第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

I.グループ基本戦略

 当社グループは、2018年9月に2025年ビジョン及び中期経営計画を策定し、同計画における2025年の営業利益目標を4年前倒しで達成したこと、また、今後の社会のあり方が大きく変化することを踏まえまして、2022年11月に、2030年に向けたビジョン及び中期経営計画を策定し、2024年11月に一部更新いたしました。

 当社グループでは、更なる成長に向け、2030年のビジョンとして、「社会価値創造企業~自らが社会を創造する担い手になる~」を定め、「革新」「変革」「挑戦」をキーワードにした基本戦略に基づき、国内・海外において事業を展開し、“社会価値創造企業”の実現に向け、国・地域とのより高い信頼関係を築き、国・地域の活力や魅力を高める事業を推進して参ります。

 また、当社グループは、中期経営計画の基本方針に基づき、下記の施策を実施いたします。

(1)事業創造・拡大

・事業の総合化・事業経営の推進、DXの推進により新たな社会価値を創造し、国内外における市場を拡大して参ります。

・重点化事業により、ナンバーワン・オンリーワンの技術やサービスを確立して参ります。

・国内と海外で競争力を強化し、各市場で自律的に成長し、各市場間の連携を図りながら、ワンストップで事業を推進して参ります。

(2)人材確保・育成

・企業ブランドの強化による多様な人材の確保と、プロフェッショナル人材の育成を推進して参ります。

・グループ内外のリソースの効果的な活用等により、社会価値の更なる創造を推進して参ります。

(3)基盤整備

・DXの推進により、グループ共通基盤を整備推進し、業務プロセスの変革を行い、生産性改革、働き方改革につなげます。また、サイバー攻撃に対して、外部専門家の協力のもと、高度なセキュリティ対策を推進し、盤石のIT基盤を構築して参ります。

・国内においては、エリアマネジメントの全国展開にあわせて、マネジメント機能をもたせた拠点整備を推進いたします。また、海外においては、現地法人や、設計業務を行う現地デザインセンターなどの海外拠点の整備を推進して参ります。

・ポストコロナ時代のニューノーマル社会を見据え、多様な働き方に対応可能な柔軟な制度と環境の整備を推進して参ります。

・適切な会計処理に向けた再発防止の徹底に取り組むとともに、コンプライアンスの強化、徹底に向け、内部統制機能を強化して参ります。

・株主の皆様に対して、長期的に安定した利益還元を行っていくことが、経営の重要課題の一つであると認識しております。そのため、今後、上場企業として、PBR1倍以上を維持するとともに、資本効率についても高ROEを維持し、両数値の向上に取り組んで参ります。配当については、過去の連結業績の推移や今後の連結業績の見通し、配当性向・配当利回り・自己資本比率等の指標などを総合的に勘案して決定することを基本方針としております。配当性向につきましては、40%程度を目安といたします。

 

 なお、適切な会計処理に向けた、当連結会計年度における再発防止策による是正の内容につきましては、内部統制報告書に記載しております。

 

Ⅱ.目標とする経営指標

 ビジョンの実現に向け、2030年中期経営計画における目標として、売上高、営業利益、組織・人材、基盤整備を指標として定めました。この2030年の目標達成に向け、「事業創造・拡大」「人材確保・育成」「基盤整備」という3つの[基本方針]を定め、推進して参ります。また、基本方針に基づき、「技術・サービスの高度化・総合化」「企業規模の拡大」「企業ブランドの醸成」の推進により、2030年の目標を達成して参ります。

 

項 目

2030年の経営目標

業績

売上高

1,100億円以上

営業利益

70億円以上

組織・人材

社員数

5,000人以上

(主要6社3,500人以上、その他連結子会社1,500人以上

(うち海外現地法人1,300人以上))

