文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営基本方針
当社グループは、「For Safety For Society」を基本理念に掲げ、国内及びベトナムを中心とするアセアンにおいて、カーボンニュートラルやSociety5.0等、 持続可能で豊かな社会の実現に向けて、ダイナミックにChallenge&Innovationする企業集団を目指しております。
長年培ってきた電気設備・電気通信設備工事の技術や経験を活かし、様々な社会インフラの構築及び保守メンテナンス、さらに老朽化したインフラ設備の更新工事に取り組んでおり、総合エンジニアリング企業として、社会インフラに関する各種の課題に対し、企画・調査・コンサル・設計・施工・保守メンテナンス等、高度なサービスをワンストップで提供することによって、安心して暮らせる豊かな社会づくりに貢献してまいります。
(2) 中長期的な目標
当社のビジョン「日本及びASIAを中心にカーボンニュートラルやSociety5.0、及びレジリエントな社会の実現に向けてダイナミックにチャレンジする企業集団を目指します」に基づき、中期経営計画(2023年8月期~2025年8月期)を策定しております。
中期経営計画では、国内EPC事業においては、再生可能エネルギー設備建設工事及び無線通信インフラ関連設備工事、アセアンEPC事業においてはエンジニアリング事業を注力分野とし、さらに新たに立ち上げたCRE(不動産)事業により、「EPC事業」と「CRE事業」を2本柱とする両利きの経営を推進し事業の多角化を図るとともに、事業を通じてサステナブルな社会構築を目指しております。
また、中長期といたしましては、こうした施策に加え、新規受注の拡大や業務提携、M&A等の施策により、グループ全体の売り上げ目標を200億円としております。
(3) 会社の対処すべき課題
わが国経済は、引き続き為替と株価動向の懸念、また原材料価格や資源・エネルギー価格の高騰等不透明な状況はあるものの、雇用環境の改善等も寄与し、景気は緩やかな回復基調で推移することが見込まれます。
建設業においては、設備投資案件や災害対応、再生可能エネルギーの需要により、新設工事や更新工事の発注は今後も増加傾向に推移するものと期待されます。一方で、業界全体における技術者不足の問題は継続しております。当社におきましても人材の確保及び教育を強化するとともに、当社グループ会社間の人材の流動性を高め、グループ会社の人材紹介企業JESCOエキスパートエージェント株式会社を通じて、ベトナム国を中心にアセアン地域から高度技術者の採用も進めてまいります。さらに、技術者を有する会社のM&Aについても積極的に行うことにより、受注機会の逸失を防ぎ、受注を拡大してまいります。
また、2024年3月に公表いたしました「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に基づき、事業の成長性と収益力の強化、また資本効率の向上を図るとともに、サステナビリティを重視し、地球環境・社会の持続的発展と自らの持続的成長の実現により、中長期的な企業価値向上を図ってまいります。
当社グループにおいては、上記方針を軸とし、再生可能エネルギー関連設備を中心に以下の4分野を注力分野として取り組んでまいります。
①再生可能エネルギー関連設備
世界的な脱炭素社会実現に向けた動きが加速しており、当社グループが注力分野の一つとしている太陽光発電所についても、一層の拡大が見込まれています。企業自らが再生可能エネルギーを創出する自家消費型の太陽光発電システムの需要に加え、再生可能エネルギー設備の増加に伴う出力抑制の拡大の影響で系統用蓄電設備の需要が高まっており、2023年12月内閣府GX実行会議の投資戦略によると、2030年には累計約14~24GWhの導入が見込まれています。当社においても、系統用蓄電設備のさらなる受注拡大に注力してまいります。
太陽光パネルのリサイクルにおいては、リサイクル制度整備に向けた関係省庁での議論が開始されました。現状は多くが埋め立て処分されていますが、本制度整備により、リサイクル率の上昇が期待されます。当社グループにおいては、業務提携したJ&T環境株式会社と連携し、EPCからリサイクル事業までライフサイクルに亘りワンストップでサービス提供する新たなビジネスモデルを推進してまいります。
また、国の次期エネルギー基本計画の策定に向けた議論が進められるなか、脱炭素に向けての重要な鍵として風力発電も注目されています。当社においては、大阪大学の洋上風車システムインテグレーション共同研究講座が主催する勉強会への参加を始めとして、今後の発展が期待される洋上風力への取り組みも進めてまいります。
②無線通信インフラ関連設備
2023年7月に「国土強靭化基本計画」が改訂され、大規模災害への備えをより盤石にする方向性が出されており、当社グループでは引き続き、河川監視システムや防災無線システム等の防災減災分野に注力してまいります。また、原子力発電所の再稼働や、次期エネルギー基本計画での新増設議論が進む中、プラント監視設備(ITV)に強みを持つ当社グループの特徴を活かし、セキュリティ強化等での貢献を目指してまいります。
移動体通信システムにおいては、総務省の「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の2030年末5G人口カバー率99%実現及びSoceity5.0の未来社会実現に向けて、対応地域の更なる拡大を図り、日本全国への展開を推進してまいります。
