第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「カスタマーの意思決定を円滑に―デジタルの力でクライアントとエンドユーザー双方の利益をLIFTします―」という経営理念、「User Experienceをデジタル技術で最適化する」という経営ミッションのもと、デジタルの力でクライアントと クライアントの先にいるエンドユーザー双方の利益をLIFTするために、エンドユーザーのデジタル上での顧客体験の最適化を目指しております。

 

(2) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な経営指標

当社グループは、売上高、売上総利益、営業利益、経常利益を重要な経営指標として位置付けております。

 

(3) 経営環境、中長期的な経営戦略等

日本の広告費におけるインターネット広告の占める割合は、社会のデジタル化を背景に堅調に伸長しております。市場動向として、スマートフォンの普及に伴うアプリ内のモバイル広告や、動画広告を中心に需要の拡大が見られます。またそれらに伴って、AIの活用を通した消費者データの分析も高度化し、広告効果の最適化が進む一方で、消費者のプライバシー保護を目的とした規制強化も進み、広告のターゲティング手法などに影響を及ぼしております。市場環境は複雑化の傾向にあり、マーケティング課題に適切に対処することは難しくなりつつあります。

こうした環境下においては、インターネット広告やインターネット関連サービスを適切に活用することが企業の競争力を左右します。顧客企業の情報発信を最適なデジタルソリューションを用いてサポートすると同時に、膨大な情報に飲み込まれているエンドユーザーに本当に必要な情報を、必要なタイミング・場所でお届けすることが求められます。AIをはじめとした技術革新や広告運用の自動化、広告が配信されるSNSや動画配信プラットフォームは多様化し、マーケティング施策の成果向上には幅広く、高い専門性が求められます。

当社グループの、高度かつ複雑化する市場環境に適応するための具体的な経営戦略は以下のとおりであります。

①   広告・コンサルティングサービス領域においては、ブランド・メディア領域との連携によるクロスセルによる収益規模の拡大を図るとともに、業務改善を進めることで生産性を高め、売上高と採算性の確保を行います。

②   ブランド・メディア領域においては、グループ会社とのシナジーを拡大し、事業開発およびサービスラインナップの拡充による、顧客ニーズへの対応力を向上させ、採算性の維持向上と広告・コンサルティングサービス領域との連携による顧客基盤の拡大に貢献することで、事業全体での成長を実現させます。

③    M&A領域においては、広告・コンサルティングサービス領域及びブランド・メディアサービス領域の各サービスをはじめとした、当社グループの既存事業とのシナジーが創出される、又は、当社グループのアセットに加わることで、新たなシナジーが創出される可能性のある投資について積極的に検討を行い、事業規模の拡大を実現いたします。また、当社ミッションである「User Experienceをデジタル技術で最適化する」ために必要であると判断した場合には、広告・コンサルティングサービス領域及びブランド・メディアサービス領域以外の事業領域についても積極的に投資を行います。

④   投資・育成領域については、スタートアップへの出資を通し、中長期的に「User Experienceをデジタル技術で最適化する」ための事業機会の実現、及び広告・コンサルティングサービス領域及びブランド・メディアサービス領域への成長寄与を目指します。

 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

1.顧客基盤の強化及び事業開発の推進

インターネット広告市場は、市場全体が引き続き拡大する一方で新たなサービスや競合他社も多く、他社サービスとの差別化、競合優位の確立を進める必要があると認識しております。そのなかで、当社は顧客ニーズに合致したサービス創出とその提供を更に強化することで顧客基盤を拡大させながら、既存サービス品質の維持向上ならびに新しい顧客ニーズ獲得のための事業開発を進めることが優先すべき重要課題と認識しています。一方でその事業成長を加速させるため、統合デジタルマーケティング企業としての既存アセットの強化もしくはシナジー創出を企図したグループ経営を行っていく方針です。

そのため、既存顧客のリレーション強化ならびに新規顧客の獲得を目的とした、人材の採用・育成を進めることにより営業体制を強化し、幅広い顧客ニーズに応えながらも、サービス品質を継続的に維持向上させることができる事業体制の整備に取り組んでまいります。

2.M&Aによる持続的な事業成長

当社グループは、統合デジタルマーケティング企業として、広告・コンサルティングサービス領域及びブランド・メディアサービス領域の各サービス領域においても、当社グループの既存事業のシナジーが創出される、又は、当社グループのアセットとして強化され新たなシナジーが創出される可能性のあるM&Aを積極的に行っていく方針であります。M&Aのクロージング完了後に適切なPMIを実施することで、企業価値の向上を図ります。
 

