第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループにおける経営方針、経営環境および対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

当連結会計年度においては、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスクの顕在化による原材料の価格高騰等の影響により、引き続き世界規模の経済への先行き不透明感が強まっております。

建設コンサルタント業界では自然災害リスクに備え、国土強靭化の推進や社会資本老朽化に対する適切な維持管理、長寿命化、更新への危急的な対応が求められております。また、情報通信技術(以下「ICT」という。)を活用したインフラサービスの高度化、急速に進む少子高齢化への備えや地域創生への対応、さらには、現在大きな変革期にある国内エネルギーの需要、供給政策への対応など、これまでにないスピードで発展する社会への貢献、コミットが求められております。これらは、いずれも我が国の発展に向けた根幹部分であり、その実現のために建設コンサルタントが果たすべき役割は、ますます大きくなっております。

このような状況の中、公共事業投資額については、安定的に推移しているほか、政府による防災・減災、国土強靭化対策の推進もあり、現在のところ国内公共事業を取り巻く環境はおおむね堅調に推移しております。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループでは、経営理念である「人が夢を持って暮らせる社会の創造に技術で貢献する。」を踏まえ、「人」「夢」「技術」をモットーに、国内外において人権を尊重し、関係法令、国際的ルールおよびその精神を遵守しつつ、持続可能な社会の創造に貢献することを目指しております。

 

(2) 経営戦略

 当社グループは、長期経営計画である「長期経営ビジョン2030」(2019年10月~2031年9月)を公表しております。さらに、この「長期経営ビジョン2030」の実現に向けての第2フェーズとして、2022年11月に公表しました中期経営計画「持続成長プラン2025」(2022年10月~2025年9月)を策定し、当社グループのさらなる成長に向けた基盤づくりを行う重要なステージと位置づけ、より具体的な目標及び施策をとりまとめております。

 

「持続成長プラン2025」

 

 数値目標                                  

 

売上高(百万円)

営業利益(百万円)

従業員数(人)

連結※

43,000

2,200

約2,400

 

※2024年11月26日に目標値を変更いたしました。

 

目標達成に向けた施策

 「持続成長プラン2025」では、『国土基盤整備・保全分野のさらなる強化と環境・新エネルギー分野及び地域創生分野の新たな事業分野としての確立。事業を支える多様な人材が働きがいを持てる環境づくりを推進。』を基本方針としております。引き続き要請の多い国土強靭化やインフラ維持管理等のニーズに対応した基幹事業の強化・拡大を図るとともに、新領域における事業開発や海外事業の強化、人材の確保及び育成への投資を重点的に行ってまいります。計画期間中は以下の5つの施策と3つの横断的な取組みに基づき事業を推進してまいります。

 

(事業軸Ⅰ 国土基盤整備・保全分野)

主要施策 1.人・夢・技術グループの基幹を担う国土基盤整備・保全分野のさらなる強化

事業軸Ⅰ国土基盤整備・保全分野において、構造、道路・交通、地盤、保全などの基幹事業における受注の拡大に向けて、基幹事業におけるさらなる技術開発を推進するとともに、グループ会社間の連携により顧客ニーズに応じた技術サービスを提供する。また、近年事業を拡大している河川事業について、さらなる受注拡大を目指す。さらに、技術人材の確保と育成、IT化やDXの推進等による業務実施体制の強化を図る。

 

(事業軸Ⅱ 環境・新エネルギー分野)

主要施策 2.カーボンニュートラルに関するあらゆる側面からの事業参画

事業軸Ⅱ環境・新エネルギー分野において、カーボンニュートラルに関するあらゆる側面からの事業参画を図ることで、新たな事業分野としての確立を図る。これまで推進してきた洋上風力発電事業関連の地盤調査のさらなる受注拡大を図るとともに、バイオマス発電事業の事業拡大、自治体や民間へのコンサルティングサービスの拡大を図る。

 

 

(事業軸Ⅲ 地域創生分野)

主要施策 3.「人・夢・技術グループが目指す地域創生」の実現に向けた多様なまちづくりのサービスの提供

事業軸Ⅲ地域創生分野において、地域創生の基盤となる「人・夢・技術グループが目指す地域創生」の実現に向けて、まちづくりの多様なサービスを提供する。具体的には、PPP/PFIアドバイザリーや建築・健康・まちづくりのコンサルティングサービスのほか、サービス購入型や独立採算型の PPP/PFI事業の運営、オンデマンド交通のサービスの高度化等を推進する。また、「人・夢・技術グループが目指す地域創生」のモデルとして、株式会社長大が支援・共同展開する「北海道更別村SUPER VILLAGE構想」において、データ基盤連携に基づくシームレスな行政サービスの提供を実現する。

 

(海外連携展開領域)

主要施策 4.新たな海外事業展開のための海外拠点及び営業・技術部門の体制強化

海外連携展開において、シンガポール及び VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)の海外拠点の体制強化、また、グループ会社間の海外営業・技術部門の連携を図ることで、東南アジアを中心とする海外業務の受注拡大を図る。

 

(国内事業推進)

主要施策 5. 新たな地域や顧客の開拓と災害時の対応強化

地域担当技術者の配置による地域ニーズの把握やグループ会社間の技術・営業情報の共有により、新たな顧客の開拓を推進する。また、地域ネットワークの形成やグループ会社間の連携により、災害発生時の調査や復興支援に迅速に対応できる体制を構築する。

 

(横断的な取組み)

横断的な取組み 1.多様な働き方の提示と採用・育成の強化

人・夢・技術グループの持続的な成長に向けて、多様な人材が”働きがい”を持てる環境をつくるため、長時間労働の改善や多様な働き方を可能にする環境整備を進める。また、グループ会社間の連携による採用の強化を図るとともに、研修プログラムやジョブローテーション制度など、人材育成のための制度を拡充する。

 

横断的な取組み 2.イノベーションによる新事業・新技術の創出とIT化・DX推進による圧倒的な生産性の向上

新たな事業領域の創出に向けて、スマートシティ、空飛ぶクルマ、量子コンピュータなどの技術開発と事業化を推進する。また、IT化やDXの推進により、業務遂行における圧倒的な生産性向上を図る。

