1【意見表明報告書の訂正報告書の提出理由】

 当社は、2024年10月30日付で提出いたしました意見表明報告書の記載事項に訂正すべき事項が生じましたため、法第27条の10第8項において準用する第27条の8第2項の規定により、意見表明報告書の訂正報告書を提出するものです。

 

2【訂正事項】

3 当該公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由

(1)意見の内容

(2)意見の根拠及び理由

(5)公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等

② 本特別委員会の設置

 

3【訂正箇所】

 訂正箇所は下線を付して表示しております。

 

3【当該公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由】

(1)意見の内容

  (訂正前)

 当社は、公開買付者より2024年10月18日に開始された当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)に対する公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)について、現時点においては、本公開買付けに対する意見の表明を留保いたします。

 

  (訂正後)

 当社は、2024年11月15日開催の取締役会において、公開買付者より2024年10月18日に開始された当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)に対する公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)に反対することを決議いたしました。つきましては、株主の皆様におかれましては、本公開買付けに応募されないようお願い申し上げますとともに、既に応募された株主の皆様におかれましては、速やかに本公開買付けに係る契約の解除を行っていただきますようお願い申し上げます。

 

(2)意見の根拠及び理由

  (訂正前)

 当社は、本公開買付けが開始されて以降、本公開買付けの内容を慎重に評価・検討してまいりましたが、2024年10月30日、当社取締役会において、取締役全員(監査等委員である取締役を含みます。)の一致により、現時点においては、本公開買付けに対する意見の表明を留保する旨を決議いたしました。

 本公開買付けは、当社取締役会に対して具体的な条件等に関して事前に何らの通知や連絡もなく、また、事前協議の機会も無いまま、一方的に開始されたものです。

 当社取締役会は、2024年4月19日に、公開買付者の親会社である株式会社富洋海運(以下「富洋海運」といい、公開買付者と総称して「公開買付者ら」といいます。)から、当社が同年7月までに富洋海運に対して第三者割当増資の方法で当社株式293,400株を割り当てること、富洋海運が当社に対して2名の取締役を派遣すること及び当社と富洋海運との間で資本業務提携契約を締結すること等を内容とする資本業務提携(以下「本資本業務提携」といいます。)に関する同年4月17日付け提案書(以下「本提案書」といいます。)を受領するとともに、本提案書及び本資本業務提携を協議する面談の申し出を受けました。当社は、2024年4月30日開催の取締役会において、富洋海運の要望に応じ、本提案書及び本資本業務提携に関して、富洋海運との間で面談を行う旨を協議し、同年5月15日に富洋海運との間で本提案書及び本資本業務提携に関して面談を実施いたしました。当社は、2024年5月27日開催の取締役会において、本提案書及び上記面談における富洋海運からの本資本業務提携に関する説明等を踏まえ、本提案書における提案内容及び本資本業務提携の是非を真摯に検討した結果、富洋海運との間の本資本業務提携を実施しないことを決議し、同年6月4日開催の富洋海運との面談において富洋海運に対し、本資本業務提携を実施しない旨の回答書を提出いたしました。なお、当社は、富洋海運との間で2024年7月29日に面談を実施しておりますが、当該面談は、2024年6月27日付けで就任した当社の代表取締役社長が挨拶として訪問したものであり、当該面談において、本資本業務提携に関する協議はなされておりません。当社と富洋海運との間で本資本業務提携に関する協議は、2024年6月4日開催の面談以降、途絶えておりました。

 このような状況において、当社は、富洋海運から、本公開買付けの開始日の前日である2024年10月17日に一方的に本公開買付けの実施の連絡を受け、事前協議の機会も無いまま、突然、本公開買付けが開始されました。当社は、公開買付者による本公開買付けの公表を受け、本公開買付けに対する当社の意見を表明することに向け、直ちに、当社、公開買付者らから独立したリーガル・アドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(以下「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」といいます。)を選任し、その助言・協力を受けながら、本公開買付けに関して公開買付者が2024年10月18日に提出した公開買付届出書(以下「本公開買付届出書」といいます。)の内容その他の関連情報を直ちに精査し、慎重に評価・検討を進めてまいりました。しかしながら、当社は、当社の株主の皆様に、本公開買付けに応募するか否かを適切にご判断していただくことの前提となる意見を形成・表明するためには、本公開買付届出書に記載された内容を含め、現時点までに入手することができた情報のみでは、本公開買付けが当社企業価値の向上及び当社株主の利益に資するか否かを判断するにあたって、不十分であると考えております。

 また、当社は、2024年10月30日開催の当社取締役会において、本公開買付けに対する当社の意思決定過程における恣意性のおそれを排除し、その公正性、透明性及び客観性を確保すること等を目的として、公開買付者ら及び当社との間に重要な利害関係が存在しないことを確認した上で、五島大亮氏(当社の監査等委員である社外取締役)、濵田在人氏(当社の監査等委員である社外取締役)及び外部の有識者である西田章氏(西田法律事務所弁護士)の3名から構成される特別委員会(以下「本特別委員会」といいます。)を設置し、(ⅰ)本公開買付けが、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるものでないかについて、調査、検討及び評価を行うこと及び(ⅱ)上記(ⅰ)のほか、本公開買付けに関する事項のうち、当社取締役会が本特別委員会に追加的に諮問する事項及び本特別委員会が当社取締役会に意見、答申又は勧告すべきと考える事項について、調査、検討、評価、意見、答申、又は勧告を行うこと(以下、これらを総称して「本諮問事項」といいます。)を本特別委員会に諮問いたしました。なお、本特別委員会への諮問にあたり、当社取締役会は、当社取締役会における本公開買付に係る当社の意見を表明するにあたり、本特別委員会の勧告・意見を最大限尊重することを併せて決議しております。また、本諮問事項の検討にあたって、本特別委員会が必要と認めるときは、当社の費用負担の下、独自のフィナンシャル・アドバイザー及びリーガル・アドバイザー等の専門家を選任する権限を付与いたしました。当社は、2024年10月30日開催の当社取締役会において、本公開買付けが当社の企業価値の向上及び株主の皆様の共同の利益を確保するのに資するものであるかという点について更なる評価・検討を行うべく、公開買付者に対して後記「7.公開買付者に対する質問」及び別紙に記載された内容を公開買付者に対する質問として記載した意見表明報告書を提出することを決議いたしました。また、本公開買付けの是非については引き続き慎重に評価・検討をする必要があること、当社は、本公開買付けに係る当社の意見を表明するにあたり、当社の意思決定過程における恣意性のおそれを排除し、その公正性、透明性及び客観性を確保すること等を目的として、本特別委員会を設置しておりますが、現時点においては本特別委員会の判断が示されていないことも踏まえ、本公開買付けに対する意見の表明を留保することを決議いたしました。

 公開買付者は、金融商品取引法(昭和23年法律第25号。その後の改正を含みます。)(以下「法」といいます。)第27条の10第11項及び金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号。その後の改正を含みます。)13条の2第2項に従い、当社が提出した意見表明報告書の写しの送付を受けた日から5営業日以内に、後記「7.公開買付者に対する質問」及び別紙に記載された質問に対して、法27条の10第11項に規定される対質問回答報告書を提出することが予定されております。当社は、公開買付者から、かかる対質問回答報告書が提出され次第、速やかにその内容を精査し、本公開買付届出書の内容その他の関連情報とあわせて慎重に評価・検討を行います。そして、かかる評価・検討に加え、本特別委員会の勧告又は意見を最大限尊重した上で、本公開買付けに対する当社の賛否の意見を最終的に決定し、表明する予定です。

 株主の皆様におかれましては、当社から開示される情報に十分にご留意いただき、慎重に行動していただきますよう、お願い申し上げます。

 

  (訂正後)

① 意見の根拠

 公開買付者は、2024年10月18日付で本公開買付けを開始することを公表いたしましたが、本公開買付けは、当社取締役会に対して具体的な条件等に関して事前に何らの通知や連絡もなく、また、事前協議の機会も無いまま、一方的に開始されたものです。

 当社は、公開買付者による本公開買付けの公表を受け、本公開買付けに対する当社の意見を表明することに向け、直ちに、当社、公開買付者及び公開買付者の親会社である株式会社富洋海運(以下「富洋海運」といい、公開買付者と総称して「公開買付者ら」といいます。)から独立したリーガル・アドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(以下「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」といいます。)を選任し、その助言・協力を受けながら、本公開買付けに関して公開買付者が2024年10月18日に提出した公開買付届出書(以下「本公開買付届出書」といいます。)の内容その他の関連情報を直ちに精査し、慎重に評価・検討を進めてまいりました。しかしながら、当社は、当社の株主の皆様に、本公開買付けに応募するか否かを適切にご判断していただくことの前提となる意見を形成・表明するためには、本公開買付届出書に記載された内容を含め、2024年10月30日時点までに入手することができた情報のみでは、本公開買付けが当社企業価値の向上及び当社株主の利益に資するか否かを判断するにあたって、不十分であると考えました。

