当中間連結会計期間(2024年4月1日から2024年9月30日まで)において、新たな事業等のリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。
(1) 経営成績
当社グループの当中間連結会計期間(2024年4月1日~2024年9月30日:以下同じ)における事業環境は、地域や業種により濃淡はあるものの、総じて緩やかな回復基調で推移しました。一方で、各国の政策による金融資本市場の変動や、中国における不動産不況の長期化、地政学リスクの拡大等の影響が懸念されるなど、先行きに対し依然として不透明感のある状況が続いております。
このような状況下、売上収益は、前年同期(2023年4月1日~2023年9月30日:以下同じ)に比べ922億円増(+4.3%)の2兆2,421億円となりました。利益面では、コア営業利益は同528億円増(+44.2%)の1,724億円、営業利益は同19億円減(△1.4%)の1,367億円、税引前中間利益は同241億円減(△18.5%)の1,061億円、親会社の所有者に帰属する中間利益は同263億円減(△39.1%)の409億円となりました。
(注) 1 当社グループは、IFRSに基づいて、要約中間連結財務諸表を作成しております。
2 コア営業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。
② 各セグメントの業績
各セグメントの売上収益及びコア営業利益の状況は、以下のとおりです。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
<コア営業利益 増減要因>
(注) その他差には、在庫評価損益の前中間連結会計期間(△72億円)と当中間連結会計期間(△33億円)の差額39億円、持分法投資損益の差額△11億円等の金額が含まれております。

当中間連結会計期間におけるセグメント別の業績の概要は、以下のとおりです。
売上収益は前年同期に比べ226億円増加し5,428億円となり、コア営業利益は同57億円増加し245億円となりました。
アドバンストフィルムズ&ポリマーズサブセグメントにおいては、一部事業における販売価格の低下や、事業譲渡及び撤退に伴う影響があったものの、為替影響に加え、ディスプレイ用途やバリア包材用途等の需要が緩やかに回復したことによる販売数量の増加により、売上収益は増加しました。
アドバンストソリューションズサブセグメントにおいては、為替影響に加え、ディスプレイ用途等の需要が増加したことによる販売数量の増加があったものの、EV用途の欧米における販売数量の減少や、一部事業における原料価格の下落に伴う販売価格の低下等により、売上収益は減少しました。
アドバンストコンポジット&シェイプスサブセグメントにおいては、シーピーシー社(C.P.C. S.r.l.)の完全子会社化の影響及び高機能エンジニアリングプラスチックの需要が回復したことによる販売数量の増加や為替影響により、売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、販売価格の維持・向上により総じて売買差が改善したことに加え、ディスプレイ用途及び高機能エンジニアリングプラスチック等の需要が回復したことによる販売数量の増加等により、増加しました。
当中間連結会計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・半導体デバイスの微細化に伴うArF用及びEUV用フォトレジストの需要拡大に対応するとともにサプライチェーンの強靭化を図るため、九州事業所・福岡地区において、フォトレジスト用感光性ポリマー「リソマックス™」の生産能力を増強することを決定しました。ArFフォトレジスト用「リソマックス™」の生産能力を2倍以上に増強するとともに、EUVフォトレジスト用「リソマックス™」の量産を新たに開始します。稼働時期は、ArFフォトレジスト用「リソマックス™」は2025年10月、EUVフォトレジスト用「リソマックス™」は2025年9月を予定しています。
・事業ポートフォリオ改革の一環として、トリアセテート繊維事業を株式会社GSIクレオス(本社:東京都港区)へ譲渡することで同社と合意し、株式譲渡契約を2024年9月に締結しました。2025年3月の譲渡を予定しています。
(ⅱ) 産業ガスセグメント
売上収益は前年同期に比べ312億円増加し6,394億円となり、コア営業利益は同116億円増加し919億円となりました。
国内の事業再編による影響はあったものの、各地域で推進する価格マネジメントや為替影響等により、売上収益は増加しました。コア営業利益は、売上収益の増加に加え、コスト削減の影響等により増加しました。
当中間連結会計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・豪州において、Wesfarmers Chemicals, Energy and Fertilisers社(本社:豪州)のLPG事業を担うWesfarmers Kleenheat Gas Pty Ltd(本社:豪州、以下「Kleenheat社」)のウェスタンオーストラリア州とノーザンテリトリー州のLPG販売事業を取得することについて、Kleenheat社と売買契約書を2024年5月に締結しました。
