当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(会社の経営の基本方針)
当社グループは、「フラットヤーン技術を大事にしながら 常に変革し続け 世のため人のために役立つ会社であろう」を経営理念とし、フラットヤーン関連技術というコアコンピタンスを活かし、顧客のニーズに的確に応えるような製品やサービスを創造し提供していくことを通じて、社会的価値を創造するとともに自らも成長していくことを基本方針といたしております。
(目標とする経営指標)
2022年12月に、「飛躍に向けた原点回帰」をメインスローガンとする中期経営計画を策定いたしました。当計画は、前計画「UPGRADE For Next 60」の主要戦略であった「技術を、磨く」「製品を、広げる」「市場を、創る」「社員の成長と幸福を、伸ばす」を踏襲しつつ、目標未達に終わった前計画の未達要因への対処のための「v字回復戦略」を織り込んだものとなっております。
当計画においては、業績指標に加え、財務指標の目標数値を設定し、収益の拡大のみならず資本効率をより重視した経営を目指すとともに、安定した株主還元を目指してまいります。
(中長期的な会社の経営戦略)
2022年12月に策定した中期経営計画の内容は以下の通りです。
■対象期間
2023年10月期~2025年10月期の3ヶ年
■メインスローガン
飛躍に向けた原点回帰
v(victory)字回復、そしてJ(Jump)字成長へ、「v for J」
■事業環境に対応するためのv字回復戦略
(1)適正な価格の実現 + そのための製品競争力強化
(2) 最適な生産・物流体制の構築
■成長軌道に乗るためのJump戦略
(1) 技術を、磨く。
(2)製品を、広げる。
(3)市場を、創る。
(4)社員の成長と幸福を、伸ばす。
■数値目標(2025年10月期)
(金額単位:億円)
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業績目標 |
合成樹脂加工製品事業 |
機械製品事業 |
合計 |
|
|
|
売上高 |
266 |
64 |
330 |
|
|
経常利益 |
23 |
10 |
33 |
|
財務目標 |
ROE |
8%以上 |
||
|
D/Eレシオ |
0.6 |
|||
(会社の対処すべき課題)
国内外の経済活動が回復傾向にある一方で、収束が見えない世界を二分する政治的紛争、インフレによる世界的な物価高騰といった不安定な状況において、現在の事業環境はパンデミックから新たな局面を迎えており、このような環境下におけるさらなる事業拡大を実現するためには、新たな成長戦略の遂行が急務と考えております。
このような課題に対処すべく、2025年10月期を最終年度とした中期経営計画の達成を念頭に、「Jump戦略の遂行!」をスローガンに掲げ、リサイクル技術の開発、ブランドの再構築、新たな市場の開拓、働き方改革といった成長軌道に乗るための戦略に取り組み、変化の激しい事業環境に対応し、事業の拡大を図ってまいります。
[合成樹脂加工製品事業]
合成樹脂加工製品事業は、新たに加工部門を増強した笠岡工場の稼働が開始し、ものづくり変革元年と位置付けております。国内及び海外工場において、生産品目再編によるベストプロダクトミックスによる最適生産体制の構築と作り方の変革を行ってまいります。販売面では海外マーケットの拡大を目的とした国際営業部の新設による積極的な営業の展開、需要縮小が予想される国内市場の深掘りと再拡大のために、リサイクルブルーシート販売の拡大を目指したRe VALUE+戦略の実践、BtoCビジネス領域の拡大、販売競争に打ち勝つためのランチェスター戦略の深耕を行ってまいります。
[機械製品事業]
機械製品事業は、中国市場の市況悪化の影響から、液晶部材、リチウムイオン電池部材及び半導体関連資材などの市場を牽引してきた業界の成長が鈍化し始めており、新たな市場の発掘が急務であります。当社では、2023年3月に金属箔用スリッターに関する技術を譲受け、当社にとって新たな市場である電極材用途のアルミ箔・銅箔業界への製品展開を強化してまいります。また、カーボンニュートラルへの取組として、進行中であるブルーシートの水平リサイクル技術を製紙といった他分野へも展開するべく、他社との共同技術開発を進めることで、異材質の分離・洗浄・脱墨技術を確立し、軟包装材料の水平リサイクルにも取り組んでまいります。
[環境問題への対応]
ブルーシートからブルーシートへの水平リサイクルシステム「Re VALUE+」に注力しており、洗浄技術といった新たなリサイクル技術の開発に努め、環境負荷の軽減を目指し、リサイクル需要を取り込んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)基本的な考え方