③アセアンEPC
ベトナムのエンジニアリング部門では、DXの推進により日本国内技術部門との連携を深めるとともに、日本国内の電気設備工事会社や建設会社からの設計積算業務を一層拡大してまいります。また、人材強化・育成にも努め、2022年に開設したロンアン支店、カントー支店を含め5拠点において、現状の250名から300名への早期増員とBIM技術者の育成等、技術強化により事業の拡大を図ってまいります。
建設部門では、不動産開発会社の融資や社債発行への規制強化等により厳しい状況が継続しており、新規案件の獲得に向けては状況を注視してまいります。
④CRE(不動産)
不動産事業においては、駅近の高付加価値のオフィスビルを所有し、賃貸等により高い収益性を確保してきました。さらなる拡大に向け、適切なタイミングでの不動産売買と賃貸による収益性確保を軸として、不動産バリューアップ事業や不動産証券化、不動産仲介等、総合不動産事業として、収益の安定化を維持するとともに、社会資本の有効活用に貢献してまいります。
3)資金面での取り組み
資金につきましては、保有不動産の適切な運用により流動性の確保を図りつつ、アセアンにおける事業拡大、国内外でのM&A資金等に活用する方針であります。また、金融機関や証券市場を通じた資金確保も可能であります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、事業活動及び社会貢献活動を通じて社会課題の解決に取り組み、地球環境・社会の持続的発展に貢献するとともに、自らの持続的成長と企業価値向上を目指していきます。
私たちは、創業以来、経営理念である「安心して暮らせる豊かな社会づくりに貢献すること」を社是として事業活動を推進してきました。地球環境の改善と社会の持続的発展が重要視される今、当社の取り組み事業がその方向性に繋がるものです。
このような取り組みを実現するために、人材を重視し、ESGの基盤としてH(人財)を加え、ESG+Hを基本方針とします。
サステナビリティに関する考え方及び取り組みについては、当社ホームページをご参照ください。
(
当社は、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。本委員会では、環境への影響や社会的責任、経済的な持続性など、企業の持続可能性に関連する議題を審議し戦略や方針を策定しております。本委員会は四半期に1度開催され、重要事項については都度取締役会に報告しており、経営戦略の策定等について総合的な意思決定を行っております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針等は次のとおりであります。
当社グループは、「社員の夢と希望を実現するヒューマン・カンパニー」を経営理念として、長期的視点にたった人材育成を重視しております。あわせて外国人の採用を進め、多様な事業展開とグローバル化を進めてまいります。
当社グループは、国籍や年齢・性別に関わらず、社員一人ひとりがそれぞれの強みを存分に発揮する組織風土をつくるため、「外国人社員の活躍」「高年齢社員の活躍」「女性社員の活躍」「次世代育成の支援」「公平かつ公正な人事制度の構築」の5項目を推進してまいります。
①JESCOアカデミー(オンライン教育システム)の活用
②資格取得支援、技術教育
③幹部育成・若手経営者育成プログラム
④ダイバーシティ推進
⑤女性や外国人社員へのキャリア支援
⑥意欲のある高齢者の積極採用・再雇用
⑦テレワークを活用した、育児・介護支援
⑧健康経営の推進
当社グループでは、サステナビリティ等に関するリスクについて、四半期に1度開催されるリスクアセスメント委員会において、経営状況の把握及び経営リスクの把握と対策の検討を進めております。リスクアセスメント委員会にて検討された事項及び決定の内容については随時、取締役に報告しております。
当社は脱炭素を重大かつ最優先の経営課題と捉え、その具体的な取り組みとして、再エネ100宣言RE Actionに参画することにより、2050年までに使用電力を100%再エネに転換することを目標としております。
また、当社グループでは、人材育成方針及び社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 保有資産について
営業活動上の必要性から、不動産等の資産を保有しているため、保有資産の時価が著しく下落した場合には減損損失の発生、また、販売用不動産の収益性が著しく低下した場合には、棚卸資産評価損が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 景気変動について
国内EPC事業においては、民間設備投資や公共投資の増減による電気設備工事、電気通信設備工事の市場規模の変化や、受注競争激化による粗利率の低下等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 建設資材価格の変動について
当社グループは、国内EPC事業、アセアンEPC事業を遂行するにあたり、多くの建設資材を調達しておりますが、建設資材価格が急激に高騰した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) アセアンEPC事業における社会的変動と為替相場の変動について
