当社の経営方針、経営戦略等は次のとおりであります。
また、次の文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、「グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む」を経営理念(ミッション)として掲げ、研究開発事業とライセンス・製品販売事業の2つのビジネスモデルを軸として、世界中のバイオものづくりプラントにおいて当社の技術が使われ、「創造的な技術力、提案力でバイオものづくり分野を牽引し、常識を変革する企業になる」ことを目指しております。
当社の成長は、次の事項により実現してまいります。
当社の強みは、バイオものづくりの事業について、菌体開発から商用生産まで全体を通した知見と経験を有していることであります。したがって、バイオものづくりにかかる様々な課題に対して、その解決法を考え、提供していくことで、バイオ化学品の上市を実現していくことが弊社の事業のコアとなります。
当社がバイオ化学品の上市を実現するための収益化の形として、次の3つの手法が挙げられます。
・ライセンス
・自社販売
・テクノロジーパッケージ
いずれの手法についても、市場規模の大きい重厚型、かつ継続的な収入が得られる長大型の案件に集中し、事業を展開してまいります。
世界の脱炭素の流れにおいて、欧米を中心に、化学品のバイオ化の要請が強まりつつありますが、まだ、日本においては、バイオものづくりという分野は未成熟であり、バイオものづくり事業という産業が確立されている状況ではありません。そうした状況を危惧し、国内においても、政府が、従来の脱炭素の目標に加え、安全保障の観点からも、バイオ燃料やグリーン化学品の社会実装に力を入れはじめています。
そうしたなかで、当社は、バイオものづくり事業のプラットフォームを構築し、そのプラットフォームを使って、国等のプロジェクトも含む次のような事業に取組み、バイオものづくりの社会実装を推進してまいります。
<成長戦略を実現するための主要パイプライン>
・バイオファウンドリ事業関連
・木質バイオマス由来のエタノール関連
・製紙産業素材由来のバイオ燃料・バイオ樹脂原料
・パーム残渣由来のバイオ燃料・バイオ化学品
・米由来の次世代タンパク質
・CO2由来のバイオ化学品
・セルロース・ヘミセルロース・リグニン由来のバイオ化学品関連

近年、米国や欧州等では、バイオテクノロジーと経済活動を一体化させた「バイオエコノミー」という概念に基づく総合的な戦略のもとに技術開発や政策が推進されております。
2022年9月に、米国で発表された「National Biotechnology and Biomanufacturing Initiative」のFACT SHEET(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/09/12/fact-sheet-president-biden-to-launch-a-national-biotechnology-and-biomanufacturing-initiative/)では、バイオものづくりが今後10年以内に製造業の世界生産の3分の1を置き換え、金額換算で約30兆ドル(約4,000兆円)に達するという分析がなされています。
また、欧州では、EUが規制戦略による循環型社会(サーキュラー・バイオエコノミー)の構築が進められ、英国では2023年2月に組織を新設するとともに、同年12月にEngineering Biologyに関するビジョン(「National Vision for Engineering Biology」)を公表しています。
このほか、中国、韓国、シンガポール等のアジア諸国でも、バイオものづくり産業に対する政策的な支援や市場創出の取組みが進められています。
日本においては、2024年6月に、内閣府(統合イノベーション戦略推進会議)が「バイオエコノミー戦略」を策定しました。本戦略は、バイオエコノミー市場拡大に向けて、2019年に策定した「バイオ戦略」から、「バイオエコノミー戦略」に名称を改め、最新の国内外の動向等を踏まえ、2030年に向けた科学技術・イノベーション政策の取組みの方向を取りまとめたものです。本戦略によると、バイオテクノロジーやバイオマスを活用するバイオエコノミーという産業の世界全体の市場規模は、2030年時点で約100兆円が見込まれており、うち当社が属するバイオものづくり・バイオ由来製品の領域は53.3兆円を占めています。
優先的に対処すべき財務上の課題として、設立時より研究開発のための設備や人件費等を先行投資しており、2024年9月期までにおいては継続的な営業損失を計上しております。研究開発サービスを提供する、当社のような技術開発型ベンチャーにおいては、商用化可能な技術基盤の確立のための設備投資を含む研究開発費用が先行して計上されるに伴って、赤字計上となることに特徴があります。
