティは当社事業にとって重要な事項であると考えております。そのため、適切なガバナンスを整備することで、株主・役職員・取引先などのステークホルダーや社会に対して経営の透明性を担保しながら事業規模の拡大を行うことが重要であると考えております。
その実現のために、当社のサステナビリティに関する取組並びにリスク管理については、サステナビリティ関連のリスク及び機会を含む経営トピックについて経営会議において議論、リスク・コンプライアンス委員会において報告・審議、重要な事項に関しては取締役会において報告・決議することとしております。
なお、取締役会は経営上のサステナビリティ関連のリスク及び機会を含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負う機関であり、企業経営等の知見・経験が豊かな社外取締役を含めた出席者で構成することで、他社の知見・経験を踏まえたより多角的なサステナビリティ及び内部統制に関する活動につながるようにガバナンス態勢を構築しております。
(2)戦略
当社における、人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。
①人的資本に関する基本方針
当社は、ミッション「世の中から卒業をなくす」を実現するために、Philosophyとして「Laboratory #105」を掲げています。「Laboratory #105」とは当社の行動規範の呼称で、まだ世の中にない価値を生み出し続ける「研究所」であるという精神を大切にしており、「#105」は創業時に事務所を構えていたマンションの部屋番号で、当初の想いを忘れずに実験し続けるという意思を表しています。まだ世の中にない価値をつくり続ける「研究所」として、他社・他者の模倣をよしとせず、“Schooだからこそ”の価値を発明し続けることを目指しております。そのために最も重要な資本は人材であると考えています。社会課題を解決できるような発明を組織として生み続けるために、また働く従業員それぞれが目指したいキャリアの実現を目指すために、社会変革に必要な人材の確保・育成はもちろん、多様な人材が安心して活躍できる環境の整備を進めてまいります。
②人材の育成方針
当社では、社会の変化に対応し、組織としてだけでなく従業員個人としても成長していくことなどを目的に、「学び続ける組織」を目指しています。主な取り組みとしては、企業内大学である「Schooユニバーシティ」を設置し、社員が自ら参加したい学部やゼミを選択し学ぶことができます。自己基盤、社会課題解決視点、キャリアオーナーシップを持った自律的な「輝く個」であるために、すべての社員が常に新しい学びによって行動の変化を起こし、成果につなげていくことをサポートしています。そして、学びを起点とした社員の「つながり」を強化することにより、学び続ける文化・風土をつくっていくことを通じて、継続的な人材育成に取り組んでおります。
③社内環境の整備
当社では多様な属性、才能、経験等をもった人材を積極的に採用しております。当社は事業拡大に対応するため、従来は主に専門能力のある人材を中途採用者として確保してきましたが、今後は、中途採用者に加え新規卒業者の採用を行うこととしております。当社が安定的に成長していくためには、中途採用者及び新規卒業者双方を採用していくことが重要であると認識しております。
また、性別や年齢、国籍、障がいなどに関係なく様々な人材が活躍できるよう、「とらわれない働き方」を重視しており、フレックス勤務、時短勤務、在宅勤務、育児休業取得などを促進し、多様な人材がやりがいをもって働ける組織の構築を推進しております。
(3)リスク管理
当社は、「
(4)指標及び目標
当社では、上記「戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針の遂行の管理に、次の指標を用いております。なお、管理職に占める女性労働者の割合は2028年9月期までに40%とする数値目標を掲げておりますが、他の指標に関する目標については現在策定中であります。
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指標 |
2024年9月期 |
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労働者の男女の賃金の差異 (注) |
全労働者 |
76.0% |
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正規雇用労働者 |
73.0% |
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パート・有期労働者 |
234.0% |
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(注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると判断した事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。
本項の記載内容は当社株式の投資に関するすべてのリスクを網羅しているものではなく、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針であり、当社のリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)競合について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)
社会人教育市場については、多くの企業が参入しております。その中でも、当社と同様のビジネスモデルを有している企業は複数社ありますが、サービスの特性、その導入実績、ノウハウによる技術等、様々な点から他社と比較して優位性を確保できていると認識しております。しかしながら、将来の成長が期待される市場であり、国内外の事業者が新たに参入してくる可能性があります。このため先行して事業を推進していくことで、さらに実績を積み上げて市場内での地位を早期に確立してまいります。しかしながら、今後において十分な差別化等が図られなかった場合や、新規参入により競争が激化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)想定以上の解約が生じるリスクについて
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)