当社グループを構成する関係会社11社の内4社は海外現地法人であり、今後、進出国の政治・経済情勢、法的規制の変更等の著しい変化により、日系企業の投資抑制や、現地設備建設工事需要の減退の可能性があります。
また、人件費が著しく上昇する場合、工事の遂行計画や採算、代金回収等への影響が生じた場合や金利水準の急激な上昇や為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 業績の変動について
国内EPC事業においては、電気通信設備工事等の事業を行っていることから、工事の進捗や検収時期の集中によって収益が偏重することがあります。このため、特定の四半期業績のみをもって当社グループの通期業績見通しを判断することは困難であります。
なお、2024年8月期の四半期ごとの国内EPC事業の売上高推移は、以下のとおりであります。
(注)連結調整前の金額を記載しております。
(6) 競合他社による影響について
国内EPC事業及びアセアンEPC事業においては、大手・中小を問わず多くの企業と競合しております。そのため、競合他社との価格競争が更に激化した場合や、競合他社の技術力やサービス力の向上により、当社グループのサービス力が相対的に低下した場合は、当社グループが提案している営業案件の失注や、施工数の減少等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 特定の仕入先への依存について
当社グループは、国内EPC事業において電気工事用・電気通信工事用資材を、資材商社であるヤマト電機株式会社から仕入れております。国内EPC事業の資材仕入金額に占める同社からの仕入金額が、引き続き一定割合を占めております(国内EPC事業の資材仕入金額に占める同社からの仕入割合 2023年8月期:11.0% 2024年8月期:11.6%)。
他の資材仕入と同様に、ヤマト電機株式会社からの資材仕入に際しても、他の資材業者からも見積を取ることにより、当社グループにとって有利な条件で仕入を行えるよう取り組みを行っております。また、ヤマト電機株式会社とは、継続的な関係を維持するため、商品取引基本契約を締結しております。しかしながら、今後何らかの要因により、当該契約が更新されない場合や商品を安定的に仕入れることが困難な状況となった場合、他の資材商社及びメーカーへ仕入先を切替えることにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 業界取引慣行について
当社グループが属する建設業界の一部では、慣習として契約書を締結しないまま取引をするケースがあります。このため、当社グループでは注文書・発注確認書の授受や請求受領書の回収を徹底して行う等、トラブルを未然に回避するための施策を講じておりますが、不測の事態や紛争が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 国内EPC事業について
当社グループでは、国内EPC事業における再生可能エネルギー分野において、太陽光発電設備工事を受注するべく取り組んでおりますが、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を始めとする政府のエネルギー政策の動向や電気事業者による発電事業者に対する系統接続の動向によっては、太陽光発電市場が当社グループの予想に反して十分に拡大せず、その場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 法的規制等について
当社グループの主力事業である国内EPC事業において、建設業法、電気通信事業法等の関連法規制のほか、事業を営む上で必要とされる多くの許認可を取得しております。当社グループは、コンプライアンスを経営方針の最重要事項と位置付け、関連法規制の教育・指導・管理・監督体制の強化に努めておりますが、これらの関連法規制に違反するような事象が発生した場合、事業の停止命令や許認可の取り消し等の行政処分を受ける場合があり、その場合には、当社グループの業績及び財政状態に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
(当社グループの主な許認可状況)
なお、上記の事業の停止や許認可の取り消しとなる事由は、建設業法第29条、並びに電気工事業の業務の適正化に関する法律第28条に定められております。本書提出日現在において、当社グループが認識している限り、当社グループには、これら事業停止及び許認可の取り消しとなる事由に該当する事実はありません。
(11) 偶発事象について
当社グループは、品質管理に万全を期しておりますが、瑕疵担保責任及び製造物責任による損害賠償が発生した場合や工事現場での人的災害等の発生で訴訟を受けた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) システム障害について
当社グループは、業務効率の向上のため、基幹業務である総務・人事・会計の他、工事管理等の社内システムを有しております。そのコンピュータシステムに人的ミス・自然災害・コンピュータウイルス等による障害が発生した場合は、事業運営に支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 重要な情報の管理について
