第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、お客様のニーズに沿ったバルブの製造からメンテナンスまで、バルブのトータルライフにわたるさまざまなサービスをスピーディにご提供できる体制作りに弛まぬ努力を続けております。お客様に安心してご使用いただける高品質・高性能なバルブ製品、バルブの予防保全に絶大な力を発揮する診断機器、豊富な知識・経験を持つ技術者によるメンテナンスサービスなどで、全国の原子力発電所(以下、「原発」)、火力発電所をはじめとする各種産業用プラントの安全で安定した運転のお手伝いを通じ、社会に貢献できる企業グループであり続けたいと考えております。当社グループでは、グループ会社共通の社是として、

  一 信頼される企業として社会の進歩に貢献する
  一 誠実と融和により健康で活気ある職場をつくる
  一 経営の刷新と技術の開発につとめる
を掲げ、全役職員のベクトルを同じ方向に揃えグループ力の結集を図ることで、顧客満足度を高め、社会・地域の健全な発展に貢献し、従業員とその家族の生活を守り、株主への適正な利益分配を行い、安定的持続可能な強固で粘りのある企業体質の構築を目指しております。
 また、当社グループの主な事業である、バルブ製品の製造、メンテナンスとも、高い技術を持つ地域の協力工場や、厳しい工期と過酷な環境下でのメンテナンス作業に従事される外注技術者など、数多くの関係取引先のご協力を頂戴することで成り立っており、常に感謝の心を忘れることなく、今後も関係取引先との相互発展を基本とした強い信頼・協力関係を構築してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループが製造いたしますバルブ製品、鋳鋼製品のほとんどは、お客様の個別仕様書によって受注・生産を行っており、汎用品はごく一部にすぎません。また、バルブメンテナンスサービスにつきましても、一般的な定期保守点検契約のようなものは存在せず、比較的安定的に売上が望まれる原発の定期検査工事を除いては、基本的にプラントの運転状況とそれに応じた当社グループの営業活動の成果によるものであります。

 よって各年度の売上高は必ずしも安定したものではないため、損益も同様に年度毎の山谷が非常に激しくなる可能性があり、特にバルブ事業は、売上の増減に加えその時々の工場操業度によっても損益に少なからず変動が発生し、目標とする経営指標として、例えば投下資本に対する利益率等を設定したとしても、以上のような理由から分子となる利益の変動が大きく、安定的且つ継続的な目標指標とすることは困難であると考えております。

 このため、年度計画及び中期収益計画の策定に際しては、各年度に予想される市場環境から受注想定案件を積み上げることにより、売上高、営業利益、経常利益を予算化することとしております。

 そして個々の案件の受注時には、厳密な貢献利益(限界利益)管理のもと、その時々の工場操業度と平準化効果、社員・外注作業者の最適要員配置、後年度における期待収益性などを重要な要素として受注判断を行うことで利益管理を実施しており、これにより機会損失を最小化し、獲得利益の最大化を図っております。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 基本課題

当社グループは、長期ビジョン2030の目指す姿「高品質弁と設備保全で、世界エネルギーインフラの安全安定運転に貢献するグローバルニッチトップ」の実現に向け、2023年度からの5か年計画「中期経営計画2023」(以下、「中計2023」といいます。)を開始いたしました。中計2023では、安定成長と持続的収益性の確保による企業価値向上を図るための基盤整備の期間と位置付けており、売上高100億円、営業利益7億円を安定的に確保できるよう既存事業の深化を図るとともに、新たな収益基盤獲得のため事業投資を行ってまいります。

 

① マテリアリティ

当社グループは「当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて優先的に取り組む経営上の重要課題」として6つのマテリアリティを特定いたしました。外部環境変化に伴うリスクや機会に対応するため、各部門において様々な施策を立案し、目標の進捗管理を行っております。

 

 

区分

マテリアリティ

内容

価値創造に係る

マテリアリティ

持続可能な「つくるチカラ・まもるチカラ」の

維持・発展

・既存原発の稼働維持と新規原発建設への貢献

・次世代燃料火力発電所への貢献

・バルブ製品の改良(高機能・高性能化)、メンテナンス技術の開発

・製品、サービスの品質確保

リファインメタル事業の

推進

・廃止原発からでる金属廃棄物のリサイクル化

価値創造の基盤に係る

マテリアリティ

健康で活気ある職場・環境づくり

・働きやすい職場・環境づくり

・働きがいのある職場・環境づくり

・作業従事者の健康・安全

人財育成・技術伝承

・人財育成

・技術伝承

自然災害への危機管理

・自然災害・故障などによる事故・操業停止への対応

ガバナンス強化

・コンプライアンス強化

 

② 事業戦略(価値創造に係るマテリアリティ)

・持続可能な「つくるチカラ・まもるチカラ」の維持発展

バルブ事業、メンテナンス事業、製鋼事業の既存3事業の個別課題を攻めの事業戦略により解決し更なる成長を目指します。

当社グループが世界に誇る高温高圧弁・安全弁の技術とそれを象徴するTOAのブランドを活かすことで国内外の原発、火力発電設備の安全・安定運転と経済性に貢献するとともに、材料高による採算性悪化への対応を行いながら、加工、検査、材質、納期、そして何よりも品質を高めた高付加価値製品の提供、IT技術による状態監視装置やサービスシステムの構築、新たな製品・メンテナンス機器の開発など顧客満足度を高める提案で成長を目指してまいります。

また、火力発電分野においては脱炭素の潮流の中、水素やアンモニアの混焼火力発電は国内においても既に実証事業が進んでおります。当社グループにおいても水素やアンモニアへの燃料転換に対応するバルブ開発が重要な課題となっており、最終形である、専焼型商業発電プラントへのバルブ製品、或いは鋳鋼製品の供給に視点を据え、技術開発に取り組んでまいります。

 

・リファインメタル事業の推進

当社グループは、廃止措置を支える事業(リファインメタル事業)の進出が長期的な事業拡大の戦略の一翼を担うと考えております。これは、廃炉解体工事で排出される金属類のリサイクルを行うことで、当社グループの強みであるワンストップソリューションが高度化され、循環型社会そして脱炭素化社会の形成に貢献するという当社グループの目指す姿であります。

