第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。また、文中の将

来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、顧客の課題を解決する適切なDXの推進によって、様々な業界から社会を変革しようとする顧客の挑戦を支え、顧客の競争優位性を高めるパートナーとなり、顧客や、当社事業を共創する全てのステークホルダーと共に「新しい景色の創造」を達成します。

 日本ならびに世界が大きな転換期にある中、当社グループの起源であるベトナムと日本の両国がWin-Winとなる形で、顧客と共に成長し、顧客と共に新しい景色を創造し続けることで、今後とも企業グループとしての持続的な成長を目指してまいります。

 

(2)経営環境

 当社の事業領域であるDX市場、情報サービス産業市場は、新型コロナウイルス感染症によるリモートワーク、非対面ビジネスへの移行が収束した後も、企業の競争優位性に直結するデジタル化、DX化への関心の高まりを背景に、様々な産業におけるIT投資意欲の拡大による、継続的な拡大が期待されております。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発表している「企業IT動向調査報告書2024」によると、調査対象となった企業の90%が前年と同等かそれ以上のIT予算の増額を予測しており、その大きな理由として業務のデジタル化対応、基幹システムの刷新を挙げております。

 また、これらの需要を充足するパートナーとしての、当社開発拠点であるベトナムの親和性に関しては、「第1 企業の概況 3.事業の内容 (4)当社グループの特徴・強み」として「1)日本とベトナムのシナジー c.DX推進パートナーとしてのベトナムの優位性」に記載の通りであります。

 加えて、近年はベトナム政府が2030年までのDX推進計画を含む「国家DXプログラム」を掲げる等、ベトナム国内においてもDX推進需要が高まっております。Google、Temasek、Bain & Companyが公表したe-Company SEA2023には、2023年におけるベトナムのデジタル経済規模は2023年で300億ドル、2025年までには450億ドル、2030年には東南アジアで2番目に高い成長率で最大2,000億ドルに達する試算が発表されており、エンジニアやITリソースの源泉に留まらず、ベトナム国内の需要も、今後大きな成長が見込める市場と考えられます。

 

(3)経営戦略

 当社グループは、上述の経営環境に対し、既存事業の開発対応領域の拡大、提供可能なソリューションの拡大、サービスを提供するマーケットの拡大の3つの軸での事業成長を図ってまいります。

 

①既存事業の開発対応領域の拡大

 当社は従来、顧客の開発需要に対し、要件定義等の上流工程から、実装、保守までを一気通貫で受託する体制を整備しており、M&Aを中心とした戦略で、その対応領域を拡大してまいりました。今後もこれらの戦略を継続し、より上流のDX戦略領域のコンサルテーションや、サービスローンチ後のマーケティング等の戦略領域等、顧客の事業戦略をより幅広く、力強く支援できる体制を築くことで、既存事業の拡大、特にストックサービスの規模拡大を図ってまいります。

 

②ソリューションの拡大

 現時点における当社グループが顧客に提供できるソリューションは、Web・アプリ開発が主流となっており、M&Aや採用を通じて、このソリューション領域を拡げることが、2つ目の経営戦略であります。具体的には、現在ベトナム合弁会社や、外部パートナーとの業務提携を通じて提供しているSalesforceや、AWS等のインフラ構築、クラウド、ERPコンサルティング等の開拓を図ってまいります。当社取締役の衣笠嘉展は、自身の経歴の中で先述の領域において豊富な知見を有していることから、同人がこの成長軸をけん引することで、着実な事業成長を推進してまいります。

 

③マーケットの拡大

 経営戦略の3つ目は、当社の従来の日本国内顧客を対象としたマーケットに加えて、海外の市場を開拓していくものであります。具体的には、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」に記載の通り、昨今DX化や、その関連サービスの需要が高まっているベトナム国内において、当社の日本とベトナムのリソースを活用したハイブリッドな事業体制や、同国内における高い認知度を活用した、DXサービスのディストリビューション事業への参入を推進しております。本件においては、2024年11月14日付で、本事業を営むベトナム合弁会社の設立、並びに販売代理となるパートナーとの業務提携に基本合意いたしました。

 

 上記の成長戦略に資する人材採用、M&A等を戦略的に実施することで、多角的な事業成長を推進してまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループの売上収益は、約89%がストックサービスで構成されていることから、同サービスを維持、拡大させることによって、経営を安定させると共に、経営戦略を速やかに達成できる経営基盤を築くことが、経営上の重要目標であると考えております。新規プロジェクトの獲得によるストックサービス件数の増加、及び既存顧客からの増員、新たなプロジェクトによるチームラインの増加、上流工程からの介在強化を通したストックサービス単価の向上により、市場を拡大し、ノウハウを蓄積するとともに、人材・新規技術獲得等への投資を継続することで、企業グループとしての持続的な成長を図ってまいります。この達成状況を図る指標として、当社はストックサービス件数とストックサービス単価を重要指標としております。

