第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

① 経営成績の状況

[売上収益、利益の状況]

○ 当中間連結会計期間(2024年4月1日~2024年9月30日)の連結業績は、次のとおりです。

(単位:億円、%)

 

2023年度

中間連結会計期間

2024年度

中間連結会計期間

前年同期比

売上収益

3,736

3,850

103.1

売上原価

803

823

102.4

売上総利益

2,932

3,028

103.3

販売費及び一般管理費

1,789

1,970

110.1

研究開発費

828

818

98.8

その他の収益

8

55

708.0

営業利益

314

278

88.6

税引前中間利益

357

315

88.4

中間利益

242

231

95.4

親会社の所有者に帰属する中間利益

231

217

93.8

 

○ 売上収益は、抗がん剤「レンビマ」、不眠症治療剤「デエビゴ」、およびアルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」が引き続き伸長したことにより、前年同期に選択的エストロゲン受容体分解薬elacestrantに係る経済的収益受領権の譲渡に伴う一時金を受領した影響を吸収し、増収となりました。医薬品事業の売上収益は3,730億円(前年同期比104.9%)となりました。

○ 主要品目の売上収益は、「レンビマ」が1,649億円(前年同期比108.9%)、「デエビゴ」が253億円(同130.6%)、「レケンビ」が163億円(前年同期は4億円)、抗てんかん剤「フィコンパ」が147億円(前年同期比108.1%)となりました。

○ 販売費及び一般管理費は、「レケンビ」に係る販売費の増加や「レンビマ」の売上拡大に伴うMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下 米メルク社)への折半利益の支払いが増加したことに加え、円安の進行の影響により、増加となりました。

○ 研究開発費は、パートナーシップモデルの活用により効率性を高めた一方で、「レケンビ」などの重要プロジェクトへの積極的な資源投入や円安の進行の影響などにより、前年同期と同水準となりました。

○ その他の収益は、抗体薬物複合体farletuzumab ecteribulinに関するBristol Myers Squibb(米国、以下BMS社)との戦略的提携契約の終結に伴い、提携契約締結時にBMS社から受領した預り金の取崩益48億円を計上したことにより、増加となりました。

○ 以上の結果、営業利益は減益となり、医薬品事業のセグメント利益は1,793億円(前年同期比101.5%)となりました。

 

[セグメントの状況]

(各セグメントの売上収益は外部顧客に対するものです)

当社グループは、セグメントを医薬品事業とその他事業に区分しており、医薬品事業を構成する日本、アメリカス(北米)、中国、EMEA(欧州、中東、アフリカ 、ロシア、オセアニア)、アジア・ラテンアメリカ(韓国、台湾、インド、アセアン、中南米等)の5つの事業セグメントを報告セグメントとしています。なお、当連結会計年度より、経営の実態をより適切に表示するため、従来、研究開発費に含めていた各報告セグメントにおけるメディカル活動に伴う費用を各セグメントの利益に反映しています。前連結会計年度のセグメント情報は、当該変更を反映しています。

 

<日本医薬品事業>

○ 売上収益は1,073億円(前年同期比92.5%)、セグメント利益は365億円(同94.6%)となりました。売上収益の主な内訳は、医療用医薬品が959億円(同92.1%)、一般用医薬品等が114億円(同96.0%)でした。2023年6月に、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」の共同販促契約が満了となった影響などにより、減収減益となりました。

○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「デエビゴ」が212億円(前年同期比126.8%)と大幅に伸長し、「フィコンパ」は38億円(同108.4%)と伸長しました。2023年12月に新発売した「レケンビ」は42億円となりました。オンコロジー領域では、「レンビマ」は69億円(同84.9%)、抗がん剤「ハラヴェン」は38億円(同91.2%)となりました。ヤヌスキナーゼ阻害剤「ジセレカ」は72億円(同116.0%)と大幅に伸長し、慢性便秘症治療剤「グーフィス」は39億円(同109.6%)と伸長しました。一般用医薬品等では、チョコラBBグループの売上収益が77億円(同96.1%)となりました。

○ 2024年4月、「フィコンパ」について、注射剤を新発売しました。

 

<アメリカス医薬品事業>

○ 売上収益は1,370億円(前年同期比123.6%)、セグメント利益は794億円(同116.0%)となりました。

○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「レケンビ」が105億円(前年同期は4億円)、「デエビゴ」が31億円(前年同期比139.5%)と大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が1,159億円(同117.3%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は49億円(同82.3%)となりました。

 

