第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、「謙虚な心で皆様と共に進む」を社是とし、従業員・家族・お客様・株主様・お取引先様と共に進み、弊社にかかわる全ての方々が幸せになるための経営を行うことを経営方針としております。

 経営方針達成のため、当社は人材育成による社業の向上、利益還元を行い、皆様の満足度向上に努めます。

 

(2)経営戦略等

 当社は、あらゆる変化を活用できる「強固な経営基盤」作りを行うため、以下の取り組みを強化してまいります。

・独自のマーケティングによる売上継続成長・・・お客様と共に継続成長できる基盤づくり

・次世代基幹システム構築・・・ネット通販の一貫管理体制構築

・強固な財務基盤構築・・・固定費の抑制、商品構成の見直しによる収益力向上

・柔軟性ある対応基盤構築・・・「人」を育てるための仕組みづくり

・独自の生産自働化・・・生産管理体制の向上、省力化、より正確な資材管理

 

(3)目標とする経営指標

 当社は、目標とする経営指標として前期対比売上高成長率及び売上高営業利益率を掲げております。これらを重要な指標として認識し、業界のリーディングカンパニーになるべく更なるユーザビリティの強化と業務効率化に磨きをかけ、将来を見据えて売上高営業利益率を保ちつつ、売上高成長率も見込めるよう投資を行います。

 

(4)経営環境

 印刷業全般につきましては、景気の低迷やノートパソコン・スマートフォン等の普及による紙媒体の需要減により、個人・零細企業を筆頭に廃業・倒産が続いている傾向にあり、今後も生産量及び出荷額の減少傾向は続くとみられています。

 その一方、印刷通販は1990年代後半に登場した後、インターネットの普及と共に急速に市場が拡大していき、今後の成長見込みも伸び続ける予測が立てられています。

 印刷通販業界への参入企業は2007年頃から爆発的な増加傾向が見られましたが、それに比例して価格競争も激しさを増し、近年は新規参入企業数が減少傾向にあります。今後もこの業界に新規参入する企業数は多く見込まれず、上位数社が市場規模の約3/4を占める寡占市場と化していく予測が現実のものになりつつあります。

 また、新型コロナウイルス感染症につきましては、一時期に比べ回復傾向にあり、今後経済活動が活発化すれば、印刷需要の回復が見込まれます。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社が対処すべき当面の課題は以下のとおりであります。

 

① 印刷材料の購買力の向上

 競合企業に対する価格競争力を強化するためには、売上高に対する材料費の比率を引き下げる必要があります。そのためには、当社購買部門における仕入管理の強化及び仕入業者間での適正な競争を促していく必要があります。

 

② マーケティング力の強化

 当社は、自社サイトのさらなる売上増加を目標としており、常に商品構成を意識し、新商品の開発やラインナップの充実に努めております。2023年9月に事業戦略本部を新設し、その中のマーケティング部が中心となり、プロダクト戦略に注力することでマーケティング力のさらなる強化を図っております。併せて広告宣伝活動については、引き続きwebを中心としたプロモーション活動を行っております。

 インターネット機能をフル活用し、お客様に興味をもっていただき、ご注文いただく。そして、当社のサービスや品質に対する結果で、リピーターになっていただく。このサイクルを継続及び発展させることで、当社独自のマーケティングを確立し、お客様と共に成長していく仕組みを構築していきます。

 

③ 人材の育成と確保

 当社が将来にわたり、事業を継続させ発展していくためには、多様な専門技術に精通した人材、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、当社の中長期的な成長を支える人材育成を継続的に推進していくことが重要な課題であります。そのため、中間層を中心に総合的な研修制度の導入、ジョブローテーション制度やキャリア支援制度を構築し、社員の定着と育成に努めております。

 

④ 印刷品質のさらなる向上

 当社は、2012年7月に一般社団法人日本印刷産業機械工業会(JPMA)が認定する「Japan Color認証制度」に

よる認証を取得しており(東京西工場、九州工場)、精度の高い印刷色を再現することで、品質の安定化を図る

とともに、検品体制を強化し、万全の状態で製品をお届けできるよう品質の向上に努めてまいります。

 

