第2【事業の状況】

1【経営理念・経営方針】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営理念・経営方針

当社グループは、2022年12月からの新たな経営体制のもと、2023年3月に経営理念を改訂しました。

近年、世界規模での社会・環境問題が深刻化し、その課題解決の重要性がますます高まっています。新たな経営理念では、当社グループの根幹にある普遍的な志と価値観は継承しつつ、社会・環境そして人類に対するわたしたちの使命を明示しました。この経営理念のもと、役員及び従業員が一丸となり、さらなる企業価値の向上と持続的な成長を目指し、光技術により調和、連携、共創する世界の創造に挑戦します。

 

 

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(2)中長期的な経営戦略等

当社は、電子管、光半導体、画像計測機器、レーザの大きく4つの事業から成ります。お客様との密接な関係から課題やニーズを把握し、それらを満たすユニークで価値の高い製品を企画、試作、開発、製造し提供しています。お客様が社会・環境・人類の課題を解決・貢献し、そこから生まれる新たな課題をさらに取り込み、また当社自身も解決策の提供に努めます。この付加価値を創造するサイクルが当社ビジネスの源泉であり、これをより速く、太く、強く回すことが企業価値の向上につながると考えています。

(成長戦略)

・市場トレンドの熟知、お客様との強固なネットワーク、高い市場シェアという当社の強みを生かせる既存市場で着実な成長をします。

・社内技術を融合し、優位性ある新規デバイスを組み合わせた高付加価値モジュールの提供を推進します。

・当社の受光技術とエヌケイティ・ホトニクス・エイ・エスの発光技術によるシナジー創出と、エヌケイティ・ホトニクス・エイ・エスが保有する新規市場での成長を加速します。

・中央研究所の基礎研究から新市場創出への取り組みを強化しています。

 

長期的な技術開発を行うためにも安定的に利益を生み出し、継続的な成長を続ける必要があります。当社グループは光産業の拡大や経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応するため、中長期的なビジョンのもと、成長に向けた積極的な研究開発投資や設備投資を行うことで、持続的かつ安定的な高収益体制の構築を目指します。

 

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(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、持続的な成長に向けて、収益性の観点からは、売上高営業利益率を重要視しており、具体的には当社連結ベース及び各セグメントにおける営業利益率を主要指標と定め、その向上に努力しております。一方、効率性の観点からは、資本コストを的確に把握した上で、中長期的に株主資本コストを上回るROE(自己資本当期純利益率)、つまり「正のエクイティ・スプレッド(ROE-株主資本コスト)」の創出を常に意識した経営を行っております。

 

 

(4)経営環境及び対処すべき課題

 昨今、生成AIの急速な発展による社会状況の変化や大規模災害の多発など地球環境が変化する中、当社グループの足元の状況といたしましては、前期までの部材不足を背景とした急激な需要増加の反動による在庫調整の動きや、一部の市場における競合メーカーの台頭など事業環境は厳しさを増しております。そのような中、当社グループは昨年策定した8つのマテリアリティのもとさらなる成長に向けた変革に取り組んでおります。ここでは、その具体例をご紹介します。

 

1 技術革新と競争力の維持

課題:市場の変動や競合メーカーの台頭に対応するための競争力の維持・強化

取り組み:半導体製造・検査装置や医用・バイオ機器などにおいて当社製品は必要不可欠とされており、その製品性能を高めるとともに、光半導体と真空管技術を融合した革新的な光センサや量子センサなど新たなデバイスの開発を促進しています。また、自社での研究開発に加え、レーザ技術をさらに強化するため、ファイバーレーザで特色のあるエヌケイティ・ホトニクス・エイ・エスを買収し、受光・発光の両面で世界トップクラスの技術を保有する企業となりました。今後も顧客と市場との密接なコミュニケーションを通じ、光に関するすべての要素技術を活かした受発光一体型の高付加価値モジュールなど、さまざまなニーズを満たすトータルソリューションを提供していきます。

 

2 持続可能な成長

課題:持続可能な成長を達成するための新しい市場や応用分野の開拓

取り組み:中央研究所は、光の未知未踏領域に挑む基礎研究を強化・推進させるとともに、事業部との連携による新たな市場展開を意識した研究開発を目的としており、「将来を見据えた基盤研究の推進・シーズ創出」、「社会課題解決のための基礎研究」、「事業部と連携した研究成果の実用化推進」の3つの軸に区分けして研究を推進しております。特に「事業部と連携した研究成果の実用化推進」においては、長年にわたる中央研究所の研究成果と事業部が将来必要とする技術のマッチングを改めて行い、優先度の高い4つのテーマ(①未踏波長領域デバイス技術、②メタサーフェス技術、③高付加価値データ駆動型レーザ加工技術、④核融合用LDモジュール技術)を選定することで、新たな市場の創成と実用化に向けて研究を加速させてまいります。

 

3 サステナビリティ活動のさらなる推進

課題:持続的な事業活動のための気候変動問題への対応、人的資本投資を中心としたサステナビリティへの取り組みのさらなる推進

取り組み:気候変動対策として、再生可能エネルギーの利用拡大や、製品のエネルギー効率の向上を図っています。加えて、長期的な地球温暖化対策ビジョンを策定し、持続可能な社会の実現に向けた具体的な取り組みを進めています。また、従業員の多様性を重視し、より良い働き方ができる環境を築くために各種施策を実施しています。さらに、事業戦略強化に加えて人材育成も目的とした特定市場における戦略構築を行うビジネス戦略室を発足しました。事業部、現地法人の垣根を越えた全社視点におけるビジネス戦略構築を行うことで、スキルアップ、技術革新を支える人材を育成します。

 

4 財務戦略の強化

課題:長期的成長・株主価値向上のための最適な財務体質の確立

取り組み:当社は企業価値の最大化を目指し、中期経営計画期間(第78期~第80期)において以下の財務戦略を策定いたしました。

・短期的な利益変動が大きくなる局面においても、より一層の安定的な株主還元を実現するため、従来の配当方針に自己資本配当率3.5%を下限方針として追加しました。

・配当に加えて、自己株式取得についても手元キャッシュ水準や戦略投資案件の動向等を総合的に勘案し、機動的な実施を判断します。

・中長期成長に必要な研究開発・設備投資については引続き積極的に資源を投入するとともに、手元資金の圧縮、有利子負債の活用にも取り組んでまいります。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは「今日の非財務課題への挑戦は、明日の企業価値を生む」を合言葉に、サステナビリティを始めとした非財務課題に取り組んでいます。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンスとリスク管理

