第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

大地に根を張り、常に大きく成長し続ける樹。私たちはこの樹のように、常にお客様のネットワークの中に根付き、お客様と共に発展し続けます。時代の開拓者であり、時代の証人であるために、医療・介護ネットワーク業界の先駆者として常に最善を尽くすことを経営の基本方針としております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは収益性を重視する観点から「営業利益」を目標数値とし、常に収益の改善に努め、コストの削減意識をもって企業経営に取り組んでおります。

 

(3)医療・介護ネットワーク業界の経営環境

日本の人口構造の変化に伴う高齢者(特に75歳以上の高齢者)の占める割合の増加により、医療介護分野における社会保障給付費が膨らむことが見込まれております。

特に、所謂団塊の世代が75歳を迎える2025年以降も高齢者人口の増加傾向は2040年頃まで継続すると見込まれており、年齢を重ねるごと増加する要介護・要支援の認定率と相まって、医療介護分野における社会保障給付費は逓増することが見込まれております。

これに伴い、当社グループの主力事業に関連する医療・介護ネットワーク業界の市場規模も拡大傾向が継続するものと考えております。当社グループにおきましては、医療・介護業界全体のプラットフォーム提供を通じて、増加する社会保障給付費の効率的な活用に資するサービスの提供を行ってまいります。

 

(4)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは高齢化社会に求められる医療・介護分野においてICT(Information and Communication Technology)による地域包括ケアの実現に寄与するために、多職種間連携を可能とする当社システムを医療・介護業界全体のプラットフォームとして提供してまいりました。

今後は医療・介護分野における地域連携をさらに推進させ、患者・要介護者、全ての医療・介護事業者に有益なソリューションの提供に取り組むとともに、ICTを通じたサービスのみならず、リアル店舗を活用したデータビジネスとして、健康寿命延伸サービスや医療・介護・薬局関連サービスなど、ITサービスとリアル店舗ビジネス、医療介護子育てビジネスと健康ビジネス、それぞれを包括したヘルスケアプラットフォームの構築を推進し、「「人生を抱きしめるクラウド」で人と社会に貢献する」ビジョンの実現を目指してまいります。

 

(5)対処すべき課題

近年の医療・介護業界に関連するステークホルダーの様々な課題が顕在化してきております。まず家族と患者・要介護者である高齢者とが抱える課題としては、家族の介護のために介護をする方が仕事を辞めなければならないという介護による雇用喪失の問題や家族の繋がりの希薄化の問題が考えられます。次に、介護事業者が抱える課題としては、業界全体としての人材不足やケアマネジャーなどの採用の難しさ、そして介護事業者のサービス内容が患者やその家族に伝わらないといった問題が考えられます。加えて、特に業界で多くを占める中小介護事業者において、設備投資や資金繰り、資金決済といった事業規模に伴う諸問題がございます。また、病院医師や在宅医師の抱える課題として、業務があまりに多忙すぎる点や患者の情報不足に起因して、有効な医薬品の利用や患者への対応が遅延することがあります。さらに、看護師や介護士における課題として、最新の治療等の情報不足や知識・経験の欠如から来るサービス品質の低下があります。

 当社グループは、このような医療・介護業界全体が抱える課題を克服することが当社グループの課題と考えて、以下のような対処を行っております。

 

① クラウドサービス提供事業の拡大

当社グループのクラウドサービスは、自治体・医療・看護・介護の連携に関してシステム内でのコミュニケーションが可能な多職種間連携を実現する介護請求・業務管理システムとして介護保険制度施行時の2000年より提供されているシステムであり、当該システムにより国が目指す「地域包括ケア」の実現に寄与してまいりました。当社システムの導入により、医師、看護師、ケアマネジャー、介護士といった方たちの情報連携による地域包括ケアを実現することが可能となり、サービスの質の向上と業務の効率化が進められるようになっております。

今後は、介護サービスのニーズの高い地域から順次営業所を設立し、地域に根ざしたサービスを提供し、患者とその家族に対して効果的かつ安定的な介護環境を生み出すことで、家族介護による離職問題を回避し、若者の社会進出の活性化を図るとともに、家族の繋がり自体を活性化させることを課題と考えております。

また、地域連携のさらなる推進により、患者、要介護者、全ての医療・介護事業者といった医療・介護業界全体のユーザーの利便性を向上させ、情報共有プラットフォームの構築に貢献し、急性期医療から回復期医療、そして在宅医療といった各段階における適切な医療や介護の対応を可能にするため、各段階の患者のニーズの変化に適宜対応できるようシステム開発への取り組みを継続していく方針であります。

 

② 新規事業領域の拡大

ⅰ コンテンツ事業

当社グループのカナミッククラウドサービス内において、医療・介護に関連する有益な情報をコンテンツとして提供し、広告宣伝収入を得ております。当社の提供する広告は、医療・介護に関連する方々に有益な情報をタイムリーに提供するものであり、その導入によって、医療・介護関係者が最新の医薬品の情報や介護関連機器等の情報を取得することができるようになり、医療・介護の質の向上に寄与します。

今後は、在宅医療・介護の広がりにあわせ、広告を通じた情報に対するニーズがより高まっていくと予想され、より広い情報を提供するため、大手広告代理店と協力し、広告宣伝主を広く集め、さらに医療・介護関係者の役に立つ情報提供システムとなっていく必要があると考えております。

 