 

①2024年9月期までの管理指標

 2024年9月期までにおいては、ストックサービスの継続性を重視し、ストックサービス件数を「各事業年度末時点(あるいは四半期末時点)で、6カ月以上の契約を締結している長期ストックサービス案件の数」、ストックサービス単価を「各事業年度末時点(あるいは四半期末時点)のストックサービス案件の売上収益の合計/プロジェクト数」で算出した平均単価としており、その推移は下図の通りであります。

 

[事業年度ごとのストックサービス件数とストックサービス単価]

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(注1)ストックサービス件数の指標は、ストックサービスにて受注したプロジェクトのうち、前述の定義に当てはまるプロジェクトの数であり、同一の顧客から複数のプロジェクトを受注することがあるため、顧客数とは異なります。

 

②管理指標の改定について

 2025年9月期より、次の通り指標の定義を改定する方針であります。

 ストックサービス件数は、従来の契約期間が6ヵ月以上のストックサービス数の合計から、期末時点における月額取引金額が50万円以上のストックサービス数の合計に改定いたします。対象を一定以上の月額取引金額のストックサービスとすることにより、比較的小規模且つ長期に亘る契約に基づく保守契約や、当社の既存案件と比較して金額規模の小さい新規子会社の案件等、総合的な当社事業への影響度の低い案件を考慮対象から除外し、より正確に当社事業の進捗を表すことができると期待しております。

 ストックサービス単価は、期末時点における月額取引金額が50万円以上のストックサービス単月売上 ÷ 期末時点のストックサービス件数に改定いたします。この改定により、ストックサービス件数と同様に、より正確に当社事業の進捗を表すことができると期待しております。

 なお、改定後の定義における、過年度の各指標の推移は、下図のとおりであります。

[改定後指標における事業年度ごとのストックサービス件数とストックサービス単価]

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(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、今後の持続的な成長を実現する上で、以下の事項を課題として重視しています。

 

①開発体制の継続的な強化

 今後、より一層顧客の要件を満たす事業を実現するためには、開発品質レベルの向上は不可欠であります。当社グループは、日本とベトナム両国でのハイブリッドな開発体制に特徴がありますが、グループ間コミュニケーションのさらなる強化を図る一方で、それぞれの特性を活かした開発手法の標準化、開発ノウハウの蓄積・共有を今後も進めてまいります。特に、受注前の見積り精度の向上や受注後のプロジェクト進捗確認等のモニタリングを通じて、開発品質の確保と納期の遵守については最重要課題として取り組んでまいります。なお、2024年9月期は、当社ベトナム子会社の保有するダナン拠点において開発品質の低下、人員管理の課題が顕在化したことから、更なる悪影響の発生を回避すべく、ダナン拠点を閉鎖し、既存の2拠点(ホーチミン・ハノイ)に開発リソースを集中し、経営の効率化を図ることとしました。この2拠点は、従来より強固なマネジメント体制・人材を有しており、順調に体制強化が進んでおりますが、今後は、ダナンでの教訓を活かし、従来以上に体制強化を進めてまいります。

 また、日本国内におきましても、2024年9月期にWur株式会社、ドコドア株式会社を当社グループに迎え入れ、バックグラウンドの異なる多数の技術者間の交流を通じ、当社グループの技術力はより幅広く進化を遂げており、今後もこのシナジーを活かして更なる進化を進めてまいります。

 

②技術力のさらなる強化

 DX市場の変化、それを支える技術革新は目覚ましいものがあり、それらの最先端技術を迅速、的確に自社のサービスに反映し、市場のニーズに応えることが、企業成長において重要な課題であります。当社グループは、社内外で開発実績を持つAIモデルの構築をはじめ、今後もDX基盤の構築、サイバーセキュリティ等の幅広い最先端技術の習得に努め、様々な業界・業態の顧客への提案力の向上、更なる価値創造に努めてまいります。

 

③新規顧客の獲得

 当社グループが、持続的な成長を続けるためには、売上拡大に繋がる新規顧客の獲得が必要であると考えております。IPOによる認知度、知名度の向上も活かして、マスマーケティング、展示会への出展、プライベートセミナーの開催、リスティング、動画コンテンツの配信などを展開し、継続的に新規受注を獲得できる体制の確立を目指してまいります。