この実現のため設立した当社子会社のTVEリファインメタル株式会社は、資源エネルギー庁の「原子力産業基盤強化事業補助金制度」を活用しモバイル金属溶融設備の開発、同設備による原発内でのクリアランス金属のインゴット製造業務を進め、原発向けバルブの製造、納入を実現させることができました。

今後は、廃止措置プラントから発生するクリアランス金属を再利用した放射性廃棄物を保管収納する容器等を製造し、廃止措置プラントへ戻すというサイクルの具現化が必要で、構造としては非常にシンプルではありますが、事業の成立するレベルでリサイクル可能金属が排出されるにはまだ先のことで、業績貢献には今しばらく時間を要しますが、早期の参入表明で先駆者としての優位性を築き、今後の事業本格化に備えてまいります。

 

・福井県おおい町における新工場建設

当社グループは、若狭地区の各拠点に出張所を設置し発電所の安全安定運転に貢献しておりますが、同地区での事業継続と更なる発展、BCP対策並びに原子力発電設備廃止措置に伴うクリアランス金属のリサイクルを主としたリファインメタル事業への更なる強化を目的に製造拠点を新設することにいたしました。

今後、製造拠点の新設にあたり若狭地区での事業領域の拡大に努めることで中長期での持続的成長を図り、企業価値の一層の向上を図ってまいります。

 

③ サステナビリティ経営の推進

当社グループは、サステナビリティを重要な経営戦略と位置づけ、「事業活動を通じた社会課題の解決への貢献」と「持続的な成長を通じた企業価値向上」を目指すため、2024年10月1日に代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。

サステナビリティ委員会は経営会議のもと、サステナビリティ及びESG(環境・社会・ガバナンス)に関する経営方針の策定、取り組み状況の確認、評価、改善について審議し、取締役会の提言を受けて施策を推進します。また、TOMOS活動など組織横断的な各種プロジェクトの推進・モニタリングを行うことでサステナビリティ経営を実践する体制を整えており、マテリアリティをサステナビリティ委員会の施策と連携させることで、事業活動を通じ課題解決を目指してまいります。

 

〈サステナビリティ推進体制図〉

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

サステナビリティに関する考え方

  当社グループは「世界エネルギーインフラの安全安定運転に貢献する」というパーパス(存在意義)のもと、サステナビリティを重要な経営戦略と位置づけ、「事業活動を通じた社会課題の解決への貢献」と「持続的な成長を通じた企業価値向上」を目指します。

 

(1)サステナビリティ

①ガバナンス

当社グループは、今後も社会を取り巻く環境が大きく変化する状況であること、社会的課題の解決による持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上を図っていくことの重要性が増していくことを踏まえ、2024年10月1日に代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しました。

サステナビリティ委員会は経営会議のもと、サステナビリティ及びESG(環境・社会・ガバナンス)に関する 経営方針の策定、取り組み状況の確認、評価、改善について審議し、取締役会の提言を受けて施策を推進します。

また、TOMOS活動など組織横断的な各種プロジェクトの推進・モニタリングを行うことでサステナビリティ経営を実践する体制を整えており、マテリアリティをサステナビリティ委員会の施策と連携させることで、事業活動を通じ課題解決に取り組んでおります。

 

 

   <サステナビリティ委員会>

 

委員長

代表取締役社長

委員

生産本部長、メンテナンス本部長、営業本部長、品質保証統括、管理本部長

事務局

経営企画部

開催頻度

年2回(4月、10月)

役割

当社グループのサステナビリティ経営方針の策定、取り組み状況の確認、評価、改善について審議し、その内容を取締役会へ報告して提言を受けながら、サステナビリティ施策を推進する

 

   <サステナビリティ推進体制図>

 

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②戦略

2023年10月度から新たにスタートした中期経営計画においては、目指す姿を『世界エネルギーインフラの安全安定運転に貢献するグローバルニッチトップ』と定め、その実現のため当社グループが取り組むべきマテリアリティを特定しております。事業活動を通じ、これらの課題を解決することで、持続可能な社会と経済価値の向上を実現し、企業価値を高めてまいります。

 

 

区分

マテリアリティ

内容

価値創造に係るマテリアリティ

持続可能な「つくるチカラ・まもるチカラ」の維持・発展

・既存原発の稼働維持と新規原発建設への貢献

・次世代燃料火力発電所への貢献

・バルブ製品の改良(高機能・高性能化)、メンテナンス技術の開発

・製品、サービスの品質確保

リファインメタル事業の推進

・廃止原発からでる金属廃棄物のリサイクル化

価値創造の基盤に係るマテリアリティ

健康で活気ある職場・環境づくり

・働きやすい職場・環境づくり

・働きがいのある職場・環境づくり

・作業従事者の健康・安全

人財育成・技術伝承

・人財育成

・技術伝承

自然災害への危機管理

・自然災害・故障などによる事故・操業停止への対応

ガバナンス強化

・コンプライアンス強化

 

③リスク管理

企業を取り巻くリスクが多様化する中、リスクを最小化するため、内部統制の一環としてリスク管理の強化に取り組んでおります。リスク管理表により影響度及び発生頻度の面から、各部門における重要リスクを体系的に分析・評価し、リスクを最小化するための対策を講じるとともに、継続的にその改善を図る活動を行い、リスク管理体制を構築しております。

 

④指標及び目標

2023年10月度からスタートした中期経営計画において、『信頼される企業として社会の進歩に貢献し、誠実と融和により健康で活気ある職場を作り、常に経営の刷新と技術の開発に努める。』という経営理念のもと、『世界エネルギーインフラの安全安定運転に貢献するグローバルニッチトップ』を目指す姿とし、前述のマテリアリティに紐づけた事業別戦略を定め、それぞれ目標を設定しております。

当社グループはステークホルダーの皆様に対して持続可能な価値創造の実現を目指してまいります。

※中期経営計画につきましては、2024年11月13日開示の中期経営計画をご覧ください。

 

(2)気候変動

①ガバナンス

当社グループでは、カーボンニュートラルをはじめとする気候変動に関連した事業環境の変化を重要課題と認識しております。これらの課題に取り組むため、2023年3月に生産本部長を委員長とするTCFD準備委員会を設置し、その後、2024年10月にサステナビリティ委員会の設置を機にTCFDマネジメント委員会として名称を改め、リスク・機会の両面から気候変動関連への取り組みを行っております。