ⅱ ビッグデータ解析事業

当社グループは、カナミッククラウドサービスの提供を通じて取得した膨大な医療・介護関係のデータを蓄積しております。

今後は、平均寿命の伸びと少子化に伴う高齢化社会が進展する状況下において、クラウドに蓄積されたビッグデータの解析事業を通じて、よりよく、かつ効率的に介護を行える環境を整えることに寄与してまいります。

 

ⅲ シェアリングエコノミー関連事業

当社グループは、カナミッククラウドサービス上で当社グループのシステムユーザーにおける求人ニーズと人材データベースのマッチングサービスを提供しております。

今後は、人材サービスのみならず、介護関連器具、車両、施設といった介護事業者が必要とするあらゆるニーズに対応できる仕組みを整え、介護業界の発展に寄与してまいります。

 

ⅳ フィンテック関連事業

当社グループはカナミッククラウドサービスの提供を通じた効率的な請求管理サービスを提供しておりますが、介護事業では介護給付費の決済に関連する業務に従来型の非効率な部分が多く存在しております。

今後は、請求管理に加え、資金繰り、新たな決済手段などのサービスラインナップの追加を図り、決済関連の効率化に寄与してまいります。

 

③ ヘルスケアプラットフォームの構築

当社グループは、カナミッククラウドサービスによる効率的な「地域包括ケア」の実現、同サービスを通じた各種情報提供によるプラットフォームサービス機能の拡大と、サービスの質の向上に努めてまいりました。今後はITを通じたサービスのみならず、リアル店舗を活用したデータビジネスとして、健康寿命延伸サービスや医療・介護・薬局関連サービスなど、ITサービスとリアル店舗ビジネス、医療介護子育てビジネスと健康ビジネス、それぞれを包括したヘルスケアプラットフォームの構築を推進し、「「人生を抱きしめるクラウド」で人と社会に貢献する」ビジョンの実現を目指してまいります。

 

④ 積極的なM&Aの活用

当社グループは、「「人生を抱きしめるクラウド」で人と社会に貢献する」というビジョンを前提にした「事業コンテンツ」「事業エリア」「事業ツール」の補強・拡大を行う際の方法の一つとしてM&Aの採用を積極的に検討しております。当社グループにおける新規事業の創出・既存事業の拡大とともにM&Aの推進を通じてビジョンの実現と継続的な成長を図ってまいります。

 

⑤ 情報管理体制の強化

当社グループは、提供するカナミッククラウドサービスにおいて数多くの患者・要介護者の情報を保有しており、個人情報保護を含む情報管理が経営の重要課題であると認識しております。当社では、2006年5月に「プライバシーマーク」を、2017年12月に「医療情報ASP・SaaS情報開示認定制度」をそれぞれ取得しておりますが、今後も定期的な社内教育の実施、セキュリティシステムの整備等により、引き続き情報管理体制の強化を図ってまいります。

 

⑥ システム基盤の強化

当社グループは、主にクラウドを利用したインターネット上での事業を展開していることから、サービス提供に係る当該システム稼働の安定性を確保することが経営上の重要な課題であると認識しております。また、長期的に高齢者人口の増加が見込まれており、要介護者数も合わせて増加するため、ユーザー数の増加に備えたサーバーリソースが必要になります。当社グループは、今後もその重要性に鑑み、継続的に安定運用を図るため、システム基盤の強化への取り組みを継続していく方針であります。

 

⑦ コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の強化

当社グループは、現在成長段階にあり、継続的な成長を続けることができる事業基盤の確立に向けて、コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制のさらなる強化が経営上の重要な課題であると認識しております。事業の拡大に伴い、内部管理体制の一層の充実に努め、業務の適切性、財務報告の信頼性及びコンプライアンス体制の強化を図ってまいります。

 

⑧ 人材の採用と育成

当社グループは、継続的成長のためには、優秀な人材の採用と育成が重要であると考えております。

特に高齢社会に関連する市場はますます拡大し、多くの事業機会が生まれており、これに対応した営業所の新設に伴う営業やサポート面において必要とされる人員を確保する必要があります。

また、当社グループは介護保険制度等の改正に対応したシステム開発のための人員を確保する必要があります。

そのため、当社グループは当該人材の採用と育成に注力してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営環境

 様々な社会課題の顕在化やステークホルダーの価値観の変容に伴い、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した経営や経済価値と社会価値の双方を創出するサステナビリティ経営が一層求められております。当社グループも、責任をもって取り組んでいくべきであると考えております。

 

(2)サステナビリティに関する考え方

 当社グループにとってのサステナビリティとは、継続的に事業を通じて社会課題の解決に寄与することであります。グループのミッション(企業使命)、ビジョン(事業展望)及びバリュー(共有価値観)を、サステナビリティを巡る取組みについての基本的な方針としています。

 当社グループは「人生を抱きしめるクラウドで人と社会に貢献すること」を企業の存在意義と定め、「超高齢社会の地域包括ケアをクラウドで支える」という経営理念のもと、多様なステークホルダーと適切に協働しながら、あらゆる人が自分らしく輝ける世界の実現に貢献したいと考えています。

 当社グループのビジネスは医療・介護・健康分野におけるプラットフォーム及びヘルスケアプラットフォームを提供することで社会に価値を提供しており、人的資本が基本となります。そのため、人的資本を最重要視して投資を行い、持続的に人的資本を増強し続けることで、サステナビリティを実践してまいります。

 

① ガバナンス

 基本的な考え方

 当社グループは、「人生を抱きしめるクラウドで人と社会に貢献すること」を企業の存在意義と定め、「超高齢社会の地域包括ケアをクラウドで支える」という経営理念のもと、公正で透明性の高い経営に取り組むことを基本的な考えとしております。その実現のため、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、社会、従業員等各ステークホルダーと良好な関係を築き、長期的視野の中でグループ企業価値の向上を目指すべく経営活動を推進しております。

