第2 【事業の状況】

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項の発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものです。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

① 経営成績の概況

世界経済は、米国では雇用情勢の軟化はあるものの堅調な個人消費に支えられて底堅く推移していますが、長期化する中国経済の停滞や地政学リスクの増大等の懸念、米国大統領選挙による経済影響等、先行きは依然として不透明な状況です。

国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等に加え、実質賃金の改善に伴う個人消費の持ち直しにより、内需主導で緩やかな景気回復が持続すると見込まれます。一方、海外景気の下振れリスクや日銀の追加利上げ、それに伴う為替相場の変動など経済への影響には注視が必要です。

このような経営環境の中で、当中間連結会計期間における当社グループの連結受注高は、エネルギーソリューション&マリン事業などで減少となったものの、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業などでの増加により、全体でも増加となりました。連結売上収益については、航空宇宙システム事業、エネルギーソリューション&マリン事業、精密機械・ロボット事業などでの増収により、全体でも前年同期比で増収となりました。

利益面に関しては、事業損益は、パワースポーツ&エンジン事業での減益はあったものの、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業での改善などにより前年同期比で改善となりました。親会社の所有者に帰属する中間損益は、事業損益の改善などにより、前年同期比で改善となりました。

この結果、当社グループの連結受注高は前年同期比345億円増加8,953億円、連結売上収益は前年同期比1,148億円増収8,841億円、事業損益は前年同期比806億円改善して477億円の利益、税引前中間損益は前年同期比582億円改善して237億円の利益、親会社の所有者に帰属する中間損益は前年同期比370億円改善して136億円の利益となりました。

なお、当社グループの潜水艦修繕職場における不適切事案及び舶用エンジンにおける検査不正については、社長を委員長とするコンプライアンス特別推進委員会、並びに外部有識者で構成するそれぞれの特別調査委員会を設置し、個々の事案における事実関係の調査や原因分析に加え、グループ全体でのコンプライアンス・ガバナンス体制の再構築や企業風土の改革に取り組んでいます。

本件による業績への影響については、今後の調査結果を踏まえ、影響が見込まれる場合には速やかに業績見通しへ反映していきます。

 

② セグメント別業績の概要

航空宇宙システム事業

航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、引き続き需要増が期待されます。民間航空機については、今後ボーイング社でのストライキの影響等が懸念されますが、航空旅客需要は昨年度から需要が増加し、大幅に回復しています。

このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けの減少はあるものの、民間航空エンジンの運航上の問題にかかる損失を計上した前年同期に比べ167億円増加2,099億円となりました。

連結売上収益は、民間航空エンジンの運航上の問題にかかる損失を計上した前年同期に比べ、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、1,049億円増収2,341億円となりました。

事業損益は、増収などにより、前年同期に比べ781億円改善して253億円の利益となりました。

 

車両事業

車両事業を取り巻く経営環境は、インバウンドの復調等により鉄道乗客数は新型コロナ影響前の約9割まで回復しており、国内の鉄道車両への投資は再開されつつあります。一方で、電子部品を中心とした機器調達の長期化や物価高騰の影響には注視が必要です。中長期的には、海外市場では都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれます。

このような経営環境の中で、連結受注高は、前年同期に比べ22億円減少278億円となりました。

連結売上収益は、国内・アジア向けが減少したものの、米国向けが増加したことなどにより、前年同期に比べ29億円増収870億円となりました。

事業利益は、増収などにより、前年同期に比べ13億円増益16億円となりました。

 

エネルギーソリューション&マリン事業

エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界的なカーボンニュートラルの実現を目指す動きの影響を強く受け、当社が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加しています。また、国内外の分散型電源需要及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続しています。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費の高止まり等による受注、売上収益への影響には注視が必要です。

このような経営環境の中で、連結受注高は、LPG/アンモニア運搬船を受注したものの、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件や産業用ガスタービン機器の減少などに伴い前年同期に比べ73億円減少2,110億円となりました。

連結売上収益は、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件や防衛省向け艦艇用機器での増収などにより、前年同期に比べ121億円増収1,599億円となりました。