売上収益は前年同期に比べ132億円増加し2,325億円となり、コア営業利益は同90億円増加し414億円となりました。
国内医療用医薬品で薬価改定の影響等を受けたものの、米国で発売した筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「RADICAVA ORS®」の伸長及び為替影響、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」及びインフルエンザワクチンの伸長、沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルスb型混合ワクチン「ゴービック水性懸濁注シリンジ」の順調な立ち上がりにより、売上収益、コア営業利益ともに増加しました。
当中間連結会計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・米国食品医薬品局より、米国製品「RADICAVA ORS®」(一般名:エダラボン)のALS(筋萎縮性側索硬化症)治療用途に関して、2022年5月12日の「RADICAVA ORS®」承認から7年間の希少疾病用医薬品排他的承認を2024年3月に受けました。
・田辺三菱製薬株式会社は、グローバル市場で成長する企業をめざし、「成長戦略実行に必要なケイパビリティを持つ人員」の配置、「専門性の高い人材、多様な人材が活躍できる組織」の実現に向けた人材ポートフォリオの見直しを加速させるため、希望退職制度の実施を2024年7月に公表しました。
売上収益は前年同期に比べ461億円増加し2,274億円となり、コア営業利益は同237億円増加し259億円となりました。
MMAサブセグメントにおいては、MMAモノマー等の市況の上昇に加え、為替影響により売上収益は増加しました。
コーティング&アディティブスサブセグメントにおいては、塗料・接着剤・インキ・添加剤用途等の需要が緩やかに回復したことによる販売数量の増加に加え、販売価格の維持・向上により、売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、MMAモノマー等の市況の上昇による売買差の改善等により、増加しました。
(ⅴ) ベーシックマテリアルズ&ポリマーズセグメント
売上収益は前年同期に比べ75億円減少し5,212億円となり、コア営業利益は同42億円増加し105億円の損失となりました。
マテリアルズ&ポリマーズサブセグメントにおいては、高純度テレフタル酸事業における特定子会社の株式譲渡の影響やエチレンセンターの定期修理の影響が拡大したこと等により販売数量が減少したものの、為替影響や原料価格の上昇等に伴う販売価格の向上等により、売上収益は増加しました。
炭素サブセグメントにおいては、需要低迷に伴う販売数量の減少や、原料価格の下落等に伴うコークスの販売価格の低下により、売上収益は減少しました。
当セグメントのコア営業利益は、エチレンセンターの定期修理影響の拡大やコークス等において原料と製品の価格差縮小があったものの、マテリアルズ&ポリマーズサブセグメントにおける在庫評価損益の改善や前期トラブル影響の縮小等により、増加しました。
当中間連結会計期間に当セグメントにおいて当社グループが実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・旭化成株式会社(本社:東京都千代田区)及び三井化学株式会社(本社:東京都中央区)と共同で、西日本に各社が保有するエチレン製造設備について、カーボンニュートラルを推進し、脱炭素社会をリードするため、原燃料転換等の検討を進めることを決定しました。今後3社は、石油資源に代わるバイオマスの原料化、低炭素燃料への転換等のグリーン化に資する具体的な方策及び将来の最適生産体制の検討等に取り組んでいきます。
・香川事業所で有するコークス炉250門を150門に縮小することを2024年8月に決定しました。2025年3月末までに対象となる100門での生産を終了する予定です。加えて、国内外の販売ポートフォリオの見直しや追加の合理化策等を実施し、市況変動に左右されない事業構造へ転換します。本構造改革に伴い、炭素事業は2026年3月期からの黒字化をめざします。なお、当社グループ全体の事業ポートフォリオにおける同事業の中長期的な位置づけに関しては、本構造改革を着実に推進し引き続き検討してまいります。
・事業ポートフォリオ改革の一環として、コークス及び副産物の製造並びに販売を行う関西熱化学株式会社(本社:兵庫県尼崎市)の当社グループが保有する全株式を、株式会社神戸製鋼所(本社:兵庫県神戸市)に譲渡することを2024年9月に決定し、同年10月に譲渡を完了しました。
(ⅵ) その他
売上収益は前年同期に比べ134億円減少し788億円となり、コア営業利益は同18億円減少し43億円となりました。
