第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、産業防災保安機器メーカーとして、「人々が安心して働ける環境づくり」を永久のテーマとして社会の発展に貢献することを経営理念とし、良き企業市民として、法令遵守と環境保全に努め社会的責任を果たすため、以下の5つの経営方針を掲げております。

 

・技術の開発と経営の合理性から、適正な利益を追求し、持続的な発展を目指す

・お客様には、高品質の製品と充実したサービスを提供し、安全な環境づくりに貢献する

・株主には、長期的視点に立った企業価値の向上をもって報いる

・取引先とは、安定した取引を目指し、共存共栄を図る

・従業員には、生活の安定と労働環境の向上をもって報いる

 

(2)目標とする経営指標

 事業活動における収益性の向上と同時に、資本効率の向上を図るため、営業利益及び自己資本当期純利益率(ROE)を重視しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

 当社グループは、中長期的な目標として産業用ガス検知警報器分野で国内のトップメーカーから、世界のトップメーカーを目指し、①競争力(価格・技術・品質)の強化、②販売サービス体制の最適化を積極的に推進しております。

 競争力強化の具体策としては、自社独自の技術による新製品の開発により、「多機能化」、「小型化」、「高信頼性」を実現する製品差別化戦略で、価格・技術・品質面での競争力の強化を目指します。

 販売サービス体制の最適化につきましては、ユーザーの工場の新設・移転等の事業環境の変化に対応するため、拠点の新設・統合等を含む柔軟かつ機動的な再配置、最適なサービス体制を目指し、運用面での技術指導から保守点検に至るまで万全なサービスネットを構築し、ユーザーニーズを素早くキャッチアップする体制づくりを推進しております。この結果、主力製品である産業用ガス検知警報機器は、半導体、石油化学、建設、電気・ガス、鉄鋼、船舶等の幅広い業種にてご利用いただいております。

 今後は、海外市場シェア拡大の経営方針のもと、海外進出を加速させ、世界市場における当社シェアの拡大を目指します。

 

(4)優先的に対処すべき課題の内容

 今後の見通しにつきましては、コロナ禍の影響が収束に向かい経済活動も徐々に回復するものと予想されます。一方で、部材・資源価格の高騰、為替変動等が与える影響、ロシア・ウクライナ情勢の長期化などの地政学リスクの高まりに十分注意する必要もあり、また、主要顧客である半導体業界ではメモリ半導体に対する世界的な需要の減速による在庫調整が発生していることなどから、予断を許さない状況は続くと思われます。

 このような状況のもと、当社グループは、産業用ガス検知警報機器開発のフロントランナーとして、世界の人々が安心して働ける環境づくりに引き続き貢献すべく、次の課題に取り組んでおります。

 

1.海外市場シェア拡大を中心とした、国内外での販売・メンテナンスネットワークの拡大強化、サービス体制の更なる充実

・海外関連会社や海外子会社の整備

・営業支援ツール導入による営業DX化の取り組み

・海外販売店のメンテナンス能力向上に向けた教育支援体制の強化

・国内市場におけるシェア拡大に向けた販売強化

 

2.多様化するマーケットニーズに対応した製品ラインナップの充実

・多様な市場、顧客の要望に対応した多品種製品開発の継続

・脱炭素社会の実現に向けた新規製品開発の強化

・技術開発力強化のための積極的投資

 

3.品質・生産性の向上及び徹底したコストの低減

・技術開発力の向上や製品開発の早期化

・変化する市場環境に対応可能なQMS・EMSへの強化、運用の安定化

・社内基幹システムの刷新による業務の効率化、DX化の推進

・生産体制、サプライチェーンの再構築による生産リスクの低減

 

4.事業基盤の強化

・積極的な人材育成及び従業員エンゲージメントの向上

・内部統制機能、コーポレートガバナンスの充実

 

5.社会の一員としてESG、SDGs課題への積極的な参加

・事業領域を通じたSDGs目標達成への貢献

・再生可能エネルギー導入等によるCO2排出量削減推進

 

 『見えない危険を、見える安心に』をテーマに、当社グループに課せられたミッションをクリアすべく、当社グループの持続的成長の実現を目指し、ネクストステージに向かってグループ一丸となって取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 「理研計器グループはよき企業市民として『人々が安心して働ける環境づくり』の経営理念に基づく事業を通して、持続可能な社会の発展に貢献する」ことで、社会的責任を果たしてまいります。そして従業員一人一人が、企業理念・スローガン・テーマを理解し、それを会社と共有し、いきいきと働き、それが社会の役に立ち、企業としてさらに成長していくことを目指しております。