 また、当社は、2024年10月30日開催の当社取締役会において、本公開買付けに対する当社の意思決定過程における恣意性のおそれを排除し、その公正性、透明性及び客観性を確保すること等を目的として、公開買付者ら及び当社との間に重要な利害関係が存在しないことを確認した上で、五島大亮氏(当社の監査等委員である社外取締役)、濵田在人氏(当社の監査等委員である社外取締役)及び外部の有識者である西田章氏(西田法律事務所弁護士)の3名から構成される特別委員会(以下「本特別委員会」といいます。)を設置し、(ⅰ)本公開買付けが、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるものでないかについて、調査、検討及び評価を行うこと及び(ⅱ)上記(ⅰ)のほか、本公開買付けに関する事項のうち、当社取締役会が本特別委員会に追加的に諮問する事項及び本特別委員会が当社取締役会に意見、答申又は勧告すべきと考える事項について、調査、検討、評価、意見、答申、又は勧告を行うこと(以下、これらを総称して「本諮問事項」といいます。)を本特別委員会に諮問いたしました。なお、本特別委員会への諮問にあたり、当社取締役会は、当社取締役会における本公開買付けに係る当社の意見を表明するにあたり、本特別委員会の勧告・意見を最大限尊重することを併せて決議しております。また、本諮問事項の検討にあたって、本特別委員会が必要と認めるときは、当社の費用負担の下、独自のフィナンシャル・アドバイザー及びリーガル・アドバイザー等の専門家を選任する権限を付与いたしました。

 当社は、2024年10月30日開催の当社取締役会において、本公開買付けが当社の企業価値の向上及び株主の皆様の共同の利益を確保するのに資するものであるかという点について更なる評価・検討を行うべく、公開買付者に対して第27条の10第2項第1号に基づく質問(以下「2024年10月30日付質問事項」といいます。)を提示し、当該質問事項に対する公開買付者の回答が提出され次第、速やかにその内容を精査し、本公開買付届出書の内容その他の関連情報と併せて慎重に評価・検討を行い、本特別委員会の勧告又は意見を最大限尊重した上で、本公開買付けに対する当社の賛否の意見を最終的に決定し、表明することが適切であると判断いたしました。

 その後、当社による2024年10月30日付質問事項を受けて、公開買付者は、2024年11月6日、対質問回答報告書(以下「本対質問回答報告書」といいます。なお、以下、本対質問回答報告書の頁数を記載する場合、本対質問回答報告書の別紙の頁数を意味します。)を関東財務局長に提出し、当社は、本公開買付届出書及び本対質問回答報告書の内容その他の関連情報と併せて慎重に評価・検討を行いました。

 また、上記のとおり、当社取締役会は、2024年10月30日、本特別委員会に対し、本諮問事項を諮問しておりましたが、本特別委員会は、2024年11月14日、当社取締役会に対し、本特別委員会の全員一致の意見として、当社取締役会が、本公開買付けを、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるものであると判断することは相当である旨の答申書(以下「本答申書」といいます。)の提出を受けております(本答申書の概要は、下記「(5)公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等」の「② 本特別委員会の設置及び本特別委員会からの答申書の取得」をご参照ください。)。

 当社は、2024年11月15日開催の取締役会において、本答申書において示された本特別委員会の判断内容を最大限に尊重しながら、本公開買付届出書及び本対質問回答報告書の内容その他の関連情報と併せて慎重に評価・検討を行い、取締役全員の一致により、本公開買付けに反対し、当社の株主の皆様には本公開買付けに応募されないようお願いする旨の意見を表明することを決議いたしました。

 

② 意見の理由

 当社は、(ⅰ)公開買付者らの実態が明らかではなく、公開買付者が上場会社である当社の大株主となり経営に関与することに重大な懸念があり、また取引先や従業員からも不安の声が上がっていること、(ⅱ)公開買付者らと当社が資本業務提携を実施したとしても、公開買付者らが想定している事業シナジーの発現は期待できないこと、(ⅲ)本公開買付け後に公開買付者らと当社との間で、資本業務提携のパートナーとして信頼関係を築くことが困難であること及び(ⅳ)本公開買付けが、強圧性を有する公開買付けであり、当社の一般株主の利益を損なうものであることから、本公開買付けは、当社の企業価値向上及び株主の皆様の共同の利益に資するものではなく、むしろ当社の企業価値及び株主の皆様の共同の利益を毀損するものであると考えております。

 したがって、当社は、本公開買付けに反対いたします。当該判断の具体的な内容については、以下に詳述します。

ア.公開買付者らの実態が明らかではなく、公開買付者が上場会社である当社の大株主となり経営に関与することに重大な懸念があり、また取引先や従業員からも不安の声が上がっていること

(ア)公開買付者らの実態が明らかでないこと

a.当社は公開買付者らの実態の把握を図ろうとしたにもかかわらず、公開買付者らから十分な情報提供がなされなかったこと

 当社は、2024年4月19日に、富洋海運から、当社が同年7月までに富洋海運に対して第三者割当増資の方法で当社株式293,400株を割り当てること、富洋海運が当社に対して2名の取締役を派遣すること及び当社と富洋海運との間で資本業務提携契約を締結すること等を内容とする資本業務提携に関する同年4月17日付提案書(以下「本提案書」といいます。)を受領するとともに、本提案書及び資本業務提携を協議する面談の申し出を受けました。しかしながら、当該時点において、当社は、富洋海運との間で資本関係や人的関係を含む一切の関係性を有さないばかりか、富洋海運との間で取引を行ったことも一度もなく、富洋海運に関する組織概要や事業内容等に関する情報を全く保有しておりませんでした。

 当社としては、富洋海運との資本業務提携の是非を判断するにあたって、富洋海運の実態を把握するために、本提案書の内容を確認したものの、本提案書においては富洋海運の名称、本店所在地、代表者の役職・氏名、事業目的及び資本金等の基礎的情報や、富洋海運の事業内容とされる外航海運業務、船舶管理業務及び事業投資の概要等が極めて簡素に記載されているのみであり、2024年5月15日及び同年6月4日に富洋海運との間で実施された面談においても、富洋海運の組織概要や事業内容等に関して、富洋海運から本提案書に記載された情報を超える説明はされませんでした。

 また、本公開買付けは当社取締役会に対して具体的な条件等に関して事前に何らの通知や連絡もなく、また、事前協議の機会もないまま、一方的に開始されたものでありますが、本公開買付届出書においても、公開買付者らに関する情報は、「公開買付者の状況」として記載が要求される最低限の記載がなされているにとどまります。そこで、当社は、本公開買付けが当社の企業価値の向上及び株主の皆様の共同の利益に資するかを判断するにおいては、公開買付者らを含む公開買付者グループ(公開買付者、富洋海運及び富洋海運の役員の親族が100%を出資するシンガポールに拠点を置く8社の企業群を意味します。以下同じです。)の資本関係や財務状況等の情報が大幅に不足していたことから、2024年10月30日付質問事項において、公開買付者らの組織概要、事業内容、株主構成、公開買付者グループの各社の資本関係等に関する質問を提出いたしました。

 しかしながら、公開買付者は、本対質問回答報告書において、公開買付者らの概要及び公開買付者グループの各社の資本関係について、本公開買付届出書に記載がなされている事項を除く情報は非公開情報であるため開示は控えると回答する等、実質的に本公開買付届出書を超える情報提供を行いませんでした(本対質問回答報告書1~3頁参照)。

 上場会社である当社にとって、取引の相手方の組織概要、事業内容、株主構成や資本関係について把握をすることは、法令遵守等の観点から非常に重要であることはいうまでもありません。特に、当社が資本業務提携の関係を構築し、第三者割当を実施して株主として迎え入れる相手方であれば、より一層この点は重要となります。しかしながら、上記のとおり当社の再三の要請にもかかわらず、公開買付者らは、公開買付者らを含む公開買付者グループの資本関係や財務状況等の情報を開示しておらず、このような状況においては本公開買付けが当社の企業価値及び株主の共同利益の向上に資するかを判断するに足りる十分な情報が得られていないと判断せざるを得ません。

 

b.公開買付者らの実態が明らかではないこと

 上記のとおり、本公開買付けに先立つ本提案書の受領後の富洋海運との協議、本公開買付届出書及び本対質問回答報告書を踏まえても、公開買付者らの組織概要、事業内容、資本関係や財務状況等に関する十分な説明は公開買付者らからなされておらず、公開買付者らの実態は明らかではありません。特に、本公開買付届出書において、公開買付者グループの2024年1月期の売上高や2024年10月時点の保有船舶数が記載されておりますが、本対質問回答報告書において公開買付者グループの資本関係に対する質問への回答は非公開情報であることを理由に回答がなされず、公開買付者グループ全体の実態及び公開買付者グループにおける公開買付者らの位置付けは未だ不明です。