⑤ 情報セキュリティ対策の強化

 当社は、インターネットを通じて顧客情報を取り扱うため、情報セキュリティ対策については当社の重要課題と位置付けております。そのため、個人情報保護対策としてプライバシーマークを取得し、情報セキュリティへの対応策としてISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得いたしました。これらのシステムにおいて運用レベルの向上を図るとともに、内部統制についても引き続き強化してまいります。

 

⑥ 環境、社会への配慮

 当社が持続的な成長を目指すうえで恒常的な利益の確保も重要ですが、その一方、環境や社会へ配慮する取り組みも行ってきました。例えば、オフセット印刷における使用インキのノンVOC化については、他社に先駆け、2016年10月期から100%ノンVOCインキ(注)を使用しております。

(注)ノンVOCインキ…構成成分中の高沸点石油系溶剤を植物油等に置き換えて1%未満に抑えたインキ

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

<サステナビリティ基本方針>

 当社は、「従業員、家族、お客様、株主様、お取引先様と共に進み、弊社にかかわる全ての人々が幸せになるための経営を行います。」という経営理念のもと、持続可能な社会の実現を目指し、企業価値の向上に努めます。

1.環境について

 当社は資源利用の効率化や環境に配慮した原材料の使用等、事業活動に伴う環境負荷の削減に継続的に取り組みます。

2.社会について

 当社はステークホルダーとの健全かつ正常な関係を構築するとともに、公正な競争、企業情報の適切な開示等、社会の構成員としての責任を全うします。

 また、雇用の拡大や適切な納税を通じて、地域社会の成長に貢献します。

3.経済について

 当社は様々な印刷物をできるだけ低価格で提供し、経済活動の活性化に貢献します。

4.人権について

 当社は社員一人ひとりの人権を尊重し、性別・年齢・国籍・障がいの有無等に関わらず多様な人材が能力や専門性を最大限に発揮できる企業風土づくりに取り組みます。

5.企業統治について

 当社はコーポレートガバナンスを経営上の重要課題と位置付け、迅速かつ的確な意思決定及び監督機能の強化を図ります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、取締役及び幹部社員で構成される経営会議において、サステナビリティに関する取り組みも含めた様々なリスク管理について、全社的な協議を行っております。

 協議の結果については必要に応じて取締役会にて、経営陣との情報共有を行う体制を整えております。

 

(2)戦略

(サステナビリティ全般に関する方針)

 当社は、サステナビリティを巡る課題への対応は重要なリスク管理の一部であると認識しております。

 例えば、製品の製造に当たっては、ノンVOCインキの使用や、カレンダー接着のホットメルト方式の採用、卓上カレンダーでのリサイクルしやすい素材、すなわちエコリングの使用などの導入を進めております。また、ヤレ紙の削減や、薬品を使用しないなど産廃管理を徹底しております。

 現在、製造拠点に太陽光パネルの設置を進めており、今後も環境への配慮を行ってまいります。

(人的資本に関する方針)

 優秀な人材の確保と育成を実現するため、人事部門を増員し、新卒・中途問わず積極的な採用活動を行っております。また、若い世代でも実績をあげた人材は管理職に採用し、活気ある職場環境の実現を進めております。

 

(3)リスク管理

 当社ではリスク管理規程を作成し、サステナビリティ全般を含め、新たに発生したものを含む識別されたリスクについて各部署から管理本部に報告され、管理本部では識別されたリスクについて影響度を評価し、総合的な判定を行ったうえで取締役会に報告され、取締役会がリスクの再評価を行っております。

 

 

(4)指標及び目標

(人的資本)

 当社では、現時点において具体的な目標を設定しておりませんが、今後の課題として、採用者に占める女性比率、女性・男性育児休業等取得率、有給休暇取得率等について、具体的な目標設定を検討してまいります。

 

