文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サンリオの経営の基本方針
当社はホームページにおいて、企業理念を下記のとおり公表しております。


(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 業績ボラティリティ(変動幅)の抑制
当社グループはこれまで、『ハローキティ』をはじめとしたキャラクターをブランドとして育て、他社にライセンスし、また、ギフト商品の企画・製造・販売を行うことで利益を獲得し事業を拡大してまいりました。その主たる事業はライセンスビジネスであり、『ハローキティ』を中心とするものでした。また、2014年3月期に当時の過去最高の営業最高益を達成した後、2015年3月期から2021年3月期まで7期連続で営業減益となるなど、過去の歴史において業績のアップダウンを繰り返してきました。しかしながら、2022年3月期以降は複数キャラクター展開が奏功し、キャラクターポートフォリオ(売上総利益ベース)に占める『ハローキティ』の比率は2014年3月期の75%から2024年3月期には30%まで低下し、営業利益も過去最高を更新いたしました。エンターテイメント事業は一般的に業績変動が大きいですが、キャラクターポートフォリオの多様化等、今後も業績のボラティリティを抑え、安定化させることが経営課題であると認識しております。
② マーケティング・営業戦略の見直し
当社グループのIPが外的要因に依拠したブームに左右されることから脱却するためには、ブランディングを変えることが重要と認識しております。海外を中心にEvergreen(認知や好意度が常に新鮮で維持されること)なIP化を実現するため様々な施策を実施してまいります。具体的には大型周年イベントなどの「グローバルコンテンツへの投資」や、動画配信チャンネルとの取り組みとして「グローバルプラットフォーマーとの連携」、グローバルのキャラクター横断マーケティングなどの「グローバル規模でのブランディング監修の強化」、海外各地域のニーズを起点とした「現地デザイン/現地クリエイティブの強化」を中心とする施策を実行してまいります。
③ グローバル成長基盤の構築
当社グループが海外展開を強化するためには、グローバル視点でのマネジメント体制の構築、経営資本を適切にアロケートできる財務戦略及びグループガバナンスの確立が不可欠と考えております。具体的にはグローバル戦略室を新設し、グループガバナンスの強化を図り、そして、新たに立ち上げた投資委員会を通じて投資基準を設計し、投資プロセスの整備を行ってまいります。加えて、人的基盤の構築として、「グローバル人材」「クリエイティブ人材」といった人材への投資もしっかりと行ってまいります。
④ IPポートフォリオ拡充とマネタイズ多層化
IPの提供価値の幅を拡げていく取り組みに関しては、これまでの「グッズ中心」から、推し活等の付加価値提供、映像・ゲーム接点でのストーリー型IPの確立、教育・リアル体験等を通じたIP体験の創出といったグッズに依拠しない価値提供へと拡げていくことを考えております。
また、マーケット/ターゲットの幅を拡げていく取り組みに関しては、サンリオキャラクターのマルチIP展開の他、UGX※を活用した創作支援・二次創作関連事業の創出、マーケット起点の新規IP創造、キッズ・男児などの空白セグメントの開拓を進めてまいります。
※UGX: User Generated xの略称:User Generated Content,User Generated intellectual propertyなどの総称
⑤ ダイバーシティ・マネジメントの活用
当社グループは130の国と地域にキャラクタービジネスを展開しており、今後もさらに地域を拡げていこうと考えております。また、キャラクタービジネスはお子様からお年寄りまで年齢に関係なくマーケットが拡がっており、ダイバーシティの考えに根差した商品開発と企業との密接な協業が必須となると考えております。一方で、地域・文化・思想で分断された戦略ではグローバルな人材の確保、商品の流れ、流行への迅速な対応が困難となります。そこで、グローバルに一体化した情報管理システムとダイバーシティ・マネジメントによるグループ経営の確立が必須と認識しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「人は一人では生きていけない」という創業当時からの思いのもと、お互いにおもいやりを持って、支え合い、助け合う心を大切にしております。この度、サステナビリティに関する考え方として、『世界中をみんなの笑顔でつなぐ』∼Sustainability for Smiles∼を策定しました。これからも私たちは、世界中のすべての人と社会に寄り添う取り組みを通じて、次世代に続く笑顔を共創します。
当社グループは、全社横断的な視点からサステナビリティ方針の策定及びサステナビリティに関連するアクションの推進、モニタリングを実施することを目的として、サステナビリティ委員会を設置し、持続可能な事業活動に向けた議論を行っております。
