当社グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境及び対処すべき課題
①当社グループの対処すべき課題
当社グループでは2020年度~2022年度の3ヵ年を対象とする「2020中期経営計画」を策定し、取り組みを進めてまいりました。「止血の中計」と位置付けた同計画は、「製品力のさらなる強化」や「素材から一貫生産ビジネスモデルの拡大」等、主な施策は概ね計画通りに進捗し、「海外事業の構造改革」についても北米MSSCの再建に目途が立ち、ほぼ完了いたしました。
こうした状況の中、当社では以下の重要な課題があると認識しています。
(当社の対処すべき課題)
① 基盤事業の稼ぐ力の強化(国内特殊鋼鋼材・ばね事業の収益力強化)
② 戦略事業の育成(海外鋼材・商用車用板ばね・粉末・精密部品・環境関連製品等)
③ 財務基盤の強化(キャッシュフロー及びB/S項目の改善)
④ 非財務関連の取り組み(カーボンニュートラル、人材への投資等)
⑤ 資本収益性と市場評価の改善(PBR1倍割れ)
(課題に対する取り組みについて)
当社の持続的成長を進めていくためには、特殊鋼鋼材事業に依存した当社の事業ポートフォリオの変革を進め、戦略事業の伸長を図り、収益機会の幅を増やしていく必要があると考えています。
国内の特殊鋼鋼材事業や自動車向けばね事業といった基盤事業において、収益力強化を進めることでキャッシュを創出し、成長が期待できる戦略事業への積極投資や財務改善につなげていきます。同時に、前中期経営計画期間中に準備を進めた戦略事業の刈り取りと育成を進めてまいります。
また、過去の大きな減損計上や借入増等で悪化した財務基盤の改善も、あわせて進めてまいります。
サステナビリティ経営も重要な課題として認識しています。特にカーボンニュートラルの実現については、生産工程における技術革新等超えるべき課題も多いですが、実現に向けて全社一丸となって取り組んでまいります。また、自社のCO2排出量削減だけに留まらず、社会全体のCO2削減に貢献する当社製品の開発・販売を進めることで、環境負荷低減に貢献するとともに、需要構造の変化にも対応してまいります。
当社の持続的成長を図るには、人材への投資も重要な課題です。新たな価値を創造できる人材の育成を図るとともに、安全で快適な働きやすい職場づくりを進めることで、生産性向上やイノベーションを図ってまいります。
これらの取り組みを推進し、「稼ぐ力」の強化を図るとともに、「持続的成長のシナリオ」を示していくことで、PBRの改善も図ってまいります。
こうした当社の課題認識と対応策を踏まえ、2023年5月に、2023年度~2025年度の3ヵ年を対象とする「2023中期経営計画」を策定・公表しました。2030年のありたい姿を「人を活かし、技術を活かし、時代の波に乗りつづける企業でありたい」と定め、そこからバックキャストした経営計画を策定しています。同計画で掲げた、基盤事業の“稼ぐ力”の強化と戦略事業の“育成”を推進し、企業価値の向上と持続的成長の実現を図ってまいります。
② 中長期的な経営計画
1.2030年のありたい姿
2.2023中期経営計画(2023年度~2025年度)
[基本方針]
① 稼ぐ力の強化
マージン維持・拡大とコスト削減で稼ぐ力を徹底して追求し、戦略事業拡大および財務基盤強化の原資とする。
② 戦略事業の育成
2023中計で事業拡大に舵を切り、2030年に向けて大きく伸ばす。
戦略事業に経営資源を積極的に配分し、事業の育成を進める。
③ 人材への投資
「人材への投資」を通じて、生産性向上とイノベーションを実現する。
④ サステナビリティ経営
ESGなど財務項目以外の課題を明確にし、持続的企業価値向上を図る。
これらの取り組みを通じて、 PBR=1倍以上を意識し中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
[重要経営指標(KPI)]
<主な財務目標(2025年度目標)>
売上高 : 1,850億円
営業利益 : 110億円
ROE : 8%
<非財務目標>
エンゲージメントサーベイ : 前年以上の得点
CO2削減(2013年度比で2030年までに):鋼材部門 原単位10%削減
他の部門 総排出量75%削減(従来の50%削減から目標値を拡大)
「2023中期経営計画」の詳細については当社ウェブサイト(https://www.mitsubishisteel.co.jp/ir/mid-plan/)をご覧ください。
(2)各事業における重点施策
[特殊鋼鋼材事業]
国内事業は、販売価格の改善によりマージンの維持・拡大を進めるとともに、工場DXによる製造コスト削減や営業系DXの推進による顧客満足度の向上により、基盤事業として稼ぐ力の強化を進めてまいります。
海外事業は、PT.JATIM TAMAN STEEL MFG.における旺盛な需要に応えるべく、フル稼働に近い生産能力の増強に向けて段階的な設備投資を進めてまいります。また将来に向けては、ばね事業とのシナジーも見据えた第3の拠点設立も視野に検討を進めてまいります。
また、お客様の工場のCO2を削減することに資する鋼材やEV・洋上風力設備向け鋼材等への参入、海外事業では再生可能エネルギー電力等を活用したカーボンニュートラル鋼製造の検討も進める等、中長期的な需要構造変化への対応も進めてまいります。
[ばね事業]
北米MSSCは、2023年3月期第4四半期では営業黒字化となるなど、損益が改善していることを踏まえ、今中計で北米再建の総仕上げを進めるとともに、その他の拠点においても統廃合を含めた効率化の検討を行ってまいります。また、マージンの維持・拡大とコスト低減を進めることで稼ぐ力の強化を図り、安定して利益を出し続けることのできる事業体への変革を進めてまいります。
