第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

前事業年度の有価証券報告書の提出日後、当半期報告書の提出日までにおいて、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更があった事項は、次のとおりです。変更箇所の前後については記載を一部省略しています。

また、以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3.事業等のリスク」の項目番号に対応したものです。

文中の将来に関する事項は、当半期報告書提出日現在において判断したものです。

 

(前略)

1.経営体制・事業戦略に関するリスク

(中略)

(2) 事業戦略に関するリスク

(中略)

② システム投資について

近年のIT技術の発展により取引所もシステムの高度化が進んでおり、その安定性・処理性能等が市場間競争における優位性確保に大きな影響を及ぼす状況となっております。

当社グループでは、現物市場の売買システムとして、高速性・信頼性・拡張性を兼ね備えた「arrowhead」を、デリバティブ市場の取引システムとして、世界標準の取引機能と世界水準の注文処理性能を兼ね備えた「J-GATE」をそれぞれ稼働しております。

今後も、テクノロジーの発達に伴う投資手法の高度化・多様化等、刻々と変化を続ける利用者のニーズに適切に対応し、取引所としての競争力を維持していくためには、加速度的に進化する技術を最大限活用すべく、ITに関する設備投資を継続し、取引システム等の改良に努めていく必要があることから、2021年9月の「J-GATE」に続き、「arrowhead」についても、2024年11月に更改しております。

 しかしながら、これらの設備投資により、必ずしも直ちに収益が拡大するとは限らず、市況の悪化等により、コストに見合う収益を生み出すことができなかった場合には、当社グループの業績が圧迫されるとともに、その後における追加的な設備投資に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(中略)

 

2.事業環境等に関するリスク

(中略)

(3)競合による影響について

① 現物市場に関する他の証券取引所、取引所外取引との競合について

現物取引等における競合は激しさを増してきており、市場の流動性、取引の執行にかかるスピード・コスト、取 引システムの性能、取引参加者や上場会社に提供される商品やサービスの多様性、規制環境など、様々な分野において、今後も競合が激化していくものと認識しております。

 現状、当社グループにおける株式売買代金は、2024年1~6月における国内上場株式の売買代金の81%程度を占 めており、日本における取引所外取引(PTS及びOTC等)は19%程度となっておりますが、近年、取引所外取引における取引量は増加傾向にあり、将来的には当社グループのシェアを奪う脅威となる可能性があります。

(中略)

 

7.決済履行確保の枠組みについて

(中略)

(決済履行確保のための取組)

① 清算参加者制度及びモニタリング

清算参加者の信用リスクの低減を図るため、清算資格の種類ごとに資格要件を定めるとともに、資格要件にはそれぞれ取得基準と維持基準を設けており、一定の財務基盤、経営体制及び業務執行体制を有する者を清算参加者とする  こととしています。それらの状況については定期的にモニタリングを行い、問題があると認められた場合は、当該清算参加者に担保の追加を求めることや、債務引受けを停止することができるほか、清算資格の取消しを行うことが可能となっております。

 また、清算参加者のポジションの状況も定期的にモニタリングしており、一部の清算参加者に対する過度な信用リスクの集中がないかを管理し、ポジションが過大である場合には、必要に応じて措置を検討しております。

(中略)

 

(損失補償制度の概要)

(中略)

 以上の処理後においても、株式会社日本証券クリアリング機構の損失が解消されない場合には、以下に記載する方法により、損失の補填を行います。なお、この補填は、原則として、有価証券の売買、先物・オプション取引、店頭デリバティブ取引及び国債店頭取引のそれぞれの清算に係る損失7について、不履行清算参加者の清算資格に応じて、個別に行います。(以下に記載されている金額は、2024年9月末時点において確定している金額となります。)

(中略)

 したがって、清算参加者の先物・オプション取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額(金融デリバティブ取引:174億円、コモディティ・デリバティブ取引:91億円)を上限として、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所又は株式会社東京商品取引所が補填を行うことにより、また、③については、金融デリバティブ取引に関しては株式会社日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金として積み立てた金額(200億円)及びコモディティ・デリバティブ取引に関しては同社が商品先物等決済保証準備金として積み立てた金額(23億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

(中略)

 決済不履行発生時の国債店頭取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金)による補填

② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)

③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決

   済保証準備金)

④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填

⑤ 原取引按分清算参加者11の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備

   金のうち③での未負担額)

⑥ 原取引按分清算参加者の特別清算料による補填

⑦ 破綻後における変動証拠金等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填

 

 したがって、清算参加者の国債店頭取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている20億円を上限として補填することにより、③及び⑤については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている20億円を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