 取締役会を経営の基本方針や重要課題並びに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則月1回開催し、また経営にスピーディーな意思決定と柔軟な対応を可能とするため、常勤取締役をもって構成される経営会議を毎月開催しております。

 取締役の業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の順守状況、業務活動の適正性を監査するため、監査役が取締役会に出席することで議事内容や手続き等について確認しております。また、内部監査室を置き、内部監査を実施し、監査結果を定期的に代表取締役社長に報告しております。詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照願います。

 

② 戦略

 サステナビリティ戦略

 持続可能な社会を実現するために、企業がその貢献の在り方を問われる中、当社グループは、社会が求める価値を当社グループが持続的に創造し続けるためのカギは「人財」であると考えています。また、当社グループは、会社と従業員が対等な関係で互いに刺激しあい、より良い方向へと高めあえるように、社員一人ひとりを大切にすることが重要であると考えています。そのため、人財戦略上の各種施策においては、「カナミックネットワークグループの持続的成長」と「社員のWell‐being実現」の両立を目標に据え、個の力(ポテンシャル)を最大限に引き出し、挑戦し学習し続ける組織を実現し、持続的な競争力を生み出していきたいと考えています。

 当社グループは、従業員及びステークホルダーに対して、当社グループの人財に関する考え方を示すために、「カナミックネットワークグループ人財マネジメント方針」の作成に向けて、現在取り組んでおります。本方針は、行動指針を根本に据え、当社グループの人財に関する様々な施策における、基本的な考え方を明示し、グループ全体の人事施策の根幹に位置付けるため、順次発信して参ります。

 

 社内環境整備

 当社グループでは健全で持続的な成長を実現するにあたり、その主要な要素の一つが人財であると位置づけています。社員一人ひとりが心身ともに健康で、働き甲斐や成長実感を持ちながら挑戦し続ける風土の醸成が重要と考え、その環境の整備を経営戦略の重点施策としております。これまで取り組んで来た超過勤務時間の削減、効率的な働き方を実現する就業制度の充実等、主にインプット(労働投入)の効率化に主眼を置いた働き方改革に取り組みました。加えて、個々の社員の自主・自律、組織としての協働が今まで以上に必要となるという認識に立ち、多様な働き方を志向し、エンゲージメント向上、生産性の向上を目指しております。

 

③ リスク管理

リスクマネジメント体制

 当社グループは、グループ経営に関する様々なリスクを審議するため、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価・分析し、グループ各社に必要な指示、監督を行うとともに、その内容を定期的に取締役会へ報告する体制を整えています。

 詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照願います。

 

④ 指標及び目標

 当社グループでは、「ESGへの取り組み」(下記URL)において「TCFD提言に沿った情報開示」を行っており、ESGの3項目についてそれぞれ指標と2030年の達成目標を掲げております。その内、S(Social)に対する1項目として人的資本に対する指標及び目標を定めており、主な目標として管理職に対する女性比率15%、全社員に対する女性比率40%などを掲げております。

  ■「ESGへの取り組みについて
    https://www.kanamic.net/ir/esg.html

 

 また、当社グループでは、上記「②戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

実績(当連結会計年度)

概要

管理職に占める女性労働者の割合

5.56

 現在の全社員に占める女性の割合は25%程度ですが、新卒の入社者は近年男女の比率がほぼ同数であり、管理職候補となる人材層も厚くなってきているため、優秀な人材は性別を問わず管理職への登用をすすめてまいります。

男性労働者の育児休業取得率

 

100.00

 

 育児介護休業法に対応し、社内に育休相談窓口の設置や啓蒙活動を進めるなど、男性労働者が育児休業を取得し易い環境の整備に努めておりますが、対象となる社員の絶対数が少ないため、実績率は左記のとおりとなっております。

 今後も同様の運用を継続することにより、男性労働者の育児休業取得率向上に努めてまいります。

労働者の男女の賃金の差異

64.53

 労働者の男女賃金差異は下記の計算式に基づき算出しております。

女性平均年間賃金/男性の平均年間賃金×100%

 当社では、男女において賃金規程等の制度上、昇進・昇給等の運用上及び採用基準上の差を設けておりません。

 賃金差異の主な原因としては、上位役職者が少ないこと、女性の平均勤続年数が男性より短いため、相対的に賃金水準の低い労働者が多いことが挙げられます。

(平均勤続年数 男性労働者:8.3年 女性労働者:3.8年)

※ 上記の具体的な指標及び実績については、当社単体の数値を記載しております。各国の文化的背景や状況等を踏まえて、当社子会社ごとに人的資本関係の指標及びその目標を検討しております。引き続き必要な情報収集・分析を進め、当社グループ全体として人的資本経営の重要課題に取り組んでまいります。

 

3【事業等のリスク】

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業環境に関するリスク

① 介護保険制度の改正について

当社グループが行っている介護・医療分野におけるカナミッククラウドサービスについては、介護保険法の影響を強く受けます。

介護保険法については、定期的に法律全般に関する検討が加えられ、その結果に基づき必要な見直し等が行われ(介護保険法附則第2条)、また3年に1度介護報酬の見直しが行われることになっており、2024年にも介護保険法及び介護報酬の改正が行われました。介護保険法や介護報酬の改正が行われた場合、これらの改正に対応するための適時なシステム開発が必要となります。一方、医療及び介護業界全般で市場の停滞・縮小や、一部大手事業者による寡占化、廃業の増加など、新たな市場動向の変化が生じることも想定されます。