今後も、技術基盤の強化のための研究開発活動への投資を継続するとともに、次の事業上の課題である「開発から商用化というビジネスモデルの確立」及び「成長を支える体制の確立」に取組むことで、更なる売上高の拡大を目指し、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。
また、優先的に対処すべき事業上の課題は次のとおりであります。
当社は、バイオものづくりという新しい市場で生き残り、成長していくために、自社で開発、生産、販売するという単純なビジネスモデルではなく、様々なニーズや課題を抱える他社との研究開発を実施し、事業化可能な技術レベルまで発展させ、最適な商用化の形(ライセンス契約、自社販売又はテクノロジーパッケージ)を選択し、収益を確保してまいります。
また、いずれの選択についても、市場規模の大きい重厚型、かつ継続的な収入が得られる長大型の案件に集中し、事業を展開してまいります。
そのため、中期目標とし、今後3年間において、次の項目を実施してまいります。
社会が求めるバイオ化学品を選び出して、その開発のために最適なパートナー企業を探し出し、研究開発を進めております。特に最近では、地球環境問題等に対する関心が高まり、非石油由来のバイオ樹脂や生分解性のバイオ樹脂に対するニーズが強まっているものと考えております。また、バイオマスを原料とする場合、原料調達費、人件費、物流コスト、供給安定性等から、低コスト化のためには、海外での商用化がカギを握っております。さらに、近年、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」ということが叫ばれ、廃棄物の有効利用が求められており、当社が有している非可食バイオマスの利用とバイオものづくりの知見を使ったソリューションを提供してまいります。
こうした状況を踏まえ、今後3年間において、バイオ燃料生産技術の確立、バイオ樹脂原料の研究開発、海外企業とのバイオ化学品の研究開発、食品残渣・農業残渣由来のバイオ化学品の事業化に向けた取組みを展開してまいります。
継続的かつ安定的な収益の確保のためには、研究開発による一時的な売上だけではなく、開発した技術及び製品の商用化(ライセンス契約、共同出資会社による生産及び販売、自社販売又はテクノロジーパッケージとしての技術開発)が重要であります。製品の価格、用途、市場規模、パートナー企業の有無、技術の特性等の状況に応じて、どの形態が最適かを判断し、商用化を進めてまいります。
具体的には、今後3年間において、既に開発に着手している、バイオ燃料、新規アミノ酸、非可食バイオマス利用及び食品向け素材のパイプラインの商用化を計画しております。
当社は、既に5種類のアミノ酸のライセンス、並びに化粧品用エタノールの自社販売という形で商用化を実現しており、これらの商用化済製品からの収益の拡大にも取組む必要があります。
具体的には、今後3年間において、改良技術の提供等を通じたライセンシー企業の製品の売上高拡大によるロイヤリティ収益の拡大を図ります。
当社が「バイオものづくりの社会実装を実現するプラットフォーマー」であり続けるためには、事業の拡大を支える体制を確立・維持し続ける必要があり、中期目標として今後3年間において、次の項目を推進してまいります。
規程類の整備とその適正な運用、必要となる組織の新設及び変更並びに適切な人員の採用及び配置、予実管理及び決算体制の整備、会計システムのワークフローの確立及び人的作業からシステム制御への移行、内部監査の実施、リスク及びコンプライアンス管理の実施等を実行して、法令に準拠し、また当社の事業構造に適応した内部統制システムの適時の改定及び運用を継続してまいります。
世界的な石油資源からバイオマスへの転換の波による、大企業におけるバイオプロセスの研究開発への投資や少子化による研究者の絶対数の減少等により、研究者は現在売り手市場であると考えております。当社は技術開発型ベンチャーであり、独自の技術開発が事業の根幹となることから、優秀な研究者の確保が必要不可欠であります。
また、上述の内部統制システムの構築や、適時開示及びIR等、付加的業務への対応のため、企画、管理部門についても増員が必要であり、適時の採用活動を行っていきます。
当社のビジネスモデルの特徴として、自ら大規模な製造設備を持たないことで、大きな設備投資を必要としないことにありますが、成長のためには、多くの製品の開発を行う必要があり、人員の拡大に伴う研究施設の拡張、発酵槽等の研究開発設備への追加投資が必要であります。
研究開発は、必ずしも目標値を達成し、成果を確約するものではなく、また新規技術は市場における実績も少ないことから、取引先の拡張にあたっては、当社の認知度及び信用力を向上させ、当社の技術に対しても信用を持たせることが重要であります。
当社は、商用化実績を着実に積み上げるとともに、上場企業としての知名度の上昇及び信頼の獲得を目指します。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年9月開催の国連サミットで加盟国により採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標であり、17のゴール(目標)と169のターゲットから構成されます。
