当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「世界中の人々を魅了する会社を創る」というビジョンを掲げております。全ての社員が誇りを持てる組織と事業の創造にこだわり、関わる人々がファンとして応援したくなるような魅力ある会社であり続けます。そして、日本を代表するグローバルカンパニーとして、世界中の人々から必要とされる存在を目指します。
また、当社は「テクノロジーによって人の可能性を拡げる事業を創造していく」という想いを込めて、当社を「People Tech Company」と再定義しております。
(2)経営戦略等
当社グループの経営戦略の現状と見通しは以下のとおりです。「Green」、「Wevox」の成長を加速させると同時に、複数の新規事業を創造し、収益化させていく方針です。
①人材紹介サービスのリプレイス(注)
当社は、「Green」を通じて、従来の人材紹介サービスのリプレイスを実現したいと考えております。日本のHR領域におけるサービスの多くは、高コスト構造に陥りやすい旧態依然とした労働集約型のビジネスモデルや、情報を囲い込むことによって価値を生み出そうとするクローズドなビジネスモデルを中心に構成されてきたと考えております。しかし、パソコン、タブレット端末、スマートフォン等の普及、ビッグデータ解析等のテクノロジーの進化、さらにはFacebookやX(旧Twitter)等のソーシャルメディアやブログを中心に個人が積極的に情報を発信し、情報のオープン化が進む現代においては、書店や小売、不動産業界等と同様に、HR領域においても、従来のサービスでは提供し得なかった本質的な価値を提供することが可能になると考えております(当社が考える本質的な価値については「第一部 企業情報 第1企業の概況 3 事業の内容 < People Tech事業 >(1)成功報酬型求人メディア「Green」」に記載の「①成功報酬型のビジネスモデル」及び「②ビッグデータの活用」をご参照ください)。
当社の「Green」は従来の人材紹介会社のように求職者と求人企業を仲介するアドバイザーを必要とせず、オンラインで転職のサポートが可能なサービスです。また、アドバイザーを雇用する必要が無い事から、従来の人材紹介会社と比較して安価な成功報酬単価を実現する事が可能となります。新型コロナウイルス感染症を含む感染症の拡大によって、積極的な外出が困難な状況に陥った場合や、経済活動の動向に関して不透明な状況が継続し求人企業が採用予算の削減を余儀なくされる状況に陥った場合でも、当社の「Green」はその影響を受けづらいサービスであると考えております。当社は、転職市場における「Green」の独自のポジションを活かした更なるシェアの拡大を目指してまいります。
(注)「リプレイス(replace)」とは「置き換える・取って代わる」等を意味する言葉であり、経営戦略においては「既存の業界のサービスを新しい技術で置き換える」という意味で使用されます。
②HR領域における新市場の創造
当社グループは、これまで培ったノウハウ、経験、顧客基盤等を活用し、HR領域における新市場の創造及びビッグデータ、テクノロジーを駆使した先行優位性を持つビジネスモデルの創造を目指します。
イ.「Wevox」
「Wevox」は、エンゲージメントを可視化することで組織を活性化し、人材の活用と定着化を促進するサービスです。エンゲージメントとは、組織に対する自発的な貢献意欲や、主体的に仕事に取り組んでいる心理状態を評価した指標です。「Wevox」独自のサーベイを用いる事で、重要な経営指標の一つとして注目を集めているエンゲージメントを定量的かつ多角的に把握する事が可能となります。
当社は創業以来、「Green」を通じて、多くの求職者と求人企業のマッチングを実現してきました。
しかしながら、IT業界を始めとした昨今の知識産業社会においては、採用という雇用の入り口だけでなく、人材の流動性の高まりや多様な働き方の浸透に伴い「人材の活用及び定着」こそが、将来の企業経営における極めて重要な課題になるであろうと考え、「Wevox」の提供を開始しております。今後は、唯一無二の組織力向上プラットフォームとなる事を目指し、多くの組織におけるエンゲージメントの向上に貢献してまいります。
ロ.「Yenta」
「Yenta」は、「ビジネスを加速させる出会い」を生み出すビジネスマッチングアプリケーションです。ソーシャルメディア等の台頭で、個人が積極的に情報を発信する現代においては、ビジネスパーソンが会社組織に依存しない時代が到来していると当社は考えております。「Yenta」は、人工知能(機械学習)を駆使し、多くのビジネスマッチングを実現しております。具体的には、組織の枠を超えた横の繋がりを増やすことで、オープンイノベーション、働き方の多様化、生産性の向上などを促進しております。
③グローバル市場への進出
当社は、継続的な事業拡大のためには、これまで培ったノウハウ、ナレッジを活用し、欧米、アジア等のより大きな市場で、今後の成長が期待される地域に向けたサービス提供を推進することが重要だと認識しております。それに伴い段階的ながらも社内コミュニケーションに英語を取り入れ、海外進出を意識した経営を行ってまいります。また、これらと同時に、市場調査を行っていく中で、現地法人設立や現地有力企業とのパートナーシップ構築等の検討も進めてまいります。
④組織運営
イ.当社の目指す組織の在り方
当社は、優秀で意欲ある人材の採用、育成、定着が極めて重要であると考えております。従来のような出世を前提としたヒエラルキーの強いピラミッド型の組織形態では無く、フラットな組織形態かつプロジェクト単位で柔軟に働ける組織運営を徹底しております。それにより、意思決定のスピードを速め、業界の変化に迅速に対応し、社員一人ひとりの経営視点や参画意識を高めるよう努めております。
ロ.組織運営の方針
当社は、「世界中の人々を魅了する会社を創る」というビジョン実現のため、当社に関わる全ての人々を幸せにするサイクルを回し続けながら、意欲ある社員が「働きがい」を感じられる組織創りを追求しています。優秀な人材を惹き付け、その人材が高いエンゲージメントと共に長期に渡り活躍する事が当社の持つ魅力であり、成長市場における長期的な競争力の源泉であるという考えのもと、組織運営を行っております。
具体的には、当社は、採用活動を会社経営の最重要事項と捉えており、個人の価値観や能力はもちろんのこと、人間性や既存メンバーとの相性なども十分に吟味した採用活動を行っております。そのため、過剰な人材採用を行うことはせず、労働生産性にこだわりを持った経営を行っております。また、当社は新卒採用を中心とした組織創りを行っております。学生時代の経験やスキルはもちろんのこと、価値観や人間性など全ての要素において一切の妥協を許しません。少しでも採用基準に満たない部分があれば、採用を見送るという厳選した採用活動を行っております。若い社員だからこそ、高い柔軟性を持ち、最新の技術をキャッチアップするスピードが速く、大きな事業環境の変化にも即座に対応できる能力を持っているため、急激な成長を遂げる可能性を秘めていると考えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは継続的な事業拡大と企業価値向上のため、売上高及び生産性(社員一人当たり売上高)を重要指標としております。
(4)経営環境
「Green」はIT・Web業界に強い求人メディアです。IT・Web業界は、以下の点から成長トレンドにあると考えております。
・日本のインターネット広告市場は、7,747億円(2010年)から3兆3,300億円(2023年)に拡大しております(注1)。