 

横断的な取組み 3.グループのガバナンス強化とM&A・新事業投資の推進

プライム市場上場グループとして、グループ企業のガバナンスの強化を図るとともに、ステークホルダーへの適切な情報開示を行う。また、「長期経営ビジョン 2030」の実現に向けて、多様な機関との連携やM&Aによるグループ体制の強化を図る。さらに、新事業に対する積極的な投資を行うとともに、事業のモニタリングやリスク管理を徹底する。

 

  以上の方針に基づき事業を着実に推進することで、当社の持つ経営資源を有効に活用するとともに、様々なステークホルダーとの良好な関係を維持・発展させ、当社および当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の向上に資することができると考えております。

 

(3) 当面の対処すべき課題の内容等

 建設コンサルタントを取り巻く経営や事業の環境変化は大きく、早期の対応が課題となっております。大きな環境変化とは、①不適切な原価管理等の発生、②ICTの進展とインフラ技術への活用の推進、③頻発する大規模災害へのグループとしての対応、④再生可能エネルギー分野の拡大、⑤地域創生と増大する民間の役割、⑥多様化する海外事業とそのリスク管理、⑦より一層の働き方改革の推進、⑧持続可能なグローバル社会形成への貢献であります。今後、当社グループは、他社に先んじて上記環境変化に対処してまいります。

 

①不適切な原価管理等の発生

 当社連結子会社である株式会社長大において、2024年6月17日の内部監査にて、協力会社への委託費について、協力会社の役務提供を受けた案件ではなく、別の案件に計上していたことが判明いたしました。このため、同年8月8日に社外の有識者を含む「社内調査委員会」を設置して調査を実施しました。その後、調査を進める中で、さらに高度かつ客観的・中立的な判断が必要との認識に至り、同年9月9日付けで、外部の有識者からなる「特別調査委員会」を設置してさらに深度のある調査を実施し、同年11月26日に本案件に関する調査報告書を受領いたしました。

 各種調査の結果、株式会社長大において、原価率調整等のための外注費の付け替えや人工の調整、また、売上の先行計上など、売上額や、利益の計算の基礎である原価を操作するという不適切な会計処理が行われていたこと、また、基礎地盤コンサルタンツ株式会社においても一部で不適切な会計処理が行われていたこと、これらが過年度においても行われていたことを確認いたしました。

 当社は、この事象を重く受け止め、同調査報告書の内容を踏まえ、原価管理等に関するチェック機能の強化やコンプライアンス教育の徹底などの当社及び当社連結子会社が今後実施すべき再発防止策をとりまとめ、同年12月16日に開示いたしました。今後は、これらの取組みを確実に実施し、信頼回復に努めてまいります。

 

②ICTの進展とインフラ技術への活用の推進

 質の高いインフラの整備とサービスを実現するために最先端のICTの活用が課題となっております。当社グループも、建設コンサルタントとして様々な関連技術の開発・導入に注力しており、オンデマンド交通支援システムによる過疎地へのモビリティ支援事業(コンビニクルの全国自治体展開)や橋梁点検ロボットの開発、特許取得、導入等を実現してまいりました。今後は、i-Constructionの実現に向けた産官学連携、オンデマンド交通支援技術を応用した自動運転の実現に向けた各種実証実験、これらモビリティも含めた将来のまちづくり事業や市場展開などを積極的に進めてまいります。

 また、それらの実現に向けては、ICT技術の高度化やイノベーションの強力な推進などが求められますが、新事業開発、技術開発への投資強化、M&Aによる体制強化などの取組みをさらに強化してまいります。

 

③頻発する大規模災害へのグループとしての対応

 2024年1月に発生した能登半島地震をはじめ、地震や台風、豪雨等による自然災害が頻発しております。当社グループは、地域で発生する災害に対応するため、災害対応マニュアルを作成し、迅速な災害対応が可能な体制づくりに努めております。今後も自然災害発生に対して、当社グループ企業間の連携のもと、社会貢献の一環として対応を行い、行政支援や被災地支援を実施してまいります。

 

④再生可能エネルギー分野の拡大

 地球規模での再生可能エネルギーの導入が求められる中、国内では第6次エネルギー基本計画が策定され、2050年「カーボンニュートラル」に向けた対応が明言されております。当社グループは、これまで以上に国内外における再生可能エネルギー事業に積極的に参画し、再生可能エネルギー政策の実現に貢献してまいります。既に、海外では、フィリピン国ミンダナオ島における小水力発電事業の供用開始、国内では山梨県南部町におけるバイオマス発電事業、青森県における風力発電事業、地熱エネルギー開発事業、また洋上風力発電における地質調査に積極的に取組んでおります。今後は、より一層再生可能エネルギー事業の取組みを拡大してまいります。

 

⑤地域創生と増大する民間の役割

 インフラの整備・維持管理・運営に民間が大きく関与するPPP/PFI事業は、我が国のインフラ整備・運営手法として期待されており、新たなインフラビジネスとして成長を続けております。その中で、当社グループは、各種公共施設等におけるPFI手法のアドバイザリー業務並びに運営業務について業界でもトップクラスの経験と実績を有しています。さらに、前述の再生可能エネルギー事業との複合展開や、地域創生に向けたPPP/PFI事業への取組みを推進しております。

 

⑥多様化する海外事業とそのリスク管理

 現在、アジア地域を主な市場とする海外事業は、橋梁設計、監理事業や鉄道関連事業のほか、港湾などの埋立て、地盤改良事業、また小水力発電事業や関連する地域開発事業など、多様な展開を進めております。その一方で、感染症リスク、及びロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスクなどにもさらされております。これに対し当社グループにおきましては、安全管理面として、関連情報を迅速に入手し共有するなどグループ子会社等に対する安全対策の強化を図っております。また、事業執行面では、情報の共有や人材の有効活用など、組織を超えてとるべきアクションを迅速に実践する仕組みを構築し、今後の更なるグループガバナンスの強化を図り、着実な海外展開を進めてまいります。