当社グループは、「フラットヤーン技術を大事にしながら 常に変革し続け 世のため人のために役立つ会社であろう」という経営理念のもと、自らの事業領域を明確に定め、製品開発、原材料調達、製造、製品供給の各段階で関係する皆様及び地域社会や地球環境を含むすべてのステークホルダーの皆様に「役立つ」ことを目指して、持続可能な事業活動を続けてまいります。
(2)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するために、取締役及び執行役員並びに課長クラス以上の従業員で構成される経営会議における管理と取締役会による監督を中心とするガバナンス体制を構築しております。
サステナビリティに関するリスク及び機会については、事業の最前線での情報に直接触れる立場である課長を含む、経営会議(取締役及び課長クラス以上の従業員で構成し、四半期ごとに開催)にて審議しております。代表取締役社長は経営会議の議長として、サステナビリティを巡る課題が事業に与える影響を評価し、対応策の策定・実行を管理し、統括いたします。
取締役会は、サステナビリティに関するリスクと機会について、経営会議事務局より報告を受け、課題への取組や設定した目標をモニタリングし、監督いたします。
(3)リスク管理
サステナビリティに関連するリスクや機会については、各事業にて社内外の様々な事象の詳細な把握を行うとともに、それが当社グループの経営にどのような影響を及ぼすか分析し、経営会議にて情報共有・議論を行ったうえで対応策を立案しております。また実施中の対応策については、継続して進捗状況の管理を行ってまいります。さらに、必要に応じて取締役会に報告し、全社的な方針決定に反映しております。
このような当社グループのサステナビリティに関するリスク管理プロセスを通じて識別された重要なサステナビリティ項目は、以下の通りであります。
「環境問題・気候変動への対応」
当社グループは、化石燃料由来の原料を使用しており、最終ユーザーが不適切な廃棄を行うと環境に大きな負荷をかける恐れがあります。半面、気候変動の影響等で自然災害の被害が増加しつつある中で、当社が供給する防災関連製品はその被害を軽減し、気候変動への適応を進めることができます。
以上の点から、当社グループの行動が環境問題・気候変動に与える影響及び気候変動対策に係る政策・規制が当社グループの事業に及ぼす影響は、多様な経路をたどり、当社事業の将来を左右する最大の要因であると認識しております。
「人材育成及び多様性確保への対応」
2022年12月に策定した中期経営計画「v for J 飛躍に向けた原点回帰」の中で、4つの基本戦略の1つに「社員の成長と幸福を、伸ばす」を掲げ、生産年齢人口がより減少し働き手の確保が難しくなる環境下で当社グループの安定的な中長期的な成長のためには、人材育成及び多様性確保が重要と考えております。
(4)環境問題・気候変動への対応
①戦略
当社グループの主要製品の素材であるプラスチックは、性状安定性、耐久性、経済性などの長所があり、当面はこれに代わる素材の開発は困難であると考えております。また当社製品は、災害の防止・軽減や、被災地の復旧の際に使用されるものも多く、気候変動への適応に資するものであります。当社グループは、海洋ゴミ問題や化石燃料の消費といった負の側面を軽減しながら、プラスチック製品の使用を継続することが、経済・社会的に最善の選択肢であると判断しております。
そのための具体的な取組として、自社製品におけるプラスチックリサイクルの推進及びリサイクル機器の開発・普及を事業の重点課題に据えて、その実現に注力しております。
②指標及び目標
当社グループは、自社製品におけるプラスチックリサイクルの推進(循環経済への移行)及びリサイクル機器の開発・普及(環境関連製品開発)に、気候変動への対応(温暖化ガス排出量の削減)及び防災減災対策を加えた4つの施策を通じて環境問題・気候変動への対応を進めてまいります。
1)気候変動への対応:製品のライフサイクルにわたる温暖化ガス排出量の削減を目指します。
2)循環経済への移行:リサイクル原料を用いた製品の開発・販売及びその普及を図るためのリサイクルの仕組みの構築を進めます。
3)環境関連製品開発:リサイクル原料を使用したプラスチック製品及び高品位なプラスチックリサイクルを可能にする機器を開発・販売し、社会全体でのプラスチックリサイクルの普及を進めます。リサイクルを通じて、プラスチック製品製造時の温暖化ガス排出量及び天然資源の使用量削減に貢献します。
4)防災減災対策 :自然災害による被害を防止・軽減する製品の普及及び災害発生時の迅速かつ安定的な供給を行い、気候変動による被害の軽減に貢献します。