 当事業年度における人的資本に関する指標及び実績は、以下のとおりであります。

指標

2024年8月期

新卒者の採用者に占める女性比率

0

男性育児休業等取得率

80

女性育児休業等取得率

100

有給休暇取得率

91

 

(サステナビリティ)

当社は環境問題への取り組みとしてGHG排出量の算定及びKPIの設定、カーボンクレジットの活用によるカーボンオフセットの実施を検討しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下に記載する事項は、当社の事業に関して将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありませんので、ご留意ください。

 

(1)インターネット印刷通販市場について

 国内の商業印刷市場は緩やかな縮小傾向にある一方でここ数年は回復の兆しもみられ、当社が事業を展開する国内のインターネット印刷通販市場は年々拡大しているものと考えられております。

 具体的には、国内の印刷産業出荷額は、2019年度が4兆9,981億円、2020年度が4兆6,630億円、2021年度が4兆8,555億円、2022年度が5兆462億円となっております。(経済産業省「工業統計調査」「経済構造実態調査製造業事業所調査」)国内の印刷通販市場は、2019年度が1,176億円、2020年度が1,209億円、2021年度が1,237億円となっており、2022年度の見込みとして1,340億円(株式会社矢野経済研究所「国内印刷通販市場に関する調査」)となっております。

 当社はインターネット印刷通販市場が今後も成長を続けると考えておりますが、国内の人口減少や景気の悪化等により、国内印刷市場またはインターネット印刷通販の市場が成長しなかった場合には当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)インターネット関連市場について

 当社の事業は、インターネットによる印刷物の通信販売が売上高の大部分を占めるため、Webサイトを受注活動の基盤としており、インターネット関連市場の拡大が、事業展開の基本条件であると考えております。

 しかしながら、新たな法的規制の導入や技術革新の遅れ、利用料金の改定を含む通信事業者の動向など、予期せぬ要因によりインターネット関連市場の発展が阻害される場合、システム関連の投資額や費用が想定を超えて増加した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、顧客の嗜好の変化により適切な商品が供給できなかった場合には、販売不振等により当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)システムトラブルについて

 当社の事業は、通信ネットワークやコンピュータシステムに依存していることから、事業の安定的な運用のためのシステム強化及びセキュリティ対策を行っております。しかしながら、自然災害、事故、停電、人的ミス、アクセス急増等によるシステムの不具合、または、当社受注サイトへの不正アクセス等予期せぬ事象の発生によって、当社設備または通信ネットワークに障害が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)競合企業との競合リスク

 現在、国内にはインターネット印刷通販の事業者が複数あり、競合企業とは、商品やサービス、価格に関して厳しい競争にさらされています。このため当社は、各種競争に対応すべく事業を推進しておりますが、新たな高付加価値サービスや更なる低価格サービスの提供等が行われるなどにより、事業競争力が相対的に低下した場合、また、競合他社との価格競争が激化した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)特定取引先への依存のリスク

 当社はラクスル株式会社との業務提携契約を締結しており、印刷及び配送業務を受託しているほか、印刷機1台の貸与を受け、印刷物を製造しております。同社への売上割合は、2023年8月期において28.2%、2024年8月期においては24.3%となっております。当社では、知名度の向上による新規会員の更なる獲得、プリントプロサービス開始による顧客層の拡大、ラクスル株式会社以外の大口得意先の開拓等、ラクスル株式会社に対する依存度を下げる取組みを行っております。

 当事業年度末現在において、同社とは良好な関係を継続しておりますが、同社の経営方針変更又は何らかの事由により、同社からの受注が大幅に減少した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)材料価格の変動

 当社の事業にとって用紙等の印刷材料は不可欠な存在であり、当社の製品の材料費の大部分を印刷用紙代が占めています。用紙等の市況、供給量の変動により仕入価格が上昇し、当社の販売価格に転嫁できなかった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)配送コスト等の変動

 当社では、一部の商品を除き、商品価格に配送料が含まれておりますが、今後配送コストが上昇し、当社の販売価格に転嫁できなかった場合、想定以上の配送コストが発生する場合や大量の商品の発送依頼に発送業者が対応できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)事業の季節変動