(ガバナンス)

 当社は、1953年の創業以来一貫して「光」を追求し、光技術を用いた世界一のものづくりを通じて、社会そして科学技術発展に貢献することを基本理念としております。健全で信頼される企業としての成長を目指し、すべてのステークホルダーと共に事業を推進していくためには、サステナビリティの意識を高く保つことが重要と認識しております。

 また、これまでの委員会体制でのサステナビリティ推進活動から発展し、2024年5月より全社が責任をもって、マテリアリティを含むサステナビリティに資する活動に取り組む体制に変更いたしました。これらの活動を統括・調整するサステナビリティ事務局(経営企画統括本部)を設置し、全社から代表者が参加するサステナビリティ推進会議を通じてグループ全体での取り組みを強力に推進しております。

 なお、取締役会は、四半期ごとのレポート報告や、取締役会での報告・協議を通じてサステナビリティの取組みを監督しております。

 

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(リスク管理)

 サステナビリティ推進会議は月1回開催し、サステナビリティに関して全社横断的な対応の推進を図るために必要な内容を、グループ全体で連携をして討議を行っております。2023年8月には、財務・非財務の両面でグループ全体の企業価値を向上させるために重点的に取り組む事項として、「事業を通じた社会・環境への貢献」「事業基盤の強化と企業の社会的責任」を軸とした8つのマテリアリティを策定いたしました。

 

当社グループのマテリアリティ(取り組むべき重要事項と目標)

事業を通じた社会・環境への貢献

① 高度な光技術を活用した社会・環境価値向上への貢献

② 持続的な高収益経営による、安定かつ豊かな経済・社会実現への貢献

③ 優れた安全性、品質、サービスの提供による、顧客価値向上への貢献

事業基盤の強化/企業の社会的責任

④ 地球と共生可能な事業活動の推進

⑤ 幸福度の高い雇用制度と職場づくり

⑥ グループの成長と社会への貢献を支える人づくり

⑦ 価値創造の安定と成長を実現するガバナンスとマネージメントの推進

⑧ 製品の安定供給体制と責任あるサプライチェーンの構築

 

 特定したマテリアリティの各テーマに対して、推進施策や達成度合いを測る重要業績指標(KPI)、目標及び実行計画の策定に取り組み、リスクの低減に努めております。

 

(2)気候変動への取組

 2020年8月、当社は気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言への賛同を表明し、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクや機会、財務的影響への分析を推進しております。

 

(戦略)

 当社は、気候変動による様々な変化が、当社の事業に影響を及ぼすと認識しています。その中でも特に重要なリスク・機会を特定するため、事業全体を対象に、1.5/2℃、4℃でのシナリオ分析を下記ステップで実施しており、シナリオ分析に基づくリスクと機会の特定を行うとともに、それぞれの事業インパクトを算定しております。

 

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・重要リスク・機会の特定

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・シナリオごとの当社事業への影響度の検討結果

 シナリオ1(1.5/2℃のケース(2030年))

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シナリオ2(4℃のケース(2030年))

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 今後、特定したリスクへの対応並びに機会の実現に向けて影響が大きなものより検討、実施を行ってまいります。

 

 

(リスク管理)

 環境に関するリスク管理について、当社は環境管理規定を定め、全社的な環境マネジメントシステムを運用しております。気候変動に関連したリスクの識別及びツールなどを用いた定期的な評価を実施しており、環境委員会や環境専門部会、関連プロジェクトにて結果を共有しております。対応すべきリスクとして評価された項目は環境マネジメントシステムにて、期ごとに定める環境目標と活動計画に設定しております。

 このようなリスク対応活動は環境委員会にて経営層が進捗や課題をレビューしており、継続的改善により環境パフォーマンスの向上に努めております。

 連結子会社を含めたグループ全体では年一回開催されるグループ会議において情報を共有しております。また連結子会社における対応活動等は3か月ごとに環境統括部(環境委員会事務局)に進捗が報告され、グループ全体でのリスク管理を進めております。その他、定期的に各拠点を訪問し、リスクの洗い出しを行っております。

 

(指標及び目標)

 地球温暖化対策に係る当社グループの長期ビジョンのもと、当社の温室効果ガス削減目標(GHG削減目標)は、2021年10月にパリ協定に沿った科学的根拠に基づいたものとして、国際的な環境団体SBTイニシアチブから認定を受けました。一方、中長期の環境戦略での重要指標として、GHG排出量、水使用量、再生可能エネルギー使用量等を定め、評価、管理しています。これら環境関連並びにESGデータの詳細については下記当社ウェブサイトをご覧ください。

 

環境     :https://www.hamamatsu.com/jp/ja/our-company/sustainability/environment.html

ESGデータ :https://www.hamamatsu.com/jp/ja/our-company/sustainability/esgdata.html

 

 SBT認定目標(スコープ1、2)は、72期(2019年9月期)を基準とし、84期(2031年9月期)までにGHG排出量を30%削減としており、この実現に向けた施策を実施してまいります。

 

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(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

・人材に関する全般的な戦略

 当社は、未知未踏領域を追求し、光技術を用いた新産業を創造して企業価値を向上させるのは社員一人ひとりに負うところが大きいと考えております。すなわち、経営の基盤の一つは“人”であり、この旨を「経営理念」にて明確にするだけでなく、浜松ホトニクスグループサステナビリティ基本方針の中で、社員を尊重し、能力開発を支援し、働きやすく安全な職場環境を提供することを掲げています。

 さらに、「幸福度の高い雇用制度と職場づくり」と「グループの成長と社会への貢献を支える人づくり」を当社の人的資本に係る重要な課題(マテリアリティ)として特定し、取り組みを進めてまいります。これらの取組みを通じ、事業部間連携を強化し付加価値創造サイクルをより大きく回すことで人類の健康と幸福に貢献する、という当社の事業戦略の基礎を築くことを目指しています。

 

・社内環境整備方針(幸福度の高い雇用制度と職場づくり)

(雇用制度について)

