第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 分析の前提

 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、当社グループの中間連結財務諸表に基づいて実施されております。当社グループの中間連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 中間連結財務諸表の作成にあたっては一部に見積りによる金額を含んでおりますが、見積りにつきましては、過去実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づいており、妥当性についての継続的な評価を行っています。しかしながら、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 本項に記載した将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(2) 当社グループの事業に影響を与える経営環境に対する評価

 当社グループは、機械(コンピュータやロボット)の「眼」に相当する人工知覚のアルゴリズムの研究開発とライセンス提供を行っております。人工知覚は機械の「脳」に相当する人工知能と並び相互補完するDeep Tech(深層技術)として、機械が自律的に機能できるように進化させる技術です。

 当社グループの基幹技術は、独自のSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術であり、機械が動きながらリアルタイムでの位置認識と地図作成を行うものです。2021年3月期には、当業界における当社グループの優位性を強化するため、同研究分野を世界的にリードしている独ミュンヘン工科大学発のArtisense Corporation(本社:米国カリフォルニア州、以下アーティセンス社)をグループ会社化しました。これにより、アーティセンス社の独自技術である次世代アルゴリズム(直接法SLAM)や、人工知覚と人工知能の融合技術(GN-net)等を販売ラインナップに加え、より幅広い顧客ニーズへの対応を強化しました。2023年3月期には、技術戦略における複数のマイルストーンを達成いたしました。一つ目は、アーティセンス社の直接法SLAMと当社が従来から保有する間接法SLAMとのハイブリッド化に成功し、基本性能の向上を実現しました。二つ目は、当社技術を組み込んだ顧客の商用製品の販売開始(顧客製品化)を複数達成し、中でもIntel社のロボット開発プラットフォームへの本格採用は、当技術領域の専門企業による世界初の大手半導体メーカーのプラットフォームへの商用SLAM採用として、業界における大きなマイルストーンとなりました。三つ目は、今後の更なる顧客製品化の促進のため、顧客製品の開発・試験運用の期間を短縮し、直接製品として実用化も可能な、マッピング用製品向けパッケージを当社グループ自ら開発、販売開始しております。2024年3月期には、今後の成長の二本柱となる「顧客製品化」と、当社人工知覚技術を活用して最終顧客に対して運用や付加価値サービスの提供までをパートナーと共に行う「ソリューション化」を推進してまいりました。顧客製品化においては、ドローンや自動運転などより幅広い領域における案件拡大を達成し、また、ロボット用の製品向けパッケージの販売を開始し、ロボティクス案件拡大の加速に向けて取り組んでおります。ソリューション化においては、欧州の新エネルギー設備管理向けのデジタルツイン用途のソリューション提供が立ち上がり、案件の大型化に向けて進めております。これらにより、当社グループの技術優位性を大きく強化することができましたが、今後は公共案件を含むロボティクス・自動運転領域におけるソリューション化や半導体や生成AIを含む人工知能との技術融合なども推し進め、より革新性の高い人工知覚技術の開発を推進してまいります。

 経営体制については、グローバルにおける機動的な執行及び短期と中長期の二軸経営の強化を目的として複数代表取締役体制の採用をしております。これにより代表取締役CEOの項が当社グループ全般の事業経営を統括し、代表取締役大野は中長期の成長に向けた次世代Deep Techへの投資や新領域強化を目指します。

 事業戦略については、次世代産業の発展と人工知覚技術の市場拡大が急激に進むことを見据えて、代替や置き換えが困難なアルゴリズム層への集中を行なっています。最終製品の普及にともなう評価・開発フェーズ売上から製品化フェーズにおける製品関連売上中心への移行、売上拡大を目指しており、短中期では製品普及の早いロボティクス・マッピング領域中心に継続的な顧客製品化及び市場販売の拡大を目指しながら、中長期では更なる注力領域の拡大と製品関連売上の積み上げ、飛躍的な利益拡大を目指してまいります。加えて、販売戦略として、人工知覚と補完性が高いセンサ・半導体企業、システムインテグレータ、技術商社との提携拡大を通して、販売チャンネルとラインナップの拡大を進めています。