 2024年9月期は、Wur株式会社の子会社化により、開発の上流でのコンサルティング能力の更なる向上を、ドコドア株式会社の子会社化により、従来は当社グループで手掛けることができなかった小規模な開発案件も受託することが可能となり、より幅広く顧客のご要望にお応えできる体制が整いました。また、2023年9月期に子会社化した株式会社ハイブリッドテックエージェントも順調に業績を伸ばしており、プロジェクトマネージャーやコンサルティング人材を顧客のもとに派遣することで、顧客のDX推進の支援を拡大しております。

 

④人材採用・育成の強化

 当社及び当社グループが持続的な成長を図っていくには、専門性を有する優秀な人材を安定的、かつ機動的に確保することが必要不可欠と考えております。ベトナム3都市での産学連携、日本でのベトナム人脈のさらなる活用等も含めて、ターゲット別に最適な人材採用戦略を講じてまいります。また、新卒人材であっても即戦力に近いパフォーマンスを発揮できるよう、社内の育成体制を継続的に強化してまいります。日本国内で開発人材不足がますます顕著になっている今、ベトナムにおける豊富な人材を採用し、育成して日本のお客さまのご要望にお応えすることが当社グループの重要な使命であることを心に留め、今後とも優秀な人材の確保に努めてまいります。さらに、日本国内におきましても、都市部だけではなく、地方におきましても、優秀な人材を獲得すべく、M&A戦略も含め、種々の施策を実行してまいります。

 

⑤情報管理体制の更なる強化

 当社グループは、顧客の開発要件によっては、個人情報を含む顧客の機密情報を取り扱う場合があります。これらに適切に対応するために、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO27001:2013を取得し、情報管理やセキュリティ管理の徹底を図っております。また、2022年9月にはベトナムの国家サイバーセキュリティセンターとの間で、サイバーセキュリティに関する相互支援を目的とした協力覚書を締結いたしました。今後も当社グループの情報管理体制の整備を継続しております。日本国内においては、従来から体制を整え、徹底した情報管理を行ってまいりましたが、顧客からの信頼性向上の施策として、この度プライバシーマークも取得し、更なる体制強化を進めております。

 

⑥経営管理・内部管理体制の強化

 当社グループは、当社グループを取りまく事業環境の変化に柔軟に対応し、継続的に企業価値の向上を図っていくためには、内部統制環境の整備・強化が重要な経営課題であると認識しております。全社的なリスク管理体制の整備、コンプライアンス体制の強化、さらには適切なリスクテイク体制の構築を目指して取り組んでまいります。

 

⑦持続的な企業の成長

 当社及び当社グループは、グループのビジョン、ミッション実現のためには、持続的な事業成長が必須であると考えております。当事業年度は、開発上流工程でのコンサルティングサービスに強みを持つ、Wur株式会社を子会社として迎え入れました。また、標準化された規格を活用した、コストと品質のパフォーマンスに優れる開発手法を強みとするドコドア株式会社の子会社化により、当社グループの顧客層の拡大が達成できました。一連の子会社化によって、当社グループのエンジニアリソースの拡大や開発品質の一層の強化、ターゲットとする顧客層の拡大がはかられたものと考えております。今後も一層顧客のDX推進と競合優位性の向上、及び日本のIT人材不足の解決の一助となるべく、持続的な企業規模の成長、事業の拡大を図ってまいります。また、これらを達成するべく、事業や市場活動によって得られた資金を柔軟に活用し、設備や人材への投資を継続しながら、企業買収や事業提携等についても積極的に検討してまいります。

 

⑧手元流動性の確保

 当社グループは、継続的な取引である「ストックサービス」が売上収益の多くを占めているため、キャッシュ・フローは、安定していると認識しております。今後も、事業環境の変化やM&Aなどの資本政策にも対応できるように、柔軟な財政政策を実施してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社のビジョン「New View With You」には、株主、従業員や顧客をはじめとした全てのステークホルダーと共に新しい景色を創造する、という意味が込められており、当社が考えるサステナビリティの根幹は、このビジョンの下、当社の事業であるハイブリッド型サービスの提供を通じて、顧客、ひいては社会全体の課題解決に寄与することであります。従って、当社グループ及び当社グループが展開する事業の継続的な成長が、社会の持続的な発展に貢献するものであると考えております。

 そのための具体的な取り組みは、以下の通りであります。

 

(2)具体的な取り組み

・ガバナンス

当社グループの持続的な成長及び長期的な企業価値の向上を図るためのガバナンス体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載の通りであります。

 

・戦略

 当社グループの事業であるハイブリッド型サービスの価値向上のためには、開発体制や技術力の継続的な強化、新規顧客の獲得が重要であり、それらを実現するためには、優秀な人材の採用、育成が不可欠であります。