また、商用車用板ばねと精密部品を戦略事業と位置づけ、事業規模の拡大を進めます。商用車用板ばねは、「鋼材からばねのグループ内一貫生産」の強みを生かしつつ、軽量化で拡販とマージン確保・拡大を進めるとともに、一貫生産の強みをさらに強化すべく鋼材とのシナジーが発揮できる新拠点への投資も検討してまいります。精密部品は、主力製品である機構組立品において、将来見込まれるさまざまなニーズに応えるべく技術開発を進めることにより、事業の拡大を図ってまいります。
カーボンニュートラルに向けた対応としては、さらなる軽量化に加え、生産工程の最適化及びDXの導入により、消費エネルギーの削減を進め、競争力強化と共に環境に配慮した製品の市場投入を推進し、サステナブルな事業体への変革を図ってまいります。
[素形材事業]
自動車内燃機関向け部品中心の製品構成からのシフトを進め、EV化・CASEの進展に伴い需要拡大が見込まれる特殊合金粉末の新規拡販推進を重点課題としています。リソースの重点配置及び客先ニーズの取り込みのために技術開発センターと連携し、AMC(アドバンスド・マテリアルズ・センター)のガスアトマイズ設備と広田製作所の水アトマイズ設備を最大限に活用することにより、各種研究開発を加速してまいります。また、フルキャパシティの広田工場の増産投資を開始するとともに、さらなる新工場の設立も検討してまいります。
さらに将来に向けて、顧客の脱炭素化ニーズに対応すべく、CO2フリー電力を使用したカーボンニュートラル特殊合金粉末の市場調査・準備も進めてまいります。
[機器装置事業]
環境課題の解決をテーマに事業拡大を目指します。再生エネルギー分野として注目を集める洋上風力発電関連製品の国産化対応や、サーキュラーエコノミーに貢献し都市鉱山から資源を取り出す磁力選別機事業を戦略事業と位置づけ、設備投資や拡販を進めてまいります。
洋上風力発電関連機器は、国産サプライチェーンの構築に寄与すべく、製品大型化に向けた設備導入や生産技術の試験研究を推進するとともに、グループ内で素材から製品までの一貫生産の準備を進めてまいります。
磁力選別機事業では、各種機能のパッケージ化により拡販を進めるとともに、EVバッテリーや太陽光パネルからの資源回収にも対応することで、事業拡大を図ってまいります。
文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前 提に基づいており、実際の結果とはさまざまな要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ戦略
当社グループでは、社会課題解決への取り組みを企業が果たすべき重要な責務の一つと認識し、ESGをはじめとする諸課題解決に向けた取り組みを進めています。
① ガバナンス
当社では、サステナビリティ委員会(委員長:社長執行役員)にて、サステナビリティに関する重要課題を審議するとともに、取締役会においても原則毎月、サステナビリティに関する審議を行っております。
サステナビリティ委員会の下部組織として、「地球環境委員会」、「カーボンニュートラル委員会」と「ESG分科会」を設け、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する評価、管理を含む当社のサステナビリティ推進に向けて、全社横断的に対応できるマネジメント体制としております。

② 戦略
三菱製鋼グループは、「経営理念」と「三菱製鋼グループ企業行動指針」「三菱製鋼グループ行動規範」に基づき「サステナビリティに関する基本方針」を策定し、これに即してサステナビリティ活動を推進しています。「事業活動」「コンプライアンス」「情報開示」「社員の尊重」「環境保全」「国際化」の6つの柱からなる「三菱製鋼グループ企業行動指針」で、11項目を明文化するとともに、さらにそれを細分化した「三菱製鋼グループ行動規範」を定めることで、事業を通じた企業価値の向上と、持続可能な健全な社会の実現に向けて取り組むべき姿勢を従業員と共有しています。
(サステナビリティに関する基本方針)
三菱製鋼グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。この方針の下、「経営理念」と「三菱製鋼グループ企業行動指針」「三菱製鋼グループ行動規範」に基づき、自らの社会的使命を果たすことでより信頼される企業を目指し、お客様・お取引先様・株主・従業員・地域社会など各ステークホルダーとの対話を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
〔Environment(環境)〕
三菱製鋼グループは地球環境の保全が人類共通の最重要課題の一つであると認識し、事業活動のあらゆる面で環境の保全に積極的に取り組みます。
〔Social(社会)〕
三菱製鋼グループは人権、人格、個性と多様性を尊重し、安全で働きやすい職場環境を確保するとともに、人材の育成を通じて企業活力の維持・向上を図ります。
〔Governance(ガバナンス)〕
三菱製鋼グループはグローバルな事業活動において法令や社会規範を遵守し、公正で透明、自由な競争並びに適正な取引を行うとともに、企業価値の最大化を図るため常に最良のコーポレートガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組みます。
また当社は、サステナビリティ経営をより効果的に推進するため、「社内における重要度」と「社外から当社グループへの期待度」を軸としてテーマを洗い出し、6つの重要課題の特定を行い、加えてSDGsの各目標との関わりを整理しております。