 

⑦より一層の働き方改革の推進

 近年、我が国の産業界全体において、長時間労働の解消やダイバーシティへの対応が課題となっております。当社グループでは、「持続成長プラン2025」の一つに「多様な人材が"働きがい"を持てる職場環境づくり」を掲げております。グループ各社のダイバーシティ推進担当者で構成したダイバーシティ推進委員会が中心となって、取組み事例の共有やダイバーシティセミナーの開催など、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I) 方針」に基づき、持続的な成長に向けて多様性を尊重し協働できる組織風土の醸成や多様な働き方を選択できる制度を整えてまいりました。

 具体的な施策として、フレックス制度の導入や育児休暇制度の利用促進を行っております。また、シニア技術者がそれまでに培った経験と技術を長く活かせる仕組みをつくり、実践しております。このように当社グループは、働き方改革を通じ、当社グループの課題解決だけではなく、社会全体への貢献を目指してまいります。

 

⑧持続可能なグローバル社会形成への貢献

 昨今、SDGsに代表される持続可能な社会形成の重要性が増しており、企業にも貢献が求められております。当社グループは、国内事業はもとより海外事業においても、より社会性の高い事業、例えばフィリピン国ミンダナオ島における地域経済開発プロジェクトの経験と実績を活かしながら、多様なフィールドで展開してまいります。

 これらを通じ、SDGsの先駆者として、国内外の自然環境と調和した社会基盤整備のための様々なサービス、当社グループ内におけるダイバーシティや脱炭素型経営の推進など、インフラサービスと企業活動の両面で、持続可能なグローバル社会形成への取組みに貢献してまいります。

 引き続き、上記の取組みを継続・推進することで、事業活動や収益性の維持を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、サステナビリティ基本方針「人・夢・技術グループは、人が夢を持って暮らせる持続可能な社会づくりに技術をもって貢献します。」のもと、人々の安心安全を守り、快適で夢の持てる社会の創造を目指しております。そして、ESGを軸にCSVやSDGsへの取組みを強化し、様々な得意分野を持つ企業と密接に連携して4つの分野「国土基盤整備・保全分野、環境・新エネルギー、地域創生、海外連携・新領域」における社会インフラサービスを提供しております。この当社グループの事業は、事業そのものが国土強靭化と地域創生に繋がりサステナビリティに直結いたします。

当社グループは、事業を通してステークホルダーの皆様からの期待に応え、新しい形の持続可能な社会の実現を目指してサステナビリティ経営を推進いたします。

 

(1) サステナビリティに関する重要な項目

当社グループのサステナビリティに関する重要な項目は次のとおりです。

① 気候変動に対する取組み

② 人的資本・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)に対する取組み

 

(2) サステナビリティに関するガバナンスとリスク管理

① ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ関連の課題対応を推進するため、代表取締役社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置し、主に気候変動対応に関する重要課題や対応方針等を検討・協議し、取締役会へ報告・提言いたします。取締役会はこのプロセスを定期的に監督し、重要事項を審議・決定いたします。

当社グループは、人的資本経営・ダイバーシティ経営を推進するため、「人財戦略部」および「ダイバーシティ推進室」を設置し、グループの人的資本・DE&Iに関する方針や重要課題に対する施策等を検討・立案し、取締役会において審議・決定されます。また、「人財戦略部」および「ダイバーシティ推進室」はそれらの実施状況をモニタリングいたします。

なお、「人財戦略部」および「ダイバーシティ推進室」が開催し、グループ各社の推進担当者等により構成される「人財戦略委員会」および「ダイバーシティ推進委員会」を通じて、人的資本経営・ダイバーシティ経営をグループ横断的に推進いたします

② リスク管理

サステナビリティ関連の取組みの進捗とリスクの管理として、「サステナビリティ委員会」において、当社グループの気候変動対応の取組みに関するPDCAを行います。前年度にグループ各社から排出された温室効果ガス排出量の算出を行い、排出量の増減と取組みの進捗をモニタリングいたします。また、気候変動の影響による事業へのリスク・機会を再評価し、リスクの最小化に向けた対応策を検討し取組みを推進いたします。「サステナビリティ委員会」は、これらの取組み内容や進捗状況と、重大なリスクであると特定した事項について定期的に取締役会へ報告いたします。取締役会は気候変動に関するリスクの管理状況や対応策などを評価・監督いたします。

また、人的資本・DE&Iに関するリスク管理は、社長直下に設置されている「内部統制センター」において、人的資本・DE&Iを含むグループの事業活動に影響するリスク情報を集約し、対応が必要であると認められたリスクについては適切に対応し予防策を講じています。また、特定したリスクや対応、予防策は、定期的に取締役会に報告されます。

 

(3) 気候変動に対する取組み

① 戦略

[シナリオ分析の概要]

人・夢・技術グループの主要7社(人・夢・技術グループ、長大、基礎地盤コンサルタンツ、長大テック、順風路、エフェクト、ピーシーレールウェイコンサルタント)の事業を対象として、気候変動や地球温暖化による事業環境の変化を想定し、当社グループの事業や経営に与える影響を定性的に分析・評価いたしました。分析においては複数のシナリオを適用し、想定される事業や経営への「リスク」「機会」と対応方針を整理いたしました。

気候変動から受ける事業や経営上の「リスク」と「機会」の分析のため参照したシナリオは次のとおりです。

・2℃未満シナリオ

温室効果ガス排出量の削減に向けた厳しい規制措置が取られ、今世紀末までの世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃~2℃未満に抑える。温暖化抑止に向けて大胆な政策や技術革新が進められ脱炭素社会への移行に伴う法規制や社会的要請への対応を迫られるシナリオ(IEA(国際エネルギー機関)のNZEシナリオ、IEAのSDSシナリオ)。

・4℃以上シナリオ

パリ協定に則して定められた約束草案などの各国政策(新政策)が実施されるも、今世紀末までの世界の平均気温が産業革命以前と比べて4℃以上上昇する。低炭素・脱炭素化は推進されず、異常気象災害の激甚化と頻発化による重大な物理的被害が顕著になるシナリオ(IEAのSTEPSシナリオ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5シナリオ)。