(目標値)
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2025/10期目標 |
2023/10期実績 |
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水平リサイクルシステム「Re VALUE+」による再生ブルーシートのリサイクル率 1)気候変動対応、2)循環経済移行、3)環境関連製品 |
25%以上 |
25% |
|
エコマーク認定商品販売量 1)気候変動対応、2)循環経済移行、3)環境関連製品 |
300%増 ※1 |
113%増 ※1 |
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高品位樹脂再生プロセス「GXライン」再生ペレット製造装置の販売額 2)循環経済移行、3)環境関連製品 |
30%増 ※1 |
3%減 ※1 |
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地方公共団体・建設業協会との、防災製品安定供給に関する防災協定締結件数 4)防災・減災 |
10件増 ※2 |
4件増 ※2 |
※1 2022/10期比
※2 2022/10期末比
(5)人材育成及び多様性確保への対応
① 戦略
当社グループは、2019年12月に策定した中期経営計画「UPGRADE For Next 60」及びその内容を継承し、2022年12月に策定した中期経営計画「v for J 飛躍に向けた原点回帰」の中で、4つの基本戦略の1つに「社員の成長と幸福を、伸ばす」を掲げ、立場や属性にかかわらずすべての社員が働きやすい職場を作り、多様な社員が能力を発揮することで、社員と会社の成長を目指しております。
当社グループは、現状女性社員の活躍の場が限られ、女性社員比率も向上の余地があるレベルにとどまっておりますが、今後生産年齢人口がより減少し働き手の確保が難しくなる中で、勤務時間の柔軟化や企業主導型保育所の運営など性別や出身国にかかわらず能力を発揮できる職場づくりを進め、多様な社員に働く場を提供していくことが社員、ひいては社会に「役立つ」ことと認識し、種々の取組を進めております。
1)人材育成
・課長クラス以上の経営会議への出席
各事業部門の事業の状況や、サステナビリティを含む当社の課題等を情報共有・議論するため四半期ごとに開催している経営会議に、課長クラス以上が参加することとし、若手管理職の経営意識の醸成に努めております。
・子会社への出向
海外を含む子会社に経営幹部として若手社員を出向させ、経営能力の向上を図るとともに社外との交流の機会を提供しております。
・展示会等への出展・参加
若手社員を国内外の展示会に積極的に派遣し、技術面の見聞を広めるとともに、人脈作りも推進しております。
また当社グループが展示会等に出展する場合、若手社員を中心としたプロジェクトチームを編成し、予算管理、設営からお客様対応まで、幅広く経験を積む機会を提供しております。
2)社内環境整備
・勤務時間の柔軟化
時間単位の有給休暇制度及び勤務時間を1時間繰り上げる「アーリータイム制度」を導入しており、子弟の保育園等への送り迎えや行政関係の手続きなど、様々なニーズに対応しております。
・企業主導型保育所の運営
岡山県倉敷市において企業主導型保育所を運営し、県内の事業所に所属する子育て中の社員が仕事とプライベートを両立できる環境整備に努めております。
・健康経営の推進
会社敷地内の全面禁煙や社員食堂でのヘルシーメニューの提供などを通じて、社員が健康に働けるような環境づくりを推進しております。
② 指標及び目標
前記の戦略を通じて個々の社員の能力を最大限発揮できる条件を整えるとともに、それが優秀な人材の採用にも結び付くものと考えております。さらに人材全体の総体としての能力を最大化するためには、個々人の属性に囚われない公平な採用を行う必要があります。
当社の事業環境を踏まえると、海外での事業展開が成長戦略の大きな柱であると認識しており、国籍や出身国にとらわれない実力本位の採用を行うことを通じて、当社の人材多様性を向上させております。
当社の採用方針としては、海外出身者を優先的に採用するのではなく、国籍等による差別を一切なくした採用を心がけております。その結果、大卒採用数に占める外国人比率が、複数年平均で県内大学の留学生比率を恒常的に下回らないことを目安とし、これを中長期的に達成することにより、一定の人材多様性が確保されるものと考えております。
[提出会社]
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指標 |