 市場環境については、人と人の交流や共同作業を要しないオペレーションの省人化やリモート化需要が全ての産業で急増しており、特に、物流・製造・建設・インフラ等の領域におけるロボティクス・マッピング等の自動化技術のニーズ増大が顕著であります。加えて、足元での人工知能技術の進化に伴い、機械と現実空間を繋げる人工知覚のニーズの今後益々の拡大が見込まれています。この影響により、更なる顧客製品化に向けた案件は着実に進捗しており、足元で特に注力しているロボティクス・マッピングに加えて、自動運転やその他次世代産業など特定の技術領域や産業での利用に限定されない幅広い範囲でのSLAM産業の高成長及び当社グループ技術の社会実装に伴う収益機会の拡大を引き続き見込んでおります。

 

(3) 経営成績に関する分析

 顧客製品化案件の伸長・領域拡大による製品関連売上の増加やソリューション化の進展により売上拡大を継続しております。

 継続的な事業拡大及び体制拡大に伴い、販売費及び一般管理費は554,188千円(前中間連結会計期間比22.8%増)に増加し、主な内訳は人件費177,630千円、経費及び償却費201,601千円、研究開発費170,678千円であります。その他、為替レートの変動による為替差損78,901千円が発生しております。

 この結果、当中間連結会計期間の売上高は148,188千円(前中間連結会計期間比101.6%増)、営業損失は437,622千円(前中間連結会計期間は営業損失395,925千円)、経常損失は519,907千円(前中間連結会計期間は経常損失111,186千円)、親会社株主に帰属する中間純損失は553,672千円(前中間連結会計期間は親会社株主に帰属する中間純損失117,351千円)となりました。

 なお、当社グループは、AP事業を主要な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性に関する分析

① 資金政策に関する基本方針

当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金政策の基本方針とし、事業展開および研究開発に係る資金需要に対して機動的に対応できるだけの十分な現金及び現金同等物の保有を図っております。

 

② キャッシュ・フローに関する分析

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、434,008千円の支出(前中間連結会計期間は364,216千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前中間純損失553,466千円、為替差損77,432千円、減損損失33,559千円、売上債権及び契約資産の減少額23,809千円及び棚卸資産の増加額25,981千円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、37,927千円の支出(前中間連結会計期間は13,146千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出33,559千円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは1,850,928千円の収入(前中間連結会計期間は306,532千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入1,845,267千円によるものです。

 

以上の他、現金及び現金同等物に係る換算差額の影響もあり、当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ1,374,693千円増加し、3,094,427千円となりました。

 

(5) 財政状態に関する分析

(資産)

当中間連結会計期間末における流動資産は3,321,083千円(前期末比1,367,482千円増)となりました。これは主に、現金及び預金の増加(同1,374,693千円増)、棚卸資産の増加(同26,006千円増)によるものであります。

また、固定資産は428,111千円(前期末比3,296千円増)となりました。これは主に、差入保証金が増加(同3,296千円増)したことによるものであります。

以上の結果、資産合計は3,749,194千円(前期末比1,370,778千円増)となりました。

 

(負債)

当中間連結会計期間末における流動負債は279,464千円(前期末比1,422千円減)となりました。

以上の結果、負債合計は286,180千円(前期末比1,422千円減)となりました。

 

(純資産)

当中間連結会計期間末における純資産は3,463,014千円(前期末比1,372,201千円増)となりました。これは主に、中間包括利益(△482,989千円)と、株式発行に伴う資本金及び資本準備金の増加(計1,854,056千円増)によるものであります。

 

(6) 研究開発活動

当中間連結会計期間の研究開発費の総額は、170,678千円であります。

 

3 【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。