今後、TCFDに関する重要事項や施策についてはTCFDマネジメント委員会において審議、モニタリング、推進するとともに、各部門が定められた目標に対し取り組んでいけるように体制を整備しております。

 

 

②戦略

当社グループでは気候変動に伴って将来生じる可能性のある当社グループのリスク・機会について、TCFD提言に沿ったリスク・機会を特定し、重要度の評価を行いました。

今後、TCFDマネジメント委員会において気候変動関連リスクへの影響、対策の検討をするとともに、エネルギーインフラの安全で安定した運転に関わる企業として、製品の供給、技術開発などを通じて、市場・社会の脱炭素化、気候変動に対する取り組みに貢献してまいります。

 

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③リスク管理

気候変動関連のリスクについては、TCFDマネジメント委員会において、TCFD提言に沿ってリスクの特定及び評価を行いました。気候関連課題に対するモニタリング方法など、全社的なリスクの評価・管理体制については、今後TCFDマネジメント委員会で検討してまいります。

 

④指標及び目標

当社グループでは、2023年9月期における提出会社に伴う温室効果ガス排出量を、国際基準であるGHGプロトコルに準拠して算定しました。2023年9月期におけるScope1、Scope2、Scope3の排出量は以下のとおりであります。

区分

排出量

(tCO2)

Scope1(燃料の燃焼等)(注)1

2,018

Scope2(電気の使用)

ロケーション基準 (注)2

2,502

マーケット基準 (注)3

2,593

Scope3(サプライチェーンを通じた間接排出)(注)4

13,181

計(Scope1+2)

(ロケーション基準)

4,520

(マーケット基準)

4,611

計(Scope1+2+3)

(ロケーション基準)

17,701

(マーケット基準)

17,792

(注)1:エネルギーの使用、工業プロセス、廃棄物、六フッ化硫黄(SF6)・フロン(HFC)の漏えいによるCO2排出量を合計

(注)2:日本全国平均係数に基づき算定

 

(注)3:地球温暖化対策の推進に関する法律で定められた電気事業者別の調整後排出係数に基づき算定

(注)4:サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースに基づき

算定

 

 当社グループでは、気候関連のリスクと機会をマネジメントするため、中期目標は、2030年度までに

2013年9月期比25%の温室効果ガス排出量(Scope1+2)を削減し、最終的には2050年度カーボンニ

ュートラル実現を目標にしております。

 

(3)人的資本

①人的資本の基本方針として

当社グループにとって最も重要な資産は「人」であり、「信頼される企業として社会の進歩に貢献し、誠実と融和により健康で活気ある職場を作り、常に経営の刷新と技術の開発に努める」という経営理念のもと、新たな発想と挑戦する心、そしてものづくりに対する情熱をもって、今までなかった価値を創造し、社会に大きく貢献できる人財を育成することを会社の基本方針としております。

この基本方針を実現するために、「誠実と融和」において一人ひとりの人格や個性を大切にするとともに、年齢、性別、国籍、職種や役職にかかわらず社員全員が能力とスキルを発揮できるよう、働きがいと働きやすさのある職場環境づくりを行っております。

 

②人財の確保について

中長期的な事業を継続するにあたり、ベテラン社員が持つ知見や技能、ノウハウ等の伝承を当社グループの課題と捉え、若年層社員への技術伝承を促進する観点から、ベテラン社員の働き方の見直しの検討を進めてまいります。

また、新卒採用に加え中途採用や非正規社員の活用等の多面的な対策を講じ、女性及び中途入社者の採用数拡大、障がい者雇用等に留意しながら多様性の確保に取り組んでまいります。

多様な人財を適材適所に配置し、個人の能力を発揮できるよう、年齢・性別によらず能力のある社員の積極的登用を継続して実施してまいります。

 

③人財の育成について

中期経営計画2023の行動方針を実現する為、社員一人ひとりがプロフェッショナルな人財として能力を高め、個人の能力を最大限に発揮できるようキャリア形成・支援を行ってまいります。

教育においては各職場でのOJTを基本とし、また、OFF-JT(社外研修等)として階層別研修を実施し、中長期的視点で人財育成に取り組んでおります。

今後は、リスキル、キャリア形成・深堀りといった観点で教育研修の検討を進め、社員にとって仕事を通じて自身が成長する「自己実現の場」として「働きがい」と「働きやすさ」を実感できる、人と組織の活力が溢れる「エンゲージメント」の高い会社を引き続き目指してまいります。

 

研修受講者数(2023年10月1日~2024年9月30日)

研修種別

延べ受講者数

新任管理職研修

8人

階層別社外研修

338人

社内集合研修

57人

 

 

④具体的な取組として

当社グループでは組織横断的な活動であるTOMOS‐Project(TOA Management Optimal System)において、各グループで具体的なテーマを定め活動しております。

人的資本にかかわる諸課題については、健康で「働きがい」と「働きやすさ」のある職場・環境づくりを目的とした「TOMOS-HR」と人のチカラの最大化を目的とした「TOMOS-Active」、そして、外部アドバイザーが相互に連携し、継続的な取り組みを実施しております。

 

TOMOS-Activeの活動においては、以下の諸施策を検討し活動しております。

・性別に捉われず、社員それぞれが個人の能力を発揮できる人事制度や職場環境の整備

・女性社員が管理職として活躍できる雇用環境を整備するとともにキャリアアップ支援策の充実を図る

・仕事と家庭の両立支援の充実をはじめ、ワーク・ライフ・バランスを重視した働き方の見直し

・ジェンダー平等の実現のために、男性社員の育児休業取得推進

 

体制図

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⑤指標と目標

一般事業主行動計画(2021年10月1日~2026年9月30日までの5年間)の目標と現状

取組内容

目標値

実績値

2026年度

2024年度

2024年度

全従業員に占める女性社員の比率

16

15.1

管理職に占める女性労働者の人数

3以上

2

配偶者出産休暇取得率、平均取得日数

100、3日以上

100%、10日

④育児休業等取得率(注)1

男性:50%以上

女性:100%

男性:100%

女性:該当者なし

⑤育児休業等の平均取得期間(注)1.2

男性:通算1か月以上

女性:1年

男性:43.1日

女性:該当者なし

有給休暇取得率

80以上

75%以上

79.7

(注)1.上記④⑤における育児短時間勤務取得者数は男性2名、女性5名となります。

2.上記⑤における育児休業等の平均取得期間(男性)は通算1か月以上の達成度を測るため、20日を上限として平均を算出した場合、17.0日となります。

3.指標と目標に関する数値は、提出会社における数値を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境の変化