こうした状況は、同業他社も同様の条件であるため、開発において他社に先んじることや差別化を図ること、適切な価格戦略を取ることがそのまま他社との格差を広げ、シェアの拡大に直結することになりますが、逆に遅れをとった場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新たな市場動向の変化が業績の拡大に寄与する場合もある一方で、当社サービスの導入延期やサービス利用数の削減、他社サービスへの乗り換えなどに繋がった場合は、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これらリスクを軽減するため、諮問機関や各種団体等への参加を通じての情報収集や、法制度の影響を受けにくいサービスの開発などを行ってまいります。

 

② 他社との競合について

現在、国内で介護・医療分野におけるクラウドサービス事業を展開する競合企業が複数存在しており、また、今後の市場規模拡大に伴い新規参入を検討する企業が増加する可能性があります。

しかし、医療介護業界のシステム構築には、業界に精通した知識や経験が必要とされるため、参入障壁が高いと考えられます。その中で当社グループのカナミッククラウドサービスは、自治体・医療・看護・介護の連携に関してシステム内でのコミュニケーションが可能な多職種間連携を実現する介護請求・業務管理システムとして介護保険制度施行時の2000年より提供されているシステムであり、当該システムにより国が目指す「地域包括ケアシステム」の実現に寄与するとともに、市場における優位性を構築し、競争力を向上させてまいりました。

一方で、新規参入等により競争が激化した場合には、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクを軽減するため、今後も、各地域に根ざしたサービスの提供、地域連携のさらなる推進により、患者、要介護者、全ての医療・介護事業者といった医療・介護業界全体のユーザーの利便性を向上させ、情報共有プラットフォームの構築を推進してまいります。

 

③ 技術革新について

当社グループのサービスはインターネット関連技術に基づいて事業を展開しておりますが、インターネット関連分野は新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われ、非常に変化の激しい業界となっております。また、ハード面においては、スマートフォンの普及が急速に進んでおり、新技術に対応した新しいサービスが相次いで展開されております。このような技術やノウハウの獲得に困難が生じた場合、また技術革新に対する当社グループの対応が遅れた場合には、当社グループの競争力が低下する可能性があります。さらに、新技術への対応のために追加的なシステム、人件費などの支出が拡大する可能性があり、その結果、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは技術者の採用・育成やスマートフォンに関する技術やノウハウの取得に注力しております。

 

④ 個人情報の管理について

当社グループは、展開する各サービスの運営過程において、ユーザーより個人情報を取得することがあり、外部からの不正なアクセス、その他想定外の事態の発生により個人情報が流出した場合には、当社グループの社会的信用を失墜させ、当社の事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。こうしたリスクを軽減するため、当該個人情報の管理については、権限を有する者以外の閲覧をシステム上で制限しております。また、当社グループでは個人情報保護マネージメントシステムを設定し、従業員に対して研修を実施しております。さらに、より一層の情報セキュリティの安全性を確保するために、2006年5月にプライバシーマークを取得し、2024年5月に9回目の更新を行いました。

 

⑤ システム障害について

当社グループのサービスは、当社グループのウェブサイトを主な情報通信手段としており、サービスの信頼性及び取引の安全性の観点からも、当社グループの事業用ITインフラは障害に強い設計としております。また、管理を強化するため、情報システム開発及び運用経験の豊富な人材の採用を積極的に実施しております。さらに、今後の高齢者人口の増加をにらみ、サーバー容量等についても十分な容量を確保しております。しかしながら、このような体制による管理にもかかわらず、自然災害や事故等が起こった場合、当社グループ役職員の操作過誤が生じた場合、ハッカー等外部からの侵入による不正行為が生じた場合、さらに高齢者人口の増加に伴い当社ユーザーが爆発的に増加した場合等には、システム障害やサーバー容量不足による当社コンピューターシステムの機能の低下、誤作動や故障等の深刻な事態を招く可能性があります。これらの事態が生じた場合には、インターネット上のウェブサイトを主な情報提供手段とする当社グループはサービス提供及び営業取引に深刻な影響を受け、当社グループの事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。当社グループでは、これらリスクを軽減するため、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」や「事業継続計画策定ガイドライン」等に従い、多層防御や組織面の施策ならびに事業継続性の対策を実施しております。

 

⑥ 知的財産権について

当社グループは、当社の提供するサービスの基礎をなすシステムについて、特許権を有しております。

しかし、現時点で権利取得に至っていない権利について、今後これらの権利を取得できるという確実性はありません。一方で、当社グループの事業分野において、国内外の各種事業者等が特許その他の知的財産権を取得した場合、その内容次第では、当社グループに対する訴訟やクレーム等が発生し、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは、第三者に対する知的財産権を侵害することがないように常に注意を払い事業活動を行っておりますが、当社グループの事業分野における知的財産権の現状を完全に把握することは困難であり、万が一当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償又は使用差止めなどの請求を受ける可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これらリスクを軽減するため、継続的な技術革新と技術革新により生ずる特許その他の知的財産権の確保を進め、あわせて外部機関との連携を通じた他社の保有する知的財産権等のリサーチに取り組んでおります。

 

⑦ 研究開発について

IoTクラウド利用の地域包括ケア・グローバル構築を目的とした遠隔医療・介護に関する研究開発を行っております。これらの技術の導入、実装が想定通りに進まなかった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではリスクを軽減するため、継続的なR&D投資、外部パートナーとの連携を進めてまいります。