 当社の開発拠点であるベトナム法人では、当社のベトナム国内における知名度を活かした、合計34,000人を超える採用候補者リストを有している他、ベトナム国内の名門大学10校との産学連携による新卒人材の採用網、語学研修を含む実践的なトレーニングを含む、新卒人材の体系的な育成体制を整備しております。

 日本法人においても、持続的な採用、育成に取り組んでおり、当連結会計年度に実施した株式会社イクシアスの子会社化と同時に当社取締役CTOに就任した衣笠嘉展を中心に、今後一層、技術者の採用、育成を推進してまいります。また、従業員が始業、終業時間を柔軟に選択できる制度や、都内2箇所にオフィスを備えることによる就業場所の多角化によって、快適な就業環境の整備に努めております。

 加えて、2024年9月期に子会社化を実施したドコドア株式会社は、新潟県を拠点にリモート体制を活用して全国各地に開発体制を展開しており、当社グループの就業環境の更なる多様化に資すると考えております。

 詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の通りであります。

 

・リスク管理

 当社グループは、当社グループが展開する事業の継続的な成長が社会の持続的な発展につながるものであるという考えの下に、持続的な成長を確保するため、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 g.リスクコンプライアンス委員会」に記載の通り、「リスク管理規程」及び「コンプライアンス規程」を定め、全社的なリスク管理体制の強化を図っております。代表取締役社長CEOを議長とするリスクコンプライアンス委員会を原則として3カ月に1度開催し、リスクの抽出、改善策の提案等に関して協議し、対応を検討しております。また、必要に応じて弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家の助言を受けられる体制を整備しており、リスクの未然防止と早期発見に努めております。

 

 なお、これらの取り組みに関する「指標及び目標」に関しては、現時点で定量的な指標や目標は設定しておりませんが、当社グループ及び当社グループが展開する事業の継続的な成長、並びにそれを実現するための、日越両国における多様で優秀な人材の確保が重要であると考えております。今後、当社グループにとって適切な指標や目標の設定に向けて、検討を進めてまいります。

 

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性を認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.事業環境、事業構造面

①市場認知

 「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境」に記載の通り、現在の日本社会は、深刻なIT人材不足の状況にあり、デジタル化の遅れが大きな社会問題となっていますが、それらは、当社グループがサービスを提供するDX推進市場の可能性を示しているとも考えられます。当社グループでは、ハイブリッド型サービスで実績を積み重ねるとともに、各種プロモーション活動等の啓蒙活動を積極的に展開し、日本におけるベトナムオフショア開発の市場認知度の向上を推し進める活動を実施していますが、これらの取組が想定通りに進展しなかった場合に、当社グループの成長シナリオに重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②競争激化

今後の事業の拡大を推し進める上で人材の確保・育成が重要な経営課題であり、当社グループは在日ベトナム人コミュニティ内でのリファラル採用や、ベトナム国内における複数大学との産学連携など、日本とベトナムで様々な施策を実施しております。しかしながら、採用が計画通りに進まなかった場合、また人材の流出も含めて人材の育成が進まなかった場合に、当社グループの開発力やコスト競争力が相対的に低下することで、失注や利益率の悪化等を招き、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③特定顧客への依存

当社グループは、主にWeb/ECシステム、モバイルアプリ領域を中心にハイブリッド型サービスで実績をあげており、既存顧客の継続案件が増加傾向にあります。その結果、2024年9月期で上位5社による売上収益比率が35.8%となっております。当社グループは、新規顧客の開拓を行うことで相対的な依存度を下げていく各種取組を進めておりますが、これらの取組が想定通りに進展せず、既存顧客の業績等の影響を受けた場合に、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④法的規則

当社は2023年4月に、人材派遣業を主要事業とする株式会社ハイブリッドテックエージェント(旧:キャスレーコンサルティング株式会社)を子会社化いたしました。その結果、現在、当社グループの事業には、日本においては「労働者派遣法」「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」や「下請代金支払遅延等防止法」、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」等の関連業法や告示が存在します。また、ベトナムにおいても、各種関連法令が存在します。当社グループでは、顧問弁護士のアドバイスも受けながら、業務フローやマニュアルを整備するとともに、法務担当部門が中心となって運用状況を適宜チェックしております。現時点では、事業の継続に大きく影響を及ぼすような法規制は無いものと認識しておりますが、今後の法整備の結果、新たな法規制が発生し、当社グループの対応が遅れた場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤移転価格税制

当社グループにおいて、国境を跨ぐ会社間の取引価格の設定においては、適用される移転価格税制の遵守に努めていますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受けた場合、追徴課税や二重課税が生じることにより、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ベトナムカントリーリスク