 また、公開買付者らは、本公開買付け後に当社との間で資本業務提携の締結を希望しておりますが、公開買付者の親会社である富洋海運においては会社法(平成17年法律第86号。その後の改正を含みます。以下同じです。)440条1項に基づき要求される決算公告を行っていないことから、当社はその経済的な実態を把握することができず、また、2024年10月30日付質問事項において富洋海運の過去5事業年度分の貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書の開示を求めたものの、公開買付者はその開示を拒絶したことから、当社としては、公開買付者らの財務的健全性等を確認するための基礎的な情報すら入手できていない状況です。

 さらに、本対質問回答報告書3頁によれば、富洋海運において「非上場会社に求められる水準のガバナンス体制、監査体制、法令遵守及びコンプライアンス体制を整備して」いる旨の記載がされておりますが、上記のとおり富洋海運は、会社法上、要求される決算公告を実施しておりません。当該決算公告を実施する義務は、株式会社の履践するべき初歩的かつ重要な義務であることからすると、富洋海運が非上場会社に求められる水準のガバナンス体制、監査体制、法令遵守及びコンプライアンス体制を整備している旨の本対質問回答報告書の記載は根拠に乏しいと言わざるを得ません。

 

(イ)公開買付者が大株主となり経営に関与することについて、当社のステークホルダーの皆様から不安の声が上がっていること

 2024年10月18日に本公開買付けが公表されて以降、当社と同様に公開買付者らの実態が不明であると認識している当社の顧客や取引先から本公開買付けが当社の経営にもたらす影響等に関するお問い合わせを多く受けるとともに、実態が不明な公開買付者が当社の大株主となり当社の経営に関与することについて心配や懸念の声を受けております。

 特に、当社の設立以来のパートナーである兵機海運株式会社船主会(以下「本船主会」といいます。)及び当社の企業価値の源泉といえる当社の従業員を代表する当社の唯一の労働組合である兵機海運株式会社従業員組合(以下「本組合」といいます。)からは、当該不安や懸念の声を強く受けており、下記のとおり、本公開買付けに関する反対の意見をそれぞれ受領しております。

 具体的には、当社は、本船主会から、2024年11月7日付で大要以下の本公開買付けに反対する旨の意見書を受領しております。なお、本船主会は、当社の内航事業において極めて重要性の高い取引先である船主13社から構成されており、当社にとって、本船主会は単なる取引先に留まらず、当社と共同で七洋船舶管理株式会社を設立し、内航事業業界共通の課題である船員の高齢化及び人員不足を解決するための取組みを共同で行うなど、単なる取引先を超えた当社のパートナーというべき存在です。

・内航海運事業において、荷主から預かった貨物を大切に輸送地へ運ぶという役割を担うにあたっては、本船主会の船主と当社との間での信頼関係に基づく協調体制が必要であり、実態の明らかではない公開買付者が当社の経営に積極関与するに至った場合には、当社との間で当該信頼関係に基づく協調体制を継続することは難しいと考えている。

・公開買付者の実態も明らかではない中、公開買付者の狙いが、資本の力で当社経営陣を屈服させ、公開買付者に有利な「提携」を実現することにあるとすれば、当船主会としては大きな懸念を感じざるを得ない。

・仮に公開買付者が当社の経営に深く関与することとなった場合、当社と各船主との関係や各船主の事情を顧みず、状況次第で簡単に船主との間の傭船契約を解除する等の対応を強いられる可能性も想定され、各船主一様に不安を感じている。

・本船主会は、本公開買付けに断固として反対する。

 また、本組合においては、2024年11月5日付で、本組合に所属する全従業員に対して、本公開買付けに関する意見を聴取するアンケートを実施した(当該アンケートの選択肢は、「賛成」及び「反対」の選択肢がありました。)ところ、約9割の組合員から、本公開買付けに反対する旨の回答(「反対」の回答を選択)がなされました。さらに、本組合においては、2024年11月11日付で開催した組合員大会において、本公開買付けに対する反対の意見が表明されたとのことです。その上で、当社は、本組合から、2024年11月11日付で大要以下の本公開買付けに反対する旨の意見書を受領しております。

・公開買付者の実態及び公開買付けの目的が明らかではない中、当社の顧客や取引先から、公開買付けが当社経営にもたらす影響等に関する不安の声や質問が多数寄せられている。

・当社従業員においては、本公開買付けによって、実態が明らかではない公開買付者が当社の大株主となった場合、当社が永年に渡って信頼関係を築いてきた取引先との関係が崩れ、取引先が当社との取引を行わなくなること、またその結果、当社の業績・経営に重大な影響が生じ、各従業員の処遇・待遇にも変化が生じることについて不安が日々広がっている。

・このような状況を踏まえ、本組合は、本公開買付けに反対し、当社においても本公開買付けの是非に対して慎重な判断を行ってほしい。

 

(ウ)小括

 当社は、昭和17年に兵庫県下の全内航海運業者及び船主を集約統合する形で内航海運事業を開始して以来、「安全、迅速、信頼」を一番のモットーとして輸送サービスの向上に努め、現在は「総合物流業者としてその業務を通じて社会に貢献する」を企業理念のもと、顧客のニーズを先取りし、生産と消費をつなぐ物流を実現しております。そして、当社は、当社の事業の遂行、企業価値の向上、企業理念の実現にあたっては、当社の株主、取引先、従業員などのステークホルダーの皆様との関係が何よりも重要であると考え、永年にわたりステークホルダーの皆様との間で良好な関係を築き上げてきたと自負しております。

 しかしながら、上記(ア)のとおり、公開買付者は、本公開買付届出書及び本対質問回答報告書において、公開買付者グループの情報が非公開情報であることを理由に十分な情報提供を行わず、公開買付者らの組織概要、事業内容、資本関係や財務状況等を含めた公開買付者らの実態は明らかではない中、当社のステークホルダーの皆様は本公開買付けに対する検討や公開買付者らの評価をそれぞれ行う事態となり、当該状況は上記のとおりステークホルダーの皆様に混乱を生じさせております。当社としては、実態が不明な公開買付者による本公開買付けは、当社が永年にわたり築き上げてきた当社とステークホルダー様との関係を危うくするものであるとともに、ひいては当社の事業運営に重大な悪影響を与えるものであると考えております。

 したがって、当社は、本公開買付けは当社の企業価値向上及び株主の皆様の共同の利益に資するものではなく、むしろこれを毀損するものとして、本公開買付けに反対いたします。

 

イ.公開買付者らと当社が資本業務提携を実施したとしても、公開買付者らが想定している事業シナジーの発現は期待できないこと

 本公開買付届出書において、公開買付者は、当社との間で、資本業務提携を通じて、内航事業、外航事業、港運事業、倉庫事業及び新規事業分野において協業することにより、当社と公開買付者らが事業シナジーを創出することが可能である旨の主張を行っております。もっとも、以下に詳述しているとおり、公開買付者らは当社の各事業に関して誤った認識を有しており、公開買付者らが当社との資本業務提携において発現できると考えている事業シナジーはいずれも見込めません。

 また、富洋海運が、当社に対して2024年5月15日の面談や2024年6月4日の面談において資本業務提携に関する具体的な提案をしているかのような表現もみられます(本対質問回答報告書8頁参照)。しかしながら、2024年5月15日の面談において富洋海運が当社に共有した資料(以下「5月15日付面談資料」といいます。)においては、倉庫事業及び港運事業に関して「貴社の知見やノウハウを梃子にして企業価値向上に寄与するアイデアを一つでも多く具現化すべく、仕組み作りや連携体制の構築に向けて協業したい」や外航事業に関して「弊社にも強みがある領域であり、貴社のビジネス環境に合わせて必要なリソースを投入の上、収益確保につなげたいと考えております」等の記載があるにとどまり、2024年6月4日の面談においてもそれ以上の説明がなされないなど、いずれの事業分野に関する資本業務提携の提案も具体性を欠いたものであり、当社において富洋海運との資本業務提携の是非を検討するに値するほどの提案はなされておりません。

 むしろ、当社が公開買付者らと資本業務提携を行うことは、上記アのとおり、当社のステークホルダーの皆様との関係を踏まえると、当社の事業運営に重大な悪影響を与えるものであることから、本公開買付けは当社の企業価値向上及び株主の皆様の共同の利益に資するものではなく、これを毀損するものとして、当社は本公開買付けに反対いたします。

(ア)内航事業について

a.当社の内航事業に関する公開買付者らの認識に誤りがあること

 本公開買付届出書6頁によれば、公開買付者は、内航事業は、「業界の取引慣行上取引価格が硬直的」であり、「近年の物価上昇によるコスト増加分を取引先である荷主との取引価格に反映させることは容易」ではなく、当社が今後も単独で現在のビジネスモデルを展開した場合には、荷主との間で「物価上昇を上回るだけの値上げ交渉を実現しない限り、事業の収益性が低下する」と考えられるため、当社において「事業モデルの見直しと新たなパートナーの存在が不可欠だと考え」ているとのことです。

