第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項の発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

なお、本文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

重要事象等に関する事項

当社グループは、前連結会計年度以前より継続して営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、また、当中間連結会計期間においても、営業損失531,929千円及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しております。これにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在していると認識しております。

当社グループでは、第4「経理の状況」1「中間連結財務諸表」「注記事項」(継続企業の前提に関する注記) に記載の各施策によって当該状況をいち早く解消し、経営基盤の安定化の実現を図ります。しかしながら、当該施策は実施途上にあり、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。

なお、当社グループの中間連結財務諸表は継続企業を前提として作成し、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を中間連結財務諸表に反映しておりません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。

なお、本文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

[表1]事業収益及び各段階損益

(単位:百万円)

 

前中間連結会計期間

(自 2023年5月1日
 至 2023年10月31日

当中間連結会計期間

(自 2024年5月1日

 至 2024年10月31日

前年同期比

事業収益

1,836

3,274

+78.3%

売上総利益

1,215

2,314

+90.5%

営業損失(△)

△1,214

△531

 

 

当社グループは、米国Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)の研究者の発明による自己組織化ペプチド技術を基にした医療製品の開発・製造・販売を行っております。

現時点では、日米欧3極においてそれぞれ複数の製造販売承認を取得しており、中でも主に吸収性局所止血材を中心にグローバルに販売活動を行っております。

 

[販売進捗の状況]

[表2]エリア別製品販売状況

(単位:百万円)

 

前中間連結会計期間

(自 2023年5月1日
 至 2023年10月31日

当中間連結会計期間

(自 2024年5月1日
 至 2024年10月31日

前年同期比

米国

569

1,431

+151.4%

欧州

675

992

+46.9%

日本

379

567

+49.6%

オーストラリア

199

266

+33.6%

その他

12

16

+30.8%

事業収益合計

1,836

3,274

+78.3%

 

 

米国における製品販売は、1,431,466千円となり前年同期比151.4%増となりました。消化器内視鏡領域においては高い成長を維持しており、四半期ごとに過去最高額を達成し計画を大幅に超えるトレンドが継続しております。既存顧客における製品販売額の伸びが進捗することに加え、新規顧客獲得数が想定以上のスピードで増加しており、市場からの大きな需要がうかがえる状況です。また、販売活動強化のために営業人員を拡大する施策も功を奏し、コストの増加分以上に事業収益の成長が進捗し、貢献利益(※1)も拡大しました。耳鼻咽喉科領域においては、アピールポイントを止血から創傷治癒や癒着防止へ転換する戦略が引き続き効果を発揮し、計画より少ない人員でも貢献利益の黒字を維持している状況です。これらの結果、米国子会社は当中間連結会計期間において、財務会計上の黒字化を達成しております。

欧州における製品販売は、992,058千円となり前年同期比46.9%増となりました。主要製品である消化器内視鏡領域の止血材においては、大規模施設の開拓が概ね計画どおりに進捗しております。心臓血管外科領域及び耳鼻咽喉科領域については、小規模の体制を維持して販売活動を行っておりますが、計画未達となっております。これを受けて、心臓血管外科領域に関しては、直販体制を見直し代理店による販売体制に回帰することで営業コストを削減致しました。

日本における製品販売は、567,933千円となり前年同期比49.6%増となりました。販売開始以来継続して高い成長率を維持しており、新規顧客獲得に加え、既存顧客の製品使用量を増やす施策が奏功しており、引き続き営業一人当たりの貢献利益の黒字拡大を達成しております。

オーストラリアにおける製品販売は、266,487千円となり前年同期比33.6%増となりました。政府による民間保険価格の見直しによる製品販売価格の低下の影響を受けておりましたが、2024年7月時点で見直しも終結したとされております。見直し検討期間中に病院においては価格に不確実性が生じたために買い控えが発生しておりましたが、徐々に通常購買に戻ってきており当社販売額も上向いております。

このような結果、当中間連結会計期間については、止血材の製品販売は米国で1,431,466千円、欧州で992,058千円、日本で567,933千円、オーストラリアで266,487千円を計上し、その他事業収益16,503千円を含めると、事業収益3,274,449千円(前年同期比1,438,005千円の増加)と前年同期比78.3%増となり、計画を上回る結果となりました。

費用面に関しては、計画の為替レートよりも円安に振れたことから海外子会社の円ベースでのコストが増加しましたが、現地通貨ベースでは計画値内で進捗しております。費用の為替による増加分は、事業収益が計画を超過したこと及び円安により増加したことで吸収されております。

この結果、営業損失は531,929千円と前期より682,712千円改善しております。事業収益が計画を超過したことにより営業損益計画を266,947千円上回る結果となり、営業赤字の縮小を実現しております。