 当社グループの事業は、ベトナム子会社が開発業務の中核を担っております。ベトナムは同じIT技術大国であるインドや中国と共に、オフショア先として注目を浴びている国の一つです。長期的な観点ではオフショア先をベトナムに限定することなく、グローバルな視点からリスクを管理してまいりますが、今後ある程度の時間レンジでは、同国の人件費の高騰、法改正や税制面での優遇の見直し等でオフショア先としての優位性が無くなった場合に、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦為替相場の変動

 当社グループのベトナムを中心とした事業は、連結財務諸表を作成するにあたっては現地通貨を円換算する必要があり、換算時に使用する為替レートによっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。極端な為替相場の変動に伴うリスクをヘッジするため、為替予約等の対策を講じてまいります。

 

⑧新規技術への対応遅れ

当社グループの事業は、インターネットを中心としたITシステムの利用を大前提としておりますが、生成AI技術などの技術革新等でIT環境に大きな変化が起こり、その変化に対応するための技術開発に多大な費用が発生した場合や、当社グループ側の対応が遅れた場合に、競争力が低下することが考えられます。また、インターネットの利用を制約するような新たな法的規制の導入等により、インターネット関連市場の発展が阻害され、当社グループの事業が低迷することが考えられます。以上のような場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨知的財産権

当社グループが提供するハイブリッド型サービスにおいては、ソフトウェア開発に関連する特許権や著作権等の知的財産権の確保が業務遂行上重要であり、独自の技術・ノウハウ等の保護・保全とともに、法務担当部門及び品質管理部門が中心となって、第三者の知的財産権を侵害しないよう十分な注意を払っております。しかしながら、第三者より損害賠償及び使用差止め等の請求、並びに特許に関する対価(ロイヤリティ)の支払等が発生した場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩システムトラブル

当社グループは、自社サービスをサーバー上で提供していないものの、日本とベトナム両拠点においてインターネットを中心としたITシステムの環境下でソフトウェア開発を行っています。使用するハードウェア、ソフトウェア、通信回線等の不具合、人為的なミス、さらにはコンピュータウイルス、停電、自然災害等によって作業が中断し、当社グループ側の対応が適切に行われなかった場合に、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪情報セキュリティ

当社グループは、サービス提供の過程で、顧客のシステム上で直接開発作業を行うことがあり、各種機密情報にもアクセスすることがあります。そのため、顧客との間で責任範囲を明確にして、ベトナム子会社では情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得するとともに、グループの品質管理部門やITインフラ部門が中心となって、情報セキュリティソフトの導入や、各種社内規程や作業手順書の整備、社内教育・啓蒙活動を実施するなど、社員の情報管理には徹底して取組んでおります。しかしながら、不正アクセスや操作ミス等の発生、あるいはコンピュータウイルスによる被害等、不測の事態の結果、機密情報が外部に漏洩した場合には、信用低下や損害賠償請求等により、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ストックサービスの品質について

当社グループが提供するハイブリッド型サービスにおいては、その全体収益の大半を占める準委任契約であるストックサービスについては法的には作業結果に対する契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負いませんが、サービスの品質が顧客の求める水準を維持できなかった場合には、顧客からの信用低下により、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬不採算プロジェクトの発生について

ハイブリッド型サービスを計画通りに完了させることは、当社グループの業績向上にとって非常に重要であります。特に、当社グループの提供するフローサービスにおいては見積り精度が重要であり、プロジェクトごとの利益管理及び進捗管理を徹底しております。しかしながら、このような施策を講じたにも関わらず、不測の事態により想定を超える工数増加や納期遅延等が発生した場合には、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭自然災害による影響について

当社グループは、日本国内では東京、新潟に、ベトナム国内ではホーチミン、ハノイの2ケ所に拠点を設けておりますが、これらの地域で、地震等の自然災害やそれに伴う二次災害等の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの事業拠点で大規模な災害等が発生した場合でも、その他の拠点で業務を継続できる体制を取っておりますが、自然災害等の規模や状況によっては、当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

2.組織、体制面

①特定人物への依存

当社の創業者であるチャン バン ミンをはじめとする取締役、執行役員は、それぞれの管掌する領域において経営方針や戦略の決定、推進等に大きな役割を果たしておりますが、過度な依存からの脱却のために、管理・監督層の人材の育成、権限の移譲を進めております。しかしながら、現時点では、不測の事態により取締役・執行役員の当社経営及び業務執行への関与が困難となった場合、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②人材獲得、育成

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の通り、今後の事業の拡大を推し進める上で人材の確保や育成が重要な経営課題と認識しておりますが、当社グループの取組が想定通りに進展せず、人材の確保、育成が進まなかった場合には、当社グループの事業展開に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③内部管理体制の整備

