第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「FT(Financial Technology)とIT(Information Technology)の統合により、ファイナンシャルウェルネスを創造する」ことをパーパスとして掲げ、個人資産の最適なアセットアロケーションと次世代への不安無き財産の移転の実現を目指しております。この理念に基づき、1990年4月の設立以来、金融リテールビジネスの業務プロセスを最適化するためのシステムを開発・提供してまいりました。金融リテール、すなわち個人金融市場をターゲットドメインと定義し、情報通信技術と金融ノウハウの双方のバランスを重視する金融ITブティックを目指すことを基本方針としております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。経営指標としては、特に売上規模を表す売上高、収益性を表す営業利益、資本効率を表すROEを重視し、拡大を目指してまいります。

 

(3) 経営環境

当連結会計年度におけるわが国の経済は、2024年4~6月期より輸出や設備投資が増加に転じたことに加え、労働力確保に向けた賃上げの動きが活発化し個人消費の増加が見られたこと等明るい兆しが見えてきました。一方、米中国間の対立による輸出入制限やサプライチェーンの見直し等世界経済のブロック化をはじめ、ウクライナ、中東、台湾情勢等の地政学リスクや米国新政権の外交、経済政策が日本経済に影響を及ぼす可能性は高く、景気の先行きは不透明さを増している状況にあります。

当社グループの主要顧客が属する金融分野における主なトピックスとしては、政府による「資産所得倍増プラン」に基づき、本年より貯蓄から投資へシフトする施策が新NISA制度として本格的に実行されたことが挙げられます。「資産所得倍増プラン」では、貯蓄から投資に変えていくことで持続的な企業価値向上の恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも及ぶような好循環を実現させることを目指しており、本年はその契機となった1年だったといえます。

一方、テクノロジーの分野では、生成AIの急激な進歩に伴い業務プロセスの自動化、省力化への活用をはじめ、業種、業務内容や個々の顧客ニーズに合わせたパーソナリゼーションを追求するための先進のAIテクノロジー活用事例が増えてきました。2024年以降、新NISA制度の開始と生成AI活用の進展という2つの大きな環境変化による追い風を受け、当社グループはその潮流の中で積極的な取り組みを推進している状況であります。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、急速に変化する国内外の環境変化に対応し、中長期的な視点から持続的に企業価値を高めていくために、このたび2025年9月期~2027年9月期を対象とする中期経営計画を取りまとめ、今後3年間の経営戦略を策定しました。

本中期経営計画においては、改めて理念体系を再構築し、「FTとITの統合により、ファイナンシャルウェルネスを創造する」というパーパスを制定するとともに、中長期的に目指す姿としてデジタルトランスフォーメーションを実行しながら「金融サービスとアセットマネジメントのイノベーターになる」というビジョンを掲げています。また、社員が共有する行動規範として、①起業家精神、②サイエンス+アート、③革新性、④人と社会に貢献という4つのバリューを制定しました。これらの経営理念の下、中期経営計画を実現していくために、以下の5つの成長戦略を推進していく計画です。

① 顧客基盤深耕・強化施策:強固な顧客基盤と独自技術を活かし、デジタルトランスフォーメーションやAI・クラウドテクノロジーの活用研究と人材の育成を通じて、より幅広いサービスを提供

② 事業ポートフォリオ改革:成長と収益性の向上を図っていくために、従来生命保険会社向け売上が大きな比重を占めていた収益構造から銀行、証券会社を含めたバランスの取れた事業ポートフォリオへの転換を推進

③ ファミリーオフィスビジネスへの参入: 100%子会社として設立した株式会社Wealth Engineが中心となってファミリーオフィスビジネスに参入し、アセットマネジメントとタックスマネジメントを融合したコンサルティングサービスを関係税理士法人とともに提供

④ ストックビジネス向けプラットフォーム開発:業務提携した台湾のSoftBI社と共同でIFAや会計事務所向けデジタルプラットフォームを開発し、使用料課金に基づくストックビジネスを強化

⑤ 海外市場開拓:経済発展とともに生命保険に対するニーズの増加が期待される東南アジア市場の開拓に向けて、当社が蓄積したシステム開発ノウハウを導入・展開し、システム開発受託を通じて市場参入を図る

 

当社グループは、今後もITソリューション、アセットマネジメント、コンサルティングの事業ドメインにおいて、人生100年時代、大相続時代のための顧客ニーズに合ったソリューションサービスを提供してまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループでは、金融サービスに必要となるシステムを金融機関等及びその顧客に提供することにより、売上高の拡大及び収益性の向上を図り、持続的かつ安定的な成長及びより強固な経営基盤の確立を目指しております。この目的を実現させるため、当社グループは新たに策定した中期経営計画の推進・実行を重要課題の中核に据え、以下の事項を優先的に対処すべき課題として取り組んでまいります。