 

また、主に子会社貸付金に係る為替差損の影響等により、経常損失は797,850千円(前期は経常利益41,213千円)となり、親会社株主に帰属する中間純損失は805,792千円(前期は親会社株主に帰属する中間純損失139,010千円)となりました。前中間連結会計期間は対ドルでは期首134.14円から中間期末149.51円と円安に推移したことによる利益増加の影響がありましたが、当中間連結会計期間は期首156.92円から中間期末153.65円と円高に推移したため、円に換算した際の子会社貸付金の評価額が減少し、損失が発生することとなりました。

 

※1 貢献利益:売上総利益から営業費用を控除した数値

 

[図1](ご参考)為替レートの変動により為替差損益が発生する仕組み

 


 

[研究開発の状況]

直近で追加された又は直近で動きのあった研究開発プロジェクトは下記のとおりであります。

[表3]研究開発プロジェクトの状況

 

 

プロジェクト

ニーズと特徴

状況

小児の心臓手術の止血

小児向けには承認を受けている安全な止血材がない。ピュアスタットは第一候補となりうる。狭い領域でも視野が確保され、塗布しても腫れあがらず、癒着が抑えられることが臨床ニーズ。

欧州で承認申請準備中。

頭部・頸部の止血

ピュアスタットで止血した症例において、術後ドレーンからの廃液が減少し早期の抜管、早期の退院が可能。病院において大幅なコスト削減となり得る。

欧州において販売中。

米国承認申請準備中。

オスラー病(HHT)の止血(鼻)

全身の血管に異常が生じ、出血や動静脈奇形などの症状を引き起こす遺伝性疾患で約8割は繰り返す鼻血をきたす。現在焼灼以外に止める方法がないが、ピュアスタットを用いれば在宅医療ができる可能性。

欧州で学会にてポスター発表済。欧州で臨床研究をもう一つ準備中。

生検後の止血

経内視鏡の生検鉗子による組織採取では肺等部位によって出血した場合有効な止血手立てがなく十分なサンプルの取得が困難。ピュアスタットはこれら止血困難な部位にて使用可能であり十分量のサンプル取得を可能とする。

適応拡大検討中。

前立腺肥大手技の止血

ロボット手術で肥大部を削る際に出るウージングの経尿道カテーテルによる止血。焼灼を減らすことにより術後に男性生殖機能を低下させることを防げる。
 

欧州で販売中

手術ロボット企業とテストマーケティング開始予定。

脳外科における止血

経鼻の内視鏡による脳手術において、焼灼以外で使える唯一の止血材となる可能性。当社が独自に開発した新規ペプチドを用いる。

2024年4月に欧州で承認申請済。

放射線直腸炎の治癒

放射線治療の副作用。難治性の潰瘍と出血。現在は治療法がないアンメットの状態。ピュアスタットを塗布することで潰瘍の治癒が観察されている。

欧英の内視鏡学会で論文発表欧学会がガイドラインにピュアスタットを追加。保険収載を目指し欧州で臨床研究開始。

放射線膀胱炎の治癒

放射線治療の副作用。難治性の潰瘍と出血。現在は治療法がないアンメットの状態。ピュアスタットを塗布することで潰瘍の治癒が観察されている。

ケースレポートが欧州泌尿器学会で発表予定。

炎症性腸疾患の粘膜の治癒

消化管の難治性炎症。原因不明で一度発症すると再燃と寛解を繰り返し、生涯治療が必要となる特定疾患。現在多数の抗炎症剤が用いられているが、粘膜を治癒することで治療効果が上がる可能性。ピュアスタットで粘膜の治癒を目指す。

群馬大学で症例リクルート中。

札幌医大で症例リクルート中。

放射線治療用吸収性

組織スペーサ

前立腺がんや子宮がんの放射線治療の際に、直腸へのダメージを減少させることを目的として、直腸と前立腺や子宮の臓器間に経皮的に注入される。当社ペプチドの生体分解性と高い生体適合性がニーズにマッチすると考えられる。特に子宮がんで注入可能なスペーサは国内未承認であり、早期の開発が待たれている状況。

日本で動物実験実施中。

 

 

プロジェクト

ニーズと特徴

状況

食道狭窄予防

予防方法の確立していないESD後食道狭窄に対して、内視鏡的塗布による防止効果を実証。後出血や瘢痕化による創傷治癒の遅延も抑制。

欧州の動物実験で有効性確認。

広島大学で臨床研究開始。

心筋機能低下の回復(再生)