当社グループは、事業運営上、顧客が保有する技術データ・顧客データ等の重要な情報を取り扱っております。そのため、サイバーセキュリティを含め適切な情報管理を行ってはおりますが、不測の事態により当社グループからこれら重要な情報が流出した場合、顧客からの信頼を低下させるほか、損害賠償義務の発生等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 自然災害等の発生について
当社グループは、自然災害や新型ウイルスパンデミック等の発生に備え、人的被害の回避を最優先としつつ事業継続を図るため、各種設備の導入やデータファイルのバックアップ強化、訓練の実施及び規程・マニュアルの整備等により、リスク回避と被害最小化に努めております。
しかしながら、大規模災害等の発生及びそれに伴うライフラインの停止や燃料・資材・人員の不足による工事の中断・遅延、事業所の建物・資機材への損害等の不測の事態が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 安全品質に関するリスクについて
当社グループは、ISO45001 労働安全衛生マネジメントシステムの認証を取得して、お客様に信頼、評価される高品質なエンジニアリングサービスを提供できるよう、工事の「安全・品質の確保」に対する取り組みには万全を期し、事故の発生防止に日々努めております。
しかしながら、万が一重大な事故等不測の事態を発生させた場合には、工事の進捗に重要な影響を与えるだけでなく、社会的に大きな影響を与えるとともに各取引先からの信用を失い、営業活動に制約を受ける等、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 人材の確保と育成について
当社グループの国内事業拡大にあたっては、電気工事施工管理技士や電気通信工事施工管理技士、電気工事士、無線技師、工事担任者等の公的資格及び取引先固有の資格を有することが不可欠であります。クラウドを利用したオンデマンド研修「JESCOアカデミー」により、研修の充実を図り、社員がいつでもどこでも好きな時に受講できるようになりました。また、技術者、資格保有者の確保を目的の一つとした戦略的なM&Aにも努めております。しかしながら、工事施工を担える人材確保、育成ができない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の状況)
当連結会計年度(2023年9月1日~2024年8月31日)におけるわが国経済は、建設分野における人材不足、原材料価格や資源・エネルギー価格の高騰、また為替動向の懸念があるものの、社会経済活動の正常化やインバウンド需要の増加等により、景気は緩やかな回復基調で推移しました。
a サステナブル経営を目指して
-1. 太陽光パネルのライフサイクルサポートへ
当社グループでは、太陽光発電所の建設やO&M(オペレーション&メンテナンス)に20年以上取り組んでおり、2023年2月には、太陽光パネルのライフサイクルをサポートするため、J&T環境株式会社(JFEグループ及び株式会社JERA*1が出資するリサイクル企業)と業務提携いたしました。今後太陽光パネルの大量廃棄が予想されており、リサイクルまでサポートすることにより循環型社会の構築に貢献してまいります。
-2. 人材育成への取り組み
建設工事の需要が高まる一方、日本国内においては人口減少が続き、電気工事を含む建設業の高度技術者の不足が大きな課題となっています。
当社グループでは、前年度に行った国内二社のM&Aにより、資格保有者が大幅に増加しました(1級電気工事施工管理技士104名、1級電気通信工事施工管理技士54名(監理技術者含))。また、人材教育では、Webを活用した自社教育システム「JESCOアカデミー」による技術者教育を幅広く推進してまいりました。
-3. BCP対策/防災拠点新設工事の推進
首都直下地震災害時のグループ全体のBCP(Business Continuity Plan)対策として、群馬県高崎市に防災拠点を新設し、事業の継続性を高めてまいります。同建物は、一次エネルギー消費量が正味ゼロとなる建築物等のZEB(Net Zero Energy Building)化・省CO2化普及加速事業に採択されました。完成は2025年3月を予定しており、JESCO AKUZAWA株式会社の新社屋としても活用してまいります。
-4. 環境保全への取り組み
森林保有や使用電力の再エネ化等脱炭素や環境保全への取り組みを行ってまいりました。当社が現在保有する森林は合計31haとなり、この内、那智勝浦の保安林(16.7ha)は、都市に立地する企業による社会貢献として高い評価を受け、2022年9月にSEGES*2よりExcellent Stage2の認定を取得し、改めて2024年3月に維持審査に合格しました。また新たに、2024年6月に環境省が主導する30by30アライアンス*3に加盟、さらに日本自然保護協会が主導する日本版ネイチャーポジティブアプローチへ参加する等、生物多様性の保全に向けた取り組みを強化しております。
b 当期業績について
国内EPCにおいては、国土交通省による建設投資額見通しは2020年より増加傾向が続いており、当社においても、拡大が続く再生可能エネルギーや無線通信インフラ設備を注力分野とし、さらなる事業拡大に努めてまいりました。
再生可能エネルギー分野では、エネルギー高騰や企業の脱炭素化により需要が高まる工場の屋根やゴルフ場のカーポート等に設置する自家消費型太陽光発電設備の受注が拡大いたしました。