 サステナビリティ活動の方向性を示す「サステナビリティポリシー」を制定し、サステナビリティへの取り組みを具体的に方向づける大きな起点としました。サステナビリティポリシーでは、以下の3つを大きな柱としています。

①産業基盤を支えるサステナビリティ

②開発・生産活動におけるサステナビリティ

③よき企業市民であることのサステナビリティ

すべての従業員が事業活動を通じて取り組み、社会の持続可能性に貢献するサステナビリティ経営に努めてまいります。

 

(1)ガバナンス

 当社では、気候変動を含む環境問題をはじめ、多様性の尊重や人的資本等の社会課題など、サステナビリティ課題への対応を経営上の重要課題と認識しております。サステナビリティ課題に関するリスク・機会の評価と管理、指標及び目標の設定、施策の実施について、サステナビリティ(SDGs活動)を推進する部門にて議論します。その結果は、経営の意思決定機関である取締役会へ適宜報告されます。

 

(2)リスク管理

 当社では、サステナビリティ課題に関連するリスクについて、サステナビリティ(SDGs活動)を推進する部門がリスクの特定・評価を実施し、取締役会に対して報告しています。

 

(3)気候変動に対する取り組み

―気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)への対応―

①ガバナンス

 当社では、気候変動への対応を経営上の重要課題と認識しております。気候変動に関するリスク・機会の評価と管理、KPIの設定、及び施策の実施について、サステナビリティ(SDGs活動)を推進する部門にて議論します。その結果は、経営の意思決定機関である取締役会へ適宜報告されます。

 

②戦略

(a)気候変動に関するシナリオの策定

 当社では、TCFD提言に基づき、気候変動関連のリスク、機会が事業へ与える影響の把握を目的に、外部コンサルタントの協力のもとシナリオ分析を行いました。

 シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)等の科学的根拠等に基づき、1.5℃シナリオと4℃シナリオ、それぞれの気温上昇時の世界観を定義し、2020年度より将来までの間に事業に及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を定性評価しました。

 

<シナリオ群の定義>

1.5℃の世界観

4℃の世界観

 気候変動に関する積極的な国内政策・法規制が進み、炭素税の導入や再生可能エネルギーの積極的な活用が想定される。その結果、再エネ・省エネ設備の導入対応コストが増加することが予想される。

 一方でEVや再生可能エネルギーの普及に伴う半導体需要の更なる拡大による、半導体業界向けの製品の売上拡大も想定される。

気候変動に関する国内政策・法規制が進まず、異常気象の激化が進むことが予想される。その結果、拠点の被災や物流網の寸断が起こり、売上機会の損失や復旧費用が発生することが想定される。

 

 

(b)気候変動関連リスク・機会の一覧

 当社における気候変動関連リスクと機会の一覧については、以下のとおりです。

区分

事業インパクト

移行

政策・法規制

炭素税導入

リスク 炭素税の導入により、燃料調達コストへの課税や電力料金の高騰、原材料への価格転嫁が起こり、操業コストが増加する。

温室効果ガス排出量規制

リスク 温室効果ガス排出量の規制により、省エネ設備の導入や再エネへの転換等の対応コストが増加する。

市場

エネルギーミックスの変化

リスク 電源構成に占める再生可能エネルギーの比率が高まることで、電力価格が(平均的に)上昇し、操業コストが増加する。

機会 電源構成の占める再生可能エネルギーの比率が高まり、再生可能エネルギーの調達が容易になる。

原材料価格の変化

リスク 電化が進むことで、銅や白金についての需要が増加し、需給のバランスの変動による調達コストが増加する。

技術

再エネ・省エネ技術の普及

機会 EVや再エネの普及により、半導体需要が高まり、半導体産業向けの製品需要が拡大する。

機会 化石燃料に代わりリチウムイオン電池が一般化し、EV等への利活用によりリチウムイオン電池の需要が高まり、リチウムイオン電池製造市場向けの製品需要が拡大する。

次世代技術の発展

機会 AI・IoTを活用した次世代インフラの普及によるスマートシティ化の進展により、半導体の需要が高まり、半導体産業向けの製品需要が拡大する。

評判

投資家の評判変化

機会 脱炭素化への移行を積極的に行うことで、投資家からの評価が高まる。

物理

緊急物理

異常気象の激甚化

リスク 台風等の異常気象の激甚化に伴い、生産拠点の被災や物流網の寸断等のリスクが増加する。

慢性物理

海面の上昇

リスク 海面上昇が発生した場合、沿岸部にある拠点を移転する必要が生じる。

 