 当社にとって最も重要な資産の一つは“人”であるとの認識のもと、これまで職場づくりの各種施策を推進し、研究・開発・製造に限らず間接部署においても従業員一人ひとりのモチベーションを高く維持し、能力を高めてまいりました。これらの推進の結果、退職率は低く維持されてきました。労働市場環境の変化に伴い、継続して優秀な人材を採用・維持するためには、これまでに構築してきた社内環境の良い部分は維持しつつ、雇用制度の見直しが必要な部分については対応を進めます。

 

(ダイバーシティについて)

 当社の技術分野の中心である電気電子分野は元来女性の専門人材が少なく、結果として女性社員や女性管理職の数が少ない状況にありますが、種々の施策を実施したことにより、近年は、各職務における男女間での差は少なくなってきていると認識しています。ただし、女性の管理職登用など短期間で改善が難しい項目については、継続して施策の効果を把握することが必要であることから、女性管理職比率等を把握して取組みを推進し、グループの成長に寄与する人材には、性別を問わず活躍できる環境づくりを推進してまいります。なお今期より“働き方、働きがい、多様性”に象徴される全社課題の解決のため、働き方改革WGが発足し、“調和・連携・協創できる世界を光技術で作り出すこと”を目指しております。

 また、当社グループは海外売上高比率が7割を超えており、今後さらにグローバル化を進めるにあたって、各国における社会ニーズを適切に収集することが重要です。当社の多分野でのグローバルな展開において、多様な背景を持つ人材の意見を事業に取り入れ、様々な人材の確保、活躍の機会の提供のためにダイバーシティの取組みを推進することは、当社にとって有用であると考え、取組みを検討してまいります。

 

(職場づくりについて)

 人・技術・知識が当社の経営基盤です。社員一人ひとりが日々の仕事を通じて研鑽し、「和」の精神のもと、グローバルな視点で総合力を発揮できる企業風土の醸成が重要であると認識しております。このことは社員一人ひとりが心身両面において健康でなければ成し得ません。社員の心身両面での健康保持・増進及び幸福度を高めるための施策は、企業経営を進める上での必須事項と捉え、積極的に推進してまいります。今後はすべての社員が仕事と家庭を両立しながら活き活きと長く働き続けることができるよう、社内の専門スタッフだけでなく、健康保険組合を始めとした関連組織と連携して、総合的・計画的な施策を行うと共に、効果検証を踏まえ、その結果を次なる施策実施へ結び付けてまいります。

 さらに当社では、創業当時から「失敗を許容する文化」を脈々と受け継いでおり、社員が積極的にチャレンジし成長する機会にあふれています。これまでの雇用制度や職場づくりは、このような文化や機会を支える基盤として非常に有用で重要なものであったと考えています。この「ホトニクスイズム」を継承していくために、引続き社内環境を維持・発展させてまいります。

 

・人材育成方針(グループの成長と社会への貢献を支える人づくり)

 当社グループの成長に向けて、製品の高付加価値化は重要であり、これを担う人材育成は重要な課題です。当社では「未知未踏領域を追求する人材」の育成と「事業部間連携」を進めており、例えば 研究開発への積極的な投資を持続し、日々の仕事を通じた現場での挑戦経験が「未知未踏領域を追求する人材」の育成の場と考えており、社内ベンチャー制度による新規事業の立ち上げ支援によって新しい光のビジネスを創出するとともに、次世代リーダー育成のための体制拡充を目指しています。

 また「事業部間連携」に関する人材育成として、若手社員の教育を重視しております。例えば総合職の新入社員は、当社での仕事のスタイルや基礎知識を学ぶだけでなく、全社の技術・業務を幅広く把握し、かつ社内の人的ネットワークを構築することを目指し、入社から6か月間は各事業部や研究所を短期間でまわります。また、自ら求めて学ぶ姿勢を重要視した、当社社員が講師となる自由参加型の社内教育制度や、事業部の垣根を越えた試作発表会も開催しています。さらに新入社員が各事業部等に配属された後においても、2年目の特許研修や3年目の若手フォローアップ研修など実施しており、事業部合同で若手の能力開発に注力しています。

 また若手だけでなく、自部署の適切な管理運営力の強化並びに自部署を越えた連携強化のため、組織の最小単位(部門、グループ)の責任者である部門長・グループ長向けの育成にも注力しています。2023年度には部門長・グループ長に加え新規登用者、副部門長等に研修実施し、88名(受講率98%)が研修に参加しました。次期以降も受講対象者の拡大、講義内容の充実を図ります。このような研修を通して、コミュニケーション力、業務調整・交渉力などプロジェクトの推進能力の底上げ・共通化することで、将来「事業部を越えた経営を担える人材の育成」を目指しています。

 

 

(4)人的資本に関するリスク管理と指標及び目標

<社内環境整備(幸福度の高い雇用制度と職場づくり)>

リスク・機会

対応方針・将来目標

当事業年度実績

退職者の増加による技術・知識に係る高い専門性の喪失(リスク)

・従業員エンゲージメント調査による退職率

 変動の兆候把握

離職率

1.0 (注)1

ワークエンゲージメント

2.64(注)2

・新入社員に対する半年間の事業部研修と丁寧

 な配属先の検討による、3年間離職率の低水

 準の維持

3年間離職率

2.9

(注)1

・従業員の幸福度を高めるための課題を調査

 し、将来目標を設定検討

エンゲージメント調査

検討課題の洗い出し着手

心身の不調や疾病休業による

労働生産性低下の防止(機会)

・様々な効果に関連する健康投資

アブセンティーズム

1.45(注)3

プレゼンティーズム

7.33(注)4

ダイバーシティの充実を通じた優秀な人材の確保(機会)

・管理職登用率等を把握し、女性従業員の活躍

 機会の取組推進

女性管理職比率

3.8

・多様性推進に向けた働き方改革WG、人事部

 の活動

LGBTQや介護の

eラーニング等を実施

 (注)1 当事業年度ではなく、2023年4月~2024年3月の集計値を使用しております。

2 社内調査において、ユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度の超短縮版3項目を組み入れて測定を実施しており、3項目のスコア(0=全くない~6=いつも感じる)の全従業員の平均値であります(スコアは大きい方が良い)。

3 全社員の1年間における疾病及び負傷による休業日数率(全休業日数/在籍労働者の延所定労働日数×100)。

4 東大1項目版を用いて、社内調査を実施しております(スコアは小さい方が良い)。

 