なお、以下の重要課題については、今日の社会環境や当社を取り巻く事業環境等を踏まえ、適宜再検証・見直しを行っております。
今後これらの活動をより拡大・進めていくことで、持続的な社会の実現に貢献していきます。

③ リスク管理
サステナビリティ関連のリスク管理のプロセスとしては、リスク管理委員会・サステナビリティ委員会を通して全社的な短期・中期・長期リスクの特定・評価・対応策の検討を行い、取締役会にて監督を行っています。

④ 指標と目標
当社が掲げているサステナビリティに関する指標と目標は、以下のとおりです。
[気候変動関連]
・CO2削減目標
(2030年度削減目標及び 2050年度カーボンニュートラル)
※詳細は、「(2)気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)-④指標と目標」を参照
[人的資本関連]
・有給休暇取得率
・女性従業員比率、女性管理職比率
・エンゲージメントサーベイ結果(※2023年度より新規実施予定)
※詳細は、「(3)人的資本-④指標と目標」を参照
また役員報酬制度の見直しを行い、2023年度より賞与と株式報酬の評価指標に、CO2排出削減をはじめとする非財務指標を導入しました。中期経営計画の財務目標とあわせて、非財務項目の施策もインセンティブに組み込み、目標達成を目指してまいります。
(2)気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)
当社は、2021年11月にTCFD提言の趣旨に対し賛同を表明し、2022年度には気候変動の影響についてリスク・機会・対応策の初期的な整理を行い、2050年度カーボンニュートラルに向けたロードマップを策定いたしました。また2023年度では、事業部ごとにリスク・機会を再評価し、シナリオ分析、財務インパクト評価を行ったうえで、対応策についても改めて再整理をいたしました。
気候変動に関するガバナンスについては、サステナビリティ戦略のガバナンスに組み込まれています。詳細は、「(1)サステナビリティ戦略-①ガバナンス」をご覧ください。
当社は、国内事業を対象とし、2030年、2050年の時間軸にて、今世紀末の平均気温上昇を1.5℃未満に抑えるために、世界的な気候変動対策が成功するシナリオ(気候変動関連規制等により主に「移行リスク」が顕在化する1.5℃シナリオ)と、不十分なままとなるシナリオ(自然災害の増加等により主に「物理リスク」が顕在化する4℃シナリオ)の2つのシナリオを用いてシナリオ分析を実施いたしました。
◆リスク・機会と時間軸・影響度

※①~③に対する対応策を以下にて整理
◆移行リスク・機会への対応

世界的な気候変動対策が成功する1.5℃シナリオでは、炭素税等の気候変動に関連する規制の強化が予想され、原材料や製造工程のカーボンニュートラルに向けた取り組みが必須となります。当社は、カーボンニュートラルの段階的実現に取り組むと同時に、脱炭素化の進展により新たに成長する市場向けの製品(顧客の脱炭素化に資する製品(例:カーボンニュートラル・スチールやカーボンニュートラル・ばね*2)、EV・CASE関連部品、半導体や電子部品、エネルギー(主に洋上風力)関連部品)の販売を強化します。洋上風力関連製品及びサーキュラーエコノミーに貢献する製品(磁力選別機など)の受注拡大や、軟磁性粉末(CASE対応を含む電子部品向けカーボンニュートラル・粉末*3)等の金属粉末の成長にも注力するなど、事業の拡大を図るとともに、脱炭素化の実現に貢献してまいります。
*2 CO2フリー電力を使用して製造した鋼材・ばね
*3 CO2フリー電力を使用して製造した粉末
③ リスク管理
気候変動に関する主なリスクについては、サステナビリティ戦略のリスクに含めて管理しています。詳細は、「(1)サステナビリティ戦略-③リスク管理」をご覧ください。
なお、移行リスクはサステナビリティ委員会、物理リスクやその他のリスクはリスク管理委員会で管掌しています。
また、カーボンニュートラル関連を含む設備投資については、企画部門を主体とした投融資委員会で事業計画及びリスクを精査し、審議を実施しています。
BCPについては、リスク管理委員会にて、災害発生時に各部門・事業所・子会社での対応や復旧が滞りなく行われるよう、策定・検証及び見直しを行っています。
④ 指標と目標
(CO2削減目標)
当社は、2050年のカーボンニュートラル(Scope1,2)を掲げ、そのマイルストーンとなる2030年度目標は、鋼材部門とその他部門に分け、以下のとおり設定しています。2030年までに30~40億円の設備投資を実施し、その達成を目指します。
- 鋼材部門:CO2フリーインフラ整備でカーボンニュートラルを目指す。
目標は原単位10%削減の180千㌧(2013年度比)
- 他部門:CO2フリー電力の利用増により、削減目標を総排出量50%削減から75%削減の11千㌧までに拡大
(2013年度比)
燃料エネルギー転換を積極的に進め、2050年度のカーボンニュートラル(実質ゼロ)を目指します。

(CO2削減に向けた取り組み施策)
2050年度のカーボンニュートラル(実質ゼロ)を目指し、以下のとおりカーボンニュートラル達成ロードマップを策定いたしました。
・2022年度の取り組み実績:
鋼材以外の部門では、2022年度より3拠点でCO2フリー電力の購入を始めました。千葉製作所の電力100%をCO2フリー電力に移行し、約8千㌧(他部門2013年度比18%相当)を削減いたしました。
・2023年度の取り組み施策:
広田製作所の合理化及び電力100%をCO2フリー電力に移行し、約5千㌧(同10%相当)削減を中心に取り組んでいきます。
◆2050年度に向けたカーボンニュートラル達成ロードマップ