 この結果、リスクとしては炭素税の導入による操業コストの増加、銅・白金の需要拡大に伴う調達コストの増加、異常気象の激甚化による生産拠点の被災及び物流リスクなどが懸念されます。

 また、機会としては、再生可能エネルギー調達の容易化やEV等の普及に伴う当社の主要顧客である半導体業界の活況が見込まれます。

 

③リスク管理

 当社では、気候変動に関連するリスクについて、サステナビリティ(SDGs活動)を推進する部門がリスクの特定・評価を実施し、取締役会にて報告しています。

 

④指標及び目標

(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標と目標

 当社は、気候関連のリスク・機会を管理するため、以下のとおり指標と目標を定め、カーボンニュートラルの実現を目指してまいります。

 

<気候関連リスク・機会の管理に用いる指標と目標>

指標

目標年度

目標内容

温室効果ガス排出量

(Scope1・2)

2030年

温室効果ガス排出量の90%削減(2019年度比)

2050年

カーボンニュートラル

 

(b/c)温室効果ガス排出量(Scope 1・2)

 当社における温室効果ガス排出量実績は以下のとおりです。

 

温室効果ガス排出量(t-CO2)

2019年度

2020年度

2021年度

Scope 1

817

665

716

Scope 2

3,818

4,227

1,419

Scope 1・2 合計

4,635

4,892

2,134

 

算定範囲:当社単体

電力の排出係数:環境省・経済産業省「電気事業者別排出係数」の各年度分

電力以外の排出係数:環境省・経済産業省「温室効果ガス算定・報告マニュアル」を参照

 

 2021年4月より、本社社屋で使用する電力を「再生可能エネルギー100%」に切り替えました。その後、開発センター・生産センター、一部の営業所も順次切り替えを実施しました。その結果、温室効果ガスの排出量を大幅に削減しました。

 

(4)人的資本に関する取り組み

①戦略

(a)採用及び人材の育成について

 採用では、性別や国籍、価値観などにとらわれることなく、多様な経験・技能・キャリアを有する人材を積極的に採用しております。

 人材の育成では、階層別研修や教育訓練、部門ごとのスキルアップ研修など目的別に成長機会を提供しております。また、自立的な成長支援として、人事制度によるキャリアパスの提示や語学や多岐に渡る資格取得奨励金制度などを導入しております。

 キャリアプランと階層別研修については、当社ウェブサイトの採用ページに掲載されておりますのでご覧ください。

 

(b)社内環境整備について

 従業員個々のバックグラウンドやライフスタイルに応じた多様な働き方(リモートワーク、短時間勤務、時間単位年休など)を整備し、研修や教育訓練、社内イントラを通じて多様性の受容に関する啓蒙や諸制度の情報発信を行うことで、従業員同士の相互理解を深め、多様な人材が働きやすい環境や組織風土の醸成に取り組んでおります。

 

②指標及び目標

―中核人材の登用等における多様性の確保に関する指標と目標―

(a)女性の中核人材への登用等について

 「次世代育成支援対策推進法及び女性活躍推進法に基づく行動計画」において、女性採用比率25%以上を目標に掲げ積極的に女性の採用を行っております。

 2023年3月末時点で女性従業員は全従業員の15.9%、女性管理職は全管理職の3.8%です。積極的な採用や中核人材への登用を推進し、2030年までに中核人材に占める女性割合5%以上を目指してまいります。

 

(b)外国人の中核人材への登用等について

 海外市場シェア拡大の事業戦略の下、適宜、外国人の採用を行っております。

 2023年3月末時点で外国人従業員は全従業員の0.8%、外国人管理職はおりません。現在は外国人従業員の比率が低く、中核人材への登用が進んでおりませんが、事業戦略に基づき外国人採用を強化し、外国人従業員の比率を高めて中核人材への登用を推進してまいります。

 