当社の事業は、17のゴールのうち次の6つの達成に寄与するものと考えており、当社の事業成長が持続可能な社会の実現に繋がることを志しております。

当社は、バイオものづくり事業により、今まさに新たな市場を作りだしている過渡期であります。
市場成長の初期段階において先駆者として実績を積むことは、当該市場において高い優位性に繋がることから、第一に売上高と営業外収益(研究開発受託に関連する助成金のみ)を経営指標とし、パイプラインの拡大を基盤とする販売実績の増加を目指しております。
当社は、「グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む」を経営理念(ミッション)として掲げ、世界中のバイオものづくりプラントにおいて当社の技術が使われ、創造的な技術力、提案力でバイオものづくり分野を牽引し、常識を変革する企業になることを目指して事業を展開しております。当社にとってのサステナビリティとは、事業活動を通じて社会課題の解決に取組むことであり、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントが重要であると認識しております。具体的な当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
取締役会を経営の基本方針や重要課題並びに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則として月1回定期的に開催するとともに、監査役会により業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の遵守状況、業務活動の適正性かつ有効性等を確認しております。また独立した組織である内部監査室による、業務執行の有効性、適法性の確認及び評価を通して、組織の健全化に取組んでおります。
詳細は
① サステナビリティ関連のリスク及び機会に対処する取組み
当社の実施するバイオものづくり事業は、資源の枯渇や人口増加といった地球環境問題より、世界的に脱石油化の流れが加速し、カーボンニュートラルが目標とされる昨今の経済状況に鑑みて、サステナビリティ、SDGsとの関連が非常に高いと考えております。そのため、事業活動に真摯に取組み、顧客課題や社会課題の解決を通じて、当社の持続的な成長を実現してくことそのものが、社会の持続的な発展の貢献に直結するものと考えております。
当該取組みの詳細は、
② 人的資本
当社では、人的資本に関して、以下のとおり「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を設定しております。
a 人材育成方針
当社においては、事業活動の担い手となりうる多様なバックボーン、経験等をもった人材を積極的に採用し、業務に必要な知識習得に向けた研修の実施、自己研鑽を促進することで、継続的な人材育成に取り組んでおります。
b 社内環境整備方針
リモートワーク勤務等により柔軟な働き方を可能とするとともに、ストック・オプションによる従業員インセンティブの充実、各種福利厚生制度の設定等、多様な人材が健康で、高いモチベーションを保ちつつ、また働きやすい環境の整備に取組んでおります。
当社は、経営企画室長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置し、原則として四半期に1回定期的に開催し、研究所における労働安全衛生体制や苦情又は内部通報等のリスク、及び法令順守体制や社内規程の整備等のコンプライアンスにかかる重要事項を審議、対応施策を決定しております。
当社では、(2) 戦略において記載した人材育成及び社内環境整備にかかる指標について、具体的な取組みを行っているものの、本報告書提出日現在においては、当該指標についての具体的な目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示を検討してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は次のとおりであります。
また、必ずしもリスク要因には該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しておりますが、当社に関するすべてのリスクを網羅するものではありません。
また、次の文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
当社事業は、基本的には企業向けにアミノ酸や樹脂原料等の原材料に関する研究開発及びライセンスの付与を実施するものであることから、一般的な製造業や小売業と比較して、景気の変動の影響を受けにくい特徴を有しますが、景気の急速な悪化により、事業者の新規事業や研究開発活動への投資が減速した場合、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、収益化手法の1つとしてライセンス契約に取組んでおります。ライセンス契約においては、主として自社において技術を使用した製品の生産、販売を行わないことにより、設備投資及び販路確保や在庫の保有、広報等の販売活動にかかる費用やリスクを最小限にすることができます。