有資格者

技術士

1,300人以上

博士

100人以上

基盤整備

DX             DXの推進とセキュリティ対策強化

拠点整備・充実    国内外の拠点整備・充実化

多様な働き方     多様な働き方に対応できる柔軟な制度と環境整備

内部統制        適切な会計処理等に向けた内部統制の強化

資本コスト・株価    PBR1倍以上の維持・向上

   高ROEの維持・向上

   配当性向40%程度を目安に配当

Ⅲ.経営環境

 現在、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。生産性改革、働き方改革とともに、ポストコロナ社会を見据えた今後の新たな働き方や暮らし方の実現に向けて、先進技術の導入によるDXの推進が必要となっています。

 また、地球温暖化の影響を踏まえ、カーボンニュートラルを含め、SDGsの目標達成に向け、持続可能な社会づくりがより一層求められています。

 そのような環境の中、私たちが推進する事業においては、個別の事業を推進するという部分最適ではなく、全体最適を目指すことが必要となっています。さらに、限られた予算と人材の中で、官と民の持てるリソースを、最大限に有効活用するPFI・PPP等の事業形態がより求められています。これらの変化に柔軟に対応し、“社会価値創造企業”として成長するためには、「革新」「変革」「挑戦」をキーワードにした基本戦略に基づき、事業をマネジメントする必要があると考えます。

 私たちは、これらの基本戦略に基づき、国内・海外において事業を展開し、“社会価値創造企業”の実現に向け、国・地域とのより高い信頼関係を築き、国・地域の活力や魅力を高める事業を推進して参ります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

 当社グループは、社会環境全般から企業の事業活動に至るまでの幅広い分野において知的サービスを提供しております。経営にあたっては、「世界の人々の豊かなくらしと夢の創造」というミッション(使命)のもと、顧客、株主をはじめ社員やその家族など、関係する全てのステークホルダーの皆様の信頼を確立するため、経営の透明性、効率性、企業の健全性を確保し、コーポレート・ガバナンスを発揮させることを基本方針としております。

 この基本方針に基づき、当社の取締役会では、法令又は定款で定められた事項や、サステナビリティの推進も含む経営上の重要な事項につきまして審議を行うとともに、当社取締役会と同じ出席者で構成される意見交換会におきまして、取締役会での審議・決議の前に十分に議論したうえで決定しております。

 また、当社グループにおけるサステナビリティ全般の課題を解決するため、グループ各社の社長で構成されるグループ社長会を開催、議論を行うとともに、グループ各社固有の課題を解決するため、定期的にグループ各社と個別戦略会議を開催、議論を行い、サステナビリティの推進に向けた取組みを推進しております。

 さらに、当社グループの事業創造・拡大に向け、特に重点的に取り組んでいる重点化事業を推進するため、定期的に重点化事業責任者会議、重点化事業推進委員会を開催し、サステナビリティ全般の推進も含めた取組みを推進しております。

 

②戦略

  SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年に国連が、「誰一人取り残さない(No one will be left behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指し、17の目標が定められ、2030年の達成を目指しています。私たちは、自ら社会を創造する担い手として、2030年ビジョンのスローガンである「社会価値創造企業」を目指し、事業活動を通じて、魅力ある社会づくりや持続可能な社会づくりを推進するとともに、社会との共有価値創造(CSV)であるCSV活動や、企業としての社会的責任(CSR)であるCSR活動も積極的に推進し、気候変動への対応も含むSDGsの17の目標達成に貢献いたします。

 特に、事業活動においては、以下に示す3つの視点から、サステナビリティ全般に関わるSDGsの目標達成に貢献してまいります。

・すべての人々に安全な生活環境の形成

   発展途上国における食料、医療・福祉、教育、差別、衛生環境などさまざまな課題の解決に向け、計画策定、事業提案・支援など総合的にコンサルティングを提供し、人々が平等で安全に生活できる社会基盤、経済基盤の整備、向上に貢献いたします。

・安心・安全・快適で活力あるまちづくり

   地域における産業・経済に活力を与えるとともに、地域のくらしを快適にし、魅力ある、持続可能な社会づくりに貢献する社会インフラの整備や最適な維持管理に向け、総合コンサルタントとして、調査、計画、設計、施工、運営・維持管理まで一貫したサービスを提供し、安心・安全・快適で活力あるまちづくりに貢献いたします。

