第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、創業以来永きにわたり、創業製品である消火器に加え、高圧ポンプ技術、2サイクルガソリンエンジン技術の三つをコア・コンピタンスとして、農林業用機械・緑化管理機器、産業機械・環境衛生機器、防災関連の分野において、生産性、安全性、快適性の向上を目指した製品、サービスを提供することにより、社会に貢献してまいりました。その間、変わることなく持ち続けてきたのが、当社グループの社是である「誠意をもって人と事に當ろう」という精神です。これからもこの精神を変えることなく、三つのコア技術をさらに深めながら新しい用途開発を追求・開発し企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、2022年10月から2027年9月までの5年間を対象とする「第8次中期経営計画」において、2027年9月期の連結売上高48,000百万円、営業利益2,800百万円、自己資本利益率(ROE)7.5%以上を経営指標として掲げて、成長戦略の推進と収益力の向上に努めております。

 

(3)会社の経営環境及び対処すべき課題

 来期は第8次中期経営計画(2022年10月から2027年9月)の3年目であり、この中期経営計画の基本方針である「成長事業の創出」に向かうべく、以下5点の事項を重点課題として全社員で取り組み、単年度計画、中期経営計画の達成を目指しております。

 ・利益率の向上

 ・新規事業の確立

 ・海外市場の成長

 ・既存事業の更なる成長

 ・財務体質、人材育成、リスク管理の強化

 上記課題を達成するべく、来期につきましては以下5点に重点を置き活動してまいります。

 

① 海外市場の拡大

 昨年設立しましたインド現地法人での事業展開がようやく軌道に乗ってまいりましたので、来期につきましては更にコスト低減、品質向上を意識した量産活動に注力するとともに、インド国内への販売を拡大してまいります。タイ現地生産法人につきましては、トータルコストダウンに積極的に取り組むとともに、タイ国ならびに周辺国への販売を強化してまいります。

 米国カリフォルニア州では、大型防除機の市場調査をしてまいりました。来期は販売活動に注力し、米国の大型防除機市場においてMARUYAMAブランドを確立してまいります。また、中南米への販売拠点としてコロンビアに現地法人を設立する準備を進め、現地に根差した製品、サービスを展開してまいります。

 

② 新市場、工業用機械市場の拡大

 国内の工業用機械市場ならびにウルトラファインバブル市場を拡大すべく、支店単位でのエリアマネジメントを強化するとともに新ルート開拓に注力してまいります。また、製品開発におきましてはラインナップを拡充するとともに、市場開拓を可能とする競争力ある製品開発を実現してまいります。なお、シャワーヘッドに代表される個人消費者向け製品につきましても、来期、新製品を発売し、MARUYAMAブランドの向上に努めてまいります。

 

③ 人材活性化

 多種多様な人材の採用・育成・開発に努め、個々の能力向上・行動改善を図るとともに、人事評価制度改革や健康経営推進、部門横断活動の活性化に取り組むことにより、社員一人ひとりが心理的安全性を感じながら、働き甲斐と成長実感を得られる職場環境づくりへ繋げ、組織風土改革、従業員満足度向上を実現してまいります。

 

④ ガバナンス強化

・BCM・BCP、製品安全・内部統制・コンプライアンスについて体制を強化するとともに、全員を対象とするガバナンス関連の各種教育を実施し、組織改善に取り組んでまいります。なお、この活動を海外子会社へ展開することで、グローバルでのグループ経営管理体制の高度化を図ってまいります。

・当社グループのIT戦略を企画・遂行することを目的として当期に設立されたM-Innovations株式会社を中心に、ITセキュリティリスクの可視化と早期改善に取り組み、グループITガバナンスの強化に取り組んでまいります。

 

⑤財務体質強化・デジタル強化

・資本コスト経営を本格化し、事業戦略に即した有効投資戦略推進のため、各種管理指標分析を踏まえ製品開発投資、設備投資、IT投資などの各投資を最適化し、適切に管理推進してまいります。また、製品・部品在庫ともに管理方法を大幅に見直し、在庫削減に取り組み、キャッシュ・フローの改善を目指し、財務体質を強化するとともに、在庫管理におけるデジタル化を図ってまいります。

・海外生産子会社を含む生産部門全体で、より一層省人化・自動化を推し進めるなどトータルコストダウンに取り組み、利益率向上に努めてまいります。

・IT技術、DXを積極的に取り入れた経営目線での業務プロセス見直しを図るとともに、基幹システムの次世代化を進めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社は、サステナビリティについて経営上の重要課題と捉え、その対応についてサステナビリティ委員会からの報告を受けて取締役会にて継続的に議論を行っております。また、食、水、環境といった世界的課題解決に向け、当社のコア技術であるポンプとエンジンを更に進化させ、ESG経営の強化により成長事業を創出することで中期経営計画の達成を目指します。サステナビリティについての取り組みは、取締役会を最高決議機関とし、役員で構成されるサステナビリティ委員会に加え、次世代を担うミドルマネジメントで構成したサステナビリティ推進委員会により議論と活動推進を行います。サステナビリティに関する体制図については、39ページの「コーポレート・ガバナンス概要図」をご参照ください。

当社グループは、2024年9月に以下の通りサステナビリティ方針を制定し、当社グループの事業を通じて、食、水、環境に関わる社会課題を解決し、サステナブルな社会の構築に取り組むことを宣言しました。

 

(サステナビリティ宣言)

 丸山製作所グループは、人と地球が笑顔あふれる世界を目指して、これからも食、水、環境に関わるハード、ソフトを提供し、安心できる社会の創造に貢献します。

 社是である「誠意をもって人と事に當ろう」を実践し、以下事業分野において、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取組んでまいります。

 