当社グループは、当社グループを取りまく事業環境の変化に柔軟に対応し、持続的に企業価値の増大を図っていくためには、日本とベトナムの両拠点で内部統制環境の整備、強化を重要な経営課題であると認識して取組んでまいりました。しかしながら、事業の急速な拡大や当社グループの企業数の増加の中で、内部統制環境の構築が追いつかない事態が生じた場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④投融資

当社グループでは、今後の事業展開の過程において、既存サービスの強化、グローバル展開の加速及び新たな事業領域への展開等を目的として引き続き、出資、設備投資、アライアンス、M&A等の投融資を実施する方針であります。投融資については、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言も得ながら投資リスクを十分に検討し、また、当社グループの財政状態等を総合的に勘案して決定しますが、予定していた投融資の回収ができない場合や、減損損失の対象となる事象が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.大株主との関係について

①大株主2社が支配権又は重大な影響力を有することに伴うリスク

 当連結会計年度末において、Soltec Investments Pte. Ltd.は、当社株式の議決権34.7%、株式会社エアトリは、当社株式の議決権30.4%(間接所有分3.1%を含む)を有しております。Soltec Investments Pte. Ltd.は投資会社であり、そのグループに属する企業から当社はシステム開発業務を受注する場合もありますが、当連結会計年度は該当ありません。

 

②株式会社エアトリと当社の関係性について

 当社の大株主である株式会社エアトリは、総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を中心とした旅行コンテンツ

の提供を行う「オンライン旅行事業」、ベトナムにおけるソフトウェア開発などのオフショア関連事業を行う「IT

オフショア開発事業」、戦略的なM&A及び成長企業に対する投資育成を推進する「投資事業」、及びその他事業か

らなり、当社は、株式会社エアトリから見て「持分法適用関連会社」に該当します。

 現時点において、当社の事業と株式会社エアトリグループの事業の競合等が想定される事象は発生していないものの、将来において株式会社エアトリグループの事業戦略や当社の位置付け等に著しい変更が生じた場合には、当社の財政状況及び経営成積に影響を及ぼす可能性があります。

 

③株式会社エアトリグループへの取引依存

 株式会社エアトリグループとの取引比率については、当社の連結売上収益に占める割合が、2023年9月期は

21.6%、2024年9月期は24.7%と、事業年度によって変動はあるものの約2割程度となっております。同グループ

との取引については、取引条件や各種業務フロー、関連当事者取引に対するチェック体制等の整備を行ってきたこ

とから、当社グループの事業の独立性については確保できていると考えております。また、同グループ以外の顧客

の新規開拓を積極的に進めることで、取引依存度を相対的に下げる取組を進めております。しかしながら、これら

の取組が想定通りに進展せず、同グループ企業の影響が相対的に高まる場合には、当社グループの業績に影響を及

ぼす可能性があります。

 

4.その他

①潜在株式による希薄化

当社は、当社グループの役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権(ストック・オプション)を付与しております。これらのストック・オプションが権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、ストック・オプションによる潜在株式数は1,252,500株であり、発行済株式総数11,399,548株の11.0%に相当しております。

 

②配当政策

当社は、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、設立以来2024年9月期までは配当を行っておりません。しかしながら、株主に対する安定的な利益還元の実施は重要な経営課題であると認識しており、今後の利益配分については、業績動向を考慮しながら、将来の事業拡大や収益の向上を図るための資金需要や財務状態を総合的に勘案し、適切に実施していく方針であります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の収束後、緩やかな回復が継続する状況となりました。一方、地政学的リスクの高まりに起因した物価上昇や米国金利上昇の影響、世界的な金融引き締め等、経済的リスクも高まり続けており、依然として経済の見通しは不透明な状況にあります。

 こうした経済環境の中、当社グループが属する情報サービス産業の市場におきましては、新型コロナウイルス感染症によるリモートワーク、非対面ビジネスへの移行が収束した後も、企業の競争優位性に直結するデジタル化、DX化への関心の高まりを背景に、様々な産業におけるIT投資意欲の拡大、それによる情報サービス産業市場の継続的な拡大が期待されております。

 このような状況の下、当社グループが提供するハイブリッド型開発サービスは、従来の日本とベトナムのリソースを融合させた開発体制に加え、積極的なM&Aや業務提携により、サービス提供体制の強化、対応領域の拡大を推進してまいりました。

 2023年4月に子会社化した株式会社ハイブリッドテックエージェントは、エンジニアの派遣、SES事業を堅実に拡大させており、2024年4月に子会社化したWur株式会社も、顧客の新規事業の立ち上げに伴走する得意分野を活かした堅調な成長を続けております。また、両社共に当社の既存顧客に対するグループ単位でのクロスセルや、バックオフィス業務の連携等、事業、管理両面においてPMIは順調に進捗しております。