一方、ライセンス契約の事業構造上、製品の販売活動はライセンシー(ライセンス契約の締結先)に依拠し、当社において販売の計画、実行を行わないことから、特に短期的な業績予測と実績の乖離が生じる可能性があります。
当社としては、期待するロイヤリティ収入を保持できるよう、ライセンシーの販売計画を精査のうえ、ライセンス契約の条件を個々に設定しており、今後は既存のライセンス契約の条件やロイヤリティ収入の実績の知見をもって、さらに業績予測の精度を高める方針でありますが、ライセンシーの事業状況に変動が生じた場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、アジア地域において事業展開を行っており、当該地域における事業活動には次のようなリスクがあります。
・予期し得ない法律、規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
・不利な政治的要因の発生及びそれに伴う為替の変動
・常識、文化、社会的慣習の違いによる契約違反や技術流出等の発生
当社は、今後事業開拓活動により、研究開発の対象製品、提携先(取引先)の多様化を進め、研究開発に続くライセンス契約も、複数の地域、取引先に展開していく計画でありますが、上述のアジア地域に特有のリスクが発生した場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社の1つの大きなパイプラインにおける対象製品(当社がライセンスした技術によりライセンシーにおいて商用生産される製品)である飼料添加物用のアミノ酸については、畜産業界における病気の蔓延等により、その需給に大幅な変動が生じることがあります。例えば、2018年から中国を中心に拡大した豚コレラの蔓延により、中国国内での養豚数が激減し、豚向けの主要な飼料添加物であるバリンの売上が想定値より大幅に減少するという事態が生じました。
当社は、複数のパイプラインに取組むことで、特定の1つのパイプラインのリスクが当社の経営全体に与える影響を最小限に抑えるような事業構造を構築してまいりますが、特定製品にかかる需給リスクが発生した場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
各パイプラインはStageごとの複数の契約の締結、遂行により進捗していくものであり、研究開発の目標達成状況やパートナー企業の方針等により、契約が締結されない、あるいは進捗が遅延又は停滞する可能性があります。
計画数値の策定にあたっては、既に契約が締結されているもの、あるいはほぼそれと同様の確度で収益が見込まれるものを中心に売上高に計上することで予算未達のリスクを抑えることとしております。それでも、ライセンス契約の締結時期の遅延や大型の研究開発契約の開発期間の長期化等のパイプラインの進捗に遅れが生じる事象が生じた場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
バイオものづくり技術については、商用化可能な技術基盤の確立のために中長期的な研究開発期間及び先行投資が必要であり、IT技術のように革新が早く入れ替わりがあるような業界ではありませんが、対象製品について当社技術より優位性の高い技術が第三者により商用化された場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社においては、技術基盤の強化のための研究開発活動を継続するとともに、「(4) 商用化における特定の対象製品にかかるリスク」に記載のとおり、商用化の対象製品を複数とすることで、特定の1つのパイプラインのリスクが当社の経営に与える影響を最小限に抑えるような事業構造を構築してまいります。
当社は、公益財団法人地球環境産業技術研究機構で開発された技術を事業化したことから設立されており、同機構は当事業年度末において当社の株式900,000株を保有する大株主であります。
当社では、同機構の保有するRITE Bioprocess®に関連するものを始めとする特許権の実施許諾を受け事業展開を行ってきており、その使用にあたっては同機構(ライセンサー)に対しロイヤリティを支払うものであります。また、当社の研究開発拠点であるGreen Earth研究所の建物は同機構より借り受けるものであります。
同機構は公益財団法人として、開発した技術を世の中に広め、もって地球環境の保全及び世界経済の発展に資することを理念としており、当社の事業成長を推進する立場にあることから、これまで同機構とは協力的な提携関係を維持しており、その継続性にかかるリスクは僅少でありますが、万が一これらの特許権及び建物賃貸にかかる契約の継続が困難となった場合には、現在時点において当社の業績及び財務状況等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、特許権については、大規模な設備投資や販売活動を必要としない事業形態を活かして研究開発へ注力し、当社の特許権の取得を進めつつ、できる限り多くの企業との協業を実現することにより、外部の特許権に依存しない事業展開を進める方針であり、現状、当該依存度は減少傾向にあります。