・安心安全な「食」を世界に届けることに貢献する

・限りある「水資源」の保全に貢献する

・「環境」と「生命」を守るとともに、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する

 

(2)重要なサステナビリティ項目と戦略

(2つのサステナビリティ)

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① 事業を通じたサステナビリティ

環境

安心安全な「食」を

世界に届けることに貢献する

限りある「水資源」の

保全に貢献する

「環境」と「生命」を守るとともに、カーボンニュートラルな社会の

実現に貢献する

食料の安定的な生産、農業の安全性向上に貢献し、農林業の未来を見据えた製品開発を行ってまいります。

水資源を有効活用し、水を変える技術を通じて環境負荷低減に貢献してまいります。

安全で過ごしやすい快適な生活環境の創出に貢献してまいります。

製品の自動化・安全化

水を変える製品展開

環境衛生用製品展開

グローバル市場への更なる展開

水資源の再利用製品展開

製品のリサイクル

 

② 事業の土台となるサステナビリティ

取り組みテーマ

●カーボンニュートラルな社会を実現する

●省資源化の実現と資源循環への取り組み

●持続可能な調達活動・グリーン調達の取り組み

取り組みテーマ

●多様な人材の能力開発と働き甲斐を実現する

●製品の品質と安全性の向上

●サプライチェーンマネジメントの強化

取り組みテーマ

●コーポレートガバナンスの強化

●リスクマネジメントの強化

 

(マテリアリティの特定)

当社は、農林業用機械、工業用機械、防災機器の製造・販売を主な事業として、世界的な課題解決に向け取り組んでいますが、更に持続的な企業価値向上に向けマテリアリティを定めました。

ESGへの取り組みを基盤に、事業を通じたサステナビリティを進めるために社会と事業の接点における重要事項(マテリアリティ)を明確化し、ステークホルダーの皆様とベクトルを一つにして取り組むことで、更なる成長を目指します。

 

○ 特定したマテリアリティ

イ.事業を通じたサステナビリティ

区分

マテリアリティ

活動重要テーマ

No.

KPI

2030年度目標

事業

「食・水・環境」

分野の社会課題解決

安心安全な「食」を世界に届けることに貢献する

世界の食糧生産増加に貢献するスマート農業製品の開発と生産

スマート農業製品の市場導入機種の拡大

海外農業市場の機械化への貢献と販路拡大

海外売上高比率40%

限りある「水資源」の保全に貢献する

水の力を最大限引き出すMUFB技術の開発と販売

総売上高に対するMUFB売上高割合の拡大

節水が期待できる高圧ポンプの市場投入

超高圧タイプのリリース

災害時に生活用水を生成するRO装置の販売

各自治体や、災害弱者施設への導入

「環境」と「生命」を守るとともに、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する

コア・テクノロジーを活かした環境衛生機器(洗浄・除菌・消臭)の市場投入

防災関連分野、環境衛生分野市場への導入機種拡大

温室効果ガス排出を最大限低減した内燃機関の開発

新型エンジンを搭載した製品の実用化

バッテリを搭載した製品の開発と生産

バッテリ製品の市場導入機種の拡大

ロ.事業の土台となるサステナビリティ

区分

マテリアリティ

活動重要

テーマ

No.

KPI

2030年度目標

(環境)

人と環境の理想的な調和

カーボンニュートラルな社会を実現する

自社内で使用する電力の再生可能エネルギーへの転換

全体電力量の90%使用

10

自社から排出されるCO2量の削減

40%削減(Scope1)

50%削減(Scope2)

省資源化の実現と資源循環への取組み

11

生産活動により排出される廃棄物量の削減

生産高原単位、廃棄物量20%削減

12

廃消火器の回収と、消火薬剤リサイクルの継続

自社販売消火器のリサイクル薬剤使用の継続

持続可能な調達活動・グリーン調達の取組み

13

製品の有害化学物質管理の強化

サプライヤーからの有害化学物質管理のための宣言書の取得と自社内での管理体制の構築

(社会)

社会・従業員との共栄

多様な人材の能力開発と働き甲斐を実現する

14

成長機会の創造と人材育成

海外を含めたグループ各社経営幹部層へのサクセッションプラン拡大

15

多様な発想や価値観を持つ人材育成のためのDE&Iの推進

①人事制度の充実、整備

②女性採用比率の向上

③女性管理職の増加

④キャリア採用の拡大

⑤グローバル人材の確保

①柔軟な働き方ができる制度の確立

②30%以上(2027年度)

③7名以上

④30名

⑤30名

16

従業員全員が健康的に働ける環境づくりの推進

①健康経営推進

②ホワイト500認定

③有休取得率の向上

④男性育休取得率の向上

①健康経営プロジェクトによる啓蒙活動の継続

②ホワイト500認定取得

③90%(2027年度)

④50%(2027年度)

17

高度化するデジタル時代に対応できるDX、AI人材の育成

デジタル、AIスキルを身につけた人材の拡大(全社員の15%)

製品の品質と安全性の向上

18

製品安全への取組みの充実

安全で信頼性の高い製品開発、生産

重大事故とリコール件数の削減

サプライチェーンマネジメントの強化

19

CSR調達の推進

取引先のCSRアンケート実施とフォローアップの徹底

(ガバナンス)

ガバナンスの強化

コーポレートガバナンスの強化

20

法令順守とガバナンスのグローバル展開

法令に関する確認統制機能の強化と海外を含むグループ内での重大な法令違反ゼロの継続

リスクマネジメントの強化

21

災害発生時の対応力強化

各部門におけるBCP訓練実施の継続

22

情報セキュリティの強化と個人情報の適正管理

個人情報漏洩事故発生件数ゼロの継続

 

 

(「食・水・環境」分野の社会課題解決)