当中間連結会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、利息、従業員賞与及び法人税等の支払いもありましたが、税引前中間利益や減価償却費等により2,751億円の収入(前年同期比794億円の収入の増加)となりました。
当中間連結会計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の売却による収入があったものの、有形固定資産及び無形資産の取得1,720億円等により、1,453億円の支出(前年同期比297億円の支出の増加)となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フロー)は、1,298億円の収入(前年同期比497億円の収入の増加)となりました。
当中間連結会計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済による支出927億円や、配当金の支払い312億円等により、1,240億円の支出(前年同期比1,305億円の支出の増加)となりました。
これらの結果、当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物残高は前連結会計年度末に比べて26億円増加し、2,975億円となりました。
(注) ネットD/Eレシオ=ネット有利子負債(*1)/親会社の所有者に帰属する持分
(*1) ネット有利子負債=有利子負債-(現金及び現金同等物+手元資金運用額(*2))
(*2) 手元資金運用額は、当社グループが余剰資金の運用目的で保有する現金同等物以外の譲渡性預金・有価証券等です。
当中間連結会計期間末の資産合計は、為替の円高影響に伴う在外連結子会社の資産の円貨換算額の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,593億円減少し、5兆9,452億円となりました。
当中間連結会計期間末の負債合計は、社債及び借入金の減少や、為替の円高影響に伴う在外連結子会社の負債の円貨換算額の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,418億円減少し、3兆6,872億円となりました。
なお、当中間連結会計期間末のリース負債を含む有利子負債は、前連結会計年度末に比べ1,125億円減少し、2兆2,257億円となりました。
当中間連結会計期間末の資本合計は、親会社の所有者に帰属する中間利益の計上がありましたが、配当による減少や、在外営業活動体の換算差額の減少等により、前連結会計年度末に比べ175億円減少し、2兆2,580億円となりました。
これらの結果、当中間連結会計期間末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と比べて0.3ポイント増加し、29.2%となりました。なお、ネットD/Eレシオは、前連結会計年度末と比べて0.05減少し、1.11となりました。
(4) 経営環境と今後の見通し
最近の業績の動向等を踏まえ、当連結会計年度の連結業績予想修正を2024年11月1日に公表しました。
2025年3月期通期連結業績予想(2024年4月1日~2025年3月31日)
税引前利益 前回発表予想 1,710億円 今回修正予想 1,660億円
(業績予想修正の理由)
通期連結業績予想のコア営業利益は、前回発表予想比16%増の2,900億円を見込みます。下期は、上期好調であったディスプレイ関連需要の反動減や、半導体関連の民生・産業・自動車用途等の需要回復遅れ、炭素繊維の競争激化、石化・炭素製品の市況回復遅れ等に伴い、スペシャリティマテリアルズセグメント及びベーシックマテリアルズ&ポリマーズセグメントを中心に期初予想を下回る見通しですが、通期では上期の好調な結果から、前回予想値を上回る見込みです。
一方、親会社の所有者に帰属する当期利益は、下期に複数の事業構造改革案件を検討しており、非経常損失の計上が想定されることから、前回発表予想数値に据え置いております。
(注)上記の予想は、本資料の発表日現在において入手可能な情報及び将来の業績に影響を与える不確実な要因に係る本資料発表日現在における仮定を前提としています。実際の業績等は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。
当中間連結会計期間の研究開発費の総額は589億円です。
(6) 提出会社の従業員の状況
当中間連結会計期間末の当社従業員数は、前連結会計年度末から98名減少し、403名となりました。これは、当社グループの組織体制の変更によるものです。
当中間連結会計期間(2024年4月1日から2024年9月30日まで)において、新たに締結した重要な契約は次のとおりであります。
・2024年9月、三菱ケミカル株式会社は、保有する関西熱化学株式会社の全株式を株式会社神戸製鋼所に譲渡することで同社と合意し、株式譲渡契約を締結しました。