当社の研究開発拠点は、Green Earth研究所とバイオファウンドリ研究所の2ヵ所であり、大規模災害等が発生し、当該研究所が損壊又は当該研究所の研究開発設備が破損、紛失した場合、研究開発が停止することとなります。
研究開発は当社の事業の核となる活動であることから、研究開発設備について、地震保険をかけ、損壊時における新規設備購入のための手元資金を確保しております。また、事業継続上作成に期間がかかる菌株については、独立行政法人製品評価技術基盤機構が提供する、安全保管(生物遺伝資源の保管委託)サービスを利用して保管しておりますが、不測の災害等が発生した場合、当事業年度においては売上高の大きな割合を占める研究開発契約にかかる業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、2023年4月にバイオファウンドリ研究所が稼働を始めたことで、災害等にかかるリスクの影響は分散、軽減されております。
当社は事業展開において様々な特許権等の知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、又は他者より適法に実施許諾を受けた権利であると認識しております。これらの知的財産権について、これまで第三者の知的財産権を侵害した、又は当社が侵害を受けた事実はなく、今後も侵害を防止するため、適切な管理を行っていく方針でありますが、当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性や新たに第三者の知的財産権が成立する可能性もあり、当該侵害のリスクを完全に排除することは困難であります。
今後、当社が第三者との間の知的財産権を巡る法的紛争等に巻き込まれた場合、顧問弁護士や弁理士と協議のうえ、当該知的財産権によってはライセンサーとも協力し、対応する方針でありますが、当該紛争に対応するために多くの人的及び資金的負担が発生するとともに、当社のライセンサーから特許権の実施の差止請求や、損害賠償等の請求を受けることがあり、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社の提供する技術は、特殊な設備を要することなく導入できることが強みでありますが、一方で技術つまりはノウハウにかかる情報資産につき、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入等による漏洩リスクが存在します。
これに対し、VPN(Virtual Private Network)及びUTM(Unified Threat Management)を導入し、プライベートネットワークによる拠点間接続を行い、セキュリティの高い環境を構築しております。また、当社の情報資産はVPNで接続されたLAN(Local Area Network)上に保存し、適切なアクセス権限の設定を行うことにより、情報資産を一元管理し、情報漏洩リスクへの対策を講じておりますが、不法な侵入等を受けた場合は、企業が不正にその技術を利用して当社に競合する、又は当社へライセンスされた特許権にかかる情報資産の漏洩につき、当社のライセンサーから特許権の実施の差止請求や、損害賠償等の請求を受けることがあり、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
技術開発ベンチャーである当社においては、商用化可能な技術基盤の確立のための、研究開発にかかる投資が重要と考えており、先行的に研究開発設備の導入及び研究開発用消耗品の購入、並びに研究員の増員のための人件費等の費用を先行的に投下しており、2024年9月期までにおいて継続的な営業損失を計上しており、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社においては、今後も、技術基盤の強化のための研究開発活動への投資を継続するとともに、新たな研究開発契約やライセンス契約の締結及びそれに伴う収益の計上に努めてまいりますが、これらの先行投資が想定どおりの成果に繋がらなかった場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、2011年9月の設立より、近年までは商用化のための研究開発を事業活動の中心とし、収益も行政機関等からの助成金を主体としておりましたが、2018年9月期より本格的な商用化に至っております。
技術自体は商用化段階に達しており、当該技術を使用して製造する製品も既存の市場が存在し、その規模、市場価格等の指標となるデータが入手できます。そのため、業績予測については一定程度の蓋然性があるとの認識であり、今後は実績の積み重ねにより、さらに業績予測の精度を高める方針であります。