 

① 顧客基盤の深耕と強化

 当社グループは、生命保険会社・銀行・証券会社をはじめとする金融機関が取り扱う金融商品の増加及び消費者ニーズの多様化に対応するため、金融サービスに関する業務プロセスを先進テクノロジーを活用してDX化し、顧客の業務改革に貢献していくことを市場機会として捉えています。現在、政府は「資産所得倍増プラン」を掲げ、「貯蓄から投資へ」を実現するべく金融機関へ個人のニーズやライフプランにあった顧客本位の業務運営を実施することを推進しています。このような状況下、既存の顧客に対しては、長年に亘る信頼関係をベースに潜在的ニーズをいち早く把握し、生成AIやクラウドといったテクノロジーを活用した新たなサービスを幅広く提供し、顧客との関係性をより一層強化してまいります。また、子会社の株式会社インフォームを通じて、生命保険システム開発の上流、要件定義工程を含む全工程に係わる業務を受託し、金融機関の長期的戦略パートナーとしての地位を獲得していく方針です。

② 事業ポートフォリオ改革

 当社グループは、生命保険会社向けの売上比率が高く、我が国人口構成上の課題や生保業界の動向、顧客のシステム開発方針の影響を受けやすい状況にあるため、特定の販売先への売上集中を緩和して事業ポートフォリオを適正化し、収益基盤の安定性を確保することが課題であると認識しております。この課題に対処するため、既存顧客との関係を維持・強化するとともに、銀行・証券会社等非保険会社向け売上を拡大し、既存販売先のシステム投資予算に占める当社グループの受注比率即ちウォレットシェアを高めてまいります。2024年1月から導入された新NISA制度は、メガバンクや証券会社においては新たな顧客獲得の機会になっています。このような機会を捉え、生成AIを活用したアドバイザー向けシステムをはじめ、ライフプランニング・公的年金に係る計算エンジンや現代ポートフォリオ理論、金融工学系・生保年金数理系計算エンジン等当社グループが有する豊富なナレッジデータベースを活用して金融機関のニーズに沿った提案を行い、新規取引先の拡大に努めてまいります。

③ ファミリーオフィスビジネスの展開

 団塊の世代の相続問題に対する関心が高まっており、相続発生前後の個人保有資産の組替えが個人資産管理の重要なテーマとなりつつあります。また、欧米においては、企業経営者や資産家に対してファミリーオフィスと呼ばれる機関が二世代、三世代にわたる事業の成長と承継、さらには事業から生まれた財産の運用を実行しています。日本においても、企業経営者や資産家等を対象に資産管理や運用、事業承継に関するコンサルティングの必要性が今後ますます高まってくると予想されており、このような環境を踏まえ当社グループは新たにファミリーオフィスコンサルティング事業を展開するために、100%子会社 株式会社Wealth Engineを設立しました。今後は、当社開発のIFA・会計事務所向け資産管理プラットフォームを活用し、デジタルによる新しいマルチクライアントファミリーオフィス事業を展開していく計画です。

 

④ ストックビジネスの拡大

 当社グループの売上高は、受託開発収入、使用許諾収入、保守運用収入及びコンサルティング収入で構成されていますが、現在受託開発収入に偏重している状況にあります。この課題に対応していくために、プラットフォームを活用したストックビジネスにより利益率の高い使用許諾収入の拡大を図り、利益率の向上を目指してまいります。当社グループは、2024年に台湾でプライベートバンキングシステムを提供するトッププレイヤーであるSoftBI社と業務提携を締結し、IFA向けの資産管理プラットフォームを共同で開発することに合意しました。このプラットフォームの開発によりポートフォリオ分析やゴールベースプランニングに基づく資産管理が効率化され、これを活用した金融資産、不動産、生命保険、個人年金保険などの個人資産の組替・運用によるアセットマネジメントとタックスマネジメントの統合コンサルティングの提供が可能となります。同プラットフォームをIFAや会計事務所向けに提供することを通じて、システム使用料課金による安定的な売上計上の確保を目指してまいります。

⑤ 海外市場の開拓

 少子高齢化に伴う日本の生命保険市場の成長鈍化を想定し、国民の平均年齢が若く経済発展とともに生命保険に対するニーズの拡大が期待される東南アジア市場でシステム開発受託を通じた参入を実行します。東南アジアの生命保険市場においては、人口、平均年齢、GDP、カントリーリスク等を勘案すると、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムの4カ国が進出候補先として有力と考えられます。業界関係者へのヒアリング、現地調査や、業務提携先のSoftBI社の顧客基盤を活用した調査・分析を行い、総合的に検討の上対象国を決定する予定です。その後、当社のシステムやノウハウを導入・展開し早期の立ち上げを目指します。まず、生命保険市場に焦点を絞って市場開拓に注力する計画ですが、生保システム市場のみならず銀行や証券領域での市場性も調査してまいります。