当社の主力サービスである「Schoo for Business」はサブスクリプションモデルであることから、当社の継続的な成長には新規顧客の獲得のみならず、既存顧客の契約継続が重要であると考えております。予算及び経営計画には、実績をもとに一定の解約率を踏まえた継続率を見込んでおりますが、サービスの魅力の低下、追加機能やサポートに対する満足度の低下などにより、当社の想定以上の解約が生じた場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
そのため当社では、カスタマーサクセス体制の強化によって顧客満足度を高める施策を実施するとともに、機能開発やサポートの充実により継続率の維持・向上を図っております。
(3)継続的な投資と損失計上について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)
当社は、継続的な成長のため、事業に対する投資を積極的に進めていく方針であります。近年、オンライン広告等を活用した顧客の集客及び優秀な人材獲得を積極的に進めていることや、当社のビジネスモデル上、継続的に当社サービスを利用する顧客を増加させることで収益を積み上げ、投資回収を図る形態であることから、2023年9月期までの経営成績は営業損失の計上となっております。当社は、継続的な成長のために、営業や開発等における優秀な人材の採用・育成を計画的に行うとともに、知名度と信頼度の向上のための広報・PR活動、顧客獲得のためのマーケティングコスト投下等を効果的に進め、売上高拡大及び収益性の向上に向けた取り組みを行っていく方針であります。しかしながら、先行投資に応じた結果の収益を確実に予測することは困難であり、需要が予測と比較して低迷する可能性を含んでおります。今後も引き続き、費用対効果を慎重に検討の上、継続的な投資を進めていく予定ですが、一定期間内で投資に応じた効果が得られない場合には、営業損失の計上が継続するなど、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対しては、営業利益を定常的に創出するべく、新規顧客の獲得や既存顧客の解約防止等に注力してまいります。
(4)システムトラブルについて
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)
当社が展開する事業は、インターネットを介してサービスを提供する形態であり、アクセスの急激な増加等による負荷の拡大、自然災害、事故、不正アクセス、その他何らかの要因によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社のサービスは、外部クラウドサーバAmazon Web Services社が提供するサービス(以下「AWS」という。)を利用して提供しており、AWSの安定的な稼働が当社の事業運営上、重要な事項となっております。これまでのところ、当社においてAWSに起因する重大なサービスの停止やトラブル等は起こっておりませんが、システムエラーや人為的な破壊行為、自然災害等の当社の想定していない事象の発生によりAWSが停止した場合には、顧客への損害の発生やサービスに対する信頼性の低下などにより、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化のリスクは高くないと認識しております。
当社ではAWSが継続的に稼働しているかを常時監視しており、障害の発生又はその予兆を検知した場合には、当社の役職員に連絡が入り、早急に復旧するための体制を整備しております。AWSは、FISC安全対策基準(注)を満たす安全性を備えております。
(注)FISC安全対策基準とは、金融庁が金融機関のシステム管理体制を検査する際に使用する基準のことを指します。
(5)提供するアプリケーションの重大な不具合について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)
当社が提供するアプリケーションは、開発計画から本番リリースに至るまでの開発プロセスが定められております。顧客へ提供する前に、品質のチェックを十分に行った上で本番リリースをしておりますが、顧客への提供後に重大な不具合(バグ等)が生じ、補修等追加コストの発生や信用の失墜、損害賠償責任が発生した場合、当社の事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)情報管理体制について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)
当社では、業務に関連して多数の個人及び顧客企業の情報資産を取り扱っております。万が一、こうしたデータの情報漏洩、改ざん、又は不正使用等が生じた場合、若しくは何らかの要因からこれらの問題が発生した場合には、顧客への損害賠償やサービスに対する信頼性の低下などにより、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化する可能性は高くないと認識しております。
当社においては、2021年8月に情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001:2014(ISO/IEC 27001:2013))の認証を取得し、当該公的認証に準拠した体制を整備しております。また、個人情報保護管理規程、機密情報管理規程など、重要な情報資産の保護に関する規程等を整備運用するとともに、役職員に対し研修等を行い、情報管理の強化を図っております。加えて、情報セキュリティについては外部からの不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入防止についてもシステム的な対策を講じております。
(7)自然災害等の予期せぬ事象により、特徴である生放送ができなくなるリスクについて
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)
当社の本社及び放送スタジオは東京都渋谷区にあり、首都直下型地震や南海トラフ地震等を例とする大規模自然災害等が発生した場合、被災地域における本社及び放送スタジオの損壊、停電、及び交通、通信、物流といった社会インフラの混乱及び途絶、取引先の被災、設備の損壊や電力供給の制限等の影響等を受け、業務の停止やコンテンツの収録及び生放送の配信ができなくなる可能性があります。自然災害等の事象が発生する場合に備えて、代替となる放送スタジオの確保、リモートワークに対応したシステムとセキュリティ整備等、不測の事態に伴うリスクを最小限に抑えるよう努めてまいります。