なお、「戦略」におけるシナリオ分析の前提条件等の詳細につきましては、当社ウェブサイト「サステナビリティ」ページ(https://www.mitsubishisteel.co.jp/csr/environment/)をご覧ください。
(3)人的資本
当社グループでは、社員一人ひとりが持つ力を伸ばし、会社の強みとしていく人的資本の活用が、当社グループにとって持続的成長の必須条件であると認識し、人材育成とダイバーシティ、職場環境の改善を重視し、社内におけるサステナビリティ対応として取り組みを進めています。
① ガバナンス
人的資本に関するガバナンスについては、サステナビリティ戦略のガバナンスに組み込まれています。詳細は、「(1)サステナビリティ戦略-①ガバナンス」をご覧ください。
② 戦略
当社グループでは、本年5月に「2023中期経営計画」(対象期間2023年度~2025年度)を公表し、2030年のありたい姿「人を活かし、技術を活かし、時代の波に乗り続ける企業でありたい」に向けた4つの基本方針の一つとして「人材への投資」を掲げました。なお、計画期間中の人材への投資増加額(教育・資格取得支援・福利厚生充実等)として5億円を計画しています。
中期経営計画で掲げた以下の取り組みを進めることで、生産性向上とイノベーションを実現してまいります。
[人を活かす職場環境づくり]
・DX・業務断捨離による『タイムパフォーマンス』の高い組織への変革
・有給休暇や育休制度の拡充による「働きやすい環境」づくりの促進
・エンゲージメントサーベイによる従業員満足度把握の強化と改善
[人を活かす仕掛けづくり]
・社員の働きがいやチャレンジ精神を高めるための評価制度の見直し
(評価のフィードバック強化、社内スタートアップ制度の浸透)
・人材要件を踏まえたリスキリング機会の提供(生涯学習の支援)
・資格取得支援制度の充実を軸とした自律型人材の育成(人材の質向上)
[人材の多様性がもたらす柔軟な創造力]
・女性の工場勤務を可能とする職場づくり、女性活躍推進を目的とした研修
・積極的な中途採用を通した、多様な知見や考え方の活用
・現地採用者の本邦勤務などグローバルな人事交流の実施
なお、人的資本の取り組みに当たっては、2つの専門プロジェクトチームを組成し、各テーマについて、協議・検討を行っています。
1.事業戦略に連動した人財戦略検討チーム
企画部門と人事部を中心に組成し、中期経営計画等とも連動した、人材戦略の策定・評価等を行う。
2.従業員総活躍ストーリー検討チーム
従業員の活性化やモチベーション向上のための環境整備を主目的として、人事部門を中心に複数部署からメンバーを選定し組成。
人的資本に関する主なリスクについては、サステナビリティ戦略のリスクに含めて管理しています。詳細は、「(1)サステナビリティ戦略-③リスク管理」をご覧ください。
④ 指標と目標
※2023年度より、新たにエンゲージメントサーベイを毎年実施予定。前年度より高得点を指標として、評価・改善を図っていきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
[経営環境に関するリスク]
(1)製品需要の変動
当社グループの製造する特殊鋼鋼材は、国内外の需給や市況等、需要分野の動向によって数量、価格とも影響を受けます。また、中国の粗鋼生産膨張や新興国の増産が世界の鋼材価格の引き下げ要因となり、当社グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社の主要製品の多くは、主に自動車・建設機械業界に納入されており、日本、北米、中国、アジアを含む当社グループの主要市場における、同業界の景気後退及び需要の縮小は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、中長期的にはEVやCASEの進展による需要構造の変化の影響等を受ける可能性があります。
当社といたしましては、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーであることを強みとし、顧客のニーズに対応した製品を提供することで、受注量の維持・拡大を図り需要変動影響の軽減を図ってまいります。また中長期的には、国内特殊鋼鋼材や自動車ばね等の基盤事業の強化を図るとともに、需要が旺盛な海外鋼材事業やEV・CASE進展に伴い需要拡大が見込まれる特殊合金粉末、洋上風力関連機器等の戦略事業の育成を進めることで、事業ポートフォリオの変革を推進し、持続的成長に向けた事業体質を構築してまいります。
(2)原材料・副資材・エネルギー価格の上昇
当社グループの主要製品は、鉄鉱石、石炭を使用して生産される溶鋼及び合金鉄を主要原料としており、これ らを外部調達しております。また、電極・耐火物等の副資材につきましても同様であり、さらには電力・ガス等のエネルギーを消費しております。これらの主要原料及び副資材等の価格上昇分につきましては売価転嫁に努めておりますが、市況の高騰分を売価転嫁できなかった場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
足元では、原材料市況は一時期に比べ落ち着きを見せているものの、世界的なインフレによりエネルギー価格をはじめ各種コストの高騰が続いているため、売価の改善に強く取り組んでまいります。
(3)海外拠点及び周辺国におけるリスク
当社グループは、北米・欧州・中国・東南アジア等に海外事業拠点を有しております。当該国及び周辺国における政治・経済・社会的混乱(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む。)や法的規制等、更には国際的な貿易規制や関税の変更、国家・経済圏間における貿易協定に起因する影響を受けるリスクがあり、これらの影響を受けた場合には、業績に影響が生じる可能性があります。