⑥ 生成AI等先進テクノロジーの活用研究

 オープンAIが開発したChatGPTの登場が社会に与えたインパクトは大きく、この先進のAIテクノロジーを有効に活用したシステムをいかに早く開発し、テクノロジーの進歩に遅れを取らないよう研究開発に注力していくことが重要課題と認識しております。また、2040年には就労人口が1,100万人不足すると予想され、AIの活用は当社にとり必須の課題と認識しております。当社グループでは、生成AI活用研究プロジェクトを組成し、生成AIを中心とした最先端テクノロジーの研究、先進の大学生成AI研究室との連携、ならびに金融、アセットマネジメント、税務等の専門知識と最新のテクノロジーを融合した新サービスの創出を目的として活動しております。生成AIを活用した新サービスの開発実績としては、新NISA制度に対応して投資信託やETFの最適組合せをアバターが提案する生成AIアプリ、W2C(Wise Wealth to Customer)を開発しました。さらに、業際的業務と言われるプライベートバンキング業務向けには、相続対策・納税準備対策のベストソリューションをはじめ、納税準備のためのアセットアロケーションや投資政策書の作成等アセットマネジメントとタックスマネジメントを統合する生成AI活用システムも開発しました。また、汎用性の高いシステムとして、生成AIを活用して保険会社の募集関連文書のチェックや評価を行うサービス「LibelliS」を新たに開発し、既に多くの顧客から広範囲な業務における引き合いを受けております。今後も引き続き先進テクノロジーに関する研究開発を強化し市場をリードする革新性のあるシステムを開発・提供してまいるとともに、システム開発人口不足に対する切り札と認識しております。

 

⑦ 優秀な人材の確保と人的資本投資

 当社グループが属する情報サービス産業では、開発人材への需要の高まりを受け人材の獲得競争が激化しており、優秀な人材の確保が一段と難しくなってきております。また、当社グループ社員はシステムだけではなく、保険数理、金融知識、ポートフォリオ理論、社会保障、相続・財産承継、税務等に加え、今後は生成AIやメタバース等の最新技術を習熟していくことが求められます。こうした中、「金融サービスとアセットマネジメントのイノベーターになる」というビジョンを実現していくために、新規採用及び中途採用を拡充して戦略的人材を補強するほか、リスキリング・学び直しの施策として、CAPユニバーシティという社内教育体系を確立し、総合的人材教育、特にITとファイナンスに係るフィンテック事業領域の最新の教育を継続的に強化してまいります。また、社員の給与水準の向上をはじめ働きやすい職場環境にするために、在宅勤務制度の継続やオフィス環境の整備といった人的資本に係る様々な投資に力を入れてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループにとってのサステナビリティとは、事業を通して社会課題の解決に寄与することであり、当社グループの持続的な成長が、社会の持続的な発展に貢献できるような世界を目指すことです。その実現のため、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、地域社会、従業員等、各ステークホルダーと良好な関係を築き、長期的視野の中でグループ企業価値の向上を目指すべく経営活動を推進しております。

 

①ガバナンス

当社の取締役会の下にサステナビリティ委員会を設置し、全社的なサステナビリティに関わる課題の取組を総括しております。サステナビリティ委員会は、各部門の責任者を中心に委員を選出し、マテリアリティの選定、KPIの設定、KPIのモニタリングと結果の報告を行っており、取締役会又は経営戦略会議に報告しております。

当事業年度において8回開催し、KPIのモニタリングを行うとともに、CSR調達に関する検討及び評価、有価証券報告書並びに統合報告書等でのサステナビリティ開示の在り方及び今後の方向性について検討致しました。

 

②リスク管理

サステナビリティ委員会において、チェックリストを用いてサステナビリティに関するリスクを抽出し、重要なものマテリアリティとして選定、経営戦略会議の承認を受けております。マテリアリティに選定されたものにはKPIを設定し、サステナビリティ委員会において継続的にモニタリングし、毎年の達成状況を経営戦略会議に報告するとともに、統合報告書としてとりまとめ公表しております。

なお、当期においてマテリアリティの変更はありませんでした。

 

(2)戦略、指標及び目標

<人的資本に関する事項>

①戦略

当社グループの競争力の源泉は、金融(特に生命保険)という特定の事業領域に集中することにより培われてきたメンバーの知識と経験であります。また、開発スキルが多様化する中、求める開発スキルを明確にした採用活動を行うことにより、常に優秀な人材を確保していくことが、新たなサービスを開発、展開していくために必要となります。人的資本の拡充こそが、当社グループの価値創造に不可欠な要素であります。

