当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項の発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当社グループでは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性を向上させることを目的として、IFRSを適用しております。前第3四半期連結累計期間より、米国事業を非継続事業に分類しており、2024年4月2日に当社の米国事業の持株会社であるSAHの全株式、並びにその傘下にあるSALの当社持分とUSLの持分をSALへの共同出資者であるSCOAとともに、Boraに譲渡しております。このため、売上収益、営業利益、税引前中間利益、継続事業からの中間利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を、中間利益及び親会社の所有者に帰属する中間利益については、継続事業及び非継続事業を合算した数値を表示しています。また、前年同期比較については、前年同期の数値を同様の分類で組み替えた数値で比較しております。
上記に基づいた当中間連結会計期間の業績につきましては、売上収益87,870百万円(前年同期比0.5%増)、営業利益11,755百万円(前年同期比7.9%増)、税引前中間利益11,409百万円(前年同期比6.6%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益18,901百万円(前年同期比123.8%増)となりました。なお、当社は、IFRSの適用に当たり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を導入し、経営成績を判断する際の参考指標と位置づけることとしております。「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益を除外しています。同基準に基づいた当中間連結会計期間の「コア営業利益」は、12,575百万円(前年同期比0.8%増)となりました。
(注)売上収益、営業利益、税引前中間利益、コア営業利益は継続事業の業績を、親会社の所有者に帰属する中間利益は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ表示しております。
当社グループは、持株会社体制の下、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「Beyond 2027(以下「中計」という。)」を発表し、同時に定量目標を修正した長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」では、2030年度に目標とする企業イメージを(創りたい世界像)「より多くの人々が身近にヘルスケアサービスを受けられ、社会の中で安心して活き活きと暮らせる世界」、(ありたい姿)「個々のニーズに応じた、科学的根拠に基づく製品・サービスを複合的に提供することで、人々の健康に貢献し続ける存在感のある会社」と掲げると共に、「信頼される企業基盤の確立」を土台とし、さらに成長するために、「事業戦略」および「経営基盤」に重点テーマを設定しました。「事業戦略」は「GE市場における着実な成長」「GEビジネスの持続性確立」「成長分野への継続的投資」を重点テーマとして設定し、「経営基盤」では「持続的成長を支える人財の創出」「サステナビリティへの取り組み」「資本効率改善」を重点テーマとして設定しております。
2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)において、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保を柱とし、官民一体で、製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化、市場流通品の品質確認検査などの取組を進めるとともに、後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」とされたのをはじめ、2022年4月の診療報酬改定では、ジェネリック医薬品のさらなる使用促進を図る観点から、ジェネリック医薬品の調剤割合が高い薬局や使用割合が高い医療機関に重点を置いた評価の見直し等が行われました。その結果、2023年9月の政府の薬価調査による最新のジェネリック医薬品の数量シェアは80.2%となっています。さらに2024年9月の社会保障審議会医療保険部会では、「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を改訂し、数値目標として、「主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上(旧ロードマップから継続)」、「副次目標①:2029年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上」、「副次目標②:後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」が掲げられております。また、2024年10月からは後発品(ジェネリック医薬品)のある長期収載品を患者さんが希望される場合は追加で患者負担を求める「選定療養」が導入され、これによりジェネリック医薬品の使用はさらに進むことが想定されます。
その一方、2020年末の準大手ジェネリック医薬品企業の製造する医薬品での健康被害の発生や、その後の大手ジェネリック医薬品企業をはじめとした複数のジェネリック医薬品企業の薬機法違反を起因として、医薬品全体で供給不安が生じています。このような状況の下、2022年8月から始まった厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では医薬品の流通、薬価制度、ジェネリック医薬品産業の構造上の問題などについて幅広い議論が行われ、2023年6月に報告書が取りまとめられ、2024年5月には「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」報告書がまとめられ、6月に閣議決定された政府方針の「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針)には「足下の医薬品の供給不安解消に取り組むとともに、医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品業界の理想的な姿を見据え、業界再編も視野に入れた構造改革を促進し、安定供給に係る法的枠組みを整備する」と明記されています。