 当社の主力製品であるチラシ、パンフレット、フリーペーパーといった印刷物は、多くの企業や官公庁の年度末である3月前後に、その需要が集中する傾向があります。そのため当社の第3四半期以外の四半期は第3四半期に比べて売上が落ち込み、それに伴い利益も落ち込む可能性があります。

 

(9)有利子負債依存度について

 当社の印刷事業を行うためには多額の設備投資資金を要します。そのため設備投資に要する資金を自己資金及び金融機関からの借入金により調達しており、総資産の内有利子負債の占める比率(有利子負債依存度)は、2024年8月期末で25.4%となっております。当社として自己資本の充実に努め財務体質の改善に努めてまいりますが、今後、金利水準が変動した場合には、当社の業績、財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10)人材の育成と確保

 当社が将来にわたり事業を発展していくためには、多様な専門技術に精通した人材(例えば印刷工場において、刷版機、印刷機、断裁機、折り機や綴じ機等の取扱技術を持った人材)、また、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが重要な課題であります。そのため、新卒者だけでなく経験者の採用も積極的に行い、公平な評価・処遇制度の充実等、社員のモチベーションを向上する仕組みを構築し、社員の定着と育成に努めています。

 しかしながら、少子高齢化や労働人口の減少が急速に進んでおり、必要な人材を継続的に獲得するための環境は厳しい状況にあります。印刷工場での業務が他業種に比べ重労働であるという固定観念があると思われ、景気の回復による人材不足の影響により優秀な人材が他社に流れる等、人材獲得や育成が計画通りに進まなかった場合、長期的視点から、事業展開、業績及び成長見通しに影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)特定人物への依存

 代表取締役会長兼社長である小田原洋一は、当社の事業立案において、重要な役割を果たしております。

 同氏に過度に依存しないよう、権限移譲や経営層の育成等、会社運営体制の構築を目指しておりますが、現時点では具体的な体制の構築に至っていないため、何らかの理由により同氏が業務遂行できなくなった場合、またそのような重要な役割を担い得る人材を確保できなかった場合、当社の経営に多大な影響を与える可能性があります。

 

(12)法的リスクへの対応

 当社が事業運営を行う上で、特定商品取引法、個人情報の保護に関する法律、景品表示法、廃棄物処理等に関する法律、電気通信事業法、環境法、製造物責任法など、さまざまな法的規制等を受けており、今後その規制が強化されることも考えられます。その場合、事業活動に対する制約の拡大、規制の変化に対応するための負荷やコストの増加も予想され、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)情報セキュリティ及び個人情報保護

 当社は情報セキュリティ及び個人情報保護を事業運営上の重要事項と捉え、プライバシーマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証取得により、自社内の機密情報を厳重に管理しております。これらの情報については、社内システム上でアクセス制限を設けて権限者を必要最小限に抑え、個人情報管理規程等の社内規程を制定し、全社員に周知を行う等の対策を行っております。

 しかし、当社の社員や業務委託先が情報を漏洩又は誤用した場合、また、ハッカー等の不正アクセス等による情報漏洩が発生した場合には、当社が損害賠償を含む法的責任を追及される可能性があるほか、当社の信頼性が毀損し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)入稿データに係る入稿審査

 当社においては、第三者の知的財産権を含む権利侵害や公序良俗に反する印刷物等の入稿防止に関して、利用規約にその内容を規定し、第三者の権利侵害や公序良俗に反する印刷物等を入稿しないような審査を実施しております。

 なお、入稿データ審査にあたっては、顧問弁護士等の外部専門家の意見を盛り込んだ入稿データ審査マニュアルを整備・更新した上で、複数人によるクロスチェックを行うことで、当該審査体制の強化を図っております。

 しかしながら、当社の認識していない第三者の知的財産権を含む権利に対する権利侵害や公序良俗概念の社会的変動等により、当社の責任が問われ、特定の印刷物に対する差止請求による当社事業の一時中断、損害賠償を含む法的責任、あるいは社会的信用の毀損により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)訴訟に関するリスクについて