食料、水、温暖化、ウイルス、環境といった世界的課題解決に向け、当社のコア技術であるポンプとエンジンを更に進化させ、SDGsにつながる事業領域を将来にわたって継続的に拡大します。

世界的食糧難、水資源の活用、昨今多発している災害への対応、ウイルスへの対応、脱CO2などに対しては、当社の製品が大きく貢献できるものとの認識に立ち、ESG経営、SDGsの達成に向けた取り組みをより一層推進し、グローバル市場において社会貢献型企業であると認知いただけるよう活動を継続します。

世界的な人口増加に対応し、食料の生産性向上に向け、当社がこれまで培ってきた農業用機械と新しい技術により貢献

ウルトラファインバブルや逆浸透膜などを活用し、水の力を最大限に発揮する製品開発で水資源保全に貢献

環境

農業で使用する化学肥料の削減や二酸化炭素排出量の削減に向けたエンジンなどの開発を通じて環境保全に貢献

 

(人と環境の理想的な調和)

当社グループは農林業向け機械の開発・製造を通じて社会へ貢献してきましたが、気候変動など地球環境保全が農林業に与える影響は大きく、重要な経営課題であることを認識し、積極的に取り組んでいます。

 

① CO2排出量50%削減へ向けた取り組み

当社では、2030年長期経営ビジョンの目標の一つにCO2排出量50%削減(2020年9月期比、Scope2)を掲げています。2022年9月期、当社の主力工場である千葉工場(千葉県東金市)及び2番目に生産量の多いグループ企業である日本クライス株式会社(千葉県東金市)では、使用する電力を再生可能エネルギー由来の電力へ変更しました。

これにより、自社の生産活動により発生するCO2排出量の40%相当(約2,300t-CO2)を削減できました。今後は、西部丸山株式会社(岡山県苫田郡鏡野町)に太陽光発電設備を導入します。引き続き全拠点において、CO2削減に向けた取り組みを進めていきます。

 

② 環境への取り組み

 ・環境方針

地球温暖化、資源枯渇、環境汚染などの地球環境問題が依然として社会の深刻な問題となっています。当社グループは「誠意をもって人と事に當ろう」の社是、「人と環境の理想的な調和をめざして」のテーマのもと、地球環境保全活動にも積極的に取り組んでいます。

 

丸山製作所グループの環境方針

 

株式会社丸山製作所は、「農業用機械、工業用機械、消防用機械」などを提供する事業を通じて、より豊かな社会に貢献するとともに地球環境負荷の低減に積極的に取り組みます。

 

・環境管理のPDCAサイクルを確立・運用し、環境パフォーマンス向上を目的に継続的改善を図ります。

・行政、利害関係者等からの環境関連の規制・規則・協定などを順守します。

・廃棄物の削減及びリサイクルを促進し、省資源・省エネルギー化を図り、またそれら環境に配慮した製品

 開発に取り組むことで地球温暖化、資源枯渇、環境汚染の低減及び環境保護に努めます。

・従業員に対し、環境意識の向上のため、啓蒙活動を継続的に行います。

 

③ 小型軽量化を実現した世界初の2ストローク水素エンジンの安定運転に成功

カーボンニュートラル社会の実現に向け、小型屋外作業機においても電動化が進んでいます。しかし、高負荷で長時間の作業が必要なプロ向け作業機では過酷な使用条件が求められるため、すべてを電動に置き換えることは困難と言われています。

当社で安定運転に成功した小型2ストローク水素エンジンは、エンジンを真横や逆さにしても問題のない作業性と、水素を燃料とすることで排出するガスがほぼ水となり、作業機のクリーン化を実現し、プロ向けのニーズに応えています。

2024年9月期には、屋外作業が可能な試作機が完成しました。今後、水素エンジンを用いた実作業での信頼性、耐久性の検証を行う予定です。また、運用が可能な水素充填方法の検討とリサーチを進めて販売の可能性を探ってまいります。

 

④ 廃消火器の回収・リサイクル

当社グループは、全国に指定引取場所を22拠点、処理施設を3拠点設け、一般社団法人日本消火器工業会の廃消火器リサイクルシステムの回収・処分方法に則って回収・処分を行っています。当社グループの廃消火器回収率は90%以上に達するほか、薬剤のリサイクル率は95%以上を継続し、新しい消火器の原料として活用しています。

また、当社敷地内に新たに消火薬剤の回収・製造を行う工場を建設し、稼働に向け準備中です。新工場では従来の工場よりも天井を高くし、作業環境と作業性の向上を図っています。

 

⑤ TCFD宣言

イ.TCFDへの取組方針

当社グループは、「食・水・環境」分野の社会課題解決をマテリアリティの一つとしており、世界規模で大きく影響を及ぼす気候変動への対応を重要な経営課題、大きな社会的責任として受け止めております。

「誠意をもって人と事に當ろう」の社是のもと、人と環境の理想的な調和をめざして、グループ一丸となって取り組んでまいります。

 

ロ.ガバナンス

事業を通じた脱炭素社会への取り組みは、取締役会を最高決議機関とし、役員で構成されるサステナビリティ委員会に加え、次世代を担うミドルマネジメントで構成したサステナビリティ推進委員会により議論と活動推進を行います。

自社のGHG排出量の実態を正確に把握し、営業・生産・管理の各本部が相互に連携し、気候変動に関する様々な課題に誠意をもって取り組んでいきます。その輪は、お取引先様を始めとした全てのステークホルダーへ広げ、展開をしてまいります。

 

ハ.戦略

気候変動がもたらす様々な事象は、短中期・長期的なリスクとして年々顕在化されていきます。

「食・水・環境」分野の社会課題解決をマテリアリティとする当社グループでは、事業活動である農業・工業・防災製品の製造販売を通じて、世界規模の社会問題である気候変動へ「果敢な行動と挑戦」をしていきます。