貿易規制や関税の変更等に対しては、適切な対応を行うとともに、各拠点の原材料調達構造改革を進めることで影響の軽減に努めております。
(4)外国為替相場の変動
当社グループは、原材料等の輸入及び製品等の輸出において外貨建取引を行っております。また、当社グループの外貨建取引及び連結財務諸表作成のための海外子会社の財務諸表数値は、外貨から円貨への換算において、為替相場変動の影響を受けることとなります。ヘッジ契約等の対応をしておりますが、為替相場変動のリスクを完全に排除することは困難であり、変動影響を大きく受けた場合には、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
(5)金融市場の変動や資金調達環境の変化
当社グループは、事業活動に必要な資金を金融機関からの借入により調達しており、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。また、健全な財務体質の維持に努めておりますが、景気の後退や金融市場が悪化した場合や、当社グループの信用低下等により必要な資金を必要な時期に適切な条件で調達できない場合には、資金調達コストが増加することにより、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
[事業戦略・計画の遂行に関するリスク]
(6)固定資産の減損損失
当社グループは、これまで行った設備投資による有形固定資産・無形固定資産等を有しており、今後も持続的成長に向けた新たな設備投資を計画しております。しかし、経営環境の変化等により、収益性が低下し、投資額が回収できない場合、固定資産の減損損失の計上等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。なお、北米MSSC社は営業損失を計上し、減損の兆候が認められましたが、生産混乱の解消や売価転嫁の進捗等により、2022年度第4四半期は営業黒字化し、大幅に損益が改善しました。2023年度も通期営業黒字を見込み、再建の目途が立っているため、減損の必要はないと判断しております。
設備投資については、国内のマザー機能を強化し、事後解決型から問題の未然防止型の体制へシフトすることで、投資効果を確実に回収してまいります。また投融資委員会を設け、中立的立場から妥当性やリスクを精査する体制を整えております。同委員会の意見をもとに、重要案件は経営会議もしくは取締役会でも審議するとともに、その進捗や立ち上げ後の改善効果の計画対比についても適宜フォローしていくことで、損失の発生を未然に防いでまいります。
(7)競争優位性及び新技術・新製品の開発・事業化に係るリスク
当社グループが展開する各事業においては、当社グループと同種の製品を供給する競合会社が存在しております。顧客ニーズの把握、新技術・新製品の開発・事業化に努めておりますが、顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合や新技術・新製品の開発・事業化が長期化した場合、開発案件が事業化できなかった場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社業績に影響が生じる可能性があります。また、脱炭素社会の実現をはじめとする社会課題への取り組み強化として、環境負荷低減に向けた研究・製品の開発が強く求められております。このようなニーズに適切に対応できなかった場合や、研究や製品の開発・事業化に要する期間が長期化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーである競争優位性の維持・強化に向けて、工場DXによる製造コスト削減や営業系DXの推進による顧客満足度の向上で競争力の強化を進めるとともに、試験研究の強化を図ってまいります。2022年4月には開発・試作・改善を目的として千葉製作所内に設立したAMC(Advanced Materials Center)を技術開発センターへ統合し、お客様の声をより早く具現化していく体制としました。
[事業運営に関するリスク]
(8)自然災害・事故・感染症等の発生
当社グループは、大規模な自然災害等不測の事態の発生に備え、耐震面の強化など防災対策を強化しております。また、当社グループの生産設備の中には、高温、高圧での操業を行っている設備があり、高熱の生産物等を取り扱っている事業所もあります。対人・対物を問わず、事故の防止対策には万全を期しておりますが、万が一重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には、当社グループの生産活動等に支障をきたし、業績に影響が生じる可能性があります。また、新型コロナウイルス等の感染症が世界的に流行した場合には、感染拡大防止による法令等に基づく事業活動及び社会活動の自粛要請等により、当社グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。これらの不測の事態に備えるためにもBCP(事業継続計画)に関する施策としてサプライチェーンのリスクを想定し、国内外の供給体制を維持してまいります。
(9)環境規制や気候変動に伴う社会変革への対応に関するリスク