事業利益は、増収や持分法による投資利益の増加などにより、前年同期に比べ35億円増益120億円となりました。

 

精密機械・ロボット事業

精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、欧米市場を中心に若干の陰りが見えるものの、不動産不況の長期化等の影響で需要の減速が続いていた中国建設機械市場は、小型機を中心に下げ止まりの兆しが見えつつあります。ロボット分野では、半導体メモリ市場の価格と需要が底を打ち、AI関連等の新たな成長を取り込みつつ、前年度の後半から半導体製造装置向けロボットの需要が回復しています。一方で、一般産業用ロボットは、最大の需要国である中国の景況が依然として低調ですが、人件費上昇や労働力不足による自動化需要は確実に高まっています。

このような経営環境の中で、連結受注高は、中国建設機械市場向け油圧機器や半導体製造装置向けロボットが増加したことなどにより、前年同期に比べ216億円増加1,246億円となりました。

連結売上収益は、半導体製造装置向けロボットや精密機械分野での増収を主要因として、前年同期に比べ64億円増収1,094億円となりました。

事業損益は、増収による増益に加え、これまで進めて来た価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前年同期に比べ65億円改善して19億円の利益となりました。

 

 

パワースポーツ&エンジン事業

パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である米国と欧州では二輪車の需要は堅調に推移していますが、一方で四輪車は軟調傾向にあります。東南アジア市場は一部では回復が見られますが、依然として低い水準で推移しており、また中国市場では景気悪化の影響から需要が減少しています。

このような経営環境の中で、連結売上収益は、二輪車の増加と円安が収益を押し上げたものの、北米向け四輪車がリコールや生産遅延等の影響で一時的に減少したことにより、前年同期に比べ138億円減収2,533億円となりました。

事業利益は、減収や固定費の増加などにより、前年同期に比べ82億円減益149億円となりました。

 

その他事業

連結売上収益は、前年同期に比べ22億円増収401億円となりました。

事業利益は、前年同期に比べ10億円増益16億円となりました。

 

当社グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素事業、CO2分離・回収事業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を着実に進めています。

更に、地震や豪雨などにより甚大な被害を受けた被災地の復興支援に協力するとともに、今後可能性が高まる様々な自然災害へ対応できる支援パッケージの充実に努めています。

 

③ 財政状態の状況

(資産)

流動資産は、棚卸資産の増加などにより前期末に比べ1,241億円増加し、1兆8,511億円となりました。

非流動資産は、有形固定資産の増加などにより前期末に比べ148億円増加し、9,681億円となりました。

この結果、総資産は前期末に比べ1,390億円増加2兆8,192億円となりました。

(負債)

有利子負債は、前期末に比べ1,861億円増加8,400億円となりました。

負債全体では、有利子負債の増加などにより前期末に比べ1,316億円増加2兆1,572億円となりました。

(資本)

資本は、親会社の所有者に帰属する中間利益の計上などにより、前期末に比べ74億円増加6,619億円となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前年同期に比べ419億円増加1,273億円となりました。当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ215億円減少369億円のマイナスとなりました。収入の主な内訳は、営業債権及びその他の債権の減少額949億円、減価償却費及び償却費428億円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加額1,194億円、前渡金の増加額497億円です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、前年同期に比べ16億円増加497億円となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、前年同期に比べ1,062億円増加1,238億円となりました。これは主に短期借入金の純増によるものです。

 

 

(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

当中間連結会計期間において、重要な変更はありません。

 

(4) 研究開発活動

当中間連結会計期間における当社グループ全体の研究開発活動の金額は、261億円です。

なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3 【経営上の重要な契約等】

 技術援助契約(導入)

契約会社名

契約の相手方・国籍

契約の対象品目

契約の内容

契約の始期・終期

川崎重工業㈱

(当社)

Honeywell

International Inc.

(米国)

(注)

T55-L-712、

712Aターボシャフトエンジン

エンジンの組立・修理・オーバーホール等の技術支援

1984年12月12日
(2024年11月30日まで)

 

(注)契約期間の更新により、契約の終期が2024年5月31日から2024年11月30日となりました。