・持続可能な地球環境の保全への貢献

   地球温暖化の防止に向けた、自然環境の保全や人と自然との共生に向けた取組み、再生可能エネルギーの普及など低炭素社会の実現のため、総合コンサルタントとして、調査、計画などのコンサルティイングのみならず、地域に根ざした事業活動の推進により持続可能な地球環境の保全に貢献いたします。

 

③リスク管理

 当社グループは、「リスク管理規定」に基づき、サステナビリティ全般に関わる事項も含む重要なリスクについてリスク評価を行い、内部監査本部を中心に、重要なリスクに対するリスクの顕在化の防止、リスクの早期発見に資する予防保全策、事後保全策を推進しております。

 また、グループ全体における企業活動の適正を確保し、サステナビリティの推進も含め、課題を解決するため、定期的にガバナンス強化会議を開催し、グループ全体の経営執行全般に関わる問題・課題を抽出し、情報を共有するとともに、課題解決に向けた施策を展開しております。

 

(2)気候変動

①戦略

 当社グループは、「(1)サステナビリティ全般 ②戦略」に記載のように、私たちは、事業活動を通じて、魅力ある社会づくりや持続可能な社会づくりを推進しており、2030年ビジョン・中期経営計画の基本方針「事業創造・拡大」において重点化事業を定め、地球温暖化の防止に向けた持続可能な地球環境の保全に貢献しております。

 特に、SDGsにおける目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」への貢献に向け、「防災」を重点化事業に位置付けるとともに、気候関連災害や自然災害に対する防災・減災に向けたコンサルティングサービスの展開など、気候変動への対応も含め、様々な事業を展開しております。

 国内事業では、国が進める「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」における「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」に関する事業を多く実施しており、「リアルタイム土砂災害危険度可視化システム」を開発し、本システムの評価実験を実施するなど、気候変動への様々な対策等を提案いたしました。また、全国で展開されている次世代に向けたレジリエンス(強靭化)に関する先進的な取り組みを表彰する制度「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)」を6年連続で受賞いたしました。今後も、DX技術も活用しながら、ハード・ソフトの両面から地域の強靱化、国土の強靱化に向けた防災事業を推進してまいります。

 海外事業では、途上国において、気候変動の影響等による災害に対して、復旧・復興に向けた計画策定、実施や、自然防災、減災に向けた支援など様々なコンサルティングサービスを提供しており、フィリピン国では、2017年の台風による被害を受け、「総合洪水対策計画」の策定を提案するとともに、地域の治水対策に関する実践的な計画策定能力の向上にも寄与いたしました。今後も、途上国における安心・安全の確保および気候変動への影響への対応に向け、防災事業を推進してまいります。

 

②指標及び目標

 当社は、気候変動への対応に向けた防災などの重点化事業を推進するため、事業戦略に基づき、必要な重点化プロジェクトを設定しております。

 この重点化プロジェクトの着実な推進により、新たな社会価値の創造や事業モデルの変革、マネジメントの最適化等を図り、気候変動への対応を含め、地球温暖化の防止に向けた持続可能な地球環境の保全に貢献してまいります。

 

<気候変動への対応に向けた重点化プロジェクトの件数>

・2024年9月期実績 89件

 

(3)人的資本・多様性

①戦略

 当社グループは、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を図るうえで、人材の多様性が重要であると認識しております。また、今後の社会のあり方が大きく変化することも踏まえ、2030年を目標年次としたビジョンおよび中期経営計画を策定し、基本方針として「人材確保・育成」を掲げ、「多様な人材の確保」や「グローバル人材の育成」を推進するとともに、「基盤整備」を掲げ、多様な働き方に対応可能な柔軟な制度と環境整備を推進しております。

 

<人材確保・育成>

■企業ブランドの強化による多様な人材の確保と、プロフェッショナル人材の育成

 グループ各社やグループ全体の企業ブランドを強化するとともに、ダイバーシティの推進などにより、多様な人材の確保を推進いたします。また、グループ各社における諸制度の整備、充実化を図り、グローバル人材や技術士・博士等の資格取得などを通じて、プロフェッショナル人材を育成してまいります。