当社グループでは、事業活動において廃棄物、副産物等が発生いたします。そのため、環境マネジメントシステムを構築・運用し国内外の法規制を遵守し、環境保全活動を行っております。過去、現在、将来の事業活動に関し、環境に関する責任リスクを有しており、関連法規制の強化等によっては対応するための費用が発生する可能性があります。また、関連法規制の強化等によって、売却した工場跡地等であっても土壌汚染の浄化のための費用が発生するなど、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
また、国際社会では、2050年カーボンニュートラルへの要請が高まり、脱炭素化の動きが加速しております。当社グループは2021年11月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言へ賛同表明し、2022年6月に「TCFD提言に基づく情報開示」の初回開示を実施、2023年5月に開示内容を見直し、再整理しました。自社のCO2排出量削減を進め、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すとともに、お客様や社会全体のCO2削減に貢献する当社製品の開発・販売を進めることで、環境負荷低減に貢献するとともに、需要構造の変化にも対応してまいります。開示内容の詳細につきましては、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組-(2)気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)」をご覧ください。
しかし、脱炭素の目標未達や環境対応が不十分な場合に、当社グループの評価の低下等により、業績に影響が生じる可能性があります。
(10)製品の瑕疵・欠陥に係るリスク
当社グループの製品には、重要保安部品に該当するもの等、高い信頼性を要求されるものが存在し、各製造拠点において、世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しております。製品の製造に当たっては、瑕疵・欠陥の生じた製品及び顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が市場に流出することのないよう厳格な品質管理体制を構築しております。また、本社管理部門にリスク管理室を置き、品質データー改ざん・偽装の防止が効果的にかつ確実に実施されることを目的とする監査マニュアルを作成し、それに基づいた各拠点の監査を実施しております。それでも尚、瑕疵・欠陥のある製品又は顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が万が一市場へ流出し、製品の補修、交換、回収、損害賠償請求又は訴訟等に対応する費用が発生した場合には、当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
(11)情報システムの障害、情報漏洩等
当社グループの事業活動は、情報システムの利用に大きく依存しており、情報システムの利用とその重要性は増しております。震災等による情報システムのBCP対策としてシステムのクラウド化または二重化等でより安定的なシステム運用の取り組みを行っております。また、自社及び顧客・取引先の営業機密や技術情報、個人情報等の機密情報を保有しておりますが、機密情報の漏洩対策については最重要の経営課題として認識し、システムによる防御対策に加えて従業員への教育を含む、情報セキュリティ強化を行っております。しかしながら、当社グループの情報システムにおいて、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃により、システム停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、知的財産における競争優位性の喪失、訴訟、社会的信用の低下等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。なお、これら万が一の不測の事態に対し被害を最小限に留められるよう、グループ全社でサイバーセキュリティ保険の加入を推進しています。
(12)人材確保に係るリスク
当社グループは、事業の維持、成長のため、必要な人材の確保に努めておりますが、今後、国内生産年齢人口の減少傾向や人材の流動化の進展等により、人材の確保が想定どおりに進まない場合、安定的な生産体制が損なわれたり、当社の持続的成長の実現が難しくなる等、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。当社グループといたしましては、多様な背景を持つ従業員が持てる力を最大限に発揮するため、働き方改革や女性活躍の推進といったダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでまいります。「2023中期経営計画」でも、「人材への投資」を基本方針の一つに掲げ、教育・福利厚生の拡充等を積極的に行い、優秀な人材の安定的確保に向け努めてまいります。
また2022年度には事業戦略と連動した「人財戦略検討チーム」と従業員の活性化やモチベーション向上のための環境整備を主目的とした「従業員総活躍ストーリー」の2つのプロジェクトチームを組成しました。チームでの協議を通じ、付加価値やイノベーションを生み出す人材の確保と育成を進めて、持続的に企業価値を高めてまいります。
[その他のリスク]
(13)法令・公的規制
当社グループは、日本国内及び事業展開する各国において、環境、労働・安全衛生、通商・貿易・為替、知的財産、租税、独占禁止法等の事業関連法規、その他関連する様々な法令・公的規制の適用を受けております。