実績 |
目標値※ |
|||
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2021年10月期 |
2022年10月期 |
2023年10月期 |
3ヶ年平均 |
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|
大卒採用に占める外国人比率(%) |
- |
- |
8.3 |
2.5 |
5 |
(注)2022年度岡山県内の大学学生数:43,296人(出所:学校基本調査)
2022年度岡山県内大学の留学生数:2,205人(出所:岡山県内 外国人留学生の受入に関する調査)より算出。
国内連結子会社では海外事業の比率が低いこと、海外連結子会社は採用環境が異なることから、指標及び目標値の設定は行っておりません。
なお当社では女性の活躍の場を拡大するため、前項記載の取組に加えてさらなる改善策を講じ、それと並行して性別による待遇やキャリアパスの差異を解消していく予定で、それに伴う指標や目標のあり方についても引き続き検討してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 気候変動に伴うリスク
気候変動の直接的影響として自然災害の増加や海面上昇による物的被害や事業継続が困難な状況の発生などのリスクがあります。それに加えて、気候変動緩和策の進捗により、原材料の調達難や炭素税などによるコスト増加が生じる可能性があります。
これらのリスクに対して、次項のように災害対策を講じるとともに、柔軟な原材料調達を可能にする態勢整備や温暖化ガスの排出を最小限にするような事業活動へのシフトを通じて、影響を最小化してまいります。
また当社グループの製品には、防災関連用途など気候変動への適応に貢献するものも多く、事業機会の一つであると認識して当該事業分野を強化してまいります。
(2) 自然災害等のリスク
暴風、地震、落雷、洪水、火災、感染症の世界的流行(パンデミック)等の各種災害により、社員及び家族への身体的被害、事業資産への物的被害等により、事業活動レベルの低下または停止に至る可能性があります。
これらのリスクに対して、被害の発生及び発生時の損失を最小限におさえるべく、設備の防災対策、防災訓練の実施、連絡体制の整備、損害保険の付保等リスク管理に努めております。
(3) 法制度・規制に関するリスク
当社グループの事業活動が国内外の法令や規制に抵触した場合、多額の課徴金や事業停止を余儀なくされる可能性があります。
これらのリスクに対して、法務部門を始め関係部署や外部の専門家にて法令等に関する情報収集を行うとともに、行動規範などを通じて法令遵守を徹底しております。
(4) プラスチックを巡る環境変化に関するリスク
プラスチックは性状安定性や耐久性、経済性等に優れた素材ではありますが、海への廃棄プラスチックの流出問題や、化石燃料を主要原料とすることなど、地球環境に対してマイナス影響を及ぼしうるとの評価になりつつあります。その結果、プラスチック製品を製造・販売することの風評リスクや、将来的にはプラスチックの使用が制限される可能性もあります。
当社グループでは、当面はプラスチックに代わる素材の実用化は困難と考えており、プラスチックの使用を継続しながらそのマイナス影響を最小化することを基本方針としております。具体的には、生産ロスの再利用を徹底するとともに、使用後の製品を同等の製品に再生産する「水平リサイクル」の実用化を目指し、技術開発や回収の仕組みの検討を行っております。
(5) 原材料等の市況変動及び調達リスク
当社グループの合成樹脂加工製品事業は主にポリエチレン・ポリプロピレン樹脂を原材料として使用し、製造の際に熱源や動力源として電力を使用しております。これら原材料の価格は、原油・ナフサといった国際商品市況や為替相場の影響を受け、また電力料金も化石燃料等の影響を受けるもので、原材料価格や電力料金の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、機械製品事業におきましては、半導体などの部品の調達網に混乱が生じた場合、代替品調達によるコスト増や売上遅延のため、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、特定の原材料等への依存を減らすよう技術開発を進めるとともに、原材料等価格変動を製品価格に転嫁できるよう製品の競争力を高めることなどを通じて、原材料に関するリスクを抑制しております。
(6) 子会社の収益変動リスク
当社グループでは多様な製品を製造・販売することにより、製品ごとの需要や収益性の変動リスクを軽減する事業構造になっております。ただし個々の子会社においては、取り扱う製品の需要変動や販売地域の経済情勢などにより、収益が変動するリスクがあります。