(8)配当政策について
(顕在化の可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置付けておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。
将来的には、各事業年度における経営成績を勘案しながら、株主への利益還元を検討していく所存でありますが、現時点において、配当実施の可能性及び実施時期は未定であります。
(9)税務上の繰越欠損金について
(顕在化の可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
2024年9月期末時点で、当社に税務上の繰越欠損金が存在しております。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられておりません。今後当社の業績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合は、課税所得に対して通常の法人税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課されることとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
(10)新株予約権の行使による株式価値の希薄化
(顕在化の可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社では、当社の役職員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しております。また、資金調達を目的とした新株予約権を発行しております。
提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は9.4%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
(11)コンテンツの優位性が低下するリスクについて
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、自社で企画・制作をした豊富な学習コンテンツを当社サービスの強みの1つとして認識しております。これらのコンテンツは、「学びの場」として提供するプラットフォームを通して優秀な人材の確保及び教育等により品質の維持・向上を図るとともに、日本国外の同業種の動向分析や他社との差別化を進めることで競争優位性を高めるよう努めております。しかしながら、巨大資本等を背景にした新規参入事業者等により、短期的に数多くの学習コンテンツが構築される脅威が発生する可能性等があり、その結果、当社の提供するコンテンツの情報価値が相対的に低下し、当社の提供するサービスの価値が比例して低下した場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(12)コンテンツ管理体制の整備・強化について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
オンライン学習サービス「Schoo」では、ライブ配信コンテンツのタイムラインにユーザー自身がコメントを投稿できる仕組みとなっています。したがって、健全性に欠けるコメントや他のユーザーを誹謗中傷するようなコメントがユーザーによって投稿される可能性があります。
当社では、コミュニティガイドラインを策定し、サイト上に明示することによってサービスの適切な利用を促すよう努めています。また、ユーザーによる投稿内容が、利用規約で禁止している他のユーザーに対する脅迫、嫌がらせ等に該当する又は公序良俗に反する等、不適切と判断される場合には、運営会社が投稿情報の削除を行うことによって、健全なサイト運営を維持しています。また、専用のカスタマーサポートチームを設け、ユーザーからの問合せやクレームに対応することでユーザーコミュニティーとの良好な関係の構築にも努めています。
このような体制を構築しているにもかかわらず、不適切な投稿に対して当社が十分な対応ができない場合には、当社がサイト運営者として信頼を失う可能性があり、当社の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)インターネット関連市場について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社はインターネットを介してサービスを提供しており、インターネット及び関連サービス等の更なる発展が、当社が今後成長を図る上で重要であると考えています。
しかしながら、当社が事業環境の変化に適切に対応できなかった場合、又は、新たな法的規制の導入等の予期せぬ原因によりインターネット関連市場の成長が鈍化した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、最新の市場環境変化を常に把握できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や法的規制の変化に迅速に対応できるよう努めております。
(14)技術革新について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社が事業展開しているインターネット関連市場では、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に早く、インターネット関連事業の運営者はその変化に柔軟に対応する必要があります。当社が技術革新や顧客ニーズの変化に適時に対応できない場合、又は、変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
(15)Apple Inc. 及び Google LLC.の動向について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の提供するオンライン学習サービス「Schoo for Personal」及び「Schoo for Business」は、ユーザーにスマートフォン向けアプリを提供しており、Apple Inc.及びGoogle LLC.の両社が運営するプラットフォームにアプリを提供することが現段階における事業展開の重要な前提条件です。当社はプラットフォーム事業者の規約や方針変更に対する情報を収集し、適切に対応する方針であり、また、Webサイトによるコンテンツの配信も行っておりますが、これらプラットフォーム事業者の事業戦略の転換並びに動向によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)著作権等の知的財産権が侵害される、ないしは侵害してしまうリスクについて