また、10年先にわたる事業環境分析を行い、創出価値により解決に取り組んでいく重要課題「Well-Beingの充足」等と、ESGの観点で解決に取り組んでいく重要課題「地球環境への配慮」等、10の「サンリオ・マテリアリティ」を特定しました。事業活動の創出価値を最大化させるとともに、重要課題の解決に貢献し、世界中で笑顔が生まれる持続可能な社会の発展に貢献することを目指してまいります。「サンリオ・マテリアリティ」のアプローチについては、それぞれの項目にKPIを設定し、進捗を管理しております。
サンリオ・マテリアリティ(10の重要課題)
<「創出価値」の観点で取り組む重点テーマ>
<「ESG」の観点で取り組む重点テーマ>
当社グループは「みんななかよく」を企業理念としており、環境・社会問題、労働慣行・人権への配慮を含むサステナビリティは、長年に亘り重要視してきた経営課題であります。グループとして持続可能な社会の実現に貢献することを目的に、解決すべき10の重要課題「サンリオ・マテリアリティ」を特定し、企業価値向上の視点からも積極的に取り組んでおります。具体的には、当社グループのサステナビリティ経営への取組強化を目的として、委員長を代表取締役社長、事業戦略本部担当取締役を副委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております(年4回)。営業部門等の担当役員、GM、グループ子会社社長等も含むメンバーで構成され、サステナビリティ課題の特定や見直しを始めとして、気候変動などの「環境問題」、ダイバーシティや労働環境・人権などの「社会問題」に関する施策・方針、取り組み状況などについて同委員会で定期的に議論を行っております。重要事項等については、経営会議での審議・議論を経て、取締役会へ報告されております(年4回)。なお、取締役会は、目標設定や取り組みの進捗状況等について監督の役割を負っております。
体制図

① サステナビリティ全般
当社グループは、ビジョン実現のための創出価値を「心を癒し、人と環境に寄りそう」「生活に楽しみを増やす」「人と人とをつなげる」「人々の自己表現を後押しする」「エンタメの力で社会課題を解決する」と定めまた、その価値創出の基盤として、「価値創造を行うヒトそのもの」「異なるバックグラウンド・ケイパビリティのヒトによる共創」を重要視しております。また、それらの創出価値を持って対処していくべき重要課題(マテリアリティ)を「Well-Beingの充足」「クリエイティブの民主化」「子どもの教育水準の向上」、「国境・世代を超えた社会のつながり強化」「社内外のヒトへの投資」「ダイバーシティの実現」と定め、創出価値の拡大と重要課題の解決に貢献するための取り組みを推進しております。
② 気候変動
当社グループは、TCFD提言に沿ってシナリオ分析などを行い、気候変動にともなうリスクと機会を特定しています。2023年のシナリオ分析では、2035年時点における「脱炭素へ向けた移行リスク・機会」「気候変動の進行による物理リスク・機会」それぞれについて影響度評価を実施しました。
(影響度評価に用いたシナリオ)
移行リスクについては、炭素税の導入や温室効果ガス(GHG)排出規制の強化、再エネ賦課金の負担増加、エネルギーコストの上昇などによって、施設・店舗の運営やサプライチェーンなどにおける財務負担が増加する可能性があると分析しています。また、物理リスクについては、異常気象が増加することで施設・店舗の被害や営業機会の損失が生じる可能性があると分析しています。
一方、機会については、「サンリオピューロランド」のような屋内型テーマパークは、異常気象増加の影響を受けにくいため、競争優位性が向上する可能性があります。また、ショップ展開、商品、デザイン、ライセンスビジネス、価値体験ビジネス、それらを包括するエンターテイメントビジネスすべてにおいて、時代に対応し、先進していくことで、気候変動を含む社会的変化へのレジリエンスが高い組織をつくり競争優位性を向上させられるよう努めていきます。
環境データ
(注)1. 株式会社サンリオ、株式会社サンリオエンターテイメント、三麗鷗(上海)国際貿易有限公司、Sanrio, Inc.にて集計しております。
(注)2. 燃料・電力使用量が不明な場合、電力使用金額から使用量を推計し、使用金額も不明な場合、延床面積から算定を行っております。
(注)3. 電力使用量の分かる拠点は、ロケーション基準にてScope2を算定した結果を集計しております。
(注)4. 三麗鷗(上海)国際貿易有限公司、Sanrio, Inc.はScope1,2のみ算定し、集計に含めております。
③ 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
私たちは「One World,Connecting Smiles.」というビジョンに基づき、一人でも多くの人を笑顔にし、幸せの輪を広げていきます。そのためにも従業員一人ひとりがキャリアを通して成長し、自分らしく働くことが出来る職場環境を実現します。