このようなリスクに対して、グループ内の生産体制や販売体制では全体最適を追求しつつ、各子会社の事業活動に支障のないよう資金繰り等のリスクに対応する支援を行うとともに、子会社ごとの事業価値を正確に見積もることにより適切な経営管理を行っております。
(7) 情報セキュリティに関するリスク
サイバー攻撃等により当社グループのシステムで障害が発生した場合、事業継続に重大な影響が生じる可能性があります。また、情報漏洩が発生した場合、損害賠償責任が生じ、さらに会社の信用を喪失する恐れがあります。
これらのリスクに対して、適切な情報システムの整備・運用を行うとともに、社員への情報セキュリティ教育の実施やサイバー攻撃による損害をカバーする保険の付保などにより、情報システムに関連する事故発生の防止と、万が一事故が発生した場合の損害の軽減を図っております。
経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、世界的な新型コロナウイルス感染症の影響の縮小等に加え、国内では円安やインバウンド増加等による需要動向改善により回復基調にありましたが、ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナにおける紛争勃発、さらに中国経済の低迷も重なり、経済動向の大きな不安材料となりました。
このような状況のもと、当社グループにおきましては、電力費の高止まりや各種インフレの影響等により、ナフサ価格の落ち着きにもかかわらず原材料価格は想定ほど下がらず、また、改善傾向にはあるものの、機械部品の納期遅延も続く中、収益面への影響を最小限に留めるべく事業活動を継続してまいりました。
その結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高312億45百万円(前期比4.3%増)、営業利益19億79百万円(同43.7%増)、経常利益22億50百万円(同33.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、青島萩原工業有限公司が土地収用に伴い受領した収用補償金及び同社の清算に伴う子会社清算益を特別利益に計上した結果、31億18百万円(同230.7%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
合成樹脂加工製品事業
合成樹脂加工製品事業におきましては、資材価格高騰に伴う製品価格上昇に起因した買い控え等により、シートや一般原糸の販売が伸び悩んだ一方で、国内向けでは防災用途製品として根付いてきた粘着テープの原反が好調、海外向けではアメリカ合衆国で需要が拡大しているメルタックが好調、バルチップの販売数量は前年並みであったものの円安効果による売上増加もあり、全体でも増収増益となりました。インドネシア子会社「ハギハラ・ウエストジャワ・インダストリーズ社」におきましては、バルチップの生産は順調に推移しましたが、主要製品であるフレキシブルコンテナバッグの需要減少に伴う生産調整の影響、FSSC22000規格の食品用梱包袋の市場投入の遅れにより減収減益、国内子会社「東洋平成ポリマー株式会社」におきましては、買い控え等の需要の後退による生産量の減少により減収となりましたが生産性改善等により増益となりました。
その結果、売上高は263億53百万円と前期に比べ7億82百万円(同3.1%増)の増収となり、営業利益は16億55百万円と前期に比べ4億78百万円(同40.6%増)の増益となりました。
機械製品事業
機械製品事業におきましては、国内向けのスリッター関連機器は、工業材料用途の販売が伸びた一方で、軟包装材料用途での販売が減少し、海外向けは、中国の市況悪化を受けて二次電池、半導体、及びディスプレイ関係材料等、今まで売上を牽引してきた市場における需要減退により大きく減少しましたが、全体では増収となりました。また環境意識の高まりにより、プラスチックの再生に関連した設備の売上が順調に増加し増収となりました。生産面では、長納期化が問題となっていた制御機器を中心に部品のサプライチェーンが改善しつつあり、受注から出荷までの納期短縮傾向が見えてまいりました。
その結果、売上高は48億91百万円と前期に比べ5億9百万円(同11.6%増)の増収となり、営業利益は3億24百万円と前期に比べ1億23百万円(同61.8%増)の増益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7億24百万円増加し、53億97百万円となりました。