(c)中途採用者の中核人材への登用等について

 即戦力の専門人材や経験者を積極的に採用しており、各部門や海外子会社の中核人材への登用等を行っております。

 2023年3月末時点で中途採用者の管理職は全管理職の27.8%です。なお、中途採用者は、現状一定の採用数を確保できており、中核人材への登用等も一定数いることから、特段の目標は設定しておりません。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)法的規制について

 当社グループが取り扱うガス検知警報機器類の設置義務及び保守点検については、主に以下の法的規制があります。新たな法規制や改廃は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 上記の法的規制に関するリスクが顕在化する可能性を推測することは困難ですが、当社は業界内外からの情報収集に努め、あらかじめ備えることにより当社グループの業績への影響を抑えてまいります。

 

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(2)製品の欠陥について

 当社グループは、品質管理の国際規格に基づく製品製造並びに内部基準による保守・点検業務を行っておりますが、製品の欠陥や製品設置時の調整ミス等に起因する誤作動により、ユーザーに物的・人的損害を与える可能性があります。

 また、製造物及び完成作業リスクを対象とした総合賠償責任保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

 製造物責任賠償につながるような重大な製品の欠陥や調整作業ミスは、多額の費用や当社グループの評価に重大な影響を与え、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)研究開発について

 当社グループは、電気・物理・化学など幅広い技術力をベースに、ガスセンサーの研究開発から、最先端技術を駆使した新製品の開発を最も重要な経営課題としております。

 製品の開発には、ユーザーニーズにそった使用目的・使用場所に応じた新技術開発を行っておりますが、当社グループの経営成績に寄与する保証はありません。

 

(4)設備投資動向の変動について

 当社グループが取り扱うガス検知警報機器の需要は、主にエレクトロニクス・石油化学・船舶業界等の民間設備投資、電力・ガスを含む公共設備投資の動向に左右されます。

 よって、経済環境の変化による設備投資の変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外事業展開について

 当社グループでは、日本における事業活動に加え、製品の輸出をはじめとする事業活動を海外にも展開しております。これらグローバルな事業展開に関するリスクとして、事業を展開している国及び地域における、政治経済情勢の悪化、輸出入・外資の規制、予期せぬ法令の改変、治安の悪化、国家間の経済制裁、テロ・戦争・感染症の発生その他の要因による社会的混乱等が考えられます。当社グループとしては、当該政治経済情勢や、各国・地域の規制動向に注視し、状況に応じた対応がとれるよう努めていますが、これらの事象の発生により、海外における当社グループの事業活動に支障をきたし、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)資材等の調達について

 当社グループの生産活動において調達先が限られる特殊な材料、資材等を一部使用しており、代替材料の検討並びに該当材料・資材等の複数購買の推進に努めております。しかしながら、これらの供給の逼迫や遅延、価格変動等が生じた場合には、購入費用の増加、生産の遅延等により当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)新型コロナウイルスに関するリスクについて

 新型コロナウイルス等の感染症拡大により、当社グループの生産体制、物流体制、営業活動等の事業活動の継続に支障が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは2020年4月7日の緊急事態宣言の発令以降、全事業所にて在宅勤務、時差出勤、Web会議システムの活用等、新型コロナウイルス感染予防対策を強化し、継続的にお客様、お取引先様、従業員とその家族の感染防止に努めてまいりました。新型コロナウイルス感染症の位置づけは、2023年5月8日より「5類感染症」へ移行し、当社も在宅勤務から出社へ切り替えておりますが、今後、新型コロナウイルス感染症が再拡大し、事業活動に支障が来たす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の売上高は、世界的な半導体需要や電気自動車への積極投資の潮流を受けて、中国・台湾を中心とする東アジアの半導体業界や中国におけるリチウムイオン電池業界の設備投資が当初の想定を超えて活況であったことに加え、円安の効果もあり、好調に推移したことから、450億4百万円(前連結会計年度比20.4%増)となりました。

 営業利益は、全社をあげてのコスト削減推進の結果、売上原価率が前連結会計年度50.7%から当連結会計年度48.5%に改善したこと等により、115億5千1百万円(前連結会計年度比37.5%増)となりました。

 営業外損益は、主として為替差益が2億6千5百万円増加した一方、有価証券評価損が2億4千1百万円増加したことにより、前連結会計年度4億1千6百万円の利益(純額)から当連結会計年度3億9千2百万円の利益(純額)となり、経常利益は119億4千4百万円(前連結会計年度比35.4%増)となりました。