気候変動に関する取り組みの為、「1.5℃/2℃シナリオ」、「4℃シナリオ」の外部シナリオを選定し、カーボンニュートラルの目標が掲げられた2050年に向けた事業への影響度の分析を実施しました。

分類

参照した

外部シナリオ

シナリオ

説明

シナリオ分析の概要

社会情勢

自然環境

市場動向

1.5℃/2℃

シナリオ

IPCC

AR6

SSP1-1.9

社会・市民の意思により2℃以下の温暖化の抑制を達成する

○株主・顧客の環境志向が高まる

○政府から気候関連の法規制が強化される

○法規制により企業・個人への負担が増加する

○法規制へ対応できない企業は淘汰される

○気温の上昇による自然災害が増加する

○農作物の品種や種類などが変容していく

○温暖化により農地が移り変わる

○脱(低)炭素製品の需要が増加する

○脱(低)炭素対応への設備投資が増加する

○防災意識が高まり、防災製品の需要が増加する

○原材料、エネルギーコストが増加する

IPCC

AR6

SSP1-2.6

4℃

シナリオ

IPCC

AR6

SSP5-8.5

経済成長が優先され温暖化が4℃を超えてしまう

○各国・各社の急激な経済成長がおき、貧富の差がさらに大きくなる

○エネルギー資源が枯渇する

○自然災害が激増、農業従事者・農地が激減する

○農作物の収穫量が大幅に減少する

○生態系がくずれ、生物や自然が減少する

○食糧難に陥る

○防災製品の需要が増加する

○減少した農作物の収穫量を補うべく、生産性向上のための製品の需要が増加する

○原材料、エネルギーコストが増加する

 

 

ニ.リスクと機会創出

日本政府によるカーボンニュートラルの目標が掲げられた2050年時点における、事業への影響度分析を行いました。

 

[気候関連リスク] 低炭素経済へ向かう企業のリスク

 

大分類

小分類

指標

シナリオ及びリスク

求められる対応や同行

2℃影響

4℃影響

移行リスク

政策

/規制

①炭素税の導入・上昇

コスト

直材、生産、輸送、幅広く影響しコストが上昇

CO2を排出しない手法、排出削減の取組

②CO2排出削減の法規制

設備投資

CO2排出の規制、省エネへの取り組みにより設備投資が増加

設備更新やプロセスの最適化による生産性の向上

技術

③排気ガス規制への対応

コスト

規制強化により、製品開発および部品に関するコストの増加

新たな技術の導入と開発、他社との協業

④低炭素技術への入れ替え

設備投資

環境対応材料への変更によるコスト増加

設備更新やプロセスの最適化による生産性の向上

市場

⑤原材料の高騰

コスト

コストの増加や調達難

部品の共通化や内製化の促進

⑥消費者の行動変化

収益

気候変動による環境負荷を考慮した製品の価格高騰に伴う需要の減少

環境配慮製品のシェアの拡大

⑦国内労働人口の減少

収益

農業従事者の減少

農業規模の集約・企業化による機械の大型化、自動化の需要増

評判

⑧ステークホルダーの評判変化

資本

気候変動への対策が不十分な場合、投資家の評判悪化、資金調達が困難

ESGレポートの公開と整備

物理的リスク

急性

(短・中期)

⑨水ストレスによる生産量の減少

コスト

水不足により水の確保が困難となり、価格が高騰

ポンプ技術のさらなる付加価値上昇

⑩異常気象の激甚化

収益

暴風雨などの異常気象の頻発で、被害を受ける産地が多発

農業分野における防災製品の開発

慢性

(長期)

⑪平均気温の上昇

収益

作物の品質劣化や収量低下が発生

機械による品質向上と収穫量増の提案

⑫農業従事者の生産性低下

コスト

気温上昇により労働生産性が低下、コスト増加による価格高騰

機械による自動化、生産性向上の提案

 

 

[気候関連機会] 気候変動に関連する経営改革の機会

大分類

小分類

指標

見込める機会

1.5/2℃影響

製品

環境負荷を考慮した製品への更新

収益

環境配慮製品需要拡大によるシェアアップ

農業人口減少による

省力・高効率製品の需要増加

収益

高効率な大型・IoT製品の需要増による販売の拡大

市場

低炭素製品の需要増加

収益

低炭素製品の需要増加による収益増

収益

次世代エンジンの市販・普及

評価

気候変動対策が法令や株式市場での

必須項目となる

資本

気候変動へ事業で取り組む会社が評価される

資源

水資源の再生・活用

収益

MUFB・RO製品の普及促進

 

ホ.指標・目標

当社グループでは、2050年のカーボンニュートラルを目指して、事業を通じた活動によるGHG排出量の削減を目標に、丸山グループ一丸となり取り組んでいきます。

具体的には、GHG排出量削減に向けた取り組みとして、Scope3において、CO2削減に向けた実施フローを策定し、取引先と共有していきます。また、自社開発を行っている環境配慮型エンジンを製品に実装し、既存エンジンから排出されているGHG排出量を削減いたします。

 

項目

内容

基準

目標

2030年

GHG排出量(総量)

Scope1

2020年

40%減

Scope2

2020年

50%減

 

項目

取り組み

GHG排出量削減に向けた取り組み

Scope3において、CO2削減に向けた実施フローを策定し、取引先と共有してまいります。

また、自社開発を行っている環境配慮型エンジンを製品に実装し、既存エンジンから排出されているGHG排出量を削減いたします。

 

(社会・従業員との共栄)