当社グループは、内部統制体制の充実を図り、従業員に向けての周知、徹底を行い、法令・公的規制の遵守に努めておりますが、万が一、遵守できなかった場合、課徴金や行政処分を課されるなどにより業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、これら法令・公的規制が改正もしくは変更される場合、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
(14)人権
当社グループは、国内外で事業を行い、サプライヤーも国内外多数の国に及んでいます。当社グループやサプライチェーンにおいて、差別やハラスメント、強制労働や児童労働など人権に係る問題が発生し、適正に対応がされなかった場合、訴訟や行政罰、社会的信用の低下等が生じ、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
当社グループは人権の尊重が事業活動の基本であるとの考えのもと、2022年11月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「三菱製鋼グループ人権方針」を定めました。本指針は当社グループのすべての役員および従業員に適用されます。従業員向けの人権に関する研修の実施に加え、人権デューデリジェンスの実施や救済メカニズムの構築等により、当社の人権尊重の取り組みを強化してまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度(2022年4月~2023年3月)における当社グループを取り巻く経営環境について、自動車業界では、上海ロックダウンや長引く半導体等の部品不足の影響を受けたものの、生産台数の回復が進みました。また建設機械業界では、需要は引き続き堅調に推移しました。調達面では、高騰していた鉄鉱石・原料炭市況は一時期に比べると落ち着きをみせています。また、昨年急速に進行した円安も第4四半期では解消傾向にあるものの、依然として前年の水準までには戻っておらず、輸入原材料価格は前期と比較し高い水準が続いています。加えて、エネルギー価格の高騰も続いています。
このような状況下、当社グループの連結売上高は、原材料価格高騰に伴う売価転嫁等により、前期比242億4千5百万円(16.6%)増収の1,705億3千7百万円となりました。連結営業利益は、前期比7億2千3百万円(11.5%)減益の55億4千7百万円となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比18億7千8百万円(46.2%)減益の21億9千万円となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
特殊鋼鋼材事業の売上高は、前期比136億4千2百万円(15.8%)増収の1,001億4千5百万円となりました。国内では建設機械向け以外の需要減により売上数量が減少したものの、インドネシア海外事業の需要は好調に推移しました。また、国内外の原材料価格やエネルギー価格の高騰及び円安進行に対する売価転嫁が進みました。営業利益は、前期比2億6千4百万円(4.0%)減益の63億5千万円となりました。インドネシア海外事業では設備改造による品質・コスト改善とそれに伴う売上増の効果もあり増益となったものの、国内事業は売上数量減により減益となりました。
ばね事業の売上高は、前期比113億3百万円(23.3%)増収の598億5千8百万円となりました。自動車向けでは、上海ロックダウン及び半導体等の需給ひっ迫の影響があったものの生産は徐々に回復が進んでおり、建設機械向け需要も堅調に推移しました。また、原材料やエネルギー価格等の高騰に対する売価転嫁についても、国内及び北米で交渉が大きく進捗、円安による換算影響も寄与しました。営業利益は、前期比3億3千8百万円損失が拡大し、21億6千6百万円の損失(前期は営業損失18億2千7百万円)となりました。円安に伴う調達コストの増加が主な要因です。
なお、北米子会社は生産混乱の影響等により第3四半期まで損失の拡大が続いていましたが、足元では安定在庫確保等の施策進捗により混乱の解消が進んでいます。また、不採算製品の値上げ及び取引解消を含む交渉が進捗したことにより、第4四半期の損益が大幅に改善しました。
素形材事業の売上高は、前期比1億4千7百万円(1.4%)減収の102億1千万円となりました。特殊合金粉末の売価改善や新規品の受注があったものの、鋳鋼製品(エスコ)生産終了や自動車内燃機関向け部品の顧客在庫調整の影響に伴う売上数量減がありました。営業利益は、前期比3億3千4百万円(39.1%)減益の5億2千2百万円となりました。売上数量の減少と売価改善が原材料価格等の上昇に追い付かなかったことが主な要因です。
機器装置事業の売上高は、前期比7億1千8百万円(7.5%)増収の103億3百万円となりました。前期に計上した鍛圧機械大型案件の売上減があったものの、洋上風力発電関連機器等の売上が増加しました。営業利益は、前期比1億6千4百万円(29.4%)増益の7億2千5百万円となりました。洋上風力発電関連機器等の売上増と生産性向上が寄与しました。
その他の事業は、流通及びサービス業等でありますが、売上高は、前期比2億3千9百万円(6.3%)減収の35億6千3百万円、営業利益は、前期比5百万円(5.5%)増益の1億7百万円となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,564億9百万円で、前連結会計年度末と比較し134億4千7百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。
1 流動資産:154億6千8百万円増加