当社グループのバルブ事業の売上は、原子力・火力発電所に代表される国内電力市場向けの製品・メンテナンスが重要な割合を占めています。また、当社グループはわが国の原子力発電黎明期より原発事業に関わってきました。その責任を全うするためには、今後も電力市場に強く依存した事業運営は不可避であり、どのような要因であれ、電力市場に大きな変化が生じることは、当社グループの業績に重大な影響が及ぶ可能性があります。

その要因は、自然災害、原発再稼働等に対する司法判断や国による規制、事故等による発電所の運転停止、発電技術革新、発電燃料の転換、電力自由化などの発電事業形態の変化、地球温暖化問題に由来する従来型火力発電市場縮小とそれに伴う市場の変化、電力業界を取り巻くサプライヤーの動向、再生可能エネルギーや局所発電など消費者側における発電設備転換など、実にさまざまなものが想定されます。

例えば、2011年に発生した東日本大震災による福島原発事故では、事故後国内すべての原発が停止し、その後、多くの原発で廃炉が決定され、市場は大きく縮小する事態となりました。幸いにも当社グループの主力マーケットである加圧水型原発(PWR)は、今日までに6原発12基で再稼働を果たし、今後一定期間はそれら原発の定期検査(定検)による安定収益が見込まれる状況となりましたが、裏返せばこのことは、PWR型原発の定検に依存した収益構造となりかねず、原発に依存しすぎるが故に苦境に陥ることとなった過去と同じ轍を踏まないことを改めて肝に銘ずる必要があります。

今後は、一部の電力会社における沸騰水型原発(BWR)の運転再開が予定されており、その他の沸騰水型原発(BWR)についても一定の需要が見込まれますが、わが国の電力政策において原発はどう位置付けられていくのかはもちろん、小型原発(SMR)や次世代原発に対する国の取組はどうなっていくのかなど、まだまだ不透明な状況が続くことが想定されます。

火力発電所においても、温室効果ガス削減問題からその市場は極めて不透明な状況にあります。特に海外では、既に国内以上に厳しい状況に向かっており、世界的な投資の引き揚げ・停止などにより、新規事業の計画中止が相次いでいるとの認識です。

他方これらを背景に、電力プラントは大きく変化しつつあります。まずはゼロ・エミッション火力発電燃料である水素、アンモニアなどへの燃料転換、そしてAIやITを用いたプラント管理技術の変化が特に当社グループにとって重要なものと考えています。当社グループがこういった新しい技術等に対応したバルブ製品、メンテナンスを提供できない場合、これまで築いた高温高圧弁メーカーとしてのステータスは大きく揺らぎかねません。よって、積極的な研究と投資を継続し、しっかりと市場の変化に対応していく必要がありますが、高度な要求とその速度に対応できない場合には、重大な業績への影響が生じる可能性があります。

 

(2) 大規模自然災害や事故、感染症などによる影響

当社グループの製造拠点は、バルブ製造を行う兵庫県尼崎市の本社工場とバルブの主要素材である鋳鋼部品の製造を行う三重県伊賀市の伊賀工場の国内2か所となっています。これらの生産拠点が、地震、津波、台風、洪水、高潮などによる大規模自然災害や火災事故に見舞われた場合、業績等に重大な影響を受ける可能性があります。

本社工場の所在する兵庫県尼崎市は、南海トラフ巨大地震の被害想定地域であることに加え、工場の多くの建屋は1960年代の建築であるため、耐震性や耐火性に対しリスクを有しており危機感を一層強めています。伊賀工場は本社工場が担う製造工程の前工程として機能していることから、設備面において一方の緊急時に他方がその機能・役割を代替する関係にはなく、どちらか一方が被災することはそのまま生産プロセスの途絶に直結し、機会損失の発生や納期遅延など当社グループの業績に重大な影響が生じる可能性があります。

実際、本社工場は1995年1月に発生した阪神大震災で被災しました。工場そのものは周辺地域の状況に比して小さな被害に留まりましたが、従業員の多くが被災し、また公共交通機関が長期に亘り途絶したため、工場稼働の支障期間も長期に及び、相応の業績への影響が発生しました。

一般に、軽減と移転しかリスク対応策のないこの課題に対し、現実的にどれほどの具体的対策が可能か非常に難しいところではありますが、まずは確実な事業継続体制確立のための恒久対策として、そして、従業員の命を守り安心・安全に働くことができる職場の実現のため、工場建屋の耐震改修、或いは適地への移転などについて鋭意検討するとともに、非常時のBCP対応を着実に進めてまいります。

しかし、他方ではこれらの対策には非常に多額の資金が必要となります。そのため当社グループでは、ここ数期の好調な業績で増加した資金の集積に努めてまいりました。当社グループは完全受注生産型の事業形態であることから、業績は年度により大きく変動する傾向があり、そのような状況下においては、金融機関からの十分な資金調達が得られない可能性があるためです。このような政策は必ずしも、投資家の利害と一致しない可能性もありますが、事業の継続性をまず確実なものとするために不可欠なものと考えております。そして裏返せばこの対応が遅れ、危惧するリスクが顕在化した場合には、極めて重大な業績への影響を回避できない可能性が高いものになると考えております。

2020年春以降、世界を大混乱に陥れた新型コロナウイルスは完全に沈静化したとの認識です。しかし、今後も変異型の登場や新種のウイルスなどで再度同様の事態となる可能性は否定できず、社内クラスターや大量の濃厚接触者の発生、顧客や協力会社が同様の状況に陥ることでサプライチェーンが途絶する、或いは予定した工事の中止・中断・延期など、事業運営に重大な支障が生じる可能性があります。