 さらに、2024年7月に子会社化したドコドア株式会社は、標準化された開発規格によるコストと品質のパフォーマンスに優れる開発手法と、新潟を拠点に幅広い地域の開発需要に対応できるリモート開発体制を活かし、従前の当社グループではリーチできなかった顧客層を獲得する等、グループイン直後から事業シナジーを実感しております。また、同社の新潟県を拠点として日本全国に展開する開発体制は、当社グループの日本国内における開発体制の強化、為替変動等の外部環境からの影響の分散に寄与するものと考えております。

 しかしながら、当期は、当社ベトナム子会社が持つダナン拠点のマネジメント不足に起因する既存顧客の一部撤退や縮小、開発内容の課題等を解消するために要する追加工数の発生、待機人材の増加等の課題が顕在化しました。これらの顕在化した課題と、同拠点の閉鎖に伴う減損損失等の計上が、当期の売上、利益の悪化要因となりました。今後は、グループ全体の事業領域拡大、ホーチミン・ハノイの2拠点に経営リソースを集約させた安定的な拠点運営体制によって、中長期的な売上収益の伸張、利益率の向上を図ってまいります。

 以上の結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は3,135,094千円(前年同期比7.9%増)、営業利益は108,422千円(前年同期比57.8%減)、税引前利益は96,920千円(前年同期比48.8%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は53,015千円(前年同期比66.9%減)となりました。

 なお、当社はハイブリッド型サービスの単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ218,950千円増加し、4,066,413千円となりました。

 流動資産は前連結会計年度末に比べ126,516千円減少し、1,731,176千円となりました。これは主に、営業債権及びその他の債権が103,960千円減少したことによるものです。

 非流動資産は前連結会計年度末に比べ345,465千円増加し、2,335,237千円になりました。これは主に、のれんがが449,634千円増加した一方で、使用権資産が149,105千円減少したことによるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ273,586千円増加し、1,787,818千円となりました。

 流動負債は前連結会計年度末に比べ149,390千円増加し、760,871千円となりました。これは主に、借入金が88,407千円、その他の流動負債が49,816千円増加したことによるものです。

 非流動負債は前連結会計年度末に比べ124,196千円増加し、1,026,948千円になりました。これは主に、借入金が232,483千円増加した一方で、リース負債が130,468千円減少したことによるものです。

 

(資本)

 当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ54,636千円減少し、2,278,594千円となりました。これは主に、その他の資本の構成要素が123,828千円減少した一方で、利益剰余金が53,015千円増加したことによるものです。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末より62,425千円増加し、1,359,122千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下の通りです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により獲得した資金は、361,714千円となりました(前年同期は260,835千円の獲得)。これは主に、税引前利益を96,920千円、減価償却費及び償却費を182,605千円計上したこと、及び営業債権及びその他の債権の減少額179,539千円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、300,220千円となりました(前年同期は694,562千円の使用)。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出272,226千円、投資有価証券の取得による支出50,268千円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により獲得した資金は、13,288千円となりました(前年同期は85,083千円の使用)。これは主に、長期借入れによる収入198,864千円、リース負債の返済による支出123,757千円によるものです。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループのサービス提供は、生産実績の記載になじまないため、生産実績に関する記載は省略しております。

 

b.受注実績

 当社グループの行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次の通りであります。

(単位:千円)

売上収益の区分

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

  至 2024年9月30日)

前年同期比(%)

ストックサービス

2,795,150

103.3

フローサービス

339,944

170.0

合計

3,135,094

107.9

(注)1.当社グループの事業セグメントは、「ハイブリッド型サービス」を単一の報告セグメントとしているため、サービス別の販売実績を記載しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次の通りであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社エアトリ

234,871

8.1

590,157

18.8

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りの不確実性により実際の結果が、これらの見積りと異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要性がある会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しておりますが、重要なものは以下の通りであります。

 

(収益認識)

 当社グループでは、フローサービスの新規受注案件のうち、進捗部分について成果の確実性が認められる案件については工事進行基準(進捗率の見積りは原価比例法)を適用しております。適用にあたっては、受注総額、総製造原価及び当連結会計年度における進捗率を合理的に見積る必要がありますが、予想し得ない工数の大幅な増加等により当該見積りが変更された場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(受注損失引当金)

 受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注契約に係る損失見込額を計上しております。受注契約時に予想し得ない事象の発生やプロジェクトの進捗状況等によって損失額が大きく変動する可能性があります。

 

(投資有価証券)

 当社グループの投資有価証券は非上場株式で構成されております。活発な市場における公表価格が入手できない非上場株式の公正価値は、合理的に入手可能なインプットにより、主に割引キャッシュ・フロー法を使用して測定しております。公正価値の評価は、評価する時点において入手可能な情報に基づく最善の見積りと判断に基づき実施しておりますが、将来の事業環境の変化等の影響により見積りの見直しが必要となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(のれん)