・日本の一般消費者向け電子商取引(EC)の市場規模は、7兆7,880億円(2010年)から24兆8,435億円(2023年)に拡大しております(注2)。また日本のEC化率は9.38%(2023年)であり(注2)、十分な成長余地があると考えております。
IT・Web業界の求人動向については、2024年9月時点で、業種別の転職求人倍率は「IT・通信」が約8倍、職種別の転職求人倍率は「エンジニア(IT・通信)」が約13倍であり、いずれも高い水準にあります(注3)。
当社は、IT・Web業界に強い求人メディアという独自のポジションの確立、ビッグデータ解析等のテクノロジーの進化に基づく書類選考通過率の向上等により、更なるシェアの拡大を目指します。また、あらゆる業界におけるIT化の加速により、IT・Web業界と他の業界における垣根が低くなってきていると当社は考えております。今後は、IT・Web業界以外でも認知度を向上させ、求職者及び求人企業の獲得効率の向上を目指します。マーケットシェアが拡大する事で、さらに認知度やブランド力が向上するという好循環が実現できると考えています。
(注)1.株式会社電通「2023年 日本の広告費」
2.経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」
3.パーソルキャリア株式会社「転職求人倍率レポート(2024年9月)」
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は「世界中の人々を魅了する会社を創る」というビジョンの下、「テクノロジーによって人の可能性を拡げる事業を創造していく」という想いを込めて、当社を「People Tech Company」と再定義しております。当社は、「Green」、「Wevox」の成長を加速させると同時に、複数の新規事業を創造し、収益化させるため、以下の課題に取り組んでまいります。
①サービスの知名度向上
当社は、これまで培ってきたWebマーケティングのノウハウを中心として、段階的に動画広告を利用したマスメディア向けの広告を活用することにより、「Green」への登録者を獲得してまいりました。その結果としてIT・Web業界においては相応の知名度を獲得できたと考えておりますが、今後は、IT・Web業界を超えた幅広い業界における知名度の向上、競合企業との差別化を明確にしたブランドの確立が重要であると認識しております。
そのためにも、これまで構築してきたWebマーケティングと並行し、費用対効果を慎重に考慮した上で、マスメディアを活用した広告宣伝及びプロモーション活動を継続的に検討してまいります。
②新規事業における収益拡大
当社は、主力サービスである「Green」を中心に堅調に成長している一方で、「Green」の収益力への依存度が高い状態にあります。長期的に成長し続ける組織であるためにも、今後複数の事業を収益化させ、発展・拡大させていくことが極めて重要だと考えております。
そのためにも、組織力向上プラットフォーム「Wevox」の収益拡大を図るとともに、その他構想・検討している新規事業に関しましても、未来の収益の柱へと育てるべく尽力してまいります。
③ビッグデータの有効活用
当社は、創業当初から転職・採用等のHR領域に特化したノウハウや経験を有しております。それらを属人的なものではなく、競争優位性の高い独自のデータとして蓄積してまいりました。当該ビッグデータをさらに有効活用し、優位にかつスピーディに事業を展開していくことが重要であると考えております。
また、継続的・安定的にデータを蓄積しつつも、今まで以上にデータの解析精度を向上させ、データを活用した新規事業の創造へと取り組んでまいります。
④組織体制の強化
当社は、知的産業社会で価値を生み出す最大のリソースは「人」であり、その集合体としての「組織」であると考えています。そのためにも、能力と意欲を兼ね備え、かつ当社の持つ価値観や目指す方向性に強く共感する人材のみを採用することを徹底しております。また、そのような優秀な人材が長期にわたってやりがいを感じて働くことができるよう、旧態依然とした出世や役職といった考え方を撤廃し、全社員に権利と責任を付与したフラットなプロジェクト制での組織運営を行っております。
この取り組みの徹底のため、全社員にプロとしての意識・自発的な行動・成果を求めております。そのため、情報共有を徹底し、ビジネスで成果を出す上で不必要な管理やルールの排除を行っております。その結果、当社は極めて高い定着率を誇り、新卒や若い社員を育成するノウハウを保持することに成功しております。
しかしながら、今後複数事業の迅速な拡大・成長を実現する上で、これまでと同様の水準を保ちながら、人材を確保していくことが当社の発展における課題であると認識しております。
そのため、ソーシャルメディアを活用したダイレクトリクルーティングや従業員からの紹介制度の強化等、多様な採用手法を用いて人材の獲得に努めるとともに、優秀な社員が定着し続けるような創意工夫をし続けてまいります。
⑤情報管理体制の強化
当社の運営する事業は、膨大な個人情報を保持しております。そのため、個人情報保護に関しては重要課題と認識しており、個人情報に関する社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施やセキュリティシステムの構築を行っております。また、ISO/IEC27001:2013の規格に則り、情報セキュリティマネジメントシステムの強化と運用の徹底を図ってまいります。
⑥グローバル市場への進出
当社の継続的な事業拡大のためには、これまで培ってきたノウハウ、ナレッジを活用し、欧米、アジア等のより大きな市場で、今後の成長が期待される地域に向けたサービス提供を推進することが重要だと認識しております。それに伴い段階的ながらも社内コミュニケーションに英語を取り入れ、海外進出を意識した経営を行っております。また、これらと同時に、市場調査も継続的に行っていく中で、現地法人設立や現地有力企業とのパートナーシップ構築等の検討も進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。当連結会計年度において、連結子会社であった株式会社アルティーリは、当社が保有する株式の一部を譲渡したことにより、持分法適用関連会社となっております。そのため、当社のサステナビリティに関する考え方及び取組を記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社におけるサステナビリティに関連するリスクと機会の監視・管理に責任を持つガバナンス組織は取締役会です。取締役会規則に定める「職務執行に関する重要事項」の一環として、取締役会はサステナビリティに関連するリスクと機会を監視・管理する責任を負っております。
具体的な監視・管理のプロセスとしては、サステナビリティ推進プロジェクトを中心に社会課題の審議・検討を行い、その結果、取締役会に報告すべきと判断する事項が生じた場合、逐次取締役会に報告するプロセスを採用しております。なお、当社は一般的に「部署」と呼称される組織体を「プロジェクト」と呼称しております。管理の機能を担うプロジェクトであるCorporateをサステナビリティ推進プロジェクトとして位置付けた上で、プロジェクトの責任者である取締役CFO及び担当者が中心となって活動しております。サステナビリティ推進プロジェクトは、 取締役会の指示・助言の下でサステナビリティに関する取組のモニタリングを行っております。