ただし、当事業年度までは赤字決算であり、過年度の業績のみでは期間比較を行う充分な材料とはならず、今後の業績については当社において合理的と考えられる方法により予測、算定したものでありますが、判断指標が不十分であり、当社の業績予測と実績に乖離が生じる可能性があります。
技術基盤の継続的な強化のための研究開発活動、及び収益の最大化のための事業活動にあたっては、優秀な人材の確保が必要不可欠であります。当社においては、事業規模に応じて採用活動を行ってきており、これまでのところ適時に必要な人材の採用に至っておりますが、今後、大企業の採用市場の動向や少子化による就活者の募集の減少等により、採用活動が円滑に進まない場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、主として、取締役及び従業員に対し、経営目標や業績の達成の意識向上又は優秀な人材の採用を目的としたインセンティブとして、新株予約権の付与を行っております。
提出日現在におけるこれらの新株予約権にかかる潜在株式数は561,600株であり、当社の発行済株式総数及び潜在株式数の合計11,852,500株の4.74%にあたり、今後新株予約権が行使された際には、既存株主の株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
日本においては2023年に新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられ、社会・経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復傾向にあります。一方、長期化するロシア・ウクライナ情勢や米国の金利に関連した急激な円安の進行に加え、中東情勢緊迫化等の背景から、原材料価格やエネルギー価格の上昇により、依然として先行き不透明な状況が続くことが見込まれます。
このような状況下であるものの、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)より受託したバイオファウンドリ事業やグリーンイノベーション基金事業等、国内外のパートナー企業等との大型のパイプラインを含む研究開発を進捗させております。
以上の結果、当事業年度は売上高1,002,540千円(前年同期比11.7%増)、営業損失148,793千円(前期営業損失106,917千円)、経常損失138,087千円(前期経常損失108,156千円)となりました。当期純損失については、133,881千円(前期当期純損失112,215千円)となりました。
なお、当社はバイオものづくり事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度末における流動資産は2,636,062千円となり、前事業年度末に比べ1,411千円減少いたしました。これは主に売掛金が195,512千円増加した一方、現金及び預金が126,810千円、売上高に紐づく研究開発活動にかかる仕掛品が50,995千円、バイオファウンドリ事業における設備投資のうちNEDOの所有分による立替金が18,870千円減少したことによるものであります。固定資産は100,228千円となり、前事業年度末に比べ65,603千円増加いたしました。これは主に機械及び装置が50,500千円増加したことによるものであります。この結果、総資産は2,736,290千円となり、前事業年度末に比べ64,192千円増加いたしました。
当事業年度末における流動負債は608,555千円となり、前事業年度末に比べ212,331千円増加いたしました。これは主に未払金が40,215千円、バイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算額の入金による仮受金が221,768千円増加した一方、1年内返済予定の長期借入金が36,870千円減少したことによるものであります。固定負債は152,613千円となり、前事業年度末に比べ12,771千円減少いたしました。これは主にリース資産の賃貸借による長期リース債務が4,869千円、借入金の返済により長期借入金が7,940千円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は761,169千円となり、前事業年度末に比べ199,560千円増加いたしました。
