1 【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項】

代表取締役社長永冶泰司は、当社並びに連結子会社(以下、「当社グループ」とする)の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用しております

なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものであります。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性があります。

 

2 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】

財務報告に係る内部統制の評価は、当連結会計年度の末日である2024年9月30日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠しました。

本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定しております。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行いました。

財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、当社グループについて、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定しております。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定しております。なお、連結子会社8社については、金額的及び質的重要性の観点から僅少であると判断し、全社的な内部統制の評価範囲に含めておりません。

業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、各事業拠点の前連結会計年度の売上高の金額が高い拠点から合算していき、前連結会計年度の連結売上高の概ね2/3に達している2事業拠点を「重要な事業拠点」としました。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として、売上高、完成業務未収入金、契約資産及び未成業務支出金に至る業務プロセスを評価の対象としました。

さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加しております。

 

3 【評価結果に関する事項】

以下に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、開示すべき重要な不備に該当するため、当連結会計年度末時点において、当社グループの財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました

 

3.1 今回発生した事案の発見に至った経緯と特別調査委員会の立上げ

当社は、当社連結子会社である株式会社長大(以下「長大」という。)に対して2024年6月17日に実施した内部監査において、長大が外注先に対し支払った委託費について、外注先の役務提供を受けた案件ではなく、別の案件に計上する態様の不適切取引が存在することが判明したため、同年8月8日に外部の有識者を加えた社内調査委員会を設置し調査を実施したところ、上記不適切取引とは別に、新たに外注先への不適切な前払い等の不適切な会計処理の疑義が判明しました。そのため、当社は、特別調査委員会を設置して徹底した調査を行う必要があるものと判断し、当社と利害関係を有しない外部の有識者によって構成する特別調査委員会を同年9月9日に設置し、調査を開始いたしました

特別調査委員会による調査の結果、長大において原価付替え、売上の先行計上という不適切な会計処理が複数拠点において、また、複数事業年度にわたって行われていたことを確認いたしました。また、長大以外の当社連結子会社においても、一部の案件について原価付替えが行われていたことを確認いたしました

 

3.2 長大における不適切な会計処理の原因分析

(1)不適切行為を行うに至った動機、機会

  長大における不適切行為を行うに至った動機として各従業員の意識の中に、原価(外注費・人工)の付替えにおいては①各案件の設定原価率の維持、②社内稟議(報告)の回避、③翌期以降の目標達成への備え、④サービス工号の取得の煩雑さ又は自らの人事評価への悪影響、⑤少額案件ごとの発注社内手続きの手間の回避、があることを確認いたしました。また売上の先行計上を行う動機として①各部門に設定された売上高の目標達成、があることを確認いたしました

  不適切行為を可能とした機会として①システム及び業務フローにおいて不適切行為を補足できる体制整備の不十分、②牽制機能が十分に働いていなかったこと、③外注先による協力を可能としていたこと、を確認いたしました

  また①長年にわたり、周囲の上司及び同僚が本不適切行為を常態的に行ってきたことにより、本不適切行為が一種の社内慣行と化し、過去に現場経験のある役職者等を含めてこれまでに疑問を持たずに来てしまったこと、②上長からの命令又は指示に従っていたこと、を確認いたしました

 

(2)本質的要因

  上述の動機、機会の確認結果により、不適切な会計処理が行われていた原因は様々でありますが、不適切な会計処理を行ってはいけないというコンプライアンス意識が浸透しておらず、安易に原価付替えや売上の先行計上が行われていることとなり、適正な会計処理に対するコンプライアンス意識の全社的な欠如であることを確認いたしました

  具体的には、①経営者からのトップメッセージとして「いかなるコンプライアンス違反も許容しない」という情報発信に不足があったこと、②全社的な会計ルールに対する認識の欠如、不十分な理解及びそのような認識・理解を是正促進するための教育・研修の継続的な実施が不足していたこと、③本不適切行為が一種の社内慣行と化していたこと、④不適切行為を行わせない社内手続き・評価システムの見直しが積極的に進められていなかったこと、⑤不適切行為に対するチェック機能・体制の強化が積極的に取り組まれていなかったことなどが、適正な会計処理に対するコンプライアンス意識の全社的な欠如をもたらした問題点であります

 

3.3 開示すべき重要な不備

  「3.2 長大における不適切な会計処理の原因分析」にて確認した点に基づき、長大の全社的な内部統制、及び業務プロセスの再評価を行った結果、下記の2点について不備があることを確認し、これらの不備は財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いものであり、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。長大以外の当社連結子会社においては、一部の案件について原価付替えが行われていることを確認しましたが、少額であり、かつ発生件数も少ないことから財務報告に重要な影響を及ぼすものではないため、開示すべき重要な不備に該当しないと判断いたしました

  なお、開示すべき重要な不備の識別が当連結会計年度末以降となったため、当連結会計年度末までに是正することができませんでした

 