従業員の人格、人権を尊重し、公平な処遇と安全で働きやすい職場環境を実現し、ダイバーシティ、女性活躍、テレワークなど多様な働き方を推進します。そのために、採用活動の強化、社員のスキル転換・育成、女性が働きやすい環境の整備、開発パートナーの拡大を行います。

 

イ 採用方針

キャリア採用においては、性別や国籍にとらわれず、優れた人材を採用することを目指しております。また、新卒採用では情報系学生に限らず、文系学生にも門戸を開き、女性内定者3割以上を目標とするなど多様な人材の採用を目指しております。

 

ロ 育成方針

顧客の持続的な成長を支えるためには、ITスキルだけでなく、金融(特に生命保険)に関する幅広い業務知識や業界特有のノウハウの習得が必要であります。当社は充実した教育・研修制度のもと、全社員が多様な知識やスキルの向上に努めております。研修形式については、対面形式のほか、研修の内容や受講者層に応じてオンライン研修を用意し、様々な社員がワークスタイルに縛られることなく能力向上に取り組めるようにしております。また、PMP取得維持支援、資格取得援助制度、自己啓発支援のための補助制度などを設け、従業員の能力向上を支援しております。

 

ハ 環境整備

人的資本経営を本格化させるために、自己決定理論に基づいた3つの心理的欲求「自律性」「有能感」「関係性」を意識した取り組みを実施することを支柱に人材戦略全体像を構築し、2022年10月より等級制度、評価制度、給与制度を改定しました。
 エンジニア社員を中心に複数のキャリアコースを設け、短期・中長期的貢献の観点で整備された合理的な評価体系を導入することにより、レジリエンス(弾性、しなやか)なキャリア形成をはかれるようにしております。

また、女性活躍を推進すべく、女性管理職の登用を推進するほか、育児休業育児時短勤務制度を充実されるだけではなく、在宅勤務の制度化を進め、女性が働きやすい環境の整備に努めております。

 

②指標及び目標

当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する2024年9月末までの目標及び実績は、次のとおりであります。なお、次年度以降の指標及び目標については、現在策定中であります。

また、当社グループ全体としての具体的な指標及び目標が、現時点では未設定であるため数値は単体でのものとなります。

指標

目標

2024年9月末

実績

(2024年9月末)

女性及び外国人管理職比率

20以上

9.8

有給休暇取得率

70以上

71.6

研修開催数

50コマ

58コマ

 

 

<人的資本以外のサステナビリティに関する事項>

次の4項目をマテリアリティと選定し、戦略及びKPI、モニタリングの結果を統合報告書に取りまとめ、ホームページにおいて開示しております。

・ファイナンシャルウェルネスの実現

・高品質なシステムを提供し、社会に安心を

・ITとFTを兼ね備えた多様な人材の育成

・社会からの信頼の確保

 

当社グループWEBサイト「サステナビリティサイト」及び「統合報告書 2023年9月期」

https://www.cap-net.co.jp/sustainability

 

 

3 【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えられる主な事項には、以下の内容が挙げられます。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、以下に開示しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断する主要なものであり、事業等のリスクはこれに限るものではありません。

 

(1) 開発プロジェクトの管理について

当社グループの受託開発事業は、請負契約による開発案件が中心であります。当該開発業務の性質上、当初の見積り以上の作業工数が必要となる場合があり、想定以上の費用負担により開発案件の採算性の悪化が生じる可能性があります。また、開発案件に対する仕様変更等による開発費用の追加発生、顧客の事業方針の変更による開発の遅延等により開発案件の採算性の悪化が生じる可能性もあります。

本書提出日現在、当社グループでは開発案件の採算性等に十分留意しつつ受注活動を行うほか、プロジェクト審査委員会を設置し、プロジェクトの状態、マネジメント状況を適時に第三者的立場で客観的に確認及び評価することで、進捗遅延等のリスクの顕在化を防止しております。このように案件管理を徹底する方針でありますが、開発遅延や仕様変更等により当初グループの見積以上の作業工数が発生し開発案件の採算性の悪化が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) システムの不具合について

当社グループは、金融商品の販売等をサポートするためのシステムを開発・提供しておりますが、顧客の検収後にシステムの不具合(いわゆるバグ)等が発見される場合があります。当社グループにおきましては、品質管理の国際標準であるISO9001の認証を取得して、品質管理の徹底を図り、不具合等の発生防止に努めておりますが、それでもなお、製品に不具合等が発見された場合には、補修作業に伴う費用の増加、信用の低下、損害賠償などの要因により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 競合について

当社グループは、金融リテール市場において、提案・要件定義・基本設計といった上流工程から開発・運用・保守に至る工程までを原則すべて自社で行う「ワンストップ・サービス」を徹底し、株式会社インフォームを連結子会社化する等の強化を行い、他社との差別化を図っております。しかしながら、金融リテール市場において、より高度な技術やノウハウを保有する競合企業が出現し、顧客のニーズをより的確に捉えたシステムを提供するようになった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(4) 顧客が特定の業界に偏っていることについて