当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度に収益として認識した青島萩原工業有限公司の立退きに伴う収用補償金20億22百万円(当連結会計年度における受取額13億95百万円)を含む税金等調整前当期純利益44億98百万円の計上に加え、減価償却費15億3百万円を主とする資金の増加がある一方、法人税等の支払額10億27百万円を主とする資金の減少により、45億79百万円(前連結会計年度比35億円26百万円の収入増加)の資金の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、生産設備の新増設、更新及び合理化投資等の有形固定資産の取得並びに笠岡工場の建設資金支払い等による支出44億10百万円により、46億53百万円(同4億87百万円の支出増加)の資金の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の返済による支出4億39百万円及び自己株式の取得による支出6億36百万円並びに長期借入金の調達による収入28億円等により、10億42百万円(同3億35百万円の収入増加)の資金の増加となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
合成樹脂加工製品事業 |
18,261,466 |
91.8 |
|
機械製品事業 |
4,719,887 |
119.0 |
|
合計 |
22,981,354 |
96.3 |
(注)金額は販売価格によっております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
合成樹脂加工製品事業 |
原糸 |
2,356,309 |
109.7 |
254,825 |
211.8 |
|
梱包袋 |
1,665,073 |
96.1 |
51,742 |
53.7 |
|
|
計 |
4,021,383 |
103.6 |
306,568 |
141.5 |
|
|
機械製品事業 |
6,348,604 |
102.2 |
6,944,615 |
126.5 |
|
|
合計 |
10,369,987 |
102.8 |
7,251,183 |
127.1 |
|
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.合成樹脂加工製品事業においてクロス、シート及び土のうは主として見込み生産のため記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
合成樹脂加工製品事業 |
26,353,223 |
103.1 |
|
機械製品事業 |
4,891,940 |
111.6 |
|
合計 |
31,245,163 |
104.3 |
(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の採用や、資産・負債、収益・費用の計上及び開示に関する経営者の見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
・流動資産
当連結会計年度末における流動資産の残高は、234億75百万円(前連結会計年度末222億6百万円)となり、12億68百万円増加しました。これは主に青島萩原工業有限公司が土地収用に伴い受領した収用補償金及び銀行借入れによる資金調達等により現金及び預金が8億24百万円増加、機械製品事業において部品調達の遅れに伴い未完成となっている仕掛品が4億55百万円増加したこと等によります。
・固定資産
当連結会計年度末における固定資産の残高は、189億57百万円(同162億40百万円)となり、27億16百万円増加しました。これは主に笠岡工場の完成に伴い建物及び構築物が45億86百万円増加した一方、建設仮勘定が20億64百万円減少したこと等によります。
・流動負債
当連結会計年度末における流動負債の残高は、91億70百万円(同89億50百万円)となり、2億19百万円増加しました。これは主に支払手形及び買掛金が1億91百万円、未払法人税等が2億18百万円それぞれ増加した一方、その他流動負債が2億32百万円減少したこと等によります。
・固定負債
当連結会計年度末における固定負債の残高は、53億60百万円(同35億45百万円)となり、18億15百万円増加しました。これは主に笠岡工場等の設備投資資金に充当するための長期借入金が増加したこと等によります。
・純資産
当連結会計年度末における純資産の残高は、279億1百万円(同259億50百万円)となり、19億50百万円増加しました。これは主に利益剰余金が増加したこと等によります。
② 経営成績の分析