■グループ内外のリソースの効果的な活用により、ブランド力をより一層向上

 総合化によるエリアマネジメントを推進するには、グループ会社のリソースの活用や融合が必要です。また、商社やメーカー、地域の企業や大学など、異業種を含むグループ外企業等との連携を強化することも重要です。

 そのため、グループ内外のリソースを有効活用するとともに、プロフェッショナル人材を育成し、社会価値の更なる創造を推進してまいります。

 

②指標及び目標

 当社は、ダイバーシティを念頭に、女性や、外国人、多様な職歴をもつ中途採用者などの多様な人材を積極的に登用するとともに、マネジメントや専門技術を担う管理職を育成するため、下記に示す目標を定め、人的資本・多様性の充実化を推進いたします。

 

指標

2030年目標

2024年9月期実績

女性管理職の比率(主要6社)

7(100名)以上

7.3%(78名)

外国人管理職の比率(主要6社)

現状と同程度以上の比率の人数を確保

1.6(17名)

中途採用者管理職の比率(主要6社)

現状と同程度以上の比率の人数を確保

49.6(528名)

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 成果品に対する瑕疵責任

当社グループでは、技術・品質に関する品質管理部署を設置し、品質管理を徹底しているほか、特に高度な技術を要する業務におきましては、熟練技術者による照査を実施しております。また、不測の事態に備え、損害賠償保険に加入しておりますが、当社の成果品に瑕疵があり、瑕疵責任に基づき、多額の損害賠償請求を受けた場合や長期の指名停止を受けた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 重大な人身・設備事故等

当社グループでは、建設工事現場における人身・設備事故を未然に防ぐため、社員教育をはじめ、現場での安全の確保に対する取り組みを徹底しております。また、不測の事態に備え損害賠償保険に加入しておりますが、万が一、重大な人身・設備事故を発生させた場合、顧客の信頼を低下させるほか、損害賠償義務の発生や受注機会の減少等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 営業キャッシュ・フローの変動

業務代金の入金時期や外注費等の支払い時期は契約業務毎に異なるため、売上高や受注残高が同程度であっても毎期末の受取手形、売掛金及び契約資産、契約負債及び未成業務支出金の残高は大きく変動します。そのため、これらの入出金の時期によっては、営業利益が同程度であっても営業キャッシュ・フローが大きく変動する可能性があります。

④ 法的規制

当社グループは、事業活動を営む上で建設業法、建築基準法、独占禁止法、下請法等、様々な法規制の適用を受けており、これらの法規制を遵守すべく、関連規程の整備、監査体制の充実、役職員の教育等、コンプライアンスを重視した経営を行っております。しかしながら、もしこれらの規制を遵守できなかった場合、営業活動範囲の制約により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 業務提携・企業買収等のリスク

当社グループは、今後とも他社との業務提携及び企業買収等を行う可能性があります。何らかの理由により提携・買収が想定した効果を生まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

⑥ コミットメントライン契約における財務制限条項

当社が主要取引銀行との間で2023年12月26日付で締結したコミットメントライン契約(融資枠100億円)において、一定の財務制限条項が付されております。財務制限条項は、1)各決算期末日の連結財務諸表の純資産の金額を2023年9月期の純資産の金額又は直前の決算期末日の純資産の金額のうち、いずれか高いほうの金額の75%以上に維持すること、2)各決算期の連結財務諸表の営業損益及び経常損益を2期連続して損失としないこととなっております。

⑦ 取引先の与信と売掛債権の貸倒

当社グループは、与信リスクへの対応を向上すべく与信管理の改善に努めておりますが、何らかの理由により取引先が支払い不能・倒産等に陥り、多額の回収不能・遅延が発生した場合には、当社グループの資金繰りに影響を与える可能性があります。

⑧ 情報漏えい

当社グループは、取引先との機密情報の取扱い及び個人情報の取扱いに関しては、社内規定類の整備を行うなど実務上の運用ルールの設定を行っております。しかしながら、万が一取引先等との間にセキュリティに関する問題が発生し、当社グループの社会的信用に甚大な影響をもたらした場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