3.コーポレート・ガバナンス体制の強化

当社グループが継続的な成長を維持するためには、事業拡大だけではなく、コーポレート・ガバナンス体制の強化とコンプライアンス体制を強化することが重要であると認識しております。そのため経営の公平性、透明性、健全性を確保すべく、社外取締役、監査役監査体制、内部監査及び内部統制システムの整備等によりその強化を図ってまいります。

 

4.内部管理体制の強化

 当社グループは現在成長段階にあり、グループ全体の業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。このため、バックオフィス業務の整備を推進し、内部管理体制強化に取り組んでまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「カスタマーの意思決定を円滑に―デジタルの力でクライアントとエンドユーザー双方の利益をLIFTします―」を経営理念に掲げ、「User Experienceをデジタル技術で最適化する」をミッションのもと、持続可能な社会を実現することにより、デジタル領域のマーケティング施策を統合的に持続的な提供と最適化を目指しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社は、事業を取り巻く様々なサステナビリティ対応を含むリスクに対して的確な管理・実践を可能とし、法令をはじめとした社内外の規則及び倫理規範を遵守するための体制を確保するために「リスク・コンプライアンス規程」を制定し、管理すべきリスクや推進体制を明確に定め、事業活動において生じるリスクの発見に努めております。

当社は、3ヶ月に1回以上の頻度で、経営会議にてリスクマネジメントに関する全社的な取り組みについて協議を行い、取締役会及び監査役会に報告しております。また、必要に応じて顧問弁護士等の専門家に助言を受けられる体制を整えております。詳細につきましては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりです。

 

(2)人材の定着に向けた環境整備について

当社の統合デジタルマーケティング事業は、専門性及び総合的なコンサルティングの価値提供を行っており、競争力の源泉は人材にあると考えております。そのため、人材の育成及び定着及び成長戦略の推進に向けた多様な人材の確保が中長期的な企業価値の向上に必要であり、以下の取組を推進してまいります。

①人材の採用及び育成について

当社グループの事業である統合デジタルマーケティング事業は、専門性及び総合的なコンサルティングの価値提供できうる優秀な人材の採用及び定着が成長戦略推進にあたって重要なテーマとなります。当社グループでは、年齢、性別及び地域を問わず、経営理念及びミッションに強く共感頂いた候補者の採用やM&Aを通じて当社グループに加わることで人材の多様性を確保しております。

また、人材育成に関して、定期的に役職者向けの研修、専門チーム内でのナレッジ共有及び全社的に月1回程度の研修や知識共有を行っております。能力開発としては、MBO(目標評価)を行っており、モチベーション向上や能力開発に生かしております。また今後は従業員のキャリア開発を目的に各個人のキャリアシートを用いた人財開発会議を行い、従業員の目指すキャリアの幅や選択肢を増やすような取組みを実施予定です。

② 人材の定着に向けた環境整備について

当社は、従業員のライフステージや家族の状況に合わせた柔軟な働き方を支援する制度(男性育休制度、時短勤務制度及び在宅勤務制度など)を人事戦略の面からもエンゲージメントの向上を図ってまいります。

取組における指標と実績

当社グループの成長戦略として、今後も年齢、性別及び地域を問わず、また多様な経験を持つ人材の確保及び定着が必要不可欠であります。

・当社グループにおける(当社の本店所在地以外)地方拠点の在籍社員比率は、35.6%(24年9月末)であります。

・当社グループの男性育休制度の利用平均月数は6.2か月となっております。

上記取組を通じた会社と従業員のエンゲージメントのさらなる向上を図ってまいります。

また、指標の1つである女性管理職比率については、2024年9月末時点で22.7%でありますが、今後も多様な人材が活躍できる環境の整備に努めてまいります。

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。

 

 当社グループはこれらのリスクの発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容を慎重に判断した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載事項は、本書提出日現在の事項であり、将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。また、以下の事業等のリスクは、全ての事業活動又は投資判断上のリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業環境に関するリスク

① 市場動向について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

当社グループの事業領域であるデジタルマーケティング業界における市場規模は、市場規模は拡大していくと見込まれております。しかしながら、インターネットに限らず、デジタルマーケティング業界は一般的に景気動向の影響を受けやすい傾向があります。今後、景気の悪化、広告予算の減額、または市場規模が想定したほど拡大しない場合、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② 技術革新について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