注入型の心筋機能回復デバイスとしての開発を目指し、当社ペプチドにより心筋再生の足場環境を構築するとともに、幹細胞及び成長因子タンパク質との混合注入による心筋再生の促進を確認した。

米国ハーバード大学で論文準備中。

骨充填材(再生)

患者本人以外の生物由来物質を使用しない、安全性が高く低侵襲で大型の骨欠損にも対応した注入型骨再生材料としての開発を目指す。ピュアスタットを骨再生の足場材料とし、患者本人の体液由来の成長因子を保持させることで低侵襲かつ注入可能な骨再生充填剤としての開発を目指す。歯槽骨再建にとどまらず、腫瘍切除後の骨欠損などの大型な骨欠損への再生材料を目指す。

歯槽骨再生における米国パイロット治験結果をもとに、国内大学と大型の骨再生に向けた共同研究実施中。

乳がんを対象としたsiRNAのデリバリー

がんの悪玉とされる「がん幹細胞」を抑制するsiRNAを、当社ペプチドでドラッグデリバリーすることで、腫瘍縮小だけでなく乳がんの再発や転移抑制にも寄与することも期待して開発中。国内治験において、ヒトへの安全性と腫瘍抑制メカニズム発揮を確認。

国立がん研究センター中央病院で医師主導治験Phase1終了。

悪性胸膜中皮腫を対象としたmiRNAのデリバリー

アスベスト(石綿)に暴露された後、数十年の潜伏期間を経て発症するがん。症例数は向こう10年間増え続けるとされている。発症後は薬剤療法に決め手がなく、非常に侵襲性の高い外科手術をしても予後が悪い。マイクロRNA(miRNA)を、画期的新薬として当社ペプチドでドラッグデリバリーして治療する。

導出先のPURMX社によるグローバルPhase1/2治験準備中(2025年開始予定)。

ワクチンのデリバリー

当社ペプチドと抗原(タンパク質あるいはmRNA)を複合した徐放作用をもつワクチンで、抗体価の上昇、単回投与での抗体獲得、炎症抑制に基づく副作用の低減を目指す。さらに、内包した抗原の安定性を高め、室温保存可能なワクチンとして輸送、貯蔵でのコールドチェーンを不要にできることも期待。

米国Tulane大学、北海道大学と共同研究中。

 

 

(2) 財政状態の状況

当中間連結会計期間における総資産は6,703,724千円(前連結会計年度末比817,442千円の増加)となりました。
 流動資産につきましては、6,609,210千円(同817,460千円の増加)となりました。これは主に、現金及び預金の増加705,314千円、売掛金の増加189,523千円及び棚卸資産の増加57,900千円がある一方、前渡金の減少140,963千円があることによるものです。
 固定資産につきましては、94,513千円(同17千円の減少)となりました。これは、投資その他の資産の減少によるものです。
 流動負債につきましては、1,241,103千円(同295,747千円の減少)となりました。これは主に、未払法人税等の減少243,395千円及び未払費用の減少63,637千円があることによるものです。
 固定負債につきましては、3,655,475千円(同340,648千円の減少)となりました。これは主に、転換社債型新株予約権付社債の償還による減少318,750千円によるものです。
 純資産につきましては、1,807,146千円(同1,453,838千円の増加)となりました。これは主に、資本金及び資本剰余金のそれぞれ1,051,280千円の増加及び為替換算調整勘定の増加164,718千円がある一方、親会社株主に帰属する中間純損失による利益剰余金の減少805,792千円があることによるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ705,314千円増加し、2,068,853千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当中間連結会計期間における営業活動の結果、減少した資金は1,004,028千円(前中間連結会計期間は1,062,300千円の資金の減少)となりました。これは主に、税金等調整前中間純損失794,733千円及び法人税等の支払額229,293千円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当中間連結会計期間における投資活動の結果、減少した資金は10,121千円(前中間連結会計期間は12,279千円の資金の減少)となりました。これは主に、長期前払費用の取得による支出8,689千円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当中間連結会計期間における財務活動の結果、増加した資金は1,725,213千円(前中間連結会計期間は1,880,357千円の資金の増加)となりました。これは主に、株式の発行による収入2,081,673千円がある一方、転換社債型新株予約権付社債の償還による支出354,166千円があることによるものです。

 

(4) 経営方針・経営戦略等

当中間連結会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題

当中間連結会計期間において、新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はありません。

 

(6) 研究開発活動

当中間連結会計期間における当社グループの研究開発費の総額は289,101千円であります。当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありませんが、当中間連結会計期間の末日現在における研究開発活動の進捗状況については、(1)経営成績の状況 の [研究開発の状況] に記載してあります。

 

3 【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。