また、監査等委員会はサステナビリティ推進プロジェクトへのヒアリングを通して、内部監査人は内部監査のプロセスを通して、サステナビリティに関連するリスクと機会の監視・管理に携わっております。
当社は「(2)戦略」に記載のサステナビリティ方針を定めております。具体的な監視・管理のプロセス及び報告を受ける頻度については、1年に1回、サステナビリティ推進プロジェクトがサステナビリティ方針の更新要否及び目標への進捗状況を確認・検討し、更新の必要がある場合は、必要に応じて取締役会に報告することとしております。
さらに、サステナビリティに関連するリスクと機会に対応する戦略を監視・管理するために適切なスキルや能力を各取締役が備えているかどうかの評価としては、代表取締役CEO及び取締役CFOに特に期待する領域として「ESG」を指定しております。当社はサステナビリティという用語が社会一般に広まる以前から、社会課題の解決と事業を結び付けた経営を推進しており、その経緯からも、代表取締役CEOは適切なスキルや能力を備えていると評価しております。また、取締役CFOについては、日常的に投資家や株主との対話を通じてフィードバックを受ける立場にあることから、適切なスキルや能力を備えていると評価しております。代表取締役CEO及び取締役CFO以外の取締役についても、適切なスキルや能力を備えるための施策を検討してまいります 。
(2)戦略
① マテリアリティ(重要課題)の概要
当社グループは、「世界中の人々を魅了する会社を創る」というビジョン実現のため、「働きがいのある社会」の実現に向けて、経済性と社会性の観点から優先的に取り組むべき重要な課題をマテリアリティとして特定しております。
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マテリアリティ |
個別の取組 |
関連するSDGs |
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テクノロジーによって人の可能性を拡げるPeople Tech Businessの創造 |
・人材の流動化促進と最適配置 ・エンゲージメントの可視化による組織改善の支援 ・ビジネスパーソンのエンパワーメントによる働き方の多様化促進 |
8 働きがいも経済成長も 9 産業と技術革新の基盤をつくろう |
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持続可能な組織及び経営手法の確立 |
・全社員が高い当事者意識と経営者視点を持つカルチャーの醸成 ・社員一人当たり生産性の向上にこだわった組織運営 ・自律分散型組織として幅広い権限の委譲と裁量の供与 ・全社員があらゆる経営情報にアクセスできる仕組みづくり |
8 働きがいも経済成長も |
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強固でセキュアな経営基盤づくり |
・データセキュリティとプライバシー保護の取組の推進 ・財務基盤の強化 ・コーポレート・ガバナンスの高度化と実効性の担保 |
8 働きがいも経済成長も |
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社会性を重視した取組み |
・新興国の経済成長支援 ・スポーツビジネスを通じた青少年育成 ・スポーツビジネスを通じた地域社会への貢献 |
11 住み続けられるまちづくりを |
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地球環境への貢献 |
・気候変動への対応(職住近接による徒歩、自転車通勤の推奨) ・資源の効率的な利用(ペーパーレス化の徹底) |
13 気候変動に具体的な対策を |
② サステナビリティ関連のリスク及び機会に対応するための取組
イ.テクノロジーによって人の可能性を拡げるPeople Tech Businessの創造
当社では、「働きがいのある社会」の実現ができていない事態をサステナビリティ関連のリスクと考えております。一方で、「働きがいのある社会」の実現に関する事業の創造と推進がサステナビリティ関連の機会と考え、事業運営を行っております。
人材の流動化促進と最適配置の取組として、Greenによってインターネット上で転職を希望する求職者と求人企業のマッチングを行っております。また、エンゲージメントの可視化による組織改善の支援の取組として、Wevoxによってエンゲージメントを可視化することで組織を活性化し、人材の活用と定着化を促進しております。
以上の取組の達成状況は、People Tech事業の売上高を指標として評価・管理しております。
ロ.持続可能な組織及び経営手法の確立
当社では、従来のような出世を前提としたヒエラルキーの強いピラミッド型の組織形態では無く、フラットな組織形態かつプロジェクト単位で柔軟に働ける組織運営を徹底しております。それにより、意思決定のスピードを速め、業界の変化に迅速に対応し、社員一人ひとりの経営視点や参画意識を高めるよう努めております。
従って、優秀で意欲ある人材の採用、育成、定着が達成できないことで、当社が目指す組織の在り方を実現するための組織運営ができなくなる事態がサステナビリティ関連のリスクと考えております。一方で、意欲ある社員の採用、育成、定着は、成長市場における長期的な競争力の源泉であり、サステナビリティ関連の機会と考えております。
・人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
優秀な人材を惹き付け、その人材が高いエンゲージメントと共に長期に渡り活躍することができる組織運営を行っております。
・人材の多様性の確保を含む社内環境整備に関する方針
当社に関わる全ての人々を幸せにするサイクルを回し続けながら、意欲ある社員が「働きがい」を感じられる組織創りを追求しております。
社員エンゲージメント向上の具体的な取組としては、役職を撤廃した自律分散型組織、360度評価制度、社員一人ひとりが株主視点を持った経営判断を行うための株式報酬制度(注)、従業員持株会制度、スーパーフレックス、子連れ出社及び制限なしのテレワーク等、働く社員のオーナーシップを尊重した取組を実施しております。また、月に1回程度実施している全社員参加の組織に関するディスカッション等により、社員が高い当事者意識と経営者視点を持つカルチャーの醸成に努めております。
人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針、人材の多様性の確保を含む社内環境整備に関する方針及び社員エンゲージメント向上の具体的な取組の達成状況については、Wevoxの期中平均エンゲージメントスコアを指標として評価・管理しております。Wevoxは自社で運営する組織力向上プラットフォームであり、サーベイを用いて組織の状態を月に1回エンゲージメントスコアとして可視化します。目標として、より一層の社員エンゲージメント向上に努めております。
(注)当連結会計年度におけるストック・オプションによる株式報酬費用のうち、当社の従業員への付与に係る費用を当社の2024年9月30日現在における従業員数で除した額は1,129千円であります。当社の従業員1人当たりの平均年間給与である7,700千円との合計額は8,829千円であります。
ハ.強固でセキュアな経営基盤づくり
(i)データセキュリティとプライバシー保護の取組の推進
データビジネスを推進する当社にとって、情報漏洩等により顧客の信頼を失う事態をサステナビリティ関連のリスクと考えております。一方で、データセキュリティとプライバシー保護の取組の推進は顧客からの信頼獲得につながることから、サステナビリティ関連の機会と考えております。