一方、再生可能エネルギーの増加に伴う出力抑制の拡大の影響で系統用蓄電設備*4の需要が高まっており、当社においても、九州地区における8MWhクラスの受注に続き、北陸地方においても2MWhクラスの案件を受注いたしました。引き続き、系統用蓄電設備のさらなる受注拡大に注力してまいります。
無線通信インフラ関連分野では、2050年を展望した国土強靭化計画に基づき、河川監視システムや防災無線システム等防災減災関連設備工事に取り組んでまいりました。移動体通信設備工事においては、総務省の「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の2030年末5G人口カバー率99%実現に向けて、主要地域である関東圏に加え東海・東北エリア、さらには全国展開へと地域拡大を行ってまいりました。
さらに、働き方改革や経営効率向上を目的としてDX強化の動きを加速しており、新基幹システムの導入、AIの活用によるリーガルチェック対応等にも取り組んでまいりました。
なお、特別利益として、JESCO高田馬場ビル売却に伴う譲渡益5億27百万円、資本効率向上に向けた政策保有株式等の売却により投資有価証券売却益1億3百万円を計上しております。
アセアンEPCにおいては、ベトナムを中心に事業を展開しております。注力分野であるエンジニアリング事業では、設計拠点を5拠点体制とし、設計人員も2023年8月期末の220名から30名増員し、現在約250名となりました。さらに300名体制の早期構築に向けて増員を進めるとともに、新たにBIM*5部門を立ち上げ、専門教育により技術力強化やBIM要員拡大に取り組んでおります。
JESCO ASIA社では、2022年12月にベトナム政府より、国際空港の入札参加資格となる35,000V以下の電気事業ライセンスを取得し、国際空港の電気設備設計にも注力しております。これにより、ホーチミン市東部にハブ空港として建設されるロンタイン国際空港の電気設備詳細設計、同国際空港ターミナルビルの電気設備及びICT*6施工監理業務を受注した他、ハノイ市においてもノイバイ国際空港第2ターミナルビル拡張工事の電気設備詳細設計が元請グループとしての受注につながりました。
一方、建設部門においては、ベトナムにおける不動産開発会社の融資及び社債発行への規制強化等により、依然として一部の工事で工事代金の入金遅延が発生しており、貸倒引当金を計上いたしました。今後もベトナムの不動産市場環境について注視してまいります。
なお、当連結会計年度において計上した貸倒引当金について、当第3四半期までは1億57百万円を販売費及び一般管理費にて計上しておりましたが、当第4四半期においては一部の取引先の業績悪化等により、3億72百万円を特別損失にて計上しております。
また、中断しておりますスリランカ国バンダラナイケ国際空港案件において、精算額が決定し、貸倒引当金戻入額77百万円を特別利益に計上しております。
このような状況のもと、当連結会計年度の受注高は、166億41百万円(前年同期比25.1%増)、経営成績は、売上高148億4百万円(前年同期比33.3%増)、営業利益11億43百万円(前年同期比168.9%増)、経常利益12億13百万円(前年同期比139.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益10億12百万円(前年同期比14.4%減)となりました。
セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、事業セグメントの区分方法を見直し、従来「その他事業」に含めていた「各グループ会社の経営管理業」について、事業セグメントとして識別する意義が乏しくなったため、「調整額」に含める変更を行っております。
前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
a 国内EPC事業
注力分野である再生可能エネルギー関連設備事業において自家消費型太陽光発電設備工事を中心に太陽光発電設備工事の受注が拡大した他、系統用蓄電設備も受注が拡大いたしました。また、無線通信インフラ関連設備工事においても監視カメラ・監視システムや移動体通信工事が順調に推移したことにより、増収増益となりました。
当連結会計年度における当セグメントの受注高は、131億43百万円(前年同期比14.7%増)、経営成績は、売上高111億90百万円(前年同期比28.0%増)、セグメント利益8億53百万円(前年同期比17.0%増)となりました。
b アセアンEPC事業
エンジニアリング部門においては、DXの活用により国内設計部門との一体化のもと、現在注力している技術力強化及び技術員の増員等が新規顧客の獲得に寄与し、順調に推移いたしました。
一方、建設部門においては、ベトナムにおける規制強化等が引き続き建設業に影響を与えており、中断している工事の再開時期の遅れにつながったことに加え、貸倒引当金を計上したことにより減収減益となりました。
当連結会計年度における当セグメントの受注高は、11億77百万円(前年同期比24.7%減)、経営成績は、売上高12億94百万円(前年同期比37.6%減)、セグメント損失3億54百万円(前年同期はセグメント損失59百万円)となりました。
c 不動産事業