 しかしながら、当社は、荷主との間で長年にわたって良好かつ堅固な関係を構築していることから、荷主との協議により、運輸コスト上昇分の取引価格への反映を既に実現しており、公開買付者らが主張する当社における事業モデルの見直し及び新たなパートナーの必要性の根拠は公開買付者らの想像に基づいた空論に過ぎません。さらに、上記アのとおり、本船主会からは、本公開買付けにより公開買付者が当社株式を取得することについて反対の意見書が提出されていることを踏まえると、むしろ本公開買付け後に公開買付者が当社の大株主として当社の経営にその影響力を及ぼすことにより、荷主を含む当社の取引先との関係性が悪化し、取引価格の交渉が困難となることが想定されます。

 また、本公開買付届出書6頁によれば、公開買付者は、当社の内航事業に関し、荷主に対して安定的な船腹を供給するためには、用船を活用して一定の船隊規模を維持する必要があるものの、「対象者が単独で行う場合、対象者の意思決定で売船を柔軟に決定できないことから、事業の自由度に支障が出ているものと考え」ているとのことです。

 しかしながら、当社は、船主との良好な信頼関係の下、船主の中長期的な船団のリプレース計画やそれに伴う売船等の経営方針や事業計画について、相互を尊重した上で協議の上、決定していることから、船主の一方的な意向によって当社の事業の自由度に支障が生じる事態は生じておらず、公開買付者らの当社の内航事業に関する認識には誤りがあります。加えて、当社は、本船主会から、2024年11月7日付の意見書において、公開買付者の当社の内航事業に関する認識を踏まえると、公開買付者が本公開買付け後に「各船主との関係や各船主事情を顧みず、状況次第で簡単に船主との傭船解除に及ぶ」ことを望んでいると考えられ、各船主が不安を感じているとの意見を受領しており、公開買付者らの当該認識は船主との関係性悪化を引き起こす一つの原因として、当社の企業価値の毀損に繋がるといえます。

 

b.資本業務提携において、公開買付者らが想定しているシナジーが見込めないこと

 公開買付者は、上記を中心とした当社の内航事業に関する誤った認識に基づき、当社が「様々な貨物を取り扱う公開買付者らと連携することで、多くの船舶を確保する体制を構築できる」(本公開買付届出書9頁)と考えているとのことです。

 しかしながら、公開買付者も自認しているとおり、「船舶は取扱い貨物により船形や規模が異な」(本公開買付届出書9頁)ります。実際に、当社が内航事業において用いる船舶は積み揚げ地の岸壁の特性などに合わせた199総トン及び499総トン型の在来型ばら積船が主流であるのに対して、富洋海運が保有する船隊として5月15日付面談資料に記載された船舶は、いずれも載貨重量トン数が3万8,065トンから10万6,355トンのタンカーやバルカーであることから、公開買付者らが外航事業に用いる船舶と当社が内航事業において用いる船舶とは船籍、船型や規模が異なり、内航輸送においては相互の互換性は認めらないことから、公開買付者らの外航事業と当社の内航事業との間の協業により生じる事業シナジーは認められません。なお、公開買付者は、本対質問回答報告書7頁において、公開買付者らが外航事業に用いる船舶と当社が内航事業において用いる船舶の相互の互換性が認めらないことを前提とした船舶体制の構築について、内航事業において当社の長年培われたノウハウを尊重する意向であると述べているに過ぎず、船舶体制の構築に関する具体的な考えを何ら有していないことは明らかです。

 また、公開買付者は、本公開買付届出書9頁において、船員の確保を内航業界が抱える経営課題としてあげた上で、公開買付者らとの協業により、遠隔地への外航船の配乗を行う経験を積むことができるため船員のモチベーションを高めることも可能であること、公開買付者グループと連携して船員の人材育成を行うことも考えられることを述べております。

 しかしながら、公開買付者らの上記の主張は、内航業界が抱える経営課題である船員の確保に対する具体的な解決策を提示したものではないことから、当社が公開買付者らと協業したとしても当該経営課題の解決は見込めないと考えております。また、当社は、上記のとおり、本船主会と共同で七洋船舶管理株式会社を設立し、内航船員の高齢化及び将来の担い手不足という課題に対処するために、船員の確保及び育成に具体的に取り組んでおり、既に当該課題を解決するための対策をとっていることから、当社として公開買付者らとの協業は必要ありません。

 

(イ)外航事業について

a.当社の外航事業に関する公開買付者らの認識に誤りがあること

 本公開買付届出書7頁によれば、公開買付者は、「外航事業では市場の需要に応じて、必要な時期に必要なサイズの船舶を常に用船できる運営体制を維持することが肝要」と考えており、当社が2023年11月14日に公表した、「2024年3月期 第2四半期 決算説明資料」において、外航事業に関して「海外パートナーとのアライアンスを活用した新たな商圏・航路の開拓」及び「国際複合輸送業における南米、欧米などの新サービスルートの拡大」を目指している旨を記載していることから、当社が、外航事業において長距離航路の配船を運営するにあたっては、「公開買付者グループが保有するような4万重量トンを超える船舶を確保することが望ましく」、当社において今後新たに船舶を調達する必要があると考えているとのことです。

 しかしながら、当社が現に行っている外航事業はアジア極東地域を中心とした近海在来船の配船であり、当該事業の運営にあたっては小型船舶を確保することで足ります。さらに、当社が南米・欧州においてサービスルートの拡大を目指している国際複合輸送業は、コンテナ単位での一貫輸送をその内容とするいわゆるNVOCC(注)であるところ、当社は自社において船舶を保有する必要はなく、また、海外パートナーとの間で「必要な時期に必要なサイズの船舶を常に用船できる体制」を既に構築しております。したがって、当社が外航事業を運営するにあたっては、公開買付者グループが保有するような大型又は中型船舶を保有する必要はなく、当社の外航事業に関する公開買付者の認識は誤っています。

(注) NVOCCとは、Non-Vessel Operating Common Carrierの略称であり、自社では船舶などの輸送手段を保有せず、船会社の船舶などを利用して貨物の輸送を行う運航業者をいいます。

 

b.資本業務提携において、公開買付者らが想定しているシナジーが見込めないこと

 公開買付者は、上記を中心とした当社の外航事業に関する誤った認識に基づき、公開買付者が運営している外航事業に関するノウハウや公開買付者グループの外航事業での顧客網を当社の外航事業と連携することで、資本業務提携を通じて当社の外航事業に関するシナジーが認められると述べております(本公開買付届出書10頁)。

 しかしながら、上記のとおり、当社は、外航事業において、現にアジア極東地域を中心とした近海在来船の配船を行っており小型船舶がその運航においては適している一方で、公開買付者グループの顧客は大型船舶又は中型船舶において石油等の取扱いを求めていることから、当社の外航事業と公開買付者グループの外航事業の間に相互互換性が認められず、公開買付者グループの外航事業の顧客網と当社の外航事業との間に連携自体が生じ得ないため、外航事業においても公開買付者らと協業することにより当社に生じる事業シナジーは認められません。

 

(ウ)港運事業及び倉庫事業について

a.当社の港運事業及び倉庫事業に関する公開買付者らの認識に誤りがあること

 本公開買付届出書7頁によれば、公開買付者は、当社の港運事業について、「いわゆる物流の2024年問題によるドライバー不足が、更なるコスト増として当社の収益を圧迫する可能性がある」と考えているとのことです。

 しかしながら、当社は、上記のとおり荷主との間で長年にわたって良好かつ堅固な関係を構築しており、荷主との協議を通じて、運輸コスト上昇分の取引価格への反映を実現しており、2024年問題によるドライバー不足に伴うコストの増加が当社の収益を圧迫する可能性は低いと考えております。

 また、本公開買付届出書7頁によれば、公開買付者は、当社の港運事業について、「輸入貨物においては、荷受人が負担する関税を通関事業者が通関手続時に円に立て替える慣習があり、当該ビジネスの拡張に際しては、このようなキャッシュフローへの考慮が必要である」と認識しているとのことです。

 しかしながら、当社は、以前より当該課題に取り組んでおり、通関手続時に発生する関税等は荷主が直接納税するようスキームへの変更を順次実施しており、当該課題は解消されつつあるものと考えております。

 

b.資本業務提携において、公開買付者らが想定しているシナジーが見込めないこと

 公開買付者らは、上記を中心とした当社の港運事業及び倉庫事業に関する誤った認識を有しており、公開買付者らが課題と認識している事項については当社において既に課題の解決に向けて取り組んでいることから、公開買付者らとの資本業務提携によって実現するシナジーがそもそも見当たりません。