 特別損益は、主として固定資産処分損を1億2百万円計上したこと及び災害による損失を9千9百万円計上したことにより、前連結会計年度7百万円の利益(純額)から当連結会計年度1億9千万円の損失(純額)となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は117億5千3百万円(前連結会計年度比33.2%増)となりました。

 「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を合わせた税金費用は、前連結会計年度の27億7千3百万円から当連結会計年度は30億9千万円と、3億1千6百万円増加しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は86億7千万円(前連結会計年度比45.4%増)となりました。

 当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末と比較して81億4千万円増加し、797億4千6百万円(前連結会計年度末比11.4%増)となりました。

 流動資産につきましては、仕掛品が27億3千1百万円増加、原材料及び貯蔵品が21億4千1百万円増加、現金及び預金が20億5千4百万円増加、受取手形及び売掛金が12億4千万円増加した一方、有価証券が15億3千8百万円減少しております。

 固定資産につきましては、建設仮勘定が3億6千2百万円増加、投資有価証券が1億5千2百万円増加した一方、建物及び構築物が4億9千1百万円減少しております。

 負債につきましては、支払手形及び買掛金が11億7百万円増加、流動負債その他に含まれる未払金が4億3千8百万円増加した一方、流動負債その他に含まれる未払消費税等が5億7百万円減少したこと等により、前連結会計年度末と比較して16億1千5百万円増加し、163億6千3百万円(前連結会計年度末比11.0%増)となりました。

 純資産につきましては、前連結会計年度末と比較して65億2千4百万円増加し、633億8千3百万円(前連結会計年度末比11.5%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ、9億2千3百万円増加し、189億1千3百万円(前連結会計年度末比5.1%増)となりました。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益117億5千3百万円、減価償却費17億4千万円、仕入債務の増加10億8千6百万円があった一方で、棚卸資産の増加55億4千2百万円、法人税等の支払額33億6千3百万円、売上債権の増加10億9千3百万円があったこと等により、前連結会計年度と比べ収入が44億6千1百万円(△49.4%)減少し、45億7千2百万円となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の償還による収入10億4千9百万円、定期預金の払戻による収入10億2千9百万円があった一方で、定期預金の預入による支出10億3千1百万円、有形固定資産の取得による支出9億4千3百万円、有価証券の取得による支出8億8千万円があったこと等により、前連結会計年度と比べ支出が19億1千7百万円(△74.7%)減少し、△6億4千8百万円となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額18億3千6百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出16億8百万円があったこと等により、前連結会計年度と比べ支出が13億2百万円(44.1%)増加し、△42億5千5百万円となりました。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

自己資本比率(%)

77.6

78.8

79.3

78.4

79.5

時価ベースの自己資本比率

(%)

87.3

78.8

99.6

159.3

165.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.6

0.5

0.9

0.4

0.7

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

147.7

187.6

120.5

190.6

111.4

 

自己資本比率           :自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率     :株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い

 

(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

(注2)株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

(注3)営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの事業は、各種産業用測定機器の製造・販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の状況につきましては、機種別の情報を記載しております。

a.生産実績

機種別

生産高(千円)

前連結会計年度比(%)

定置型ガス検知警報機器

20,383,409

125.7

可搬型ガス検知警報機器

7,314,731

115.8

その他測定機器

1,012,859

97.8

合計

28,711,000

121.8

(注)金額の表示は、販売価格換算で表示しております。

 

 

b.受注実績

機種別

受注高

(千円)

前連結会計年度比

(%)

受注残高

(千円)

前連結会計年度比

(%)

定置型ガス検知警報機器

32,342,563

107.9

9,259,627

117.6

可搬型ガス検知警報機器

13,455,181

124.3

2,923,200

124.4

その他測定機器

1,249,519

94.4

439,161

123.2

合計

47,047,263

111.7

12,621,989

119.3

 

 

c.販売実績

機種別

販売高(千円)

前連結会計年度比(%)

定置型ガス検知警報機器

30,955,063

117.9

可搬型ガス検知警報機器

12,882,820

130.1

その他測定機器

1,166,923

97.1

合計

45,004,807

120.5

(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

キオクシア株式会社

3,878,721

10.4

2.当連結会計年度は販売実績が10%未満のため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における経済情勢は、新型コロナワクチン接種の進展、移動制限の緩和等により、経済活動は緩やかに再開の動きがみられました。その一方で、中国のゼロコロナ政策の継続に伴う一部の都市のロックダウンによるサプライチェーンの混乱、ロシア・ウクライナ情勢に起因する資源価格の高騰、急激な円安による為替相場の変動等により、依然として経済の先行きは不透明な状況が続いております。