また、海外との取引においては、当該相手国での経済活動規制の影響もありましたが、日本政府による厳しい渡航制限が長く続いたことで、特に営業面での影響を受け、新規プラント建設プロジェクトの延期に伴う受注計画への影響、海外発電所へのメンテナンス技術者の派遣見送りによる受注機会の喪失など、事業戦略の抜本的見直しが迫られることとなりました。

今回の新型コロナウイルスに限らず、インフルエンザ、ノロウイルス等、感染症拡大の恐れは常にあります。今後も先手の対策で事業影響の最小化を図ってまいりますが、防疫の限界、或いはそもそも当社グループの対応だけでリスクを回避できる種類のものではないことから、その状況によっては業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(3) 製品、メンテナンス上の瑕疵などに起因し生じる影響

当社グループの製品は、原発をはじめとした各種産業用プラントの重要部位で採用されているため、その製造上の欠陥や当社グループが行ったメンテナンスの不具合等により動作不良等が生じ本来の機能を果たせない場合、重大な事故による被害の発生、或いはプラントの運転停止による経済的損害の発生などが賠償問題につながる可能性があり、それらは当社グループの業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

当社グループでは、まずは従業員の一人ひとりに品質意識の徹底を図り、組織基盤を作り上げたうえで品質マネジメントシステムを適切に運用し、それを担保するための内部統制システムを組み合わせることで、高い品質レベルを維持できるものと考えております。今後も更なる品質体制の強化により、リスクが顕在化することのないよう努めてまいります。

 

(4) 情報セキュリティによる影響

当社グループは原子力事業に携わる事業者として、顧客情報や個々の取引情報について、極めて厳格な管理が求められているとの認識です。

昨今の代表的な情報漏洩事象の多くはコンピューターシステムへの不正アクセスから生じ、それは殆どの場合、コンピューターシステムの停止によるリスクと一体であることから、営業・技術情報の保全のため、物理的な情報流出対策を実施するとともに、次世代型ウイルス検知システム(NGAV)とエンドポイント対策(EDR)によるシステムの入口・出口の監視、データの多重化などを行うことで、被害の防止と軽減を図っております。

また、専ら人に由来するアナログ的な情報漏洩についても、その多くはコンピューターシステム上の情報管理を厳格にすることである程度は防止できるものと考え、ハードウエアに対する制限や、操作ログの収集・保管などによる牽制効果を期待した予防的統制を実施しております。

情報の漏洩は、その情報で不当な利益を得ようとするもの、悪意に基づくもの、単純ミスによるものなど、実にいろいろな動機・きっかけにより発生し得ることから、情報に対する全従業員の意識向上が基本対策と考え、情報セキュリティ教育に注力するとともにシステム運用における内部統制の確立で万全を期しています。

しかし今日のネットを拡散媒体として情報漏洩は実質的に不可逆的で、時には回復不可能なものとなる場合があり、その結果として業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(5) 法的規制、各種許認可等を維持できない場合の影響

当社グループの一部事業は、建設業法に基づく一般建設業、特定建設業の許可を必要とするものです。そしてこの許可を維持するため、或いは許可に基づき具体的な工事を施行するためには、一定の人的要件を常に充足しておく必要がありますが、今後何らかの事由により、その要件を充足できなくなった場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、原子力・火力発電所等を納入先とすることから、製品においては、数多くの規制・規格・許認可への適合が、製造・メンテナンスの工程では、一定の経験年数や技量認定・資格を取得した作業員による作業実施や配置が求められます。昨今の採用難による人財不足の中にあっては、こういった資格者の確保にも重大な懸念が生じる可能性があって、当社グループでは、これらの要件を欠くことのないよう計画的な人財育成とプロセス管理を実施していますが、さまざまな要因による能力的制約や人的制約等から、これらに適切に対応することができない場合には業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 労働災害による影響

製造現場、メンテナンス現場では常に労働災害と背中合わせの状況にありますが、安全に優先する何物も存在しないとの意識をもって、「ご安全に」を日々の挨拶に、全社グループを挙げ無災害に取り組んでいます。

しかし無災害を長期に亘り継続することは非常に難しく、現にここ数年でいくつかの休業災害が発生しています。いずれも少しの不注意や作業上の不手際の問題であって、原因が単純であるが故になかなか根絶には至らないというのが現実です。

労働災害の発生は、大切な従業員の命を脅かし苦痛をもたらすことはもちろん、労働災害を引き起こす要因が潜在する職場そのものが高い生産性を実現できず、その結果として作業に遅れが生じるなど多くの影響をもたらします。そして、労働災害が発生した場合には、その内容によっては、顧客の信頼を失墜し、場合によっては指名停止を受けるなど営業活動への支障が生じることもあって、そのような事態に陥った場合の業績への影響は重要なものとなる可能性があります。

労働災害は仕事の仕組みと個人への教育とチームワークで防ぐ必要があります。個々の安全意識と集団の安全意識を徹底的に高め、精神論だけではなく、物理的な安全対策のためにリソースを投入することで災害が起きない仕組みをしっかりと構築し、安全第一の職場を作り上げリスクの顕在化を阻止してまいります。

 

(7) コンプライアンス違反による影響

当社グループは会社法、金融商品取引法、労働法、税法等の各種法令はもとより、製造するバルブに関する各種規格のほか、取引先との契約に基づく合意等も含め、非常に多くの規制への適合が求められるため、それら規則が遵守されているかを管理するための体制を構築しています。

具体的には監査等委員、会計監査人、内部監査室、品質保証統括室などによる組織的な監査に加え、各事業部門において業務手順を「見える化」することでリスクの所在とその対策を明確にする内部統制システムの運用によりコンプライアンスを担保するとともに、万一コンプライアンスが損なわれるようなことがあった場合においても、適時に不適切な事象を発見する仕組みを構築することで被害・影響の最小化に努めております。

しかし、コンプライアンスの概念は極めて多岐・広範に亘ることから、会社の業績やブランドイメージに対し致命的な影響が生じる状況に至らないことを管理体制の基本とせざるを得ず、完全にリスクを排除することは困難であると考えられます。

当社グループは電力事業という極めて社会性の高い分野で、且つ原発向けという完全な品質を求められるバルブ製品・サービスの提供を生業とするため、コンプライアンス問題で、顧客・社会の信頼を損ねることは致命的なものとなり、企業の存在そのものが否定される可能性にもつながりかねないことを強く認識し、日々コンプライアンス活動に取り組んでおります。