当社では、データセキュリティとプライバシー保護の取組として、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を取得し、SO/IEC27001:2013の運用規程に従って、社内での個人情報の取扱い、管理についてルール化し、役職員の教育を行い、その徹底を図っております。
以上の取組の達成状況はセキュリティ理解度チェックテストの実施を通じて評価・管理しております。
(ii)財務基盤の強化及びコーポレート・ガバナンスの高度化と実効性の担保
財務基盤の弱体化やコーポレート・ガバナンスの実効性を担保できない事態は、当社が事業を通じた社会課題解決が出来なくなる事態を招く懸念があることからサステナビリティ関連のリスクと考えております。一方で、財務基盤の強化やコーポレート・ガバナンスの実効性担保は、当社の経営基盤を強固にするものであり、当社が社会課題解決を行う事業を継続的に生み出し続けるサステナビリティ関連の機会と考えております。
財務基盤の強化の取組として、複数の取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しております。また、コーポレート・ガバナンスの高度化及び実効性担保の取組として、社外取締役(監査等委員)の増員を行っております。
以上の取組の達成状況は自己資本利益率にて評価・管理しております。
ニ.社会性を重視した取組
当社にとって、社会性を重視した取組を怠ることで、当社の事業をよりソーシャルインパクトが生まれるようなビジネスモデルに昇華させることが出来なくなる事態をサステナビリティ関連のリスクと考えております。一方で、新興国の経済成長支援やスポーツビジネスへの出資を通じた社会課題の解決が可能な領域であることから、サステナビリティ関連の機会と考えております。
以上の取組の達成状況は、社会課題解決に関する出資の継続を通じて評価・管理しております。
ホ.地球環境への貢献
当社は、「テクノロジーによって人の可能性を拡げる」事業を創造することをミッションとしており、創業以来、環境負荷の少ない事業ポートフォリオを実現していると認識しております。
当社の策定した環境方針において、気候変動への対応の推進を掲げており、温室効果ガスの排出量の測定・開示やエネルギー効率改善に向けて取り組んでおります。また、当社は 2022年7月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関等からなるTCFDコンソーシアムに加入し、TCFD提言に基づく気候変動に関するより良い情報開示について検討を進めております。
気候変動への対応については、People Tech事業を対象として、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が提唱するフレームワークに基づき、2030年時点における外部環境の変化を予測し、以下のとおり分析を実施しております。
(i)1.5℃シナリオ
全世界が2050年カーボンニュートラルを目指し、規制や政策(炭素税の導入及び電力価格の上昇、温室効果ガス排出量規制等)が強化され、気候変動への対策が進捗し、産業革命前の水準から気温上昇が1.5℃に収まるシナリオ。化石燃料からの切替や再生可能エネルギー由来の電力需要の高まりを受けて電力価格は上昇することが見込まれます。電力価格の上昇に伴い、多くの電力を消費するクラウドサーバーの利用料も増加し、運営コストが増加することで、営業利益が減少することが見込まれます。さらに、環境に関する情報開示の規制強化への対応によるコスト増加のリスクもあります。
そのような状況下、当社の対応策としては、従来より推進してきたCO2排出量削減のための省エネ活動及びペーパーレスの取組や、再生可能エネルギー由来の電力への切替によって、移行リスクへの対策を実施することが考えられます。
また、企業において脱炭素等のスキルやノウハウを持った人材の需要が高まることによる売上増加の機会があると想定します。これらの対応策を講ずることで、移行リスクによる事業への影響を緩和し、新たな機会を獲得することを目指します。
1.5℃シナリオにおける具体的なサステナビリティ関連のリスク及び機会は以下のとおりです。
|
分類 |
項目 |
当社への影響 |
影響度 |
対応策 |
||
|
リスク |
移行 リスク |
政策・法規制リスク |
GHG 排出価格の上昇 |
・130$/t-CO2 を超える水準の炭素税の導入による運営コストの増加 |
小 |
・省エネの取組の継続及び強化 |
|
排出量の報告義務の強化 |
・CO2 排出量の報告強化などによる人件費の増加や外注費の増加 |
小 |
・社内体制の強化 ・CO2排出量算定サービス等の有効活用 |
|||
|
市場 リスク |
顧客行動の変化 |
・顧客の環境配慮の意識が高まり、環境対応が充実しているサービスへシフトすることによる売上の減少 |
小 |
・環境対応及び開示の強化 |
||
|
原材料コストの上昇 |
・電力価格の上昇 ・サーバー利用料の上昇によるコストの増加 |
中 |
・省エネの取組の継続及び強化 ・再生可能エネルギー由来の電力への切替 |
|||
|
評判 リスク |
ステークホルダーの懸念の増大又はステークホルダーの否定的なフィードバック |
・気候変動への取組や開示対応が遅れることによる投資家からの評価低下 |
小 |
・社内体制の強化 ・環境対応及び開示の強化 |
||
|
機会 |
製品とサービス |
消費者動向 |
消費者嗜好の変化 |
・脱炭素等のスキルやノウハウを有する人材の需要拡大 |
中 |
・環境人材向けのサービスの提供 |
(ii)4℃シナリオ
環境に関する規制や政策が強化されず、現状の水準のまま推移するシナリオ。化石燃料由来のエネルギーを引き続き利用するため再生可能エネルギーの導入も進まず、電力価格の上昇は起こらないが、気温の上昇に伴い、オフィスの空調コストが増加することが見込まれます。また、大雨や洪水といった異常気象や記録的な高温により、データセンターのクラウドサーバーが稼働停止するといった事象が発生した場合、売上が減少する可能性があります。
そのような状況下、当社の対応策としては、従来より推進してきたCO2排出量削減のための省エネ活動の強化や、物理リスク対策としての代替サーバーの検討や、BCP体制整備の実施が考えられます。
また、気候変動への対応等のスキルやノウハウを持った人材の需要が高まることによる売上増加の機会があると想定します。これらの対応策を講ずることで、気候変動に対するレジリエンスを高めるとともに、新たな機会を獲得することを目指します。
4℃シナリオにおける具体的なサステナビリティ関連のリスク及び機会は以下のとおりです。
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分類 |
項目 |
当社への影響 |
影響度 |
対応策 |
||
|
リスク |
物理的リスク |
急性的 |
台風や洪水などの極端な気象事象の過酷さの増加 |
・異常気象などの自然災害によりデータセンターのサーバーが停止した場合、機会損失が発生 |
大 |
・代替サーバーの利用 ・BCP 体制の整備 |
|
慢性的 |
上昇する平均気温 |
・平均気温が高まることによるオフィスの空調コストの増加 |
小 |
・省エネの取組の継続及び強化 ・空調設備の更新 |
||
|
機会 |
製品とサービス |
消費者動向 |
消費者嗜好の変化 |
・気候変動への対応等のスキルやノウハウを有する人材の需要拡大 |
中 |
・環境人材向けのサービスの提供 |