当社グループは社会の一員として、持続的成長には、すべてのステークホルダーとの対話が必要であると認識しています。特に、成長の担い手となる従業員の力が不可欠です。そのため、当社グループでは多様な人材が長く活躍し続けられる労働環境と、一人ひとりの創造力とチームワークを最大限に高める企業風土の確立に努めています。

 

① 人的資本に関する考え方・戦略

当社グループは、従業員に能力を発揮してもらうために新入社員を含む全従業員を対象とした研修体制を構築しています。

当社グループでは、人材の活性化、人材育成・教育を目的に2017年10月に人材育成委員会を発足させ、1~2カ月に1回程度の開催頻度で、体系的な従業員の育成に向けた取り組みを進めています。その中でも部門別のキャリア育成体系の確立やキャリアプランに則したコア人材育成への取り組みの具体化を進めています。

更に、働き方改革、同一労働・同一賃金、育児・介護休業などへの対応を図るため、2020年10月から人事制度改革に着手し、従業員満足度調査の結果に基づき規程類の見直しや労働協約に関わる様々な案件について適宜、協議を進めています。具体的には、能力や会社への貢献度により賃金が決まる属人的な要素を排除した仕組みの導入や65歳定年制を導入するなど、サステナブルな成長の実現を目指しています。

 

 

② 健康経営

当社グループは、社会になくてはならない企業を目指し、「食・水・環境」の各分野の課題解決に向け、創業以来、全従業員と歩んできました。ブランドステートメントである「次の100年を創る -All for

the Future-」を実践し、より良い社会を創るには、従業員とその家族が健康で、働き甲斐を実感できることが必要不可欠と考えています。

当社グループは、健康経営を通じて従業員が長く安心して、活き活きと働き続けられる企業を目指し、従業員の健康づくりを推進しており、経済産業省と日本健康会議が共同で選出する「健康経営優良法人認定制度」の大規模法人部門で「健康経営優良法人2024」に2021年以降3年連続で認定されました。

・推進体制

代表取締役社長を健康経営推進最高責任者(CHO)とし、関連部署及び健康保険組合、産業医と連携し、健康経営に取り組んでいます。

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③ 女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画

男女ともに全従業員が活躍できる雇用環境の整備を行うため、次のとおり行動計画を策定しています。

 

イ.計画期間

2021年10月1日から2026年3月31日までの4年6カ月

 

ロ.目標と取組内容及び実施時期

目標1(職業生活に関する機会の提供に関する目標):採用者に占める女性の割合を30%以上とする。

実施時期

取り組み内容

2021年10月~

女子学生の応募を増やすため、ホームページの採用ページの内容を見直す。

2022年10月~

女性の採用拡大に向けた、インターンシップを実施する。

2023年4月~

女子学生を対象とした会社説明会を実施する。

2024年10月~

技能職女性育成研修を実施する。

 

目標2(職業生活と家庭生活との両立に関する目標):全社員の有給休暇取得率を75%以上とする。

実施時期

取り組み内容

2021年10月~

全従業員に1人1年間で8日以上の有給休暇取得促進を促す。

2022年10月~

四半期ごとの有給休暇取得日数を上司に情報提供する。

2023年10月~

有給休暇取得状況の結果を振り返り取得率向上計画を策定する。

2024年10月~

有給休暇取得率目標達成に向けた計画の見直しを行う。

2025年10月~

有給休暇取得率向上のための業務の削減案を検討する。

 

(コーポレート・ガバナンスの強化)

当社では、「誠意をもって人と事に當ろう」という「社是」にあるように、誠実に社会的責任を果たすことで、社会から広く信頼を得ることを経営の最重要課題として取り組んでいます。そして当社では、株主・お客様・お取引先様・地域社会・従業員などの立場を踏まえた上で、透明・公正・果断な意思決定を行うために、コーポレート・ガバナンスの実効性を高め、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を積極的に推進しています。

(3)リスク管理

サステナビリティに関する基本方針やマテリアリティの特定、マテリアリティの管理のため、サステナビリティ関連のリスクと機会について分析し、対応策について検討を行ってまいります。リスクと機会についてはサステナビリティ委員会にて定期的に確認を行い、必要に応じてマテリアリティ及び指標・目標を見直すなど適切に対応いたします。その他にも、サステナビリティ推進委員会を定期的に開催し、取り組み事項に関するリスクと機会について議論することで、リスク管理体制を強化してまいります。

気候変動に関するリスクの内容については、18ページの「ニ.リスクと機会創出」をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業、業績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクは、次のとおりです。かかるリスクの要因によっては、当社グループの事業、業績、株価及び財務状況等に著しい影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 経済状況

当社グループの主要な事業である農林業用機械部門では、減反政策の見直し等の政府が策定する農業政策方針の内容により、当社製品に対する需要が低下した場合は、当社グループの製品売上高が減少し業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、工業用機械部門、その他の機械部門においても、景気動向の悪化により民間設備投資、公共投資等が減少した場合は、当社グループの製品売上高が減少し業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

② 海外情勢

当社グループは、海外市場の拡大を図っており、現在では当社グループの売上高の約3割を海外市場に依存しているほか、タイに販売拠点及び生産拠点、ベトナムに研究開発拠点、アメリカ、中国に販売拠点をそれぞれ設けております。これらの国及び展開先各国における予期せぬ経済情勢や政治体制の変化により、市場の状況が悪化し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、為替レートの変動リスクを軽減する手段を講じておりますが、海外売上高の約4割がアメリカ市場への輸出であることから、特に対ドルレートが大幅に円高へ振れた場合に、当社グループの業績及び財務状況に著しい影響を及ぼす可能性があります。