 

 

[主な「リスク」と「機会」]

シナリオ分析から想定される気候変動から受ける事業や経営上の「リスク」と「機会」を以下の通り整理いたしました。

シナリオ

分類

要因

事業・経営上の「リスク」

事業・経営上の「機会」

 

対応方針

 

内容

発生時期

影響度

内容

発生時期

影響度

1.5/2℃

シナリオ

市場

インフラに対する社会的ニーズの変化

■環境負荷の大きいインフラ技術やサービスの競争力の低下

・中

・長期

■脱炭素社会に対応したインフラ技術やサービスへのニーズの増加による市場の拡大

■再生可能エネルギーへの需要の増加による市場の拡大

・中

長期

■脱炭素社会に対応したインフラ技術やサービスへの強化(低環境負荷の設計、渋滞対策、建築物のZEH・ZEB化、カーボンニュートラル計画立案支援等)

■再生可能エネルギー事業の拡大(国内外における案件の開発と事業化等)

■脱炭素社会の実現に必要な新たなインフラ技術の開発(研究開発や新事業開発への投資)

政策

・規制

脱炭素社会に向けた

規制強化

■炭素税の導入等によるエネルギー調達コストの増加

長期

■自社の再生可能エネルギー事業の活用等により、炭素税導入によるエネルギーコストの抑制

長期

■企業活動におけるカーボンニュートラルの推進(グループとしての取組みと個人の行動変化)

■再生可能エネルギー事業の拡大(自社のエネルギー転換に活用)

評価

ステークホルダーの

評価の変化

■企業としての気候変動対応への遅れによるレピュテーションや社会的信頼の低下

長期

■気候変動への積極的な対応とステークホルダーへの適切な開示による企業価値の向上

長期

■企業としての気候変動対応への積極的な取組みと投資家への適切な情報開示(温室効果ガス排出量のモニタリングや対策の進捗状況等)

4℃

シナリオ

急性

気温上昇に伴う気象・自然災害の激甚化

■激甚化する自然災害への対応の遅れによる社会的な評価の低下

長期

■国土強靭化や災害対応に対するニーズの増加(災害に強いインフラ整備、災害発生時や復旧への対応)

長期

■災害発生時の迅速な対応やその後のきめ細やかな災害復旧対応を可能にするグループ内外の連携体制の強化(災害対応マニュアルの整備や協定の締結等)

■激甚化する災害に対応するインフラ整備ための新たな技術開発や指針の改訂

■自然災害や人的・建物被災による事業の停止や稼働率の低下

長期

■自然災害や人的・建物被災への対策により事業継続や稼働率の維持向上

長期

■BCPの整備と災害対策の強化(拠点の分散化による災害リスクの低減、グループ会社間の連携による事業継続等)

慢性

平均気温

上昇による

労働環境の悪化

■気温上昇による労働環境の悪化に伴う生産効率の低下

長期

■気温上昇の中でも労働が可能となる環境を整備し、生産性の維持向上

長期

■IT技術やロボット技術等を活用することで、悪条件下でも現場作業を可能にする体制の整備

 

分析期間:2050年カーボンニュートラルの実現を目標とした期間を設定

影響を及ぼす時期:短期(3年以内)・中期(3年超~10年以内)・長期(10年超)

影響度の程度:大(事業が大幅に縮小・拡大する程度の影響がある)・中(事業活動の一部に影響がある)・小(ほとんど事業への影響がない)

 

 

② 指標および目標

私たち人・夢・技術グループは、建設コンサルタントを主要な事業としており、インフラの調査、設計、維持管理、また、まちづくりやPPP・PFI事業などを通じてインフラ整備に深く関わっております。さらに、「長期経営ビジョン2030」において、新たなコンサルタント像として、コンサルティングエンジニアリングファーム、インフラサービスプロバイダー、また、イノベータとしての役割を目指しております。

国内の温室効果ガス排出量の概ね3分の2がインフラに関連するものと言われる中、当社グループは2050年カーボンニュートラルの実現に向けた当社グループの責任を再認識するとともに、気候変動問題への対応を当社の持続的な成長における重要な経営課題として捉えています。

当社グループは、2023年9月27日に公表した「人・ 夢・技術グループのカーボンニュートラルへの取り組み」に記載の通り、『自社のカーボンニュートラルの実現』と『社会全体のカーボンニュートラルへの貢献』の両軸からカーボンニュートラルを目指します。

自社の温室効果ガス排出量削減目標を設定し、2030年に35%削減、2050年にはカーボンニュートラルを目指し、「従業員の行動変化」と「グループの取り組み」から自社のカーボンニュートラルを実現します。また、自社の取り組みだけでなく、社会インフラに関する技術サービスを提供するという当社グループの事業を通じて、①インフラのコンサルティングサービスを通じたCO2削減への貢献、②事業者として再生可能エネルギーの供給拡大への貢献、③カーボンニュートラルな社会づくりに必要な新たなインフラ技術の開発 ── の3つの役割において、社会全体のカーボンニュートラルに貢献していきます。

詳細は、人・夢・技術グループのホームページをご参照ください。

(https://www.pdt-g.co.jp/csr/environment.html)

 

(4) 人的資本・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)に対する取組み

① 戦略

当社グループの主要な事業である建設コンサルタントは「人が財産」であり、人・夢・技術グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、多様な人材が互いに協働できる組織風土を醸成し、社員一人ひとりの個性と能力を最大限に発揮し、”働きがい”を持って活躍・成長できる環境整備を推進いたします。

 

[人財育成]

当社グループは、グループの連携による採用の強化を図るとともに、新入社員向けのグループ合同研修や、グループ各社において就業年数や役職ごとのキャリア形成を目的とした階層別研修を実施しております。また、グループ各社の各部門から構成される「技術交流促進委員会」「若手中堅技術者交流WG」の開催などにより、グループ技術者専門研修を実施しております。

[健康経営]