当事業年度末における純資産合計は1,975,121千円となり、前事業年度末に比べ135,367千円減少いたしました。これは新株予約権行使により資本金が351千円、資本準備金が351千円増加した一方、利益剰余金が133,881千円減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は72.2%(前事業年度末は78.9%)となりました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、本項目において「資金」という。)については、前事業年度末より126,810千円減少し、2,274,249千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果、獲得した資金は3,378千円(前事業年度においては321,199千円の支出)となりました。これは主にバイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算払いによる仮受金の増加額221,768千円、研究開発活動にかかる棚卸資産の減少額50,881千円、及び未払金の増加額41,149千円の増加要因があったものの、主に売掛金の発生に伴う売上債権の増加額195,512千円、税引前当期純損失131,626千円の減少要因によるものであります。
投資活動の結果、支出した資金は81,333千円(前事業年度においては13,410千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出80,004千円の減少要因によるものであります。
財務活動の結果、支出した資金は48,855千円(前事業年度においては5,299千円の支出)となりました。これは主に新株予約権行使による株式の発行による収入702千円の増加要因があったものの、長期借入金の返済による支出44,810千円、及びリース債務の返済による支出4,715千円の減少要因によるものであります。
当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
当社が提供する役務の性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当事業年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社はバイオものづくり事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。
注1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。
また、次の文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社の財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、過去の実績や市場動向を勘案し、合理的に判断しておりますが、不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表にかかる重要な会計方針の詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
特に次の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当社の将来の事業計画を基に、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。
将来の事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失を計上する可能性があります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産については、当社の将来の課税所得見込みや想定実効税率等、現状入手可能な将来情報に基づき、合理的に将来の税金負担を軽減する効果を有し、回収可能性があると考えられる範囲内で計上することとしております。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響する可能性があります。
当事業年度における売上高については、前事業年度より105,117千円増加し、1,002,540千円となりました。これは主にバイオものづくり事業のインフラ整備を目的として受託しているバイオファウンドリ事業等の国のプロジェクト、並びに石油資源の枯渇、CO2削減又は使い捨てプラスチックにかかる法的及び業界の規制を見据えた企業の、石油由来の化学品からバイオマス由来の化学品への転換の需要の伸長による、研究開発契約の締結によるものであります。
当事業年度における売上原価については、前事業年度より82,614千円増加し、560,695千円となりました。これは主に当事業年度において、バイオファウンドリ事業を始めとする研究開発契約に紐づき発生する外注費及び間接原価が前事業年度と比較して増加したことによるものであります。
当事業年度における販売費及び一般管理費については、事業規模の拡大に伴う増員及び増員に伴う各種経費の増加の結果、前事業年度より64,379千円増加し、590,638千円となりました。以上の結果、営業損失は148,793千円となりました。
当事業年度における営業外収益については、前事業年度より12,064千円増加し、12,749千円となりました。これは主に補助金収入12,047千円の増加等によるものであります。また、営業外費用については、前事業年度より117千円増加し、2,042千円となりました。以上の結果、経常損失は138,087千円となりました。