 また、公開買付者は、当社の港運事業及び倉庫事業に関して、本公開買付届出書11頁において、「新たなビジネス機会を確保することで、既存のプライシングの慣習に縛られずに利益を確保し、当該事業の収益性を上げていけるよう競合を進めていきたい」と述べており、また、本対質問回答報告書8頁において、「対象者との協議を通じて、個別具体的な対象者のビジネス状況を理解した上で、最善の方針を見極め、上記の公開買付者グループが有する顧客網・輸送ノウハウ及びネットワークを活かした早期の協業の実現を目指していきたいと考えております。」と港運事業及び倉庫事業における協業の内容に関して、その一端の回答を行っておりますが、当該回答は何らの具体性を有した回答とは言えません。さらに、富洋海運と当社の2024年5月15日及び2024年6月4日の面談においても、公開買付者らの述べる「新たなビジネス機会」についての説明は具体的にはなされておらず、資本業務提携において、公開買付者らが当社の港運事業及び倉庫事業に関して実現を目指すシナジーは明らかではありません。以上からすると、港運事業及び倉庫事業においても公開買付者らと協業することにより当社に生じる事業シナジーは認められないと判断せざるを得ません。

 

(エ)新規事業について

 本公開買付届出書11頁によれば、公開買付者は、脱炭素化の分野において生じ得る新たなビジネスについて、当社と協議することを考えているとのことです。

 しかしながら、本公開買付届出書及び本対質問回答報告書においても、上記の新規事業に関する何らの具体的な記載はなされていない上、上記のとおり2024年5月15日及び2024年6月4日の面談においても具体的なビジネス内容及び協業内容は示されておらず、公開買付者らは、脱炭素化領域に関するビジネスという机上の空論を述べているに過ぎません。

 以上より、新規事業に関しても公開買付者と協業することにより当社に生じる事業シナジーは認められません。

 

(オ)資本業務提携によって取締役2名を派遣することについて

 本公開買付届出書12頁及び本対質問回答報告書9頁によれば、本公開買付け後に当社との間で締結する予定の資本業務提携契約において、公開買付者らは、富洋海運から当社に対して2名の取締役を派遣する予定とのことです。

 本対質問回答報告書9頁によれば、公開買付者らが当社の取締役候補として提案を検討している候補1は、当社に対して(ⅰ)海運・物流事業への総合的な理解、(ⅱ)遠洋・近海用船マーケットでの貨物獲得ノウハウ、(ⅲ)50隻規模の船隊整備計画・配船振り回しの実務経験、(ⅳ)上場企業での管理職経験を通じた人材育成、(ⅴ)執行役員としての勤務を通じた企業経営への理解、(ⅵ)海外複数国での勤務を通じた国際的なビジネス経験、(ⅶ)海運・物流業界における国内外の人脈といった強みの提供が可能とのことです。しかしながら、上記(ⅰ)乃至(ⅶ)の観点については当社の取締役の複数名は当社に入社以来、海運・物流事業に携わり続けていることから、当社は、本対質問回答報告書9頁記載の候補1を富洋海運から受け入れる必要はありません。また、本対質問回答報告書9頁によれば、公開買付者らが当社の取締役候補として提案を検討している候補2は、(ⅰ)上場企業の経営企画部門勤務を通じた経営計画や資本政策、株主施策の策定経験、(ⅱ)上場企業の事業戦略部門勤務を通じた事業計画の策定経験、(ⅲ)上場企業子会社の取締役及び監査役経験を通じた会社法やコーポレートガバナンスへの理解、(ⅳ)資金調達や案件組成などの財務面でのノウハウ、(ⅴ)海運・物流事業への総合的な理解、(ⅵ)海外複数国での勤務を通じた国際的なビジネス経験といった強みの提供が可能とのことですが、上記(ⅰ)乃至(ⅲ)並びに(ⅴ)及び(ⅵ)の観点については当社の取締役の複数名は当社に入社以来、海運・物流事業に携わり続けていること、(ⅳ)については30年以上の銀行勤務経験を有する取締役が2名いることから、当社は、本対質問回答報告書9頁記載の候補2を富洋海運から受け入れる必要はありません。

 以上より、公開買付者らによる取締役派遣の観点からも、資本業務提携を通じて公開買付者らと協業する必要性は認められないと考えております。

 

ウ.本公開買付け後に公開買付者らと当社との間で、資本業務提携のパートナーとして信頼関係を築くことが困難であること

 当社としては、資本業務提携の相手方となるパートナーは、当社とともに業務面でのシナジーを追求していくのみならず、当社の株主としての関与を通じて、当社の中長期的な企業価値の向上にも貢献いただくことから、当社と十分な信頼関係が築けるパートナーであることが必要不可欠であると考えております。一方で、当社は、公開買付者らとは、以下の理由から資本業務提携のパートナーに値する十分な信頼関係を築くことは困難であることから、本公開買付け後に当社との間で資本業務提携を検討している公開買付者らによる本公開買付けに反対いたします。

(ア)本公開買付けが突然開始されたものであること

 上記アのとおり、当社取締役会は、富洋海運から本提案書を受領後、富洋海運の要望に応えて面談を実施するともに当社取締役会において富洋海運との資本業務提携の是非を真摯に検討いたしました。

 具体的には、当社は、本提案書に記載されていた資本業務提携の実施までの期間が、本提案書の受領から3ヶ月という著しく短期間での検討・資本業務提携の実施を求める提案であったこと、富洋海運が提案した資本業務提携の内容は、上記イのとおり、当社の実情を把握しておらず、シナジーの発現も認められない内容であったことから、本提案書における提案内容及び富洋海運との資本業務提携の是非を真摯に検討した結果、富洋海運との間の資本業務提携を実施しないことを2024年5月27日開催の取締役会において決議し、2024年6月4日開催の富洋海運との面談において富洋海運に対し、資本業務提携を実施しない旨の回答書を提出いたしました。また、当社は、2024年6月4日開催の富洋海運との面談において、当社としては、今後、資本提携を含まない業務提携であれば検討可能であることを述べており、富洋海運と継続して協議を行う姿勢は示しておりました。なお、当社の対応に関して、公開買付者は「公開買付者による資本業務提携の提案を行った際、富洋海運が提示した対象者の企業価値向上に係る協議案については何らの評価も示されることなく、当該提案を謝絶された経緯」(本対質問回答報告書4頁・本公開買付届出書12頁参照)があるとしておりますが、上記のとおり、当社は真摯かつ誠実な対応をとっていたことから、当該公開買付者の記載は実情に即していない内容であると当社は考えております。

 一方で、富洋海運は、2024年6月4日開催の面談以降、当社に対して、資本業務提携にかかわる提案等を行うことなく、2024年10月18日に当社取締役会に対して具体的な条件等に関して事前に何らの通知や連絡もなく、また、事前協議の機会も無いまま、突然、本公開買付けを開始いたしました。

 このように、当社の真摯かつ誠実な対応を無視するのみならず、当社の対応が不十分であったかのような疑念を生じさせる記載を本公開買付届出書に行った上で、公開買付者らが本公開買付けを強行したことは当社としては極めて遺憾であり、公開買付者らは資本業務提携を行うに値するパートナーとしての適性を欠いていることから、当社は、公開買付者らとは、資本業務提携のパートナーとしての信頼関係を築くことは困難であると考えております。

 

(イ)公開買付者らの採用する、大株主としての影響力を背景に資本業務提携を迫る手法は受け入れがたい手法であること

 公開買付者は、当社と本公開買付けに関する協議を行ったとしても本公開買付けに係る同意が事前に得られる見込みがないことを理由に、「対象者との早期の資本業務提携に向けた発言力の強化」(本公開買付届出書2頁)を目的に本公開買付けを実施しているとのことです。

 まず、当社としては、上記のとおり、パートナーとの十分な信頼関係が醸成されて初めて資本業務提携を行うことが可能であると考えておりますが、公開買付者らの、本公開買付けを通じて公開買付者が当社の大株主となった上で、当該影響力を背景に資本業務提携の締結を目指すという姿勢は、当社との信頼関係の醸成というプロセスを飛ばして資本業務提携の締結という目的を一足飛びに実現しようとするものであり、当社の資本業務提携のパートナーに関する考え方と相反するものです。

 また、大株主としての当社経営への発言力の増大を背景として、当社との資本業務提携を締結しようという公開買付者らの姿勢は、当社の意思決定に圧力をかけ、当社及び当社のステークホルダーの皆様の利益を犠牲にしてでも、公開買付者らに有利な資本業務提携を当社に応諾させようという自社利益の最大化のみを目指す姿勢を示しているといえます。

 したがって、公開買付者らの信頼関係の醸成を求めず、自社利益の最大化のみを目指す姿勢は、当社の求める資本業務提携のパートナーとしての適性を欠いていることから、公開買付者らとは、資本業務提携のパートナーとしての信頼関係を築くことは困難であると考えております。

 