両利きの経営の柱の一つとして、2022年1月に設立いたしましたJESCO CRE株式会社においては、不動産の賃貸借事業をベースに、リニューアルによるバリューアップ等幅広く事業に取り組んでおります。保有物件の売却及び賃貸管理収入等が順調に推移したことにより、増収増益となりました。
当連結会計年度における当セグメントの受注高は、23億19百万円(前年同期比715.4%増)、経営成績は、売上高23億19百万円(前年同期比715.4%増)、セグメント利益7億63百万円(前年同期比467.1%増)となりました。
<受注高、売上高及び繰越受注残高>
(単位:百万円)
*1 株式会社JERA:東京電力と中部電力の包括的アライアンスに基づき設立されたエネルギー会社
*2 SEGES:公益財団法人都市緑化機構が、企業等によって創出された良好な緑地や取り組みを評価し、社会・
環境に貢献している、良好に維持されている緑地であることを認定する制度。
SEGES…Social and Environmental Green Evaluation System
*3 30by30:2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴール
に向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標
*4 系統用蓄電設備:電力ネットワーク(系統)や再生可能エネルギー発電所等に大規模な蓄電池を接続し、
電力の充放電を行う設備。
*5 BIM:ICTを活用し、3次元の建設デジタルモデルに建築物のデータベースを含めた建築の新しいワークフロー
を提供する設計ソフト。
BIM…Building Information Modeling
*6 ICT:デジタル化された情報やデータを交換・共有する技術。
ICT…Information and Communication Technology(情報通信技術)
(財政状態の状況)
当連結会計年度末における流動資産は、129億98百万円となり、前連結会計年度末に比べ35億51百万円の増加となりました。これは、販売用不動産が30億97百万円増加したこと等によるものであります。当連結会計年度末における固定資産は、47億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億83百万円の減少となりました。これは、建物及び構築物が4億95百万円、土地が19億86百万円、のれんが1億10百万円減少し、建設仮勘定が61百万円、ソフトウェア仮勘定が98百万円増加したこと等によるものであります。この結果、当連結会計年度末における資産合計は、177億34百万円となり、9億63百万円の増加となりました。
当連結会計年度末における流動負債は、63億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億42百万円の増加となりました。これは支払手形・工事未払金等が6億38百万円、短期借入金が3億94百万円、未払法人税等が3億9百万円増加したこと等によるものであります。当連結会計年度末における固定負債は、46億41百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億97百万円の減少となりました。これは、長期借入金が2億36百万円、長期未払金が3億87百万円減少したこと等によるものであります。この結果、当連結会計年度末における負債合計は、109億87百万円となり、7億44百万円の増加となりました。
当連結会計年度末における純資産合計は、67億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億18百万円の増加となりました。
なお、自己資本比率は前連結会計年度末の33.4%から当連結会計年度末は37.4%になりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ66百万円増加し、23億50百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益14億86百万円、貸倒引当金の増加5億12百万円、仕入債務の増加額5億99百万円等の増加要因に対し、販売用不動産の増加額17億79百万円、売上債権の増加額8億2百万円、法人税等の支払額5億6百万円等の減少要因により、8億51百万円の支出(前連結会計年度は24億3百万円の支出)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の売却による収入15億67百万円、投資有価証券の売却による収入8億34百万円等の増加要因に対し、投資有価証券の取得による支出5億47百万円等の減少要因により、16億77百万円の収入(前連結会計年度は26億90百万円の収入)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入れによる収入37億88百万円、長期借入による収入2億50百万円等の増加要因に対し、短期借入金の返済による支出33億97百万円、長期借入金の返済による支出5億75百万円、配当金の支払額2億5百万円等の減少要因により、7億59百万円の支出(前連結会計年度は4億72百万円の収入)となりました。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループは、主に営業活動から得られるキャッシュ・フローのほか、外部からの資金調達については、銀行借入れ等により実施しております。