<人材育成(グループの成長と社会への貢献を支える人づくり)>

リスク・機会

対応方針

当事業年度実績

未知未踏を追求する人材の拡充(機会)

・次世代の経営を担う、若手リーダーの育成

・研究開発投資を通じた現場での挑戦経験機会の確保

・優れた専門性を活かす人事制度の検討

・次世代育成施策の検討、

 テスト実施

・専門管理職制度導入検討

事業部間連携を推進する人材の拡充(機会)

・入社時事業部研修を軸とした、若手の能力開発

・若手育成施策の客観的な検証

若手育成施策や面談を通じた

課題把握の実施

・マネジメント人材の強化のための部門長研修

 の実施と受講対象役職の拡大

研修受講者

 88名(受講率98%)

 ※(累計)246名

 

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済情勢の変化について

 当社グループは、日本及び欧米など世界各国に製品を供給しております。当社グループの製品需要は、日本のみならず進出国又は販売地域の経済情勢の変化に大きく影響を受けます。このような経済情勢の変化が、当社グループの予想を超えた場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
 当該リスクに対し、医用分野などの景気の影響を受けにくい業界分野への販売を推進する一方で、産業用機器分野、分析用機器分野、計測用機器分野、学術研究分野などの様々な業界分野に広く販売することでリスクの分散化並びに平準化に努めております。

(2)市場における競争の激化について

 当社グループの電子管事業及び光半導体事業は、世界の主要な医用機器、産業用機器、分析用機器、輸送用機器メーカーに対して、それらのキーデバイスとしての光電子部品を供給しております。画像計測機器事業は、産業用機器、学術研究、医用などのエンドユーザー向けに最終製品を供給しております。これら当社グループの中核をなす3事業が競合他社との価格及び開発競争の激化などにより収益率が著しく低下した場合には、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
 当該リスクに対し、継続的な新製品の投入並びに生産能力の増強により、新市場、市場占有率及び収益性の拡大に努めております。

(3)技術革新における競争について

 当社グループは、「光を使いこなす技術を開発して社会に役立てる会社」であります。しかしながら、光の本質はほんの一部しか解明されておらず、他から学べるような問題ではなく、当社グループが自ら解決していかなければならない問題であると認識しております。このような状況において、今後、当社グループが、光の本質に関する新たな知識を獲得できなかった、又は、当社グループ以外によって、新たな光に関する技術的な発見があった場合には、当社グループは現在の市場さえも失う可能性とともに、当社グループの行っている研究開発投資は、必ずしも将来の売上高及び収益向上に結びつくとは限らず、将来の当社グループの業績及び成長見通しに大きな影響を及ぼす可能性があります。
 当該リスクに対し、光子工学についての未知未踏の世界を拓くため、光に関する新技術及び新製品開発に必要な研究開発投資を積極的に行っております。創業以来のベンチャー精神を忘れることなく、新規技術を企画し挑戦し続けること並びにそれを担う人材の育成にも取り組んでおります。

(4)人材の確保、育成について

当社グループの持続的成長は、高い専門性を有し、創業以来のベンチャー精神をもって、人類の未知未踏分野に粘り強く挑戦し続けられる人材の確保・育成並びに「和」の精神のもと、個々の能力の総和以上の総合力を発揮できる企業風土の醸成が重要であると認識しております。こうした人材の確保・育成及び企業風土の醸成が想定通りに進まなかった場合には、当社グループの経営の基盤が揺らぎ、業績や事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、より高い専門性を有したグローバル展開を踏まえた人材の確保を積極的に推し進めるほか、採用後の教育制度の充実、高度なOJTにより専門性の伝承に努めております。また、高水準な研究開発投資を維持する一方で、失敗を恐れず挑戦し続けるマインドを醸成し、絶え間のない挑戦機会を創出することが個々の能力の開発に資するものと考えております。

 

(5)為替変動について

 当社グループの連結売上高に占める海外売上高の比率は8割弱であり、海外子会社の収益、費用、資産等の現地通貨を円換算する換算レートには、現地通貨での価値が変わらなくても、円換算後の価値を変動させるリスクを有しております。ビジネスレベルにおいては、当社は輸出の大部分を円建てで行っており、海外販売子会社において為替リスクを負っております。海外子会社は顧客との交渉により円建てもしくは現地通貨建て等を取り決めておりますが、現地通貨建ての取引の場合は、急激な円高が起こった場合、または、円高傾向が長期にわたる場合には、顧客への価格転嫁等の交渉が必要になり、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。
 当該リスクに対し、為替変動に対する価格の弾力性が最小化するような高付加価値の製品を投入するよう努めるとともに、海外子会社において顧客との取引を円建てで行うほか為替予約を活用するなど通貨間の為替変動による影響を最小化するよう努めております。

(6)知的財産について

当社グループは、未知未踏を追求し、光技術を用いた新しい産業を創造し、企業価値を向上させるとともに科学技術の発展にも寄与することを経営の基本方針としており、光センサなどのコア技術を高めるための研究開発投資を推進し、それにより得られた知見を知的財産として適切に維持、管理することが事業遂行上重要と認識しております。当社グループは様々な新技術やノウハウを開発しており、独自の光技術を背景に日本、欧米等世界各国に製品を供給しております。当社グループが事業を行う海外の地域によっては、知的財産権の保護が十分ではない場合があり、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。一方で、当社グループが知り得ない知的財産権が存在した場合に、第三者の知的財産権を侵害するとともに当社グループが研究開発投資により得られた知的財産の利用を制限される可能性があり、これら知的財産の適切な管理がなされないことで業績上又は事業遂行上の悪影響が及ぶ可能性があります。

当該リスクに対し、専門の部門を組織し、当社グループが開発した新技術やノウハウは知的財産権として、網羅的に出願、権利化を行うとともに、製品に関わる分野の知的財産権について国内、海外を問わず情報収集を行い、弁護士事務所などと連携し、第三者の知的財産権を侵害しないよう対応を強化することでリスクの最小化に努めております。

 

(7)地震等自然災害について

 当社グループは、当社の本社、生産及び研究開発拠点が静岡県に集中しており、予想される東海地震、東南海地震が発生した場合、製造ライン、研究開発施設、情報システム及びサプライチェーンの機能麻痺により、生産能力に重大な影響を与え、売上げの大幅な減少や施設の修復等に伴う多額の費用負担等が発生し、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
 当該リスクに対し、事業継続計画(BCP)の整備を行うとともに、地震保険、地震コミットメントライン契約によるリスクファイナンスの手当を行い、被災からの早期事業復旧に備えております。