当社グループは、売上高の大半を国内金融機関、とりわけ生命保険会社に依存しております。そのため銀行及び証券会社の顧客化、株式会社青山財産ネットワークスとの資本業務提携や、会計事務所、会計事務所ネットワーク、IFA及びFP等の非金融機関顧客に努めておりますが、生命保険業界の合併、統合などの金融再編、法令や規制の変更・強化等及び業界のIT投資の動向などの要因により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 特定の販売先への依存度が高いことについて

当社グループには販売実績の10%を超える販売先が存在しております。当社グループとしましては、これらの主要顧客との取引を維持・継続するために、「第2事業の概況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ②事業ポートフォリオ改革」に記載のとおり、事業ポートフォリオの分散に加え、生成AIをはじめとする先進テクノロジ-を活用した新サービスによる新規顧客の開拓を進め、顧客基盤のより一層の拡大等に努めております。しかし、主要顧客の営業方針の変更及びシステム投資規模の減少等、その他の理由により主要顧客との取引が終了ないし大幅に縮小した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 知的所有権について

当社グループが開発するソフトウエアの著作権等の知的所有権は、当社グループに帰属し、当社グループ独自のものであると考えております。しかし、当社グループの認識範囲外において第三者の知的所有権を侵害、または第三者が当社グループの知的所有権を侵害する可能性があります。第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(7) 業績の季節変動について

当社グループの主たる事業である受託開発事業は、主要な顧客である生命保険会社等の金融機関のIT投資予算の制約を受けること、近年は生命保険会社の新商品販売時期が10月頃に偏重する傾向にあることから、売上高、営業利益、経常利益とも1月から3月(第2四半期)及び7月から9月(第4四半期)に偏重する傾向があります。また、検収基準で売上高を計上する案件があることから、何らかの理由により検収時期が翌期にずれ込んだ場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(8) 人材の確保について

当社グループは金融商品取引法に準拠したシステムの開発販売及びコンサルティングを行っており、新たなサービスを開発、展開していくためには、常に優秀な人材を確保しなければなりません。開発スキルが多様化する中、求める開発スキルを明確にした採用活動を行うことにより、現時点においては必要な人材を確保しておりますが、高度な能力を持つ人材は流動化が進行しており、将来も継続して必要な人材を確保できるかどうかについては不確定であり、十分な人材を確保できない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 情報セキュリティ管理について

当社グループは顧客の情報システムを構築する過程において、個々の顧客業務内容等の機密情報を入手し得る立場にあることから、個人情報を含めた情報管理のため入退出管理、アクセス可能者の制限、アクセスログ取得等のセキュリティ対策を講じる等、情報管理体制の整備強化に努めており、情報セキュリティマネジメントの国際標準であるISO27001の認証を取得しております。

しかしながら、今後、当社グループの過失や第三者による不法行為等によって顧客の個人情報や機密情報、当社グループが保有する個人情報等が外部へ流出した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(10) 自然災害、事故等について

当社グループでは、自然災害、事故等に備え、バックアップサーバーの分散化、定期的バックアップ、稼働状況の監視によるシステムトラブルの事前防止又は回避に努めております。しかしながら、大地震、台風等の自然災害や事故等により、設備の損壊や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生した場合、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 特定人物への依存について

当社の代表取締役社長である北山雅一(以下、同氏といいます。)は、当社の創業者であり、会社設立以来の最高経営責任者であります。経営方針や事業戦略の決定やその実行において重要な役割を果たしております。

当社グループにおいては、特定の人物に依存しない体制を構築するべく、幹部社員の情報共有や権限の委譲によって同氏に過度に依存しない組織体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社の業務を遂行することが困難になった場合、新規案件の獲得等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(12) ストック・オプションの権利行使による株式価値の希薄化について

ストック・オプション制度は、企業価値と役職員個々の利益を一体化し、ベクトルの共有や目標の達成等組織における職務の動機付けを向上させることを目的として導入し、今後も資本政策の中で慎重に検討しつつ、継続的に実施してまいりたいと考えております。

本書提出日の前月末における潜在株式数は78,000株であり、発行済株式総数の1.4%に相当しておりますが、権利行使された場合には、当社グループの1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

(13) 業界全体の動向および法令改正等の状況について

当社グループの売上高は生命保険会社に大きく依存しております。このため、保険商品の販売動向、新商品の販売数及び保険業法等の生命保険業界に関連する法令の改正等が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、AIやメタバース等の最新技術の把握に遅れた場合は、市場ニーズを取り込めない可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 業績