当社では、地球環境への貢献として、職住近接の推奨やペーパーレス化の推進、オフィスでの省エネ活動などによって温室効果ガス削減を推進しております。
温室効果ガスの削減推進の達成状況は、CO2排出量により評価・管理しております。
(3)リスク管理
当社では、社内で定めるリスク管理規程に基づき、各プロジェクトの責任者が事業運営上のリスクの把握・評価・モニタリングを行います。特に重要なリスク及び機会は取締役会に報告され、取締役会において協議を行い、必要に応じて関係プロジェクトに具体的な対策の指示を行います。サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別は、サステナビリティ推進プロジェクトが行います。特に重要なサステナビリティ関連のリスク及び機会は他の重要なリスク及び機会と同様にサステナビリティ推進プロジェクトから取締役会に報告されます。そして、取締役会における協議により、サステナビリティ関連のリスク及び機会の評価を行います。さらに、サステナビリティ関連のリスク及び機会の管理は、サステナビリティ推進プロジェクトは、取締役会の指示・助言の下で関係プロジェクトに具体的な対策の指示を行います。
なお、当社においてインプット及びパラメータを使用したリスク管理は行っておりません。サステナビリティ関連リスクの識別のうち、気候変動リスクについては「(2)戦略 ②サステナビリティ関連のリスク及び機会に対応するための取組 ホ.地球環境への貢献」に記載の1.5℃シナリオ及び4℃シナリオのシナリオ分析を行っております。
識別したサステナビリティ関連リスクは、金額的影響、質的影響及び発生可能性と頻度の観点から総合的に評価しております。金額的影響とは、損失額、売上減少額、追加費用見積額、罰則・損害賠償額などの数値的影響を意味し、質的影響とは、当社グループの信用や評判の失墜、監督官庁からの行政指導、株主・従業員・取引先等、当社グループを取り巻く利害関係者との関係悪化等の影響を意味します。また、発生可能性と頻度とは、発生が偶発的か必然的であるかの別、またその発生割合や頻度のことを意味します。
サステナビリティに関連するリスクは、他の種類のリスクと同様に、金額的影響、質的影響、発生可能性と頻度の観点から重要性を検討し、総合的に勘案した上で、優先順位を付けて対応しております。
(4)指標及び目標
① テクノロジーによって人の可能性を拡げるPeople Tech Businessの創造
2024年9月期におけるPeople Tech事業の売上高は7,641,907千円(前年同期比4.7%増)です。現時点において具体的な数値目標を定めることが難しいため、継続的な売上高の成長を目標として実績との比較を行っております。
② 持続可能な組織及び経営手法の確立
当社では、自社で運営する組織力向上プラットフォームWevoxのサーベイを用いて組織の状態を月に1回エンゲージメントスコアとして可視化し、より一層の社員エンゲージメント向上に努めております。
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2024年9月期 |
中期目標 |
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(注)Wevoxは100を最大値としてインプット情報である社員の回答データに基づき算出したエンゲージメントスコアにより組織の状態を可視化します。
③ 強固でセキュアな経営基盤づくり
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2024年9月期 |
中期目標 |
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年次セキュリティ理解度チェックテスト実施 |
1回 |
1回以上 |
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自己資本利益率 |
14.4% |
20%以上 |
④ 社会性を重視した取組
当連結会計年度末における社会課題解決に関する出資は2件です。中期目標として今後も出資を継続してまいります。出資先の事業領域はプロバスケットボールクラブの企画・運営及び新興国の経済成長支援です。
⑤ 地球環境への貢献
当社のCO2排出量の実績は以下のとおりです。これは本社オフィスにおける電力使用により排出されるもので、エネルギー効率改善と温室効果ガス削減推進を今後も継続し、フロア当たりのCO2排出量逓減を進めてまいります。
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2024年9月期 |
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Scope1(kg-CO2) |
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Scope2(kg-CO2) |
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CO2排出量合計 |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、合理的に予測することが困難であるため記載しておりません。
また、必ずしも主要なリスクに該当しない事項につきましても、投資者の投資判断に資すると考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社グループは、事業等のリスクに対し発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針であります。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)外部要因、競合について
①求人企業の人材採用ニーズについて
当社は、企業の人材採用支援を主たる事業としているため、求人企業の採用ニーズに影響を受ける可能性があります。
主要顧客であるIT・Web業界は現在も成長途上の領域であり、IT人材の不足感は依然として高い状況にあるため(出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2024」)、当面の採用ニーズは堅調に推移するものと想定しております。
しかしながら、想定を上回る世界規模の景気悪化が起こり、求人企業の雇用水準が低迷する事態が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②インターネット利用の普及について
当社はインターネットを介してサービスを提供しております。そのため、スマートフォンやタブレット型端末等の新しいデバイスの普及により、インターネットの利用環境が引き続き整備されていくと共に、同関連市場が今後も拡大していくことが事業展開の基本条件であると考えております。
2012年にインターネットの利用者数は初めて1億人を突破して以降、2023年のインターネットの人口普及率は86.2%となっております(出典:総務省「令和5年通信利用動向調査」)。
しかし、インターネットの普及に伴う弊害の発生、利用に関する新たな規制の導入、その他予期せぬ要因によって、インターネット利用の順調な発展が阻害された場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③技術革新について