(1)全社的な内部統制上の不備

  特別調査委員会の調査の結果、本不適切会計処理が行われてきた背景として、適正な会計処理に対するコンプライアンス意識が全社的に欠如していることが明らかになりました。このため、当社及び長大における全社的な内部統制において、①経営者からのトップメッセージとして「いかなるコンプライアンス違反も許容しない」という情報発信に不足があったこと、②全社的な会計ルールに対する認識の欠如、不十分な理解及びそのような認識・理解を是正促進するための教育・研修の継続的な実施が不足していたこと、③本不適切行為が一種の社内慣行と化していたこと、④不適切行為を行わせない社内手続き・評価システムの見直しが積極的に進められていなかったこと、⑤不適切行為に対するチェック機能・体制の強化が積極的に取り組まれていなかったこと等、これらに関する内部統制の整備状況及び運用状況が有効ではありませんでした

 

(2)業務プロセスにおける不備

  長大の「外部支払プロセス」では、1件につき所定の金額を超える発注については、(技術)部長の上長である事業部長による事前の承認が必要としていますが、事業部長によりプロジェクト番号と件名の整合性に着目した実質的な確認がなされないまま機械的に承認がなされたケースがあり、本来あるべき発見的統制において内部統制が適切に整備及び運用されておりませんでした

  加えて、実行予算の作成や、実行予算における所定の割合を超えない範囲での直接原価率の変更について、現在は管理技術者が起案し、技術部長が審査した上で、販売部門の長が決裁するフローとなっております。一方、実際には技術部長が、設定原価率に余裕のある案件の実行予算に余裕のない案件において生じた費用を付替えて計上することが可能となっており、かつ実行予算の変更の決裁権者であった販売部門の長は、案件の費用の詳細(特に技術面)を確認できていないケースもあり、内部統制が適切に整備及び運用されておりませんでした

  また、1件につき所定の金額以下の外注費については、管理技術者が審査・審議した後、技術部長が決裁することとされているところ、管理技術者が技術部長を兼任する部署も多く、管理技術者が外注費の付替えを自らの判断・権限において行うことが可能としており、管理技術者と技術部長が同一人物である場合の対応において、内部統制が適切に整備されておりませんでした

  長大の「原価計算・原価振替プロセス」では、原価率の厳しい案件のために作業した人工を、設定原価率に余裕がある案件のために作業した人工として日報に記載する等、内部統制が適切に整備及び運用されておりませんでした

また、一旦日報に入力した人工(原価)を事後的に他の案件のものに安易に振り替えることができることが可能なシステムとなっており、内部統制が適切に整備されておりませんでした

 

 3.4 再発防止策

当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、今回の財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備を是正するために、特別調査委員会からの提言を踏まえ、以下の再発防止策を講じて適正な内部統制の整備・運用を図ってまいります

 

(1)トップメッセージの発信

  当社の代表取締役社長が、今回の不適切行為等と類似の事象が再発した場合のリスクの啓蒙に努めるとともに、今後は会計ルールへの違反を含め、いかなるコンプライアンス違反も許容しないという姿勢を打ち出し、グループ全社に対して、強いメッセージを発信します。また、長大の代表取締役社長自らが、全支社を対象にした説明会を開催し、従業員に対し直接的に、これまでの経緯や原因を説明し、コンプライアンス意識の向上及び企業風土の改革の必要性を改めて周知した上で、全社を挙げて再発防止策に取り組むことを強く発信します

  本件は2025年2月までに実施します。

 

(2)会計ルールの再認識・十分な理解に向けて(社内研修・コンプライアンス教育の実施)

  これまでも不適切会計処理防止に関する研修を実施していましたが、従業員に十分浸透していなかったことを鑑み、今回の不適切行為をはじめとする不適切な会計処理や社内規則の潜脱を防止する内容を含むコンプライアンス指針等を作成し、全従業員に周知します。さらに、全従業員への教育方法を一層強化することを目的に、これまでの集合研修に加え、コンテンツを充実させたオンライン講習会も導入します。さらに、開催した研修動画をアーカイブし、全従業員が定期的かつ継続的に受講できる環境を整備します

  本件は2025年3月までに受講環境を整備し、以降の運用実施を図ります。

 

(3)長年の慣行に対して(組織風土の改善)

  当社グループは「人が財産」であると強く認識しています

  このため、全従業員が同じ目標を共有し、高いモチベーションを持って仕事ができ、働きがいのある職場を創出するよう取り組みます。従業員一人一人が、役職や立場に拘泥することなく、自社の問題に対して、忌憚のない意見を述べて風通しのよい議論を行うことができる環境を整備します

  具体的には、「部長マネジメント研修」や「管理職座談会」などを開催し、管理職が、部下との接し方・部下の能力の活かし方を学び、上下隔たりのない従業員間コミュニケーションの活性化を図ります

  本件は2024年12月より実施しており、以降、継続実施を図ります。

 

(4)不適切行為を行わせない社内手続・評価システムの見直し

   ①規則や手続きフローの見直し、明確化(稟議規程の見直し・運用の再検討)

  社内のガバナンスを保ち、健全な企業運営を行うためには、様々な項目の稟議が必要ですが、その手続きが適切に行われていませんでした。その理由として、本来の稟議の趣旨に対する認識不足、一部の項目での過度に通常業務を圧迫するほどの煩雑さがあげられます