 

(2)事業体制に関するリスク

① 特定人物への依存について

当社の取締役会長山本稔は、当社の創業者であり、設立以来、経営方針や事業戦略の立案・決定及びその遂行において取締役としての役割を果たしております。

当社では、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社ではリスクを軽減するため、同氏以外の者へ代表権を付与するなど、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めております。

 

② 小規模組織であること及び人材の確保、育成及び安全管理について

当社グループは2024年9月30日現在、従業員数が279名と小規模な組織であり内部管理体制もそれに応じたものとなっております。また、カナミッククラウドサービスにおけるユーザーの利便性の向上には、当社システムの付加価値増加のためのシステム開発が必要であり、これに対応できる人材を確保・育成することが今後の事業の成長においても不可欠であります。

事業の成長とともに人員の採用及び育成を行っていくとともに、内部管理体制の強化を行っていく方針でありますが、人員採用などが適切に行えなかった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症をはじめとしたパンデミックが発生した場合、従業員の事業活動に対する制限が小規模な組織であることと相まって大きく影響し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これらリスクを軽減するため、外部リソースの積極的な活用を行うとともに、従業員のリモートワークを積極的に導入することで、グループ内での採用・育成体制の強化及び安全管理の徹底に取り組んでおります。

 

③ 内部管理体制について

当社グループの継続的な成長のためには、内部管理体制が適切に機能することが必要不可欠でありますが、事業が拡大することにより、内部管理体制が有効に機能しなかった場合には、適切な業務運営を行うことができず、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループではリスクを軽減するため業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規程及び法令遵守を徹底して取り組んでおります。

 

 

④ コンプライアンスについて

当社グループは、法令その他諸規則、社会規範を遵守すべく、「倫理規範」を制定し、役職員に対してその周知、徹底を図っております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分なコンプライアンス体制の構築が追いつかず、法令違反等が生じた場合、ユーザー及び取引先等の信頼失墜を招く、もしくは訴訟を提起されるという事態が発生し、当社グループの事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。当社グループではリスクを軽減するため、研修等を通じて、継続的にコンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。

 

⑤ サービスの安全性及び健全性について

当社グループのカナミッククラウドサービスは医療・看護・介護・自治体といった多職種他法人の垣根を越えた情報共有を可能にするシステムとなっており、高度なセキュリティ対策を施すことにより安心して利用していただける環境を整えておりますが、ユーザーを通じて個人情報の流出や、健全性を損なう情報の発信、違法行為などが行われる危険性があります。それらはシステムの利用規約において禁止事項にするとともに当社グループの責任範囲を限定しておりますが、当社グループが法的責任を問われ、また法的責任を問われない場合でもサービスのブランドイメージ悪化を招くことにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループのプラットフォームサービスは、インターネット広告サービスとホームページ作成サービスを手掛けており、利用に関連して風評問題が発生した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

当社グループではリスクを軽減するため、コンテンツに関する権利関係や健全性に対する確認を取る体制を十分に整えており、今後も継続的に体制強化に取り組んでまいります。

 

⑥ 特定のサービスへの依存について

当社グループは、カナミッククラウドサービス、プラットフォームサービス、健康寿命延伸サービス、ソリューションサービス及びその他サービスを提供しておりますが、現在、全体の売上高に占めるカナミッククラウドサービスの割合が多く、同サービスに依存しております。現在時点において主要サービスであるカナミッククラウドサービスが顧客のニーズと乖離した場合や競合他社に対する優位性を喪失するなどの事態に陥った場合、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループではリスクを軽減するため、収益源の多様性を持つことにより、より安定した体制の構築を目指すべく、プラットフォームサービスや健康寿命延伸サービスの拡大、新たに当社グループの柱となる新規サービスの開発に向け積極的に取り組んでおります。

 

⑦ 新規出店に伴うリスクについて

当社グループは、健康寿命延伸を目的としたフィットネス事業を展開しており、事業拡大のための新規出店を進めております。出店に際しては、地域性や人口分布状況、競合他社の出店状況等に基づく集客予測に応じた事業計画を立案しておりますが、景気の悪化や集客予測の前提に変動があった場合は当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループではリスクを軽減するため、既存店舗における集客状況の検証や出店候補地選定過程の精度向上、競合他社の出店動向確認などに取り組んでおります。

 

⑧ 新規事業展開に伴うリスクについて

当社グループでは、既存システムを活用した新規事業の開発を進めております。新規事業の展開にあたっては、当初見込み通りの展開ができず投資を回収できなくなる可能性があるとともに、開発が想定通りに立ち上がらなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではリスクを軽減するため、新機能の開発計画を立て適切かつ効率的な進捗管理を行う体制を構築しております。

 

(3)その他のリスク

① 資金の投資効果について

当社グループは、将来のサービスの拡大に備えたシステム及び関連設備への投資、人員拡充における採用費用、広告宣伝費等に充当する目的で、資金を調達する場合があります。

しかしながら、当社グループが属する業界の急速な変化により、当社グループの計画通りに資金を使用した場合でも想定通りの投資効果をあげられない可能性があります。当社グループではこれらリスクを軽減するため、諮問機関や各種団体等への参加を通じて当社グループが属する業界の情報収集を積極的に行ってまいります。

 