③ 天候、災害

当社グループの製品売上高の7割以上を農林業用機械部門が占めているため、台風、冷夏、地震等の自然災害の発生により、農業施設、農産物等が被害を受け農業収入が減少した場合には、農家の購買意欲の減退により売上高が減少し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

自然災害の発生により当社グループの拠点の設備等が大きな被害を受け、その一部又は全部の操業が中断し、生産及び出荷に支障をきたし、その影響が長期化する場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループに被害が無い場合でも、仕入先工場の被災による生産能力の低下により、原材料等の入荷遅延や調達困難が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

④ 資金調達、運用

当社は、運転資金の効率的な調達、運用を行うため、取引銀行7行とコミットメントライン契約、タームローン契約及びe-Noteless利用契約(電子記録債権買取)を締結しております。これらの契約には財務制限条項があり、各年度の決算日の連結及び単体の貸借対照表における純資産の部の金額を基準となる決算日の連結及び単体の貸借対照表における純資産の部の金額の75%以上に維持すること、各年度の決算日の連結及び単体の損益計算書における経常損益が2期連続して損失にならないようにすることの取り決めがなされております。

これらに抵触した場合、該当する借入金の一括返済及び契約解除の恐れがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 特定販売先への依存

当社グループの売上高の約3割を主要販売先上位3社に依存しております。当社グループと主要販売先との取引関係は長年にわたり安定的に継続しており、今後とも良好な関係を維持していく予定ですが、何らかの理由により当該会社との関係に変化が生じた場合、当社グループの経営成績、財政状態及び株価等に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 棚卸資産の評価

当社グループは、販売見込みや需要動向に基づき生産販売計画を策定し、原材料の調達及び調達のリードタイム短縮、生産販売計画の精度向上による棚卸資産の削減に努めておりますが、季節性・天候の変動や他社との競合等により需要が縮小し販売計画を下回ると、余剰・滞留在庫が生じる場合があります。その棚卸資産の正味売却価額が帳簿価額よりも下落するような収益性の低下や長期滞留となった場合には棚卸資産の評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 原材料、部品調達

当社グループでは複数購買、グローバル調達等により安定した原材料、部品の供給確保に努めておりますが、原材料、部品価格の高騰や災害などにより原材料、部品供給が不安定になった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 品質保証

当社グループでは、『お客様から「次も丸山」と言われる会社になる。そのためには品質の向上、無駄の排除、スピードアップによって、お客様に品質のよい製品とサービスを提供します。』という品質方針を定め、全従業員が一丸となり顧客のニーズと期待に対して満足する製品を設計・開発及び製造し、提供するための活動を展開しており、また、万一に備え製造物責任保険に加入しております。しかしながら、生産過程において全ての製品について欠陥が無いという保証はなく、さまざまな要因により欠陥が生じる可能性があり、加入している製造物責任保険で補償されない賠償責任を負担する可能性もあります。これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、不測の事態が発生した場合には、法令及び社内規程に従い、品質保証部門により、リコールを含めた必要な措置を迅速に講じてまいります。

⑨ 人材の確保

当社グループの継続的な成長には、優秀な人材を確保し、育成することが重要な要素の一つでありますが、著しい人材採用環境の悪化や人材流出の増加が継続した場合は、当社の人材確保が計画通りに進まず、将来の成長に影響が及び、中・長期的に当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 知的財産権

当社グループは、事業活動を行う上で他社との差別化を図るため、技術やノウハウ等を蓄積しておりますが、第三者が当社の知的財産を不正に使用した類似製品の製造・販売、当社グループのロゴマークの使用等を防止できない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは第三者の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っておりますが、結果として知的財産権を侵害したとして第三者から訴訟を提起された場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑪ コンプライアンス

当社グループは、企業行動規範として「丸山グループ・コンプライアンスマニュアル」を定め、コンプライアンス体制を整備するとともに、研修会などの実施を通じて法令遵守及びコンプライアンスの強化に努めております。しかし、万一、法令やコンプライアンス等に違反する行為が発生した場合に監督官庁からの処分や事業活動の制限、あるいは訴訟の提起、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑫ 感染症の拡大

当社グループは、感染症が拡大した場合は、さらなる拡大防止のため、従業員及び取引先の安全を第一に考え、時差出勤、在宅勤務(テレワーク)の推進、テレビ会議の導入等の対応を実施しております。これら各種対応の継続的な実施により事業活動への影響の低減を図っておりますが、当社の製造拠点や調達先、営業所において感染が拡大し、工場の稼働停止やサプライチェーンの停滞に起因する生産減、営業活動の自粛等により事業活動に支障をきたす事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑬ 情報セキュリティ

当社グループは、事業活動の過程で取得した技術情報や営業に関する機密情報、及び個人情報について厳重な管理を実施しています。

しかしながら、自然災害や予期しないサイバー攻撃、又はコンピュータウイルスの侵入を原因とする不正アクセス等による情報漏えいや改ざん及びシステムの障害の発生、並びに従業員の故意又は過失により情報が流出、これらの情報が悪用された場合における損害賠償の責任等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

そこで当社グループは、適切な情報セキュリティ体制を整備し、必要かつ十分なセキュリティ対策を講じるとともに、従業員に対する教育を行っております。

なお、当該リスクが発生した際は、策定している事業継続マネジメント(BCM)に従い、その要因・経緯を速やかに把握し適切な対処を実行する体制を構築するとともに、必要に応じて被害内容を開示することで、二次被害の最小化と信頼の回復に努めてまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

(財政状態の状況)

当連結会計年度末における資産総額は38,706百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,972百万円増加いたしました。これは主に、売掛金の減少(726百万円)はありましたが、現金及び預金の増加(456百万円)、電子記録債権の増加(837百万円)、建物及び構築物の増加(485百万円)、機械装置及び運搬具の増加(931百万円)によるものであります。