 

(8)感染症等の流行について

当社グループは国内外において事業活動を展開しており、新型コロナウイルスのような各種感染症の各国への拡大・長期化に伴い、航空便減便による製品出荷に対する懸念、当社出張制限による国内外顧客への受注機会の減少並びに製品納入遅延などが生じ、特にサプライチェーン不安による部材調達懸念が顕在化する場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、感染予防・拡大防止のための措置を講じるとともに、当社グループが事業を行う各国、各地域の指針やガイドラインに沿った適時・的確な施策を実施することとしております。資金面においても万が一に備えてのコミットメントラインの締結や社債発行枠の設定などの対策を行っております。

 

 

(9)国際的な事業活動について

 当社グループの連結売上高に占める海外売上高の比率は8割弱であり、グローバルに事業を展開しております。進出国における政治不安や経済情勢悪化等、法規制や行政指導への抵触及び労使関係・人材確保のリスクなどのほか、テロ、戦争、疾病などによる社会的混乱により事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。
 当該リスクに対し、当社における窓口担当部署を決定し、定期的な情報収集・情報交換を図るほか、進出国で問題が発生した場合には、窓口担当部署と連携し、問題の早期収拾に努めております。

 

(10)情報セキュリティリスクについて

 当社グループは、事業活動を通じて、事業に関する取引情報、技術情報のほか個人情報などの重要情報を有しております。ネットワークウイルスの感染、サイバー攻撃他によるコンピュータシステムの休止などによりこれら重要情報の漏洩が発生した場合、事業遂行上の悪影響が及ぶ可能性があります。
 当該リスクに対し、社内規定の整備、定期・不定期による従業員の教育等の対策を講じるほか、セキュリティシステムの導入を行うことでリスクの最小化に努めております。また、万が一セキュリティ事故が発生した場合におけるリスクファイナンスの手当て並びに専門家との連携による被害の最小化などを目的としてサイバー保険に加入するなどの対策も並行して行っております。

 

(11)環境問題について

当社グループは、事業を行う各国の環境規制などの法的規制を遵守することは勿論のこと、世界各地で深刻化する環境問題に適切に対応し、解決に貢献することが重要と考えております。これら環境問題に対する取組みが十分ではない場合、顧客の要望に応えられないばかりか社会的な信用を失い事業遂行上の悪影響が及ぶ可能性があります。

当該リスクに対し、環境マネジメントシステムを構築し、環境に対する影響を定期的に評価し改善する活動を継続的に行うとともに、再生可能エネルギーの導入をはじめとしたカーボンニュートラルの実現に取り組むなど、各種環境課題への様々な取組みを継続的に行うことでリスクの最小化に努めております。また、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、気候変動が事業に与えるリスク・機会の財務的な影響を分析しております。

 

(12)企業買収や業務提携による効果について

 当社グループの持続的な成長のためには、将来を見据えた戦略的な挑戦が必要であり、その手段として企業買収や業務提携を行う場合があります。それらの企業買収や提携によるシナジー効果の創出や事業展開が当初見込み通りに進まなかった場合は、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対して、買収・提携前のデューデリジェンスを通じたリスクの洗い出しと共に、取得後はPMI(Post Merger Integration)を進め、定期的に事業計画と実績を比較検討し、迅速な対策を行える体制を構築するとともに、被買収企業とのコミュニケーションを密に行うことで事業戦略への適合を効率的に図れるよう努めております。

 

 

(13)材料の調達について

当社グループの生産活動に使用される部品のうち、特殊な原材料で調達先が限定されているなどの理由から調達の遅れや不足が生じた場合に、生産が遅延する可能性があります。当社グループの製品は、顧客における部品にあたるため、顧客等での生産にも影響を与える可能性があります。このように、材料等の調達に関するリスクが顕在化する場合、当社グループの事業戦略と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、調達先との関係強化に努める一方で、海外も含む調達先並びに調達先生産拠点の分散化・多様化を図るとともに、代替材料への切り替えや代替素材の研究開発などにより当該リスクを最少化するよう努めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や各種経済政策の効果もあり、緩やかな回復傾向にあるものの、欧米における高金利・通貨高の継続や中国経済の先行き懸念など、依然として見通しは不透明な状況のなかで推移いたしました。

 このような状況におきまして、当社グループは、財務・非財務の両輪で企業価値を向上させるための変革に部署の垣根を越えて取り組むとともに、競争力の維持・向上に必要な設備投資を継続するほか、当社独自の光技術をいかした研究・製品開発を推進することで、売上高、利益の確保に努力してまいりました。

 当連結会計年度の業績につきましては、売上高は203,961百万円と前期に比べ17,483百万円(7.9%)の減少となりました。また、利益面につきましては、営業利益は32,118百万円と前期に比べ24,558百万円(43.3%)の減少、経常利益は34,512百万円と前期に比べ24,903百万円(41.9%)の減少、親会社株主に帰属する当期純利益は25,145百万円と前期に比べ17,679百万円(41.3%)の減少となり、減収減益となりました。

 

 セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。また、従来「その他」の区分に含まれていた「レーザ」セグメントについて報告セグメントとして記載する方法に変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」」に記載のとおりであります。当該変更に伴い、以下の前期比較については、前期数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

 

 [電子管事業]

 光電子増倍管、イメージ機器及び光源は、学術分野におきまして、高エネルギー物理学実験向けの光電子増倍管の売上げが増加したものの、産業分野におきまして、非破壊検査装置向けのマイクロフォーカスX線源の売上げが、EV(電気自動車)市場の停滞に伴い、車載用バッテリー検査や基板検査用などにより減少いたしました。また、半導体製造検査装置向けの光電子増倍管の売上げが減少いたしました。

 この結果、電子管事業といたしましては、売上高は77,679百万円(前期比5.8%減)、営業利益は23,818百万円(前期比27.7%減)となりました。

 [光半導体事業]

 光半導体素子は、学術分野におきまして、高エネルギー物理学実験向けのフォトダイオードアレイなどの光半導体センサの売上げが、欧州におけるプロジェクトからの継続的な受注により増加したものの、医用分野におきまして、X線CT向けのシリコンフォトダイオードの売上げが前年までの部材不足を背景とした受注増加の反動により減少いたしました。また、歯科用診断装置向けのフラットパネルセンサの売上げが、海外における競合メーカーの台頭による価格競争の影響を受け減少いたしました。