  このため、稟議本来の意義を明確化して従業員に周知徹底するとともに、稟議基準や決裁フローの見直しを行うことで、運用の適正化並びに稟議手続きの負荷の低減を図ります。併せて、稟議決裁履歴の共有によるチェック・牽制機能を確保するため、内部統制部門、監査役、取締役等、複数の立場の者が閲覧可能となるシステムを構築します

  本件は、2025年3月までに整備し、以降の運用実施を図ります。

 

   ②部門・人材評価システムの見直し

  今後も、従業員と会社が共に成長する組織であるために、業績の向上は必要不可欠です。しかしながら、当社の健全な成長を図る上では、売上や原価に過度に比重を置くことなく、働き方等も含めた多様な観点による評価が必要と考えます。このため、部門評価・個人評価共に、現評価制度の課題や改善点を洗い出し、従業員と会社の持続的な成長を促す評価制度に見直します

  部門評価では、売上や原価率以外の多様な観点からの評価指標に重きを置くとともに、評価基準等を修正することで、業績偏重とならない評価手法に見直します

  また、昇降級を決める個人評価でも、業績目標達成度に過度に偏らない評価方法に改め、コンプライアンスの観点での評価軸を追加するなど、売上等だけではない多面的な人事評価システムを再構築します

  本件は、2025年3月までに方針を整備し、来期以降の評価に反映させます。

 

(5)不適切行為に対するチェック機能・体制の強化

   ①業務フロー・運用管理の改善

  予算管理を行う実行予算システムや日々の作業日報の不適切処理が及ぼす影響について、集合研修やオンライン講習会等にて継続的に伝え、再教育します

  また、管理技術者と技術部門長が同一の場合の権限集中回避、日報付替えの防止など、不適切な会計処理が物理的に行えないシステム改善を図ります

  本件は、2025年3月までに整備し、以降の運用実施を図ります。

 

   ②発見的統制の強化

  発見的統制を強化することを目的に、早急な内部統制部門の体制強化と監査内容の拡充を図ります。まずは、人的リソース強化のため、当社内部統制センターの増員を実行します。また、内部監査においては月次監査、実地監査及び特別監査において、会計処理の適正性の観点による監査を強化し、モニタリングシステムの監視機能強化に取り組みます。具体的には、業務進行過程の不正監視として、実行予算の見直し経緯、固定費、変動費、原価などの進捗率等、業務管理状況を常に把握できるようにし、不適切処理などを察知しやすい仕組みを構築します。さらに、これらの監視・測定、分析・評価の結果を、日常の適切なデータ投入の診断、内部監査の情報源として活用し、改善に繋げます

  本件は、2025年3月までに整備し、以降の運用実施を図ります。

 

   ③内部通報制度の周知徹底及び信頼の確保

  グループ内の不正を早期に発見出来るよう、公益通報者保護法の精神に則り、組織内の不正行為に関する通報・相談を受け付け・調査・是正する、グループ全体の「コンプライアンス・ホットライン」の存在や仕組みについて、改めて全従業員に周知します。また、「コンプライアンス・ホットライン」への通報の障壁となっている通報者不利益の不安を払拭するため、無記名方式によるWeb受付など、通報のしやすい窓口となる仕組み作りを図ります

  本件は、2025年3月までに整備し、以降の運用実施を図ります。

 

   ④外注先に対する措置

  従業員と会社が共に成長し、安定的な組織運営を図るためには、協力会社との連携は大変重要です。下請法の精神に則り、協力会社が不利益を被らず、こちらが期待する専門技術力を十分に発揮していただくための取り組みを図ります。まずは、当社グループの各社が発行する発注書の約款または締結する基本契約書に、当社グループから協力会社へ不適切な指示を受けた場合には、速やかに内部通報窓口への通報を促すよう記載することとします。また、ランダムに抽出した協力会社に対し、当社グループからの不適切取引に関する指示の有無に関するアンケートを継続的に実施し、「当社グループから協力会社への不適切取引に関する要請を許さない姿勢」を浸透させます

  本件は、2025年2月までに整備し、以降の運用実施を図ります。

 

(6)長大以外の当社連結子会社の再発防止策

   長大以外の当社連結子会社においても長大における再発防止策に準じて、取り組んでまいります

 

(7)再発防止策のスケジュールと実施体制

  上述の各再発防止策は、各項に記載のスケジュールに沿って、速やかに実行いたします。その際、内部統制部門を中心とした上で、項目ごとに主管部署を定め、検討・実施・モニタリングを行ってまいります。各主管部署は、詳細検討・導入に関して事業(技術)部門と協議・調整を行い、実効性の高い体制で進めてまいります

  再発防止策の全体については、「人・夢・技術グループ 信頼性向上委員会」を新設し、当社取締役から選任された委員長及び当社の内部統制センター、経営戦略センター、管理統括センター、IT戦略センターの各センター長が中心となって推進してまいります。当社と連結子会社が常に連携し、円滑な実施体制を構築します

 

4 【付記事項】

該当事項はありません。

5 【特記事項】

該当事項はありません。