当社はインターネット関連技術に基づいて事業を展開しておりますが、当該市場は技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が極めて速く、それらに基づく新機能や新サービスの導入が相次いで行われる変化の激しい市場です。
このような急速に変化を遂げる環境の中で、当社はHR領域において前例のないビッグデータ解析や人工知能の導入、スマートフォンやタブレット型端末等の多様なデバイスへの対応など、最新技術の開発を率先して行うと共に、優秀な人材の確保に取り組んでおります。
しかしながら、技術革新のスピード、顧客ニーズの変化、デバイスの進化等は予期せぬスピードで発展していく可能性があります。今後何らかの革新的な技術が台頭し、当社の対応が遅れた場合には、当社が現状有している技術的優位性の低下を招く可能性があります。また、そのような革新的な技術に対応するために多額のシステム開発費用が追加的に発生する可能性があります。そのような場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④競合企業について
当社の競合企業は、既存の人材紹介会社、求人メディア等が該当します。既に競合企業が多いうえ、参入障壁も低く、新規参入企業も多い状況にあります。
当社サービスの特徴として、急拡大を遂げるIT・Web業界において採用ニーズの高いエンジニア、Webデザイナー等の登録者が多い点が挙げられます。また、当社は、長年に渡り蓄積してきた転職活動、採用活動に関する膨大なデータを活用したビッグデータ解析等のテクノロジーを駆使することで、書類選考通過率(注)の向上を実現することにより、市場における優位性の構築を推進してまいりました。
しかしながら、これらが競合企業との十分な差別化要因になるとは限らず、若くテクノロジーに長けた企業がHR領域に挑戦してきた場合や、当社と類似した海外の企業が日本へ本格的に進出し、当社の優位性を凌駕した場合、また膨大な転職・採用に関するデータを保有する大手人材紹介会社等が自社の社員を大幅に削減することによって、労働集約型のビジネスモデルから当社のようなテクノロジーを駆使したビジネスモデルに切り替えた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注)「書類選考に通過する件数÷書類選考に応募する件数」を意味します。
(2)当社グループの事業について
①Greenへの依存について
当社の主たる収益は、Greenによる収益であります。2024年9月期の連結売上高(8,598,696千円)に占める「Green」の比率は59.6%(5,128,084千円)であり、依存度は高い状況にあります。当社は、中長期的な成長を実現するため、並行して「Wevox」の収益拡大及び新規事業の創造及び収益化を進めております。
しかしながら、新規事業の創造及び収益化が当初の計画どおりに進まず、Greenへの依存度が変わらない場合、当サービスの売上高の変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②Greenの書類選考通過率について
当社は、これまでGreenの書類選考通過率の向上に努めてきましたが、これは、当社が長年にわたり構築してきたビッグデータ解析等のテクノロジー、GreenのUI(User Interface)、UX(User Experience)の継続的な改善、その他求人企業から求職者、求職者から求人企業へのアクションを促す各種施策によるものと考えております。
しかしながら、これらの施策が奏功せず、もしくは景気の悪化等により求人企業の人材採用ニーズが減少することで書類選考通過率が当社の想定を下回った場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③新規事業について
当社の主な事業領域であるインターネット、テクノロジーの領域は、サービスライフサイクルの短期化が著しい状況にあります。当社は、時代の変化に適応した新規サービスを次々と生み出し続けることが継続的な成長を実現するために必須であると考え、積極的に新規事業への投資を行っております。また、新規事業の領域として、海外における事業展開も検討しております。そのため、広告宣伝やシステム投資、人件費等の追加的な支出が発生し、一時的に利益率が低下する可能性があります。また、新規事業が当初の計画どおりに進捗しない場合、投資を回収できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④広告宣伝活動により想定通りの効果が得られない可能性について
当社が提供するGreenの基礎となるのは、求人企業及び求職者の採用実績、書類選考の通過実績等のデータです。それらのデータが蓄積されることでGreenのレコメンド機能が強化され、求人企業及び求職者の書類選考通過率が高まります。求人企業及び求職者を獲得するためには、常に広告効果の検証及び予想を行ったうえで出稿先を選択し、継続的に広告宣伝活動を実施することが必要不可欠であると考えております。
しかし、広告の効果を正確に予測することは困難であるため、当社の想定する求人企業及び求職者を獲得できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤入社報告に係る不正行為について
Greenの成功報酬は、求職者が求人企業に入社した時点で売上として計上されます。当社は求人企業から報告を受けることにより入社確認を行っておりますが、入社の事実を適切に報告せず、成功報酬の支払いを免れようとする不正行為が発生する可能性があります。当社は、求人企業と求職者のデータの突き合せ、採用フローの進捗確認の徹底、不正が発覚した場合の罰則規定の強化、不正行為を防止するシステム対応、転職祝い金制度(注)を活用した求職者による入社報告の促進策等を実施することで、不正行為の防止に努めております。
しかしながら、不正行為の方法が当社の想定を超えて悪質である場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注)当社は、Greenを通じて転職に成功した求職者に対しAmazonギフト券を進呈しています。Amazonギフト券を進呈する要件の1つに入社報告があるため、転職祝い金制度には求職者の入社報告を促す効果があると考えております。
(3)運営体制について
①小規模組織であることについて
当社グループは、期末日現在、取締役7名、従業員(正社員)109名で事業を運営しておりますが、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制及び業務執行体制を構築しております。
当社グループは、今後の事業の成長に応じて、人材の採用・育成を行うと共に、内部管理体制及び業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適切なタイミングで実施できなかった場合、又は人材が社外に流出した場合は、内部管理体制及び業務執行体制が有効に機能せず、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②新卒比率の高さ及び若い社員で構成されていることについて
当社は新卒採用を中心とした組織創りを行っております。期末日現在、従業員(正社員)109名に占める新卒採用者の割合は約41%であり、また平均年齢は32.6歳と若い年齢の社員で構成されております。
若い社員の成長スピードの鈍化、事業運営に必要なスキルや経験を積むことが困難な状況に陥った場合は、当社役職員の経験不足が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③人材の確保及び育成について