 当社グループは経営戦略に基づく事業拡大のため、株式取得による企業結合を行っております。当該企業結合により認識されたのれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、又は減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。この減損テストにおいては、評価時点で入手可能な経営者の最善の見積りと判断による将来キャッシュ・フロー予測に基づいて実施されておりますが、将来の事業環境の変化等の影響によりこれらの見積りが変更された場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

 財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載の通りであります。

 

b.経営成績の分析

(売上収益)

 当連結会計年度の売上収益は、3,135,094千円(前期比7.9%増)となりました。これは主に、前連結会計年度中に取得した連結子会社の株式会社ハイブリッドテックエージェント、当連結会計年度中に取得した連結子会社のWur株式会社、ドコドア株式会社の取り込みによる増加及び、新規案件の獲得により増加した一方、主にダナン拠点の既存顧客撤退による減少影響の結果によるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度の売上原価は、2,161,015千円(前期比16.3%増)となりました。これは主に、売上規模に応じてエンジニアの稼働が増加したこと、ダナン拠点において既存案件の撤退に伴う待機人材の増加や、開発案件のトラブルに対応する追加工数の発生等によるものであります。

 以上の結果、当連結会計年度の売上総利益は、974,078千円(前期比7.0%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、846,985千円(前期比6.0%増)となりました。これは主に、売上規模に応じた人件費及び管理費等の増加、M&Aの取得関連費用の計上等によるものであります。また、その他の費用にて、ダナン拠点の閉鎖に伴う減損損失等を計上いたしました。

 以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、108,422千円(前期比57.8%減)となりました。

 

(金融収益、金融費用、税引前利益)

 当連結会計年度の金融収益は、33,160千円(前期比1,099.9%増)となりました。一方で金融費用は、44,662千円(前期比36.4%減)となりました。金融収益及び金融費用は、主に前連結会計年度の為替差損が、当連結会計年度は為替差益に転じた影響によるものです。

 以上の結果、当連結会計年度の税引前利益は、96,920千円(前期比48.8%減)となり、法人所得税費用を36,834千円(前期比27.3%増)計上したことにより親会社の所有者に帰属する当期利益は、53,015千円(前期比66.9%減)となりました。

 

c.キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

③資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び市場から理解を得られる株主価値向上を目指した明確な資金調達戦略の提示と実行を基本方針としております。ハイブリッド型サービスにおいて技術者の採用は重要であり、これらの資金需要は内部資金または資金調達の実施により賄うことを基本としております。

 

④目標とする客観的な指標等の推移

 当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載の通り、売上高の継続的かつ累積的な増加の実現のため、ストックサービス件数とストックサービス単価を重要指標としております。

 2024年9月期におけるストックサービス件数は、新規案件の受注が進捗した他、期中に子会社化し、第3四半期以降連結対象となったWur株式会社の案件取込みにより増加した一方、円安の進行による価格競争力の低下や、ダナン拠点で顕在化した案件デリバリーの課題による既存顧客の終了が発生しました。この結果、2024年9月期のストックサービス件数は、2023年9月期から横ばいとなる69件(前期比増減なし)となりました。

 ストックサービス単価においては、ストックサービス件数にも影響した既存案件の終了や、比較的小規模なWur株式会社の案件を取り込んだ影響を考慮した結果、2023年9月期末時点の3,757千円から1,248千円減少し2,509千円(前期比33.2%減)となりました。

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 なお、当社グループは「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標②管理指標の改定について」に記載の通り、重要な管理指標としておりますストックサービス件数とストックサービス単価の定義につきまして、2025年9月期より、事業の目標や進捗状況を示す指標としての明瞭さを向上させる目的で、改定を行う方針であります。

 

⑤経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は「第2 事業の状況 3事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(Wur株式会社の株式取得)

 当社は、2024年3月27日付「Wur株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」で公表しましたWur株式会社の株式取得に関し、2024年3月27日開催の取締役会において決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しておりましたが、予定通り2024年4月1日付で同社の発行する株式の67%を取得いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 7.企業結合(Wur株式会社の株式取得)」に記載の通りであります。

 

(ドコドア株式会社の株式取得)

 当社は、2024年7月16日付「ドコドア株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」で公表しましたドコドア株式会社の株式取得に関し、2024年7月16日開催の取締役会において決議し、2024年7月17日付で株式譲渡契約を締結しておりましたが、同日付で同社の発行する株式の80%を取得いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 7.企業結合(ドコドア株式会社の株式取得)」に記載の通りであります。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。