中期経営計画で掲げるグローバル成長基盤の構築を目指して、強固な人的基盤を整備するべく、人材への投資を継続して参ります。具体的には、人材育成とDEI推進を重要な軸に据え、人材育成に関しましては、グローバル×クリエイティブ人材を創出するべく、戦略的ジョブローテーションの設計、研修プログラムの高度化、海外との人材交流の強化等を計画、実行していくことで、人材育成に向けた幅広い機会を提供してまいります。また、DEI推進に関しましては、一人ひとりの主体的な成長を促進するべく、多様なキャリアや働き方を支える制度、環境を整備することで、キャリアパスの明示、多様な働き方を可能にする制度の充実化を実現することで、中期経営計画で掲げる上級管理職の女性比率の達成等を進めてまいります。
当社では、コンプライアンス、環境、災害、品質、情報セキュリティ、輸出入管理といった事業全般に係るリスクマネジメントとコンプライアンス領域を、全社ベースで統合的に管理することを目的として、合同コンプライアンス委員会(年4回開催)を推進組織としております。
合同コンプライアンス委員会は、内部管理担当取締役を委員長として、当社において発生しうるリスクを内外からの情報、内部監査室の監査結果などから洗い出し、その重要性及び発生可能性、財務報告に与える程度を分析して評価しリスク対応策を構築しております。特に、サステナビリティ領域に関しては、物販事業及びライセンス事業におけるサプライチェーン上で労働者の人権侵害をリスクとして認識しております。その対応策として、強制労働・児童労働や長時間労働の禁止、差別・ハラスメントの排除、労働者の健康と安全を担保すること等を明記した「サンリオサプライヤー/ライセンシー行動規範」を新たに策定し、2027年3月末までに当社IPを用いた商品開発に関わる全てのサプライヤーやライセンシーに対し、人権の尊重を要請し上記の行動規範を遵守いただく旨の書面を取り交わすことを目指しております。
当社は気候変動に起因する移行リスク並びに物理的リスクが、環境面のみならず経済面や事業運営面に影響を与えうることを認識しており、今後もサステナビリティ委員会と合同コンプライアンス委員会が連携の上、事業面に及ぼす影響を評価・分析し、そのリスクを管理する体制の構築に努めて参ります。
① 気候変動
本社物販事業においては、厳格な在庫管理や廃棄の削減を進めることで二酸化炭素の排出削減を実現し、廃棄額に関しては、2024年3月期に2021年3月期対比で90%超の削減を達成しております。また、当社は、2027年3月期末を目標年度とする温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を設定しています。
そして、今後サステナブルに「One World, Connecting Smiles.」を達成すべく各種ステークホルダーと協業し、2027年3月期末までに、Scope1-2にかかるGHG排出量を2019年3月期比から6割削減し、2027年3月期末までに、Scope3にかかる売上当たりGHG排出量を2019年3月期比から10%以上削減することを目指しております
② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
当社は、前中期経営計画にて、女性管理職比率の目標であった43%を達成し、新たな中期経営計画では、最終年度である2027年3月末までに、上級管理職(執行役員、GM)の女性比率30%以上を目標として掲げております。
(女性活躍推進目標)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市場リスク
当社グループは、グローバルに事業展開していることから、当社商品を販売している各国、各地域の経済状況の影響を受けます。顧客にとって当社商品は、日常生活において必ずしも必要不可欠のものではないので、様々な市場の影響を受けて売上高につながらないことがあります。
(2)為替リスク
当社は、中国を中心として海外に8割程度の商品を発注しております。一方、海外売上高比率は約3割で、売上総利益の3割程度が海外地域で発生しております。そのほとんどは海外子会社におけるライセンス事業によるもので、その海外子会社の連結決算過程、またその他本社の外貨建て収支計上において為替変動の影響を受けております。このため外貨収支予測をして債権債務のポジション調整をしておりますが、これにより為替リスクを完全に回避できるとは限らず、また連結財務諸表の作成にあたって適用される為替換算レートにより、海外連結子会社の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費等連結財務諸表の各項目について、換算上の影響が生じます。そのことにより、業績に影響を与える可能性があります。
(3)新キャラクター開発力及び人材の確保等事業リスク
当社グループの売上高の大半はキャラクターが関与しております。当社は、キャラクターの開発、育成にあたって、短期の爆発的な人気を追うことよりも、長期安定的な人気を得る方針で、経営を行っております。また、常に新キャラクターの開発の努力を重ねております。しかしながら、各キャラクターの人気には移り変わりがあり、そのことにより業績に影響を受ける可能性があります。