当連結会計年度末における負債総額は18,876百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,608百万円増加いたしました。これは主に、電子記録債務の減少(1,747百万円)、長期未払金の減少(353百万円)はありましたが、短期借入金の増加(1,504百万円)、契約負債の増加(280百万円)、長期借入金の増加(743百万円)によるものであります。

当連結会計年度末における純資産総額は19,830百万円となり、前連結会計年度末に比べ364百万円増加いたしました。これは主に、自己株式の取得による減少(431百万円)はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによる利益剰余金の増加(274百万円)、時価の上昇によるその他有価証券評価差額金の増加(285百万円)によるものであります。

 

(経営成績の状況)

当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の解除による需要回復が一巡しつつあり、景気回復は緩やかな動きとなりました。しかしながら、地政学的緊張の長期化に伴う資源・エネルギー価格の高騰や、各国でのインフレ抑制を目的とした金融引き締めが経済成長を鈍化させる懸念をもたらしています。加えて、為替相場の変動や物価上昇など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

当社グループが主力とする農林業用機械業界では、国内では農業資材費や原材料費の高騰に伴う価格改定の影響が見られ、海外では、コロナ下の巣ごもり需要が一段落したことによる反動減により、出荷・生産実績が減少しました。

このような状況の中、当社グループは、国内では大規模区画農業に対するハイクリブーム「BSA-2000C」の全国展開に向け、各拠点に実演機を配置し、展示会での出展や実演を通じた販路拡大に注力しました。また、ステレオスプレーヤにおきましては、動画配信や各地での講演会を通じて、安全啓蒙活動を強化しました。工業用機械分野では、営業拠点に専任担当者を増員し、工業用ポンプや汎用洗浄機の実演と販売活動を強化しました。また、ウルトラファインバブル市場の拡大を目指し、農業用水配管へウルトラセル導入を進めるとともに、BtoC市場向けにシャワーヘッド「habiller(アビリア)」の創業130周年記念キャンペーンやSNSを活用した販売促進を展開し、市場拡大のスピードを加速させました。海外では、当社グループの強みである大型防除機などの農林業機械の販売を、韓国をはじめとするアジア市場で拡大しました、加えて、タイ国市場のニーズに応える新機種のエンジン刈払機を発売し、販売強化を図りました。また、ウルトラファインバブル発生ユニットを海外の飲食店へ導入するなど、新たな販路拡大にも積極的に取り組みました。

これらの結果、国内におきましては、ホームセンター流通では刈払機は増加しましたが、アグリ流通において動力噴霧機が減少した結果、国内売上高は29,962百万円(前期比1.3%減)となりました。また、海外におきましては、シェールオイル採掘用のポンプは増加しましたが、中南米向けの動力噴霧機や刈払機、北米及び欧州向けの工業用ポンプが減少した結果、海外売上高は10,044百万円(前期比9.2%減)となり、売上高合計は40,006百万円(前期比3.4%減)となりました。

利益面では、一部商品の値上げや大型機械の販売増による売上高の増加などはありましたが、原材料費の高騰による製造原価の増加や販売費、固定費の増加などにより、営業利益は1,168百万円(前期比32.6%減)、経常利益は1,109百万円(前期比35.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は597百万円(前期比51.0%減)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

・農林業用機械

国内におきましては、アグリ流通において動力噴霧機は減少しましたが、ホームセンター流通において刈払機は増加いたしました。また、海外におきましても、北米向けの刈払機が増加したことにより、国内外の農林業用機械の売上高合計は30,238百万円(前期比0.6%増)、営業利益は1,126百万円(前期比2.3%増)となりました。

・工業用機械

国内におきましては、洗浄機が減少いたしました。また、海外におきましても、北米及び欧州向けの工業用ポンプが大きく減少したことにより、国内外の工業用機械の売上高合計は6,817百万円(前期比20.8%減)、営業利益は1,439百万円(前期比28.0%減)となりました。

・その他の機械

消防機械を主なものとする、その他の機械の売上高は2,759百万円(前期比7.2%増)、営業利益は100百万円(前期比2.2%増)となりました。

・不動産賃貸他

不動産賃貸他の売上高は423百万円(前期比11.0%減)、営業利益は235百万円(前期比18.2%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ428百万円増加し、4,431百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は214百万円(前期比499百万円増)となりました。これは、前連結会計年度に比べ、棚卸資産の増加はありましたが、売上債権の減少などによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は1,454百万円(前期比564百万円減)となりました。これは、前連結会計年度に比べ、有形固定資産の取得による支出の減少などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、得られた資金は1,504百万円(前期比115百万円減)となりました。これは、前連結会計年度に比べ、自己株式の取得による支出が増加したことなどによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

農林業用機械

21,495

101.3

工業用機械

6,358

88.7

その他の機械

1,074

94.7

合計

28,928

98.0

(注) 金額は、各機種ごとの当該期間中の平均販売価格によって計算しております。

 

b.受注実績

 農林業用機械の一部を除き、原則として、受注生産を行っておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

農林業用機械

30,238

100.6

工業用機械

6,817

79.2

その他の機械

2,759

107.2

不動産賃貸他

423

89.0

調整額(セグメント間取引)

△232

合計

40,006

96.6

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱クボタ

4,453

10.8

4,596

11.5

全国農業協同組合連合会

4,860

11.7

4,367

10.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(財政状態)

・資産

当連結会計年度末における資産総額は38,706百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,972百万円増加いたしました。

流動資産は23,426百万円となり、前連結会計年度末に比べ910百万円増加いたしました。これは主に、売掛金の減少(726百万円)はありましたが、現金及び預金の増加(456百万円)、電子記録債権の増加(837百万円)によるものであります。

