1 【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項】

代表取締役社長執行役員中村篤弘は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用しております。

なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものであります。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止または発見できない可能性があります。

 

2 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】

財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である2024年5月31日を基準日として行われており、評価にあたっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠いたしました。

本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行ったうえで、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定しております。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析したうえで、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行いました。

財務報告に係る内部統制の評価範囲は、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定いたしました。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、当社及び連結子会社5社を対象として行った全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定いたしました。なお、連結子会社6社及び非連結子会社1社については、金額的及び質的重要性の観点から僅少であると判断し、全社的な内部統制の評価範囲に含めておりません。

業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、各事業拠点の当連結会計年度の売上高(連結会社間取引消去後)の金額が高い拠点から合算していき、当連結会計年度の連結売上高の概ね2/3に達している事業拠点を「重要な事業拠点」といたしました。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として、売上高、売掛金及び棚卸資産等に至る業務プロセスを評価の対象といたしました。さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加しております。

しかしながら、「3 評価結果に関する事項」に記載のとおり、上記の方針に基づいて必要となる評価手続について、財務報告に係る内部統制の評価を完了することができませんでした。

 

3 【評価結果に関する事項】

財務報告に係る内部統制の評価を実施した範囲において、下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備を識別しました。当該不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。したがって、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました。

 

 

当社は、当社の会計監査人である監査法人アヴァンティア(以下「アヴァンティア」といいます。)より、一部の広告売上取引における売上高並びに原価の計上について、不適切な会計処理がある旨の疑義(以下「本事案」といいます。)が生じているとの指摘を受けて、特別調査委員会を設置いたしました。特別調査委員会による調査結果及びアヴァンティアによる指摘から、当社グループにおいて一部の広告取引やその他BtoB事業における売上高並びに原価の過大計上がなされていたことに加え、原価並びに販売費及び一般管理費の計上額が不足していたことが明らかになりました。

当社グループにおいて、以下のとおり、信頼性のある財務報告を実現するための内部統制が有効に機能しておりませんでした。

(1)役職員のコンプライアンス意識の醸成が不十分であったこと

本事案に関与した元役員は、不適切な会計処理であることを知りながら予算達成のために本事案をはじめとする会計操作を起草し実施したこと、また、本事案に関与した従業員は、いずれも当初より不適切な会計処理であると認識していたり、法令違反の認識はなかったがモラルに欠けた事案である認識を持っていたことから、当社においては、一部の役職員のコンプライアンス意識醸成が不十分でした。

(2)牽制機能の低い組織体制であること

本事案に関与した元役員は、当社組織上、業務執行部門であるヘルスケア事業本部を管掌するのに加え、管理部門である総務部、経理財務部及び人事部を束ねるコーポレート本部並びに経営企画本部も1人で管掌する体制でした。そのため、元役員は管理部門を含む全ての本部長を評価する立場にあったことから、当該元役員に対する牽制機能が十分に発揮されないという構造的な問題がありました。

(3)内部通報制度が有効に機能しなかったこと

本事案に関与した従業員は、本事案に関与した元役員の指示に基づき加担しつつも、一定の問題認識は持っていたことを踏まえると、本来は内部通報制度により不正告発をすべきところ、そのような選択を検討した事実はありませんでした。

当社の内部通報制度は、総務部や外部の弁護士へ役職員全員が直接通報することができ、かつ、役職員全員が見ることができる社内イントラへの掲示がされているものの、役職員に対する内部通報制度の周知が十分になされていなかったことから、当社の内部通制度は有効に機能しておりませんでした。

 

(4)本質的な議論を回避する社内情報共有文化・作法であったこと

本事案は、通常の取引とは異なる商流である点や、取引金額の大きさを踏まえると、当該商流に参加することの経済合理性について会社として慎重に検討すべきところ、一部の役職員の間だけで情報共有や意思疎通が行われ、それ以外のメンバーへの説明を意図的に省略する、聞こえのよいところだけを説明することにより、取締役会や監査役会への情報提供が十分になされませんでした。その結果、取締役会や監査役会において十分な議論を行うことができませんでした。