当社のキャラクター開発は、原則として社員が担当しております。そして、開発されたキャラクターは、当社各部門の協力を得て市場に出ることとなります。この場合、著作権は全て当社に帰属します。なお、キャラクター開発部門の重要な人材の安定的な雇用につきましては、各種の動機付けを行う等万全を期しておりますが、雇用を長期に亘って持続できるとは限りません。そのことにより、当社のキャラクター開発力が低下する可能性があります。また、さらに従業員の他社移籍により、他社との開発競争に不利な影響を及ぼす可能性があります。
(4)不良品発生リスク
競合他社との価格競争に対抗すべく商品調達コストの削減をめざして、当社グループは、国内のみならず、中国を中心とした海外メーカーに商品を発注しております。各メーカーに対しては、当社指定の品質基準に従って製造・検品を行い、且つ商品部を通しての安全性や品質向上に向けて最善の注意をいたしております。しかし、不測の品質上の問題が発生した場合には、リコール費用やブランド力低下の影響から売上高の減少により、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)災害、事故によるリスク
当社グループは、国内2箇所でテーマパークを営業しており、災害や事故による人身への被害が起こる可能性があります。施設における耐震性確保等安全管理には万全を期しておりますが、予測不能な事態に対しては対応できるとは限りません。その場合において当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産権についてのリスク
当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないように、また競業他社と差別化を図り優位性を保つため、知的財産権の確保及び保護のための体制を整備しております。しかしながら、第三者から知的財産権の侵害を理由とする訴訟が提起されたり、また、第三者から知的財産権の侵害を受けたりする可能性は排除できず、このような事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7)感染症等偶発的リスクについて
当社グループでは、日本全国に店舗、東京都あきる野市に物流拠点、そして、東京都多摩市と大分県にテーマパーク、海外各地にも拠点となる子会社が存在しているほか、販売先、ライセンス契約先、そのお取引先についても、日本全国及び海外に広がっております。そのため、大地震や豪雨、竜巻などの自然災害や疫病が想定を超えて発生した場合、人的被害、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、交通や通信の停止、サプライチェーンの被害等により、取引先への商品・製品の出荷遅延や停止等、また取引先の一時的な営業停止等により、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、取引国間での紛争の発生や、天候不順や自然災害の発生、世界中に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症のような新種の疫病発生に伴い、政府による行動制限や社会的な混乱、心理的要因により、消費者の消費行動や購買内容に重大な変化が生じた場合、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、それらの影響による将来の収益見込の悪化等により固定資産の減損等が発生し、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は1,560億円で、前期末比553億円増加しました。資産の部の主な増加項目は現金及び預金384億円、売掛金52億円、商品及び製品21億円、退職給付に係る資産39億円です。
負債の部は911億円で前期末比467億円増加しました。主な増加項目は支払手形及び買掛金8億円、未払法人税等44億円、契約負債6億円、転換社債型新株予約権付社債310億円、繰延税金負債53億円です。
純資産の部は648億円で前期末比86億円増加しました。主な増加項目は、利益剰余金34億円、その他有価証券評価差額金10億円、為替換算調整勘定30億円、退職給付に係る調整累計額7億円です。
自己資本比率は41.4%で前期末比14.2ポイント減少しました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により経済活動が正常化するとともに、外国人観光客が増加するなど景気の回復基調が継続いたしました。一方で、原材料価格の高騰や世界的な金融引き締めによる景気への影響に加え、欧州における紛争の長期化や中東情勢の緊迫化など依然として先行きが不透明な状況が継続しております。
