当中間連結会計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて、重要な変更はありません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当中間連結会計期間において、アジアを中心とした輸出の増加や個人消費の増加などによって世界経済は引き続き底堅さを維持しました。世界経済の先行きも、中東情勢などの地政学的リスクの高まりなどによって物価上昇の潜在的なリスクはあるものの、底堅さを示しました。
このような状況のなか、当社グループの総合エンジニアリング事業の海外マーケットにおいて、エネルギーソリューションズ分野(石油精製、石油化学・化学、ガス処理、液化天然ガス(LNG)等)では、エネルギー安全保障と低・脱炭素化の両立の観点から、環境負荷が比較的少ない天然ガス(LNGを含む)の需要は引き続き高く、産油・産ガス諸国において新設のみならず既設プラントの増設・改造などの設備投資計画が進展しました。サステナブルソリューションズ分野(水素・燃料アンモニア、小型モジュール原子炉(SMR)、スペシャリティケミカル、ケミカルリサイクル、グリーンケミカル等)では、低・脱炭素化に向けた各国の政策や支援が後押しし、水素・燃料アンモニア、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:CO2の回収・貯留)などの領域において、実現に向けた設備投資計画が前進するなどしました。ファシリティソリューションズ分野(半導体、蓄電池、データセンター、発電、受入基地、医薬、医療、水処理、鉄道等)では、デジタル社会の進展や米国の対中政策等に伴い需要が高まる半導体材料や、蓄電池部材、データセンターなど、デジタル産業を支えるインフラ施設や関連施設の設備投資計画がアジアなどを中心に着実に進展しました。
また、同事業の国内マーケットにおいて、ライフサイエンス分野の設備投資の計画検討が進んだほか、グリーンイノベーション基金などの日本政府の政策が追い風となり、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)や原子力といった低・脱炭素分野や資源循環分野における設備投資計画が進展しました。
このように国内外で様々な設備投資計画が進展する一方で、金利上昇や建設費用等の増加により、顧客の初期投資費用が高止まりしたことから、一部の顧客において設備投資の最終決定時期を2025年度以降に先送りする動きが出始めました。
機能材製造事業において、触媒・ファインケミカル分野では、触媒製品は海外顧客向け需要の期ズレ等により製品需要が低下したものの、ファインケミカル製品は半導体やエレクトロニクス向け製品の需要が回復し始めました。ファインセラミックス分野では、半導体関連市場が徐々に回復しセラミックス製品需要が増加したほか、電気自動車(EV)向けのパワー半導体関連製品は、引き続き需要が拡大しました。
以上のような経営環境のもと、当社グループの当中間連結会計期間の経営成績等は、以下のとおりとなりました。
経営成績
受注高
この結果、当中間連結会計期間末の受注残高は、為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額を加え、1兆2,479億円となりました。
セグメント別状況
総合エンジニアリング事業
当社グループは、当連結会計年度においてエネルギーソリューションズ分野、サステナブルソリューションズ分野及びファシリティソリューションズ分野を合わせた海外マーケット(海外子会社含む)で8,400億円、国内マーケットで1,300億円の計9,700億円の受注目標を掲げています。引き続き世界情勢や市場の動向を注視しながら、実現可能性が高く、確実に収益を上げることができる案件を選別し、受注目標達成に向けて取り組んでいます。
当中間連結会計期間において、エネルギーソリューションズ分野では、ADNOC(アブダビ国営石油会社)向け大型低炭素LNGプラント建設プロジェクトや、モザンビーク・ロブマ・ベンチャー社向けLNGプラントの基本設計役務などを受注しました。
サステナブルソリューションズ分野では、ENEOS株式会社などがマレーシアで計画するグリーン水素製造プラントの基本設計役務、タイ王国のサイアム・セメント・グループが保有するセメント工場の排ガスを利用した二酸化炭素(CO2)分離回収・利用(CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization)設備に係る事業化調査役務、中国電力グループのエネルギア・パワー山口株式会社が運営する防府バイオマス発電所でのCO2分離・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)設備の設計・検討役務などを受注したほか、将来のEPC案件の受注に向けて鋭意営業活動に取り組みました。
ファシリティソリューションズ分野では、半導体やデータセンターなどの先端技術産業分野において、同分野のリーディングコントラクターであるExyte社傘下のExyte Singapore Pte. Ltd.との協業のもと、東南アジアを中心に事業拡大に向けた営業活動を展開しました。
国内マーケットでは、既存国内製油所や化学プラントの保全工事やそれに伴う改修工事のほか、SAF製造設備の基本設計役務などを受注しました。また、廃食用油を原料とした国産SAF製造・供給事業※において当社は、外食チェーン大手や自治体、医療法人などと廃食用油の供給及び利用に関する基本合意書を締結し、引き続き原料の確保に取り組みました。コスモ石油堺製油所における大規模生産実証設備についても、2025年初頭の生産開始を目指して建設工事を進めています。