当社グループはインターネット関連技術に基づき事業展開しておりますが、インターネット関連分野は新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われており、非常に変化の激しい分野となっております。また、広告を表示するデバイス面においては、スマートフォンやタブレット等の端末の普及が急速に進んでおり、新技術に対応した新しいサービスが相次いで展開されております。このため、当社グループは最新の技術動向や企業ニーズ等に注視するとともに、新技術及び新サービスの開発を継続的に行うために、優秀な人材の確保及び育成に取り組んでおります。しかしながら、激しい環境変化への対応が遅れた場合には、当社グループの事業の陳腐化、競争力の低下が生じる可能性があります。また、環境変化への対応のために新技術及び新サービスに多大な投資が必要となった場合、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 競合について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

デジタルマーケティング業界においては多くの企業が事業展開をしております。当社グループは、インターネット広告及びインターネット関連市場において当社グループが蓄積してきたノウハウや優秀な人材を活かして、高付加価値サービスの提供等に取り組み、競争力の向上を図っております。

しかしながら、当社グループと同様のサービスを展開する企業等との競合激化や優秀な人材の確保ができず十分な差別化が図られなかった場合、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 法的規制について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

現在のところ、当社グループの事業領域の1つであるインターネット広告事業に関する直接的な法的規制はございませんが、インターネット広告業界の自主規制としては、1999年5月にインターネット広告推進協議会として発足し、2015年6月に日本インタラクティブ広告協会(Japan Interactive Advertising Association:以下、「JIAA」という)と改称した一般社団法人が、「インターネットを利用して行われる広告活動が、デジタルコンテンツやネットワークコミュニケーションを支える経済的基盤である、という社会的責任を認識しながら、インターネット広告ビジネス活動の環境整備、改善、向上をもって、クライアントと消費者からの社会的信頼を得て健全に発展し、その市場を拡大していくこと」を目的として活動しております。現在はこのJIAAへの加盟が、インターネット広告業界企業の健全性を示すこととして認識されているため、JIAAへの加盟及び行動憲章の遵守等が影響を与えております。当社は2018年8月にJIAAに加盟しております。

また、その一方で顧客業界への法的規制等が、当社グループの業界に間接的な影響を与える可能性があります。たとえば、顧客企業が個人情報を扱う場合、「個人情報の保護に関する法律」の規制を受け、当該法律に違反すると、刑事罰のみならず多額の民事賠償が発生することもあり、顧客企業の経営に影響を与え、その結果取引が減少する可能性があります。同様に、2018年5月からEU諸国にて施行された「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下「GDPR」という)」は、IPアドレスやCookieのようなオンライン識別子も新たに個人情報とみなされるようになり、取得する際にはユーザーの同意が必要となりました。このGDPRに違反すると、最大で企業の全世界年間売上高の4%以下もしくは2,000万ユーロ以下のいずれか高い方の制裁金が適用され、EU諸国に子会社や支店等を有している日本企業、日本からEU諸国に商品やサービスを提供している日本企業、EU諸国から個人データの処理について委託を受けている企業等の経営に大きな影響を与え、 その結果取引が減少する可能性があります。その他、クライアントから委託を受けた広告内容について、「不当景品類及び不当表示防止法」等の規制法の影響を受け、医療や食品等特定の業種に関わる広告内容の場合には、それらの業種や商品の広告に関する規制の対象となります。

当社では「リスク・コンプライアンス規程」を制定し、当社の役職員が遵守すべき法的規制の周知徹底を図り、また「内部通報規程」の制定等によって速やかに法令違反行為等の情報を収集する体制を構築しております。しかしながら、上記の対策を講じているにもかかわらず、万が一何らかの理由により関係法令等の規制が遵守できなかった場合や今後インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット広告を含むインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等の規制や既存法令等の解釈変更(例えば、Cookieの使用の制限など)がなされた場合には、当社グループの事業が新たな制約を受け、または既存の規制が強化された場合には、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)事業内容に関するリスク