借入金による現金同等物の増加56億4千8百万円、有価証券(譲渡性預金等)の増加50億円、棚卸資産の増加39億7千2百万円等によるものであります。
2 有形固定資産:8億2千5百万円減少
設備投資による増加26億2千2百万円、減価償却等による減少35億7千7百万円、減損損失による減少5億5千1百万円等によるものであります。
3 無形固定資産:2億5千7百万円減少
設備投資による増加1億3千1百万円、減価償却による減少4億4百万円等によるものであります。
4 投資その他の資産:9億3千7百万円減少
投資有価証券の売却による減少11億6千6百万円等によるものであります。
当連結会計年度末の負債総額は1,067億2千1百万円で、前連結会計年度末と比較し126億7千2百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。
1 流動負債:79億8千4百万円減少
短期借入金の減少48億5千3百万円、未払法人税等の減少22億2千7百万円、火災損失関連引当金の取崩による減少8億6千9百万円等によるものであります。
2 固定負債:206億5千7百万円増加
長期借入金の増加222億7千4百万円、リース債務の減少3億3千7百万円、退職給付に係る負債の減少5億4千9百万円等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、496億8千8百万円となり、前連結会計年度末と比較して7億7千4百万円の増加となりました。これは利益増による利益剰余金の増加14億1千8百万円、資本剰余金の減少4億6千4百万円、投資有価証券の売却によるその他有価証券評価差額金の減少3億6千8百万円、退職給付に係る調整累計額の増加1億5百万円等によるものであります。
この結果、自己資本比率は27.8%となり、前連結会計年度末と比較して2.2%減少いたしました。
また、1株当たりの純資産額は、前連結会計年度末の2,791円49銭から2,831円47銭となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による27億7千7百万円の支出、投資活動で14億3千9百万円の支出、財務活動では147億8千9百万円の収入となりました。
この結果、現金及び現金同等物は当連結会計年度に106億4千8百万円増加し、当連結会計年度末残高は305億9千9百万円となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税金等調整前当期純利益47億2千6百万円、減価償却費40億7千1百万円等の収入があった一方、法人税等の支払額45億8千3百万円、未収入金の増加35億6千1百万円、棚卸資産の増加32億8千4百万円、等の支出がありましたので、営業活動全体として27億7千7百万円の支出となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
投資有価証券の売却による収入11億6千5百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出25億5千3百万円等の支出がありましたので、活動全体として14億3千9百万円の支出となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
長期借入金の返済89億7千5百万円、リース債務の返済5億6千2百万円等の支出があった一方、長期借入金による収入280億3千万円等の収入がありましたので、財務活動全体として147億8千9百万円の収入となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は販売価格によっております。
当社グループでは、主に国内外の需要家への最近の納入実績、各需要家の予測情報などに基づいた生産を行っており、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績金額及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
1 資金需要
当社グループの主な資金需要は、製品製造のための材料や部品の購入及び設備投資によるものであります。
2 財務政策
当社グループは、設備投資を厳選して実施することで財務の健全性を保ちながら、営業活動によるキャッシュ・フロー収入を基本に、将来必要な運転資金及び設備資金を調達していく考えであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針において使用されている重要な会計上の見積り及び前提条件は、以下の事項及び「第5 経理の状況(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
当社グループは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(551百万円)を計上しております。
(1) 技術導入
該当事項はありません。
当社グループは、技術開発センターに各セグメントの研究開発機能を集約し、材料から製品までの一貫した研究開発を進めてまいりました。また、産学連携等の共同研究により新しい分野も効率的に取り込んでまいりました。
当連結会計年度における研究開発費は
特殊鋼鋼材事業関連では、鍛造・熱処理省略など省エネに関わる製品力向上に関する開発に取り組みました。
ばね関連では、ばね軽量化への対応(材料の開発、製造技術の開発)、グローバル化対応(海外材の評価など)に取り組みました。
素形材関連では、特殊合金の粉末や精密鋳造品の評価技術の開発に取り組みました。
機器装置関連では、鍛圧機械、計装機器や環境装置の開発に取り組みました。