さらに、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の令和6年度「先進的CCS事業に係る設計作業等」に関する業務公募において、当社は石油資源開発株式会社などのパートナー企業と共同で、瀬戸内エリアなどの複数産業から排出されるCO2をマレーシアのサラワク州沖を対象地として圧入貯留するCCS事業に係る設計作業等を受託しました。
加えて、将来の市場拡大が見込まれるバイオものづくりに対し、当社は株式会社バッカス・バイオイノベーションと共同で、微生物の開発・改良から培養槽のスケールアップ、生産プロセスの開発までをワンストップで手掛ける「統合型バイオファウンドリ®」事業の構築に引き続き取り組みました。本年8月には神戸市のポートアイランド内に世界初となるガス発酵によるバイオものづくりの研究開発拠点(研究棟)の新設工事を開始し、2025年末の完成を予定しています。
また、日揮グローバル株式会社は三井海洋開発株式会社とともに、ブラジル沖の浮体式石油・天然ガス生産設備(FPSO:Floating Production, Storage and Offloading system)でのメタン等のGHG排出量定量化プロジェクトを完了しました。操業中のFPSOを対象に主要なGHG排出量を正確に把握したことは、日本企業として初めての成果となります。
※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築」に採択
触媒分野において、FCC触媒や水素化処理触媒の海外顧客の交換需要の期ズレにより販売が減少しました。ファインケミカル分野においては、半導体やエレクトロニクス市場の余剰在庫が解消に向かい、ハードディスク用研磨材向けシリカゾルやフラットパネルディスプレイ及びタブレットの反射防止材向けシリカゾルなどの需要が回復しました。また、化粧品材についても海外需要拡大により販売が拡大しました。
ファインセラミックス分野では、半導体関連市場が回復しつつあり、在庫調整などが続いていた半導体製造装置関連製品の需要も徐々に回復する兆しが見られました。また、ハイブリッド車(HEV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)及び 電気自動車(BEV)向けパワー半導体用高熱伝導窒化ケイ素基板の需要は、引き続き旺盛に推移しました。
以上のような取組みのもと、当社グループの当中間連結会計期間のセグメント別の経営成績については、以下のとおりとなりました。
なお、当中間連結会計期間末の連結財政状態は、総資産が8,049億25百万円となり、前連結会計年度末比で126億28百万円の増加となりました。また、純資産は3,950億77百万円となり、前連結会計年度末比で71億91百万円増加となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末の連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較し316億23百万円増加し、3,561億30百万円となりました。また、当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権及び契約資産の減少などにより、583億7百万円の増加(前中間連結会計期間は162億77百万円の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより、82億7百万円の減少(前中間連結会計期間は133億9百万円の減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払及び借入金の返済などにより、147億22百万円の減少(前中間連結会計期間は116億36百万円の減少)となりました。
(3)経営方針・経営戦略等
当社グループは、自らのパーパス(存在意義)を“Enhancing planetary health”と再定義し、パーパスを道標として長期経営ビジョン「2040年ビジョン」並びに中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025(BSP2025)」を2021年5月に策定しました。2021年度から2025年度の5年間は、「2040年ビジョン」の1stフェーズ、挑戦の5年間と位置づけ、BSP2025において「EPC事業のさらなる深化」、「高機能材製造事業の拡大」、「将来の成長エンジンの確立」を重点戦略とし、戦略投資に積極的に取り組むことで収益の拡大、多様化を進めてまいります。
当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発費は45億59百万円です。なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(参考)受注高、売上高及び受注残高
(単位:百万円)
(注)1.総合エンジニアリング事業の「当中間連結会計期間末受注残高」は、当中間連結会計期間における為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額△2,973百万円を含んでおります。
2.機能材製造事業の「当中間連結会計期間末受注残高」は、当中間連結会計期間における為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額△71百万円を含んでおります。
3.その他の事業の「当中間連結会計期間末受注残高」は、当中間連結会計期間における為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額88百万円を含んでおります。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。