 この結果、光半導体事業といたしましては、売上高は78,191百万円(前期比20.3%減)、営業利益は17,894百万円(前期比41.2%減)となりました。

 [画像計測機器事業]

 画像処理・計測装置は、検体検査装置向けのボードカメラの売上げが減少したものの、病理デジタルスライドスキャナの売上げが、医療機器承認の取得により、国内での需要の高まりを受け増加いたしました。また、新薬の開発等に用いられるFDSS(ドラッグスクリーニングシステム)の売上げが堅調に推移いたしました。

 この結果、画像計測機器事業といたしましては、売上高は32,746百万円(前期比3.3%増)、営業利益は10,420百万円(前期比9.5%減)となりました。

[レーザ事業]

レーザ関連製品では、生成AI(人工知能)向けの好調な設備投資に伴い、シリコンウエハを高速・高品位に切断するステルスダイシングエンジンの売上げが増加いたしました。

この結果、レーザ事業といたしましては、売上高は10,716百万円(前期比111.9%増)、営業損失は204百万円(前期は営業利益759百万円)となりました。

 

 [その他事業]

 子会社の㈱磐田グランドホテルが営むホテル事業及び子会社の北京浜松光子技術股份有限公司の独自製品に係る事業を含んでおります。

 当セグメント(その他)の売上高は4,627百万円(前期比14.0%増)、営業利益は1,129百万円(前期比15.9%減)となりました。

 

②財政状態

 財政状態の状況は次のとおりであります。

 

 [流動資産]

 流動資産の主な変動は、棚卸資産が5,013百万円増加したものの、現金及び預金が22,106百万円減少したことなどから、流動資産は前連結会計年度末に比べ21,840百万円減少しております。

 [固定資産]

 固定資産の主な変動は、建設仮勘定が13,613百万円、のれんが29,798百万円それぞれ増加したことなどから、固定資産は前連結会計年度末に比べ53,553百万円増加しております。

 [流動負債]

流動負債の主な変動は、未払法人税等が5,675百万円減少したものの、短期借入金が19,427百万円増加したことなどから、流動負債は前連結会計年度末に比べ12,234百万円増加しております。

 [固定負債]

 固定負債の主な変動は、長期借入金が2,987百万円増加したことなどから、固定負債は前連結会計年度末に比べ6,525百万円増加しております。

 [純資産]

 純資産は、為替換算調整勘定が1,102百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより利益剰余金が13,355百万円増加したことなどから、当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ12,952百万円増加し、333,011百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ21,839百万円減少し、92,579百万円となりました。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況を、前年同期と比較しますと次のとおりであります。

 [営業活動によるキャッシュ・フロー]

営業活動により得られた資金は38,051百万円となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上によるものであります。

 [投資活動によるキャッシュ・フロー]

投資活動により使用した資金は73,699百万円となりました。これは主として、子会社株式の取得及び有形固定資産の取得などによるものであります。

 [財務活動によるキャッシュ・フロー]

財務活動により得られた資金は12,558百万円となりました。これは、配当金の支払があったものの、短期借入金が増加したことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2023年10月1日

  至 2024年9月30日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

電子管事業

74,026

△11.4

光半導体事業

76,762

△20.6

画像計測機器事業

27,065

△19.5

レーザ事業

12,711

183.8

その他事業

5,272

13.2

合計

195,839

△12.2

 (注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

3 当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比については、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。

 

b 受注実績

 当社グループは主に見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

c 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2023年10月1日

  至 2024年9月30日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

電子管事業

77,679

△5.8

光半導体事業

78,191

△20.3

画像計測機器事業

32,746

3.3

レーザ事業

10,716

111.9

その他事業

4,627

14.0

合計

203,961

△7.9

 (注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

3 当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比については、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 当連結会計年度における当社グループ経営成績等の状況に関する分析・検討内容は以下のとおりであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等

 当社は自社の資本コストを的確に把握したうえで、3年の経営計画を策定し、公表しております。(ローリング方式)また、中長期的ビジョンに基づき、成長に向けた積極的な設備投資や研究開発を行うことで、持続的かつ安定的な高収益体制の構築を目指しております。

当連結会計年度の業績につきましては、国内売上げ、海外売上げともに減少いたしました結果、売上高は203,961百万円と前期に比べ17,483百万円(7.9%)の減少となりました。その結果、2022年11月に公表した3年の経営計画の2年目の目標額には到達することはできませんでした。これは、新型コロナウイルスを端緒とした急激な先行手配増加からの反動により、半導体業界などで在庫調整局面となり、受注が減少したことなどが影響しております。利益面につきましても、営業利益は32,118百万円と前期に比べ24,558百万円(43.3%)減少、経常利益は34,512百万円と前期に比べ24,903百万円(41.9%)減少、親会社株主に帰属する当期純利益につきましても25,145百万円と前期に比べ17,679百万円(41.3%)減少となり、遺憾ながら減収減益となりました。利益面についても売上高同様、2022年11月に公表した3年の利益計画の2年目の目標額には到達することができませんでした。これは売上高目標が未達であったことにより、設備投資による減価償却費などの固定的コストの相対的な負担割合が高まったことによるものであります。

なお、セグメント別の業績の概要につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載のとおりであります。

 

a 売上高

 光電子増倍管、イメージ機器及び光源は、学術分野におきまして、高エネルギー物理学実験向けの光電子増倍管の売上げが増加したものの、産業分野におきまして、非破壊検査装置向けのマイクロフォーカスX線源の売上げが、EV(電気自動車)市場の停滞に伴い、車載用バッテリー検査や基板検査用などにより減少いたしました。また、半導体製造検査装置向けの光電子増倍管の売上げが減少いたしました。

 この結果、電子管事業といたしましては、売上高は77,679百万円(前期比5.8%減)となりました。

 光半導体素子は、学術分野におきまして、高エネルギー物理学実験向けのフォトダイオードアレイなどの光半導体センサの売上げが、欧州におけるプロジェクトからの継続的な受注により増加したものの、医用分野におきまして、X線CT向けのシリコンフォトダイオードの売上げが前年までの部材不足を背景とした受注増加の反動により減少いたしました。また、歯科用診断装置向けのフラットパネルセンサの売上げが、海外における競合メーカーの台頭による価格競争の影響を受け減少いたしました。