このような状況のなか当社グループは、2024年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画「未来への創造と挑戦」の最終年度として、「組織風土改革」「国内外構造改革の着手・完遂」「再成長の戦略や成長市場への種まき」を3本柱とする各種施策を着実に推し進めてまいりました。また、人気キャラクター『ハローキティ』の50周年アニバーサリーイヤー(2023年11月~2024年12月)を開催しており、限定商品や様々なイベントが幅広い世代からご支持をいただいております。
国内の店舗・テーマパークは、『ハローキティ』50周年などの施策に加え、新型コロナウイルス感染症の分類移行により国内客及び外国人観光客が大幅に増加し、売上高を押し上げました。また、国内外のライセンス事業は、複数キャラクター戦略の好調継続により、既存ライセンシーの商品展開が増加するなど売上高の伸長に寄与いたしました。
なお、サンリオファン会員向けアプリ「Sanrio+」の会員数は2024年3月末現在で約187万人となっております。
連結営業損益に関しては、増収及び構造改革による収益性向上により、大幅増益となりました。
以上の結果、売上高は999億円(前期比37.7%増)と大幅に伸長いたしました。営業利益は269億円(同103.5%増)と2014年3月期以来、10期ぶりに過去最高益を更新いたしました。また、経常利益は282億円(同106.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は175億円(同115.5%増)と伸長いたしました。
なお、すべての海外連結子会社の決算期は1月~12月であり、当連結会計年度の対象期間は、2023年1月~12月であります。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
ⅰ 日本:売上高689億円(前期比31.8%増)、営業利益197億円(同87.5%増)
1.国内営業本部(物販事業・ライセンス事業)
物販事業は、新型コロナウイルス感染症の分類移行後の社会経済活動の正常化に加え、『ハローキティ』50周年などの様々な施策が奏功し、店舗の客数が大幅に増加いたしました。また、引き続き外国人観光客が増加しており、都心や観光地を中心に店舗の売上高を大きく押し上げました。キャラクター別に見ると、国内客だけでなく外国人観光客からも人気の高い『シナモロール』や『クロミ』に加え、今年50周年の『ハローキティ』が売上高を牽引いたしました。
ライセンス事業は、複数キャラクター戦略が奏功し売上高が伸長いたしました。50周年の『ハローキティ』だけでなく『クロミ』や『シナモロール』など複数のキャラクターが注目を集めており、それにより顧客課題の解決につなげるソリューション営業に磨きがかかり、既存ライセンシーのリピート率向上や商品展開増へとつながっております。商品化ライセンスは、すべてのカテゴリーで前年実績を上回り、特に複数キャラクター展開の大手アパレル、人気継続のカプセルトイやプライズ、インバウンド需要の高まりによりお土産品が好調に推移いたしました。
営業損益については、売上の大幅増に加え、販管費のコントロールが奏功し、大幅増益となりました。
2.テーマパーク
サンリオピューロランド(東京都多摩市)は、新型コロナウイルス感染症の分類移行後にキャラクターとの握手やハグなどの触れ合い、同施設最大の人気エンターテイメント「Miracle Gift Parade」を3年ぶりに再開したことで国内外の客数が大幅に増加いたしました。また、同エンターテイメントの再開により有料席や関連商品が好調に推移し売上高を押し上げました。当社が昨年3月から販売している英語教材「Sanrio English Master」と連動したピューロランド初の英語発話型の新アトラクション「BUDDYEDDY WONDERFUL CLUB」(2023年10月オープン)は、子供から大人までの幅広い層にお楽しみいただくなど話題を集めました。シーズンイベント「春のピューロランド学園祭」(2024年1月12日~4月9日)は、学園祭をテーマにした限定商品や初企画のメイドカフェが人気を博し、新規顧客の開拓に貢献するとともに客単価増にもつながり売上高を伸長いたしました。
ハーモニーランド(大分県速見郡日出町)は、シーズンイベントの「Iceful Parade(アイスフルパレード)」や「とっておきのRainy Day」、「HAPPY CHRISTMAS」に加え、ニューアトラクション「ウォーターショット」(2023年7月14日オープン)が客数増に貢献いたしました。また、これらの新規イベントと連動したオリジナル商品や入園チケットの価格の見直しが客単価を押し上げ、売上高の増加に寄与いたしました。なお、夏季限定のプール「スプラッシュアイランド」のキッズエリア拡張やレストランのリニューアルなどホスピタリティの向上策にも努めております。
営業損益は、両施設の売上高が大幅に増加したことに加えコストコントロールが奏功し、大幅増益となりました。
ⅱ 欧州:売上高24億円(前期比32.9%増)、営業利益2億円(前期は1億円の損失)