 当社グループを取り巻く経営環境としては、世界的な半導体需要や電気自動車への積極投資の潮流を受けて、中国・台湾を中心とする東アジアの半導体業界や中国におけるリチウムイオン電池業界の設備投資が当初の想定を超えて活況であったことに加え、円安の効果もあり、好調に推移しました。

 このような情勢のなか、当社グループは、半導体に代表される部材の供給不足の中においても、顧客の納期要求に適確に応えるべく、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の維持向上に取り組んで参りました。

 さらに、海外市場シェアの拡大を図るため、北米子会社の完全子会社化や、海外子会社へ当社人材を積極的に派遣するなど、海外子会社の体制の充実を進めました。また、中長期的な企業価値の向上の観点から、サスティナビリティを巡る課題にも積極的に取り組み、SDGs、脱炭素化を意識した開発・生産・販売・アフターメンテナンスサービス活動に努めてまいりました。

 これらの諸施策の結果、当連結会計年度の売上高は450億4百万円(前連結会計年度比20.4%増)、営業利益は115億5千1百万円(前連結会計年度比37.5%増)、経常利益は119億4千4百万円(前連結会計年度比35.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は86億7千万円(前連結会計年度比45.4%増)となりました。

 

 当社グループの事業は、各種産業用測定機器の製造・販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容に代えて、以下に機種別の売上の概況を記載いたします。

 

定置型ガス検知警報機器

 定置型ガス検知警報器は、主要顧客である国内及び東アジア地域の半導体工場、並びに国内の半導体製造装置メーカー向けが引き続き好調だったことから、 「スマートタイプガス検知部 GD-70D」を中心に、売上は好調に推移しました。

 また、中国におけるリチウムイオン電池製造設備投資も拡大を継続していることから、 「炉内セフティモニター SD-2500」を中心に、国内のリチウムイオン電池製造装置メーカー、及び中国の同生産工場向けに売上を伸ばしました。

 この他、船舶業界、官公庁向けの売上が堅調に推移しました。

 アフターメンテナンスサービスも好調に推移したことから、売上高は309億5千5百万円(前連結会計年度比17.9%増)となりました。

 

可搬型ガス検知警報機器

 可搬型ガス検知警報機器は、世界各地において経済活動が回復基調となったことにより、主力機種であるポータブルガスモニター「GX-3Rシリーズ」は、国内・海外の石油及び石油化学、船舶業界向けを中心に売上を伸ばしました。

 アフターメンテナンスサービスも堅調に推移したことから、売上高は128億8千2百万円(前連結会計年度比30.1%増)となりました。

 

その他測定機器

 その他測定機器の売上高は、11億6千6百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。

 幅広い業界並びに学術分野におけるこれまでの活用実績を、脱炭素社会実現並びに地球温暖化防止に対するソリューション提供に展開し、引き続き市場開拓に取り組みます。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、設備投資、法人税等の支払い、借入金の返済、配当金の支払い等であり、財源は主として自己資金(営業活動によるキャッシュ・フロー)または金融機関からの借入によっております。財務政策といたしましては、常に最適な財務比率と資金効率をバランスよく維持し、財務体質のより一層の健全化を図ることとしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(a)繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。

 

(b)固定資産の減損処理

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、創立以来「人々が安心して働ける環境づくり」を永久のテーマとし、電気・物理・化学など幅広い技術力をベースに、センサの研究開発から、最先端技術を駆使した新製品の開発を最も重要な経営課題としております。

 製品の開発では、ユーザーニーズにそった使用目的・使用場所に応じた新技術開発を行っており、世界で最も信頼されるトップブランドとしての地位を維持し続けるように、積極的な研究開発活動を行っております。

 

(1)研究開発目的

・ガスセンサの高機能化(高感度化・対象ガス選択性向上・インテリジェント化)の研究開発

・産業災害(ガス爆発・ガス中毒・酸欠)を防止する製品・システムの開発

・環境汚染・公害を防止する製品・システムの開発

・各種センサを応用した新市場向けの製品開発

・新技術・各種ソフトを取り入れた新分野向けの製品開発

 