 この結果、光半導体事業といたしましては、売上高は78,191百万円(前期比20.3%減)となりました。

 画像処理・計測装置は、検体検査装置向けのボードカメラの売上げが減少したものの、病理デジタルスライドスキャナの売上げが、医療機器承認の取得により、国内での需要の高まりを受け増加いたしました。また、新薬の開発等に用いられるFDSS(ドラッグスクリーニングシステム)の売上げが堅調に推移いたしました。

 この結果、画像計測機器事業といたしましては、売上高は32,746百万円(前期比3.3%増)となりました。

 レーザ関連製品では、生成AI(人工知能)向けの好調な設備投資に伴い、シリコンウエハを高速・高品位に切断するステルスダイシングエンジンの売上げが増加いたしました。

 この結果、レーザ事業といたしましては、売上高は10,716百万円(前期比111.9%増)となりました。

 その他事業の売上高は4,627百万円(前期比14.0%増)となりました。

 

 

b 為替変動の影響

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、為替相場があげられます。当連結会計年度における為替感応度(1円の為替変動が年間営業利益に与える影響:円安+/円高△)は、米ドルで300百万円、ユーロで100百万円、中国元で1,000百万円と試算しております。なお、当連結会計年度における営業利益に占める為替影響額は、5,022百万円であり、利益を増加させております。

 

c 売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は、前期比1,362百万円(1.3%)減少し100,077百万円となり、売上総利益は前期比16,121百万円(13.4%)減少し103,884百万円となりました。また、売上総利益率につきましては、前期比3.3%減少し50.9%となりました。

販売費及び一般管理費は、前期比8,436百万円(13.3%)増加し71,766百万円となりました。これは給料が前期比3,175百万円(16.8%)増加したこと及び支払手数料が前期比677百万円(10.3%)増加したことなどによるものであります。なお、研究開発費につきましては、前期比1,247百万円(10.1%)増加し、売上高に対する比率は6.6%となりました。

 

d 営業利益

営業利益は、前期比24,558百万円(43.3%)減少し32,118百万円となりました。電子管事業は、光非破壊検査装置向けのマイクロフォーカスX線源の売上が減少したことなどに伴い、営業利益は9,141百万円(27.7%)減少し23,818百万円となりました。光半導体事業は、X線CT向けのシリコンフォトダイオードの売上げが減少したことなどに伴い、営業利益は12,543百万円(41.2%)減少し17,894百万円となりました。画像計測機器事業は、検体検査装置向けのボードカメラの売上げが減少したことなどに伴い、営業利益は1,091百万円(9.5%)減少し10,420百万円となりました。レーザ事業は、シリコンウエハを高速・高品位に切断するステルスダイシングエンジンの売上げが増加したものの、エヌケイティ・ホトニクス・エイ・エスを連結の範囲に含めたことによる人件費の増加などに伴い、営業損失は204百万円(前期は営業利益759百万円)となりました。その他事業は、売上げが減少したことに伴い、営業利益は213百万円(15.9%)減少し1,129百万円となりました。

 

e 営業外損益

営業外損益は、2,394百万円の利益となり、前期比344百万円の利益の減少となりました。これは前期の為替差益774百万円が当会計年度は為替差損255百万円に転じたことなどによるものであります。なお、金融収支は649百万円収入増となりました。

 

f 特別損益

特別損益は、923百万円の利益となり、前期比1,818百万円の利益の増加となりました。これは、受取賠償金が1,127百万円増加したこと及び固定資産除却損が1,065百万円減少したことなどによるものです。

 

g 親会社株主に帰属する当期純利益

以上のことから、税金等調整前当期純利益は前期比23,084百万円(39.4%)減少し35,435百万円となりました。また、法人税等の負担率が、前期の26.45%と比較して、当連結会計年度は28.32%と1.87%上昇しております。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比17,679百万円(41.3%)減少し25,145百万円となりました。

 

 

②経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

③キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

④資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは経営方針・経営戦略を遂行し、企業価値の継続的な向上と経営の安定を図るため資金需要ごとに適切な資金調達方法を選択することが重要と認識しております。主要資金需要ごとの資金調達方針は以下のとおりであります。

・建物、製造設備及び研究開発用設備等の設備投資に関する資金は自己資金で賄うことを基本とし、設備投資規模など状況によっては金融市場又は資本市場からの調達を検討する。

・光産業創成のための研究開発投資、基礎研究開発等に関する資金は自己資金で賄うことを基本としながら、適宜資本市場からの調達を検討する。

・運転資金は、自己資金で賄うことを基本としながら状況によっては金融市場から調達する。

・企業買収のための資金は、自己資金で賄うことを基本としながら、買収金額や資金状況によっては金融市場もしくは資本市場での調達を検討する。

 当社グループの資金調達の現在の状況は、主に営業活動によるキャッシュ・フローにより賄われており、外部からの多額の資金調達に頼ることなく事業を遂行しております。

 また、地震などの自然災害からの復旧対応資金については十分な手元資金の確保に努めるとともに、地震保険並びに金融機関との専用コミットメントライン契約により、非常時の流動性確保にも備えております。

 今後も、収益力及びキャッシュ・フロー創出力を強化しつつ、株主様への適切な利益還元を行ったうえで、内部留保を積み増し、資金需要に対しては上記の基本原則に基づき自己資金と外部調達によるバランスに配慮し、財務健全性を維持しながら手元流動性を確保していくことを基本としてまいります。

 なお、新型コロナウイルスのような各種感染症等不測事態における運転資金への対応及び企業買収等に対する機動的な対応を目的として、コミットメントラインを締結しております。

 

⑤財政状態の分析

 財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しております。

 

⑥重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表作成にあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や当該事象の状況に応じて、合理的と考えられる方法に基づき見積り及び判断を行い、必要に応じて見直ししておりますが、見積り特有の不確実性により実際の結果は異なる場合があります。

 なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、「光の本質に関する研究及びその応用」をメインテーマとし、主に当社の中央研究所及び各事業部において行っております。