① 新規事業について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

当社グループは事業規模の拡大及び収益基盤の強化のため、今後も新サービスもしくは新規事業の展開に積極的に取り組んでまいります。新サービス及び新規事業の創出にあたっては、その市場性や採算性、計画の妥当性等を検証した上で意思決定を行っておりますが、市場環境の変化や競合等により、想定外の人件費やシステム開発費等の追加的な費用が発生し、安定的な収益を生み出すには時間を要することがあります。また、新サービス、新規事業の展開が当初の計画どおりに進まない場合には、投資回収が困難となり、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② プライバシー保護について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループは、個人情報及び利用者のプライバシーを尊重し、「個人情報の保護に関する法律」、「EU(欧州連合)一般データ保護規則(GDPR)」等の法令を遵守しております。特に広告事業においては、プライバシー保護に対する社会的要請の高まりを受け、生活者のデータの保全・主権に資する広告手法が求められるようになってきております。当社は従前よりインターネット広告の透明性・信頼性を高める活動を続けており、今後もこうした活動を続けることで社会の要請に応えてまいります。

しかしながら、プライバシー保護に関する各種規制が変更され、当社グループとしての対応が遅れた場合、当社グループの社会的信用の失墜又は損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 知的財産権について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

本書提出日現在、当社グループは第三者より知的財産権の侵害に関して第三者の知的財産権を侵害した事実や損害賠償及び使用差止の請求を受けた事実はありません。今後においても、侵害を回避すべく監視及び管理を行ってまいりますが、当社グループの事業領域において当社グループの認識していない知的財産権が既に成立している可能性または新たに第三者の知的財産権が成立する可能性もあり、当該侵害のリスクを完全に排除することは極めて困難であります。万が一、当社グループが第三者の知的財産権等を侵害した場合には、損害賠償請求、差止請求や使用許諾料の支払請求等により、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは必要に応じて商標権等の知的財産権の申請を行っておりますが、当社グループの知的財産権が第三者に侵害された場合には、解決までに多くの時間や費用を要する等により、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ システム障害について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループはインターネット関連技術に基づき事業を展開しており、自然災害、火災等の事故、人為的ミス、通信ネットワーク機器の故障、ソフトウエアの不具合、コンピュータウィルス等により、システム障害が発生し、継続したサービス提供等に支障が生じる可能性があります。当社グループでは、このような事態に備え、外部からの不正アクセスを防止するためのファイアウォールやセキュリティソフトの導入等といった対策をとっており、また定期的なバックアップや稼働状況の監視を行うことで、事前防止または回避に努めております。しかしながら、こうした対応にもかかわらず、システム障害が発生し、サービス提供に障害が生じた場合や復旧遅延が生じた場合、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 訴訟について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

本書提出日現在、当社グループは損害賠償を請求されている事実や訴訟を提起されている事実はありません。また、当社グループは法令違反となるような行為を防止するために各種規程を制定し内部管理体制を構築するとともに、顧客、取引先、従業員その他第三者との関係において、訴訟リスクを低減するよう努めております。しかしながら、知的財産権の侵害等の予期せぬトラブルが発生した場合、取引先等との関係に何らかの問題が生じた場合等には、これらに起因する損害賠償請求、あるいは訴訟を提起されるリスクがあります。係る損害賠償の金額、訴訟の内容及び結果によっては、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 広告業界の取引慣行について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループの事業領域の1つであるインターネット広告業界の取引慣行として、広告会社がクライアントに請求する手数料には、媒体運営会社等に支払う媒体料金や制作等の協力会社への支払い等が含まれております。したがって、当社グループはクライアントの倒産等により、マーケティング諸費用の回収が不可能となった場合でも、媒体運営会社等に支払う媒体料金や制作等の協力会社への支払い等も含めて負担することとなり、クライアントの信用リスクを負担しております。当社は、当該信用リスクを極小化させるため、「与信管理規程」を制定し、一定の信用力のある優良企業と取引する等により信用リスクの低減を図っておりますが、クライアントの倒産等により、マーケティング諸費用の回収が不可能となった場合、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

また、インターネット広告業界の取引慣行として、一般に、インターネット広告を含めた広告取引に係る契約について契約書その他の書面が取り交わされることは少ないといえます。これは、広告取引においては取引当事者の信頼関係を基礎として迅速かつ柔軟に契約の締結・変更に対応する必要性が高いためですが、反面、取引当事者の合意事項について齟齬が生じてクレームに発展するリスクがあります。

当社グループはこのリスクを速やかに回避するため、広告取引にあたって顧客に発注書の提出を要請する等契約内容を書面で残す努力を行っておりますが、クライアントによっては発注書の提出要請に応じない場合もあります。このため、書面化されていない広告取引に係る契約の成立または内容についてトラブルが発生し、訴訟や損害賠償請求等に発展する場合、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)経営体制に関するリスク