② 配当政策について

当社は、株主に対する利益還元を重要課題の一つとして位置付けており、株主への長期的な利益還元を実現するため、内部留保資金を充実し、環境の変化を先取りした積極的な事業展開を行う必要があると考えております。当社は現在、成長過程にあり、そのため内部留保資金の充実を図ることで、財務体質の強化と事業拡大のための投資等により株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。また、今後の配当政策の基本方針としては株主への利益還元と内部留保充実を総合的に判断し、業績と市場動向の状況に応じて柔軟な対応を行っていく所存であります。

なお、この方針に基づき2023年9月期より配当性向30%以上を基準としておりますが、事業環境の急激な変化などにより事業が計画通りに進展しない場合には、目標とする配当性向を達成できなくなる可能性があります。当社グループではこれらリスクを軽減するため、事業環境の動向に対する情報収集を積極的に行うとともに、それらに対応した事業計画の立案・実行を行ってまいります。

 

③ 訴訟等について

これまで、当社グループに対して、業績に重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されておりません。また、現時点において提起される見通しもありません。しかしながら、知的財産権侵害の訴訟等が提起され、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこれらリスクを軽減するため、外部機関との連携を通じ、他社の保有する知的財産権等のリサーチに取り組んでおります。

 

④ 固定資産に係る減損リスクについて

当社グループは、設備備品等の有形固定資産、ソフトウエアや株式取得等に伴うのれん等の無形固定資産を有しており、これらは潜在的に資産価値の下落による減損リスクにさらされております。当社グループでは、対象となる資産について減損会計ルールに基づき適切な処理を行っております。しかしながら、今後資産価値の低下や買収した企業の収益性が著しく低下した場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこれらリスクを軽減するため、付加価値の高い資産の構築に努めてまいります。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、景気が一部に足踏みが残るものの緩やかに回復している状況となっております。

当社グループを取り巻く環境におきましては、超高齢社会の到来に伴い、介護費、介護保険サービス利用者数及びサービス提供事業者数は増加し、介護事業全体の底上げが続いております。2024年度の介護保険制度改正では、医療・介護をつなぐ地域包括ケアシステムの更なる深化・推進やLIFEを活用した科学的介護に加え、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等による自立支援・重度化防止など、医療・介護の連携と介護事業の効率化がより一層求められる一方で、介護職員の処遇改善や生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり(医療DX、介護DXに関わる加算)など、介護事業の持続可能性もあわせて求められる改正となっております。

このような状況のもと、当社グループは、医療・介護をつなぐ地域包括ケアを実現するシステムを提供していることから、各省庁との共同プロジェクトに参加し、国の政策と同じ方向性をもつシステム開発会社となるよう努めるとともに、介護保険制度改正に対応する準備を整え、継続して適時にシステム改修を行い、システム利用者の負担軽減により、ユーザーの利便性の向上を図っております。総務省の「IoTサービス創出支援事業」の実証実験を通じて「カナミッククラウドサービス」を基軸とした介護における各種データの活用連携を進めるとともに、「東京都多職種連携ポータルサイト」を通じて、従来の市区町村に比べてより広範囲な都道府県単位での在宅療養推進体制に寄与するなど、当社グループの「カナミッククラウドサービス」で培った医療・介護連携のノウハウが地域の医療・介護連携に貢献しております。それらの高齢者支援事業とあわせ、多世代包括ケアの実現に向けた取組として「子育て支援システム」を通じて自治体の子育て支援事業の効率運用に寄与しております。あわせて、認定NPO法人健康都市活動支援機構と共同で自治体向け地域データヘルスシステムの標準化を目指したシステム開発を行うとともに、介護事業所数・サービス数ともに介護業界最大手のグループ企業であるニチイホールディングスに当社システムが採用されるなど、介護事業者への導入も積極的に進めております。一方で、当社グループにおけるシステムのプラットフォーム化の一環として、介護事業者における介護サービス利用者向け請求書・領収書の「発行」「連絡」業務に対するソリューションサービスとして、業務をWeb 上で完結できるDX(デジタルトランスフォーメーション)サービスとしての「カナミックかんたんWeb 明細」、実際の作業の事務代行を行う「カナミックかんたん郵送代行(BPO)」、介護サービス利用者向けの利用料決済サービス「カナミックかんたん電子決済サービス」及びコンテンツサービスの充実、人材データベースマッチングサービスや医療・介護事業者向け物販サービスの稼働、サービス付き高齢者向け住宅におけるIoT連携など、他社との業務連携を進めてまいりました。また、今後の事業規模拡大を目的として、株式会社Ruby開発の全株式を2023年8月4日付で取得し当社の完全子会社といたしました。株式会社Ruby開発はRuby言語によるシステム開発に特色を有し、機能開発スピードの速いアジャイル開発を求める企業側のニーズに沿ったスピーディな開発を得意としております。同社は当社グループの提供するクラウド・Webサービスの機能向上に高いシナジーが期待でき、当社グループが医療・介護・健康を包括したヘルスケア・ヘルステック企業として更なる付加価値の高いサービスを提供する上で大きな推進力になるとともに、その特色を活かしたスタートアップ企業の支援など幅広い分野における貢献が期待できると判断しております。今後も当社グループの事業規模拡大のため、新たなM&A候補先の選定や新規事業の展開等を進めてまいります。

さらに、当社グループのシステムがプラットフォーム化に対応していくことに伴い、取得される患者・要介護者等の情報をビッグデータとして解析し、国や自治体、保険会社等が必要としているエビデンスを見つけ出すAIサービス等の展開を通じて医療・介護分野における地域連携をさらに推進させ、患者・要介護者、全ての医療・介護事業者にソリューションを提供するための研究活動も実施しております。