当社グループは、継続的な事業拡大や新規事業の推進のためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が最も重要であると認識しております。
しかしながら、当社グループが求める優秀な人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、経常的な業務運営及び新規事業の拡大等に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)システムのリスクについて
当社の全てのサービスはインターネットを介して提供されております。また、当社の主要な事業であるGreenの主要な売上高は成功報酬に関する売上高であります。成功報酬に関する売上高は、入社人数に成功報酬単価を乗じる事により算定されますが、当社が独自に開発した販売システムにより自動計算及び集計が行われ、その後に会計システムへの連携が行われます。当社は、安定的なサービスの運営及び内部管理体制の構築を行うために、サーバー設備の増強、セキュリティの強化、システム管理体制の構築等により、システム障害等に対する万全の備えをしております。
しかし、大規模なプログラム不良や自然災害、事故、不正アクセス、新規事業立ち上げ時の想定以上のアクセス増による一時的な負荷増大、その他何らかの要因によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、当社のサービスを利用する求人企業や求職者等との信頼関係に悪影響を及ぼし、また、Greenの販売システムによる処理が適切に行われないこと等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)法的規制について
①一般的な法的規制について
当社サービスを規制する主な法規制として、「電気通信事業法」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」及び「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」等があります。
当社はこれらの法規制を遵守したサイト運営を実施しており、今後も法令順守体制の強化や社内教育の実施等を行ってまいりますが、新たな法規制の制定や改正が行われ、当社の事業が制約を受ける場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②個人情報の保護について
当社は、ユーザーの職務経歴や応募情報等の個人情報を取得し、利用しているため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。個人情報の漏洩、改ざん等を防止するために個人情報の管理をサービス運営上の重要事項として捉え、個人情報を扱う際の業務フローや権限体制を明確化し、厳格な管理を徹底しております。また、当社は、個人情報の保護の徹底を図るべく、2023年7月に情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格であるISO/IEC27001:2013認証を取得し、当該運用規程に従って、社内での個人情報の取扱い、管理についてルール化し、役職員の教育を行い、その徹底を図っております。
しかしながら、外部からの不正なアクセスや当社関係者の故意又は過失によりユーザーの個人情報が流出する等の問題が発生した場合には、当社への損害賠償請求や信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③知的財産権について
当社が運営するサービスにおいて使用する商標、ソフトウエア、システム等については、現時点において、第三者の知的財産権を侵害するものではないと認識しております。今後においても、侵害を回避するため知的財産権の監視、管理等を当社顧問弁護士と協力して行っていく方針でありますが、当社の事業分野で当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性、又は新たに当社の事業分野で第三者により知的財産権が成立する可能性も考えられます。
そのような場合には、第三者の知的財産権を侵害したことによる損害賠償請求や使用差し止め、権利に関する使用料等の支払請求がなされることが想定されます。そのような事態が発生する場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)その他のリスクについて
①新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループは、取締役及び従業員に対して、業績向上に対する意欲を高めることを目的としたストック・オプション(新株予約権)を発行しております。ストック・オプションが権利行使された場合には、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日の前月末(2024年11月末)現在、新株予約権による潜在株式数は1,466,700株であり、発行済株式総数24,047,141株の約6.1%に相当しております。
②配当政策について
当社は、将来の事業展開に即応できる財務体質の強化を重要課題として位置付けております。そのため、新規事業の早期展開、事業拡大、事業効率化のための投資を行いながら、各期の経営成績及び財政状態等を総合的に勘案した上で、配当を継続的に実施していくことを基本方針としております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復しております。一方で、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっており、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があるなど、不透明な状況が継続しております。
このような状況の中、当社グループは、成功報酬型求人メディア「Green」、組織力向上プラットフォーム「Wevox」、ビジネス版マッチングアプリ「Yenta」、及びプロバスケットボールクラブ「アルティーリ千葉」を運営してまいりました。
成功報酬型求人メディア「Green」については、我が国の経済が不透明な状況にある中でも、求人企業の多くが属するインターネット業界において、人工知能やIoTに関する様々なサービスが生まれており、ITエンジニアやWebデザイナーといった人材の需要は堅調に推移しております。当社では、求人企業と求職者のマッチング効率向上のためのコンテンツの拡充、ビッグデータ解析によるレコメンド精度の向上をはじめ、登録者数の増加施策としてWebマーケティングの強化等、転職市場における「Green」の独自の競争優位性を活かした様々な取り組みを実施しております。
組織力向上プラットフォーム「Wevox」については、組織の状態をスコアリングして可視化し、改善策を推奨することで、利用企業の組織改善を支援するサービスであり、2017年5月の正式リリース以降着実に導入企業を増やしております。当社では、今後の拡販に向けてプロダクトの更なる向上、カスタマーサクセス体制の充実を図ることが重要と考えております。