(5)各取締役の役割分担と監視機能が不十分であったこと

執行サイドの各取締役は、SOKUYAKU事業とそれ以外の事業といった事実上の分業体制があり、本来期待される取締役間での牽制機能が弱い状況にありました。このような各取締役の役割分担に加えて、本事案に関与した元役員が1人で事業部と管理部門を所管する組織体制が相まって、実質的に当該元役員に対する牽制機能は不十分でした。

(6)実績モニタリング体制がとられていなかったこと

当委員会は、当社において広範に不適切な会計処理が行われたことの大きな要因として、本事案に関与した元役員が売上及び営業利益の計画達成は外部に約束した当たり前のこと、と強く認識していたことでした。

当社の事業であるD2C通販事業は、売上高と広告費との相関関係が複雑な構造であり、単に結果としての財務数値だけを比較しても実態を把握することが難しい特徴があります。広告費をかければ売上があがるという単純なものではなく、広告の効果は初回顧客の獲得に効果があり、広告支出を絞ると一時的に新規顧客獲得は鈍る一方で、既存顧客からの売上は維持される結果、利益が発生する構造となっております。

そのため、月次あるいは週次での会計数値を用いた予実比較では、このような構造を背景にした広告施策の影響がどのように事業成果に影響しているか、取締役及び予算策定責任事業部が適切に把握することが困難であるといえます。

したがって、例えば、実績が予算を下回る環境下で、実績を上振れさせる目的の不正な施策の実行を適時に検知すべく、予実比較のみではなく案件ごとの月次利益率分析などの実績モニタリングを実施すべきであったところ、これができておりませんでした。

(7)内部監査機能が不十分であったこと

当社の内部監査室は、本事案について特別調査委員会の組成後に認識するに至りました。内部監査室による日常的な監査手法も、個別取引サンプル抽出による取引証憑の追跡調査が主たる手法で、内部統制のキーコントロール変更の有無が中心になっているとのことであり、本事案のような不正検出に向けた内部監査となっていなかったといえます。

 

 

(8)会計監査人へ会計処理にかかる方針を相談する上で必要な情報伝達が不足していたこと

当社はこれまでも会計処理にかかる方針については会計監査人と相談してまいりましたが、一部の会計論点については当社の判断とその論拠を踏まえた十分な情報伝達ができておりませんでした。

また、ポジションペーパーを作成することなく口頭での相談で済ませてしまった結果、事後的な会計上の解釈の齟齬が生じてしまったと認識しております。

 

これらの原因は、当社の統制環境、情報と伝達及びモニタリングに不備があり、全社的な内部統制が機能しなかったことによるものと認識しております。また、全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに関する内部統制にも不備があったと認識しております。当該内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼしており、開示すべき重要不備に該当すると判断いたしました。

上記の開示すべき重要な不備については、当事業年度末日以降に判明したため、当該開示すべき重要な不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。なお、上記の開示すべき重要な不備に起因する必要な修正は、財務諸表及び連結財務諸表に適正に反映しております。

また、当社は、財務報告に係る内部統制の評価について、以下の重要な評価手続を実施できませんでした。したがって、当事業年度末時点における財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できないと判断しました。

①広告宣伝費計上に係る業務プロセス(当社)

②販売に係る業務プロセス(連結子会社1社)

③購買に係る業務プロセス(連結子会社1社)

当社は、「2 評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項」に記載のとおり、選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として、売上高、売掛金及び棚卸資産等に至る業務プロセスを評価範囲とすることに加え、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象としておりました。

①については、当社は上記のとおり全社的な内部統制及び全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに関する内部統制に不備があり、開示すべき重要な不備に該当すると判断し、開示すべき重要な不備に起因する必要な修正を財務諸表及び連結財務諸表に適正に反映しておりますが、かかる修正の中で、誤謬リスクが大きい取引を識別したため、評価範囲の見直しを行い広告宣伝費計上に係る業務プロセスについて追加で評価範囲に含めるべきであると判断いたしました。

しかしながら、上記の開示すべき重要な不備については、当事業年度末日以降に判明したため、開示すべき重要な不備に起因する必要な修正及び評価範囲の見直しについても当事業年度末日以降となってしまったこと、その結果当事業年度末日時点では、重要な評価手続を実施することができませんでした。

また、②,③については、特別調査委員会の対応及び不適切な会計処理の修正に優先的に注力せざるを得なかった等の理由により、重要な評価手続を完了することができませんでした。