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社のコンテンツについて、第三者から意図せずに著作権を侵害される可能性や第三者の権利を侵害してしまう可能性があり、権利侵害による信用力の低下や損害賠償請求等が発生した場合には、当社の事業が影響を受ける可能性があります。
これに対して当社は、コンテンツ作成時における商標権、著作権の侵害有無の確認、各契約の著作物に関する権利帰属の契約書レビューを実施しております。加えて、当社が事業活動を行うに当たり、第三者が保有する商標権、著作権、特許権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払い、著作権に関する社内研修の実施や弁護士に随時相談する体制の構築などの対策を行っており、当該リスクに一定程度対処できているものと考えております。なお、当社は、著作権、商標権、知的財産権等に関連する法令等の下で事業活動を行っており、現段階において事業及び業績に重大な影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありません。
(17)訴訟等について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社では、本書提出日現在において業績に影響を及ぼす訴訟や紛争は生じておりません。当社は法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を整備しておりますが、今後何らかの事情によって当社に関連する訴訟、紛争が行われる可能性は否定できず、かかる事態となった場合、その経過又は結果によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(18)広告等の販促効果低下のリスクについて
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、持続的な成長のため、興味関心・利用意向の高いより多くのユーザーを獲得し、また既存のユーザーを維持していくことが必要であると考え、インターネット広告の出稿を主とした広告宣伝活動を実施しています。
出稿媒体や実施タイミング及びその内容について費用対効果を検討したうえで、広告宣伝活動を行っております。販促効果の定量的なモニタリングなどの対応策も実施しているものの、マーケティング効果が十分に得られない場合に、新規ユーザーの獲得等が低下する可能性があり、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(19)法的規制等について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
現在のところ当社の事業継続に著しく重要な影響を及ぼす法的規制はありませんが、当社は、事業者又は個人との間で業務委託契約を締結し、業務を委任する場合があり、「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)が適用される場合があります。
当社は、教育・研修体制を充実すること等により、法令を遵守し事業運営を行う体制を整備しておりますが、運用の不備等により法令義務違反が発生した場合には、当社の社会的信用の失墜等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(20)人材の確保や育成について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、継続的な事業拡大のためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が最も重要であると認識しております。しかしながら、当社が求める優秀な人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、経常的な業務運営及び事業拡大等に支障が生じることや、採用経費が計画から乖離すること等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、従業員が働きやすい環境の整備や人事制度の構築、教育・研修体制の充実化に努めてまいります。
(21)内部管理体制について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制をさらに強化する必要があると認識しております。今後も人材採用及び育成を行うこと等により内部管理体制の強化を図っていく方針であります。しかしながら、事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(22)特定人物への依存について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の代表取締役社長である森健志郎は、当社の創業者であり、創業以来の最高経営責任者であります。当社事業に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定など、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしておりますが、何らかの理由により同氏による当社業務の遂行が困難となった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当該リスクに対しては、現在、同氏に過度に依存しないよう、経営体制の整備、人材の育成を行う等リスクの軽減に努めております。
(23)単一事業であることのリスク
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の売上は、オンライン学習サービス「Schoo」とその関連サービスで構成されており、単一事業となっております。社会人向けのオンライン教育市場の成長傾向は継続するものと見込んでおり、また、新規事業の企画立案に取り組んでおりますが、当該市場の成長が鈍化するような場合、事業環境の変化等への対応が適切でない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(24)財政状態に関わるリスク