当連結会計年度におけるわが国の経済は、2024年4~6月期より輸出や設備投資が増加に転じたことに加え、労働力確保に向けた賃上げの動きが活発化し個人消費の増加が見られたこと等明るい兆しが見えてきました。一方、米中国間の対立による輸出入制限やサプライチェーンの見直し等世界経済のブロック化をはじめ、ウクライナ、中東、台湾情勢等の地政学リスクや米国大統領選の行方が日本経済に影響を及ぼす可能性は高く、景気の先行きは不透明さを増している状況にあります。

当社グループの主要顧客が属する金融分野における主なトピックスとしては、政府による「資産所得倍増プラン」に基づき、本年より貯蓄から投資へシフトする施策が新NISA制度として本格的に実行されたことが挙げられます。この政策により2023年6月末時点で旧制度の一般NISAとつみたてNISAの口座数が合計1,941万口座、買付額が32兆7,518億円であったのに対し、2024年6月末時点では新NISA口座数が2,427万口座、買付額が45兆3,880億円と口座数は1.3倍、買付額は1.4倍と大きく拡大する結果となりました。「資産所得倍増プラン」では、現預金を投資に変えていくことで持続的な企業価値向上の恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも及ぶような好循環を実現させることを目指しており、本年はその契機となった1年だったといえます。

一方、テクノロジーの分野では、ChatGPTの急速な実用化による「生成AI活用革命」により、業務プロセスの自動化、省力化さらには個々の顧客属性・ニーズ・業種、業務に合わせたパーソナリゼーションを追求するための先進のAIテクノロジーを導入する実例が激増しています。2024年以降、新NISA革命と生成AI活用革命の2つの革命により、金融資産運用立国実現に向けた中長期的国策が加速しており、当社グループにおいてもその潮流の中で積極的な取組みを強力に推進している状況であります。

 

当社グループは当連結会計年度を2024年9月期に終了する中期経営計画の最終年度として位置づけ、「資産所得倍増プラン」に沿いながら金融レガシーシステムのDX化と日本人のゴールベースプランニングのDX化により、個人金融資産の最適なアセットアロケーションと世帯間移転、豊かな老後・円滑な相続を実現するための施策を継続的に実行しました。当連結会計年度における主なトピックスは次のとおりです。

① 当連結会計年度の売上高は8,178,887千円(前年度比1.6%増)と会社設立以来過去最大の売上高を計上しました。また、営業利益は297,347千円(前年度比8.4%減)、経常利益は308,986千円(前年度比6.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は156,755千円(前年度比29.3%減)となりました。

② 新NISA制度の導入に対する対応として、つみたて投資枠と成長投資枠の最適利用配分を決定し、さらに投資信託やETFの最適組合せをアバターが提案する生成AIアプリ、W2C(Wise Wealth to Customer)を開発しました。生成AIに係る多くの知見と実績、開発能力を有するFirework社と共同開発し、個人の資産形成と資産管理、さらには、金融資産を多く保有する高齢層から18歳以上の若い世帯への暦年贈与等による資産移転対策等、個人のパーソナリゼーションを追求した利便性の高い提案・支援システムであります。

③ また、生成AIを活用し汎用性の高いシステムとして、文書チェック・評価用新サービス「LibelliS」を新たに開発しました。保険会社が作成する募集関連文書については、法規制、各種ガイドライン等に照らし合わせて記載内容をチェックし正当性を評価する必要がありますが、本サービスは生成AIにより旧来のソリューションでは実現困難だった個々の保険会社の募集関連文書の固有のチェックや評価も可能となる先進的な機能を備えています。

④ プライベートバンキング業務向けにも生成AIを活用し、非上場株式の評価、企業の組織再編の提案、多様な相続対策・納税準備対策からのベストソリューションの選択、納税準備のためのアセットアロケーション、個別銘柄選択業務、さらにはそれらの詳細を説明する投資政策書の作成等、アセットマネジメントとタックスマネジメントの二つの領域を統合する生成AI活用システムも開発しました。

⑤ 生命保険会社向けには、変額個人年金保険、変額保険等の資産形成型の新商品を加えた生保設計書・申込書作成システムの開発プロジェクトやゴールベースプランニングシステムの再構築プロジェクト等の受託開発を継続的に行いました。一方、メガバンク向けには、新NISA制度を活用しながら個人投資家のポートフォリオを分析し、個別投資信託の組替えによる複数の投資目的の達成可能性を予想するゴールベースプランニングプラットフォームを提供しました。また、大手証券会社向けには、ロボアドバイザーによるファンドラップの組替えシミュレーションを提供し、国際分散投資と資産管理・運用の自動化を支援しました。