 当社では当事業年度末現在において、重大な訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、当社が事業活動を行うなかで、顧客等から当社が提供するサービス及び品質等の不備等により、損害賠償請求等の訴訟を受ける可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)災害の発生

 当社の本社は鹿児島県に、主たる生産拠点は山梨県及び鹿児島県にあります。

 同地域内で、大地震、津波、気候変動に伴う暴風雨や洪水等の大規模災害の発生により本社又は生産拠点が被害を受けた場合、また、社会インフラの大規模な損壊や機能低下、生産活動の停止にもつながるような予想を超える事態が発生した場合は、当社の業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)配当政策について

 当社は、業績の推移を見据え、将来の事業の発展と財務基盤の強化のための内部留保とのバランスを保ちながら、経営成績や配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としております。

 2021年8月期より1株につき10円の配当を実施しており、2023年8月期には12円、2024年8月期には13円に増配しております。次期以降におきましては、事業の進捗等を勘案し、状況に応じて増配を含め検討してまいります。

 

(18)ネット印刷通信販売事業への依存について

 当社の売上高は、主力事業であるネット印刷通信販売事業へ依存している状態となっております。国内印刷市場またはインターネット印刷通販の市場が、ユーザー数の増加やサービスの拡充等により今後も印刷事業は拡大していくものと考えておりますが、当社の運営するプリントネット・プリントプロの利用者の減少や市場規模の縮小等の要因によりネット印刷通信販売事業の売上高が減少した場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行により行動制限が解除されたことに伴い、個人消費やインバウンド需要が大幅に回復したものの、不安定な国際情勢や円安等による原材料価格の高止まりが続き、依然として、景気の先行きは不透明な状況にあります。

 当社の当事業年度における売上高は9,306,600千円となり前年同期比323,079千円の減収、営業利益は448,843千円で前年同期比242,676千円の減益、経常利益は456,167千円で前年同期比233,332千円の減益、当期純利益は210,518千円で前年同期比209,364千円の減益となりました。

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

 (ネット印刷通信販売事業)

 ネット印刷通信販売事業の業績は以下のとおりであります。

 

第38期

第39期

増減

印刷売上高合計

9,387,592千円

9,162,386千円

△225,205千円

(内訳)大口得意先

3,662,386千円

3,215,930千円

△446,456千円

    大口以外の得意先

5,725,205千円

5,946,456千円

221,250千円

 大口以外の売上単価

27,737円

27,011円

△726円

新規獲得数

15,458社

13,328社

△2,130社

新規獲得数における広告費(1社当たり)

4,021円

4,409円

388円

 印刷業界におきましては、コロナ禍における生活様式の変化に伴いWEB会議システム等を利用したオンラインでのコミュニケーションが増加したことや、デジタル化の加速による紙媒体の需要減少、原材料費やエネルギー価格の高騰が重なり、厳しい経営環境となっております。しかし、ネット印刷通販業界はコロナ禍以前の5年間において毎年10%程度市場が拡大したと言われており、新型コロナウイルス感染症の影響に関しても、印刷業界全体に比べ印刷需要の落ち込みは少なかったと考えております。

 このような状況のもと、当社は強みをさらに伸ばすため、将来に向けて、売上拡大や顧客の囲い込み、生産管理体制に対応できることを目的とした次世代基幹システムの構築を行っております。

 また、従業員の多能工化による人員の適正化及び効率化を行い、営業利益の改善につなげました。なお、当事業年度末時点で稼働している大型オフセット印刷機は、前事業年度末と変わらず合計9台となっております。

 この結果、ネット印刷通信販売事業の売上高は9,175,447千円で前年同期比293,915千円の減収、セグメント利益は594,443千円で前年同期比325,426千円の減益となっております。

 

 (その他の事業)