このような環境におきまして、中計の下、ジェネリック医薬品業界のリーディング・カンパニーとして、信頼される企業基盤の確立に努めつつ、当社グループでは、社会インフラとして持続的に社会に貢献することを目指し、「着実な成長」と「ビジネス持続性の確立」に取り組んでおります。
品質管理面においては、中核会社の沢井製薬株式会社(以下、「沢井製薬」という。)を中心に、製造管理・品質管理基準(GMP)を遵守した原薬の品質の確保、製造工場でのGMP遵守の恒常的確認による品質管理体制、国際基準であるPIC/S-GMPに基づく製造管理・品質管理を行う等の取組を行ってまいりました。また、2022年3月期には医療関係者の皆様が安心してご使用いただけるよう、沢井製薬では製品の製剤製造企業に関する情報と原薬製造所の監査に関する情報を公開し、「沢井製薬の品質に対する取組紹介動画」を公開する等の取組を行ってまいりました。しかしながら、沢井製薬の九州工場で製造するテプレノンカプセル50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が継続的に行われていたことが判明し、2023年12月に厚生労働省、大阪府及び福岡県から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」違反を理由とする行政処分を受けました。当該不適切試験が継続して実施されてきた原因について、人的要因に起因する問題として、①安定性モニタリングを軽視する風潮の蔓延、②上司の指示に疑問を持たずに従う傾向、③試験関与者のGMPに対する理解の欠如が、物的要因に起因する問題として、①品質管理・品質保証の観点からの実効的な監督体制の不備、②試験記録管理の不十分さ、③試験を担当する品質管理部の業務過多及び人員不足が挙げられます。信頼の回復に向けた再発防止策として、①沢井製薬社長直轄の企業風土改革プロジェクトの立ち上げ、②既存上市品の製造面及び品質面での再評価とその対策実施、③全従業員に対するGMP教育の再実施や、管理職・監督職の責任の明確化、工場の品質管理部門、品質保証部門への社内外からの人材確保推進などの沢井製薬生産本部における再発防止策の実施に一丸となって取り組んでおります。
生産・供給体制面においては、ジェネリック医薬品の需要拡大や供給不安、エネルギー価格や原材料価格が高騰する中、さらなる高効率・低コストを追求しており、既存の沢井製薬の全国6工場それぞれの特徴を活かした生産効率のアップに取り組んでおります。それに加えて、2022年9月に、九州工場注射剤棟の竣工、並びに2024年7月に、第二九州工場の敷地内に最終的に35億錠の生産能力となる新たな固形剤棟が竣工しました。また、小林化工株式会社から生産活動に係る資産を譲受し、関連部門人員を受け入れたトラストファーマテック株式会社においては、沢井製薬の製品の受託製造を開始しております。今後、当社グループ生産能力年間250億錠体制に向け、引き続き体制の構築に取り組んでまいります。それらと合わせ、2022年3月期に開設・稼働した東日本第2物流センター、西日本第2物流センターを活用し、物流面での供給体制も強化しております。また、2024年6月には「後発品の安定供給に関連する情報の公表等に関するガイドライン」に従い、安定供給に関する情報開示を行う等、業界全体の安定供給体制構築に努めております。
販売面においては、原価高騰への対応策として、生産効率のさらなる改善と並行し、低薬価品を中心に原価高騰に伴う影響分を価格に反映しております。また、沢井製薬にて2024年6月に『ゾニサミドOD錠』を含む2成分3品目が薬価収載されました。
製品開発においては、沢井製薬にて、「お薬を服用する時により飲み心地がいいと感じられるような技術、お薬をより効率的に製造できる技術など、お薬に付加価値をプラスし、製剤上のハーモニーを生み出す技術」の中から6つを選択し、3つの技術カテゴリに分け、それらのオリジナル製剤化技術を総称して「SAWAI HARMOTECH®」と名付け、公開しております。そのうち「MALCORE®」の技術が旭化成創剤研究奨励賞を受賞しました。また、包装資材において、沢井製薬における最薄防湿PTPシートの開発や、一部製品のアルミピロー包材の変更等により環境に配慮した生産に取り組んでおり、8月にはゾニサミドOD錠TRE「サワイ」が、日本パッケージングコンテスト2024において「アクセシブルデザイン包装賞」を受賞しました。また、7月には「安全という意識を醸成する・安心を提示することができる技術」として新技術ブランド「QualityHug®」を公開し、患者さんの気持ちに寄り添った製品の研究開発を進めてまいります。
さらに新たな取組として、PHR(パーソナルヘルスレコード)事業に関しまして、沢井製薬ブランドのPHR管理アプリ「SaluDi(サルディ)」及び株式会社インテグリティ・ヘルスケアのPHR管理システム「Smart One Health」と東京大学COI個別化保健医療講座(岸暁子特任助教)開発の行動変容促進システム「MIRAMED®」を活用した特定保健指導を連携させ、「健康~未病~特定保健指導~受診勧奨のワンストップサービス」の実現可能性や効果の検証を行っております。また、2022年9月には、参加者同士の双方向のコミュニケーションを通して、健康寿命やヘルスケアへの意識向上や、PHRについての理解促進を図ることを目的とし、クオン株式会社と共同で「健康サポートコミュニティsupported by SaluDi」をオープンしました。