また、営業債務や設備投資資金の支払、借入金の返済等に向けた資金需要に備えて、充分な資金を確保するために、適時にグループ各社からの報告に基づき資金繰計画を作成する等の方法により、資金の流動性確保を図りつつ、余剰資金が生じた場合には、財務体質の改善、更なる事業の拡大を目指した今後のM&A資金、海外事業の拡大に向けた投資、業務改革の推進や事業競争力の強化に向けたIT投資等の目的に充当する方針であります。
a 生産実績
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、生産実績は記載しておりません。
b 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
c 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
3.当連結会計年度のNECフィールディング株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため注記を省略しております。
d 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
e 外注実績
当連結会計年度における外注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを行う必要があります。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 財政状態の分析
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 (財政状態の状況)」をご参照ください。
b 経営成績の分析
イ 売上高
当連結会計年度における売上高は、148億4百万円(前年同期比33.3%増)となりました。
当社グループのセグメントごとの外部顧客への売上高の内訳は、国内EPC事業が111億90百万円(同28.0%増)、アセアンEPC事業が12億94百万円(同37.6%減)、不動産事業が23億19百万円(同715.4%増)となりました。
グループ全体の売上高につきましても、今後、国内を中心に増加が見込まれる社会インフラ設備のメンテナンス需要や、情報通信技術革新による5G対応設備への対応等、引き続きグループ全体での受注拡大を図ってまいります。
ロ 営業利益
当連結会計年度における営業利益は、11億43百万円(前年同期比168.9%増)となりました。
当社グループのセグメント利益の内訳は、国内EPC事業がセグメント利益8億53百万円(前年同期比17.0%増)、アセアンEPC事業がセグメント損失3億54百万円(前年同期はセグメント損失59百万円)、不動産事業がセグメント利益7億63百万円(前年同期比467.1%増)となりました。
ハ 経常利益
当連結会計年度における経常利益は、12億13百万円(前年同期比139.9%増)となりました。
これは、営業外収益1億63百万円を計上した一方、営業外費用93百万円を計上したことによるものであります。
ニ 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、10億12百万円(前年同期比14.4%減)となりました。
これは主に、固定資産売却益5億27百万円、投資有価証券売却益1億3百万円、貸倒引当金繰入額3億72百万円等を計上し、法人税、住民税及び事業税8億16百万円、法人税等調整額△1億96百万円、非支配株主に帰属する当期純損失1億46百万円を計上したこと等によるものであります。
c キャッシュ・フローの状況の分析
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
d 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、組織体制、法的規制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
e 経営戦略の現状と見通し
今後における当社グループの事業を取り巻く経営環境は、原材料の高騰や、同業者間での価格やサービスの競争等により、引き続き厳しい状況で推移していくことが予想されます。
こうした状況のなか、当社グループにおきましては、日本国内において今後も安定した収益基盤を構築するとともに、今後更なるインフラ整備の需要増大が期待されるアセアン地域において、事業の拡大を図るため、積極的な事業展開を図ってまいります。
f 経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループが今後の業容を拡大し、より良いサービスを継続的に展開していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 会社の対処すべき課題」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。
これらの課題に対応するために、常に外部環境の構造やその変化に関する情報の入手及び分析を行い、アセアン地域でのシェア拡大、優秀な人材の採用と教育、安全への取り組み、営業体制の強化を図ってまいります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。