<中国医薬品事業>

○ 売上収益は597億円(前年同期比94.4%)、セグメント利益は306億円(同80.8%)となりました。

○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が131億円(前年同期比71.1%)となりました。めまい・平衡障害治療剤「メリスロン」は78億円(同112.0%)と伸長しました。末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は63億円(同87.8%)となりました。「レケンビ」は15億円となりました。

○ 2024年6月に中国、同年8月に香港において、「レケンビ」を新発売しました。

 

<EMEA医薬品事業>

○ 売上収益は395億円(前年同期比104.7%)、セグメント利益は191億円(同102.3%)となりました。

○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「フィコンパ」が75億円(前年同期比122.9%)と大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ/Kisplyx」が212億円(同110.8%)と伸長し、「ハラヴェン」は46億円(同80.7%)となりました。

○ 2024年7月にイスラエル、同年9月にアラブ首長国連邦において、「レケンビ」を新発売しました。

○ 2024年10月、英国において、「レケンビ」を新発売しました。

 

<アジア・ラテンアメリカ医薬品事業>

○ 売上収益は295億円(前年同期比106.1%)、セグメント利益は137億円(同105.0%)となりました。

○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が77億円(前年同期比112.6%)と大幅に伸長しました。アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」は73億円(同108.9%)と伸長しました。

○ 2024年5月、マレーシアにおいて、パーキンソン病治療剤「エクフィナ」を新発売しました。

○ 2024年7月、南アフリカにおいて、「デエビゴ」を新発売しました。

 

② 財政状態の状況

○ 資産合計は、1兆3,214億円(前期末より724億円減)となりました。「レケンビ」等の生産を進めたことにより棚卸資産が増加した一方で、販売マイルストンペイメントの受領等により売掛金が減少したことに加え、自己株式の取得及び配当金の支払い等により現金及び現金同等物が減少しました。

○ 負債合計は、4,771億円(前期末より177億円減)となりました。短期借入金が増加した一方で、預り金の減少に伴いその他の金融負債が減少したことに加え、未払金が減少しました。

○ 資本合計は、8,443億円(前期末より547億円減)となりました。自己株式を取得したことに加え、為替の影響により在外営業活動体の換算差額が減少しました。

○ 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は62.1%(前期末より0.8ポイント減)となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

○ 営業活動によるキャッシュ・フローは、9億円の収入(前年同期より284億円の収入減)となりました。運転資本は、「レケンビ」等の棚卸資産が増加したことに加え、預り金の減少などにより増加となりました。

○ 投資活動によるキャッシュ・フローは、8億円の収入(前年同期は159億円の支出)となりました。フランスにおいて、2024年3月に一部製品の販売権を譲渡したことによる一時金を受領しました。

○ 財務活動によるキャッシュ・フローは、331億円の支出(前年同期より122億円の支出増)となりました。主に自己株式の取得および配当金の支払いによるものです。

○ 以上の結果、現金及び現金同等物の残高は2,686億円(前期末より361億円減)、営業活動によるキャッシュ・フローから資本的支出等を差し引いたフリー・キャッシュ・フローは17億円の収入となりました。

 

(2) 経営方針・経営戦略等

当中間連結会計期間において、当社グループの経営方針・経営戦略等について、前事業年度の有価証券報告書提出日からの重要な変更はありません。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき課題について、前事業年度の有価証券報告書提出日からの重要な変更はありません。

 

(4) 重要な会計上の見積り

当中間連結会計期間において、当社グループの重要な会計上の見積りについて、前事業年度の有価証券報告書提出日からの重要な変更はありません。

 

(5) 研究開発活動

当中間連結会計期間における研究開発費総額は、817億63百万円(前年同期比1.2%減)、売上収益比率は21.2%(前年同期より0.9ポイント減)です。

 

[開発品の状況]

○ 抗がん剤「レンビマ」(一般名:レンバチニブ、米メルク社との共同開発)

・単剤療法として、甲状腺がんに係る適応および肝細胞がん(ファーストライン)に係る適応で、日本、米国、欧州、中国、アジア等において承認を取得しています。

・単剤療法として、切除不能な胸腺がんに係る適応で、日本において承認を取得しています。

・エベロリムスとの併用療法として、腎細胞がん(セカンドライン)に係る適応で、米国、欧州、アジア等において承認を取得しています。

・米メルク社の抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法として、腎細胞がん(ファーストライン)に係る適応、および子宮内膜がん(全身療法後)に係る適応で、日本、米国、欧州、アジア等において承認を取得しています。