また、昨今ではコンプライアンス違反の態様は多様化しており、例えば、ハラスメントの問題や、SNSを利用した不適切な情報拡散などが特に重要なリスクとなりつつあるとの認識です。

ハラスメントはパワハラ、セクハラが代表的なものと考えますが、それは日常的に様々なシチュエーションの中で起こり得る問題であって、個人の認識の違いや人間関係に影響される部分も多いことから、非常に複雑な背景を理解した上での対策が求められます。また、SNS上での不適切な発信は、認知に手間取ること、発生後の有効な回復法が実質的に機能しないことを考えると、防止策のみが有効な対応となります。

こういった問題に対し、会社が迅速に適切で毅然とした対応が取れない場合、従業員のモチベーションを低下させ、会社に対するロイヤリティが損なわれ、会社の信用が失墜することから、当社グループ会社の全従業員を対象としたコンプライアンス意識調査の結果に基づきコンプライアンス研修を実施等、教育・啓蒙活動を行うとともに、常より社内の状況に注意を払い、こういったコンプライアンス違反の発生を防止し、起こった場合の適切な対応を図ることで重大なリスクとして顕在化することを防いでまいります。

 

(8) 環境に対する課題意識の高まりによる影響

地球温暖化問題に由来する環境への課題意識の社会的な高まりは、当社グループの事業においても、営業面、コスト面に非常に大きな影響をもたらすものと考えています。特に営業面においては、当社グループの主要顧客である火力発電所が、二大温室効果ガスである二酸化炭素の最大排出源のひとつであることから、その影響は当然に不可避の状況にあるといえます。このリスクについては、社会と顧客の対応を注視し、その変化に迅速に対応していくことはもちろん、次の予想される展開に対し先手を打って対応していくことで軽減を図る以外はないものと考えております。

他方、コスト面におきましても重大な課題が存在します。当社グループのバルブ製造プロセスには、鋳鋼製造工程があり、非常に大きな電力を消費することから、電力料の生産コストに占める割合は非常に高いものとなっています。今後、この製造過程での電力使用に伴う温室効果ガス削減の対応が必要となりますが、例えば、設備改善や非化石証書等の購入などによるとしても、相応のコストが必要であり、その内容によっては業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(9) 材料費等原価高騰による影響

当社グループの製造するバルブの主な原材料は、鉄、ステンレスを中心とした金属材料で、クロム、ニッケル、タングステンなどのいわゆるレアメタルも使用しています。このような金属材料は、市況により調達価格や調達可能数量やロットが変動することから、これらの安定的調達のため、信頼のおける複数のサプライヤーとの取引を行うなどでリスクヘッジを図っておりますが、著しい価格の高騰や調達支障の発生のリスクは常にあります。

また、特に主要材料であるスクラップは、製鉄業界が環境問題で高炉を停止させており、今後はこれまでの鉄鉱石からスクラップへと原料需要が移っていく可能性があります。当社グループのバルブは、これらスクラップをはじめとする金属材料を電炉で溶かし、鋳型に流し込むことで製造する鋳鋼弁と呼ばれるものです。この鋳造工程では溶解時に非常に多くの電力を消費し、またその後工程である熱処理段階でも電気、或いは灯油などのエネルギーを使用します。

世界の紛争問題、海外主要国との政策金利差による為替変動などが、原材料価格や燃料価格の上昇ほか多方面に、今までにないほどの大きな影響をもたらしていますが、環境問題に由来する社会構造の変化も含め、業績に対し大きな影響を与える可能性があります。

 

(10) IT・DX化の対応遅れ・不首尾による影響

当社グループにおきましても、IT・DXを活用した製品・サービスの開発はもちろん、生産設備やメンテナンス機器への応用は重要課題と考えております。

例えばバルブのメンテナンスでは、従来の時間監視型の保全から状態監視型の保全に軸足が移る中、プラントの運転中にバルブの異常事象を把握し、次回のメンテナンスにつなげていく必要があります。或いは、工場の老朽化に対し、今後大規模な設備投資が必要になると考えますが、この投資に際しても、いかに効率的な生産を実現していくかは重要な課題です。そしてこれらの実施に際しての最も必要な視点は、IT・DXの最大限の利用であると考えます。

これらの実現のためR&Dセンターを中心にIT・DX人財の育成、IT・DXと製品・サービスの融合、IT・DXを活用した生産・販売といった業務プロセスの開発などをワンストップで実施する体制を整えております。

今後、仮に著しく時流に乗り遅れ、従来の枠を脱することができないなら、それは商品力でもコスト競争力でも他社の後塵を拝することになり、その結果として業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要
 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進み、民間の設備投資や雇用環境、所得環境には改善がみられ、景気は緩やかに回復いたしましたが、米欧中銀の利下げなどに伴う為替等の変動、ウクライナや中東等を巡る地政学的な要因による資源価格の変動など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 

当社グループは、原子力・火力発電所用バルブの製造・メンテナンスを主としたバルブ事業を中核に鋳鋼製品の製造事業や、原子力発電所(以下、「原発」)における設備の保守や電気設備工事などを展開しております。

バルブ事業の中核である原発向けビジネスは、東日本大震災の津波による東京電力福島第一原発事故以降厳しい状況にありましたが、地球温暖化問題から、世界規模でグリーン・トランスフォーメーション(以下、「GX」)実現に向けた取り組みが進む中、国内においては、2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」において、原発は、電力の安定供給やカーボンニュートラル実現に向けた脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担うとされ、安全性の確保を前提に、原子力の活用の方針が明示されました。2024年10月には東北電力女川原発2号機が約13年ぶりに再稼働を果たし、今後も更なる原発再稼働が予定されており、また、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発も進んでおります。

なお、もう一方の主要納入先である火力発電所につきましては、GX実現に向けた取り組みが進む中、従来の石炭などの化石燃料を使用した発電から、水素やアンモニアなどの非化石燃料を使用した発電へのシフトが見込まれております。