ライセンス事業は、有名ブランドや大手ライセンシーとのコラボレーション継続が奏功し、ブランド価値及び認知度が向上いたしました。カテゴリー別の動向については、大手ライセンシーとの取り組みが注目を集めたアパレルカテゴリーやドイツの有名ブランドとグローバル展開したフットウエアカテゴリーにおいて、複数のキャラクターが採用されるなど好調に推移いたしました。食品カテゴリーは、50周年の『ハローキティ』の菓子が好評を博しました。
営業損益は、売上高の大幅増により8期ぶりに黒字へと転換いたしました。
ⅲ 北米:売上高124億円(前期比92.2%増)、営業利益28億円(同290.5%増)
ライセンス事業は、引き続き好調に推移いたしました。アパレルカテゴリーは、既存ライセンシーとの取り組みが引き続き好調に推移するとともに、有名アニメキャラクターとのコラボレーションが認知度向上に寄与いたしました。玩具カテゴリーは、『ハローキティ』はもちろん『シナモロール』などの様々なキャラクターのぬいぐるみが好調に推移いたしました。ヘルス&ビューティーカテゴリーは、有名アーティストのキャラクターIPとコラボレーションしたコスメが人気を博しました。デジタルカテゴリーは、ゲームコンテンツ(2023年7月配信)が注目を集め、売上高の増加に寄与いたしました。なお、YouTubeでのオリジナルアニメーションの配信やメジャーリーグベースボール(MLB)とのオフラインイベントなど、顧客との接点強化にも努めております。
物販事業(自社EC)は、引き続き好調に推移いたしました。特にカメラやバッグ、有名アニメキャラクターとのコラボレーション商品が人気を博しました。また、有名アーティストによるサンリオキャラクターの露出が注目を集めました。
営業損益については、売上高の大幅伸長により、大幅増益となりました。
ⅳ 南米:売上高10億円(前期比103.5%増)、営業利益2億円(同783.5%増)
南米全体は、ヘルス&ビューティー、アパレル、バッグ、企業特販カテゴリーのライセンス事業が好調に推移いたしました。メキシコは、ハローキティカフェの人気が継続している企業特販カテゴリー、子供服が好調のアパレルカテゴリー、香水や衛生商品が好調のヘルス&ビューティーカテゴリーが売上増に貢献いたしました。また、メキシコ第二の都市モンテレイにバーガーショップがオープン(2023年12月)するなどタッチポイントを増しております。ブラジルは、家庭用品や企業特販カテゴリーなどが好調に推移いたしました。ペルーは、通学バッグの需要が増加したバッグカテゴリーが売上高を牽引いたしました。
営業損益については、売上高の大幅伸長により大きく改善いたしました。
ⅴ アジア:売上高151億円(前期比31.5%増)、営業利益60億円(同47.9%増)
中国は、2023年1月からマスターライセンス契約先をアリババグループのアリフィッシュへと変更いたしました。新型コロナウイルス感染症の拡大により2023年初頭はビジネス活動が鈍化したものの、ヘルス&ビューティー、企業特販、トイ&ホビーカテゴリーが伸長いたしました。また、『ハローキティ』に加え、複数キャラクター展開が奏功しており、『シナモロール』『クロミ』に加え『ポチャッコ』なども注目を集め、売上高が伸長いたしました。
韓国は、前期に実施した韓国の大手芸能事務所に所属するアイドルグループとのコラボレーションをきっかけにZ世代への認知度及びブランド価値が向上しており、新規ライセンシーの獲得に加え、既存ライセンシーの商品展開が拡大いたしました。特にライセンス事業において、ぬいぐるみなどの複数キャラクター展開が奏功したトイ&ホビーカテゴリーが伸長いたしました。
香港・マカオ地区は、ライセンス事業において、金融機関との継続的なプロモーションにより、企業特販カテゴリーが売上高を牽引いたしました。
台湾は、ライセンス事業において、企業特販やヘルス&ビューティーカテゴリーが好調に推移し、売上高の増加に貢献いたしました。また、デジタルカテゴリーは、モバイルゲームとのコラボレーションをグローバルに展開したことで認知度向上に寄与いたしました。
東南アジアは、タイが売上高を牽引いたしました。特に同国最大のコンビニエンスストアとのコラボレーションや、アパレルライセンシーとの取り組みが売上高の増加に寄与いたしました。
営業損益については、アジア各国における全体的な売上高の伸びが寄与し、増益となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より357億円増の679億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、221億円の収入(前期比106億円の収入増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益が286億円(前期比153億円増)、減価償却費が18億円(前期比微増)、その他の負債の増加額が30億円(前期比10億円の収入増)であった一方、売上債権の増加額が47億円(前期比28億円の収入減)、棚卸資産の増加額が18億円(前期比9億円の収入減)、法人税等の支払額が47億円(前期比9億円の支出増)であったことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、34億円の支出(前期比13億円の支出増)となりました。