当社グループは、一人ひとりが活力にあふれ意欲を持って活躍できる職場を実現するためには、体と心の両面において健康であることが基本であると考えております。そこで、「人・夢・技術グループ健康経営宣言」を制定し、健康経営を重要な経営課題と位置付け、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

また、医療専門スタッフを擁する「健康支援センター」を設置し、健康相談を主軸に、心身の不調者との個別面談等による健康保持やダイバーシティ推進室と協働しセミナーを行うなど、社員の健康啓発を推進しております。

[ダイバーシティ経営]

当社グループは、「人・夢・技術グループダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)方針」を策定し、持続的な成長に向けて多様性を尊重し、協働できる組織風土の醸成や多様な働き方を選択できる制度を整え、DE&Iを推進しています。そしてグループ全社員に向けて、DE&I推進の取組みやグループ各社社長のDE&I推進にむけてのコミットメントを周知する機会として「ダイバーシティセミナー」を開催、DE&Iに関する知識向上のため、「DE&I・健康セミナー」、「DE&I・グローバルセミナー」を開催するなど社員への啓発も推進しております。

また、「女性活躍推進法」に基づき、対象のグループ各社において一般事業主行動計画を策定し、女性社員が活躍し続けられる職場環境の整備を進めております。

なお、当社グループの中核子会社においては、ライフイベント毎に使用できる社内制度を収録した「ライフスタイルハンドブック」を社員に配布し、各種制度の周知と利用の促進を図ってまいります。

 

 

② 指標および目標

指標

目標

実績(2024年度)

女性管理職比率

7.6%2025年度

4.3%

離職率

3.0%以下(2025年度

4.7%

女性の育児休業取得率

(注)1

100.0%2024年度

100.0%

法定残業時間超過者

(注)1

02024年度

0

有給休暇取得日

(注)1

最低取得日数の取得率100.0%

(2024年度)

最低取得日数の取得率100.0%

 

(注)1.中核子会社である長大の目標及び実績

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項及びそのリスクへの当社グループの対応方針は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 官公庁への依存

当社グループの当連結会計年度の売上高のうち、本邦の官公庁(国及び地方公共団体)に対する割合は国土交通省28.1%、その他官公庁34.6%、合計で62.7%を占めております。このため、公共事業投資額縮減や、受注単価の下落等が継続した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、公共事業投資額については、安定的に推移しているほか、政府による防災・減災、国土強靭化対策の推進もあり、今後においても堅調に推移すると見込んでおります。

また、当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、「持続成長プラン2025(2022年10月~2025年9月)」において民間市場の開拓、海外事業の拡大を方針として事業展開を行っており、国内公共事業に限らない多様な市場からの収益力の強化に取組んでおります。

 

(2) 法的規制

当社グループは独占禁止法、下請法、建築基準法、建設業法等、様々な法規制の適用を受けており、仮にこれらの法に抵触するような行為が発生した場合、社会的信用を失墜し、当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。

当社におきましては、当該リスクへの対応策として、これらの国内外の法的・制度的リスクを管理するために、法の要請に止まらず、内部統制システムを整備し、担当部門である内部統制センターは、取締役会(当連結会計年度19回開催)と、グループ連携推進会議(同13回開催)に陪席し、情報収集を行い、内部監査を行っております。特に官公庁からの受注に多くを依存している株式会社長大では独占禁止法遵守を強化するため、独占禁止法遵守マニュアルを策定し、談合行為が発生しない管理体制を整えております。また、下請法の遵守のため適正な発注プロセスの管理に注力しております。

さらに、従業員に対しては、新入社員研修、キャリア採用研修、階層別研修、拠点別研修等においてコンプライアンス教育を実施、啓蒙活動を行っております。

 

(3) 成果品に関する契約不適合責任

当社グループの成果品のミスが原因で重大な不具合が生じるなど契約不適合責任が発生した場合や指名停止措置などの行政処分を受けるような事態が生じた場合には、業績に影響する可能性があります。

主要子会社である株式会社長大、基礎地盤コンサルタンツ株式会社におきましては、当該リスクへの対応策として、品質保証システムISO9001を導入し、マネジメントシステムに基づく業務レビューを行っております。また、行政経験者による理事レビューを開催しております。さらに、内部監査の一環として、当連結会計年度は、国内においては全国の36拠点・165部門、海外においては8ヶ国13拠点(オンライン実施含む)を対象に行った実地監査にてチェックすることで、徹底した成果品の品質確保及び向上に力を注いでおります。また、万一、成果品に契約不適合が発生した場合に備えて損害賠償責任保険に加入しております。

 

(4) 為替変動に関するリスク

当社グループは、海外マーケットへの積極的な進出に伴い、外貨建取引が経常的に発生しております。今後、為替相場の変動によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、現段階では日本円建の契約が多いため影響は限定的と考えておりますが、今後海外業務の増加によりリスクが増加する場合には、為替予約によるヘッジ等の対応を検討してまいります。

他方、当連結会計年度における当社グループの連結売上高に占める海外比率は5.7%(22.6億円)に留まります。また、かかる海外売上高のうち、外貨建の契約額は一部であるため、現段階で為替変動に関するリスクが当社グループの業績に与える影響は極めて限定的であると判断しております。

 

(5) 業績の季節的変動

当社グループの売上高は、主要顧客である中央省庁及び地方自治体への納期が年度末に集中することなどから、第2および第4四半期連結会計期間に偏重しております。

当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、「持続成長プラン2025(2022年10月~2025年9月)」において民間市場の開拓、海外事業の拡大を方針として事業展開を行うとともに、発注者である官公庁に協力を仰ぐ等、業績の平準化に向けた対応を行っております。

 

(6) 災害による事業活動への影響

自然災害等が発生した場合、その規模によっては事業活動が低下あるいは制約される等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、事業継続体制の構築、BCP(事業継続計画)を策定するなど防災管理体制を強化しております。また、当社グループは全国に広く拠点を有しており、災害時にも他の拠点が業務遂行を補完し、事業の継続性を確保できる体制を構築しております。

 

 