(ウ)本公開買付けに対する当社のステークホルダーからの反対があること

 当社は、当社の資本業務提携のパートナーについては当社のステークホルダーの皆様からの支持・信頼が得られることが重要であると考えております。また、当社のステークホルダーの皆様からの支持・信頼は、資本業務提携によって実現されるシナジーの有無もその判断の重要な要素になると考えております。

 しかしながら、上記アのとおり、本公開買付けについては、当社の従業員の多くが帰属する本組合から反対の意見が表明されており、また当社にとって事業を超えたパートナーといえる船主団からも反対の意見が表明されております。さらに、上記イのとおり、当社として、公開買付者らとの資本業務提携におけるシナジーは見込んでおりません。

 したがって、資本業務提携を通じたシナジーが認められないことも併せて考えると、当社のステークホルダーの皆様からの支持・信頼が得られない公開買付者らと資本業務提携のパートナーとしての信頼関係を築くことは困難であると考えております。

 

エ.本公開買付けが、強圧性を有する公開買付けであり、当社の一般株主の利益を損なうものであること

 本公開買付けにおいては買付予定数の上限が定められており、その買付数は最大で213,300株(所有割合:17.82%。なお、公開買付者が、当該213,300株の買付け等を行った後に公開買付者らが所有することになる当社株式の数は227,400株であり、その所有割合は19.00%)に設定されています。また、公開買付者らにおいて、買付予定数の上限を超える株式数について、本公開買付け後に当社株式を取得する予定はない(本公開買付届出書14頁)とのことです。すなわち、本公開買付けによって、当社の株主の皆様は、限定された数の当社株式についての売却の機会を得る一方で、応募された株式の全てについて公開買付価格による売却が保証されているものではありません。

 本公開買付けは、まさに、経済産業省が2023年8月31日付で公表した「企業買収における行動指針―企業価値の向上と株主利益の確保に向けて―」(以下「企業買収行動指針」といいます。)において、懸念を示している強圧性の認められる態様の買収です。具体的には、企業買収行動指針においては、「上限が設定されている場合(部分買付け)には、買収の結果、既存株主が少数株主として残存することとなるため、企業価値を下げる可能性のある買収は、そうであるがゆえに、買収を成立させやすくなる側面がある」(40頁)とされており、本公開買付けによって当社の事業の理解が不十分な公開買付者らが当社の筆頭株主となることで、当社の企業価値が毀損されるリスクに晒されるため、当社の株主の皆様は企業価値の毀損した当社株式の保有を避けるために、本公開買付けへの応募を余儀なくさせられます。

 なお、公開買付者は、本公開買付けに上限を付した理由として、公開買付者らが本公開買付けの上限である19.00%を取得すれば、対象者の筆頭株主となり対象者への発言力を高めるという本公開買付けの目的が達成される一方で、当社の経営の独立性が維持されるとともに、公開買付者が当社を持分法適用会社とすることを企図していないことをその理由としていますが、当社への発言力を高めつつも、当社の独立性を維持しようとすることの間には相反する側面が強くあり、本公開買付けに上限を付すことに関する合理的な説明がなされているとは到底言えません。

 以上のとおり、本公開買付けは、強圧性の懸念が大きく存在することから、仮に本公開買付けへの応募が集まったとしても、本公開買付けの条件や本公開買付けにより公開買付者らが当社株式の所有割合を高めることに、株主の皆様が賛同されていることを必ずしも意味しておりません。このような強圧性を有する本公開買付けは、一般株主の皆様の利益を損なうものとして容認しがたいものです。

 

オ.まとめ

 以上のとおり、(ⅰ)公開買付者らの実態が明らかではなく、公開買付者が上場会社である当社の大株主となり経営に関与することに重大な懸念があり、また取引先や従業員からも不安の声が上がっていること、(ⅱ)公開買付者らと当社が資本業務提携を実施したとしても、公開買付者らが想定している事業シナジーの発現は期待できないこと、(ⅲ)本公開買付け後に公開買付者らと当社との間で、資本業務提携のパートナーとして信頼関係を築くことが困難であること及び(ⅳ)本公開買付けが、強圧性を有する公開買付けであり、当社の一般株主の利益を損なうものであることから、本公開買付けは、当社の企業価値向上及び株主の皆様の共同の利益に資するものではなく、むしろ当社の企業価値及び株主の皆様の共同の利益を毀損するものであると考えていることから、当社は、本公開買付けに反対いたします。

 当社は、昭和17年に設立以来、80年以上にわたり、顧客や取引先からお預かりしている貨物を大切に輸送地へ運ぶということを第一に考えて事業を運営した結果、顧客や取引先から「堅実な兵機」としてのご信頼を頂戴しているとともに、ステークホルダーの皆様との永年にわたる良好な関係を築き上げてきたと考えております。それにもかかわらず、当社に対する事前の連絡もないまま一方的に開始された本公開買付けは、当社がこれまで行ってきた当社の事業運営を脅かすのみならず、当社が永年にわたって築き上げ、当社の財産ともいえる当社のステークホルダーの皆様からの信頼を壊すものであると確信しております。

 当社は、今後も末永く、当社のステークホルダーの皆様からの信頼と期待に応え、質の高い物流サービスを提供していく所存ですので、株主の皆様におかれましては、今後も当社の株主として当社の事業の発展・企業価値向上に期待していただきたく、本公開買付けには応募されないようお願い申し上げます。

 

(5)公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等

  (訂正前)

② 本特別委員会の設置

 また、上記「(2)意見の根拠及び理由」に記載のとおり、当社は、2024年10月30日開催の当社取締役会において、当社取締役会の意思決定過程における恣意性のおそれを排除し、その公正性、透明性及び客観性を確保すること等を目的として、公開買付者ら及び当社との間に重要な利害関係が存在しないことを確認した上で、五島大亮氏(当社の監査等委員である社外取締役)、濵田在人氏(当社の監査等委員である社外取締役)及び外部の有識者である西田章氏(西田法律事務所弁護士)の3名から構成される本特別委員会を設置することを決議するとともに、本特別委員会に対し、本諮問事項を諮問いたしました。なお、本特別委員会への諮問にあたり、当社取締役会は、当社取締役会における本公開買付に係る当社の意見を表明するにあたり、本特別委員会の勧告・意見を最大限尊重することを併せて決議しております。

 

  (訂正後)

② 本特別委員会の設置及び本特別委員会からの答申書の取得

ア.設置等の経緯

 上記「(2)意見の根拠及び理由」に記載のとおり、当社は、2024年10月30日開催の当社取締役会において、当社取締役会の意思決定過程における恣意性のおそれを排除し、その公正性、透明性及び客観性を確保すること等を目的として、公開買付者ら及び当社との間に重要な利害関係が存在しないことを確認した上で、公認会計士として会計・財務に関する豊富な知識と経験を有する五島大亮氏(当社の監査等委員である独立社外取締役)、税理士として会計・税務に関する豊富な知識と経験を有する濵田在人氏(当社の監査等委員である独立社外取締役)及び弁護士として同種のM&A事例に関して豊富な経験と知見を有する外部の有識者である西田章氏(西田法律事務所弁護士)の3名から構成される本特別委員会を設置することを決議するとともに、本特別委員会に対し、本諮問事項を諮問いたしました。なお、本特別委員会への諮問にあたり、当社取締役会は、当社取締役会における本公開買付けに係る当社の意見を表明するにあたり、本特別委員会の勧告・意見を最大限尊重することを併せて決議しております。

 

イ.検討の経緯

 本特別委員会は、2024年11月7日から2024年11月13日まで合計3回開催されたほか、各会日間においても必要に応じて都度電子メール等を通じて報告・情報共有等を行う等して、本諮問事項に係る職務を遂行いたしました。

 本特別委員会は、2024年11月7日に開催された第1回特別委員会において、当社が選任したリーガル・アドバイザーであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所については、その独立性及び専門性に問題がないことを確認の上、その選任を承認しております。また、当社が社内に構築した本公開買付けの検討体制(本公開買付けに係る検討、交渉及び判断に関与する当社の役職員の範囲及びその職務を含みます。)に、独立性及び公正性の観点から問題がないことを確認の上、承認しております。

 さらに、本特別委員会は、本公開買付届出書及び本対質問回答報告書の内容その他の関連情報から、本取引の目的及び背景、本公開買付けによるシナジーの有無等を検討しております。また、本特別委員会は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所から、複数回、当社が公表又は提出予定の本公開買付けに係るプレスリリースのドラフトの構成等について説明を受け、一般株主に対して十分な情報開示がなされる予定であることを確認しております。

 

ウ.判断内容

 本特別委員会は、以上の経緯の下、アンダーソン・毛利・友常法律事務所から受けた法的見地からの助言を踏まえつつ、本諮問事項について慎重に協議及び検討を重ねた結果、2024年11月14日付で、当社取締役会に対し、委員全員の一致で、大要以下の内容の本答申書を提出いたしました。