これらの結果、当連結会計年度における業績は、売上高5,007,468千円(前連結会計年度比1,261,008千円増、33.7%増)、営業利益1,439,155千円(前連結会計年度比343,075千円増、31.3%増)、経常利益1,447,993千円(前連結会計年度比340,981千円増、30.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益919,989千円(前連結会計年度比156,888千円増、20.6%増)となりました。

第1四半期連結会計期間より、報告セグメント「クラウドプラットフォーム事業」の「健康寿命延伸サービス」

はリアル店舗を活用したビジネスであり金額的重要性が増加し、今後も規模の拡大が見込まれることから当該サービスに関する情報を明瞭に表示するため新たな報告セグメントとし、その名称を「健康寿命延伸事業」として記載

しております。それに伴い従来の「クラウドプラットフォーム事業」の名称をより実態に即したものとするため、

「医療・介護クラウドプラットフォーム事業」へ変更しております。

 

② 資産、負債及び純資産の状況

(資産の状況)

当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度に比べ522,506千円増加し、6,175,564千円となりました。これは主にカナミッククラウドサービスの新機能追加等によりソフトウエアが49,524千円、利益を原資として現金および預金が557,524千円増加する一方で、償却によりのれんが54,966千円減少したことによるものであります。

(負債の状況)

当連結会計年度末における負債は前連結会計年度末に比べ137,358千円減少し、2,340,750千円となりました。これは主に返済に伴い長期借入金が279,087千円減少したことによるものであります。

(純資産の状況)

当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べ659,864千円増加し、3,834,813千円となりました。これは主に、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益により919,989千円増加する一方で、配当金の支払により261,096千円減少したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は当連結会計年度末には3,430,050千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、1,514,066千円(前連結会計年度は1,430,090千円の獲得)となりました。収入の主な内訳は税金等調整前当期純利益1,352,452千円、非資金損益項目である減価償却費300,926千円であり、支出の主な内訳は法人税等の支払額382,580千円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、343,844千円(前連結会計年度は842,249千円の使用)となりました。支出の主な内訳は株式会社アーバンフィットの新規店舗開設に伴う有形固定資産の取得による支出131,812千円、カナミッククラウドサービスの新機能追加に伴う無形固定資産の取得による支出228,916千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、613,676千円(前連結会計年度は2,267,283千円の使用)となりました。支出の主な内訳は長期借入金の返済による支出339,525千円、配当金の支払額261,096千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

ⅰ 生産実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

ⅱ 受注実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

ⅲ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

医療・介護クラウドプラットフォーム事業

3,364,605

118.1

健康寿命延伸事業

1,130,863

133.7

ソリューション開発事業(注)

511,998

998.0

合計

5,007,468

133.7

(注)ソリューション開発事業は、前連結会計年度の期中において株式会社Ruby開発の全株式を取得し連結子会社に含めたことに伴い2024年9月より新たなセグメントとして表記しており、前年同期の実績が1ヶ月分となっております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(財政状態の分析)

当連結会計年度末の資産は6,175,564千円となっております。資産については、主にカナミッククラウドサービスの新機能追加等によりソフトウエアが増加し、利益を原資として現金および預金が増加する一方で、償却によりのれんが減少したことによるものであります。またカナミッククラウドサービスの新機能追加、アーバンフィットの新規店舗開設等の継続的な設備投資の結果、有形固定資産及びソフトウエアが増加する傾向が続いており、当期も同様となっております。

当連結会計年度末の負債については2,340,750千円となっております。負債については、主に返済に伴い長期借入金が減少したことによるものであります。また将来のM&Aによる成長実現のための資金調達を目的とした長期借入金の増加及び親会社株主に帰属する当期純利益の増加に伴う未払法人税等の増加以外は、一定程度の水準を維持する傾向が続いております。

当連結会計年度末の純資産については3,834,813千円となっております。純資産につきましては、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益により増加する一方で、配当金の支払により減少したことによるものであります。純資産につきましては、自己株式の処分及び新株予約権の買入消却による増減以外は、親会社株主に帰属する当期純利益から配当金の支払額を除いた金額と同程度の金額が増加する傾向が続いております。

 

(経営成績の分析)

当連結会計年度の売上高は、5,007,468千円となりました。これは、主に当社グループの主力サービスであるカナミッククラウドサービス及び株式会社アーバンフィットの健康寿命延伸サービスを含むクラウドプラットフォーム事業の売上高増加によるものであります。また当期より連結の範囲に含めております株式会社Ruby開発のソリューション開発事業も増加となりました。

セグメント毎の経営成績は次のとおりであります。

 

(医療・介護クラウドプラットフォーム事業)

当セグメントのサービスごとの売上高は次のとおりであります。

ⅰ カナミッククラウドサービス

本サービスはストックビジネスをメインとしており、既存顧客のストック部分をベースに、継続的な新規顧客の獲得を続けた結果、売上高は2,852,786千円(前連結会計年度比450,640千円増、18.8%増)となりました。

ⅱ プラットフォームサービス

本サービスにつきましては、大手介護事業者からの依頼によるホームページ構築業務や公益財団法人介護労働安定センターを通じた介護事業社向けホームページの受託制作、運営・管理が安定した収益基盤となっており、また介護関連情報を提供するインターネット広告サービスや介護業界における人材マッチングサービスなどが好調に推移した結果、売上高は423,710千円(前連結会計年度比123,243千円増、41.0%増)となりました。

ⅲ その他サービス

本サービスにつきましては、大口顧客向けカスタマイズ開発の受託などにより、売上高は88,108千円(前連結会計年度比58,705千円減、40.0%減)となりました。