・売上高
当連結会計年度における売上高は、312億45百万円(前連結会計年度299億53百万円)となり、12億92百万円増加しました。これは主に海外向けのバルチップ、メルタック及びラミクロスの販売が好調だったことに加え、機械製品の売上増加等によります。
・売上総利益
当連結会計年度における売上総利益は、83億19百万円(同77億99百万円)となり、5億20百万円増加しました。これは主に売上高の増加及び製品価格の値上げ効果等によります。
・販売費及び一般管理費
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、63億40百万円(同64億22百万円)となり、81百万円減少しました。これは主に海上輸送運賃の減少等によります。
・営業外損益
当連結会計年度における営業外損益は、2億71百万円の利益(同3億4百万円の利益)となり、32百万円減少しました。これは主に受取保険金の減少及び支払利息の増加等によります。
・特別損益
当連結会計年度における特別損益は、22億48百万円の利益(同3億47百万円の損失)となりました。これは主に青島萩原工業有限公司が土地収用に伴い受領した収用補償金及び同社の清算に伴う子会社清算益等によります。
・税金等調整前当期純利益
当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、44億98百万円(同13億33百万円)となり、31億65百万円増加しました。
・法人税等
当連結会計年度における税金費用は、13億74百万円(同3億82百万円)となり、9億92百万円増加しました。
・親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、31億18百万円(同9億43百万円)となり、21億75百万円増加しました。この結果、1株当たり当期純利益は223円09銭(同65円86銭)となり、157円23銭増加しました。
③ キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローを主に、事業支出の2か月分を目安とする所要運転資金を確保するとともに、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」記載の方針による利益還元及び設備投資に充当した上で、借入金の返済による財務体質の強化を進め、将来の成長投資への備えとしております。
該当事項はありません。
当社グループにおきましては、研究開発活動は主として当社が行っております。
当社の研究開発活動は、新製品開発、既存製品の改良・改善及び新技術の開発であります。合成樹脂加工製品事業におきましては製品開発部が新製品の開発、既存製品の改良・改善を担当しております。機械製品事業におきましては営業開発課と設計部が担当しておりますが、技術高度化等の開発に関してはタスクチームを編成し効率的かつフレキシブルに対応しております。
研究開発スタッフは64名、当連結会計年度は研究開発費として
主な研究開発
(1)合成樹脂加工製品事業
主力製品であるバルチップは、一部稼働ではありますが、南米パラグアイでの生産を開始し、インドネシア及び日本に加え、3拠点での生産体制となりました。今後、土間用途の拡大を目指した製品開発を進めてまいります。また、本格的な事業化を目指し開発を進めております延伸多孔質体「レイシス」は、吊り下げタイプの防虫製品に加え、裏面にシール機能を持つ新たな貼り付けタイプの販売も開始し、市場の拡大及び様々な用途展開を進めております。さらに、ブルーシートの水平リサイクルプロジェクト「Re VALUE+」を推進した結果、建築工事用リサイクルシートとしてエコマークを取得し、水平リサイクルの拡大に注力しております。また、笠岡工場に新たに導入したシート用インクジェット印刷機の稼働が開始し、新たな加工技術や印刷技術を活用したシート製品のさらなる高付加価値化を推進してまいります。
当事業に係る研究開発費は
(2)機械製品事業
スリッター機器関連は、当社における新たな市場を開拓する目的で、2023年3月、「金属箔スリッター技術」を譲受け、さらなるスリッター市場の拡大を目指し、アルミ箔や銅箔といった市場に対し積極的な営業を展開しております。押出機器関連は、世界的なカーボンニュートラルへの潮流から、プラスチックのリサイクルニーズが高まっていることを背景に、製紙機械設備に強みを持ち、プラスチックリサイクルに必須となる洗浄技術や異材質を分離脱墨するための技術を持つ会社と共同開発研究契約を締結し、同社の製紙向け叩解装置のリサイクル分野への展開を進めると同時に増加するリサイクル需要に対応してまいります。
当事業に係る研究開発費は