⑥ 2024年8月に、台湾及び東アジアのプライベートバンキングシステム分野でトップシェアを有する商智資訊股份有限公司(SoftBI社)と業務提携し、銀行、証券会社、金融商品仲介業者やファミリーオフィス事業向け資産管理プラットフォームを共同開発することで合意しました。本提携により、今後成長が期待される個人向け総合資産管理システム・資産家向け投資運用業のためのSaaSシステムの開発、使用許諾等、新しい事業領域のシステム開発に参入していく計画です。

⑦ 特に今後ファミリーオフィスコンサルティング事業を展開するために、100%子会社である株式会社Wealth Engineを設立しました。団塊の世代の大相続時代が到来する中、相続発生前後の個人保有資産の組替えと資産運用、次世代への資金移転が、円滑な財産分割、相続税の納税準備における重要なテーマとなることが予想されます。今後、キャピタル・アセット・プランニングが開発した資産管理・運用プラットフォームと生成AIを子会社Wealth Engineが有効に活用し、IFAや会計事務所、法律事務所とデジタルテクノロジーにより連携し、日本固有のマルチクライアントファミリーオフィス事業を推進してまいります。

 

なお、当社グループはシステム開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。事業の売上区分別の業績は次のとおりであります。

 

(システム開発)

生命保険会社向けの①ライフプランシステム、②エステートプランシステム、③生保設計書システム、④生保申込書システム、⑤生命保険契約ペーパーレスシステム、⑥生保販売業務の省略化、効率化、自動化を実現するフロントエンドシステム、非金融機関向けの統合資産形成アドバイスシステム等の開発販売の結果、当連結会計年度のシステム開発売上高は7,594,645千円(前年度比0.4%増)となりました。

 

(使用許諾・保守運用)

ライフプランシステム等で使用する、CAPライブラリ(CAP/Lib)について、使用許諾契約や保守契約は引続き堅調であり、使用許諾・保守運用売上高は554,009千円(前年度比23.0%増)となりました。

 

(その他)

システムプラットフォームを活用した富裕層向けの資産管理コンサルティング契約の獲得を進め、その他売上高は30,232千円(前年度比2.7%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて450,276千円減少し、1,415,878千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、283,411千円の支出(前連結会計年度は1,216,480千円の収入)となりました。これは主として税金等調整前当期純利益238,978千円、減価償却費349,458千円を計上した一方で、売上債権の増加640,581千円、法人税等の支払額123,150千円を計上したこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、178,018千円の支出(前連結会計年度は433,676千円の支出)となりました。これは主として有形固定資産の取得による支出80,468千円、無形固定資産の取得による支出65,626千円、差入保証金の差入による支出50,414千円を計上したこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、11,153千円の収入(前連結会計年度は104,536千円の支出)となりました。これは主として長期借入れによる収入700,000千円を計上した一方で、長期借入金の返済による支出597,232千円、配当金の支払額91,614千円を計上したこと等によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

当社グループは、システム開発事業の単一セグメントのため、生産、受注及び販売の状況については、売上の区分別に示しております。

 

a. 生産実績

当連結会計年度におけるシステム開発売上の生産実績は、次のとおりであります。なお、他の売上区分については生産に相当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

売上区分

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

金額

前年同期比(%)

 システム開発

(千円)

6,128,967

90.2

       合計

(千円)

6,128,967

90.2

 

(注) 金額は、販売価格で記載しております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度におけるシステム開発売上の受注実績は、次のとおりであります。なお、他の売上区分については受注生産を行っていないため、受注実績に関する記載はしておりません。

 

売上区分

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

受注高

前年同期比(%)

受注残高

前年同期比(%)

 システム開発

(千円)

6,630,439

95.1

1,510,268

78.1

  合計

(千円)

6,630,439

95.1

1,510,268

78.1

 

(注) 金額は、販売価格で記載しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績を売上区分別に示すと、次のとおりであります。

 

売上区分

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

金額

前年同期比(%)

システム開発

(千円)

7,594,645

100.4

使用許諾・保守運用

(千円)

554,009

123.0

その他

(千円)

30,232

102.7

合計

(千円)

8,178,887

101.6

 

(注) 1.「その他」は、富裕層向けコンサルティング、セミナー開催等に関する売上であります。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

ソニー生命保険㈱

2,318,500

28.8

3,021,809

36.9

三井住友海上あいおい生命保険㈱

1,011,548

12.6

873,137

10.7

㈱インフォテクノ朝日

1,267,425

15.8

842,444

10.3

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、それが資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。

これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1) 連結財務諸表  注記事項  (重要な会計上の見積り)」を参照ください。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
 1) 経営成績の分析
(売上高)