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、必要に応じて資金を金融機関からの借入金により調達していますが、業績や財政状態の悪化あるいは金融不安等が発生した場合には、必要な資金を合理的な条件で確保できず、資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。また、今後の金利動向に著しい変化が生じた場合には、支払利息の増加等により当社業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。想定外の経営環境の悪化等がない限り、適切な事業運営を継続することによりリスクに一定程度対処できるものと考えておりますが、金融機関との良好な関係の維持・強化に努めるとともに、手元流動性の確保や資本効率の向上等の観点から検討を行い財務基盤の強化に取り組むとともに、資金調達手段の多様化等を進め、低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。
(25)外部講師の確保について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低)
当社のコンテンツ制作にあたっては、最新の経済・経営の諸問題や自己啓発等をテーマとして取り上げると共に、適確な見識をもって講義を行うことができる外部講師への委託が必要となります。現時点において当社では、これらの講師を確保し、継続してコンテンツを企画・制作して提供できているものと認識しております。
当社は、引き続きこれらの講師の確保に努めていく方針でありますが、今後将来において、当社が求める適確な見識をもって講義を行うことができる講師を適切な契約条件によって確保できなくなった場合、当社のコンテンツ制作に重大な支障が生じ、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(26)コンテンツ出演者の不祥事・風評等について
(顕在化の可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低)
当社は、講師や受講生代表等といった当社コンテンツの出演者が、事故、事件、不祥事等を起こした場合、又は巻き込まれた場合、風説、風評及び報道等が為された場合等には、適切に対応することが必要となります。その結果、これまで蓄積してきたコンテンツにおいて、該当する出演者が出演するコンテンツが使用できず、今後、新たなコンテンツの制作に支障が生じた場合には、当社の業績等に影響を与える可能性があります。これらの発生事象に対し、当社が適切に対応できなかった場合、当社対応の如何に関わらず、当社にとって悪影響がある形で当該発生事象が投資家、マスコミ報道、インターネット、その他社会一般に広まった場合等には、当社のブランドイメージ等が損なわれ、当社の業績等に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は2,283,149千円となり、前事業年度末に比べ200,145千円増加いたしました。これは主に、好調な業績により現金及び預金が122,165千円、売上の伸張により売掛金及び契約資産が76,386千円増加したことによるものであります。固定資産合計は132,170千円となり、前事業年度末に比べ116,877千円増加いたしました。これは主に、繰延税金資産が97,573千円、ソフトウエアが13,570千円、工具、器具及び備品が6,258千円増加したことによるものであります。
この結果、当事業年度末における資産合計は2,415,319千円となり、前事業年度末に比べ317,023千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は1,101,440千円となり、前事業年度末に比べ248,643千円増加いたしました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が146,000千円、売上の伸張による顧客からの前受により契約負債が90,315千円、未払消費税等が82,598千円増加し、営業費用等が減少したことにより未払金が58,667千円減少したことによるものであります。固定負債合計は664,000千円となり、前事業年度末に比べ416,000千円減少いたしました。これは、転換社債型新株予約権付社債を資本金等に転換したことにより200,000千円、長期借入金から1年内返済予定の長期借入金への振替により216,000千円減少したことによるものであります。
この結果、当事業年度末における負債合計は1,765,440千円となり、前事業年度末に比べ167,356千円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は649,879千円となり、前事業年度末に比べ484,380千円増加いたしました。これは、当期純利益184,387千円の計上により利益剰余金が増加、新株式発行に伴い資本金及び資本準備金が299,992千円増加したことによるものであります。なお、2024年3月の欠損填補を目的とした減資により、資本金及び資本剰余金が680,386千円減少し、利益剰余金が680,386千円増加しております。
この結果、自己資本比率は26.91%(前事業年度末は7.89%)となりました。
② 経営成績の状況
当事業年度における当社を取り巻く経営環境につきましては、不安定な世界情勢や為替変動及び原材料価格やエネルギー価格の高騰等の影響により、先行き不透明な状況が続いております。一方、社会人教育市場は労働生産性向上やリスキリングへの取り組み、持続的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」への関心の高まりなどを背景に、オンライン学習サービスの導入ニーズは一層高まっており、その市場は今後さらなる拡大が予想されております。
このような環境の中、当社は継続的な売上高成長の実現に向けて、広告宣伝・販売促進等の積極的なマーケティング投資、人材採用・育成をはじめとした組織体制の強化、顧客体験価値の向上に向けた学習コンテンツの質の向上、新規顧客の獲得及び既存顧客に対するカスタマーサクセスなどに注力してまいりました。大企業向けには、SaaSプロダクトと顧客課題に寄り添うオプションサービスを組み合わせて提案することにより、顧客ニーズへの対応力を高める取り組みを積極的に行いました。