(前略)

8 金融商品取引所等の損失補償による補填:株式会社日本証券クリアリング機構が金融商品取引所等との間で締結している損失補償契約に基づき、当該契約に定める金額を上限に損失を補填します。現物取引に係る契約は株式会社日本証券クリアリング機構と5つの金融商品取引所との契約に加え、株式会社日本証券クリアリング機構と各PTSとの契約があり、補償限度額は合計で120億円(うち当社グループである株式会社東京証券取引所と株式会社大阪取引所の補償限度額の合計は104億円。)となっております。

(中略)

11 原取引按分清算参加者:信託口を有する清算参加者をいいます。

 

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.業績等の概要

(1)業績

当社グループの当中間連結会計期間(2024年4月1日~2024年9月30日)の連結業績は、営業収益は818億10百万円(前年同期比11.5%増)、営業費用が350億22百万円(前年同期比2.0%増)となったため、営業利益は477億18百万円(前年同期比7.2%増)、税引前中間利益は477億26百万円(前年同期比7.2%増)となりました。

また、法人所得税費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する中間利益は323億8百万円(前年同期比2.8%増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ414億51百万円減少し、865億68百万円となりました。

 

①営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前中間利益477億26百万円に、減価償却費及び償却費91億35百万円及び支払法人所得税等85億22百万円などを加減した結果、484億52百万円の収入となりました。

 

②投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動によるキャッシュ・フローは、無形資産の取得による支出97億18百万円などにより、559億46百万円の支出となりました。

 

③財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動によるキャッシュ・フローは、支払配当金313億37百万円などにより、339億51百万円の支出となりました。

 

2.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

本項に記載した予想、予見、見込み、見通し、方針等の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来に生じる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。

 

(1)当中間連結会計期間の経営成績の分析

(営業収益の状況)

①取引関連収益

取引関連収益は、現物の売買代金並びに金融デリバティブ及びコモディティ・デリバティブの取引高等に応じた「取引料」、取引参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、利用する売買システム施設の種類に応じた「売買システム施設利用料」等から構成されます。

当中間連結会計期間の取引関連収益は、現物の売買代金が前年同期を上回り、取引料が増加したことなどから、前年同期比13.2%増の334億79百万円となりました。

 

取引関連収益の内訳

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

 至 2023年9月30日)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

 至 2024年9月30日)

 

 

 

 

 

増減(%)

取引関連収益

29,577

33,479

13.2

 

取引料

24,598

28,185

14.6

 

 

現物

18,431

22,099

19.9

 

 

金融デリバティブ

5,476

5,203

△5.0

 

 

TOPIX先物取引

1,086

943

△13.2

 

 

日経平均株価先物取引(注1)

2,205

2,067

△6.3

 

 

日経平均株価指数オプション取引(注2)

1,262

1,140

△9.6

 

 

長期国債先物取引

830

1,171

41.0

 

 

その他

92

△119

 

 

コモディティ・デリバティブ

689

881

27.9

 

基本料

491

482

△1.8

 

アクセス料

2,562

2,841

10.9

 

売買システム施設利用料

1,869

1,910

2.2

 

その他

55

60

9.3

(注1) 日経225mini先物取引を含めております。

(注2) Weeklyオプション取引を除きます。

 

②清算関連収益

清算関連収益は、株式会社日本証券クリアリング機構が行う金融商品債務引受業に関する清算手数料等から構成されます。

当中間連結会計期間の清算関連収益は、前年同期比10.8%増の174億55百万円となりました。

 

③上場関連収益

上場関連収益は、新規上場や上場会社の新株券発行の際に発行額に応じて受領する料金等から構成される「新規・追加上場料」及び時価総額に応じて上場会社から受領する料金等から構成される「年間上場料」に区分されます。

当中間連結会計期間の上場関連収益は、年間上場料が増加したことなどから、前年同期比9.5%増の78億51百万円となりました。

 

上場関連収益の内訳

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

 至 2023年9月30日)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

 至 2024年9月30日)

 

 

 

 

 

増減(%)

上場関連収益

7,167

7,851

9.5

 

新規・追加上場料

1,401

1,568

11.9

 

年間上場料

5,765

6,283

9.0

 

④情報関連収益

情報関連収益は、情報ベンダー等への相場情報の提供に係る収益である相場情報料、指数ビジネスに係る収益等から構成されます。

当中間連結会計期間の情報関連収益は、相場情報料が増加したことに加え、指数ビジネスに係る収益が増加したことなどから、前年同期比10.2%増の160億39百万円となりました。