さらに、2023年1月には兵庫県養父市の「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」、2023年5月には長崎県の地域医療連携ネットワーク「あじさいネット」の「オフィシャルパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)アプリ」として、SaluDiが採用され、2023年7月には凸版印刷株式会社(現TOPPANホールディングス株式会社)とPHRの利活用事業での協業を検討していくことで合意し、2024年4月には、北海道大学病院パーソナルヘルスセンターにおいてSaluDiを活用、連携していくことが決定しました。今後もデジタル技術を活用して人々の生活・健康をより良い方向に変化させて参ります。また、治療アプリ(DTx)に関しまして、2022年8月にNASH(非アルコール性脂肪肝炎:Non-Alcoholic Steatohepatitis)領域におけるDTxの開発及び販売ライセンス契約、2024年8月にアルコール依存症を適応としたDtxの販売ライセンス契約をそれぞれ株式会社CureAppとの間で締結しました。アプリを通じて、デジタルヘルスケア領域での技術や知見の強化とともに、IT技術を活用したソリューションを直接、患者さん・医療従事者の皆様にお届けすることを目指してまいります。医療機器事業においては、2023年12月に片頭痛の急性期治療に用いる医療機器として、厚生労働大臣から製造販売承認を取得した非侵襲型ニューロモデュレーション機器「レリビオン®」を中心として取り組んでまいります。
この結果、当社グループにおける売上収益は87,870百万円(前年同期比0.5%増)、営業利益は11,755百万円(前年同期比7.9%増)、コア営業利益(参考値)は12,575百万円(前年同期比0.8%増)となりました。
当中間連結会計期間末における財政状態は、以下のとおりであります。
(資産)
当中間連結会計期間末における流動資産は214,934百万円となり、前連結会計年度末に比べ25,051百万円減少しました。これは主に、後述のキャッシュ・フローの状況に記載のとおり、現金及び現金同等物が23,292百万円増加、棚卸資産が安定供給力の強化に向けた生産の影響等により11,697百万円増加した一方、売上債権及びその他の債権が7,594百万円減少、売却目的で保有する資産が55,293百万円減少したためです。非流動資産は148,814百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,776百万円増加しました。これは主に、沢井製薬第二九州工場における新固形剤棟建設により有形固定資産が8,452百万円増加したためです。
この結果、資産合計は363,748百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,275百万円減少しました。
(負債)
当中間連結会計期間末における流動負債は74,401百万円となり、前連結会計年度末に比べ19,217百万円減少しました。これは主に、仕入債務及びその他の債務が742百万円増加した一方、資金繰り計画に基づき借入金が4,687百万円減少、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が16,268百万円減少したためです。非流動負債は88,137百万円となり、前連結会計年度末に比べ17,762百万円増加しました。これは主に、社債の発行及び借入の実行により社債及び借入金が15,156百万円増加したためです。
この結果、負債合計は162,539百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,455百万円減少しました。
(資本)
当中間連結会計期間末における資本合計は201,210百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,821百万円減少しました。これは主に、中間利益の計上、自己株式の取得、剰余金の配当及び関係会社株式の譲渡等によるものであります。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は55.3%(前連結会計年度末は55.7%)となりました。
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物は49,660百万円となり、前連結会計年度末に比べて23,292百万円増加しました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前中間利益11,409百万円、減価償却費及び償却費7,402百万円、棚卸資産の増加11,793百万円を主因として7,000百万円の収入(前年同期比3,177百万円の収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出15,685百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入28,429百万円を主因として14,910百万円の収入(前年同期は17,015百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入35,036百万円、長期借入金の返済による支出28,685百万円、自己株式の取得による支出16,068百万円を主因として9,305百万円の支出(前年同期は13,457百万円の収入)となりました。
(3) 研究開発活動
当中間連結会計期間の当社グループにおける研究開発費の総額は5,373百万円であります。
なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(4) 主要な設備
前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設について、当中間連結会計期間において著しい変更があったものは、次のとおりであります。
(注)本計画については、上記確定事項に加え、他社を含む市場の動向や沢井製薬の新製品開発状況等を勘案しながら約8,200百万円の追加投資を検討しております。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。