① 人材の確保・定着及び育成について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループは今後のさらなる成長のために、優秀な人材の確保及び当社グループの成長フェーズに合った組織体制強化が重要な課題であると認識しております。人材の採用にあたっては、各種メディアの活用等の採用方法の多様化を図り、当社グループの求める資質を兼ね備え、かつ当社グループの企業風土にあった人材の登用を進めるとともに、教育体制のさらなる整備を進め、育成による能力の底上げを行ってまいります。しかしながら、優秀な人材の確保・定着及び育成が計画どおりに進まない場合や優秀な人材の社外流出が生じた場合、競争力の低下や事業規模拡大の制約要因になる可能性があり、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

また、代表取締役である百本正博は、現在権限の委譲を行っているものの事業活動全般において重要な役割を果たしております。この役員が何らかの理由により業務執行が困難となるような事態が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える場合があります。

 

② 小規模組織であることについて

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループは2024年9月末現在、従業員61名と比較的小規模な組織であり、現在の人員構成にて最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社グループは今後も業務の適正性及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用してまいりますが、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追い付かない場合、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 内部管理体制について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループは企業価値の持続的な増大を図るには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要であります。当社グループは管理部門の人員の充実を図り、内部管理体制の充実に努めておりますが、事業の急速な拡大、海外展開及びM&A活動の増加等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない場合、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(4)その他のリスク

① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループは長期的な企業価値の向上に対する役員及び従業員等の士気を高める等を目的に、ストック・オプションを発行しており、今後もストック・オプション制度を活用していくことを検討しております。当社では新株予約権による株価に対する影響度を低くするために段階的行使可能期間を設定する等様々な行使条件を付しておりますが、現在発行し、または今後発行するストック・オプションが行使された場合、発行済株式総数が増加し、1株あたりの株式価値が希薄化する可能性があり、この株式価値の希薄化が株価形成に影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在における当社の新株予約権による潜在株式数は99,300株であり、発行済株式総数の6.3%に相当します。

 

② 配当政策について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切な配当を実施していくことを基本方針としております。しかしながら、当社は現在、成長拡大の過程にあると認識していることから、内部留保の充実を図り、収益力強化や事業基盤整備のための投資に充当することにより、なお一層の事業拡大を目指すことが、将来において安定的かつ継続的な利益還元に繋がると考えているため、今後の配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。

 

③ 自然災害等について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループの事業活動に必要なサーバーについては、自然災害、事故等が発生した場合に備え、外部のデータセンターの利用や定期的バックアップ、稼働状況の監視等によりシステムトラブルの事前防止または回避に努めております。万一、当社の本社所在地である東京都において大地震や台風等の自然災害の発生や事故により、設備の損壊や電力供給の制限等の事象が発生した場合、当社グループが提供する統合デジタルマーケティング事業の継続に支障をきたし、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 風評被害や不適切な業務遂行について

発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社グループの事業領域であるデジタルマーケティング業界に対して、インターネット上の掲示板への書き込みや、それを起因とするマスコミ報道等によって、何らかの否定的な風評が広まった場合、その内容の正確性にかかわらず、企業イメージの毀損等により、当社グループの社会的信用や事業への信頼が低下する可能性があります。当社は「リスク・コンプライアンス規程」を制定しその周知徹底やコンプライアンス研修の実施により役職員のコンプライアンス意識を醸成し、リスク管理及びリスク発生の未然防止やリスク発生時の対応を行っておりますが、それにもかかわらず役職員による不正・不適切な行為が発生したり、否定的な風評が広まったりした場合、顧客離れが生じる等により、当社グループの事業活動ならびに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 企業買収について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社は、事業基盤強化及び新たな事業展開を推進するため、子会社化及び持分法適用会社化するなど、積極的にM&Aを実施しております。M&A実施後に事業の統合作業が計画どおり進捗しない場合、被買収先の事業が大幅に期待利益を実現できない場合、又はのれんの償却等により当社グループの業績が一時的に影響を受ける場合や、偶発債務や未認識債務等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、M&Aの実施にあたっては、対象案件について各種デューデリジェンスを綿密に行い、取締役会において十分な検討をしております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