⑨ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産については、営業取引を源泉とした課税所得による回収を見込んでおります。しかし、経営成績が想定している計画を下回り、回収可能性に疑義が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

⑩ 固定資産の減損損失

当社グループでは、保有資産について減損の兆候が発生した場合には、将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失を計上する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

⑪ 有利子負債への依存

当社グループは、今後企業買収を行っていくうえで、その原資を金融機関からの借入金等により調達する可能性があります。その場合、今後の金利動向や金融情勢の変化によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

⑫ 為替の変動

当社グループは、海外マーケットへの積極的な進出に伴い、外貨建取引が経常的に発生しております。今後、為替相場の変動によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑬ 感染症に関するリスク

新型コロナウイルスを含め、今後も同様の感染症が発生し、従業員同士の接触等により、社内での感染が拡大した場合には、事業活動に支障をきたし、一定期間事業活動を停止する可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しや雇用・所得環境の改善等により、景気は緩やかな回復基調で推移したものの、物価上昇、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化、世界的な金融引締めに伴う影響等、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような状況の中で、当社グループでは、重点的に取り組む事業を、国内市場5つ(インフラ整備・保全、水管理・保全、防災、交通、地方創生)、海外市場5つ(民間事業、スマートシティ開発事業、O&M事業、DX事業、事業投資)に定め、各市場で推進しております。

市場別の受注状況は、国内市場におきましては、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」による公共工事の執行により、引き続き、防災・減災関連のハード・ソフト対策業務、道路・河川・港湾等の維持管理業務等の受注環境は堅調であり、当連結会計年度における受注高は583億59百万円(前連結会計年度比13.6%増)となりました。

海外市場におきましては、開発途上国でのインフラ整備の需要は依然旺盛で良好な受注環境にあり、当連結会計年度における受注高は306億72百万円(前連結会計年度比1.2%減)となりました。

これらの結果、当連結会計年度の受注高は890億31百万円(前連結会計年度比8.0%増)となりました。

売上高及び営業損益につきましては、国内市場、海外市場とも堅調に推移しており、売上高は862億82百万円(前連結会計年度比10.4%増)、営業利益は46億64百万円(同20.1%増)となりました。また、為替相場の変動により為替差損5億41百万円を計上したため、経常利益は40億22百万円(同5.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は25億97百万円(同8.3%減)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

(インフラ・マネジメントサービス事業)

インフラ・マネジメントサービス事業の売上高は、防災・減災関連のハード・ソフト対策業務、道路・河川・港湾等の維持管理業務等の受注が堅調に推移し、704億80百万円(前連結会計年度比8.1%増)となりました。営業利益は、38億46百万円(同13.5%増)となっております。

(環境マネジメント事業)

環境マネジメント事業の売上高は、解体工事等の大型案件の受注が堅調に推移し、140億79百万円(前連結会計年度比23.1%増)となりました。営業利益は、6億6百万円(同130.4%増)となっております。

(その他事業)

その他事業の売上高は、IT関連事業の受注が堅調に推移し、27億10百万円(前連結会計年度比12.1%増)となりました。営業利益は、1億49百万円(同0.7%減)となっております。

 

(2) キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7億89百万円増加し、96億63百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果、獲得した資金は28億13百万円(前連結会計年度比30億9百万円の収入増)となりました。これは主に法人税等の支払額が減少したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は21億87百万円(前連結会計年度比4億64百万円の支出増)となりました。主な内訳は、投資有価証券の取得による支出6億32百万円、有形固定資産の取得による支出6億79百万円、及び無形固定資産の取得による支出3億90百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動の結果、獲得した資金は3億37百万円(前連結会計年度比38億6百万円の収入減)となりました。主な内訳は、短期借入金の純増額12億88百万円、自己株式の取得による支出3億22百万円、及び配当金の支払額6億8百万円であります。

生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

自 2023年10月1日

至 2024年9月30日

 

前年同期比(%)

 

インフラ・マネジメントサービス事業(千円)