このような環境の中、当社グループでは中期経営計画2023に基づく事業戦略推進の一環として、2024年11月8日のプレスリリースで開示いたしましたとおり、若狭地区におけるバルブ事業の継続と更なる発展、リファインメタル事業の推進などを目的に、若狭地区に製造拠点を新設するため2024年12月に福井県おおい町の土地の取得を予定しております。安全弁事業で使用する第1工場は2026年12月の竣工を予定し、リファインメタル事業で使用する第2工場は現在計画中であるため確定次第あらためてお知らせいたします。当社グループとしましては、今後も中長期での持続的成長を図り、企業価値の一層の向上を図ってまいります。

 

このような中、当連結会計年度におきましては、主要な事業であるバルブ事業において、関西電力高浜原発、大飯原発及び美浜原発並びに九州電力玄海原発及び川内原発において複数の定期検査工事が完了し売上を計上、海外案件の売上も計上されたほか、主要顧客への売上が好調だった製鋼事業や東日本地区における原発などでの工事案件が増加した電気設備関連事業も増収となり、全ての報告セグメントにおいて増収となった結果、全体の売上高は112億20百万円(前年同期比19.4%増)となりました。

 

採算面では、前連結会計年度に比し大幅な増収となったこと、原発の定期検査中に発生した緊急修繕工事など採算性の高い案件の売上に占める割合が高かったことなどから、営業利益は10億27百万円(前年同期比115.8%増)、経常利益は11億34百万円(同110.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億21百万円(同65.8%増)と大幅な増益となりました。

 

表:報告セグメント内の種類別売上高

  報告セグメント

種類別の売上高

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

前年同期比(%)

 バルブ事業

 バルブ(新製弁)

1,475

1,551

5.2

 バルブ用取替補修部品

980

1,279

30.5

 原子力発電所定期検査工事

1,225

2,579

110.6

 その他メンテナンス等の役務提供

2,939

2,603

△11.4

 小計

6,620

8,014

21.1

 製鋼事業

 鋳鋼製品

1,161

1,218

4.9

 電気設備関連事業

 電気設備関連工事

1,432

1,764

23.2

 その他

 その他

255

270

5.8

 消去又は全社

△73

△47

 合計

9,396

11,220

19.4

 

報告セグメント別では、バルブ事業は、前述の定期検査工事や海外案件が売上計上された結果、売上高は80億14百万円(前年同期比21.1%増)となり、セグメント利益は、大幅な増収に伴う利益の増加や受注損失引当金の戻入などから、19億35百万円(同39.7%増)となり、前年同期に比し増益となりました。

 

製鋼事業は、前年同期に比し、主要な顧客への売上が好調に推移した結果、売上高は12億18百万円(前年同期比4.9%増)となり、セグメント利益は、棚卸資産の積み上がりは少なかったものの、材料払出単価、電力料単価の減少があったことなどから、1億77百万円の赤字(前年同期は1億81百万円の赤字)となり、赤字幅は縮小いたしました。

 

電気設備関連事業は、前年同期に比し、女川原発や柏崎刈羽原発における電気工事などの請負工事に係る売上が増加した結果、売上高は17億64百万円(前年同期比23.2%増)となり、セグメント利益は、増収に伴う利益の増加などから3億21百万円(同83.7%増)となり、前年同期に比し大幅な増益となりました。

 

なお、報告セグメント以外のその他に含まれるリファインメタル事業におきましても、クリアランス金属を溶解してインゴットと呼ばれる塊を製作する委託業務に係る売上が計上され、これまでの取り組みの成果が着実に現れつつあります。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は58億81百万円となり、前連結会計年度末に比して11億74百万円増加しました。この内訳は次のとおりであります。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 減価償却を3億60百万円実施した上で税金等調整前当期純利益を11億8百万円計上したところに、契約負債の減少が5億46百万円ありましたが、棚卸資産の減少で5億39百万円、法人税等の還付で3億10百万円の増加などキャッシュ・インの要因が上回ったことから18億40百万円のキャッシュ・イン(前年同期は11億11百万円のキャッシュ・イン)となりました。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 有形固定資産の取得による支出を中心に3億15百万円のキャッシュ・アウト(前年同期は2億98百万円のキャッシュ・アウト)となりました。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 前連結会計年度に係る期末配当及び当連結会計年度の中間配当の実施、長期借入金の返済などにより3億43百万円のキャッシュ・アウト(前年同期は2億60百万円のキャッシュ・アウト)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

    (自 2023年10月1日

     至 2024年9月30日)

前年同期比(%)

バルブ事業(千円)

1,803,516

△3.9

製鋼事業(千円)

1,392,813

△0.6

合計(千円)

3,196,329

△2.5

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.バルブ事業のメンテナンス等、電気設備関連事業及びその他については、事業の性格上生産実績の概念は馴染みませんので金額及び前年同期比を記載しておりません。

 

(2) 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

バルブ事業

7,023,758

11.7

2,737,124

△26.6

製鋼事業

1,530,070

6.4

956,447

48.4

電気設備関連事業

1,777,215

6.6

338,888

3.8

その他

298,835

22.2

57,810

97.2

消去又は全社

△47,369

合計

10,582,509

10.7

4,090,269

△13.5

 (注)金額は販売価格によっております。

 

(3) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

    (自 2023年10月1日

     至 2024年9月30日)

前年同期比(%)

バルブ事業(千円)

8,014,731

21.1

製鋼事業(千円)

1,218,071

4.9

電気設備関連事業(千円)

1,764,840

23.2

その他(千円)

270,341

5.8

消去又は全社(千円)

△47,369

合計(千円)

11,220,614

19.4

 (注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先別

前連結会計年度

    (自 2022年10月1日

     至 2023年9月30日)

当連結会計年度

    (自 2023年10月1日

     至 2024年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

西華産業株式会社

735,204

7.8

3,232,537

28.8

三菱商事パワーシステムズ株式会社

3,402,173

36.2

1,245,698

11.1

東京パワーテクノロジー株式会社

1,012,637

10.8

1,117,232

10.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態の分析

(資産の部)

当連結会計年度末の資産残高は150億90百万円となり、前連結会計年度末に比して10億24百万円増加しました。その内訳は、流動資産が104億14百万円で同5億24百万円増加し、固定資産は46億75百万円で同5億円の増加となっております。