当事業年度においては、特別利益については、6,788千円となりました。これは新株予約権戻入益によるものであります。また、固定資産除却損328千円を計上した結果、特別損失は328千円となりました。また、法人税、住民税及び事業税2,310千円、及び法人税等調整額55千円を計上した結果、当期純損失は133,881千円となりました。
キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、自らは製品の生産設備を保有せず、研究開発に必要な設備のみを有し、技術を提供する事業形態であることから、資金需要の主なものは、菌体及びバイオプロセスの基礎開発にかかる研究開発費その他人件費等の事業活動費でありますが、2022年9月期より、バイオファウンドリ事業において、インフラ整備のための新たな研究施設の建設、発酵槽や自動化機器等の研究開発設備への大規模な追加投資を行っております。ただし、これらの固定資産は事業期間中においては、NEDOが所有するものとなり、事業終了後に簿価買取となります。
運転資金については、2020年9月期においては新型コロナウイルス感染症による経済の低下の可能性を鑑み、融資により60,000千円を調達しており、2021年9月期においても100,000千円の融資及び第三者割当増資による株式発行により550,000千円を調達しております。
さらに、2022年9月期においては上場に伴う株式発行の有償一般募集及び有償第三者割当により1,617,875千円を調達しております。
上述の大規模投資についてはバイオファウンドリ事業の事業予算及び上場に伴う株式発行による調達資金を充当いたします。なお、それ以降は現時点において大規模な資金需要の計画はなく、基本的に流動性の高い銀行預金により賄う方針であります。
当社は、新興市場であるバイオものづくり業界においては、当面、売上高の拡大が同業界における企業成長を示すものと考えており、目標とする経営指標として売上高を掲げております。
売上高実績については、国等のプロジェクトの契約の締結による受託収入、並びに研究開発契約の締結による研究開発収入及びライセンス契約の締結によるライセンス一時金等の計上により、前事業年度は897,422千円(前年同期比53.4%増)、当事業年度は1,002,540千円(前年同期比11.7%増)であります。売上高は、現時点において上述の方針どおりの進捗となっており、堅調に推移しているものと認識しております。
当社は、当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、経済動向、世界市場を対象としたライセンス契約による製品の市場展開、特定の第三者の技術を基盤とする事業展開、技術の損失、漏洩及び知的財産権の侵害等によるリスクを認識しております。
これらのリスクに対応するため、当社は、製品の市場動向を見据え、ライセンシーとの密な提携により、予算や各種計画の精度を上げるとともに、研究開発活動への投資を拡大して、当社単独による特許権の取得や多様な製品を対象とした研究開発を推進し、併せて情報セキュリティの拡充を含む内部統制の向上により、情報資産の管理、保全に取組んでまいります。
当社の事業運営にかかる重要な契約は次のとおりであります。
注1.2021年度~2026年度の6ヶ年計画にて申請し、採択されておりますが、2023年度以降は2年度(4月1日~3月31日)ごとそれぞれ契約締結されます。
2.2023年度~2030年度の8ヶ年計画にて申請し、採択されておりますが、2026年度以降は2年度(4月1日~3月31日)ごとそれぞれ契約締結されます。
当社は、設備投資等の投資リスクを最小化し、既に需要の存在する製品を対象に着実な市場展開を進める方針であります。
そのため、研究開発活動については、研究開発契約にて受託した、又は研究開発を打診する案件にかかる、食品添加物又は飼料添加物用途のアミノ酸やバイオジェット燃料の原料となるエタノールやイソブタノール、樹脂原料や化粧品原料となるバイオ化学品の生産菌を対象としております。また、体制としては、研究開発部門の研究員が中心となり、パートナー企業の要望を踏まえるため営業部門とも連携しつつ、菌体の対糖収率や生産性(反応時間、終濃度)の向上や、生産に最適な培養条件、酵素選択、精製方法等の検証、要件化並びにスケールアップ実証を行っております。
その成果として、先進的なバイオプロセスや改良菌体等について、特許の出願及び登録を成しております。
当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は
研究開発費の主な内訳は、研究員等の人件費、基礎研究開発にかかる外注費、研究開発設備にかかる減価償却費及び研究開発に使用する各種消耗品費であります。
なお、当社はバイオものづくり事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。