 

⑤その他の営業収益

その他の営業収益は、売買・相場報道等の各種システムと取引参加者・ユーザをつなぐarrownetに係る利用料、注文の送信時間等の短縮による売買執行の効率化を目的として、システムセンター内に取引参加者や情報ベンダー等が機器等を設置するコロケーションサービスに係る利用料等から構成されます。

当中間連結会計期間のその他の営業収益は、前年同期比10.4%増の69億83百万円となりました。

 

その他の営業収益の内訳

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

 至 2023年9月30日)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

 至 2024年9月30日)

 

 

 

 

 

増減(%)

その他の営業収益

6,328

6,983

10.4

 

arrownet利用料

1,667

1,794

7.6

 

コロケーションサービス利用料

2,495

2,937

17.7

 

その他

2,165

2,251

4.0

 

 

(営業費用の状況)

当中間連結会計期間の人件費は、前年同期比7.4%増の112億29百万円となりました。

 システム維持・運営費は、現物及びデリバティブの売買システムをはじめとした各種システムの維持及び管理運用に係る費用等から構成されます。システム維持・運営費は、前年同期比8.5%増の101億52百万円となりました。

減価償却費及び償却費は、前年同期比0.3%増の91億35百万円となりました。

 その他の営業費用は、前年同期比16.9%減の45億4百万円となりました。
 

 

 

(2)財政状態に関する説明

(資産、負債及び資本の状況)

 当社グループの資産及び負債には、株式会社日本証券クリアリング機構が清算機関として引き受けた「清算引受資産・負債」及び清算参加者から担保として預託を受けた「清算参加者預託金」が両建てで計上されております。「清算引受資産・負債」及び「清算参加者預託金」は、多額かつ清算参加者のポジションなどにより日々変動することから、当社グループの資産及び負債の額は、これらの変動に大きな影響を受けます。その他、金融商品取引等の安全性を確保するための諸制度に基づく「信認金」、「取引参加者保証金」及び「違約損失積立金」が資産及び負債または資本に両建てで計上されております。

 当中間連結会計期間末の資産は、「清算引受資産」が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ2兆4,708億30百万円増加し、83兆1,534億57百万円となりました。また、「清算引受資産」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「違約損失積立金」を控除した後の資産は、前連結会計年度末に比べ37億13百万円減少し、4,181億10百万円となりました。

 当中間連結会計期間末の負債は、資産と同様に「清算引受負債」が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ2兆4,695億93百万円増加し、82兆8,136億53百万円となりました。また、「清算引受負債」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「取引参加者保証金」を控除した後の負債は、前連結会計年度末に比べ65億54百万円減少し、957億65百万円となりました。

 当中間連結会計期間末の資本は、配当金の支払により減少した一方、親会社の所有者に帰属する中間利益の計上により増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ12億37百万円増加し、3,398億3百万円となりました。また、「違約損失積立金」を控除した後の資本は、3,118億55百万円となりました。

 

参考

 

資産合計

資本合計

親会社の所有者に

帰属する持分

親会社所有者

帰属持分比率

 

2025年3月期中間期

2024年3月期

百万円

83,153,457 (418,110)

80,682,627 (421,823)

百万円

339,803 (311,855)

338,566 (310,618)

百万円

328,792 (300,844)

328,359 (300,411)

0.4 (72.0)

0.4 (71.2)

(注) 各指標における( )内は、資産合計は「清算引受資産」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「違約損失積立金」、資本合計及び親会社の所有者に帰属する持分は、「違約損失積立金」をそれぞれ控除して算出した数値です。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

(キャッシュ・フローの状況)

キャッシュ・フローの状況については、「1.業績等の概要-(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(契約債務)

当中間連結会計期間末現在における契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超5年以内

5年超

借入金

32,500

32,500

社債

20,000

20,000

 

(4)経営方針、中期経営計画、経営環境及び対処すべき課題等

当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針、中期経営計画、経営環境及び当社グループが優先的に対処すべき課題等について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

当中間連結会計期間において、該当事項はありません。

 

(6)経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの収益のうち、過半を占める「取引関連収益」及び「清算関連収益」は有価証券やデリバティブ商品の売買代金・取引高の水準に、「上場関連収益」は上場する企業の時価総額や資金調達額、新規上場会社数の水準などにそれぞれ大きく依拠しております。

当社グループの収益は、有価証券やデリバティブ商品の流通市場並びに発行市場の動向、ひいては世界的な金融市場の動向や国内外の経済情勢の影響を大きく受けることとなります。

 

 

3【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。