・ペムブロリズマブとの併用療法について、肝細胞がん(ファーストライン、肝動脈化学塞栓療法との併用)、食道がん(ファーストライン、化学療法併用)、ならびに胃がん(ファーストライン、化学療法併用)を対象としたフェーズⅢ試験が日本、米国、欧州、中国において進行中です。米国、欧州で実施していた頭頸部がん(セカンドライン)を対象としたフェーズⅡ試験は、独立データモニタリング委員会の推奨に従い、中止を決定しました。

 

○ AD治療剤「レケンビ」(一般名:レカネマブ、Biogen Inc.(米国)との共同開発)

・早期ADに係る適応で、日本、米国、中国での承認に加え、2024年5月に韓国、7月に香港およびイスラエル、8月にアラブ首長国連邦および英国(北アイルランドを除く)において承認を取得しました。欧州、カナダ、オーストラリア等において申請中です。

・2024年5月、米国において、皮下注射(SC)製剤について、Fast Track 指定の下でSCオートインジェクターによる週一回維持投与に関する生物製剤承認申請の段階的申請を開始し、同年10月に完了しました。

・2024年6月、米国においては、静注維持投与(月一回投与)に関する生物製剤承認一部変更申請が受理され、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデート(審査終了目標日)は2025年1月25日に設定されました。

・2024年7月、欧州医薬品庁の医薬品委員会(CHMP)は、販売承認申請について否定的な見解を採択し、当社は本見解に対する再審議を請求しました。

・2024年10月、オーストラリア医療製品管理局(TGA)が早期ADの治療法として推奨しないとの初期の審査結果を公表しました。当社は、90日以内に再審議の申請を行う予定です。

・Alzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)によって本剤が評価対象薬剤として選択されているプレクリニカル(無症状期)ADを対象とするAHEAD 3-45(フェーズⅢ試験)が日本、米国、欧州等において進行中です。

 

○ 不眠症治療剤「デエビゴ」(一般名:レンボレキサント)

・不眠症に係る適応で、日本、米国、アジア等において承認を取得しています。

・不眠症に係る適応で、中国において承認申請中です。

 

○ 抗てんかん剤「フィコンパ」(一般名:ペランパネル)

・部分てんかん併用療法に係る適応で、日本、欧州、中国、アジア等において承認を取得しています。日本、中国においては、単剤療法の承認も取得しています。

・全般てんかんの強直間代発作に対する併用療法に係る適応で、日本、欧州、アジア等において承認を取得しています。2024年4月、中国において、「12歳以上のてんかんの強直間代発作に対する併用療法」の適応拡大に関する承認を取得しました。

 

○ 2024年9月、抗がん剤「タスフィゴ」(一般名:タスルグラチニブ)について、日本においてFGFR2融合遺伝子を有する胆道がんに係る適応で承認を取得しました。

○ 2024年9月、「ロゼバラミン」(一般名:メコバラミン)について、日本において筋萎縮性側索硬化症用剤として承認を取得しました。

○ 2024年9月、「URECE」(一般名:ドチヌラド)について、タイにおいて痛風、高尿酸血症の適応で承認を取得しました。

○ 抗MTBRタウ抗体E2814について、日本、米国においてレカネマブとの併用による孤発性早期ADを対象としたフェーズⅡ試験を開始しました。

 

(6) 従業員の状況

当中間連結会計期間において、当社グループの従業員数に著しい変動はありません。

 

(7) 生産、受注及び販売の実績

当中間連結会計期間において、生産および受注の実績に著しい変動はありません。

なお、販売実績については、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロ ーの状況の分析 (1) 財政状態及び経営成績の状況 ① 経営成績の状況」に記載しています。

 

(8) 主要な設備

当中間連結会計期間において、「第1 企業の概況 2 事業の内容」に記載のとおり、当社連結子会社の株式会社カン研究所(以下、カン研究所)が当社を存続会社とする吸収合併により消滅しました。これに伴い、当社がカン研究所に賃貸していた㈱カン研究所本社(神戸市中央区)の事業所名を神戸研究所に変更しました。

 

3【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

また、当中間連結会計期間において、終結した経営上の重要な契約は、次のとおりです。

2024年6月、当社は、Bristol Myers Squibb(米国)との抗がん剤「MORAb-202」に関する共同開発・共同販促契約を終了し、当社単独でのグローバル開発・商業化に移行しました。

2024年9月、EAファーマ株式会社が株式会社ミノファーゲン製薬と締結していた「強力ネオミノファーゲンシー」および「グリチロン錠」の日本における販売権のライセンス契約は終了しました。