(ア)答申内容

a.当社取締役会が、本公開買付けを、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるものであると判断することは相当である。

b.また、当社取締役会が、本公開買付け前に、富洋海運の提案を拒絶したこと、及び、本公開買付け開始後に、2024年10月31日付けで「大和工業グループとの資本提携及び業務提携の協議開始について」と題するプレスリリースを行ったことについて、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げる目的又は効果を認めることはできない。

(イ)答申理由

 以下のとおり、a.本公開買付けに対しては、本船主会及び本組合から強い反対がなされており、b.本公開買付け記載の業務提携の提案に対しては、当社の内航事業、外航事業、港運事業及び倉庫事業を担当する現場各部署から、事業シナジーの発現可能性について数多くの疑念が提起されており、c.公開買付者からの本公開買付け後の経営方針が当社の企業価値向上に資するものと認められず、かつ、d.本公開買付けの条件の妥当性を認めることができない現状において、当社取締役会が、本公開買付けを、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるものであると判断することは相当である。

 また、公開買付者は、当社との事前協議を経ることなく、本公開買付けを実施するに至った原因が当社の対応にあることを示唆し、かつ、当社が2024年10月31日付けで「大和工業グループとの資本提携及び業務提携の協議開始について」と題するプレスリリースを行ったことに対して事業リスクの存在を指摘しているが、e.本公開買付け前の当社取締役会の対応、及び、2024年10月31日付けのプレスリリースに、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるような目的又は効果は認められない。

a.本公開買付けが当社のステークホルダーに与える影響

 以下のとおり、本公開買付けは、本船主会及び本組合からの強い反対を受けているものであるから、当社の事業継続に不可欠な、これらステークホルダーからの理解を得るだけの説明がなされない限り、本公開買付けには、当社の企業価値を毀損させるおそれが認められる。

・本公開買付けの開始後、当社は、本船主会より、2024年11月7日付けで、全会一致の意見として、本公開買付けに断固たる反対意見を表明する書簡を受領した。同書簡には「実態の明らかではない公開買付者」が当社の経営に積極関与するに至った場合には、当社との間で信頼関係に基づく協調体制を築き続けることは難しいと考えていることが記されていた。

・また、当社は、本組合より、2024年11月11日付けで開催した組合員大会において、本公開買付けに反対の意見を表明する決議をした旨の報告とともに、本公開買付けの是非に対する判断を慎重に行うようにとの要請を受けた(「堂島汽船株式会社による当社株券に対する公開買付けに対する意見」と題する意見書(2024年11月11日付)。同意見書には「実態が明らかではない公開買付者が当社の大株主となった場合、当社が永年に亘って信頼関係を築いてきたお客様との関係が崩れ、お客様やお取引先様が当社との取引を行わなくなってしまうのではないか、またその結果、当社の業績・経営に重大な影響が生じ、各従業員の処遇・待遇にも変化が生じてしまうのではないかという不安が日々広がっております」と記されていた。

・当社は、当社のステークホルダーが「実態の明らかではない公開買付者」に対して抱く懸念を払拭できる情報を収集するため、公開買付者に対する質問の「第1 公開買付者グループの詳細」記載の質問を行ったが、本対質問回答報告書においては、以下のように、当社のステークホルダーの懸念を払拭するに足りる情報の提供はなされなかった。

●当社による「富洋海運の株主構成」の質問に対しては、「非公開情報となりますので本書での開示は控えさせて頂きます。」との回答がなされている。

●当社による「公開買付者グループにおける当社以外の投資先、投資方針の詳細、過去10年間における投資活動の詳細」の質問に対しては、「守秘性の高い情報であり、投資先の情報も含みますので、本書での開示を控えさせて頂きます。」との回答がなされている。

●当社による「公開買付者グループ各社の資本関係」の質問に対しては、「非公開情報となりますので本書での開示は控えさせて頂きます。」との回答がなされている。

●当社による「富洋海運について、直近5事業年度において、決算公告を行った日をご教示ください。決算公告については会社法に基づき毎事業年度対応が必要となる事項であり、富洋海運の公告方法である官報を検索しましたが、該当がなかったためお伺いします。また、直近5事業年度に係る貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書をご開示ください」の質問に対しては、「本公開買付けの意見表明にあたっては直近5事業年度の資料は不要と考えておりますので」「本書での開示は控えさせて頂きます。なお、富洋海運において確認したところ、実務上の過誤により当該決算について決算公告がなされていなかったため、そのための手続を行う予定でおります。」との回答がなされている。

●当社による「公開買付者及び富洋海運が、上場会社である当社の大株主として必要かつ十分なガバナンス体制、監査体制、法令遵守及びコンプライアンス体制を備えているかを検討するため、これらの体制に関して必要な情報をご提供ください」との質問に対しては、「非公開情報となりますので具体的な情報の開示は控えさせて頂きますが、富洋海運は、非上場会社に求められる水準のガバナンス体制、監査体制、法令遵守及びコンプライアンス体制を整備しております。」との回答がなされている。

b.公開買付者が提案している業務提携による事業シナジーの発現可能性

 当社が、社内の各部署に対して、本公開買付届出書の記載内容に関する疑問点の存否を確認したところ、現場責任者からは、以下のような数多くの疑問が提起されている。業務提携による事業シナジーを生み出すためには現場の協力が不可欠であることを考慮すれば、現場の各部署を説得できるだけの合理的な説明がなされない限り、本公開買付けに事業シナジーを期待することは難しいものと評価すべきであるが、本対質問回答報告書においても、現場の各部署の疑問を払拭するに足りるに十分な情報提供はなされなかった。

(a)「内航事業における協業」の提案に対する当社内航海運部及び営業本部の現場の意見

・公開買付者による現状認識を疑問視するものとして、「近年の物価上昇によるコスト増加分を単純に取引価格に反映させることは容易ではない」と述べる点に対して、「当社は荷主と交渉し、値上げを実現している」「当社は主要荷主と良好な関係を構築しており、コスト上昇分の運賃引上げに協力いただいており、示された内容とは相違する」との疑問が提起されたり、「取引先である荷主に対して安定的な船腹を供給するためには、用船を活用して一定の船隊規模を維持する必要がありますが、これを現状対象者が単独で行う場合、対象者の意思決定で売船を柔軟に決定できないことから、事業の自由度に支障が出ているものと考えております」と述べる点に対して、「当社の船隊構成と経営方針について理解していないのではないか。」「外航のルールを当てはめようとしているように見受けられる」などの疑問が提起された。

・公開買付者の提案する業務提携のシナジー効果を疑問視するものとして、全国内航タンカー海運組合「令和5年度・内航タンカー船員実態調査報告書」を引用して人件費に係るコストを推測している点に対して、「当社はタンカーではなく、在来船であり、船種が全く相違し、賃金体系も違うので、当てはまらないと考える」との疑問が提起されたり、「公開買付者グループが連携してM&Aによる事業の受け皿となることは更なるビジネス機会になりうる」としてM&Aを「船員の確保といったリソースも同時に確保できる利点がある」と述べる点に対して、「人材育成や事業承継等は船主と連携して行っており、方向性が相違している」や「人材育成についても、当社は既に船主と関連会社を一緒に立ち上げ人材育成と船員確保の対策を行っている」など、当社が本船主会と共同で2013年に七洋船舶管理株式会社を設立してから船員の確保及び育成のために取り組んできた対策との矛盾が指摘された。

 

(b)「外航事業における協業」の提案に対する当社外航部及び営業本部の現場の意見

・公開買付者による現状認識を疑問視するものとして、「公開買付者グループが保有するような4万重量トンを超える船舶を確保することが望ましく」と述べる点に対して、「当社の事業範囲は自ら荷物を探して船をタイムチャーターして荷物を運んでいる状況であり、荷物量から換算すると5,000重量トンから1万重量トンまでの小型船が適しております。したがって、4万重量トンを超える船舶を確保する必要はありません。また、現状運んでいる荷物の復航路で荷物の確保が難しいことから、新たな船舶を保有することはリスク上昇要因となり、事業認識に相違があります」などの疑問が提起された。

・公開買付者の提案する業務提携のシナジー効果を疑問視するものとして、「公開買付者グループが有する遠洋航路の荷主は近海航路エリアにも商圏を持つことが多いことから、これら顧客を対象者に送客することで、売上向上効果がある」と述べる点に対して、「荷主は遠洋航路と近海航路では船社を分けて利用している」「荷主はその航路を得意とする船社起用が一般的である」などの疑問が提起された。

 