(2)主要課題

・高信頼性センサの確立

・製品の小型化・多機能化の追求、操作性・メンテナンス性の向上

・新技術・新ソフト・各種通信技術の導入

 

(3)研究開発体制

 当社グループの研究開発は、当社の技術開発本部が担い、研究開発に係わるスタッフは総従業員数の15.4%に当たり、当連結会計年度における研究開発費は、2,408百万円(対売上高比5.4%)であります。

 基礎研究については、理化学研究所をはじめ、大学等の研究機関との交流を積極的に行い、基礎技術の向上と先端技術の導入を図っております。

 なお、ガスセンサ及びその他のセンサの研究開発は当社研究部が担当し、製品・部品の研究開発は当社技術部が担当し、システムの研究開発は当社カスタムエンジニアリング部が担当し、新製品の開発についてはプロジェクト体制により行っております。

 

(4)研究開発成果

 当連結会計年度における機種別の主な研究成果は、次のとおりであります。

 

① ポータブルガス検知警報機器

・GX-8000(GX-8000/RX-8000/SC-8000)の後継機種として9000シリーズ(GX-9000/GX-9000H/SC-9000)を開発しました。全モデルにて外形サイズを同一にし、Fセンサ採用によりPIDや特殊毒性ガスの組合せが可能となりました。SC-9000ではESFセンサを1~3個装着する事で1台にて最大3種類のガス種を測定する事が可能となりました。また、BLEを搭載した事でスマートフォンなどとリンクする事が出来るようになりました。

・GX-2012の後継機種としてGX-Forceを開発しました。約20%の小型化、3m落下耐久、保護等級IP67、センサ保証3年、丈夫で握りやすいグリップの形状が特徴です。また、連続使用時間は30時間(約2倍)となりました。

 

② 定置型ガス検知警報機器

・GP-147の後継機種として可燃性ガス警報器GP-148を開発しました。最小2点から最大12点まで必要な点数を選択でき、接続可能な検知器に炎検知器(0-20mA)を追加した事でガス検知との一括監視が可能となりました。保安電源バッテリーを内蔵し、停電時でも3日以上(最長136時間)監視する事が可能です。

・LP市場向けとして3点式指示計GP-310と専用の非防爆検知部GP-310-Dを開発しました。防爆検知部は既存のGD-A80を使用します。センサは5年間メンテナンスフリーとなります。ガス濃度表示は4段階のLED表示で警報設定値はLEL 1/100~1/4、ガス警報時出力は有電圧出力 0-6-12Vの12Vを出力するのが特徴です。

 

③ ガスセンサ(Fシリーズ)

・GX-8000シリーズの後継機種であるGX-9000シリーズのリリースに伴い、ニューセラミック式センサ:NCF-6322P(HC:0~100%LEL)、熱伝導式センサ:TEF-7520P(可燃性ガス/100vol%)、赤外式センサ:IRF-4341(CH4/100vol%)、IRF-4345(i-C4H10/100vol%)、IRF-4443(CO2/20vol%)の5機種を開発しました。

 

・半導体向け検知器GD-84D等に搭載可能なESFセンサのシリーズ拡大として定電位電解式センサ:ESF-A24D(GeH4/0.8ppm)、ESF-A24D(CH3SiH3/20ppm)の2機種を開発しました。

・EPC市場向けの信号変換器付ガス検知部SD-3に搭載可能なESFセンサのシリーズ拡大として定電位電解式センサ:ESF-B22(NH3/75ppm,150ppm,400ppm)、ESF-C92(Cl2 /1.5ppm, 3ppm, 10ppm)の6機種を開発しました。

 

④ その他

・GD-70D等の半導体検知器に搭載される流量自動コントロールを目的とした内製化フローセンサFL-6を開発しました。

・OHC-800において国際計量法OIML R140 Class Aの認証を取得しました。天然ガス、天然ガス+水素(最大20 vol%)の2仕様に対応しました。水素添加量最大20%でClass Aの合格は世界初となります。

・脱炭素技術に向けたRTGMS(リアルタイムガスモニタリングシステム)においてNH3合成装置のNH3純度モニタ、メタネーション装置のガス組成分析、プラントで発生する副生ガス熱量測定など、フィールド要求に対して検知器を組み合わせた6案件のセミオーダーシステムを確立しました。