また、当事業年度及び今後の業績動向等を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性の判断について慎重に検討した結果、繰延税金資産を計上し、法人税等調整額(△は利益)を△97,573千円計上いたしました。
この結果、当事業年度の売上高は2,852,780千円(前事業年度比42.1%増)、営業利益は116,260千円(前事業年度は623,721千円の営業損失)、経常利益は87,111千円(前事業年度は671,662千円の経常損失)、当期純利益は184,387千円(前事業年度は680,386千円の当期純損失)となりました。
また、当社は、大人の学び事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ122,165千円増加し、2,045,007千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動により得られた資金は115,178千円となりました。これは主に、税引前当期純利益87,343千円の計上、契約負債の増加額90,315千円、未払消費税等の増加額82,598千円、売上債権及び契約資産の増加額76,386千円、未払金の減少額61,631千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は19,806千円となりました。これは主に、減少要因としてソフトウエアの機能追加等に係る無形固定資産の取得による支出14,069千円、社員用のPCの購入に伴う有形固定資産の取得による支出5,968千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動により獲得した資金は26,793千円となりました。これは増加要因として、株式の発行による収入98,793千円があった一方で、減少要因として長期借入金の返済による支出70,000千円、上場関連費用の支出2,000千円があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。
|
当事業年度 (自 2023年10月1日 至 2024年9月30日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
2,852,780 |
142.1 |
(注)1.当社は、単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③資本の財源及び資金の流動性の分析
当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、広告宣伝費等の営業費用であり、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達していくことを基本方針としております。これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、取引金融機関と当座貸越契約を締結しております。
当事業年度末の現金及び現金同等物は2,045,007千円となり、十分な流動性を確保していると考えております。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について
当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するために、リカーリング収益(経常的に得られる当社サービスの利用料)を継続的に成長させることを基本方針としております。その達成状況を判断する上で、法人向けサービス「Schoo for Business」の、MRR(注1)、契約社数(注2)、ARPA(注3)及びNet Revenue Churn Rate(注4)を重要な指標としております。
全社売上高に占める法人向けサービス「Schoo for Business」のリカーリング収益が90.5%(2024年9月期実績)を占めており、四半期末月毎の各指標の推移は以下のとおりです。なお、2022年9月期第2四半期より重要な指標として管理を実施していることから、2022年9月期第2四半期末月以降の推移を記載しております。
|
|
2022年9月期 |
2023年9月期 |
||||||
|
2Q |
3Q |
4Q |
1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
||
|
MRR |
(億円) |
0.86 |
1.01 |
1.13 |
1.35 |
1.43 |
1.58 |
1.79 |
|
契約社数 |
(社) |
1,469 |
1,648 |
1,739 |
1,851 |
1,940 |
2,053 |
2,112 |
|
ARPA |
(千円) |
58 |
60 |
64 |
72 |
73 |
76 |
83 |
|
Net Revenue Churn Rate |
(%) |
1.74 |
1.68 |
1.55 |
1.75 |
0.96 |
1.15 |
0.81 |
|
|
2024年9月期 |
||||
|
1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
||
|
MRR |
(億円) |
1.92 |
2.16 |
2.33 |
2.47 |
|
契約社数 |
(社) |
2,185 |
2,307 |
2,400 |
2,491 |
|
ARPA |
(千円) |
86 |
92 |
96 |
96 |
|
Net Revenue Churn Rate |
(%) |
0.68 |
0.55 |
0.04 |
0.53 |
(注1)MRR
Monthly Recurring Revenue の省略表記で、月次定期収益のことをいいます。
(注2)契約社数
法人向けビジネスの顧客社数のことをいいます。
(注3)ARPA
Average Revenue Per Account の省略表記で、1顧客当たりの平均売上金額のことをいい、各四半期決算月の法人MRR実績を四半期末時点のサービス提供社数で割って算出した金額を記載しております。サービス提供社数は、サービスの利用契約のあった企業社数で契約ベースのユニーク数となります。
(注4)Net Revenue Churn Rate
解約率は、既存顧客のアップセル/ダウンセルを考慮したNet Revenue Churn Rateを採用しており、四半期決算月ごとに以下の算式により算出しております。
「{今月新規法人MRR(当月獲得)-(今月総法人MRR-前月総法人MRR)}/前月総法人MRR」の12か月平均
該当事項はありません。
該当事項はありません。