これらの結果売上高は3,364,605千円(前連結会計年度比515,380千円増、18.1%増)、プラットフォームサービスの人件費等の売上原価や販売費及び一般管理費が増加したことにより、セグメント利益は1,369,120千円(前連結会計年度比187,540千円増、15.9%増)となりました。

 

(健康寿命延伸事業)

当セグメントのサービスごとの売上高は次のとおりであります。

ⅰ 健康寿命延伸サービス

本サービスにつきましては、24時間営業のフィットネスジムの運営・フランチャイズ展開、及びそれらリアル店舗を通じた健康寿命延伸に資するサービスの提供をしており、既存店舗の利用者が順調に増加するとともに新規出店による店舗数増加の結果、売上高1,130,863千円(前連結会計年度285,134比千円増、33.7%増)となりました。

当セグメントは上記の1サービスのみであり、健康寿命延伸サービスの売上高から売上原価や販売費及び一般管理費を差し引いたセグメント利益は66,126千円(前連結会計年度は51,409千円のセグメント損失)となりました。

 

(ソリューション開発事業)

当セグメントのサービスごとの売上高は次のとおりであります。

ⅰ ソリューションサービス

本サービスにつきましては、前第4四半期連結会計期間より連結の範囲に含めております株式会社Ruby開発におけるWebサービス企画・開発の業績となります。当該企業のみなし取得日を2023年8月31日としたため、前第4四半期連結会計期間より当該企業の業績を連結しており、Webサービス企画・開発が好調に推移した結果、売上高は511,998千円となりました。

当セグメントは上記の1サービスのみであり、ソリューションサービスの売上高から売上原価や販売費及び一般管理費を差引いてセグメント利益は46,788千円となりました。

 

(利益の概況)

売上高が増加する一方でフィットネスジムの新規出店に伴う運営費の増加や前第4四半期連結会計期間より連結 の範囲に含めた株式会社Ruby開発の売上原価が計上されたことにより、売上原価が前連結会計年度に比べ783,032千円増加し1,935,167千円となりました。この結果、売上総利益は3,072,301千円(前連結会計年度比477,975千円増、18.4%増)となりました。また、前第4四半期連結会計期間より株式会社Ruby開発の業績を連結し当該企業の販売費及び一般管理費が加わったことにより、販売費及び一般管理費が前連結会計年度に比べ134,900千円増加し1,633,145千円となりました。この結果、営業利益は1,439,155千円(前連結会計年度比343,075千円増、31.3%増)となりました。

営業外収益は保険解約返戻金が発生したこと等により前連結会計年度に比べ6,737千円増加し23,717千円となり、営業外費用は借入金に対する支払利息の増加やリース解約損が発生したこと等により前連結会計年度に比べ8,832千円増加し14,880千円となりました。この結果、経常利益は1,447,993千円(前連結会計年度比340,981千円増、30.8%増)となりました。車両運搬具や株式会社Ruby開発が保有していた株式売却により特別利益が発生する一方、フィットネスジム1店舗を対象とした減損損失や子会社の本社移転費用に係わる特別損失が発生しました。

これらの結果、税金等調整前当期純利益は1,352,452千円(前連結会計年度比248,217千円増、22.5%増)、法人税等合計が前連結会計年度に比べ91,328千円増加し432,462千円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は919,989千円(前連結会計年度比156,888千円増、20.6%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループにおける資金需要の主なものは製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用による運転資金及び設備投資資金であります。当社グループの資金の源泉は主として営業活動によるキャッシュ・フローによる資金調達となります。

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、金融市場の状況を鑑み実施した新株予約権付社債の償還を主な要因として、現金及び現金同等物の増減額が557,524千円の使用となりました。

当社グループは十分な水準の手元流動性を確保しております。今後の事業展開やM&Aなどに伴う資金調達については当連結会計年度において達成したと考えております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案して合理的と考えられる金額を計上しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、見積もった数値と実際の結果は異なる場合があります。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、特に以下の会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断等に影響を及ぼすと考えております。

 

・固定資産の減損

固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。

固定資産の減損の兆候の判定及び回収可能価額の算定の前提となる将来キャッシュ・フローが、将来の不確実な経済状況の変動による影響を受け、翌連結会計年度以降の固定資産において減損損失が発生する可能性があります。

 

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは高齢化社会に求められる医療・介護分野においてICTによる地域包括ケアの実現に寄与するために、多職種間連携を可能とする当社システムを医療・介護業界全体のプラットフォームとして提供してまいりました。

今後は医療・介護のみならず健康も含めた医療・介護・健康を包括したヘルスケア・ヘルステック企業として、ICT、リアル店舗双方から得たビッグデータの解析を通じて医療・介護分野における地域連携の更なる推進と、有益なソリューションの提供に取り組んでまいります。

当社グループは収益性を重視する観点から「営業利益」を目標数値としております。当連結会計年度の目標1,500,000千円に対する実績は1,439,155千円(達成率95.9%)となりました。これは「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載した要因によるものであります。

翌連結会計年度は1,700,000千円(当連結会計年度実績比13.3%増)を目標とし、地域連携の強化による医療・介護事業者への営業を進めるとともに、国や自治体と一体となった事業を進めることにより業績を伸ばしてまいります。

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、在宅医療・看護・介護・ヘルスケア分野の連携を実現する情報ネットワーク基盤の強化を目的として研究開発を行っております。

なお、上記研究開発活動は前連結会計年度以前の支出時に全額費用計上しているため、当連結会計年度における研究開発費は計上しておりません。