生命保険会社向けには、変額個人年金保険等の資産形成型新商品を加えた生保設計書・申込書作成システムの開発やゴールベースプランニングシステムの再構築プロジェクト等の受託開発が継続しました。メガバンク向けには、個別銘柄を選択したポートフォリオの将来シミュレーション等を可能とする資産管理プラットフォームを提供しました。また、相続・事業承継・財産承継コンサルティングを自動化・効率化するウェルスマネジメントプラットフォームシステムの提供や人生100年時代を見据えた世界分散投資による資産形成を支援する確定拠出年金運用アプリの開発も継続的に行いました。証券会社向けには、ロボアドバイザーによるファンドラップシミュレーションを提供し、国際分散投資と資産管理の自動化を支援しました。これに伴い使用料課金も拡大し、全社売上高に占める使用料課金の割合は前年度の5.6%から6.8%に増加しています。

以上のような活動の結果、当連結会計年度の売上高は8,178,887千円(前年度比1.6%増)となり、過去最高の売上高を記録しました。

(営業利益)

当連結会計年度は、労務費・外注費等の採算管理強化により売上総利益が前年度比4.2%増加した一方、生成AIを活用したシステム開発強化に係る研究開発費の増加等により販売費及び一般管理費が前年度比7.3%増えたため、営業利益は297,347千円(前年度比8.4%減)となりました。

(経常利益)

営業外収益として、受取利息及び配当金を18,133千円計上しました。また、営業外費用として、支払利息を19,121千円計上しました。この結果、経常利益は308,986千円(前年度比6.7%減)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

法人税等合計を82,222千円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は156,755千円(前年度比29.3%減)となりました。

 

 

 2) 財政状態の分析

<資産>

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて114,617千円増加し、5,660,565千円となりました。

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産合計は、前連結会計年度末に比べて258,775千円増加し、3,816,001千円となりました。これは主として売掛金及び契約資産が640,581千円増加した一方で、現金及び預金が477,352千円減少したこと等によるものであります。

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産合計は、前連結会計年度末に比べて144,158千円減少し、1,844,563千円となりました。これは主としてソフトウエア仮勘定が187,953千円、ソフトウエアが107,639千円減少した一方で、投資有価証券が89,726千円、建物及び構築物が54,545千円、差入保証金が49,294千円増加したこと等によるものであります。

 

<負債>

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて32,275千円減少し、2,364,382千円となりました。

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債合計は、前連結会計年度末に比べて164,641千円減少し、1,713,826千円となりました。これは主として未払法人税等が60,457千円、流動負債のその他に含まれる未払消費税等が86,566千円減少したこと等によるものであります。

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債合計は、前連結会計年度末に比べて132,366千円増加し、650,555千円となりました。これは主として長期借入金が94,524千円増加したこと等によるものであります。

 

<純資産>

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて146,892千円増加し、3,296,182千円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益を156,755千円、剰余金の配当を91,683千円、それぞれ計上したこと等によるものであります。

 

b. 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2事業の状況 3事業等のリスク」を参照ください。

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」を参照ください。

当社グループは、企業体質の強化を図りながら持続的な企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な資金を、安定的に確保することを基本方針としております。

当社グループの資本の財源は、主に営業キャッシュ・フローで生み出した資金を源泉とし、必要に応じて資金調達を行っております。

なお、当連結会計年度末における借入金の残高は1,439,051千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,415,878千円となっております。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上規模を表す売上高、収益性を表す営業利益、資本効率を表すROEを重視し、拡大を目指しております。当連結会計年度におきましては、売上高8,178,887千円、営業利益297,347千円を計上し、ROEは5.0%となりました。引続き事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させてまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

生成AIの著しい進歩が社会に与えたインパクトは大きく、このような先進のテクノロジーを有効に活用したシステムをいかに早く開発し、テクノロジーの進歩に遅れを取らないよう研究開発に注力していくことが重要課題と認識しております。当社グループでは、生成AI活用研究プロジェクトを組成し、生成AIを中心とした最先端テクノロジーの研究、先進の大学生成AI研究室との連携、ならびに金融、アセットマネジメント、税務等の専門知識と最新のテクノロジーを融合した新サービスの創出を目的として活動しております。生成AIを活用した新サービスの開発実績としては、新NISA制度に対応して投資信託やETFの最適組合せをアバターが提案する生成AIアプリ、W2C(Wise Wealth to Customer)を開発しました。さらに、業際的業務と言われるプライベートバンキング業務向けには、相続対策・納税準備対策のベストソリューションをはじめ、納税準備のためのアセットアロケーションや投資政策書の作成等アセットマネジメントとタックスマネジメントを統合する生成AI活用システムも開発しました。また、汎用性の高いシステムとして、生成AIを活用して保険会社の募集関連文書のチェックや評価を行うサービス「LibelliS」を新たに開発し、既に多くの顧客から広範囲な業務における引き合いを受けております。今後も引き続き先進テクノロジーに関する研究開発を強化し市場をリードする革新性のあるシステムを開発・提供してまいるとともに、システム開発人口不足に対する切り札と認識しております。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は62,404千円であります。