当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を十分に認識しており、開示すべき重要な不備を是正するために、特別調査委員会の再発防止策の提言等に沿って、下記を含む再発防止策を策定・実行し、適正な内部統制の整備・運用を図ってまいります。

 

(1)コンプライアンス意識の強化

① 経営トップからの継続的なメッセージの発信

コンプライアンスを最優先とした組織風土を醸成するために、経営トップ自らコンプライアンス遵守が経営の最重要課題であることを再度明確にし、役職員に対し継続的なメッセージを発信いたします。具体的には、年に一度代表取締役社長自らスピーチを行うとともに、その後スピーチの概要をグループ全役職員に対してメールで配信いたします。

② 役職員のコンプライアンス意識の向上

経営トップからの継続的なメッセージの発信に加えて、コンプライアンス意識の維持向上のため、グループ全役職員を対象に、本事案等を踏まえたコンプライアンス研修を毎年実施いたします。

 

(2)執行サイドに対する牽制機能の強化

① 取締役執行役員CFOの選任と社外取締役の増員

当社では、事業執行サイドの最高責任者である専務取締役執行役員COOが事業本部のみならず、コーポレート本部及び経営企画本部等も所掌していたことから、事業本部における予算達成のために企図された不正に対し、管理部門による内部牽制が十分に機能しづらい体制となっておりました。

これを是正するため、当社は、コーポレート本部及び経営企画本部を所掌する最高財務責任者(CFO)を取締役に選任し、管理部門による牽制機能を強化してまいります。

さらに、社外取締役を増員することで、取締役会の監督機能を強化してまいります。

② 異常検知のための実績モニタリング

本事案は広告施策がどのように事業成果に影響しているのかについて売上高と広告費には明確な相関関係が存在しないという特殊性から、従来主に行っていた予算実績差異分析によるモニタリングに加え、コーポレート本部が主体となって、一定金額以上の案件に対して利益率実績の月次推移分析等といった 方法により、異常をいち早く検知することができるモニタリング体制を構築いたします。同体制の下で検知した異常については、その取引の商流や条件の経済合理性を検討し最高財務責任者(CFO)に報告することを徹底いたします。

 

(3)内部通報制度の実効性の向上

当社の内部通報制度は、総務部や外部の弁護士へ役職員全員が直接通報することができ、かつ、当該制度の内容や通報窓口について、役職員全員が見ることができる社内イントラに掲示されているものの、役職員に対する内部通報制度の周知が十分になされていなかったことを踏まえ、内部通報制度の実効性を向上すべく、コンプライアンス研修の内容に内部通報制度に関する内容も織り込むことで、制度の周知及び浸透を図ってまいります。

(4)取締役会や監査役会へ十分な情報提供を行うことによる監督機能の強化

今回の事態について、取締役会及び監査役会への情報提供が不十分であったがために、十分な議論がされておりませんでした。

そのため、コーポレート本部が、取引開始前の契約審査等を通じて、例えば今回のように会計上の論点がある重要な事項を検知した場合には、最高財務責任者(CFO)が関与し、最高財務責任者(CFO)より取締役会に上程又は報告することとし、かつ、取締役会開催日に先立って、取締役及び監査役に対して、充実した審議をするための十分な資料を共有することを徹底いたします。

(5)内部監査機能の強化

内部監査の実効性を確保するため、必要に応じて外部の専門家を利用することで、内部監査の人的リソースを確保いたします。また、不正リスクを考慮した内部監査を実施し、内部監査の過程で不正の兆候等を検知した場合には、監査役会へ報告することを義務化いたします。

さらに監査役、内部監査部門、会計監査人によるミーティングを少なくとも四半期毎に開催し、適時・適切な情報共有と意見交換を実施いたします。

(6)会計監査人との連携の強化

会計監査人への相談対象とする会計論点について、相談に先立ち、当社の判断とその論拠についてポジションペーパーを作成いたします。また、当社と会計監査人間で確認・合意した会計処理にかかる方針について事後的な会計上の解釈の齟齬を防ぐため、整理して書面化することを徹底いたします。

 

4 【付記事項】

該当事項はありません。

 

5 【特記事項】

該当事項はありません。