70,685,626

8.2

環境マネジメント事業(千円)

12,381,545

9.4

合計(千円)

83,067,171

8.4

(注)1 上記の各セグメントの金額には、セグメント間の内部振替高を含んでおりません。

   2 その他事業は、生産高がないため記載しておりません。

 

(2)受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

自 2023年10月1日

至 2024年9月30日

 

前年同期比(%)

 

インフラ・マネジメントサービス事業(千円)

71,988,883

3.2

環境マネジメント事業(千円)

14,701,011

35.0

その他事業(千円)

2,341,927

31.8

合計(千円)

89,031,822

8.0

(注) 上記の各セグメントの金額には、セグメント間の内部振替高を含んでおりません。

 

(3)販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

自 2023年10月1日

至 2024年9月30日

 

 前年同期比(%)

 

インフラ・マネジメントサービス事業(千円)

70,477,933

8.1

環境マネジメント事業(千円)

13,782,740

23.2

その他事業(千円)

2,021,464

13.7

合計(千円)

86,282,137

10.4

(注)1 上記の各セグメントの金額には、セグメント間の内部売上高を含んでおりません。

   2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

自 2022年10月1日

至 2023年9月30日

当連結会計年度

自 2023年10月1日

至 2024年9月30日

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

国土交通省

10,957,341

14.0

11,372,810

13.2

フィリピン共和国 運輸省

8,332,997

10.7

8,982,089

10.4

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。

 

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 財政状態及び経営成績の分析・検討の内容は以下のとおりであります。

 なお、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績などを勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況」に記載しております。

(2)当連結会計年度の財政状態の分析

(資産の部)

総資産は、前連結会計年度末に比べ25億10百万円増加し、651億95百万円となりました。これは主に現金及び預金、未成業務支出金、及び投資有価証券が増加したことによるものであります。

(負債の部)

負債は、前連結会計年度末に比べ2億14百万円増加し、407億9百万円となりました。これは主に短期借入金、及び未払法人税等が増加した一方で、契約負債が減少したことによるものであります。

(純資産の部)

純資産は、前連結会計年度末に比べ22億96百万円増加し、244億86百万円となりました。これは主に退職給付に係る調整累計額の増加、及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。

(3)当連結会計年度の経営成績の分析

 当社グループの当連結会計年度の経営成績は、受注高は890億31百万円(前連結会計年度比8.0%増)、売上高は862億82百万円(同10.4%増)、営業利益は46億64百万円(同20.1%増)、経常利益は40億22百万円(同5.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は25億97百万円(同8.3%減)となりました。

 これらの要因については、「業績等の概要 (1)業績」に記載のとおりであります。

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

詳細につきましては「業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」をご参照下さい。

(5)資金の財源及び流動性について

当社グループの資金需要は、知的サービスの提供という事業特性から、生産活動に必要な人件費及び外注費、受注獲得のための販売費及び一般管理費が主な内容であります。これらの資金は、基本的に営業キャッシュ・フローにより賄いますが、コミットメントライン契約及び当座借越契約を締結しており、季節的に資金不足が生じる場合は、金融機関から借入れることとしております。また、グループ内の資金効率を高めるため、資金は当社に集中し管理する体制を敷いており、グループ金融を活用しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  当社グループは、国内及び海外での事業展開において中心となる技術の研究開発を進めております。当連結会計年度の一般管理費に計上した研究開発費の総額は739百万円となっており、セグメント別の内訳は、インフラ・マネジメントサービス事業724百万円及び環境マネジメント事業15百万円となっております。

 主要なものの内容は以下のとおりです。

(インフラ・マネジメントサービス事業及び環境マネジメント事業)

<国内事業>

① インフラ整備・保全に関する研究開発

② 水管理・保全に関する研究開発

③ 防災に関する研究開発

④ 交通に関する研究開発

⑤ 地方創生に関する研究開発

<海外事業>

① 民間事業に関する研究開発

② スマートシティ開発事業に関する研究開発

③ O&M事業に関する研究開発

④ DX事業に関する研究開発

⑤ 事業投資に関する研究開発