流動資産では、仕掛品が4億53百万円減少し、現金及び預金が11億74百万円増加となっております。固定資産では、建物及び構築物が36百万円減少しておりますが、投資有価証券が5億94百万円増加となっております。

 

(負債の部)

負債残高は40億61百万円となり、前連結会計年度末に比して38百万円減少しました。主な要因は、長期借入金が1億51百万円、契約負債が5億46百万円、それぞれ減少したことなどによるものです。

 

(純資産の部)

純資産の残高は110億29百万円で、前連結会計年度に係る株主配当及び当連結会計年度の中間配当を実施しましたが、当連結会計年度での親会社株主に帰属する当期純利益を計上し、その他有価証券評価差額金や退職給付に係る調整累計額の増加により、前連結会計年度末に比して10億63百万円増加しました。

 

② 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は112億20百万円となり、前連結会計年度と比べ18億24百万円増加(前年同期比19.4%増)しました。

当連結会計年度では、バルブ事業において前連結会計年度に比べ13億94百万円、製鋼事業において56百万円、電気設備関連事業において3億32百万円それぞれ増加となり、前連結会計年度の売上高を大幅に上回ることとなりました。

 

(営業利益)

当連結会計年度の営業損益は10億27百万円の黒字(前年同期は4億76百万円の黒字)となりました。

当連結会計年度では、バルブ事業において前連結会計年度に比べ、原子力発電所の定期検査工事件数や海外案件の売上が増加したこと等で、前連結会計年度を上回る営業利益となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、上記の営業利益に営業外損益の純額1億6百万円を加算し、これに特別損益の純額25百万円を減算し、次に法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を加減算した結果、7億21百万円の黒字(前年同期は4億35百万円の黒字)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源は、自己資金及び金融機関からの借入によっており、金融機関からの借入金については適宜に長期・短期の借入金により資金調達を行うほか、取引金融機関と特定融資枠契約、コミットメントライン契約を締結することで必要な財源の確保を図っております。

資金の流動性は、営業活動によるキャッシュ・フローを確実に獲得することを基本に、適正な投資活動と財務活動を組み合わせることで十分な流動性の確保と財務体質の健全性を維持するよう努めております。

当社グループの事業は主に完全受注生産型であることから、売上時期の偏重や製品の仕掛期間長期化による影響が、営業活動によるキャッシュ・フローの変動につながる傾向にあることから、これら事象について、キャッシュ・フローへの影響を十分に考慮した業務運営を社内に指示・徹底しております。

またこれら事象へ対応する目的も含め、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結し、機動的な資金調達体制を維持するとともに、運転資金の効率的な運用を図っております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。詳細については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)業務提携援助契約

相手方の名称

国名

契約品目

契約締結日

契約内容

契約期間

HEハルビン・パワー・プラント・バルブ社

中国

抽気逆止弁

鍛造玉型弁

2010年7月28日

技術的知識、情報及びノウハウの提供

2010年7月28日から22年間若しくは「製品」の製造開始年月日から20年間のどちらか早く到達した日まで

HEハルビン・パワー・プラント・バルブ社

中国

湿分分離加熱器逃し弁

2013年4月18日

技術的知識、情報及びノウハウの提供

2013年4月18日から23年間若しくは「製品」の製造開始年月日から20年間のどちらか早く到達した日まで

HEハルビン・パワー・プラント・バルブ社

中国

原子力発電所用抽気逆止弁

2013年4月18日

技術的知識、情報及びノウハウの提供

2013年4月18日から22年間若しくは「製品」の製造開始年月日から20年間のどちらか早く到達した日まで

 

 

(2)資本提携契約

契約会社名

契約締結日

契約内容

西華産業株式会社

2023年3月13日

弁製品及び弁部品の販売その他の事業における資本提携

 

(3)コミットメントライン契約

契約会社名

契約締結日

契約内容

株式会社三菱UFJ銀行

2018年3月30日

総額5億円のコミットメントライン契約による借入枠の設定

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、顧客との対面活動を含め多角的視野を持ち深層追究することで、当社グループの目指すバルブ総合エンジニアリングサービスの高付加価値化に繋げていくことを目標にしており、各部門間の情報連携を高め、相乗効果を発揮させると同時に、前連結会計年度に発足したR&Dセンターを基軸に当連結会計年度は研究開発をより加速させるため、新たな新規テーマを盛込み一早く具現化をするため活動しております。また、新たな市場性へ新商材をリサーチし顧客ニーズの発掘と把握に努め、継続的に顧客ニーズの抽出と新商品アイデアに対する可能性評価を行い、研究開発活動を進めております。

当社グループの研究開発体制は、R&Dセンターを主体とし次世代へ向けて、新しいものづくりとサービスを追求するため、従来の技術に加え、次世代発電燃料対応バルブの開発、発電所内でのセンシング技術対応、原発廃止措置に係る技術開発、メンテナンス技術の高度化など、様々なイノベーションに本格的な取り組みを進めるため、調査と開発の二つの要素を持ち合わせ、個別に専門性が必要な際は他部門と横断的に連携が可能な組織としております。

なお、これらの成果は、主体となるR&Dセンターから定期的に関連各部門にフィードバックし、研究開発が確実に前進するようフォローできる体制としております。

さらに、研究開発が大きく現実の課題と乖離することがないように、また喫緊の課題に適切な優先順位をつけて確実に進捗・対応していくため、R&Dセンターでは案件毎に定期的な進捗とフォロー体制が図れるようステージゲートを設け審議をしており、また、経営と研究開発活動の連携を常に意識し、経営から出された課題・問題点を迅速かつ確実に解決・具体化できるように選択と集中による資源の有効活用を意識しながら取り組んでおります。

以上の結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は、227,789千円となっております。

 

 各セグメントにおける主な研究開発の内容は、次のとおりであります。

 

 (バルブ事業)

 1.原子力新型炉用バルブの開発

 2.発電分野やそれ以外の水素関連バルブの開発

 3.配管内研磨機の開発

 4.手動弁取付け用デジタル開度計の開発

 5.センサー等による弁状態監視装置の開発

 6.廃炉金属自動切断装置の開発

 7.弁座交換装置の開発

 8.ステムナット摩耗診断装置の開発

 9.自動熱処理装置の開発

 

  これらバルブ事業に係る研究開発費は、227,789千円であります。