固定資産は15,280百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,061百万円増加いたしました。これは主に、建物及び構築物の増加(485百万円)、機械装置及び運搬具の増加(931百万円)によるものであります。

・負債

当連結会計年度末における負債総額は18,876百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,608百万円増加いたしました。

流動負債は16,033百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,031百万円増加いたしました。これは主に、電子記録債務の減少(1,747百万円)はありましたが、短期借入金の増加(1,504百万円)、契約負債の増加(280百万円)によるものであります。

固定負債は2,842百万円となり、前連結会計年度末に比べ576百万円増加いたしました。これは主に長期未払金の減少(353百万円)はありましたが、長期借入金の増加(743百万円)によるものであります。

・純資産

当連結会計年度末における純資産総額は19,830百万円となり、前連結会計年度末に比べ364百万円増加いたしました。

これは主に、自己株式の取得による減少(431百万円)はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによる利益剰余金の増加(274百万円)、時価の上昇によるその他有価証券評価差額金の増加(285百万円)によるものであります。

 

(経営成績等)

・売上高

当連結会計年度の売上高は、国内におきましては、ホームセンター流通では刈払機は増加しましたが、アグリ流通において動力噴霧機が減少した結果、国内売上高は29,962百万円(前期比1.3%減)となりました。また、海外におきましては、シェールオイル採掘用のポンプは増加しましたが、中南米向けの動力噴霧機や刈払機、北米、欧州向けの工業用ポンプが減少した結果、海外売上高は10,044百万円(前期比9.2%減)となり、売上高合計は40,006百万円(前期比3.4%減)となりました。

・売上総利益

当連結会計年度の売上総利益は、一部商品の値上げや大型機械の売上増加はありましたが、原材料費の高騰による製造原価の増加などにより、前連結会計年度に比べ261百万円(2.5%)減益の10,311百万円となりました。

・営業利益

当連結会計年度の営業利益は、売上総利益の減少及び販売費の増加などにより、前連結会計年度に比べ564百万円(32.6%)減益の1,168百万円となりました。

・経常利益

当連結会計年度の経常利益は、営業利益の減少及び支払利息や金融関係手数料の増加などにより、前連結会計年度に比べ617百万円(35.7%)減益の1,109百万円となりました。

・税金等調整前当期純利益

当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、経常利益の減少及び固定資産売却益の減少などにより、前連結会計年度に比べ657百万円(37.3%)減益の1,106百万円となりました。

・親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益の減少などにより、前連結会計年度に比べ621百万円(51.0%)減益の597百万円となりました。

 

 なお、セグメント別の売上高の分析は、4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりであります。

 

② 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための原材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備の新設、更新に係る投資であります。

 これらの必要資金は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入れ、債権流動化により賄うことを基本方針としております。

 また、当社グループは、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行7行と総額6,150百万円のコミットメントライン契約、総額3,200百万円のタームローン契約及び総額4,000百万円の当座貸越契約を締結しており、この契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高は6,774百万円であり、また、当連結会計年度末において、現金及び現金同等物を4,431百万円保有しており、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないものと認識しております。

 なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計方針及び見積り

 当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社は連結財務諸表作成において、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的であると考えられる要因を考慮したうえで見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2022年10月から2027年9月までの5年間を対象とする「第8次中期経営計画」において、2027年9月期の連結売上高48,000百万円、営業利益2,800百万円、自己資本利益率(ROE)7.5%以上を経営指標として掲げております。

 2年目となる当連結会計年度におきましては、連結売上高40,006百万円、営業利益1,168百万円、ROE3.0%となりました。

 

5【経営上の重要な契約等】

 特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社技術部門は、経営方針でもある「スピードアップで挑戦を!」の達成に向け、基礎技術の研究を推進するとともに、グループ各社が一体となり、新規及び既存分野の製品開発を行っております。特に海外に向けた製品の展開、スマート農業技術の開発に力を入れた積極的な研究開発活動を行っております。

 なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は497百万円であり、その他に製品の改良・改造に使用した650百万円を製造経費としており、研究開発関連費用は1,147百万円であります。

 開発活動の概要は次のとおりであります。

 

① 農林業用機械部門

・農業ハウス内の農薬噴霧を自動化するスマートシャトルを開発し、北海道ボールパークFビレッジ内の株式会社クボタ農業学習施設(アグリフロント)にて運用を開始しました。

・JA全農と当社女性社員が参画して商品企画された、女性向けバッテリー噴霧機「きりひめPEACH(LSB110Li-JA)」を開発しました。

・カーボンニュートラルに向けた水素利用研究の成果として、ゼロエミッションの小型作業機用2サイクル水素エンジンの安定運転に成功しました。実用化に向け研究開発を継続しています。

・ウルトラファインバブル製品として、育苗など農業用途に向けた散水シャワーノズル「TeQ SHOWER(テックシャワー)」を開発しました。

・農業機械の更なる安全装備について、関係省庁、業界と連動して対策の検討を継続しています。

・当部門に係る研究開発関連費用は、986百万円となっております。

 

② 工業用機械部門

・純水洗浄対応ポンプとして、MODEL1061XDを開発しました。

・掘削用の油圧モーター直結ポンプMODEL3560T14、MODEL2565T13を開発しました。

・清掃業者向けに、エアコンの空調効率が改善されるリチウムイオンバッテリー搭載のエアコン洗浄機を開発しました。

・プール残水や海水などから生活用水を生成できるRO装置の開発を継続しています。

・当部門に係る研究開発関連費用は、140百万円となっております。

 

③ その他の機械部門

・AC電源不要でポータブルな消防用ホース耐圧試験機EBM-4065Mを開発しました。

・当部門に係る研究開発関連費用は、20百万円となっております。