(7) 海外での事業活動

当社グループが海外事業を行う国や拠点事業所を置く国で、経済情勢の変化や、国際紛争・テロ行為等が発生した場合は、事業の停止・中止や事業所の閉鎖・廃止など当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、外務省ホームページ等からの情報収集、グループ連携推進会議等において月次での情報収集・共有を行い、現地駐在員への情報提供を行うことにより、社員の安全維持と事業継続を行えるよう努めております。また、感染症への対策においては、適切な情報収集と共有から、迅速な初動対応につなげて、事業の継続と社員の安全確保を図っております。

 

(8) 情報セキュリティ

サイバー攻撃によるコンピュータウイルス感染や悪意のある第三者からの不正侵入等によって、情報システムの停止が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、「情報セキュリティ管理規程」に基づくセキュリティ管理をグループ各社へ展開しており、当該リスクへの対応策として、ウイルス対策やハッキング対策等のセキュリティ強化を計画的に図っております。また、社員への教育として、グループ間でのセキュリティに関する情報共有のほか、情報セキュリティハンドブックを作成し、グループ各社の社員一人ひとりへの配布、年6回の情報セキュリティ研修やウイルスメール模擬訓練の実施等を継続的に行い、セキュリティ意識の向上に努めております。

さらに、グループ各社の委員で構成したIT戦略推進委員会を年7回開催し、委員会の中で情報セキュリティの課題対応について検討しております。

この一連の情報セキュリティ対策や対応は、IT戦略推進センターが担当し、PDCAサイクルにより継続的な取組みを実施しております。

 

(9) 業務提携・企業買収等のリスク

当社グループは、今後他社との業務提携及び企業買収等を行う可能性があります。何らかの理由により提携・買収が想定した効果を生まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、業務提携及び企業買収等の実行判断に際しては、取締役会、グループ連携推進会議等において効果及びリスクについての評価を行い、意思決定を行っております。

また、企業買収等の場合、買収が完了した後も、「関係会社管理規程」に基づき四半期ごとに取締役会で報告を行い、モニタリングを徹底して状況の変化に応じて迅速な経営判断を行うことのできる体制を構築しています。今後も、グループ連携推進会議や取締役会等を通じたリスクの評価や管理を行うことでリスクの最小化に努めてまいります。

 

(10) 新規事業の取組みに伴うリスク

当社グループでは経営基盤の安定化を目指して、事業エリア・分野・顧客の拡大を推進しておりますが、新領域事業が既存事業のような安定した収益を創造するまでには一定の時間を要することが予想されます。また、新たな事業への投資に対する回収の遅れが発生、海外事業の場合には当地の政情や為替差損など様々なリスクが存在しており、これらのリスクが表面化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクへの対応策として、「事業評価会議規程」に基づき、グループ連携推進会議の諮問を受けて、事業評価会議を開催し、新規事業の実施可否について評価を行い、これに基づき、取締役会で最終的な機関決定を行っております。さらに、新規事業が開始した後も、所管部門は四半期ごとに進捗状況を報告することになっており、状況・環境変化への迅速な対応を可能とする体制を構築しています。

なお、当連結会計年度は新たに1件の新規事業が実施されており、過去に開始し、事業が継続しているものを含めると16件になりますが、いずれも上記のプロセスに基づき、適切に事業の進捗確認を行うことでリスクの最小化に努めております。

 

(11) 感染症拡大に伴うリスク

感染症の拡大による当社グループ従業員、協業者への感染等による事業の中断及び遅延等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、特に海外での感染拡大によるロックダウン等の影響が発生した場合には、業務の中断による業務完了の遅延が発生する可能性があります。

当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、テレワーク、短時間勤務、サテライトオフィスの活用等の感染対策を推進し感染拡大の防止、社員の安全確保及び事業活動の継続に努めております。

引き続き、上記の取組みを継続・推進することで、事業活動や収益性の維持を図ってまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループにおきましては、2022年11月に公表しました中期経営計画「持続成長プラン2025」に基づき、新たな取組みを実施してまいりました。

その2年目となる当連結会計年度は、連結売上高は前連結会計年度比0.0%増加となる398億14百万円となりました。また、連結営業利益におきましては、前連結会計年度37.4%減少となる17億90百万円となりました。

 

業務としては、基幹事業である構造、道路、交通・ITS、環境などに加え、災害対応事業、インフラ維持管理や老朽化対策事業、PPP/PFIに代表される地域創生事業、またエネルギー関連事業などに積極的に取組んでまいりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

[コンサルタント事業]当連結会計年度の受注高は425億38百万円(前連結会計年度比17.2%増)、売上高は382億82百万円(前連結会計年度比0.5%減)となりました。

構造事業については、株式会社長大、株式会社ピーシーレールウェイコンサルタントが主に手掛けており、主軸である橋梁設計の他、維持管理や老朽化対策、耐震補強業務等を実施してまいりました。橋梁点検ロボット(特許取得済)の実用化、高度橋梁監理システム(i-Bridge)の実用化に向けたフィールド実験など、次世代の橋梁管理の技術開発に積極的に取組んでおります。

社会基盤事業については、株式会社長大、株式会社長大テックが主に手掛けており、道路構造物の維持管理、更新に向けた各種点検業務や道路管理データベース構築業務、交通需要予測や事業評価業務などに加え、自動車の移動情報、挙動情報に関するビッグデータ処理による渋滞や事故評価業務などに取組んでまいりました。また、モビリティと駅前再開発の融合であるバスタ事業など、新たな都市機能の強化事業についても積極的に取組んでおります。さらに、ITS・情報/電気通信事業では、新たな自動運転による公共サービスの導入に参画するなど、自社技術の展開による次世代移動支援の実現に向け、グループをあげて取組んでまいりました。

社会創生事業については、株式会社長大が主に手掛けており、基幹である環境事業の他、PPP/PFIや建築計画・設計等のまちづくり事業に積極的に取組み、安定的に売上を伸ばしております。環境・新エネルギー事業では、国内外における再生可能エネルギー事業でのコンサルティングに取組んでまいりました。また、水力、風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギー発電事業に多く取組んでまいりました。さらに、現在はデジタル田園都市国家構想において北海道更別村の「北海道更別村SUPER VILLAGE構想」への取組みを推進しております。その他、数年前から本格スタートした防衛関連事業においても、構造物設計、交通、環境分野から建築分野まで幅広く受注するなど、積極的な展開を図っております。