経営成績のうち、事業の内容については、第一部 「企業情報」第1「企業の概況」3「事業の内容」をご参照ください。

 

我が国のインターネット広告市場において、2023年のインターネット広告費(注1)が3兆3,330億円(前年比7.8%増)と広告費全体の45.6%を占めるまでに引き続き高い成長をしており、インバウンド需要の拡大や好調な企業業績により経済・社会活動が回復基調となりました。

一方、長期化するウクライナ情勢、中東地域を巡る地政学的リスクの高まりや円安による原料費の高騰や物流費・人件費をはじめとしたさまざまなコスト増加等により、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

このような環境のもと、当社グループは「カスタマーの意思決定を円滑に ―デジタルの力でクライアントとエンドユーザー双方の利益をLIFTします―」というビジョンを掲げ、①広告・コンサルティングサービス領域、②ブランド・メディアサービス領域という2つのサービス領域を顧客ニーズに合わせて柔軟に組み合わせて提供することで、多種多様なお客様に対して、幅広く「統合デジタルマーケティング事業」を提供いたしました。

広告・コンサルティングサービス領域では、一部大口取引先のマーケティング予算抑制の影響および受注状況が鈍化したこと、当社グループ成長のための株式取得費用、内部管理体制の先行投資や貸倒リスクの対応を実施したことにより、業績の成長は鈍化しましたが、当社グループ事業の成長エンジンと位置付けているブランド・メディアサービス領域については堅調に推移しております。

 

以上の結果、当連結会計年度における売上高は3,326,038千円(前期比6.6%減)、営業利益は33,861千円(前期比66.3%減)、経常損失は48,412千円(前連結会計年度は経常利益108,982千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は74,080千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益52,860千円)となりました。

 

なお、当社グループは、統合デジタルマーケティング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

(注1)出典:株式会社電通「2023年日本の広告費」2024年2月27日

 

財政状態は次のとおりであります。

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は2,286,725千円となりました。前連結会計年度末に比べ359,625千円増加いたしました。この主な内訳は、現金及び預金326,385千円及び投資有価証券56,449千円が増加したためであります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債は1,661,148千円となりました。前連結会計年度末に比べ425,650千円増加いたしました。この主な内訳は、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金及び長期借入金を合わせて509,513千円増加したためであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は625,576千円となりました。前連結会計年度末に比べ66,025千円減少いたしました。この主な内訳は、利益剰余金74,080千円が減少したためであります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ326,385千円増加し、1,564,035千円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次の通りであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、8,959千円の支出となりました。これは主として、税金等調整前当期純損失48,195千円の計上及び未払消費税等の減少額46,645千円があった一方、持分法による投資損失79,550千円の計上及び売上債権の減少額41,079千円の計上があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、175,262千円の支出となりました。これは主として、投資有価証券の取得による支出136,000千円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、510,608千円の収入となりました。これは主として、長期借入れによる収入644,000千円があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載は省略しております。

 

b. 受注実績

提供するサービスの性格上、受注実績の記載はなじまない為、記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループの事業は統合デジタルマーケティング事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

統合デジタルマーケティング事業

3,326,038

93.4

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社博報堂DYメディアパートナーズ

1,004,424

28.2

647,751

19.5

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を合理的に勘案し判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ. 経営成績等の状況

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

ロ. 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの主な資金需要は、広告・コンサルティングサービス領域及びブランド・メディアサービス領域の安定的な成長にかかるコストと既存領域のさらなる成長投資及び新たなサービスラインナップの成長投資となります。財政状態と投資のバランスを重視しつつ、事業活動に必要な運転資金及び成長投資は、主として手元の自己資金、金融機関からの借入により調達いたします。

 

ハ. 経営成績に重要な影響を与える要因について

  「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な経営指標」に記載のとおり、主な経営指標として売上高、売上総利益、営業利益、経常利益を重要な経営指標として位置付けております。当連結会計年度における各指標の前年同期比の増減率は以下のとおりであり、引き続き対処すべき経営課題の改善を図りながら、経営戦略を推進してまいります。
 

 

2023年9月
(前連結会計年度実績)

2024年9月
(当連結会計年度実績)

前年同期比増減率

売上高

3,560,973千円

3,326,038千円

△6.6%

売上総利益

832,329千円

762,858千円

△8.3%

営業利益

100,427千円

33,861千円

△66.3%

経常利益又は経常損失(△)

108,982千円

△48,412千円

―%

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。