光の世界は未だその本質すら解明されていないという、多くの可能性を秘めた分野であり、光の利用という観点からみても、光の広い波長領域のうち、ごく限られた一部しか利用することができていないのが現状であります。こうした中、当社の中央研究所においては、光についての基礎研究と光の利用に関する応用研究を進めており、また、各事業部においては、製品とその応用製品及びそれらを支える要素技術、製造技術、加工技術に関する開発を行っております。

当連結会計年度の研究開発費の総額は、13,551百万円であり、これを事業のセグメントでみますと、電子管事業3,555百万円、光半導体事業2,387百万円、画像計測機器事業745百万円、レーザ事業1,335百万円、その他事業379百万円及び各事業区分に配賦できない基礎的研究5,148百万円であります。

当連結会計年度における主要な研究開発の概要は次のとおりであります。

 

<電子管・光半導体事業>

半導体技術と電子管技術を融合した新たな光センサ技術

 本技術の特長

 当社の光センサは医療・分析・産業など様々な用途で使用されていますが、最新の半導体技術と電子管技術を融合することで、新しい光センサ技術(HYPEREONTM)を開発いたしました。

 本技術は、電子管技術を用いて光を電子に変換し半導体技術を使って増倍させることで、微弱な光を高感度で検出することを可能とします。当社がこれまで培ってきた半導体技術の特徴である計測の均一性と電子管技術の特徴である高感度、超低ノイズ、高速応答等の相乗効果を最大限に引き出したものであり、これまで測定できなかった微弱な光やわずかな強弱の差も正確かつ高速にとらえることができます。

 今後の展望

 HYPEREONは、新たな当社の基盤技術であり、医用・バイオ、産業、分析などの幅広い用途への応用を目指しております。例えば、様々な細胞情報を取得するフローサイトメトリ技術に応用することで、病気の早期発見や新薬の開発期間短縮が期待されます。

 まずはこの医用・バイオ分野においてHYPEREONを用いた高付加価値モジュールを展開するとともに、今後も様々な分野においてお客様や社会の課題解決に向けて、本技術を軸としたモジュールの開発を行ってまいります。

 

<画像計測機器事業>

多波長蛍光イメージングに特化したスライドスキャナ「MoxiePlex®」

 開発の背景

 がん細胞は、生体内の様々な細胞や分子と相互作用しながら増殖したり死滅したりしており、その複雑な生体現象を可視化し分析することで、新薬の開発や新たな治療法の確立につながると期待されております。その観察にあたっては、採取した検体に対し、特定の細胞や分子と結合する蛍光試薬を添加したうえで、顕微鏡を用いて蛍光画像を観察する手法が一般的に用いられます。近年では、より複雑な生体現象を観察するため、複数の蛍光試薬を用いて多波長の蛍光画像を取得するニーズが高まっておりますが、画像の取得にあたり、複雑な機器設定が必要であるほか、多くの時間を要する点が課題でした。

 本製品の特長

 当社は高感度かつ高精細な蛍光イメージング技術と画像処理技術を活用し、多波長蛍光測定に特化したスライドスキャナ「MoxiePlex」を開発いたしました。本製品は、複数の波長の蛍光試薬で染色した検体を測定可能であるため、細胞の形態情報に加え、細胞内で起きている生体現象をすばやく可視化し、がん細胞を取り巻く環境をより詳細に解析することが可能となります。また、露光時間や測定時間等の自動設定、検体の自動検出機能を備えているため、短時間かつ簡単な操作で画像を取得できます。

 本製品を用いることで、複雑な生体現象の解明につながるとともに新薬や治療法の研究開発が効率的に進み、臨床分野への応用が期待されます。

 

 

 

<各事業区分に配賦できない基礎的研究>

レーザ核融合に向けた高出力レーザダイオード(LD)モジュールを開発

 研究の背景

 レーザ核融合とは、海水から抽出した重水素などの燃料にレーザを照射することにより人工的にエネルギーを作り出す技術で、二酸化炭素が発生しないことから、次世代のクリーンエネルギー技術として注目されております。

 このレーザ核融合の実現にはメガジュール級の超高出力のレーザが求められており、これは1~10kJ(注1)のレーザ装置を複数組み合わせることで実現可能とされております。このため当社は、1kJのレーザを出力するレーザ装置の確立を重要なマイルストーンとして研究を進めております。

 研究の成果

 当社は1kJレーザの励起用光源であるLDを高密度に積層する技術を確立し、小型の高出力LDモジュールを開発いたしました。搭載するLD数を増やすことでレーザ装置全体の出力向上が期待できますが、従来の積層技術では、LD同士の間隔が高密度になるほどその他の構成部品との接合ズレが生じ、通電時に不具合が起こりやすいという問題がありました。そこで独自の積層技術を用いることで、従来よりもLD同士の間隔を約4分の1に狭めつつ、接合ズレを抑えて高い信頼性を確保しました。これにより、従来製品と比べて、LDモジュールの出力の最大値を約4倍に高めました。

 当社は、引続きレーザのさらなる高出力化に向けて研究開発を進めるとともに、世界の核融合発電の早期実現に貢献してまいります。

 

新生児の脳内血液循環を高精度・安全に測定可能な装置を開発

 研究の背景

 早産児・低出生体重児は、脳深部における出血が起こりやすく後遺症が発生してしまうケースがあるため、出血の有無を示すパラメータとなるヘモグロビン濃度を正確に測定する手法が求められておりました。しかし、頭部に照射された光の反射光を検出する従来の測定方法では、測定の範囲が脳の表層部のみとなってしまうほか、測定できるヘモグロビン濃度も測定開始時からの変化量(相対値)に限られておりました。

 研究の成果

 当社は高感度な光センサである光電子増倍管とレーザ、独自の時間分解分光技術を応用した新たな測定装置を開発いたしました(注2)。本開発品は、頭部に近赤外光を照射し、その透過光を検出することで脳深部のヘモグロビン濃度を相対値ではなく絶対値としてとらえることが可能であり、より正確に脳内血液循環を測定することができます。

 今後も当社技術を駆使して、早産児・低出生体重児だけでなく全ての新生児にも適用できるよう改良を進め、脳内血液循環管理の新たな測定機器として新生児医療に貢献してまいります。

 

 

(注)1 キロジュール(kJ)の意味です。ジュールはエネルギーの単位で、1キロジュールは240カロリーの熱量に相当します。

   2 本開発品は東京大学、埼玉県立小児医療センターとの共同研究によるものです。