地質・土質事業については、基礎地盤コンサルタンツ株式会社が主に手掛けており、基幹の地質・土質調査関連事業を基軸に、売上高を安定的に推移することができております。既存の土木インフラに対する地質調査や地盤解析の分野で多くの案件に取組むとともに、災害からの復興に伴う地質調査・対策工設計などに取組んでまいりました。また、再生可能エネルギー分野において、複数の洋上風力発電事業や地熱発電事業、災害対策に伴う地質調査・診断などに取組んでまいりました。

海外事業については、株式会社長大、基礎地盤コンサルタンツ株式会社が主に手掛けており、橋梁設計、施工監理業務、また地質調査などに積極的に取組んでおります。

 

[サービスプロバイダ事業]当連結会計年度の受注高は6億51百万円(前連結会計年度比62.8%減)、売上高は7億65百万円(前連結会計年度比0.7%増)となりました。

国内では、地元企業と連携したPark-PFI事業の運営や自治体と連携したバイオマス発電事業の事業化など、地域創生に資する事業の推進に取組んでまいりました。また、海外では、フィリピン国ミンダナオ島における「カラガ地域総合地域経済開発プロジェクト」について着実に進展しております。既に供用開始しているアシガ川小水力発電所やタギボ川上水供給コンセッション事業についても順調に稼動しております。今後は、フィリピン国内でのインフラ整備事業や、インドネシア国でのエネルギーマネジメント事業など、アジア諸国での展開を推進させてまいります。

 

[プロダクツ事業]当連結会計年度の受注高は10億81百万円(前連結会計年度21.7%増)、売上高7億67百万円(前連結会計年度36.0%増)となりました。

型枠リースシステムは、従来のコンクリート型枠を使用した際に発生する廃材について、循環型資材への転換を図ることで削減提案する商品であり、SDGsに対応し、継続的に顧客にご使用いただいております。またコンクリート用夜間反射塗料、バイオグリーンシールドなどオリジナル商品を拡充し、ラインアップの充実を図っております。

 

 

上記の各事業を支える業務執行体制面では、効率化施策を着実に実行してまいりました。今後はグループをあげて、更なる効率化やAIを駆使したIT化施策を積極的に実行してまいります。

また当社では「コーポレート・ガバナンス基本方針」を公表しておりますが、この基本方針の下、今後もより一層、透明、公正な意思決定を行い、持続的成長に向けた取組みを着実に実施してまいります。

 

この結果、当連結会計年度における当社グループ全体の業績といたしましては、受注高は442億70百万円(前連結会計年度比13.7%増)、売上高は398億14百万円(前連結会計年度比0.0%増)となりました。

利益面では、営業利益は17億90百万円(前連結会計年度比37.4%減)、経常利益は17億56百万円(前連結会計年度比45.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は1億90百万円(前連結会計年度12億3百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

当連結会計年度末における財政状態は以下のとおりであります。

〔資産〕

当連結会計年度末の資産合計は373億17百万円(前連結会計年度末362億41百万円)となり、10億75百万円の増加なりました。流動資産は255億15百万円(前連結会計年度末241億86百万円)となり、13億28百万円の増加、固定資産は118億2百万円(前連結会計年度末120億55百万円)となり、2億53百万円の減少なりました。

流動資産が増加となった主な要因は、現金及び預金が12億15百万円増加したことによるものです

固定資産が減少となった主な要因は、長期貸付金が6億64百万円減少したことによるものです。

 

〔負債〕

当連結会計年度末の負債合計は171億64百万円(前連結会計年度末155億43百万円)となり16億21百万円の増加となりました。流動負債は115億52百万円(前連結会計年度末95億30百万円)となり、20億21百万円の増加、固定負債は56億12百万円(前連結会計年度末60億12百万円)となり、4億円の減少となりました。

流動負債が増加となった主な要因は、短期借入金が21億円増加したことによるものです。

固定負債が減少となった主な要因は、長期借入金が6億円減少したことによるものです。

 

〔純資産〕

当連結会計年度末の純資産合計は201億52百万円(前連結会計年度末206億98百万円)となり、5億45百万円の減少となりました。

減少となった主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失を1億90百万円計上及び剰余金の配当を6億45百万円行ったことにより、利益剰余金が9億17百万円減少、自己株式が2億19百万円減少したことによるものです。

これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の56.9%から53.9%となっております。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は81億92百万円(前連結会計年度末の資金残高は70億31百万円で、前連結会計年度末と比べ11億60百万円の増加)となりました。また、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果取得した資金は9億83百万円(前連結会計年度は14億28百万円の取得で、前連結会計年度と比べ4億45百万円の収入の減少)となりました。

これは主に売上債権の増加額5億52百万円、法人税等の支払い8億9百万円があったものの、税金等調整前当期純利益の計上6億10百万円、減価償却費の計上額4億93百万円、減損損失の計上5億48百万円、法人税等の還付4億9百万円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は8億16百万円(前連結会計年度は29億85百万円の使用で、前連結会計年度と比べ21億69百万円の支出の減少)となりました。

これは主に定期預金の払戻による収入1億80百万円があったものの、定期預金の預入による支出2億31百万円、有形固定資産の取得による支出2億79百万円、保険積立金の積立による支出2億7百万円、差入保証金の差入による支出1億76百万円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果取得した資金は8億45百万円(前連結会計年度は11億50百万円の取得で、前連結会計年度と比べ3億5百万円の収入の減少)となりました。

これは主に短期借入金の返済による支出93億円、長期借入金の返済による支出6億66百万円、配当金の支払額6億46百万円があったものの、短期借入れによる収入114億円があったことによるものであります。

 

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績
 a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年10月1日
  至 2024年9月30日

前期比(%)

コンサルタント事業(百万円)

26,718

97.5

サービスプロバイダ事業(百万円)