ビジネス版マッチングアプリ「Yenta」については、「ビジネスを加速させる出会い」を生み出し、ビジネスパーソンの組織の枠を超えた横の繋がりを増やすことで、オープンイノベーション、働き方の多様化、生産性の向上等を促進しております。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は8,598,696千円(前年同期比10.8%増)、営業利益は1,528,663千円(前年同期比60.5%増)、経常利益は1,543,616千円(前年同期比67.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は733,542千円(前年同期比119.3%増)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
(People Tech事業)
People Tech事業の売上高は7,641,907千円(前年同期比4.7%増)、セグメント利益は1,659,753千円(前年同期比70.5%増)となりました。
成功報酬型求人メディア「Green」については、成功報酬単価の上昇等があったものの、当連結会計年度の入社人数は3,994人と前年同期比9.6%減となり、「Green」の売上高は5,128,084千円(前年同期比2.1%減)となりました。
組織力向上プラットフォーム「Wevox」については、幅広い業種・業界にサービスの提供を行っており、本書提出日現在の導入企業は3,530社を超えております。主に導入企業の増加により、「Wevox」の売上高は2,443,682千円(前年同期比24.4%増)となりました。
(Sports Tech事業)
当社グループは、千葉県千葉市を本拠地とするプロバスケットボールクラブ「アルティーリ千葉」を新規に設立し「Sports Tech事業」に進出いたしました。「アルティーリ千葉」は当社の連結子会社であった株式会社アルティーリが運営等を行っております。2021-22シーズンよりB3リーグに新規参入し、初年度にB2リーグへの昇格を果たし、当連結会計年度はB2リーグにて活動を行ってまいりました。2023-24シーズンは、B1リーグへの昇格は逃したものの、レギュラーシーズンにおいて地区優勝を果たし、Bリーグトップクラスの集客力を誇るクラブに成長いたしました。
以上を踏まえ、主にスポンサー収入及び売上原価の増加により、Sports Tech事業の売上高は1,486,789千円(前年同期比22.5%増)、セグメント損失は134,239千円(前年同期は23,578千円のセグメント損失)となりました。
当連結会計年度において、株式会社アルティーリは株式の一部を譲渡したことにより、連結の範囲から除外し、持分法の適用範囲に含めております。
当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況は次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は7,218,703千円となり、前連結会計年度末と比べて69,052千円増加しました。これは主に、現金及び預金が363,096千円減少したものの、投資有価証券が411,230千円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は1,909,372千円となり、前連結会計年度末と比べて311,546千円増加しました。これは主に、未払金が340,900千円減少したものの、短期借入金が500,000千円、未払法人税等が137,905千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は5,309,331千円となり、前連結会計年度末と比べて242,493千円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益733,542千円を計上したものの、自己株式の取得により純資産が1,302,478千円減少したことによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、4,362,212千円となり、前連結会計年度末と比べて363,096千円の減少となりました。主な要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,283,690千円の収入(前連結会計年度は944,232千円の収入)となりました。この主な増加要因は、税金等調整前当期純利益1,167,020千円、投資有価証券評価損320,099千円、主な減少要因は、法人税等の支払額373,393千円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、836,996千円の支出(前連結会計年度は163,749千円の支出)となりました。この主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入121,572千円であり、主な減少要因は、投資有価証券の取得による支出576,476千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出307,122千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、809,791千円の支出(前連結会計年度は1,006,248千円の支出)となりました。増加要因は、短期借入れによる収入500,000千円であり、主な減少要因は、自己株式の取得による支出1,306,386千円であります。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループは、提供するサービスに生産に該当する事項がありませんので、生産実績及び受注実績に関する記載はしておりません。なお、セグメントごとの販売実績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性について、当社グループは営業活動から得た資金により今後さらに経営基盤を強化し、成長投資としての広告宣伝投資及び新たな事業展開に備えるための投資を行う方針です。必要な資金は自己資金で賄うことを基本とし、必要に応じて追加の資金調達を実施いたします。
なお、当社は取引銀行5行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約2,100,000千円を締結しており、当連結会計年度末における当該契約に基づく借入未実行残高は1,600,000千円となっております。当社は緊急時に備えて強固な財務基盤を構築しておりますが、さらなる経済環境の悪化に備え財務基盤の安定に向けた活動も継続してまいります。
④経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上高及び生産性(社員一人当たり売上高)を重要指標としております。
2024年9月期は我が国の経済活動の動向が不透明な状況にある中でも増収を達成いたしました。また、生産性(社員一人当たり売上高)につきましては、従業員数が増加し、当社の主力サービスである「Green」以外の事業に対しても積極投資を行う中、過去最高水準の生産性を実現いたしました。今後も重要な経営指標として生産性向上を追求してまいります。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(子会社株式の一部譲渡)
当社は、2024年5月14日開催の取締役会において、当社の連結子会社である株式会社アルティーリの株式の一部を譲渡することを決議し、2024年7月1日に株式譲渡を実行しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。