(c)「港運事業及び倉庫事業の協業」の提案に対する当社本社営業部、東京支店、中国支店、大阪支店及び営業本部の現場の意見

・公開買付者による現状認識を疑問視するものとして、「いわゆる物流の2024年問題によるドライバー不足が、更なるコスト増として収益を圧迫しうる可能性があると認識しております」と述べる点に対して、「2024年問題については荷主と各運送会社と情報共有し相互理解を図っており、荷役作業の機械化や納品時間の変更など既に対策を実施している。また運賃コスト増に関しても、荷主へ転嫁も出来ており収益を圧迫するような事態は起こっていない。荷主への価格転嫁は実施していくので収益を圧迫する要因にはならない」「燃料費の高騰などにより以前からの運賃の引上げ交渉は都度行われている」との疑問が提起されたり、「荷受人が負担する関税を通関事業者が通関手続時に円に立て替える慣習があり、当該ビジネスの拡張に際しては、このようなキャッシュフローへの考慮が必要である」と述べる点に対して、「弊社は以前よりこの問題に取り組み、荷主の口座からの直接納税するよう順次変更している」「通関時に発生する関税・消費税の立替は荷主の協力のもと解消に向かいつつあり、キャッシュフローへの懸念はない」などの疑問が提起された。

・公開買付者の提案する業務提携のシナジー効果を疑問視するものとして、「新たなビジネス機会を確保することで、既存のプライシングの慣習に縛られずに利益を確保」と述べる点に対して、「伝えられているビジネスはベンチャービジネスの構想段階のものであり、具体的なものは聞いていない」「事業性を評価できる水準の情報量はない。また、そのビジネスもいつ始まるのか時期が不明確なうえ、プライシングの相手や取扱量の水準も示されていない」などの疑問が提起された。

 

(d)「新規事業における協業」の提案に対する当社本社営業部、倉庫部及び営業本部の現場の意見

・公開買付者が「脱炭素化により生じ得る新たなビジネスについて、対象者と協議して参りたい」と述べる点に対して、「新規事業については、脱炭素という今が旬のテーマに終始しているが、具体性は全くなく、構想もないため、表現が極めて曖昧でわかりにくい表現になっているのではないか」「船舶における脱炭素化について具体例を示して欲しい。また、海外における危険品の取扱い(需要等)について知見を有しているのか」「新規事業はエネルギー分野のようですが、具体性がなく、ただ、脱炭素と言っているに過ぎない。石油タンカーの需要がなくなるから代替エネルギーの運搬を目指すと記載されているだけである」などの数多くの疑問が提起された。

 

c.本公開買付け後の経営方針の合理性

 公開買付者は、本公開買付届出書の「本公開買付け後の経営方針」において、「取締役の派遣」と「資本業務提携契約の締結」を挙げている。当社は、それが当社の企業価値向上に資するものであるかどうかを判断するために、「公開買付者への質問」において追加情報の提供を求めたが、以下のとおり、対質問回答報告書においては、具体的な情報の提供はなされなかった。上記a.及びb.のとおり、本公開買付けに対して、当社のステークホルダーからの理解が得られていない状況においては、本公開買付け後の経営方針についての具体性が認められない限り、これを当社の企業価値の向上に資するものであると評価することはできない。

・当社による「公開買付届出書14頁の記載によれば、資本業務提携契約において、「「(ⅰ)取締役の派遣」等の経営体制、一貫輸送分野や脱炭素分野等での協業等を含む、資本提携に関連する内容」を定めることを想定されているとのことですが、その具体的な内容をご説明ください」との質問に対しては、本対質問回答報告書では「本書提出日時点では具体的な内容は決定しておりません。本公開買付け終了後、どのような経営体制とし、どのような協業を行うことが両者にとって最善であるか、協議を経た上で具体的な内容を検討していきたいと考えております」との回答だけがなされている。

・当社による「本公開買付け後において、公開買付者が現時点で想定されている当社の事業計画、財務・資金計画、投資計画等があれば、その内容を具体的にご説明ください」との質問に対しては、本対質問回答報告書では「対象者の事業計画等につきましては、公開買付者及び富洋海運において作成し、一方的に提案する性質のものではないと考えております。従いまして、本公開買付け後の事業計画等については、対象者の求めに応じて対象者と協議をさせて頂きたいと考えております」との回答だけがなされている。

 

d.本公開買付けの条件の妥当性

 本公開買付けは、買付予定数に上限を設定するものであるため、その条件の妥当性を認めるためには、本公開買付けにおける当社株式1株当たりの買付け等の価格(以下「本公開買付価格」といいます。)が妥当であり、かつ、当社の企業価値を中長期的に向上させるものであることが必要である。しかしながら、以下のとおり、本公開買付価格を妥当であると認めることはできず、本公開買付け後における当社の企業価値を中長期的に向上させるものであると認めることもできない。

・公開買付者からの説明によれば、公開買付者は、本公開買付価格の決定に際して、第三者算定機関からの株式価値算定書を取得しておらず、当社事業の将来キャッシュ・フローに基づく本源的価値を参照していないとのことである。

・公開買付者からの説明によれば、本公開買付価格は、当社の市場株価をもとに、少なくともリーマンショック発生日(2008年9月16日)以降に当社株式を市場で取得した一般株主の取得価格以上に設定することで、当社株式の売却の機会を提供できるものとして設定されたとのことであるが、当社株式は、本公開買付け後の2024年10月31日以降、本公開買付価格を上回る水準で推移している。

・公開買付者からの説明によれば、本公開買付けは「早期の資本業務提携に向けた発言力の強化」を目的として実施されたものであるとのことであるが、公開買付者らの経済的利益の最大化を目指した「発言力の強化」が当社の企業価値の確保・向上に反するような経営意思決定を促すおそれが懸念されるところ、本対質問回答報告書においては、かかる利益相反への懸念を払拭させるような合理的な説明はなされていない。

・本公開買付けに対しては、上記のとおり、本船主会及び本組合からの強い反対意見が示されており、かつ、当社の現場各部署からも数多くの疑念が提起されていることからすれば、本公開買付けが当社の企業価値を中長期的に向上させるものであると認めることはできない。

 

e.当社取締役会の対応の合理性

 公開買付者からの説明によれば、富洋海運が2024年4月17日付けで提示した当社の企業価値向上に係る本提案書について、当社からは何らの評価も示されることなく、その提案が拒絶されている状況であったため、公開買付者は、当社との間での事前協議を経ることなく、一方的に本公開買付けを実施したとのことである。また、公開買付者は、本対質問回答報告書において、当社が、2024年10月31日付けで行った「大和工業グループとの資本提携及び業務提携の協議開始について」と題するプレスリリースに対して、「大和グループを含む高比率売上先の動向が事業等のリスクとして挙げられております。対象者の大和グループへの依存度をさらに高めることに繋がりうる提携については、対象者及び対象株主におかれましては、対象者株主でもある富洋海運グループの回答を踏まえ、慎重なご検討をいただきたいと考えております」と指摘する。

 公開買付者からのこれら指摘を受けて、本特別委員会は、当社が、本提案書記載の提案を拒絶した経緯と、2024年10月31日付けで行ったプレスリリースを行った経緯を確認したが、以下のとおり、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるような目的又は効果は認められなかった。

・当社は、2024年4月30日に取締役会を開催して、富洋海運からの提案を審議したところ、同審議においては、(ⅰ)富洋海運については、会社法で義務付けられている決算公告もなされておらず、その実態が不明であること、(ⅱ)当社が富洋海運の提案を受け入れることについて経済合理性が認められないこと、(ⅲ)仮に富洋海運の提案に経済合理性が認められたとしても、富洋海運による第三者割当増資や取締役の派遣の提案は、上場会社の意思決定のスケジュールに照らして実現可能性がないなどの意見が示された。

・当社は、2024年5月15日、富洋海運と面談し、富洋海運から「戦略的提携のご提案」と題する5月15日付面談資料に基づく説明を受けた。5月15日付面談資料は、「会社概要」「弊社の強み:国際的なビジネスの繋がりと変化への対応力」「提携を通して目指す場所」「長期的な視点での提携の形①~内航事業」「長期的な視点での提携の形②~倉庫事業及び港運事業」「長期的な視点での提携の形③~外航事業」「企業価値向上に向けた全体像」「具体的なステップ」「船隊」と題する11枚のスライドで構成されているが、当社にとって特に参考となる情報は含まれていなかった。

・当社は、2024年5月27日、取締役会を開催して、富洋海運からの提案の諾否を審議したところ、出席取締役は全員一致でこれを否決した。

・当社は、2024年6月4日、富洋海運を訪問して、富洋海運に対して、2024年5月27日付取締役会審議の結果、提案を辞退することが決議された旨を説明したところ、富洋海運からは「結果はある程度予測していた」との発言が聞かれた。

・本公開買付け開始後、当社は、2024年10月31日付けで「大和工業グループとの資本提携及び業務提携の協議開始について」と題するプレスリリースを行っているが、同プレスリリースで公表された協議の開始について、当社の株主共同の利益に反するような目的は認められない。

・また、同プレスリリースがなされて以降、当社株式の市場株価は、本公開買付価格を上回る水準で推移しており、かつ、当社のステークホルダーからは、同プレスリリースで公表された協議に反対する意見は示されていない。

 

以 上