655

119.4

プロダクツ事業(百万円)

1,010

124.5

合計(百万円)

28,385

98.7

 

(注) セグメント間の内部振替後の数値によっております。

 

 b.受注実績

当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

コンサルタント事業

42,538

117.2

24,566

121.2

サービスプロバイダ事業

651

37.2

1,756

84.1

プロダクツ事業

1,081

121.7

1,875

120.1

合計

44,270

113.7

28,198

117.9

 

 

 c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年10月1日
  至 2024年9月30日

前期比(%)

コンサルタント事業(百万円)

38,282

99.5

サービスプロバイダ事業(百万円)

765

100.7

プロダクツ事業(百万円)

767

136.0

合計(百万円)

39,814

100.0

 

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度
(自 2022年10月1日
  至 2023年9月30日

当連結会計年度
(自 2023年10月1日
  至 2024年9月30日

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

国土交通省

9,950

25.0

11,190

28.1

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表を作成するために、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを行っております。経営者は、これらの見積もりについて過去の経験・実績や現在及び見込まれる経済状況など勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果になる場合があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

当社グループは、将来の課税所得に関するものを含めた様々な予測・仮定に基づいて繰延税金資産を計上しており、実際の結果がかかる予測・仮定とは異なる可能性があります。また、将来の課税所得に関する予測・課税に基づいて、当社又は子会社が繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、当社グループの繰延税金資産は減額され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」をご覧ください。

 

(受注損失引当金の算定)

当社グループでは、受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末時点で将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについては、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を計上しております。

詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご覧ください。

 

(一定の期間にわたり履行義務を充足し認識する収益)

当社グループは、一定の期間にわたり履行義務が充足される契約については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識しております。

詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご覧ください。

 

(固定資産の減損処理)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産について、当該資産から得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、将来の利益計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 1)経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標について、当社グループは2023年11月に公表いたしました2023年9月期決算短信において、当連結会計年度の業績予想として、売上高430億円、営業利益29億円としておりました。

当連結会計年度の売上高は398億14百万円となり、経営成績目標と比べて31億85百万円の減収、前連結会計年度と比べて2百万円の増収となりました。これは主に国内コンサルタント事業のうち特に基幹事業における前連結会計年度の受注の遅れによる影響によるものです。

売上原価は、285億70百万円と前連結会計年度比100.8%となりました。

この結果、売上総利益は112億44百万円となり、前連結会計年度と比べて2億33百万円の減収、また、売上総利益率は28.2%となりました。

販売費及び一般管理費は、94億53百万円となりました。前連結会計年度と比べて8億36百万円の増加となりましたが、売上高に対する比率では23.7%となり、前連結会計年度と比べて2.1ポイントの増加となりました。

これにより、営業利益は17億90百万円となり、前連結会計年度と比べて10億69百万円の減益、また、売上高営業利益率は4.5%となりました。

営業外損益は34百万円の損失(営業外収益1億17百万円、営業外費用1億52百万円)となり、前連結会計年度と比べて3億74百万円の減少となりました。これは主に受取補償金が2億9百万円、受取保険金が42百万円、為替差損益が67百万円、それぞれ減少したことによるものです。

この結果、経常利益は17億56百万円となり、前連結会計年度と比べて14億44百万円の減益、また売上高経常利益率は4.4%となりました。

特別利益は60百万円となり、特別損失は12億5百万円となりました。これは主に固定資産の減損損失5億48百万円、特別調査費用2億52百万円、貸倒引当金繰入額2億8百万円がそれぞれ発生したことによるものです。

これにより、税金等調整前当期純利益は6億10百万円となり、前連結会計年度と比べて18億71百万円の減益となりました。

法人税等合計は、8億19百万円となり、前連結会計年度と比べて4億56百万円の減少となりました。

これにより、当期純損失は2億9百万円親会社株主に帰属する当期純損失は1億90百万円となり、前連結会計年度と比べて13億94百万円の減益となりました。

以上より、当連結会計年度は前連結会計年度と比べて増収、減益となりました。

 

 2)資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金の主な需要は、業務に関わる原価(固定費,変動費)、販売費、一般管理費等であります。事業の発展に向けての投資資金需要は、設備投資や研究開発投資に加え、事業案件等への事業投資によるものであります。

短期的運転資金は自己資金並びに金融機関からの短期借入金を、また事業投資等に関しては主に長期借入金、自己資金を基本としております。

当社グループは、上記のように資金の流動性を高めると共に、それら資本財源の安定的確保をより一層高めるよう努めてまいります。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は、47億83百万円となっております。

 

 3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度は、中期経営計画「持続成長プラン2025」の2年目となります。目標とする経営指標として連結における売上高並びに営業利益を掲げました。これらの目標に対する当連結会計年度の実績は下表のとおりの結果となりました。

(単位:百万円)

 

連結

経営目標

実績

売上高

43,000

39,814

営業利益

2,900

1,790

 

 

連結売上高は目標に対し92.6%の達成となりました。また、連結営業利益におきましては、目標に対し61.8%の達成となりました。

2022年11月に公表いたしました中期経営計画「持続成長プラン2025」におきましては、目標とする経営指標として連結における売上高、営業利益に加え、それらを実現するために必要不可欠となる従業員数を掲げております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

建設コンサルタント業界においては、先端的業務を受注遂行する過程で新しい技術、ノウハウを蓄積していくことが重要であります。すなわち、受注業務の中に研究開発的な要素が含まれています。当社グループにおきましても、多様化、高度化する顧客ニーズに的確に対応するため、先端的な業務の受注に積極的に取組んでおります。

また、このような新しい技術やノウハウを得るための独自の研究開発も推進しております。

当連結会計年度における研究開発実施のための費用として321百万円支出いたしました。各セグメント別の研究開発費はコンサルタント事業321百万円、サービスプロバイダ事業0百万円であります。

主な研究開発活動として、インフラ設備点検の効率向上や安全性確保のためのロボット等ハードの研究、新事業開発に向けた市場調査および設計・分析における最先端技術を活用したシステムの研究等を実施しました。