これは、関係会社の清算による収入が9億円(前期比9億円の収入増)であった一方、定期預金預入払戻の差である11億円の支出(前期比17億円の支出減)、有形固定資産の取得売却の差額16億円の支出(前期比10億円の支出増)、投資活動その他の収支による16億円の支出(前期は11百万円の収入)であったことなどによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは157億円の収入(前期は27億円の支出)となりました。これは、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入が311億円(前期比311億円の収入増)であった一方、自己株式の取得による支出が108億円(前期比108億円の支出増)、配当金の支払額34億円(前期比15億円の支出増)、財務活動その他の収支による7億円の支出(前期比11百万円の支出減)などによるものです。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ273億円増加し、999億円(前期比37.7%増)となりました。売上高に占める報告セグメント別の割合は、日本が69.0%(前期末比3.1ポイント減)、欧州が2.4%(同0.1ポイント減)、北米が12.4%(同3.5ポイント増)、南米が1.0%(同0.3%増)、アジアは15.1%(同0.7ポイント減)となりました。なお、報告セグメント別の経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載しております。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、269億円(前期比103.5%増)となりました。主な増加要因としましては、全てのセグメントにおける売上高の増加によるものと、原価率の低減等によるものであります。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、受取利息11億円、投資事業組合運用益2億円等を計上したことにより、19億円(同52.7%増)となりました。営業外費用は、支払利息1憶円、為替差損2億円等を計上したことにより、6億円(同20.6%減)となりました。
以上の結果、経常利益は、282億円(同106.0%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は、関係会社清算益5億円等を計上したことにより、5億円(同17.1%増)となりました。特別損失は、事業構造改善費用1億円等を計上したことにより、2億円(同77.3%減)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、175億円(同115.5%増)となりました。
なお、当社グループが中期経営計画「未来への創造と挑戦」において掲げた目標に対する進捗状況につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ①中期経営計画の取り組み」をご参照ください。
財政状態の分析
当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財務状態の状況」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フローの分析・検証内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資及び戦略投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金は自己資金、金融機関からの借入及び社債を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及び社債、転換社債型新株予約権付社債を含む有利子負債の残高は506億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は679億円となっております。
契約会社名:㈱サンリオ(当社)
契約会社名:㈱サンリオファーイースト(国内連結子会社)
契約会社名:㈱サンリオ(当社)
契約会社名:Sanrio,Inc. (在外連結子会社)
契約会社名:Sanrio Do Brasil Comercio e Representacoes Ltda. (在外連結子会社)
契約会社名:Sanrio Wave Hong Kong Co.,Ltd. (在外連結子会社)
契約会社名:三麗鴎股イ分有限公司(在外連結子会社)
契約会社名:Sanrio GmbH (在外連結子会社)
契約会社名:三麗鴎(上海)国際貿易有限公司 (在外連結子会社)
契約会社名:SANRIO SOUTHEAST ASIA PTE.LTD. (在外連結子会社)
該当事項はありません。