 その他の事業の売上高は131,153千円で前年同期比29,163千円の減収、セグメント損失は11,617千円(前事業年度は38,256千円の損失)となっております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は2,757,469千円となり、前事業年度末に比べ2,135千円増加いたしました。その主な要因は、原材料及び貯蔵品が177,597千円増加したこと等によるものであります。

 固定資産は4,409,460千円となり、前事業年度末に比べ247,386千円減少いたしました。その主な要因は、減価償却費の計上により機械及び装置が102,555千円減少したこと及び建物が68,563千円減少したこと並びにのれんが138,453千円減少したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度末における資産合計は7,166,930千円となり、前事業年度末に比べ245,250千円減少いたしました

 

 

 

 

 

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は2,246,289千円となり、前事業年度末に比べ214,258千円減少いたしました。その主な要因は、未払法人税等が110,259千円減少したこと等によるものであります。

 固定負債は1,136,190千円となり、前事業年度末に比べ182,975千円減少いたしました。その主な要因は、長期借

  入金が211,289千円減少したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度末における負債合計は3,382,479千円となり、前事業年度末に比べ397,234千円減少いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産は3,784,451千円となり、前事業年度末に比べ151,984千円増加いたしました。その主な要因は、剰余金の配当により62,815千円減少したものの、その他有価証券評価差額金2,379千円増加、当期純利益を210,518千円計上したことによる増加等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ38,145千円減少し、1,001,063千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、639,136千円の収入(前事業年度は908,993千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益が318,543千円と前事業年度に比べて339,488千円減少したものの、売上債権の減少額143,659千円、仕入債権の増加額45,632千円の増加要因があったこと等によります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、359,213千円の支出(前事業年度は372,472千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出318,417千円等の減少要因によります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、318,067千円の支出(前事業年度は499,962千円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の返済による支出73,580千円及び長期借入金の返済による支出186,537千円並びに、剰余金の配当による支出57,906千円があったことによります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 当社は主としてWebサイトを通じた短納期での印刷物の受注生産を行っております。そのため、生産実績及

び受注実績は販売実績と重要な相違がないため記載を省略しております。

 

(販売実績)

 当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

ネット印刷通信販売事業

9,175,447

96.9

その他

131,153

81.8

全社(共通)

合計

9,306,600

96.6

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前事業年度

当事業年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

ラクスル株式会社

2,714,804

28.2

2,257,421

24.3

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りによる不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

 当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、後記「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績の分析

 当社の経営成績は、原材料や光熱費の高騰が続く中で、商品の価格転嫁が進まなかったことや、大口得意先との取引内容の見直しを行ったことにより、減収減益となりました。

 経営成績の詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」をご参照ください。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

 キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金需要の主なものは、材料の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、投資資金需要の主なものは、生産設備等によるものであります。

 運転資金及び投資資金については、営業キャッシュ・フローによる充当を基本に、必要に応じて資金調達を実施しております。

 また、重要な設備の新設等に要する資金については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載しております。

 

⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、目標とする経営指標として前期対比売上高成長率及び売上高営業利益率を掲げております。当事業年度の前期対比売上高成長率及び売上高営業利益率は、原材料や光熱費の高騰が続く中で、商品の価格転嫁が進まなかったことや、大口得意先との取引内容の見直しを行ったことにより、売上高成長率が△3.4%、売上高営業利益率は△35.1%となりました。今後もこの2つの指標、特に売上高営業利益率の向上を目標として経営を行うことにより、企業の成長性及び効率性の確保を図る所存であります。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績は、同業他社との競合、用紙の価格変動等、様々な要因の変化の影響を受ける可能性があります。このため、事業環境を注視するとともに、新規顧客の獲得、内部統制システムの強化等によりこれらのリスク要因に対応して参ります。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社の経営者は、当社が今後さらなる成長と発展を遂げるためには、予測できない様々な変化に対して、柔軟性のある対応基盤の構築が必要であると認識しております。

 そのために、独自のマーケティングの確立、次世代基幹システムの構築、強固な財務基盤構築、成長し続けるための人材基盤構築、独自の生産自働化構想を展開していく方針であります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。